MBOSの実務は「Plan→Do→See」MBOSとは何か?そうメンバーに聞かれたら、職場のリーダーはどう答えたらいいのだろうか。
一人ひとりが、ギリギリ背伸びしたチャレンジ目標の「Plan(計画)→Do(実行)→See(ふりかえり)」を、意欲的、かつ自律的に推進し、そのプロセスで、仕事の面白さなどの働きがいを実感すること。
これがMBOSの実務である。
この章ではチャレンジ目標の「Plan(計画)」について解説するが、それは納得のいく目標をうまく作り出すための旅である。
[MBOSのプロセス]●Plan=計画Planとは自分の思いが込められた「チャレンジ目標」と、目標達成の裏付けとなる「達成手段」を決めること。
●Do=計画の実行DoとはPlanで立てた目標達成手段をやり切ること。
●See=仕事のふりかえりSeeとは仕事のふりかえり作業であり、2種類の内容を含んでいる。
1つはPlanとDoの活動プロセスを振り返り、次期の目標達成手段を探ること。
2つめは、目標の達成度や難易度、目標達成プロセスでの努力度を評価して、能力開発プランにつなげることである。
チャレンジ目標は個人が勝手には決められない働く人、一人ひとりが納得のいくチャレンジ目標を設定するための旅路の出発点は、目標設定の仕組みの理解である。
MBOSは「目標の連鎖システム」として運用する。
これが目標設定の大前提であり、個人目標であっても、個人が好き勝手に決めるわけにはいかない世界だ、ということを意味している。
個人のチャレンジ目標は「所属する職場の今期目標」に沿ったものでなければならないし、職場の今期目標は「その上位部門の今期目標」と連鎖したものになっていなければならない。
さらに上位部門の今期目標は「部門の中期(3〜5年)経営計画」との連動が必須であり、部門の中期経営計画にはそのまた上の「全社中期経営計画」との連動が要求される。
このように、目標設定に際しては制約条件としての上位計画(目標や方針)が存在し、それを無視した目標づくりが不可能な状態になっている。
働く人々はその制約条件を考慮に入れて、ギリギリ背伸びした、具体性の伴ったチャレンジ目標を設定する。
それがMBOSの目標設定の実務である。
やらされ感を払拭するための5つのステップ目標の連鎖システムは、経営陣の思いを末端の従業員一人ひとりにまでつなぐ仕組みであり、会社や職場の一体感や経営の効率化にとっては不可欠な存在である。
しかし、うまく運用しないと、多分に「やらされ感」が伴う仕組みでもある。
やらされ感の強い目標では「本気になって達成しよう」という意欲は湧かず、目標達成が危うくなる。
達成できなければ、会社も働く人々もハッピーな気分には浸れない。
だから、やらされ感を薄めるための何らかの工夫と努力がどうしても必要だ。
では、職場のリーダーは、具体的に何をすればいいのだろうか。
次の図表にある〜のステップをメンバーともに踏むことである。
まず会社や部門の中期経営計画(中長期のビジョンと戦略)を理解して、そのうえで職場や個人の中長期的な役割(ミッション)を考える。
この作業により、自分の職場や仕事の中長期の位置付けと期待される役割とが鮮明になるだろう。
その中長期の役割と今期の部門計画とを重ね合わせて、今期の職場の具体的役割を描き出す。
それが職場の貢献領域一覧表であり、その中から主要業務を選んで職場目標に落とし込み、さらには個人目標へとつないでいく。
このような一連のステップをメンバーとキャッチボールしながら進めれば、メンバーのやらされ感はある程度払拭されるものと思われる。
MBOSはオープン・システムで展開する上記からのリーダーとメンバーとのキャッチボールは、一対一の面談ではなく、職場全体のミーティング形式で行うのが効果の高いやり方である。
職場のメンバー全員で「部門の中期経営計画にはどういう意図があるのだろうか?」「この職場は何を目標にすべきか?」、「どうやって達成するのか?」などをワイワイガヤガヤと話し合うのである。
それは「真面目な雑談」と呼ばれるコミュニケーション(『なぜ会社は変われないのか』/柴田昌治/日本経済新聞社/1998年)であり、ホンネで、腑に落ちるまで語り合うのが特徴である。
メンバー全員が納得して、その達成に責任を感じるようになればしめたものだ。
みんなが「腑に落ちた!」と感じ、「目標達成に向けて役割をまっとうするぞ!」という前向きな思いで受け入れられるような目標を立てるためには、真面目な雑談スタイルのミーティングが不可欠なのである。
多くの会社のMBO運用マニュアルには、「目標設定は個人面接で……」と書かれているかもしれない。
しかしそれにとらわれることはない。
確かに、個人面接にも利点はある。
リーダーがメンバーに関心と愛情を持ち、真摯な態度で面談すれば、メンバーの責任感や意欲は刺激されるだろう。
また、一対一でしか話せないこともある。
節目のセレモニーとしても個人面接は有効だ。
だから、個人面接は否定しない。
しかし、個人面接は「閉ざされた世界」である。
リーダーとメンバーとの二人で、メンバーの目標を囲い込む。
一種のクローズド・システムであり、それだけでは、メンバーの職場目標に対する当事者意識が希薄になり、目標達成手段のアイデア出しも難航してしまう。
職場のチームワークも育たない。
やはり、みんなでワイワイガヤガヤという場がどうしても必要だ。
お互いが情報を持ち寄り、知恵を出す。
他者の目標にも前向きに干渉し、協力を約束する。
適度なライバル意識も醸成する。
そういう場をできる限りたくさん用意して、節目の押さえとして、個人面接を実施する。
それが、本書が提唱する「MBOSのオープン展開」である。
[ステップ]中期経営計画(中長期のビジョンと戦略)をよく理解するリーダーは部門のビジョンや戦略をうまく伝えようここからは、目標づくりのためのオープン展開のあり方を前述の「チャレンジ目標づくりの流れ」に沿って解説する。
ステップにおけるリーダーの役割は、「部門の中期経営計画」や「全社の中期経営計画」を説明し、メンバーの質問に答えることである。
そのために、まずリーダーがやるべきは、リーダー自身の中期経営計画の中身や意義の理解である。
以下の囲みはその際に必要な目のつけどころであり、これらを参考に、図表を使ったり、あるいは「日頃、部門長はどんなことを強調しているだろうか?」と質問したりするなどの工夫をし、メンバーが「なるほど、そういうことか」と感じるようなミーティングを仕掛けてほしい。
リーダーが知っておきたい中期経営計画のツボ中期経営計画とは、顧客満足の実行計画である中期経営計画は「ビジョン」と「戦略」を基本フレームに策定する。
ビジョンとは「3〜5年後のなりたい姿」を描いたものであり、戦略とはビジョンの裏付けとなる「3〜5年間の重点実施事項」や「資源配分のあり方」を示したものである。
ビジョンと戦略の具体的な内容は、各社各様で、これが正解だというものは存在しない。
しかし、絶対外してはならない押さえどころが1つある。
それは「売上」に関するビジョンと戦略である。
売上がなければ、利益は出ず、給料も税金も払えないからだ。
では、売上とは何なのか。
「顧客満足の結果」である。
どの企業も、何らかの満足を顧客に提供するから、売上という果実が手に入る。
だから、顧客満足は徹底的に追求すべき経営の最重要テーマである。
しかし、思いつきや場当たり的な顧客満足では、あまりにも効率が悪すぎる。
組織能力としての蓄積もままならない。
もっと、計画的、かつ組織的な顧客満足への取り組みが必要だ。
そういう問題意識にもとづいて、顧客満足の「中長期(3〜5年)のあり方」と「実行計画のあらすじ」を描いたものが事業戦略である。
その事業戦略を中心軸に、中期経営計画は組み立てられる。
もちろん、中期経営計画には、適正利益の確保に向けたコストダウンや人材育成なども戦略として盛り込まれるが、それらは事業戦略と連動してこそ意味がある。
職場のリーダーはこのような視点で、中期経営計画を捉えること。
それは、営業や製造部門のみならず、経理や人事部門の人たちにも求められる基本的な態度であり、中期経営計画の共感的理解のスタートラインである。
経営陣は、以下の3つの要素を総合的に検討し、事業戦略を決定する。
環境変化の予測に注目する1番目が「環境予測」である。
たとえば、平成24年1月の国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、日本では人口の高齢化が進行し、65歳以上の人口割合は「現在の約23%」から平成72(2060)年には「約40%」に上昇するという。
そのような超高齢化社会は医療、介護、食生活などの分野に、膨大なビジネス・チャンスを作り出すであろう。
半面、働き盛りの人たち向けのマーケットは縮小し、スケール・メリットが頼りの、規格品を大量生産するような事業は衰退するだろう。
このように、経営陣は環境変化がもたらすビジネスチャンスや脅威を読み取って、将来のわが社の顧客の可能性を検討するのである。
競争に負けないための「差別化的強み」はあるか?しかし、環境変化に対応するだけでは、戦略として不十分だ。
もう1つ、「差別化」という要素が絡んでくる。
平たく言えば、「わが社の強みは何か」に対する答えである。
それも、競争相手が持っていないもの、あるいは彼らの持っている強みを凌駕する強みでなければならない。
仮に今現在、差別化できるような強みがなくても悲観には及ばない。
時間をかけて種まきをすればよい。
将来、何を強みにできるのか、そこに焦点を合わせて検討するのが戦略策定である。
筆者が関わりを持つある中小企業では、歴代社長が「ワンポスト・ひと技術」の発想で、強み探しに取り組んだ。
同社は金属製品製造業であり、それゆえに技術力が勝負である。
歴代社長は、「自分の在任期間中に、自分の責任において、次世代技術を最低1つは開発する」というミッションを自らに課して仕事をし、見事にそれをやり切った。
現任社長も次世代技術の開発にチャレンジしたが、自社単独の強みがなかなか見つからない。
人脈を頼りに、いろいろな人の意見に耳を傾けた。
会社に戻っては、一人静かな時間を持ち、徹底的な「一人対話」も試みた。
そうした苦悩の中から、「他社の強みと自社の強みを結合し、〝新たなわが社の強み〟を作り出す」という強みづくりの方法を発見し、現在、その実現に向け、さまざまな努力を払っている。
努力が成果を生むためには、長い時間とさらなる努力とが必要だが、競争相手に負けないための方向性は見えてきた。
あとは、全社員一丸の実行あるのみである。
このように、わが社の強みを構築すること。
それが差別化であり、戦略が具備すべき2つ目の要件である。
ロマンを感じ取ろう戦略策定に際しては、環境変化と差別化は必須であるが、それでもまだ不足がある。
さらにもう1つ、「働く人々のロマン」が必要だ。
デパ地下で、惣菜を製造販売している会社がある。
社長は女性であり、「忙しいお母さんの代わりに、温かいぬくもりが感じられる出来立て惣菜をお客様に提供したい!」という強い思いを抱いて、名古屋の地で商売を開始した。
その切なる思いは、幹部社員や店長にも共有され、全国の百貨店に多店舗展開するに至った今日では、会社の存在理由そのものになっている。
そういう「事業に対する思い入れ」がロマンであり、「ロマンの具現化」という切り口で戦略が策定されるのが望ましい。
ロマンは、働く人々の意欲の源泉として機能するからである。
[ステップ]職場と個人のミッションをみんなで確認しよう職場のミッションを話し合う部門の中期経営計画(ビジョンと戦略)をメンバー全員が理解したら、次にリーダーが仕掛けるのは、「職場ミッションの明確化」の議論である。
職場ミッションとは、中長期的に見た職場の役割と担う責任のことだ。
向こう3〜5年間を見渡して、この職場が貢献すべき対象は、いったい、「何」なのか、「誰」なのか、あるいは「どこ」なのか。
貢献対象を固有名詞に近い状態で把握して、その貢献対象に中長期にわたって「提供すべき職場の仕事」を、部門の中期経営計画と絡めて生き生きと描き出すこと。
これが職場ミッションの明確化のストーリーであり、それに則って、リーダーとメンバーが真剣な議論を展開すれば、お互いの思いのこもった職場の基本的な役割の共有化が可能になる。
また、役割の実践意欲も刺激されるだろう。
絶対に外せない顧客への貢献職場ミッションについて話し合う際に、絶対に外せない貢献対象が2つある。
「お客様」と「適正利益の確保」である。
基本的に、どんな職場も、何らかの形で両者に貢献することが求められているからである。
とりわけ、お客様への貢献は重要だ。
お客様が商品を買ってくれなければ、何も始まらない。
究極的に会社を支えているのはお客様なのである。
それを忘れずに、全職場が顧客への貢献を意識すること。
それが職場ミッションのキモである。
個人ミッションを作るこのようにして職場ミッションの定義ができたら、それをもとに個人のミッションを考える。
次にあるのは、職場ミッションと個人ミッションの記入用紙である。
こうした用紙を用意して、職場で話し合いながら空欄を埋めていくといい。
リーダーミッションリーダーの場合、リーダーとしてのミッションを考える。
「なぜ、組織にリーダーが必要なのか」というそもそも論と職場ミッションの内容とを絡ませて、職場のリーダーとしての中長期の役割を描き出す。
このときも、職場ミッションと同様で、貢献対象が手掛かりとなる。
リーダーの貢献対象は、以下の3つである。
まず、リーダーは部門経営者など、上位者の分身であり、上位者に貢献しなければならない。
いろいろな貢献が想定されるが、いちばんの貢献は上位者の方針の率先垂範(身を以って率先して実行すること)だと筆者は考える。
同時にリーダーは、メンバーを通して業績を上げる人でもある。
当然、メンバーも重要な貢献対象だ。
「もっと、自分の強みを認めてほしい」、「仕事に行き詰まったときは、親身になって助けてほしい」などのニーズをメンバーは持っている。
さらに、リーダーは「職場」という組織に貢献しなければならない。
職場が1つの有機体として機能するためには、チームワークが必要であり、その強化に向けて、旗振り役を果たすのがリーダーの役割である。
担当業務ミッション一方、メンバーは個人として、「担当業務ミッション」と「チームワークのためのミッション」の2つを考えることになる。
担当業務ミッションとは、自分が担当している業務の中長期的な役割であり、現在の担当業務を今後も担当するという前提で考える。
たとえば、同じ営業部に所属していても、各々の営業マンは異なった客先を担当し、客先特性もニーズにも違いがある。
もし、自分がこのまま将来も継続担当するならば、お客様とどう向き合っていくのか。
それを考えるのが、営業マンの担当業務ミッションである。
また、職場によっては、営業マンをサポートする営業庶務という仕事に従事する人がいる。
その人たちには、営業部のミッション(職場ミッション)に加えて「営業庶務としてのミッション(個人の担当業務ミッション)」が必要だ。
営業庶務ミッションの貢献対象は顧客満足の第一線で体を張っている「営業マン」であり、営業マンが営業庶務に求めるニーズを理解し、応えなければ価値ある仕事とは言い難い。
逆に、「規則はきちんと守ってほしい!」というような営業マンへの注文もあるだろう。
それを上手に伝えて、効率的な組織営業の展開に貢献することも営業庶務の重要な役割である。
なお、リーダーがプレイング・マネャーである場合は、リーダーはリーダーミッションに加えて、担当業務ミッションも記入するようにする。
チームワークのためのミッションメンバーの個人ミッションの2つ目は、チームワークのためのミッションである。
組織は分業と協働の仕組みであり、メンバーには「自分が請け負った分業の完全遂行」と「職場のチームワークづくりへの積極的な参画」とが求められている。
前者は担当業務ミッションとしてすでに定義したが、それにもう1つ、チームワークへの貢献というミッションを付け加えることが必要だ。
両方を合わせて、メンバーの個人ミッションが完成するのである。
草分け企業の成功体験に学べ職場ミッションや個人ミッションの議論に時間を割くのは無駄ではないか?そういう意見も一部にはあるが、ミッションの明確化はMBOSの草分け企業が苦労の末に編み出した「MBOSの運営ノウハウ」であり、試しに一度やってみてほしい。
MBOSの原典、『ThePracticeofManagement(現代の経営)』(ドラッカー/1954年)は、キリンビール(株)の社員が留学のお土産として日本に持ち帰り、学者たちの協力を得て翻訳の初版本が出版されたという。
出版を契機に、多くの日本企業がMBOSの実践に取り組んだ。
その1つに、住友金属鉱山(株)がある。
同社は、昭和37年から39年にかけて、業績悪化に対処するための人員削減策を実施して、8100名の従業員を5000名に圧縮した。
いわゆる人的リストラである。
このままでは、縮小均衡に陥ってしまう。
そう考えた当時の社長は、人員削減と並行して、もう1つの指示を出す。
5000名の人員で8100名分の成果が得られるような「新しいマネジメント」の研究だ。
社長から手渡された『現代の経営』を手掛かりに、勉強会が実施され、「ドラッカーの主張は何なのか?」、「わが社として、どう具現化すればよいのか?」などを徹底的に議論した。
経営学の学者にも相談した。
社内の現場でも試行錯誤が繰り返され、最終的には「目標による管理制度」という従来とはまったく異なったマネジメントの仕組みを完成する。
それがうまく機能して、経営危機からの脱出の一助になったという(21世紀への企業の人間的側面・座談会/フジ・ビジネス・レビュー第13号/1997年)。
ミッションの意味づけ同社の編み出した目標による管理制度の特徴は、「ミッションにもとづく目標の連鎖体系づくり」であり、そのミッションの「意味づけのコミュニケーション」がうまく機能したのが最大の成功要因ではないか、と筆者は推測する。
意味づけとは、「そのことは自分にとってどのような意味があるのか」と自問自答を繰り返し、自分なりの答えを見つけ出す行為である。
それは大変な思考作業であり、一人でやると、「まぁ、こんなものか」と適当なところで手打ちをし、「自分への言い聞かせ」が中途半端に終わってしまう。
だから、みんなでワイワイと語り合うプロセスが必要なのである。
語れば必ず反応があり、反応を手掛かりに、自問自答を繰り返す。
そういう意味づけのコミュニケーションを、社長以下末端まで組織ぐるみでとことんやり切れば、当事者の目標に対する責任感と納得感とが醸成され、達成意欲も湧いてくる。
苦しい事態に直面しても何とか頑張れる。
必死になって目標達成活動に取り組めば、仕事の面白さも実感できる。
その繰り返しの結果として、業績が向上し、経営危機からの脱出に成功した。
そう筆者は捉えている。
[ステップ]部門の今期計画をよく理解するいよいよ、今期の話をしようここまでで、中期経営計画の理解に始まり、中長期的な職場ミッションづくり、個人ミッションづくりが完了した。
これからは今期(年度レベル)の話になる。
ここでも、部門→職場→個人の流れで話し合う。
まず、リーダーが中心になって部門の年度計画の理解からスタートする。
とくに重要なのが、年度計画の中心にある「部門の年度目標」の咀嚼である。
部門の年度目標は、「戦略目標」と「日銭目標」との2つに大別される。
戦略目標は部門の中期経営計画の中核をなす戦略と連動した目標であり、日銭目標は「売上や利益目標」、あるいは「ルーチンワークの改善・改良目標」などの年度必達目標のことだ。
それらの内容を正しく理解したうえで、自分の職場ではどんな貢献ができるのかを考えて話し合う。
[ステップ]職場の今期の貢献領域一覧表を作成する職場ですべきことをすべて洗い出す!ステップでは、部門の年度目標に対してこの職場が貢献すべきことは何なのか?職場ミッションと絡めて考える。
次のような「職場の貢献領域一覧表」を用意してワイワイガヤガヤやりながら、記入していくといい。
戦略業務まず、「戦略業務の洗い出し」である。
それは部門の年度戦略目標との連動で、この職場が今期にやるべき業務、あるいはやりたい業務の明確化だ。
もちろん、中期経営計画をもとに考えた職場ミッションとの合致も必要である。
たとえば、「〇〇業界に狙いを定めた、新規顧客の開拓」という中期戦略に対応し、「アタック先キーパーソンとの信頼関係の構築」という部門の年度目標が設定されたとする。
それを受けて、「顧客への問題解決サービスの提供」という職場ミッションを掲げるこの職場では、「新製品説明会などを企画して、A社キーパーソンのB常務のわが社に対する関心を喚起する」という具体的な戦略業務に落とし込み、それを職場のやるべき仕事とするのである。
このような仕事は、将来に対する種まきであり、今年の売上や利益の増減にはほとんど影響を及ぼさない。
しかし、中長期の観点では、きわめて重要な仕事である。
今、地道にコツコツと種をまくから、3年後に刈り取れる。
種まきを怠れば、餓死に近い状態が待っている。
そういう性格を持った業務であり、決して疎かにできない重要な仕事である。
日銭業務戦略業務に対して、「部門の日銭業務」はもっと生々しく、現実的である。
株主や銀行と約束した売上や利益目標の達成が部門経営には重くのしかかり、その必達要請が現場には飛んでくる。
製造部門には「コストダウン目標」が、営業部署には「売上目標」が、否応なしに天から降ってくる。
また、間接部門には、法律改正などに伴う「環境変化に対する応急措置」が緊急業務として課されることも稀ではない。
いずれも、職場ミッションに照らせば、この職場の仕事であり、拒否が許されない「必達業務」である。
手抜きをすれば、たちまち会社がピンチに立たされる。
商法で定められた決算にも支障をきたす。
部門の日銭目標と連動した職場の日銭業務も、戦略業務と並ぶ、重要な「自職場の役割責任業務」なのである。
部門目標と直接連動しない業務をどうするか職場の貢献領域一覧表には、部門目標と連動した戦略業務と日銭業務のほかに、その他の業務という欄を設けてある。
ここには部門目標とは直接連動しないが、職場ミッション上、この職場がやるべき業務を記入する。
たとえば、営業マンが入手した競争相手の動向や顧客の購買行動の変化などの情報を、リアルタイムで関連部署に提供する。
これは営業部隊にとっての職場ミッションであり、たとえ部門の年度目標に含まれていなくても、営業のやるべき業務に違いない。
そういう類いの仕事を職場ミッションに照らして洗い出すのである。
このように、職場には、部門目標と連動した戦略業務と日銭業務、それに加えて部門目標とは直接的に連動しない職場ミッション上の業務という3つの業務が課されている。
そのすべてを整理したものが職場の貢献領域一覧表であり、この表をみんなで作りながら、「これらをすべてやり切ることが、我々の職場の役割と責任だ!」とリーダーとメンバーとで確認し合うこと。
それがこのステップのアウトプットであり、次に控える「職場と個人の年度目標(チャレンジ目標)」づくりをよりよいものにするための準備である。
[ステップ]今期の職場と個人の目標(チャレンジ目標)を決定する職場と個人の目標を作るここまで随分長い道のりを要したが、ここからはいよいよ今期の職場目標と個人目標づくりに着手する。
これまでの話し合いでメンバーは、部門経営者の思いや職場の業務の必要性をかなりの程度感じ取り、職場目標の設定に向け、モチベーションを高めているはずである。
その意欲と責任感の高まりを背景に、リーダーは職場目標の設定ミーティングを実施する。
その際は、個人目標の設定ミーティングも同時並行的に開催する。
職場目標は、その全部がリーダーとメンバーの個人目標にブレークダウンされるからである。
職場目標を決めようと思えば、それを請け負うメンバーの意向は無視できない。
メンバーの力量を勘案したブレークダウンも不可欠だ。
そこで、職場の目標づくりと個人の目標づくりはお互い、行ったり来たりしながら行うのである。
煩雑さの伴う作業ではあるが、きちんとやり切れば、チャレンジ目標の納得設定が実現する。
職場の目標テーマの達成基準や達成手段を考える過程が、そのまま個人の目標づくりの過程でもあるのだ。
ミーティングに必要な資料は、以下の3つである。
職場の貢献領域一覧表ミッションシート(職場ミッションと個人ミッションを記入したもの)職場と個人のチャレンジ目標シートは前ステップで得られた成果物であり、は今回新たに作成するシートである。
チャレンジ目標はギリギリ背伸びしたもの目標設定ミーティングではまず、リーダーがチャレンジ目標の必要性をメンバーと確認し合うことからスタートする。
チャレンジとは「ギリギリの背伸び」を意味しており、仕事の質的向上や量的拡大、あるいは未知の領域への取り組みなどがそれに該当する。
また、高いレベルの維持というチャレンジもある。
たとえば生産現場なら、「労災事故ゼロの状態を将来にわたって維持し続ける」というのもチャレンジである。
「わかりました」「チャレンジ目標は難しい目標で、達成には相当の困難が付きまとうということですね」「しかし、そんなシンドイ仕事は、できれば避けて通りたい。
それが私のホンネです」「なぜ、そうまでして、チャレンジに拘るのか。
私にはわかりません」そう、メンバーが聞いてくるかもしれない。
そんなとき、リーダーはどう答えるか。
「チャレンジ目標の必要性は以下の2つである」と答えたい。
競争に勝つためのチャレンジ目標1つは、「競争優位」のためである。
競争相手よりも難度の低い目標で仕事をすれば、競争に勝てるわけがない。
火を見るよりも明らかな事実である。
だから、競争相手を意識したチャレンジという視点が盛り込まれた戦略目標を部門は設定し、職場目標や個人目標へとつなぐのだ。
チャレンジ目標は働きがいを促進するチャレンジ目標の必要性のもう1つは、「能力開発」である。
ギリギリ背伸びした目標の達成プロセスは一種の修羅場であり、そうした修羅場体験が、職場や個人の問題創造能力や問題解決能力の開発を促進するのである。
自分の実力が飛躍的にアップしたと感じられるのは、多くの場合、「一見、無理だよねぇ〜」というテーマや未経験の領域にチャレンジし、成し遂げたときではなかろうか。
筆者のような教育コンサルタントの仕事でも、同じレベルの研修を十年一日のごとく繰り返していたのでは、ある種の習熟効果は得られても、さなぎが蝶々に脱皮するような自己成長は難しい。
実力アップのためには、自分の能力を超える仕事を引き受けて、七転八倒の苦しみを味わいながら、しかしその状況も楽しみながら、次第に自分なりのコンセプトやノウハウを固めていく、そういうプロセスが絶対に必要だ。
それがあるからこそ、自分の潜在的可能性が実感でき、クライアントのハッピーにも貢献できる。
反対にやさしい目標では、習熟能力は高まっても、顧客満足の創造や執念と呼ばれるような実践的なビジネス能力は育たない。
能力開発が停滞すれば、仕事の面白さの実感や自分の持つ潜在的可能性の予感などの「働きがいの醸成」はままならず、仕事への取り組み意欲も高まらないのである。
チャレンジ目標は会社と働く人々をつなぐ架け橋働く人々が職場の目標を共有し、それと連動した個人目標の「計画→実行→ふりかえり」のサイクルを、スパイラル曲線的にグルグル、グルグルと回すこと。
そのサイクルがうまく機能すれば、業績向上への貢献も、働きがいの醸成も可能になる。
ギリギリの背伸びが伴ったチャレンジ目標の設定は、会社の幸せと働く人々の幸せをつなぐ架け橋なのである。
目標達成の予感があるかここで注意してほしいのは、チャレンジ目標は程よく背伸びした目標であって、難しければ、難しい程よいというものではない、ということだ。
本書でも、再三、ギリギリの背伸びという表現を使っている。
では、何をもって、ギリギリの背伸びと判断するのだろうか。
それは「目標達成の予感」であり、達成の予感は「目標達成手段」がつれてくる。
目標設定時点で、達成手段が60〜70%程度見えている状態を創り出すことが大切だ。
手段が見えているから、「何とかなりそうだ!」という納得感も高まって、達成意欲も強くなる。
それが目標達成の予感である。
もちろん、チャレンジ目標であるから、最初から100%の手段が見えていることなど、絶対に有り得ない。
しかし、ある程度見えていなければ、絶望感が襲ってきて、目標に対するコミットメントは得られない。
そのギリギリのところで、職場目標も、個人目標も設定する。
それが、程よく背伸びした目標という意味である。
「何」を目標にするのか?では具体的に目標づくりのミーティングを見ていこう。
リーダーとメンバーは、職場の貢献領域一覧表の戦略業務と日銭業務の中から、職場の目標にすべき、あるいは目標にしたいと思う業務を選び出す。
それが
「目標テーマ」である。
目標テーマは、「何を、どれくらい、いつまでに、どのように、達成するのか」という目標設定の基本要件でいえば、「何を」の部分に該当する。
戦略業務や日銭業務を単に書き写すだけで満足するのでなく、どのような形で目標に仕上げるかを職場で話し合い、いろいろな切り口で考える。
ここがよい目標づくりのツボであり、きわめて重要な作業である。
決してさらりと流してはいけない。
たとえば、部門の売上目標が100億円だからと、課(職場)の目標30億円、メンバーの目標5億円というように、売上数値を単純に分割するのが、果たして良い目標なのだろうか。
また、製造現場に目をやれば、無理難題としか思えないようなコストダウンの要求が上から降りてくることがある。
それに何の加工も加えずに、「会社方針が10%削減だから、うちの職場も10%のコストダウンにチャレンジする!」というのでは思考停止と言えないか。
問題解決テーマの目標化を!結果のまた結果である売上やコストダウンなどの数値目標を、実務に役立つ生きた目標に転換するには、「阻害要因の除去」、あるいは「促進要因の増強」といった、問題解決テーマの目標化が欠かせない。
確かに上位計画は売上やコストダウン目標の達成を現場に求めている。
だから、その必達数字を日銭目標として設定する。
それそのものは間違っていないし、ぜひ、そうしてほしい。
しかし、売上などの数値目標だけでは、目標達成の観点からも、働く人々のモチベーションの観点からも、十分とは言い難い。
こうした数値目標は、問題解決目標と併せて設定するのが望ましい。
たとえば、この職場には商品知識が未熟な営業マンが3人いる。
知識がないから、顧客の質問にも即答できず、問い合わせの電話に出ても、「わかりません。
知っている者につなぎます」とたらい回しを平気で繰り返す。
お陰で、職場のチームワークも乱れてしまう。
この状態は数値目標の阻害要因の1つであり、解決すべき問題である。
そこでリーダーは、当事者の3人はもとより、メンバー全員を集めて、「3人の商品知識の習得」を職場の目標に設定したい旨を説明する。
勉強会やロールプレイングの実施など、みんなで協力してほしいと要請する。
そして「達成基準」と「納期」について話し合い、「3ヶ月後には、3人ともが商品知識を完璧に身につけた状態を実現する。
身につけたかどうかの達成基準は、実技テストで合格点を獲得すること」という具合に職場目標を設定する。
このような目標設定の仕方を「仕事プロセスの目標化」と呼び、これが生きた目標づくりの重要な押さえどころである。
仕事プロセスの目標化上記のような仕事のプロセスの目標化は、職場目標に限らず、個人目標を作る際にも、必要に応じて活用する。
世の中には、仕事のプロセスでいくら努力をしても、成果が上がらなければ意味がないという考え方が存在するが、本当にそうだろうか。
いささか、短絡的な発想のように思われる。
真実は「プロセスなくして成果なし」であり、成果を得るためにはプロセスにおける努力、すなわち試行錯誤がきわめて大切なのである。
その試行錯誤の仮説を目標として設定することが、場合によっては必要だ。
未熟な営業マンが売上目標のみを目標に設定すると、それが難しいものであればあるほど「大変だなぁ」という気持ちが先行する。
なかなか、「よし、やるぞ!」という意欲につながらない。
そんなときは、売上目標を達成するために何を成すべきかと自問して、目標達成手段を具体的、かつ体系的に考え出す。
その「手段の実行」を目標に、日々の活動を組み立てる。
一見、遠回りのように思えるが、実際にやってみると効果の高い方法である。
一般的に、成績不振の営業マンには、この考え方が欠落しているのではなかろうか。
「ピーン」と来る目標目標のテーマアップに関して、もう1つ、留意すべきことがある。
メンバーの心に馴染むような目標への置き換えである。
工場の最前線で現場作業に従事している人たちに、「前年比10%の生産性向上があなたの目標だ」と言っても、果たしてピーンとくるであろうか。
おそらく、みんな首を縦には振らないであろう。
確かに、この目標には数値としての具体性はある。
しかし、働く人々にとっては遠い存在だ。
目標と仕事の実態とが懸け離れており、そのために「目標=自分たちの日常業務」と感じ取ることが困難なのである。
これでは目標は他人ごとになり、強い目標達成意欲も責任感も湧き出ない。
このような場合には、「前年比10%の生産性向上」を、現場の人たちが日常的に慣れ親しんでいる時間管理目標、たとえば「A製品の段取り換えを5分短縮する」という目標に変換する。
また、目に見える目標である「不良品の個数削減」などに置き換えてみる。
それが、ピーンとくる目標である。
「その他の業務」からも目標を作る目標テーマを決めるときには、職場の貢献領域一覧表の「その他の業務」の中からも、目標にすべきテーマはないか検討しよう。
その他の業務の中で、「今期とくに注力すべきこと、注力したいことは何なのか」とみんなで考えて、リーダーとメンバーが重要だと判断したものを、職場の目標テーマに組み入れる。
たとえば、MBOSの主管部門である人事部企画課が、「各現場のMBOSの実践サポート」という職場ミッションの具現化策の1つとして、「企画課の目標連鎖の実態を開示して、良い目標づくりの啓蒙活動を展開する」という目標テーマを設定する。
それは、戦略業務でも日銭業務でもないかもしれないが、職場ミッションに照らせば、設定すべき目標の1つだろう。
「いつまでに」「どのくらい」「」目標のテーマアップと同時並行的に、達成基準の設定と達成手段を考える。
達成基準とは、ピックアップした目標テーマを、「いつまでに」、「どれくらい」達成するのかというもので、ギリギリ背伸びした状態に設定するのが鉄則である。
このギリギリの背伸びの検討には、何らかの裏付けがほしい。
使える「ヒト・モノ・カネ」を確認することなしに背伸びを強行すれば、メンバーからは無謀と言われるだけだ。
だから、きちんと裏付けのあるものにしたい。
こうした経営資源の検討に加え、さらに重要なのが目標の「達成手段による裏付け」である。
「達成予感が伴った目標設定を」という言葉を思い出してほしい。
そこでは、目標に対する納得感と達成意欲を高めるためには「60〜70%程度の達成手段」が必要だと説明した。
その達成手段の探索を、目標テーマごとに実施して、ギリギリの背伸び状態の確認や達成予感がもてるかどうかを検討するのである。
「どれくらい」は「」リーダーは、次のような表を作って達成基準と達成手段を行き来しながらミーティングを進行する。
それは両者の内容を同時並行的に決めようとする作業である。
よりよい達成手段が見つかれば達成基準の難易度を高めることができる。
あるいは、あらかじめ高めの水準に達成基準を設定し、それに合った達成手段をみんなで考える、というやり方もある。
これらをうまく組み合わせ、質の高い職場目標に仕上げるのがこの作業の目的である。
個人目標は職場目標の重要な達成手段職場目標の達成手段は、さまざまな切り口からの検討が必要だが、その際に忘れてならないのが、「個人目標」の存在である。
職場目標は個人目標の集合体であり、個人目標のチャレンジ度合いと達成可能性が職場目標の重要、かつ最大の達成手段となるからである。
だから、職場目標の達成基準や達成手段を考えるときには、メンバーそれぞれが、「自分は今期、これを達成する」、「自分は今期、こんな工夫をする」といった風にそれぞれの個人目標づくりも同時並行的に推進する。
メンバーは、職場のどの目標テーマをどの程度引き受けるべきか、個人のミッションに照らして考えるのである。
ここでも重要なのはオープンであるということだ。
みんなで議論して、各々の引き受け業務の内容を合意する。
引き受け業務の達成手段もみんなで知恵を出し合うような進め方がベストである。
目標の達成手段の見つけ方手がかり情報をどこに求めるか目標設定において、もっとも労力を要するのは「手段を見つけること」である。
手段の探索の出発点は、自分の体験の掘り起こしにある。
過去の自分の成功や失敗体験を振り返り、活用できそうなものを拾い出す。
次には、他のメンバーの経験的知識を借用する。
何年か仕事を続ければ、そこには必ず成功事例や失敗体験があるはずだ。
それを各人がテーブルの上に出し合って、ワイワイガヤガヤと揉み合う。
しかし、職場内の情報だけでは、情報不足のきらいがある。
知恵の創出には、もっと幅広く、職場の外に情報源を求めることも必要だ。
リーダーは、人脈を活用し、社内の成功事例を収集する。
その成功の本質を手掛かりに、職場目標やメンバーの目標達成手段を検討する。
そういう知恵の出し方を「ナレッジ・マネジメント」という。
一般的に「成功事例のヨコ展開」と呼ばれているものである。
ナレッジとは「吸い取ること」ナレッジで留意すべきは、表層だけを見るのではダメだということだ。
ある会社で、表彰制度を導入したら、社員が元気になり、業績が向上した。
ならば、わが社も表彰制度を導入する。
これがダメな典型例であり、成果を望むのは難しい。
ナレッジは、あくまでも「本質の吸い取り」でなければならない。
社員を元気にしたのは表彰制度そのものではなく、「社員に感動を与える仕組み」として表彰制度が機能したからである。
この違いを理解せず、表面のみ真似をする。
挙句の果ては、「うちの風土には馴染まなかった」と嘆きの声を漏らすケースがあまりにも多い。
ナレッジ情報は、言語や文字、あるいは数学的表現ではうまく伝えられない情報であり、情報の受け手が成功事例の中から、「これだ!」というものを嗅ぎ取る作業である。
そういう認識にもとづいて、ナレッジ・マネジメントに取り組む姿勢が肝要だ。
社外人脈から得られる「ベンチマーク情報」ナレッジ情報を活用しても、目標達成手段が不足する。
そのときは、「ベンチマーク情報」を活用する。
ベンチマーク情報は「社外に存在する成功事例や失敗事例」であり、簡単には入手できない情報である。
確かに、雑誌や新聞では、毎日のように「企業の意欲的な取り組み事例」が紹介されている。
しかし、そのほとんどは「表面的な情報」であり、そのまま鵜呑みにするにはリスクが多すぎる。
成功や失敗の本質に近い情報は、もっと「ドロッとした人間臭いもの」であり、「ここだけの話だが……」と耳元で囁くような情報ではなかろうか。
そのような情報の収集には、「社外人脈」が不可欠である。
リーダーは自分や同僚、さらには上位者の持つ人脈網を活用し、社外に存在する、有効な情報源となる人を探し出す。
そこから得られた情報が「真実の情報」であり、それを手掛かりに目標の達成手段を補強する。
そういう手段の探索方法が「ベンチマーキング」である。
人脈は「財産」であり「重要なビジネス能力」ナレッジ・マネジメントにしろ、ベンチマーキングにしろ、キーワードとなるのは「人脈」である。
リーダーに人脈がなければ、目標達成手段の探索は範囲の狭いものになり、職場目標や個人目標のチャレンジ性も弱めてしまう。
そればかりか、学者の研究(たとえば、『変革型ミドルの探求』/金井壽宏/白桃書房/1991年)によれば、人脈不足は大きな仕事を成し遂げたり、変革を仕掛けたりするときの障害にすらなってしまうという。
筆者の体験からも、課長などのミドルクラスの人たちが、よりチャレンジングな仕事をしようとするならば、社内外の人脈の構築と活用が必須である。
とりわけ、社内の実力者とのパイプづくりは不可欠だと考える。
また、インフォーマル・ネットワークの形成も重要だ。
「この会社をもっとよくしてやろう!」という志を同じくする人たちが、水面下で心を1つに結びつけ、さまざまな新しい試みを同時多発的に実践する。
実践結果を共有し、次なる試みを話し合う。
そのような「同志的人脈」と「会社の公式組織」とが融合し、組織全体が変革に向けて動き出す。
それが経営の実態であり、ミドルによるインフォーマル・ネットワークは、会社の隠れた経営資源として、無視できない存在なのである。
昨今、ビジネス能力への関心が高まって、大勢の人たちが各種の資格取得や勉強に励んでいる。
それはそれで大事なことだが、人脈の力を忘れないことが肝要だ。
働く人々にとって、人脈は財産であり、その活用はきわめて重要なビジネス能力なのである。
目標づくりで知っておきたいことここまで、「目標テーマのピックアップ→達成基準や達成手段を考える」というプロセスを、職場目標と個人目標とのキャッチボールという方法で、リーダーとメンバーみんなでワイワイガヤガヤ話し合いながら展開する、という話をしてきた。
その際の着眼点や留意点を縷々と述べたが、もう1つ重要な話が残っている。
定性目標の具体化に関することである。
定性目標は具体化を!「夢と働きがいのある職場づくり」、「改善提案活動の徹底」、「コンサルティング営業の推進」、「新人事評価システムの構築」など、つかみどころのない雲のような目標が設定されることがある。
いずれも、目標もどきのスローガンであり、決して目標と呼べるようなものではない。
どうして、そのような事態が起きるのか。
それは定性目標の特性のためだ。
売上高や利益率のように、数値表現できる定量目標とは違い、定性目標は数値化できないものである。
そのために、どうしても抽象的な表現になりやすい。
それを防ぐために、ほとんどの企業の目標管理マニュアルには、「目標はできる限り数値化すること」と記してある。
しかし、それはきわめて誤解を招きやすい表現だ。
正しくは、定量目標は「必ず数値化すること」であり、定性目標は「進捗管理や評価に耐え得るように〝具体化〟すること」でなければならない。
では、定性目標をどのように具体化するのか。
以下の3つの方法が有効である。
固有名詞を使ってイキイキと記述する定性目標の具体化の鉄則は、いきなりの数値目標は避けることである。
まず、状態記述を試みる。
何が、どのような状態になっていれば、目標達成なのかとい
う当事者の思いをできる限り具体的にイキイキと記述しようとするものだ。
たとえば、明るい職場にしたいという当事者の思いを、「毎朝、みんなが笑顔で挨拶をしている」、「呼ばれたら、感じよく〝ハイ〟と返事をしている」、「お互いに認め合い、励まし合っている」というように、具体的な状態で表現する。
こうすると、結果の測定も「〇」の4段階くらいで可能になる。
その際に、固有名詞を用いれば、記述場面が限定され、その分だけ進捗管理や評価の精度も高くなる。
これが状態記述の基本である。
数値化可能な代用項目を探し出すの状態記述だけでは不安が残る。
そのような場合には、「代用数値化」も試みる。
定性目標の本質に近い数値化可能な〝代用項目〟を探し出し、それを目標の達成基準として使用する、という方法である。
この方法を用いれば、ほとんどの定性目標の数値化が可能になるが、注意すべき点が2つある。
1つは、目標と因果や相関が認められる代用項目を用いること。
それを無視すると、「特許の質を高める」という目標を「特許〇件以上」で代用するという類いの過ちを犯してしまう。
典型的な質と量との混同、もしくはすり替えである。
2つは、代用数値が目標の本質からズレないように、複数の、かつ、多面的な代用項目を用意すること。
たとえば、「接客サービスの向上」という目標の代用項目に、「売上高の伸び率」を採用する。
よく見られるケースであるが、果たしてそれで十分なのだろうか。
確かに、接客サービスが向上すれば売上も伸張するという経験則が存在し、それに照らせば成立する図式である。
しかし、売上高の伸び率は、サービスの向上を証明する1つの要素に過ぎず、それをもって、すべてを代替しようとするのは乱暴な話である。
「再来店客数の増加数」など、いくつかの代用項目の追加が必要だ。
そうしなければ、本来の目標の意味合いを薄めたり、歪めてしまう。
代用項目と状態記述とを組み合わすところが、実際に多面的な代用項目を探してみると、そう簡単に代用数値が見つからない。
では、どうするか。
そのときには、前述の状態記述との組み合わせ使用を試みる。
まず、実現したい状態を、「全販売員が両手を添えて、お客様に商品を渡している」という具合に描き出し、それに「売上の伸び率」や「再来店客数の増加数」とをセットして、トータルで定性目標を具体化する。
それが、経験的にはいちばん有効な方法である。
クリエイティブ型の定性目標ゴールの姿が過去の経験から明確に描けるような目標、それは「アチーブメント型の定性目標」であり、状態記述や代用数値化による目標の具体化が可能である。
しかし、「クリエイティブ型の定性目標」は、「何が、どれくらいアウトプットされるのか、やってみなければわからない」という類いの目標であり、その具体化は状態記述や代用数値化だけではおぼつかない。
そこで出てくるのが「手順や手段の目標化」である。
「手順や手段の目標化」は、最終的なアウトプットを目標とするのではなく、そこに至る活動手順と活動内容を目標にするものである。
ゴールに向けて、「いつまでに、何と何とをやり遂げる」という具合に活動手順を設定し、その手順ごとに「具体的な実行内容(手段)」を考え出す。
一種の納期目標であり、職場の戦略業務の目標化の大部分はこの方法に頼るのが妥当であろう。
後追い設定も必要だただし、1つ問題がある。
目標の質的部分の欠落である。
納期は守ったが、仕事の質は低レベル。
それでは、目標達成とは言い難い。
納期目標には、暗黙の前提として、「納期遵守で、かつハイ・クオリティな仕事」というチャレンジ性が組み込まれているからである。
しかしながら、手段や手順の質や、明確に描けない成果物の質の高さを、目標設定の時点で具体的にするのは難しい。
では、どうするか。
やむを得ず、目標の質的部分の詳細は後追い的に設定する。
つまり、仕事の終了時点で仕事の質を評価して、それをもって目標設定に代替する、という方法である。
一見、不合理のように思われるかもしれないが、すでに研究開発業務などでは実証済みの方法であり、もっとも理想的な仕事の進め方であると考えられる。
仕事を進めるプロセスで、当事者と関係者とが話し合いながら、試行錯誤的に仕事の質を極限まで追い求める。
それが仕事の面白さを誘発し、自律性も醸成する。
結果として、会社の業績が向上する。
そういう仕事のやり方が、MBOSが志向するクリエイティブ型目標の理想的な姿である。
後追い設定の事例夢のような仕組みを創り出すある会社では、営業部隊の強化の一環として、「内勤者の約半数を営業部門に配転する」という方針を決定した。
総務部門は、それとの連動で、「現有の50%の人員で、現在のサービス水準を落とさずに、内勤業務がまっとうできるような〝新業務システム〟、3年がかりで構築する」という中期戦略を策定し、「新業務システムの試行に耐え得る〝第1次プランの完成〟」という部門の年度戦略目標を設定した。
いまだこの世にない仕組みの創出であり、どんなものが完成するのか、その詳細を目標設定時点で描き出すのは難しい。
「目標を追いかけながら、目標のグレードアップや新たな目標を創り出す」という類いの目標である。
それを受け、主管部署のリーダーは、「夢のような仕組みの創出」という漠たるゴールに向けて、段取りを考えた。
第1四半期は他社の先行事例を徹底的に調査して、質の高い調査レポートを作成する。
第2四半期は調査レポートの内容を手掛かりに社内のヒアリングを実施して……、第3四半期はヒアリングで得られた情報にもとづいて今後の課題を整理する……。
というような大まかな仕事手順の組み立てである。
次に、リーダーは第1四半期にやるべき他社の先行事例の調査に関する具体的な手段をメンバーと検討した。
この種の調査で陥りがちなのは成功談に偏った情報収集であり、通常のインタビューでは、生々しい失敗体験や問題点がなかなか聞き取れない。
そういうメンバーの問題提起を採り入れて、公式インタビューとは別枠で社内のプライベート人脈を活用した、相手先のホンネを引き出すような〝インフォーマル・インタビュー〟も企画した。
これが、「手順や手段の目標化」である。
今一度、リーダーの目標を整理すれば、第1四半期の目標は「先行するA社とB社の事例を調査して、期末の〇月〇日までに、質の高いレポートを作成する。
そのために、公式インタビューとインフォーマル・インタビューとを実施する」という内容である。
チャレンジ性は「短納期」と「レポートの質的向上」リーダーは、目標のチャレンジ性についてもメンバーと議論した。
「MBOSの目標には〝チャレンジ性が必要だが、我々の第1四半期の目標に、どんなチャレンジをどう盛り込めばよいのだろうか?」そう質問すると、「短納期で完成させればよい」、「インタビュー先には知人もいるし、何とかなりそうだ」とメンバーが反応し、「2週間前倒しの納期」をみんなで合意した。
難航を極めたのが、レポートの質の高さに対するチャレンジである。
レポートの質的部分は仕事を進めながら高めるのが定石であり、期初に詳細を決定するのは不可能だ。
どうしようか。
ああでもない、こうでもないと話し合ったが、なかなか妙案が浮かばない。
最後はリーダーが決断した。
レポートの質的部分のチャレンジは後追い設定という方法を採用する。
完成したレポートに目を通した上司や関係者が「まずまずのレポートが仕上がった」、あるいは「かなり不満が残るが……」と言ったとき、レポートの質に評価が下されて、同時に〝レポート内容〟と〝手順や手段〟の質的目標が決定される。
そういう考え方で、ハイ・クオリティなレポートづくりにチャレンジする。
そうリーダーは説明し、メンバーもリーダーの決断を受け入れた。
このように、手順や手段の目標化は質的部分の後追い設定という弱みを持つが、抽象的な体言止めの雲のような目標もどきを目標にするよりは、遥かに意欲的で効率的な仕事を約束してくれる。
それは経験的に見て、まず間違いのない事実である。
目標以外でやらなければならないこと職場目標と個人目標のミーティングの最後は、「目標には設定しないが、やらねばならぬ個人業務」の明確化と合意である。
なぜ、この作業が必要なのか。
それは「責任感」と「協働意識」の醸成のためである。
すでに述べたように、組織とは一人ではできないことを、二人以上の人間の強みを使って実現する仕組みであり、それをうまく機能させるためには、分業と協働の促進が不可欠である。
分業と協働の出発点は、一人ひとりが、自分の役割と責任を真剣に考えて、その内容をオープン・システムで、みんなと語り合うことである。
それがなければ、おそらく、職場は秩序をなくしてしまうだろう。
現に、多くの職場には、自分の仕事は個人目標の達成であり、それが仕事のすべてだと錯覚しているようなメンバーもいると聞く。
そういう人たちには、「本当にそうだろうか?」、「ミッションに照らせば、目標化されない分業責任があるはずだ」、「職場での自分の責任をどう考えるのか?」と質問したい。
こうした質問を自問自答して、得られた答えを文章で書いてみる。
たとえば、来社した他のメンバーのお客様に対しては、「〇〇が、いつもお世話になっております」とメンバーの名前を付け加えた挨拶をする。
あるいは、「今日、こんな話を耳にした」と自分が得た情報を積極的に開示する。
いずれも、協働に関する業務である。
その内容は、次の「個人のチャレンジ目標シート」の「上記目標以外にやるべきこと」に記入して、職場のみんなと確認し合う。
そうすれば、自分の仕事の守備範囲が明確になり、責任感も刺激され、協働意識も芽生えてくる。
リーダーの個人目標とその他の業務リーダーは職場目標全体に責任を負う立場にあり、その意味では職場目標はリーダーの目標そのものである。
しかしリーダーにも職場の一員としての個人目標が必要だ。
リーダーの個人目標の中心は、関連部門との折衝や対外的な交渉事など、職場目標の達成に直接的に絡む重要業務の目標化である。
また、メンバーの個人目標の達成支援も、必要に応じてリーダーの個人目標として設定する。
たとえば、あるメンバーが「有力顧客の内部情報の収集」という達成手段を掲げたが、メンバーの力だけでは不足があると感じたときは、リーダーは「客先トップとの人脈を使って、顧客企業の中長期経営課題の詳細を把握する」という具合に目標を設定し、個人のチャレンジ目標シートの「チャレンジ目標」の欄に記入する。
このような着眼点でリーダーは個人目標を設定するが、それ以外にもリーダーの役割は、「リーダーミッション」との関連でいくつか存在するだろう。
たとえば、今期は昇格がかかっているA君への支援が欠かせない、昇格審査レポートの提出前の3ヶ月間は、2週間に1回のペースで、A君と一緒にレポート内容を検討する。
そういう類いの業務もリーダーは担っているのである。
さらには、上位者の分身としての補佐業務や職場のチームワークの強化に向けたコミュニケーションなども、目標には設定しないが、リーダーのやるべき仕事である。
そうした業務は、「上記目標以外にやるべきこと」に記入する。
戦略目標と日銭目標の資源配分をどうするか日銭目標一色にならないように注意する目標づくりをするときのリーダーの役割の1つに資源配分の意思決定がある。
どの目標に、どれだけの人的資源と時間を張りつけるのか。
そこに当たりをつける作業である。
目標1つ1つに対する資源の配分計画も、ときと場合によっては必要だが、それよりも、戦略目標と日銭目標との資源配分のバランスに注目することが大切だ。
一般的に、企業活動の大部分のエネルギーは日銭業務に費やされ、残されたほんの僅かな経営資源で戦略業務を遂行する。
それはそれでやむを得ぬことではあるが、それさえも日銭業務に投入してしまい、戦略業務が断絶する。
よくある話である。
なぜ、そうなってしまうのだろうか。
年度目標は決算と直結しているために、リーダーも含め、みんなが無意識のうちに、利益と売上という日銭目標の達成を優先させるからである。
その結果、職場は日銭目標一色に染まり、極端な場合には、「戦略の重要性はわかっているが、もっと大事なことがある。
きょうの飯の種を稼がずに、何が戦略だ」という戦略の存在そのものを軽視するような雰囲気が、職場全体を支配する。
これを防ぐために、多くの企業では、戦略目標と日銭目標との2本立ての目標設定シートで対応しようとしているが、あまりうまく機能していないのではなかろうか。
確かにみんな、期初の目標設定シートには、戦略目標の詳細を克明に記入する。
しかし、期末に振り返ると、やれたのは3割くらいで、残りは未実施という文字が躍っている。
目標設定の仕組みが機能不全に陥っている状態である。
まず、「戦略目標」に資源配分をそうなってしまうのも致し方ない現実がある。
ただでさえ日銭目標の達成に関心が向きがちな現場の人たちに、追い打ちをかけるように日銭業務が次から次へと押し寄せる。
上位者からは緊急の資料づくりが要請されるし、突発的な客先クレームも稀ではない。
それらを無事処理すれば、「ひと仕事成し終えた」という満足感が味わえる。
その満足感も手伝って、悪気なく、戦略業務の遂行が後手に回ってしまうのだ。
その状態は以下のような図式で表現できる。
根底には、まず日銭業務を優先させ、「残った経営資源で戦略業務を……」という考え方が存在する。
このような発想で仕事を進めると、間違いなく、ほとんどの経営資源が日銭業務に吸い取られ、気がついたら戦略業務に使うべき資源が限りなくゼロになる。
では、どうするか。
次の図のように、日銭業務と戦略業務との組み替えを行うことである。
これは、戦略目標の達成に資源配分の優先順位を与え、残った資源で日銭目標を達成しようとする発想である。
この発想を用いれば、能力開発のために一定の日数をあらかじめ割くとか、新しい仕事の仕組みづくりの試行錯誤にまとまった人員を優先的に投入するなど、従来とは違った仕事のやり方が可能になる。
それを実践すれば、日銭業務に費やす経営資源は減少し、日銭業務のあり方は必然的に変革せざるを得なくなる。
残った資源で、日銭目標の達成努力を!普通の人間は、恵まれた環境にいるときよりも、何かが多少不足している環境の方が知恵を出しやすいと言われている。
旅行に行くときにも、限られた予算の中で、運賃が安くなる方法はないのか、特典のあるホテルはどこなのかなど、あれこれ工夫を凝らすはずである。
旅費という資源不足を知恵でカバーしようとする行動であり、もし、たっぷりお金があれば、こんなことは考えない。
仕事も同様で、経営資源にゆとりがある状況では、なかなか仕事の見直しは進まない。
ルーチンワークに従事している人たちの、「毎年、代わり映えのしない目標しか立てられない」というボヤキとも諦めともつかぬ言葉をときどき耳にする。
おそらく、彼らの職場のほとんどは資源不足とは無縁であろう。
恵まれた環境ゆえに、彼らは従来と同じ方法で定常業務を淡々とこなしている。
このマンネリを打破するには、新たな仕事条件の設定が必要だ。
「今まで100億円の売上を100人で作ってきたが、今年は90人で100億円以上の業績を達成する」というように、チャレンジングな仕事条件を設定する。
そうすれば、陳腐化した万年床のような目標での仕事は不可能になり、必然的に働く人々は仕事の改善・改良目標を立案する。
このような日銭目標の質的向上は、経営資源の戦略業務への優先配分が日銭業務に与える波及効果である。
第2章のまとめチャレンジ目標とは「ギリギリ背伸びした目標」である。
チャレンジ目標を決めるための5つのステップは、オープン展開(みんなでワイワイガヤガヤ)で行うとよい。
5つのステップ・[ステップ]会社や部門の中期経営計画(中長期のビジョンと戦略)の理解・[ステップ]職場や個人の中長期的な役割(ミッション)の明確化・[ステップ]部門の今期計画の理解・[ステップ]今期の職場の貢献領域一覧表の作成・[ステップ]職場の今期目標と個人の今期目標(チャレンジ目標)の決定職場・個人ミッションとは、職場や個人が担う中長期的な役割と責任である(ステップ)。
・ミッションをはっきりさせることで、仕事に対する責任感や情熱が高まる。
職場の貢献領域一覧表作りは、年度レベルですべきことを総ざらいする作業である(ステップ)。
・これを全部やることが、職場の今期の役割責任だとみんなで確認し合う。
職場の貢献領域一覧表の中から主要業務を選び出し、職場目標と個人目標を作る(ステップ)。
・「何を、どれくらい、いつまでに、どのように」を決める。
「どれくらい、いつまでに」は、ギリギリ背伸びしたものを設定すること。
・ギリギリの背伸びが、業績向上と人々の能力開発を促進する。
達成手段の情報源は社内外の成功・失敗事例に求めるとよい。
目標の達成基準は、進捗管理や評価に耐え得るように設定する。
・定量目標は必ず数値化を、定性目標は具体化するのが原則である。
戦略目標と日銭目標との資源配分(人や時間の配分)のバランスに気をつける。
・鉄則は、戦略目標への資源の優先配分である。
このような目標連鎖のステップをみんなでワイワイガヤガヤ進めることで、リーダーもメンバーも職場目標と個人目標に対する納得感を深め、「やらねばならぬ!」という責任感も醸成される。
それがチャレンジ目標のPlanである。
コメント