「アウトプット品質」のノートをつくる5つのマインド
後から読み返したとき、自分が読んでも他人が読んでも見やすくて、わかりやすいノート。
それが、前章でご説明した「アウトプット品質」のノートでした。
これから「アウトプット品質」のノートをつくるためのノウハウをご紹介していくわけですが、具体的なテクニックに入る前に、まずはそのベースとなる「マインド(=心構え)」から見ていくことにしましょう。
これを押さえれば、「アウトプット品質」の本質を、より深く理解していただけると思います。
では、その考え方とはどんなものなのか?皆さんに意識してほしいのは、次の5つです。
①「その場主義」を心がける②「もったいない」の意識は捨てる③楽しみながらノートをつくる④書くこと・書かないことを見極める⑤元ネタを進化させる一読しただけでは意味がわからないものもあるでしょうが、説明を読んでいただければ「なるほど」と思っていただけると思います。
では、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
マインド①「その場主義」を心がける
確実なのは「今」だけアウトプット品質のノートづくりにおいては、「後まわし」の発想は捨ててください。
その場で理解し、その場でまとめていくのです。
「後まわしにしない」これはノートづくりに限らず、私が人生において心がけていることでもあります。
「後まわし禁止」を強く意識するようになったのは、小学生の頃でした。
当時、私が通っていた小学校の図書館には、大人向けの「禅」の本が何冊か並んでいました。
おそらく、誰かが寄贈したのでしょう。
あるとき、それを読んですっかり気に入ってしまった私は、少しずつ少しずつ読むことにしました。
なぜ、そんな読み方をしていたのかというと、読み終えるのがもったいなかったからです。
きっと、楽しみがいつまでも続くように願っていたのでしょう。
そんなある日、図書館が改築されることになりました。
ひとまず、私の楽しみはおあずけ。
でも、私は「新しい図書館を使えるようになったら、フレッシュな気持ちで読めるぞ!」とワクワクしていました。
ところが、建て替えられた図書館に入ってみると、お目当ての本がありません。
本が古かったからか、小学生は読まないだろうと判断されたのかわかりませんが、いずれにしても、読もうと思っていた本は図書館から消えていたのです。
私は大きなショックを受けました。
そして、こう悟ったのです。
「そうか!確実なのは〝今〟だけなんだ」と。
保証されているのは「今」しかなく、「次」にチャンスがあるとは限らない。
この「事件」は、私にその場で処理することの大切さを教えてくれました。
以来、私にとって「後まわしにしない」は、人生における重要なルールになったのです。
後まわしは「借金」である同じことが、ノートの整理においても言えます。
「後で理解すればいいや」とか「明日まとめよう」と先延ばしにしたところで、将来の自分がそれをきちんとやるかどうかはわかりません。
そのときはやる気がみなぎっていても、次から次へとやることが出てきて、結局、できずじまい。
そのうちに、書きとめておくべき内容も忘れてしまう……。
こうして、あなたのノートはとりっぱなしになるか、後から読み返しても意味不明なノートになってしまうのです。
物事を後まわしにするのは、「借金」と同じです。
後まわしにした分は、将来の自分が〝尻拭い〟をしなければいけません。
つまり、過去のツケを「返済」しなければいけないのです。
そのツケをきちんと「返済」できればいいですが、処理できない量がたまってくれば、それもできなくなるでしょう。
一方、「その場」で仕上げれば、知的生産性を上げることができます。
アイデアを思いついた瞬間や、先生の話を聴いた直後など、記録すべきことができたときにリアルタイムでノートをとるわけですから、後々読み返したときに「これは何のことだっけ?」と首をかしげるような事態は避けられます。
このように、物事をすぐに片付ける考え方を、私は「その場主義」と呼んでいます。
授業ノートも「その場主義」とはいえ、授業やセミナーに出席してノートをとる場合は、大変でしょう。
話を理解しながら、それと同時に記録していかなければならないわけですから、かなりの集中力が必要です。
では、「授業ノート」をとるときは、どうすればいいのでしょうか。
実は、この場合も「その場主義」を実践することは変わりません。
話を聴きながら、それを理解し、なおかつ自分の頭を通した言葉でノートにまとめる……。
これは、難しい作業です。
しかし、不可能ではありません。
実際、私が指導してきた生徒や、セミナーの受講生でも、実践している人はたくさんいます。
もちろん、ある程度の「訓練」は必要です。
授業・講義のスピードはこちらの意思ではどうにもなりませんから、頭の中で整理した上で書きとめていく速度を上げていかなくてはいけません。
しかし、コツさえつかめば、講義と同じペースで聴いた内容を理解し、自分の言葉でまとめることはできます。
もっとも、慣れないうちは、いくら集中しても理解が追いつかないことがあるでしょう。
そういうときは、無理にリアルタイムで理解しようとせず、とりあえず走り書きしておけばいいのです。
その日のうちに整理すればいい「走り書きしておけばいい」と言っても、もちろん、「書きっぱなし」ではいけません。
時間内にノートがまとめきれない場合は、セミナーや授業が終わった「直後」にまとめ直しをします。
では、どうしても「直後」にできないときは、どうすればいいのでしょうか?その場合は、当日中です。
とにかく、何としても寝るまでに整理を終えます。
なぜなら、一度寝てしまうと、記憶力はガクンと落ちてしまうからです。
また、人間の心理として、その日のうちに処理しておかないと、そのままやらずじまいになる可能性が高くなります。
ですから、記憶がまだ新鮮なうちに、まとめ直しをしておく必要があるのです。
最初から完璧にこなすのは難しいかもしれません。
しかし、まずは、少なくとも「その場」で片付けようという意識を持ってノートをとってみてください。
なお、実際に、リアルタイムでノートをとるためのテクニックは、第3章で詳しくご紹介していきます。
マインド②「もったいない」の意識は捨てる
詰め込みすぎのノートは読み返さない生徒のノートを見せてもらうと、ページ全体にびっしり文字を書いている人や、余白の中に小さな字でたくさんの書き込みを入れている人がいます。
こういう人は、1ページに書けるだけ書かないと「もったいない」と考えているのかもしれません。
アウトプット品質のノートをつくるときには、この「もったいない」という気持ちは捨ててください。
なぜなら、「もったいない」に縛られすぎると、結果的にノートが汚くなり、読みづらくなってしまうからです。
アウトプット品質のノートとは、誰が見ても「見やすい」「わかりやすい」ノートのことでした。
「もったいない」に支配されたノートは、決して見やすくないですし、わかりやすくもありません。
文字がギチギチに書かれていて、見ているだけで息苦しくなるようなノート。
「もったいない」に縛られると、そうしたノートになってしまいます。
そんなノートは誰も読む気がしませんよね。
後で読み返すこともないでしょう。
行間、字間、余白をたっぷりとって、見た人がゆったりした気持ちになれるようなノート――。
それが、「もったいない」から解放されたノートです。
皆さんには、そうしたノートを目指してほしいのです。
「もったいない」が知的生産性を低下させる「もったいない」という気持ちが知的生産性を低下させる例は、多々あります。
たとえば私の場合、文章をもとに何か考えるときには、パソコンの画面上で文字を追うよりも、紙に出力して読んだほうが作業がはかどります。
そのため、プリンターで何百枚もの紙をプリントアウトすることがあります。
「環境保護」の考え方からすれば、これは良くないことなのかもしれません。
しかし、私はエコよりも知的生産性を優先することにしています。
よく、「紙に出力するか、パソコンの画面で読むか」で何分も悩んでいる人もいますが、これははっきり言って時間のムダでしょう。
紙で読んだほうが頭に入るという人が、我慢しながらパソコンの画面で読んだところで能率は上がりません。
むしろ、その時間を、もっと知的な作業に使ったほうがいいと思います。
また、新しい文房具を買ったら、意外と使いづらかったという経験はないでしょうか。
そういうとき、私はダラダラ使い続けることはせず、潔く捨てるようにしています。
自分に合わない道具を使い続けていると、そのストレスで知的生産性が落ちてしまうからです(もちろん、なるべくそうならないように、買うときに吟味していますが)。
これは、決断です。
知的生産性を上げたければ、多少のムダ遣いには目をつぶらなければなりません。
逆に「もったいない」を優先するならば、知的生産性を上げようとは思わないことです。
「もったいない」をとるか、知的生産性をとるか。
これは、他人が指図することではありません。
あなた自身が選択し、決断することなのです。
ノートを破って心を解放しようもしあなたが、知的生産性を優先させると決断したものの、まだノートを大胆に使うことに抵抗があるなら、こんな方法を試してみてください。
それは、新しいノートを買ってきてページを思いっきり破ることです。
心理的な抵抗がなくなるまで、何ページも何ページも破ります。
破ったら、細かくなった残骸を集めて〝山〟にしましょう。
そこまでやると、「もったいない」に縛られていた心が解放され、心が自由になるはずです。
実際、ノートが汚い生徒には、この「ノート破り」を試してもらいます。
一度やると、その後はたいていノートの使い方が大胆になっていくから、不思議です。
皆さんも、「もったいない」という気持ちがどうしても捨てられなければ、一度試してみてください。
きっと、それまでの「呪縛」から解放され、自由にノートを使えるようになるはずです。
マインド③楽しみながらノートをつくる
ノートの書き方にルールはないマインド②では、ノートの呪縛から解放されるための方法をご紹介しました。
一見馬鹿げたことのように思える「ノート破り」が効果的なのは、裏を返せば私たちがそれだけ「こう書くべきだ」という先入観にとらわれていることを表しています。
実際、世の中には、「ノートはこう使わなければいけないんだ」と主張する人がいます。
小学生や中学生のとき、学校や塾の先生から、ノートの書き方についていろいろと指導を受けませんでしたか?「落書きはするな」「教科書の英文はすべて書き写しなさい」などなど……。
しかし、ノートはこう使うべきだという、絶対的なルールはありません。
ノートは、もっと自由に使っていいのです。
私自身、かなり自由にノートを使っています。
たとえば、何度ノートを読み返しても覚えられない言葉があれば、その覚え方を語呂合わせやイラストで書き込むようにしています。
また、「おお、そうだったのか!」「眠い」「面白すぎる!!」というように、ノートをとりながら感じたことを、そのまま書き込むこともあります。
さらに、「後で辞書で詳しく調べる」などの具体的なアクションプランやtodoを書くこともあれば、一度覚えたはずなのに忘れていた漢字や英単語を抜き出し、それが解答となる「問題」をつくって書き込んでおくこともあります。
その結果、私のノートには、辞書、暗記帳、日記、アイデア帳、todoリスト、ドリルといった要素がすべて盛り込まれているのです。
これをちょうどパソコンにたとえるなら、さまざまなソフトの画面が同時にいくつも表示されている状態だと言えるでしょう。
いわば、マルチウインドウ機能搭載ノートです。
「お気に入り」にして何度も読み返すここで私が強調したいのは、ノートづくりにおいて制約は何もないということ。
ノートは、自分好みにカスタマイズしていけばいいのです。
飾りつけるのが好きな人なら、シールや写真を貼ってもいい。
色ペンなどを使って、カラフルにしてもいいでしょう。
実際、生徒の中には、イラスト満載のノートを使っている人もいます。
カスタマイズする目的は、徹底的にノートづくりを楽しみ、世界にひとつしかない、あなただけのノートをつくること。
狙いは、まさにそこにあります。
無味乾燥なノートだと、読み返そうとしても、心理的なハードルが高くなります。
しかし、自分流のお気に入りノートをつくれば、後から何度も読み返したくなるでしょう。
何度も読み返せば、書かれたことがどんどん頭に入ってくる、というわけです。
なお、ノートをカスタマイズする方法については、第5章で詳しくご紹介します。
マインド④書くこと・書かないことを見極める
すべての情報を記録する必要はない生徒に「ノートに関して悩んでいることは何?」と質問すると、「先生が話すスピードに、手の動きが追いつかない」という答えがよく返ってきます。
これは何も学生だけではなく、セミナーや勉強会に参加している社会人にも共通する悩みのようです。
こういう場合、マインド①でふれたように、書くスピードを速めるというのも、ひとつの解決策でしょう。
でも、その前に、ちょっと考えてみてください。
あなたは先生(講師)の話を一言一句、すべて書きとめようとしていませんか?はっきり言います。
その必要はありません。
ここでもう一度、何のためにノートをとるのかを考えてみてください。
自分の将来に役立てるため、あるいは、将来の自分が困らないようにするためですよね。
先生や講師の話をすべて書きとめれば、大量の情報がノートに記録されることになります。
当然、その中には必要のない情報も数多く含まれているでしょう。
当たり前のことではありますが、必要のない情報を記録する必要はありません。
それは、エネルギーのムダ遣い。
そのエネルギーは、あなたにとって、本当に必要な作業のために使うべきです。
大事なのは「自分」というフィルターを通すこと人の話をすべてノートにとろうとする人は、学ぶことに積極的なようで、結局は受け身なのだと思います。
先生が「上」で、自分を「下」に位置づけている。
だから、先生が言ったこと、講師が話したことは、細大漏らさずノートにとらなければいけないと思い込んでしまっている。
しかしこれは、相手の言葉を無批判に受け入れている状態です。
自分の頭で考えることを放棄している状態と言ってもいいでしょう。
よく考えれば、かなり危険なことですよね。
本来なら、先生の話を自分の中で批判的に受け止め、「これは必要、これは不要」と選別していくべきなのです。
ここで、何が「必要」で何が「必要でない」かを聴く側が判断するのは難しいのではないか、という意見もあるでしょう。
確かにその通りです。
しかし、判断が難しいからといって、ただ受け身で聴いてしまってよいのでしょうか。
どんな話であれ、そのつど自分の頭を働かせ、自分というフィルターを通してから受け止めるべきだ、ということです。
何も考えずにひたすら先生の言葉を書き写していくのと、「これは今日の話の中で一番大切なポイントだな」「これは前回と同じ話だから、書く必要はないだろう」と考えながら書いていくのとでは、頭の使い方が全然違います。
良いノートとは、話の内容がすべて記録されたノートではありません。
ノートをとる側が頭を働かせ、そのフィルターを通じて選択的に記録されたノートこそが、良いノートなのです。
学ぶときには自分勝手を貫こう学ぶときには思いっきり自分勝手になる。
これは、勉強をするときに私が特に重視しているマインドです。
私たちが学ぶことの「目的」は何でしょうか?それは「自分自身を成長させるため」です。
だから、先生や講師に対して、「せっかく教えてくれるのだから、すべて記録しないと申し訳ないな」なんて、気を遣う必要はまったくありません。
そんなふうに考えていたら、あなた自身が成長できなくなってしまいます。
「この情報はいらない」と思えば、バッサリ切ってしまえばいいのです。
これまで受け身でノートをとってきたなと感じている人は、学ぶことに対して、これくらい自律的な姿勢を持つようにしてください。
それだけで、あなたのノートのとり方はずいぶんと変化していくはずです。
マインド⑤元ネタを進化させる
オリジナルよりもわかりやすくノートをとるときに、授業(講義)やテキストは、いわば「元ネタ」だと考えられます。
アウトプット品質のノートをつくるときに大切なのは、この元ネタを進化させて、よりわかりやすいものにしようという考え方です。
では、ノートを元ネタよりわかりやすくするには、どうすればいいのでしょう?それは、授業を受けながら、あるいは、テキストを読みながら、「今、先生が話している内容(あるいは著者が述べている内容)を、自分だったらどうやって人に伝えるだろう」と考えながらノートをとっていくことです。
先生や講師の話、テキストというのは、完璧なものではありません。
「こんなふうに説明すれば、理解しやすいのに……」「あの内容を一緒に見せたほうがわかりやすいのに……」こんな不満を感じることもあるでしょう。
あなたが感じた不満は、元ネタが持つ「穴」です。
ノートをつくる際には、この「穴」を埋めることを意識するのです。
誰もがわかる形にまとめ直すたとえば数学で、ある問題の解き方に関する授業を受けたとしましょう。
その場合、先生の説明が正しい順になっていないことがあります。
必要な手順を省略してしまったり、手順を前後して説明したり……。
その場合は、聴き手であるあなたが、内容を順番通りに整理していくのです。
このようにして、どんなわかりにくい授業も、どんな読みにくいテキストも、あなたの手で誰もがわかる形に変身させてあげるのです。
これこそが、「アウトプット品質」のノートが目指す究極の姿だと言えるでしょう。
ノートが元ネタのレベルを超えるのはなぜ?生徒にこの話をすると、「なんだか、難しそう……」という答えがよく返ってきます。
確かに、慣れるまでは簡単ではないかもしれません。
私自身、始めた当初は大変でした。
でも、毎日「元ネタよりわかりやすく」を意識してノートをとっていたら、次第に苦痛に感じなくなってきたのです。
そもそも、自分の頭を通していれば、ノートはおのずと元ネタの授業やテキストよりもわかりやすくなるはずなのです。
なぜ、そう言い切れるのか?理由は単純。
授業や本で述べられることは、先生(著者)の頭の中で練られた上でアウトプットされたものです。
そして、今度は私たちがそれを自分の頭の中に通して、ノートに書きとめます。
つまり、思考している人の数がひとつ増えるわけです。
だから、ノートは元ネタよりわかりやすくなる。
さらに言えば、ノートへの書き込みは先生(著者)とあなたとの共同作業です。
これで、元ネタの講義や本よりも良いものができなければ、自分自身が頭を使っていないことになります。
先ほど「自律的に学ぼう」と書きましたが、受け身な姿勢のままでは、どれほど時間をかけようと、学びたい内容はあなたの中に入ってきません。
得た知識を、さらに進化させて変えていく。
そんなマインドが、あなたのノートの質を格段に上げるのです。
前章でも述べた通り、ノートをアウトプット品質にするには、できるだけ「その場」で処理することです。
決して、後まわしにしてはいけません。
ただし、問題は、授業やセミナーなどでノートをとる場合。
話を聴きながら、リアルタイムでノートをまとめていくのは、至難の業です。
しかし、くり返しになりますが、これは決して不可能なことではありません。
話を聴くときの〝ちょっとしたコツ〟さえマスターすれば、かなりの情報を記録することができるのです。
その〝ちょっとしたコツ〟とは、何でしょうか?そこで、ここからはアウトプット品質のノートをつくるための「話の聴き方」と「ノートのとり方」について解説していきます。
なお、「ノートをとる」という場合、このように、人の話を聴いてまとめるというケースが一般的でしょう。
そこで今後は、原則として、このシチュエーションを想定して解説をしていきます。
コメント