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第2章パートの能力は「しくみ」で最大限引き出せる

目次

都合の良い時間に働いてもらう

パート全員にiPadを支給して、空中戦を仕掛ける

武蔵野では、パート・アルバイトを含め、全従業員にタブレット端末(iPadやiPadmini計600台)を支給しています。金額にして、「ウン千万円」の投資です。

普通の社長は、社員に配布はしても、アルバイトやパートにまで配布することはありません。お金がもったいないから、です。でも私は、パート・アルバイトに渡さないほうが、「もったいない」と考えています。理由は、次の「4つ」です。

  • ①残業が減る
  • ②業務効率が上がる
  • ③パート同士のコミュニケーションが良くなる
  • ④パートが辞めなくなる

①残業が減る

かつてのわが社は、とにかく残業が多い会社でした。現場は恒常的な人手不足に陥っていたので、他の会社よりも高い給料で、パート・アルバイトの募集をしました。しかし、仕事は楽ではなく、人が定着しませんでした。

結果として、残ったパートにしわ寄せがいき、繁忙期は極端に残業時間が長くなった。残業を減らさなければ、パートは定着しません。けれど、「残業しないで早く帰る」だけでは、お客様にご迷惑をかけます。

お客様が離れたら、会社が立ち行かなくなります。残業を減らしながらも、仕事の成果は減らさない。そのために、ITを使った業務の効率化に取り組んだ。

iPadをはじめとするITの活用によって、わが社では、残業時間を大幅に減らすことに成功しました。ピーク時には月「76時間」あった残業が、現在は、「17時間」です。

しかも残業時間を5分の1以下に減らしたにもかかわらず、売上は前年対比で10%伸ばしています。

残業の取り組みについて詳しく知りたい方は拙著『IT心理学』(プレジデント社)、『残業ゼロがすべてを解決する』(ダイヤモンド社)を参照してください。

ダスキン商品の棚卸しも、iPadを使うことで、大幅に時間を短縮することができました。かつては、内勤のパートが実際に現物の数を数えていて、棚卸しをすると、いつもの残業に加えて、さらに3~4時間の残業が発生していた。

ですが現在は、入力されたデータを確認するだけで、30秒もあれば終わります。また、お客様からクレームが入ると、従来はコールセンターから担当者(営業スタッフ)の携帯電話にメールで連絡をしました。

ですが、担当者がお客様の近くにいるとはかぎりません。現場に駆けつけるまでに時間がかかると、事態が悪化して、解約につながるおそれがあります。

こうした課題を解決するため、コールセンターでは、「iPadの位置情報」を活用しています。

コールセンターは、全営業スタッフの位置情報をリアルタイムで把握していて、担当者が遠くのコースを回っているのであれば、「近くにいる別の営業スタッフに向かわせ、一時対応」させています(その後、担当者が本格的な対応をする。次の図参照)。

内勤の人件費は固定費です。固定費を小さくするのが経営の基本であり、それには「給料を下げる」か「従業員の人数や勤務時間を減らす」しかありません。

「給料を減らす」ことはできないから、今までやっていた仕事を効率化して、少ない人数と少ない時間で処理する必要があります。

iPadを使えば残業時間が減り、残業時間が減れば人件費を抑えられて、利益が増えるしくみです。残業が減って、家に早く帰れて、家族と過ごす時間が多くなって、しかも、可処分所得が高くなる。「働き勝手」が良いため、武蔵野はパートが辞めません。

②業務効率が上がる

「高度なシステムを一部の社員だけが使う会社」と、「そこそこのシステムを全従業員が使いこなす会社」では、後者が業務効率が上がります。

前者の場合、システムについていけない人がボトルネックになって、かえって仕事が滞ってしまうことがあります。

全員がシステムを使えて、ボトルネックがない状態にしたほうが、仕事は効率的に進みます。

③パート同士のコミュニケーションが良くなる

「ガラケー」しか持たなかったパートが、iPadを支給されてコミュニケーションアプリの「LINE」を使うようになり、「みんなの仲間に入れてもらった」と喜んでいます。iPadは、業務の効率化のみならず、従業員同士のコミュニケーションツールとしても大きな威力を発揮しています。

④パートが辞めなくなる

「うちの社長は変わっているから、こんなものを持たされちゃって」と面倒そうに振る舞うパートほど、実際には「まんざらでもない」と感じています。iPadを貸与されたことを家族や友人に自慢できるからです。

武蔵野を辞めるときは、iPadを返却する。一度与えられたものを返したくない。「iPadを返却したくない」という理由で仕事を頑張るパートも少なくありません。

なぜ75歳のパートまでもがiPadを使いこなせるのか?

「高度化をする」とは「高度なシステムを導入する」ことではありません。「誰もが使えるようにする」ことです。高度化をもっとわかりやすい言葉でいうと、『Simpleisbest』です。

ITの高度化を図る(ツールを全員が使えるようになる)ためのポイントは、次の「3つ」です。

Ⅰ.私用を認める

Ⅱ.同じ端末を持たせる

Ⅲ.ITスキルが低い人を先生役にする

Ⅰ.私用を認める

武蔵野は、ITツールを私用で利用することを許可しています。

会社から貸与されたiPadでゲームをしたり、自宅で好きなWebサイトを閲覧してもかまいません。私用であっても「自分で触ってみる」ことで、ITスキルは向上します。

営業サポートの横道和江は、「会社から支給されたiPadminiを自宅のパソコンの代わりにしている」と言っていますが、まったく問題ありません。

「私は今、英語を勉強していますが、電子辞書よりもiPadのほうが見やすいし、学びやすいと感じています。あと、iPadで料理レシピサイトの『クックパッド』を見ながら料理をすることもあります。

私用で使うことが認められていると、触れる機会が増えるから、ITツールに対する抵抗感がすぐになくなりました」(横道)

Ⅱ.同じ端末を持たせる

全員が同じ端末を持つので、パート同士で使い方を教え合うことができます。

Ⅲ.ITスキルが低い人を先生役にする

ダスキンに、お店のロゴが入った「オーダーメイドマット」という商品があります。

デジタルカメラが登場した当初、「お店(お客様の会社や店舗)のロゴを撮影して、マットと合成してお見せすれば、完成品をイメージしてもらいやすいのではないか」と考えました。

そこで、画像合成のやり方を最初に覚えさせたのが、山路浪子です。山路は当時、60歳近いベテランで(現在は75歳)、ITとはもっとも遠い存在でした。

画像合成ができるようになり、今度は、山路を社員とパートの先生役に指名しました。すると若手は、「あの山路さんでもできたのだから、自分も覚えないと、かっこ悪い」と思い、習得が早くなります。

山路は「『先生をやらないと給料を上げない』と小山さんが言うので、しかたなく引き受けた(笑)」と当時を振り返っています。

「社員200名の前で、先生をやったことがありました。小山さんにいきなり、『やってくれ』と言われて、どんなことをやるのかもわからないまま、スキャナーなど、機材を一式、渡されたんです。

その1週間後ぐらいに、ダスキン本社のナンバー2の方がお見えになったときも、私が説明係をすることになりました。機材のことをまだよく把握していなかったので、アンチョコを見ながら説明をしようとしたら、小山さんが無責任なことを言うんです。

『スラスラ説明すると面白くない。少しくらい言葉に詰まったほうが面白いですよ』と(笑)」(山路)

残業改革に取り組む理由を説明し、協力を仰ぐ

「残業がある会社」と、「残業がない会社」では、一般的に後者のほうが良い会社だと考えられています。ですが、現場で働くパートの意見は、少し違います。

「残業が多すぎるのは困るけれど、少なすぎるのも困る」が本音です。なぜなら、働く時間が減ると、時給ベースで働くパートは可処分所得が減るからです。

残業改革に取り組むためには、「残業時間が減っても、可処分所得を減らさないしくみ」をつくると同時に、「なぜ、残業を減らす必要があるのか」をきちんと説明する必要があります。

女性は、あいまいさを嫌い、残業改革を進める理由をきちんと説明しなければ、協力を得ることができません。では、なぜ、残業改革に取り組まなければいけないのでしょうか。

理由は主に「3つ」あります。

一.「月45時間以上」の残業は法令違反

二.社員(パート)の「健康」を守る

三.雇用・採用への変化

一.「月45時間以上」の残業は法令違反

労働基準法36条(36協定)によって、「労働者に法定時間を超えて働かせる場合(残業をさせる場合)、あらかじめ、労働組合または、労働者の代表と協定を結ばなくてはならない」と決められています。

36協定を結んでも、無制限で残業をさせていいわけではありません。36協定で定められている「時間外労働の限度時間」(一般の延長限度)は、「1ヵ月45時間以内」です(事業や業務の性質によっては、例外的に36協定の限度時間が適用されない業務がある)。

二.社員(パート)の「健康」を守る

「会社は、従業員の犠牲の上に成り立つものではない」と私は考えています。残業をすればそれだけ収入は多くなるが、それが続いてパートの健康を害するようなことがあってはいけません。

三.雇用・採用への変化

これまでは、「人が辞めても、新しい人を採用すればいい」と考えることができました。でも、今の時代は違います。消費税増税(2014年4月)以降、「辞めても次の人がいる時代」から「辞めたら次の人がいない時代」に変わりました。

募集しても人が集まらない。すると、残ったパートの負担が増えます。そして、疲れ果てたパートがまた辞めていきます。だから残業時間を減らして、負担を軽くする必要があります。

ダブルキャストで臨機応変に対応する

武蔵野は、頻繁に人事異動を行います。5年以上、同じ部署で働くことはありません。営業系の若手社員は、ひとつの職場での在籍期間を3年、事務系は5年として他の部署に転属させ、多くの体験を積ませます。

同じ部署に3年以上在籍する課長もいません。パートも、「同じ仕事をずっとしている人」と「いくつもの仕事を経験している人」では、後者の時給をアップさせます。

人事異動を行うと、ダブルキャストが実現します。ダブルキャストで、同じ役をこなせる人を2人用意しておく。わかりやすくいえば「代役」です。

代役がいれば、パートが急病で休んでも作業が止まることはありません。滞っている作業に応援を出すこともでき、時間短縮も可能です(現在、トリプルキャスト化が実現している部署もあります。次の図参照)。

また、「この件は○○さんに聞かないとわからない」「あの仕事は△△さんでないとできない」といったように、「人に仕事がつく」ことがなくなるため、不正を防ぐ効果もあります。

有給休暇の日数は、パートが自分で管理する

これまで、有給休暇は上司が管理していましたが、現在は、給与明細に消化日数などを明記しています。つまり、パート・アルバイトが自らの有給を把握・管理できるしくみです。

これなら絶対に有給休暇がおろそかにされることはありません。「スピード決裁」のアプリを使い、iPad・iPhoneから有給休暇の申請ができます。

事後申請は、「2営業日まで」です。有給を取りたいときは、「休みたい人」が、自分で「この日に休んでいいですか?」と聞いて回っています。

自分が休みたいとき(有給を取りたいとき)にまわりから快諾してもらうには、日頃から他のパートと仲良くする必要があり、職場のコミュニケーションも良くなります。

また、各種保険についても改善を加えていて、「1日、または1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上のパート・アルバイト」については、社会保険(厚生年金、雇用保険、介護保険、健康保険)に加入できます。

人は動かせば動かすほど成長する

強制的に環境を変化させる

私は、「経営は、環境適応業である」と考えています。経営は、市場の変化に合わせていち早く自社を変えていくことです。時代は、予想以上のスピードで変化しています。

時代が変わったのに、いつまでも同じところで足踏みしていると、あっという間に取り残されます。子どもの成長が早いのは、幼稚園→小学校→中学校→高校→大学と、成育環境が強制的に変えられているからです。

わが社の人事異動も、それと同じです。個人の適性を生かしながら、異動させる。だからパートが成長し、組織も成長します。

「フジ精密株式会社」(岐阜県/清水章社長)は、電子部品や自動車部品の製造請負、電子部品の検査業務を行う会社です。

清水社長は、「変化を怖がらず、新しい仕事に対して、前向きに取り組んでくれるパートは戦力になる」と考えています。

「『私が得意なのはこの仕事だから、これ以外したくありません』とか、『私は社員ではないので、そんなことまでしたくありません』と言う人は、仕事の幅も広がらないし、スキルも上がりません。

お客様やマーケットは常に変化しているから、その変化に合わせて私たちの仕事も変えていく必要があります。ですから、『何でもチャレンジしてくれる人』はとても貴重ですね」(清水社長)

人事異動は「モンスターパート」や「派閥」を生まないしくみ

職場に派閥ができるのは、人事異動がないからです。同じ部署に長くいると、「お局様」「ボス」「主」「モンスターパート」が生まれ、その人を中心に派閥ができます。

派閥Aと派閥Bがあったとき、派閥Aのキーマンが会社を辞めると、メンバーも一斉に辞めてしまったことがあります。

自分だけ残れば、派閥Aからも派閥Bからも、陰口を叩かれたり、無視されたり、子どもまでもが学校でいじめられたりするからです。

わが社に派閥がないのは、担当する仕事を頻繁に変えたり、シフトを固定させないで、「お局様」「ボス」「主」「モンスターパート」が生まれない工夫をしているからです。

「株式会社関通」の達城社長も、女性集団特有の派閥やいじめをなくすために、定期的に「人事異動」を行っています。

「パートさんには最初に『私は人間関係のいざこざが嫌いなので、それをなくすために人事異動をすることがあります』と宣言しています。

場所を変えるのではなく、仕事を変える。

人事異動は最低でも年に1回行っていますが、社員から『○○さんと、××さんの間でトラブルが起きそうだ』という報告が上がってきたときも行っています。

パート本人から、『あの人とうまくいかないから、部署を変えてほしい』と私に直接連絡が届くこともありますね(笑)。

人間関係のトラブルを未然に防ぐには、定期的な人事異動が有効だと思います」(達城社長)

勉強嫌いのパートに勉強させる奥の手

武蔵野の経営サポート事業部に、「実践社員塾」のプログラムがあります。経営サポートパートナー会員(武蔵野の経営コンサルティングを受けている企業)の一般社員のためのプログラムで、「価値観の共有」と「方針の理解」を目的としています。

わが社のパートも、「社員塾の第1講」を受講しなければなりません。ところが調べてみると、社員塾を受講していないパートが、「32人」もいたのです。この32人は、「上司の言うことを聞かない」という共通点がありました(笑)。

上司が参加をうながすと「仕事が残っているから出られない」と抵抗する。新任の店長は、自分よりも実力のあるベテランのパートに強く言えないため、野放しになっていました。

では、どうすれば、この手強い32人が社員塾に出るようになるのでしょうか。私は「奥の手」を使って32人を脅かしました。どんな手だと思いますか?「人事異動」をチラつかせた。

「社員塾の第1講に出なければ、みなさんには今の部署から異動していただきます。人事異動と、勉強会に参加するのと、どちらを選びますか?」

32人が全員、「社員塾の参加」を選びました。社員塾に参加すれば、新しい学びを得るので、パートは変わります。社員塾に参加しなくても、人事異動をすれば、新しい経験をすることになってパートは変わります。

私にしてみれば、どちらでもいい。なぜなら、どちらを選んでも、「変化する」からです。

新しい体験を与えて失敗させることこそが人材教育

派遣社員から契約社員となった「経営サポート事業部」の小林直子は、武蔵野の働きやすさについて、次の3つを挙げています。

「人がいいこと」「雇用契約に関係なく、責任のある仕事を任せてもらえること」「失敗をマイナスとして捉えないこと」です。

「とくに好きなところは、失敗をマイナスとして捉えないところですね。武蔵野で働く前の私は、失敗をすると長い期間クヨクヨしてましたが、この会社で働きはじめてからは、『あ、失敗しても、自分のマイナスにはならないんだ』とわかったんです。

失敗は、何かにチャレンジした結果です。小山さんは、失敗したことよりも、チャレンジしたことを評価してくださいます。

だから、『失敗したらどうしよう』とビクビクすることもなくなったし、楽しく仕事ができるようになりました」(小林直子)私は、「失敗したときにマイナスに捉えるか、プラスに捉えるかで人生が変わる」と考えています。

プラスの事柄とマイナスの事柄があると、多くの人は、マイナスの事柄に気持ちを奪われます。「失敗したら困るな、失敗したくないな」と考える。ところが、「失敗したくない」と考えて行動をすると、「失敗すること」が目的になるため、本当に失敗する。

私の思考は逆です。「失敗はしたくない」と嘆いたところで、うまくいくとはかぎりません。だったら早く行動を起こして、失敗したら軌道修正すればいい。

行動せずに失敗しない人と、行動して会社に迷惑をかけた人、どちらが優秀かというと、後者です。

パートを動かす「100回帳」

中小企業にとって、「人の成長」が、会社の成長です。人の成長なくして、会社の成長はありえません。武蔵野のような中小企業が勝ち残るには、社員やパートに勉強し続けてもらうしかない。

ところが、人間は基本的に、自主的には勉強しようとしません。そこでわが社では、「嫌々でも、勉強せざるを得ないしくみ」をつくっています。そのひとつとして取り入れているのが、「100回帳」です。

武蔵野は、早朝勉強会や上司との面談、創業者のお墓参りなど、社員が面倒がる義務がたくさんあります。社員がこの義務をひとつ実行すると、100回帳にハンコをひとつ押す。

そして、ハンコがいっぱいになったら(100回の義務を実行したら)、5万円の旅行券をプレゼントしています。つまり、「ハンコ1個」=「500円」です。

社員が勉強会に参加するのは、「旅行券がほしい」という、不純な動機からです。たとえ目的は旅行券であっても、勉強会に出席すれば社員のスキルや知見は上がる。

それは会社にとって好ましいことです。それに、面倒なことでも50回もやると習慣になり、さほど苦もなくできるようになります。

私は、「教育は、質の追求より、量の追求」と考えてます。簡単なこと、誰でもできるようなことを大量にやらせる。簡単なことができるようになったら少しずつ段階を上げていく。

量をこなせば、必ず質も上がります。100回帳は、パートにも持たせています。パートは社員よりも基準を低くして、「ハンコ50個で、2万5000円分の旅行券」を差し上げます。

旅行券の対象者は、半期ごとに行う政策勉強会(全従業員を対象とした勉強会。2部構成となっており、前半は各種表彰を行い、後半は会社の方針を説明する)で受け取れます。

100回帳は、人材育成のしくみであり、パートを辞めさせないしくみです。

嫌々ながらはじめたことでも、ハンコがたまっていくと、「こうなったら最後までハンコを押さないと、もったいない」「ここで会社を辞めると、2万5000円損する」という気持ちが芽生える。

そして、旅行券を目標に頑張るうちに、自己成長が実感できて、「辞めたい」という気持ちもなくなります。

「クリーンサービス事業部」の馬場一江は、「100回帳は、従業員にとって励みになるしくみ」だと感じています。「昔よりもずいぶん、ハンコがもらいやすくなりました。以前は、早朝勉強会など、社員と一緒の行事に参加しないと押してもらえなかったんです。ですから、私のように『朝早く行くのは面倒だ』と思う人は(笑)、なかなか集められないんですね。

最近はもっと簡単になって、お客様がダスキンのウェブサイトに登録してくださったらハンコが1個もらえますし、ダスキンのキャンペーン期間中に、お客様に『明日は交換日ですよ』とショートメールを送るだけでもハンコがもらえます。ハンコがもらいやすいほうが、『頑張って集めよう』という気持ちになりますね」(馬場)

「パート課長」「パート部長」をどんどんつくる

問題意識の高い人にポジションを与えなさい

仕事をする目的は、パートによってさまざまです。「お金」にやりがいを感じる人もいれば、「自分がやった仕事を評価されること」にやりがいを感じる人もいます。

社長や上司は、面談などを通して、その人の働く動機がどこにあるのかをきちんと把握しなければなりません。自分が評価されることにやりがいを感じるパートは、問題意識を持っている人が多いので、チーフや上長にする。

わが社は、パートでも社員でも、昇格に一切の差をつけずに登用しています。だから、社員よりも優秀なパートがたくさんいます。現在、6名の「パート課長」がいます。

「株式会社本村」(埼玉県/本村真作社長)は、製本をメインに、物流、オンデマンド印刷の3つの事業を展開しています。

総従業員数は200名。パート108名で、そのうち75名は、5年前に立ち上げた物流事業に携わっています。

「物流事業はパートで成り立っていると言えます。今は非常に人手不足ですから、社員を集めるのはむずかしい。そこで、最初からパートの戦力化を考え、積極的に採用しています。パートに、お客様の商品を保管管理して出庫する仕事をお願いしています」(本村社長)

「本村」は、「パート課長」が2人いて、チームをまとめています。「武蔵野さんを見習って、能力がある2人を課長に抜擢しています。この2人を課長にした理由は2つあって、ひとつは、『会社の方針をよく理解し、共有している』こと。もうひとつは、『コミュニケーション能力が高い』ことです。

管理職は、仕事に対する生産性が高いだけでなく、協調性が必要だと感じています。いずれは、パートの中から部長もつくっていきたいですね」(本村社長)

管理職を選出するときは、最古参に声をかける

パートの中から管理職を選出するとき、社長の頭の中に適任者(Aさん)が浮かんでいても、すぐに声をかけてはいけません。根回しが必要です。

最初に声をかけるのは、「現場で最古参のパート」(Bさん)です。最古参のパートには「長く働いてきた」というメンツがあり、むげにしてはいけない。

「今度、パートの中から課長を出そうと思っているのだけれど、Bさん、あなた、課長になりませんか?」と声をかけます。「やらない」と断ってきたら、「じゃあ、Bさんは、誰を課長にすればいいと思いますか?」と質問します。

Bさんに「3名」の名前を挙げてもらって、その中に意中の「Aさん」がいれば「そうだね」と言って、Aさんを課長にします。もし、Aさんの名前が出なければ、「参考にするね」と言って、いったん退く。

そして時間が経ってから、もう一度、「誰がいいと思う?」とBさんに相談します。すると今度は、「前回とは違う3名」を推薦してくれるので、「Aさん」の名前が挙がりやすくなります。

仮に、Bさん本人が「私がやります」と言ってきたら、組織を2つに分けて、AさんとBさんの2人を管理職にします。そして、Bさんがうまく組織をマネジメントできなければ、少しずつ、Aさんのほうに人員を移します。

そうすれば、Bさんは「自分には部下を管理する能力がない」ことを自覚できて、たとえ管理職から降ろしても、文句を言いません。

役職につきたがらないパートは、口説き落とす!

常務取締役、滝石洋子は、「パートはグループで成果を上げることが大事」だと考えています。

「基本的に、『パートは、みんなで仲良く、トータルで成果を出してもらえばいい』が私の考えです。誰かひとりを特別に引き上げたり、個々を厳しく鍛え抜くよりも、『グループ全体で(パート全体で)利益や、成績や、効率を上げるにはどうしたらいいか』を考えたほうが戦力化しやすいと思います」(滝石)

とはいえ、どの社長も「力のあるパートに、ポジションを与えて責任ある仕事をしてもらいたい」と思うものです。では、グループの中から責任者を選ぶときは、どうすればいいのでしょうか?「実践経営塾」(経営者を対象とした武蔵野のセミナー)の講師を務める滝石は、「女性戦略」のカリキュラムで、次のようなアドバイスをしています。

「どの社長にも、『このパートさんは力があるな』と思う候補がいると思います。ですが、『あなたに責任者をやってほしいんだけど』とお願いしたときに、『はい、わかりました。ありがとうございます」と快諾してくれるパートは、私の経験上、ひとりもいませんでした。

昨日まで、会社の悪口や社員の悪口を言っていた人が、急に『会社側』にはなれないからです。責任者になったとたん、パート仲間から、手のひらを返したように見られかねません。

それが怖いから、『ありがとうございます』とは言えないんですね。では、どうしたら、責任者になってくれるのか、それはもう、口説き落とすしかありません(笑)」(滝石)

99%のパートが落ちる口説き文句

滝石には、99%のパートが責任者を引き受けてくれる「一撃必殺の口説き文句」があります。

「あなたがたパートさんにも、会社の中で改善したいことがあると思う。でも、常務の私には、どのような問題が現場にあるのかがわからない。だから、パートの観点から、『どうすれば職場がもっと良くなるのか』を教えてもらいたい。そのための、改善担当者になってほしい。『職場を良くする向上委員会』の委員長のような立場だと思って、1年だけでいいから、引き受けてほしい

この口説き文句のポイントは、2つあります。「責任者としてパート仲間を管理してほしい」とは言わずに、「職場を良くするための窓口になってほしい」とお願いしている点がひとつ。それともうひとつは、「1年だけでいいから」と期間をはっきりさせている点です。

「私自身も経験があるのですが、責任や役職を与えられると、パートは、『自分は偉くなった』と勘違いしてしまうんです。すると、どうしても『調子に乗ってしまう』ことがあります。

責任者が問題を起こした場合、すみやかに交代させなければなりませんが、最初に、『とりあえず1年だけ頑張って。1年経ったら、またそこで考えましょう』と伝えておくと(必ず書面に残しておく)、万が一やる気がなかったり結果が出なければ、外しても、相手も納得してくれます。

1年経って結果を残していれば『すごく頑張っていると思う。ありがとう。もう1年お願いできる?』と言って、新たに更新すればいいと思います」(滝石)

潔癖すぎる人は、管理職に向いていない

わが社には、「課長」の肩書を持つパートもいます。実力、人望、ロイヤリティー(会社に対する忠誠心)、コミュニケーション能力、勤続年数などを総合的に判断して、「最低でも2つ以上の資質を持っている人」を選んでいます。

ですが、どれほど能力が高くても、「ある資質」を持っている人は、管理職には適しません。それは、「(仕事に対して)潔癖症」の資質です。潔癖すぎる人は、完璧さを求めるので、「仕事ができない」ことが許せません。

求める水準が高いため、仕事ができない相手に対しては、「どうしてこんなこともできないのか」と追い詰めてしまいます。「ITスキルの高度化」を進めるとき、私が、山路浪子を画像合成の先生にしたのは、彼女は「できない人の気持ち」がわかるからです。

また、潔癖すぎる人は、「全体」よりも「部分」を気にする傾向にあるため、細かい粗にばかり目がいってしまう。重箱の隅をつついたところで、組織全体の発展には寄与しません。組織が疲弊するだけです。

夫婦仲が悪い女性を課長にしてはいけない

「株式会社ロジックスサービス」のパート課長、横山靖子さんは、4人の子どもの母親です。朝9時に出社して、午後3時までの勤務。彼女には、30名の部下がいます。

「とても優秀な女性なので、『パート課長になりませんか』と以前から打診をしていたのですが、なかなか承諾してくれなかったんです。ところが横山さんのご主人が、こう言って、後押しをしてくれました。

『おまえの会社はいいな。俺なんか、上が詰まっていて全然偉くなれないけど、おまえはパートなのに課長になれるの?給料も上がるの?すごいな』。

ご主人にほめられたことでやる気を出して、ようやく課長になってくれました。パートさんでも、社員でも、結果を出している女性幹部には共通の条件があって、それは、『ご主人とすごく仲が良い』ことです。うちの会社を辞めていった元女性幹部の人たちは、ひとりの例外なく、ご主人との仲が悪かった。ですから、女性幹部には、『旦那さんと仲良くしている?』とチェックしています(笑)」(菊池社長)

現場重視のしくみづくりが生産力アップの近道

個人のスキルを「数字」で見える化する

「株式会社本村」は、パートの生産性を向上させるために、一人あたりの「MH」を見える化しています。「MH」は、ひとり1時間でどれくらいの作業ができるか(時間当たりの生産性)を示す単位です。Mは人(MAN)で、Hは時間(HOUR)です。

「スキル表をつくって、○○さんは100個できる、××さんは90個、△△さんは80個できるといったように、『1時間で、どのくらいできるか』を記録しています。

チームを3つに分けるなら、生産性が高い人を集めたAチーム、普通の人を集めたBチーム、低い人を集めたCチームと、同じスキルを持った人同士でチームをつくっています。

生産性が高い人と、普通の人と、低い人をバランス良くミックスしたチーム編成にはしません。生産性が高い人と低い人を一緒にすると、低い人は自分を卑下し、高い人はまわりと合わせて自分の生産性を落とします。

ですが、同じレベルの人が一緒になれば、ストレスなく仕事ができるので、結果的に生産性が上がる(参照)と感じています」(本村社長)

小さな改善の積み重ねで生産力アップ

「タカヤマ金属工業株式会社」(大阪府/高山正義社長)は、全国のハウスメーカーやビルダー、工務店に対して建築金具の製造・販売を行っています。

「タカヤマ金属工業」の従業員数は、302名。そのうち110名が女性です。創業当時から、「企業内保育園」(保育所)を設置するなど、女性が活躍しやすい職場づくりに注力しています。

会社の中に保育所があることで、『女性が働きやすい職場である』という評判が広がって、人材が確保しやすくなりました。また、子どもが近くにいると、母親は安心して仕事に集中できるので、作業効率が上がります。何よりも、保育所があるおかげで、職場がアットホームな雰囲気になっていますね。

当社の保育園出身の社員も数名いて、親子で働いてくれています」(高山社長)「タカヤマ金属工業」では、「グレードアップ大作戦」という取り組みを導入し、職場の改善を進めています。

「全従業員が半期ごとにテーマを決め、それに対する進捗状況を月に1回、確認しています。合言葉は、『1歩、1メートル、1秒、1円の改善』です。

この改善に率先して取り組んでいるのが、パートさんです。

『大きさの違う製品Aと製品Bのケース詰め作業を統一できないか検証した。Aには厚みがあったので統一はできなかったが、ケース詰めしやすい方法を新たに見つけた結果、作業がスムーズになり、1時間当たりの作業本数が680本だったのが、1時間当たり850本に向上した』といった、小さな改善を繰り返しています」(高山社長)また、高山社長は、毎月1件、「実行力強化レポート」の提出を義務付けています。

「実行力強化レポートは、『どのような改善をしたら、どのような結果が出たのかを算出し、具体的に数字にする』のが決まりです。

『梱包袋を捨てる際、作業を止めてゴミ箱に行くのに、1回につき13秒かかっていた。この時間が無駄と思ったので、作業台にゴミ箱を設置した。

この結果、『19分4秒/月』の時間短縮が可能になり、改善効果金額は、『1961円/月』になった。小さな気づきを改善したことで、作業に集中できるようになった』とパートさんから報告を受けています。

よく考えれば、『ゴミ箱を設置しただけ』ですが(笑)、こうした小さな改善に気づけるようになったのは、気づきの感度が上がったからだと思います」(高山社長)

外部委託よりもパートの戦力化に利がある理由

「株式会社川六」(香川県/寳田圭一社長)は、中四国九州に展開する宿泊特化型ビジネスホテルグループです。ビジネスホテル業態の業績不振ホテルの再生を得意とし、寳田社長は、2017年1月に『地域でいちばんピカピカなホテル』(あさ出版)を出版しています。現在、5店舗のホテルを運営していて、パートは40名です。

ホテルの清掃業務は、これまで外部に委託していましたが、2016年3月にオープンした「エクストールイン西条駅前(愛媛県)」と、2017年1月にオープンした「エクストールイン山陽小野田厚狭駅前(山口県)」の2店舗に関しては、自社で清掃業務を担当するパートを採用しています。

「新しい試みとして、『西条駅前』と『山陽小野田厚狭駅前』の2店舗に関しては、『すべて自社でやってみよう』と考え、清掃のパートさんだけで『30人』を一気に増やしました。

パートを増やした理由は、大きく3つあります。ひとつは、全体的な管理費を軽減させるため。もうひとつは、地域雇用に貢献するためです。

客室清掃という職種は勤務時間も短いし(9時30分~14時30分)、それほど高給を払うことができないから、決められた範囲の中で仕事をしていただくには、限られた時間しか働けないパートさんとWIN-WINの関係になることが重要です。

3つ目は、満足度の高いおもてなしをお客様に提供するためです。自社で雇用をしたパートであれば、私たちが直接、『お客様に対する考え方』を教育できるため、従業員の価値観が揃いやすくなります。

清掃会社に委託すると、『お客様からこんな声があるので、改善してください』と言うことはできても、雇用関係がないから、それ以上は強く言えなかった。

直接雇用をすれば、川六の考え方を徹底することができます」(寳田社長)本社勤務のパートは、主に電話予約やネット予約の処理を担当しています。

「ホテルに、お客様が集中する時間帯と、そうでない時間帯があります。パートを採用することで、必要な時間帯に必要な人員を割り振りやすくなりました。

パートさんにも『何曜日の何時から何時まで働きたい』という要望があるから、昼の部、夕方の部、夜の部と三部制で動かしながら、ホテルの都合とパートさんの都合がマッチするようにシフトを組んでいます。

パートさんから上がってくる不満の中でいちばん多いのは、『勤務シフト』に関する不満で、偏りが出ないようにダブルチェックをして、これまで以上にしくみ化を進める必要があると感じています」(寳田社長)

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