10-1P/Aの人事考課と育成法
店長の最も重要な職務の1つは、社員やP/Aで構成される部下の教育トレーニングによる継続した育成です。
「基本心得チェックシート」(図表❿-1)や「職務基準チェックシート」(図表❿-2)は、各個人別に仕事に取り組む基本姿勢や勤務態度、職務に関する確認や実施レベルなどを評価するものです。
これらに関する評価は一定期間(1~3カ月)ごとに、本人による自己評価と上司(店長)による評価(人事考課)で行われます。
4段階としているのは、あえて評価に誤差を生じさせるためです。本人に対しては、勤務態度や職務が要求する具体的な作業内容やポイントを確認し自覚してもらう意味で実施されます。
また、店長が各個人の現状レベルを一定期間ごとに改めて考課し把握するために行われます。店長は個人別に知識や技術で不足している部分を見つけだし、次回の人事考課までに育成の目標レベルを設定し、教育指導の優先順位をつけるわけです。
店舗での教育は個別的・計画的・重点的・継続的に実施する必要があります。優先順位は自店の店内組織や現状レベル、時期により変わります。さらに週間単位でテーマを決め、教育トレーニングの重点ポイントをおさえておけば、毎日の仕事を
しながらでも、手空き時間やピークの時間帯に各部下に教えることが可能です。P/Aにも各自の現状レベルを認識させる必要がありますが、それは個人面談によって実施されます。
具体的にはこれら職務基準チェックシートの中から本人と上司の採点のギャップのあるものを拾い出して行います。それらを本人から聞くことを主体として面談を進め、店長としての正しい評価基準を説明して本人にも納得してもらうのです。
その意味ではこれらチェックシートは、コミュニケーション・ツールととらえることもできます。店長の職務はこのように人事考課と個人面談、OJTを通して部下に目標設定し育成することなのです。そして、その過程で自分自身もいつの間にか部下を通して成長していることを自覚するとともに感謝すべきです。
10-2P/A個人面談とカウンセリングの方法
お客さまに対しホスピタリティにあふれ、マニュアルを超えた個別対応のできる素晴らしいサービスを実践するには、各従業員の持つ資質や能力の良い面を積極的に引き出す必要があります。
また、仕事や職場の人間関係などに関する個人的な悩みや問題点を聞き出すことで、本人の心情を理解し、それらの解決策を見いだせるように協力することは上司としての務めです。
その基本となるのが、上司が部下に対して行う「ラインカウンセリング」です。店長や経営者が従業員に対し、個人対個人として従業員の話を聞くことでカウンセリングは実施されます。
特にピープルビジネスといわれるサービス業では不可欠の技法であり、管理者としてマスターしなければならない能力の1つです。
定期的なラインカウンセリングを従業員全員に実施することで、「明るく・楽しくやりがい・ふれあい」にあふれる人間関係の良い職場が築かれ、上司としてのリーダーシップも醸成されていくのです。
説得ではなく納得
管理者として部下を個人別に見たとき、店内で発生するオペレーション上のさまざまな作業やサービスを「できない人」と「やれない人」がいます。
これらの部下には、主にOJTを通して不足する知識と技術を与えれば「できる人」「やれる人」に育てることが可能です。この場合のポイントは各人に不足する知識や技術を指摘し、それらに対する「答え」を与えることで解決できます。
要するにヘッドツーヘッド(頭から頭へ)がテーマとなるわけです。問題はこれから述べるP/Aたちです。それは「できるのにやらない人」と「そこそこにやっている人」です。
十分な知識や技術がありながら、それらを発揮しない(したがらない)人たちです。このような場合には、OJTやOFFJTをしたところで効果はあまり期待できません。
大切なことは、本人になぜしないのかを気づかせ、こちら(管理者)もそれに対応して「自分からやる人」になれるように導くことなのです。
この場合は先程の「答え」ではなく、双方が話し合いの中から「応え」を導き出すことが重要なポイントとなります。要するにハートツーハート(心から心へ)がテーマとなるわけです。
なぜ、そうしてしまうのかを本人に考えさせ、ハートツーハートによる「応え」を導き出す技法が、個人面談を通して行われるカウンセリングなのです。
カウンセリングはこれらの問題を抱えたP/A以外に対しても行わなければなりません。
管理者が各P/Aが持っている、それぞれの人間的な魅力や個性の素晴らしさを発見し、素直に認め積極的に褒めることで、ホスピタリティや人間性がさらに発揮されるようになります。
その結果、仕事への前向きな姿勢が芽生えたり、マニュアルを超えた個別対応のサービスが実現されるようになります。カウンセリングの基本は、まず相手の話をしっかりと心を開いて聞くことから始まります。
その結果、上司から説得されて何となくやらされているのではなく、自分で納得した上で自分の意志により積極的に行動を起こすことになるのです。
個人面談においては、上司が聞き役に徹するという基本姿勢が重要です。1~3カ月に1回のペースで各部下に個人面談(カウンセリング)を重ねることで上司への「信頼感」が生まれます。
管理者として日常の言動がきちんとしていれば、やがてそれは「敬服」に進展し、最終的には「権威=リーダーシップ」に昇華されるのです。
カウンセリング5つの基本
①まず、積極的に聞くことで相手を受け入れよ
サービス業の店長や経営者は仕事柄、話すことが得意な人が多く、説得力にも自信を持っています。ところがカウンセリングでは、これが災いすることを肝に銘じなければなりません。それはカウンセリングをしているつもりで、実は一方的に話し続け説教になっていることが多いからです。優秀なセールスマンほど、話し上手よりも聞き上手が多いと言われます。人は誰でも自分の話に耳を傾けてもらえると心地が良いものです。
その結果、そのセールスマンを信頼し納得して商品を購入してしまうのがその理由です。商品ではなく人柄が買わせたのです。従って、上司としてカウンセリングを行うには一切、批判的な態度やその人に対する先入観を捨てることです。
そして、積極的に聞くことから始めなければなりません。少なくとも7:3か8:2くらいで相手に話をさせ、自分が常に聞き役に回ることを心掛けなければなりません。
②おうむ返しで確認せよ
心を開いて本当に聞くためには、積極的なあいづちが必要となります。基本形は「……こうしたんです」と言ったら、「そうなされたんですか」と、相手の言ったことをそのまま返す「おうむ返し」です。
さらに「それはよかったですね」「さぞ驚かれたでしょう」「それからどうなされたんですか」といった、話の潤滑剤とも言える誘いのあいづちも必要となります。
重要な点は、テクニックではなく心から耳を傾けあいづちを打つことです。できるだけ相手の立場になって傾聴するのです。
③質問によりリードせよ
さらに何を言いたいのか質問を交えながら話を誘導し、相手の話や言い回し、表情から心情や感情を読み取り、話の内容を整理し要約するとともに明確化して相手に返すことです。
「要するに……、ということなのですね」「……はどう感じていますか」などがこれに当たります。人間は誰でも向上心があり、自分自身に至らない点があれば、それを改善したいと思っています。
また、各自がプライドを持ち、常に自分を良く見せようと思っているものです。大切なのは相手の性格や特質を知り相手の身になって考え、なぜそう言うのか、なぜそうしているのかを判断することです。
④具体的に相手を支持せよ
話の中で良い点があれば、具体的にその行動を認め積極的に褒めます。ポイントは成果やその成果を上げるために、どのような努力をしたか具体的に聞き出し褒めることです。
「最近、サービスの……がとてもきめ細かく気配りできるようになったと感じるのがですが、どんな風に努力したのですか」「ほう、それは素晴らしい。すごく参考になるな。今度はほかのパートの人たちにもトレーニングで使わせてもらおう」などです。
褒められ認められて悪い気持ちになる人は誰もいません。表情豊かに心から、照れずに褒めることです。
⑤最後にまとめをしっかりとせよ
カウンセリングの最後に大切なことは、より良くなってもらうために何か1つは相手にテーマを与え、相手の口から言わせたり、相手に思いつかせることです。人は誰でも自分で言ったことや自分の意思で決定したことが、行動の原動力としては最も強いものです。
相手自身に、ここは直さなければ、この点はもっと努力します、と言わせたり感じさせられるようにカウンセリングを導き、終わらせることができればベストです。これらは何度も言うように、心を開いて聞くことで、相手も心を開き感じてもらえることなのです。
また、「店長として私のやり方に疑問や問題があれば、何でも言ってみてくれませんか」と個人として相手の意見を聞く姿勢を持つことも重要です。
例え何を言われても、その場では弁解や理由を説明せず、上司としてなぜそのように受け取られたかを反省すべきです。その「応え」は、その後のミーティングや日ごろの行動を通し、店長として背中で示すことなのです(図表❿-3)。
事前準備が成功の決め手ただ単にカウンセリングをすればいいというものではありません。全員にするには、誰からどういう順序で行うことがよいのか。相手により何と言ってカウンセリングに呼び掛けたらよいのか。
カウンセリングをする時間や場所はいつ、どこが適切なのか。はじめに何と声を掛けるのか、どこでどのように座り何から話したらいいのかなど、事前準備のポイントはいくらでもあります。また、相手によりテーマを絞り、面談の内容も使い分ける必要があります。
例えば、「最近、クレンリネスの維持ができていないが、どうしたらよいと思いますか」と引き出したり、相談する手法や「今度、サービスをこうしてみたいが、やってもらえないだろうか」と頼む(押しつける)手法などがあります。いずれにしても内容やテーマにより、その主旨をきちんと説明し個人面談を成功させたいものです。
人やカウンセリングの内容によっては、1回ではうまくいかないこともありますが、聞き役に徹し個人面談の回数を重ねることでお互いが理解でき、コミュニケーションも取れはじめ人間関係は徐々に潤滑さを増していくものです。
店長として重要な点は、相手の良いところを素直に認め、積極的に伸ばすことで欠点を減らすといったプラス発想の姿勢を常に取ることです。そのためには、上司としていつも明るく公平に部下と接することを努力すべきです。
コメント