ほめ方には技術がある!
ここまでは、「ほめる」ことの素晴らしさや可能性をお伝えしてきました。きっとあなたはもう、ほめたくてほめたくて、ほめられたくて、ウズウズしていることでしょう。お待たせしました。
それでは「100点のほめ方」をお伝えしていきます。「100点のほめ方」は、技術です。技術なので、誰でも身につけることができますし、再現性があります。
そのほめ方には、次の3つのアクションがあります。
【アクション1】
関係性の土台をつくる……関係改善を図り、きちんと話を聞くことで、相手が「この人にほめられたい」と思える土台をつくる
【アクション2】
「ほめポイント」を見つける……「マジック質問」で、相手が本当にほめてほしいポイントを探す
【アクション3】
100点ほめ……生き方すべてを肯定し、ほめるこの3つのアクションは、100点のほめ方に欠かせない大事な要素で、この通りに相手をほめれば、自然と「100点のほめ方」になるのです。
―「100点のほめ方」をつくる3つのアクションとは?
【アクション1】
関係性の土台をつくるほめる前に、まずは関係性の土台をつくります。「あなたのことを知りたい、理解したい」という姿勢を見せましょう。
「あ、この人は自分の話を聞こうとしてくれているんだな」ということが伝われば、良い関係が築け、「ほめ言葉が効く状態」になります。
【アクション2】
「ほめポイント」を見つける次に、ほめポイントを見つけましょう。
ピントのずれたほめ方だと、ほめる効果を得られません。そこで、本章で「ほめポイント」を探る質問、マジック質問(後述・アクション2~詳述)をご紹介します。
その質問を使って、相手が、「本当にほめてほしいところ」「本当に理解してほしいところ」を見つけましょう。
【アクション3】
100点ほめ最後は、いよいよ「100点ほめ」です。
アクション2の質問で「相手が理解してほしいこと」がわかったら、そのほめポイントと一緒に、相手の生き方すべてを肯定し、ほめましょう。
「まさにそこをわかってほしかった」「わたしのことを理解してくれている」「わたしのすべてをほめてくれるなんて……感動」と、相手はほめられることに喜びを感じてくれます。
アクション1から3までできれば、相手の反応が面白いほど変わります。
アクション1:関係性の土台をつくる~「ほめられたい」と思われる関係になる
あなたは、目に入ってきたことをそのまま言葉にして相手をほめていませんか?
「お若く見えますね」「ステキなネクタイですね」「かわいい、綺麗です」
もし相手が、「本当はいくつだと思っているの?」「このネクタイ、その辺にあったものを選んだだけなのに」「かわいいと綺麗、どっち?いいかげんな人」といった具合に思っていれば、ほめることが、逆効果になってしまいます。
そうならないためには、どんな関係でも「相手の話をきちんと聞く」ことが重要です。
相手の話をきちんと聞く姿勢を見せることは、「あなたに興味があります」「あなたのことをもっと知りたい」という意志を見せることです。
人は、「自分の話を聞き、理解しようとしてくれる人」に対して好感を持ち、信頼を寄せます。
そして世の中には、「聞く力」「傾聴力」といったテーマの本が何冊も出版されていますが、ここでは、「ほめる」に効くもっともシンプルな「聞く技術」をお伝えします。
―「聞く」×「共通点を見つける」
で相手に味方だと思ってもらう相手の話をきちんと聞くことは、気持ちに寄り添おうとする行為です。
相手の視点に立って、全力で聞かなくてはいけません。そして「あなたの話を聞いています」という姿勢を、適切に表現することも大切です。聞くときの基本は、「あいづち」と「うなずき」です。
相手の目を見ながら、「そうですね」「確かに」というように、話に合わせてあいづちを打ち、しっかりうなずきながら聞きましょう。
そして、「そういうときもあるよね」「わかるよ、その気持ち」と共感することが大切です。
ポイントは、相手の気持ちに徹底して寄り添うこと。〝すべてを肯定する〟という気持ちで聞くのです。
親身になってくれる相手に対し、心の中にあるものを出し切ると、「この人は、自分の話をきちんと聞いてくれる人だ」「自分のことを受け入れてくれる人だ」と感じます。
すると、自然と、「この人にほめてもらえると嬉しいな」「この人にほめてもらえると自信が湧いてくるな」と思ってもらえるようになるのです。
たとえば、
「最近、仕事が減ってしまって、収入がピンチなんだよね……」と、フリーランスの友人から相談されたとします。
こういう相談には、どっちの返事が効果的でしょうか。
「そうなんですか、大変ですね」「そうなんですか、大変ですね。もしよかったら、詳しく聞かせてもらえませんか?わたし自身は力になれないかもしれませんが、仕事の関係でスペシャリストの知り合いがたくさんいるので、聞いてみますよ」
きっと、後者のほうが「自分のことを親身になって、理解しようとしてくれている」と感じるのではないでしょうか。
なぜなら後者は、徹底的に相手の話を聞き、困っていることに共感しようとしているからです。さらに、その困っていることを一緒に解決したい気持ちを伝えているのです。
アクション2:「ほめポイント」を見つける~相手が本当にほめてほしいポイントを探す、マジック質問
相手に、「あなたの悩みに共感したい」「その悩みを一緒に解決したい」という姿勢を示すことができたら、次のアクションへ移りましょう。
相手を的確にほめるためには、相手が「自分のこういった部分を理解してほしい」「自分なりに頑張っていることに気づいてほしい」と考えているポイントを発見することが大切です。
上っ面や見た目ではなく、相手の思いや考え方を理解した上で、相手が「本当にほめてほしいこと」をほめるのです。
マジック質問とは、相手の本音を引き出すことに特化した、次の3つの質問を指します。
- 好きなことは?
- 継続していることは?
- 大切にしていることは?
なぜこの3つを聞くのが有効なのか?それは、この3つに「相手の大切にしている価値観」がはっきりと表れるからです。
次頁から、同じ会社の同僚であるAさん・Bさんの例を交えて、マジック質問を解説していきます。
―マジック質問1:「好きなこと」を聞く
「好きなこと」を聞くと、その人の「本来の性格」がよくわかります。なぜなら、何かを好きになるのに、特別な理由がないことも多いからです。
好きなことを聞くことによって、幼少期のときに自然に表現できていた、本来の性格を知ることができるのです。
しかも好きなことを聞くと、自然と相手の笑顔が増え、会話が弾むというメリットもあります。あなたにも思い当たる経験があるのではないでしょうか。
友人や家族に、自分の好きなアーティストや映画などについて話していると、あっという間に時間が過ぎていたことが……。
多くの人は「自分が好きなこと」について話していると、自然と心がほぐれ、楽しい気持ちになります。
すると、「この人と話していると、楽しい」「この人はわたしのことを知ろうとしてくれている」というポジティブな感情が生まれてくるのです。
この質問を通じて信頼関係を築くには、さらに深掘りすることが大切です。なぜ好きなのか?どんなことが特に好きなのか?次の会話のように、どんどん聞いていきましょう。
では、具体例をご紹介します。Aさんがマジック質問をする側、Bさんがマジック質問をされる側の会話です。
A「ところでBさんって、好きなことはなんですか?」
B「実は山登りが好きなんです」
A「そうなんですね!山登りのどんなところが好きなんですか?」
B「山登りっていっても、半日で登れる山とかが多いんですが、運動にもなるし、達成感もあります。実は、下山した後のビールがメインだったりして(笑)」
A「え~!そうなんですね、楽しそうです!わたしでも登れそうな山ってありますか?登りたくなってきました。学生時代以来だけど、大丈夫かな」
B「それなら、一度一緒に行きませんか?わたしの友人たちも喜ぶと思いますよ。年配の方もいるので、ゆっくりなペースでも大丈夫です」
【Bさんについてわかったこと】
- 山登りが好き
- 運動した後のビールが好き
- 気兼ねなく友人を紹介する性格
―マジック質問2:「継続していること」を聞く
「継続していること」を聞くと、相手の「過去から現在までの生き方」がわかります。何かを続ける過程で、失敗したり、くじけそうになったりすることもあるでしょう。
そんなときに、どう乗り越えてきたのか?なぜ頑張れたのか?そもそも、なぜ続けようと思っているのか?そうした質問をすることで、ほめポイントが見つかります。
「好きなこと」を聞くときと同じように、「なぜ」「何」を駆使して質問をしてみましょう。Aさんがマジック質問をする側、Bさんがマジック質問をされる側の会話です。
A「Bさんって継続していることはなんですか?」
B「毎日、英語の勉強は続けています。なかなか上達しないんですけどね」
A「そうなんですね。遅くまで仕事しているのに、すごいですね。なぜ英語の勉強を?」
B「実は、社会人向けのMBAに通いたいと思っていて、小論文のテストがあるんです。論文も英語なので、英語が必要なんです」
A「ますます頭が下がります。すごいなあ。継続する原動力ってなんですか?」
B「どうしても、書きたい論文があるんですよ。なんかあきらめきれなくてね」
【Bさんについてわかったこと】
- 英語の勉強を続けていること
- MBAに通いたいと思っていること
- あきらめきれない理由があること
―マジック質問3:「大切にしていること」を聞く
「大切にしていること」を聞くと、その人の「価値観」に触れられます。仕事やプライベートに限らず、大きな視野で質問をすると、相手の生きる姿勢をつかむきっかけも得られます。
A「Bさんって、大切にしていることや、大切にしてきたことはありますか?」
B「いざ聞かれると、いろいろあるけど……なんだろう?あっ!ブログを書いて自分の考えを整理することを大切にしています。日常に忙殺され、自分が何者かわからなくなるのは、嫌なんですよ」
A「そうなんですね。忙しい毎日ですもんね。どんなことをブログに書くんですか?」
B「そのとき、そのときで違うのですが、自分の心境を言葉にして残しておきたいんです。あとで一つひとつの出来事を鮮明に思い出したいタイプなんです」
A「なるほど!確かに忙殺されて、思い出せないことって多いですもんね。わたしもやってみようかな」
B「とても簡単ですよ。いつでも教えますよ」
【Bさんについてわかったこと】
- 自分の考えをしっかり持っていること
- 一つひとつの思い出を大切にしたい人
- 気軽にブログのやり方を教えてくれる
―マジック質問で、相手との距離がグッと縮まるBさんについて、こんな価値観が浮き彫りになってきました。
- 山登りが好き・運動した後のビールが好き
- 気兼ねなく友人を紹介する性格
- 英語の勉強を続けていること
- MBAに通いたいと思っていること
- あきらめきれない理由があること
- 自分の考えをしっかり持っていること
- 一つひとつの思い出を大切にしたい人
- 気軽にブログのやり方を教えてくれる
この情報をもとに、会話が膨らみそうなこと、もっと突っ込んだ質問をしてみたいこと、一緒にしてみたいことを今後の話題にしていくのです。そして、楽しい思い出を積み重ねていくと、良い関係になっていきます。
―マジック質問の内容を深めるコツ①話題を少しズラしてみる
マジック質問をして返ってきた答えに、あまり同意できない場合もあるはずです。
あまり同意できないような考え方でも、話題の角度を変えたり、少しズラしてみたりすると、相手の考え方に納得できるようになることもあります。
たとえば、「ピアノを弾くのが好きなんだけど、勉強が嫌い」という子どもがいたとします。大人からすると、「ピアノを弾くのもいいけど、しっかり勉強はしなきゃ、大人になってから困るよ」と諭したくなるかもしれません。
けれどもその気持ちをグッと抑えて、まずはこう伝えて、相手の考えを受け止めてみてください。
「そうなんだ、わかるよ。ピアノってどうやって音が鳴るか知ってる?そして、いつ生まれたのか?ショパンやバッハが曲を作った時代のことを知ってる?数学や力学、歴史などを勉強すると、ピアノがどうやって音を鳴らして、どこで生まれて、彼らがなんでこれらの曲をつくったのかがわかって、もっとピアノを好きになるかも。勉強って、自分が好きなことをさらに好きにさせてくれるんだよ」
「好き」を深掘りしていくと、すべての科目につながっていることをそっと教えてあげるのもいいですね。
②「新しいね」と受け入れてみる
相手が好きなこと、継続してきたこと、大切にしていることに、あなたがまったく興味を持てないこともあるでしょう。
しかし、あわてる必要はありません。少しだけでも理解し、共感できる方法があります。まず前提として、「人生は十人十色」です。
相手はあなたと違った環境で生まれ育ち、暮らしてきた人。だから、まったく相いれない考え方を持っていても、不思議ではないと思ってみてください。そして、興味が持てなくてもすべて「新しいね」と受け入れてみましょう。
「新しい」というのは、あなたがまったく考えもつかず、思いがけなかった、ということです。「新しい」と受け入れてみると、「確かにそうだな」と心から思えるのではないでしょうか。
すると、次のように質問を深める発想につながります。
「どこからその発想になったの?すごいアイデアだね」「発想方法や、出元は何?○○君のような新しい発想が、これからの時代本当に必要だよね」③エピソードや思い出について聞いてみるマジック質問をして返ってきた答えを、深掘りできそうにないときもあるでしょう。
「次の質問が浮かばない……」というときは、その答えにまつわるエピソードや思い出について聞いてみるのもひとつの手段です。
たとえば、次のようなフレーズを活用してみてください。
「その話にまつわる印象的なエピソード、教えてほしいな」「あなたにとって、その出来事はどんな思い出なの?」このように、具体的なエピソードや思い出について聞くことで、なぜ相手のいまの考え方や人柄が形づくられたのか、本質にたどり着くこともあります。
アクション3:100点ほめ~相手の生き方をすべて肯定する
ここまでは、人間関係を構築し、ほめる材料の集め方をお伝えしました。いよいよ100点ほめです。100点を目指すなら、生き方すべてを肯定し、ほめます。
生き方をすべて肯定するときは、「過去」と「現在」と「未来」、「その人の人生において大切な人」や「乗り越えてきた困難」などをその人の半生を振り返るような気持ちで、丁寧にほめていくのです。
日本人はほめられると、「いや、わたしなんて」と遠慮してしまいます。だから、相手の遠慮を跳ねのけるためにも、現在だけではなく、相手の過去と未来、その人の人生において大切な人や乗り越えてきた困難など、その人のすべてをほめることで「遠慮」できなくしてしまうのです。
たとえば、わたしの友人の経営者T社長は、ドラマや映画制作などの仕事をしています。あるときわたしは、こんな言葉をかけました。
「Tさんって、よくこのビジネス見つけましたね、この切り口は本当すごい。みんな言っていますよ。ニッチに特化することが経営のセオリーですが、このビジネスで年商10億作るのは、すごいです」
Tさんは「いや、そんなことないですよ」と照れくさそうに答えました。それでもわたしは、こう続けます。
「よく、このビジネスモデルをつくりましたね。ゼロから人脈、サービス内容、業界で一目置かれる存在になるには、相当の努力や半端ない気配り、そして生まれ持ってのビジネスセンスもあったのだと思います。そして、社員さんがとても良い人ばかり、社員を見れば社長がわかるといいますが、これから本当に楽しみですね」
このように、現在の状況だけではなく、相手の過去や乗り越えてきた困難まで、すべてを肯定し、ほめると、その迫力に納得してくれます。
「100点のほめ方」を成功させるコツ
相手のことを「きちんと聞く」ためには「質問」だけでなく、雰囲気づくりのためのテクニックも重要です。
3アクションを実践するとき、次の「人の心をつかむ仕草」を行うと、相手がさらに進んで話をしてくれるようになります。
―相手が進んで話をしてくれる人の心をつかむ仕草①笑顔
「なぁんだ」と思われるかもしれませんが、相手の話を聞くときは、必ず笑顔を意識してください。笑顔には、いくつか種類があります。
- ニコニコ顔……頬が上がり、自然と目も細くなる笑顔
- 微笑み……口を軽くキュッと結び、口角を上げる笑顔
- 爆笑……オーバーリアクション気味に、大声で笑う顔などなど……。
基本は「ニコニコ顔」です。あとは状況に応じて「微笑み」や「爆笑」を活用してください。
たとえば、相手が経営者や管理職だと、緊張する方も多いでしょう。そんな場合は「頬笑み」で大丈夫です。無理にニコニコ顔をつくる必要はありません。優しい顔、穏やかな口調を意識してください。
そして相手が、明らかに笑いにつなげているなと感じる場合は、爆笑すればいいのです。大声を出すほどに笑うことで、関係性が良くなることも多々あります。
笑顔が苦手だという方は、朝、顔を洗うとき、夜、歯を磨くとき、鏡に向かって口角を上げて、笑顔の練習を習慣化してみましょう。
わたしは家や会社の鏡に「笑顔製造器」とシールを貼っていたときがありました。鏡の用途を身だしなみを整えるためだけでなく、「笑顔をつくる器械」と考えたのです。
②目を見る
昔から「目は口ほどに物を言う」といいます。アイコンタクトには、相手に好意や信頼を伝える力があります。つまり「目を見る」ことは、次のメッセージを態度で示すことです。
- あなたの話を聞いています
- あなたを理解しようとしています
ただし、あまりにじっと見つめすぎると、相手が圧迫感を覚えることもあります。
だから、ときにはメモを取ったり、手元の資料を見たりして視線を外し、お互いにとって心地良い距離感を保ちましょう。
③オウム返し
会話をする際、「質問がとっさに思い浮かばない」「何を聞いたらいいかわからない」といったこともよくあるでしょう。そんなときは、相手が言ったことを、そのままオウム返ししてみることもいい方法です。
たとえば、「最近、若手社員が何を考えているか、わからないんです」と言われたとします。
そのときは、こう返します。
「そうなんですね。確かに、若手社員は何を考えているかわからないですね」すると相手は、「自分の言った言葉を理解してもらえている」と安心して、そのまま話の続きをしてくれるはずです。
ある心理学の研究によれば、姿勢や仕草、声のトーンを相手に近づけると、相手はその人に信頼を抱きやすくなるといいます。
そして相手が話した内容を、そのまま自分の言葉として返答すると、「この人は、自分の言うことを真剣に聞いてくれている」とポジティブな印象を抱くのです。
「上司にすごく怒られてしまって……明日仕事行きたくないなぁ」と同僚から言われたら、無理にアドバイスを絞り出す必要はありません。
まずは、
「そんなに怒られたんだ。確かに会社へ行くのが嫌になるよね」とオウム返しにしてみることが、次の会話につなげるための第一歩。
そして、お互いの関係を深めるためのきっかけになります。
④メモを取る
話を聞きながら、メモを取るのもおすすめの方法です。情報を「見える化」することで、考えを整理することができます。解決法が見えることもあるでしょう。そしてメモは、自分だけのために取るものではありません。
メモを取りながら話を聞くと、相手は「この人は、自分の話を真剣に聞いてくれている」と安心し、「自分が悩んでいることを、親身になってアドバイスしてくれるかもしれない」という期待感を抱きます。
たとえば、あなたが上司との定例面談に臨むとき、上司がペンも資料も持たず、あなたの報告をただ聞いているだけだったらどうでしょう。
「結局、後で要点をメールしなきゃいけないのか」「うんうんうなずいているけど、本当にわかってる?」と、不信感を抱くのではないでしょうか。
あなたの目を見ながら、手元でメモを取り、「要するに、これはこう、これはこういうことだよな?」と尋ねてくれる上司なら、きっと「自分のことを真剣に考えてくれているんだな」と感じるでしょう。
このように、「メモを取る」ことで示されるのは、「聞く姿勢」なのです。これらの仕草は、あくまでも基本的な動作です。
相手との関係性や距離感を測りながら、人の心をつかむ仕草を臨機応変に組み合わせ、相手に対して一貫して「きちんと話を聞いています」「あなたを理解しようとしています」という姿勢を示してください。
そうすれば、相手の心は少しずつほぐれて、喜んで自分から話をしてくれるようになるでしょう。現在の状況だけでなく、相手の過去や乗り越えてきた困難まで、すべてを肯定し、ほめる
「100点のほめ方」をつくる3つのアクションは、瞬発力に頼らず、手順通り実践する
「100点のほめ方」をつくる3つのアクションは、どんな人やどんな場面、どんな状況に対しても、応用することができます。
ただ、応用するためには、基本を身につけることが重要です。まずは、この3つのアクションを手順通りに、さまざまな人との会話で意識して使ってみてください。
はじめのうちは、頭の中でこの3つのアクションが定まりきっていないため、「あれ、次に何を聞けばいいんだっけ」と頭が真っ白になってしまうかもしれません。
それなら、手帳など普段よく目にする場所にこの3つのアクションを書き出して、何度か口の中で唱えてみてもいいでしょう。
とにかく、これを基本の3つのアクションとして、身につけることが最初のゴールです。
―相手を俯瞰した目線で理解する
3つのアクションを通じて、相手の考え方や価値観を理解し、共感しようとする際、「相手を俯瞰した目線になる」ことは、相手を理解する大きな一歩になります。
相手が好きなこと、継続してきたこと、大切にしてきたことを「わたしも好きになろう」「わたしもやってみよう」と考えることは、少しハードルが高いように感じるかもしれません。
あなたと相手はそれぞれ違う人間ですから、完全に同じ目線になって、思いを一致させたり、完璧に共感したりすることは難しいものです。
しかし、「相手が好きなことを、わたしは尊重しよう」「相手が大切にしてきたことを、わたしも大切にしてみよう」と考えることなら、きっとできるのではないでしょうか。
イメージするなら、「ドキュメンタリー番組のナレーター」みたいな感覚です。
相手を俯瞰して眺めながら、「〇〇は地道にこれを続けてきた。それは、誰にも真似できないことだ」「〇〇はそのとき、楽しそうに〇〇について話していた。それほど没頭できることを見つけるのは、そうたやすいことではない」……といったように。
そうすればきっと、相手が好きなこと、続けてきたこと、大切にしていること自体を、完全には理解できなくても、「なるほど、面白い部分があるんだな」「こういう考え方がステキだな」と思えるのではないでしょうか。
一人ひとり、生きてきたストーリーは違います。そのストーリーを彩るのは、ほめる側の視点次第なのです。
第2章のまとめ
●「100点のほめ方」をつくる3アクション
【アクション1】関係性の土台をつくる
【アクション2】「ほめポイント」を見つける
【アクション3】100点ほめ
●ほめるためには、「聞く」を大切にして、相手のことを知る
●相手を知れば、自分との共通点を探せるので、その共通点から「ほめポイント」を探す
●相手への理解を深める3つのマジック質問
【マジック質問1】「好きなこと」を聞く
【マジック質問2】「継続していること」を聞く
【マジック質問3】「大切にしていること」を聞く
●相手が進んで話をしてくれる人の心をつかむ仕草
①笑顔
②目を見る
③オウム返し
④メモを取る
●「100点のほめ方」をつくる3アクションは、手順通りに丁寧に実践する
column2相手の心を満たす「ほめシート」
直接ほめ言葉を言うのは、なんだか気恥ずかしい……。
家族や友人はまだしも、会社の部下や同僚など、普段、あまりほめ合うことのなかった人に対して、その気持ちを伝えることは、難しいのも確かです。
そんなときに活躍するのが、「ほめシート」です。ほめシートなら、面と向かって言いにくい言葉でも、落ち着いて素直に書くことができます。
とっさには思い浮かばなくても、後から思い返すことで「ほめること」「感謝したいこと」を伝えることができるのです。
「ほめシート」は、第1章でも解説した、人の自尊心を満たすための三大欲求、
- 「ありがとう」欲求(自己重要感)……自分を大切な存在として認めてほしい
- 「すごいね」欲求(自己有能感)……自分を有能な人として認めてほしい
- 「好きだよ」欲求(自己好感)……ほかの誰かに好かれたい
この3つを満たせるように、A4シート1枚に、「ありがとう」か「成長・すごい・好感」のどちらかひとつを50文字以上記入できるようになっています。そしてもうひとつ。
相手に対してこれから期待していることを、「来月・将来」に分けて、具体的に記入しましょう。
ほめシートを書くとき、はじめのうちは相手のほめるところが思い浮かばず、50文字も書けないかもしれません。
けれどもまずは【アクション1】関係性の土台をつくると、【アクション2】「ほめポイント」を見つけるを参考に、相手のことをよく観察し、会話をしてみてください。
すると、少しずつほめ言葉が増えてくるはずです。ほめシートの活用方法はさまざまです。
とある会社では、毎月1回の「ほめる会議」のときに店長がほめシートを読み上げて、スタッフへ手渡しし、周りのみんなは拍手するようにしています。
はじめのうちは照れくさがる人が多かったようですが、その習慣が定着したら、涙ぐむ方もいるようです。
ほかの会社では、ほめシートをバックヤードに貼り出したり、給与明細に入れたりしているところもあります。
わたしも部下たちへ毎月ほめシートを贈っているだけでなく、2、3か月に1回ほど、妻にも渡しています。ほめシートは、会社だけでなく、家族や大切な人に対しても活用できるものです。
思いを形にすること。言いそびれたほめ言葉や感謝の言葉は、後悔につながるといいます。人生は一瞬ですから、ほめシートを渡してみてほしいのです。
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