MENU

第1章環境整備こそ、すべての活動の原点である

目次

第1章環境整備こそ、すべての活動の原点である

※環境整備は全ての活動の原点。

なぜ、環境整備で業績が上がっていくのか?

一倉先生のコンサルティングは、環境整備に始まり、これ以外何もしていないのに、業績が上がり、あとは、すべて、自然とうまくいく、ということです。

事業経営に環境整備を入れることで、なぜ、業績が上がるのでしょうか。業績が上がるということは、売上が上がる、儲かる、利益が出るということです。

それは、お客様が買い続けてくれることを意味しています。これこそが、事業の始まりにして最大の目的です。お客様が買ってくれなければ、会社は潰れます。

事業を存続していくためには、お客様に買ってもらい、利益を出し、さらに新しい商品やサービスをお客様に提供していかなければなりません。

とてもシンプルです。ところがこれが難しいのです。3ヶ月くらい前、ある定食屋のランチを食べに行きました。そこは明太子が食べ放題なのです。この「食べ放題」というのが魅力です。

実際は、明太子だから、塩辛くてたくさん食べられないのですが、自宅では味わえない、何か小さな夢を叶えてくれたような気になります。

私は月2回ほど通い続けています。それとは正反対のお店が近所にオープンしたのですが、そこは本格ハンバーガーを提供するお店です。開店記念で半額で食べました。

味はそこそこで美味しかったのですが、通常料金で食べるほどではないなと思いました。

お店のオーナーの立場からすれば、店舗を借りて、内装にお金をかけて、「さあ、いよいよオープンだ、やるぞ!」と気合いを入れていたとしても、勝負はすでについているのです。

ご自身で考えてみてください。一度しか行かない飲食店が多いのではないでしょうか。通うお店も限られているのではないでしょうか。

※満足したところには通う。清掃が行き届いてない場所にはいかない。

「お客様に買っていただく」というシンプルなことにもかかわらず、これが難しいのです。

※お客様に買ってもらいたい・大切にするというマインドが欠乏している。

買ってもらえれば天国、買ってもらえなければ行き着く先は地獄です。

経営者は、日夜、どうやったらお客様に買ってもらえるかを、考えに考えて、努力に努力を重ねています。それでも潰れる会社があとを絶ちません。

しかし、一倉先生は、「環境整備以外何もしないのに、すべて自然とうまくいく」とおっしゃっているのです。

もし本当にそうだとするならば、すごいことではありませんか?一倉式環境整備とは、「規律・清潔・整頓・安全・衛生」です。

詳しくは第4章で解説しますが、簡単に言えば、いらないものを捨てる、埃も汚れも取り除き、物の置き方と置き場所を決めるということです。

これをやるだけで、業績が上がる、つまり、お客様が買ってくれるようになる、ということです。いかがでしょうか?信じられるでしょうか?ぜひともその仕組みを知りたいですよね。

そこで、この章では、「事業経営に環境整備がどのような影響を与えるのか?」「どのような仕組みで、お客様が買い続けてくれるようになるのか?」「一倉先生は、なぜ、社長学に環境整備を入れたのか?」その謎を解き明かしていきます。

まずは、一倉先生のこの言葉から始めましょう。

なぜ、環境整備は「すべて」の活動の原点なのか?

環境整備とはすべての活動の原点である!」いかがですか?一倉先生はこの一言で環境整備を定義しているのですが、実はこの「すべて」という言葉がポイントです。

社長専門の経営コンサルタントの一倉先生なのですから、「すべての活動」でなく、「すべての社長の原点」とか、「経営活動の原点」というのであれば、しっくりくると思いませんか。

会社経営のみに限定されるから、自然ですよね。なぜ、「すべての活動」の原点なのかを、ずっと考えていた時期がありました。そのあと、それをつくづくと思い知らされた体験をしたのです。

北海道胆振東部地震で体験したすべての活動の原点

2018年、9月6日、北海道胆振東部地震が起きた時の経験です。当時、札幌の中心部に近い場所に住んでいた私は、夜中の3時頃、強い揺れに起こされました。札幌では震度5強でした。

幸い家の中は地震による影響はそれほどありませんでしたが、一日ほど停電しました。北海道全域が停電したのです。震源地は厚真町で震度7。

私の実家がある、むかわ町の隣町でした。実家も被害が大きいに違いないと、すぐに妻と次女と向かいました。車でむかわ町に近づくにつれ、倒壊した建物が多くなります。

町に入ると、その数が多くなっていきました。実家に着き、車を停め、家を見上げると外観上、無事に見えました。

しかし、一歩中に踏み入ると、そこは爆弾でも落とされたかのような状態でした。

すべての家具は部屋の中心に向かって倒されていて、重いピアノが数メートルも動いていたのです。55インチのテレビは吹っ飛んで倒されていて、画面は割れていました。2階に上がると押し入れからものが部屋へとはき出されていました。

本棚やCDラックが倒れ、あらゆるものが部屋に敷き詰められ、乱雑に積み重ねたかのように散乱していました。

ガラス破片が飛び散っているので、私たちは、靴の裏を洗い、土足で家の中を歩かなければなりません。

幸い両親は無事でしたが、ただただ放心状態でその場にいるというような状態です。途方に暮れていました。

両親の落胆した様子に、私たちはまさかこれほどまでとは思いませんでした。

私たちも気を抜くと両親と同じようになってしまう……気持ちを奮い立たせ、とにかくリビングの一角だけでもご飯を食べられる場所を確保しなければと、重いテレビを動かし、新聞紙やらDMやら、何やらもうわからないような紙屑をゴミ袋に入れ、散乱しているガラスの破片を拾い集め、掃除機で吸って、何とか場所を作っていきました。

その作業をしている間、両親は先ほどと変わらず空を眺めていました。私たちは無我夢中で作業に没頭しました。徐々にほんの小さな一角の絨毯が見えてきました。

掃除機をかけていくうちに、不思議な感覚を覚えたのです。心の底から何か不思議な力が湧いてくる感覚でした。それは言葉にするなら「希望」というものでした。こんな状態の家だって、綺麗にできる。

一つゴミを捨て、家具を起こし、掃除機をかけ、本棚には本をしまう、という小さなことを繰り返していけば、こんな家だって必ず綺麗になるという希望です。

気づけば、つい数10分前の、どうすればいいのかという途方に暮れそうになった気持ち、自分たちにできるんだろうかという不安、無理かもしれないという否定、すべてのマイナスの感情がなくなっていました。

違う言葉で言い表すならば、積極的感情の芽生えと言えるでしょう。絨毯が見えた頃には、両親の顔にも赤みが刺し、父が冗談を言い始めました。実家ではいつもの光景です。

笑いが徐々に増えて、どんよりした空気が一掃されたようでした。ようやく小さいながらも場所を確保し、そこでご飯を食べ、休憩しました。

数時間前、この家に足を踏み入れた時とは全く違う空気がそこに流れていました。ぽつり、父が言いました。

「命があるだけ儲けものだな。それにしても不要なものだらけだ。こんなことにならないと気づかないものだ。もっと身軽になろうかな」

この際、家の中のものを少なくしようと、長年あった食器棚2つを外に出しました。棚という棚から出てきた年代物の食器や、調理器具、雑誌や書類などを、この機会に大量に捨てました。

両親は今は、震災前よりむしろ快適な空間で、新しい家具と最新のテレビに囲まれて、元気に暮らしています。

人が正しく成長するための基本、環境整備

この経験を通してわかったことは、どんなに失意の中にいても、環境を整えようと行動に移すことができれば、「心が正しい方向へと変わる」ということです。

私の両親は、グチャグチャになった部屋で、なすすべもなく、ただぼーっとしていました。

しかし、ほんの少しだけ、ほんの一角だけ、ものが取り除かれ絨毯が見えただけで、よしやるぞ!というエネルギーが出たのです。

父は「こんなにも、ものに縛られていた」ということに気づき、反省しました。残された人生をもっと身軽になりたいと願ったのです。

そして行動に移しました。父の未来が変わったということです。その前と後では、全く別の人格へと変貌していました。

置かれた状況は変わらないのに、失意の人から希望に溢れた人に変わったのです。環境を整えることで心が変わります。心の乱れや汚れも取れていくからです。

私は震災後の環境を整えるお手伝いをしながら、失意の中から立ち上がり元気になっていく両親の姿を見て、環境整備によって目の前に広がる乱れを正すことで、心も正しい状態になることがわかりました。

日本は戦後の焼け野原から、見事に復興しました。

家は焼かれ、大切な人を失い、失意の底にいても、瓦礫を1つ避け、2つ避けるところから、希望を持ちながら復活してきたのです。

花の種は、肥沃な土と水と太陽の光によってすくすくと成長し、見事な花を咲かせます。人もまさにそれと同じです。

まずは自分のいる空間を清潔にし、整えることを基本とすることで、人は正しい心となって成長できるのです。

「掃除」「清掃」の言葉の由来を調べてみると、宗教用語だそうです。その意味は、神様が降りられる場所を清めるというものです。

年末大掃除は江戸時代から始まったとされる日本の伝統行事ですが、それは翌年のお正月に、一年の豊作を司る神さまである「年神様」を迎えるために行うものでした。

一年を振り返り反省と感謝を深めながら、家の隅々まで掃除をするのです。神様を迎えるために人間ができる最初の行為が、神様の降りられる場所を清めることです。

環境を清めながら、心も清めていきます。これは人が神様に対しての正しい環境と正しい心を作るための行動です。その上で、発展繁栄を祈願します。

昔から、武芸でも芸事でも、見習いは、まず師匠の生き方を学ぶために、徹底して掃除をさせられます。環境を整備させながら、正しく学ぶ姿勢を作っているのですね。

つまり、環境整備とは、人が正しく発展繁栄していくための基本的な活動と言えるのではないでしょうか。

このように震災の体験を通して、私は環境整備が「すべて」の活動の原点であることが理解できたのです。

事業経営に環境整備を入れた慧眼の士・一倉定

人間が生きていく原点として、環境整備を据えることですべてがうまくいく、つまり、正しく人間が成長する、ということが理解できたことと思います。

では、一倉先生は、このすべての活動の原点である環境整備を、なぜ、社長学の中心に入れたのでしょうか。

その答えとなる文を紹介します。

会社というものは社長次第でどうにでもなる、ということである。社長が正しい姿勢をとると、社員の姿勢は自然に正しくなる。社長が正しい決定をすると、会社の業績はその瞬間から向上してゆく。

反対に、社長が正しい姿勢をとらないと、社内は乱れ、社員の志気は低下してゆく。社長が正しい決定をしない限り、何をどのようにしても会社の業績は絶対によくならないのである。

一倉定の社長学第1巻『経営戦略・利益戦略』より

社長が正しい姿勢を取ると、会社の業績はその瞬間から向上してくるということです。私たちにとても必要な気がしてきました。もう少し深く探っていきましょう。

問題は、社長が正しい姿勢を取らないと、社内は乱れ、社員の士気が低下していくということ。これは、業績が悪くなるということです。

赤字会社になっていくということです。では、社長の間違った姿勢とは、具体的にどのような状態なのでしょうか。

再び、一倉先生の言葉を引用してみましょう。

会社の業績が振るわない根本原因は、必ず社長がお客様の要求を無視しているからであり、お客様の要求を無視している限り、何をどのようにやっても会社の業績は絶対によくならない。…お客様を無視する会社は、お客様から無視される。

その結果は、倒産への道を歩まなければならないことになるのだ。それにもかかわらず、お客様を無視する会社は決して少なくない。

もしもわが社の経営が不振であったり、行き詰まってしまったならば、まず第一に反省してみなければならないことは、「お客様を無視していないか」でなければならないというのが私の主張である。

一倉定の社長学第9巻『新・社長の姿勢』より

とても厳しく、事業経営の本質をついた言葉です。

一倉先生は、会社の業績が振るわない根本原因は、「必ず社長がお客様の要求を無視しているから」だと言っているのです。

さらに続けて、お客様の要求を無視している限り、何をどのようにやっても会社の業績は絶対に良くならない、と言っているのです。

会社の業績が悪くなると、何とか売上を上げるために、キャンペーンを打ってみたり、プレゼントを付けたり、サービスを良くしたり、値下げをしたり、あの手この手と一生懸命やりますが、社長がお客様の要求を無視している限り、どんなに努力を重ねようとも、社員が一生懸命になろうとも、会社の業績は絶対に良くならないのです。

そして、お客様の要求を無視している会社が多いから、倒産する会社も多い、というわけです。それではどうすればいいのか。

その解決方法についても次の文で、はっきりとこのように言っています。

「もしもわが社の経営が不振であったり、行き詰まってしまったならば、まず第一に反省してみなければならないことは、「お客様を無視していないか」でなければならないというのが私の主張である。」

つまり、お客様の要求を無視していることを「反省」しなさいということです。ここで注目しなければならないのが、「反省」です。では、いったい誰が反省するのでしょうか。はい、一倉先生からのご指名があります。

お客様を無視しているのは部長や課長ではなく「社長」です。反省するべきは「社長」ただ一人です。

さあ、ここで反省し、自らの姿勢を正そうと思った方に、次の一倉先生の有名な言葉が心に響きます。

「電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも社長の責任」

会社で起きるすべての事象は、社長が責任を取らなければなりません。だから社長が反省をする必要があるのですね。さて、ここからです。

反省できますか?業績を悪くした原因は、すべて、自分がお客様を無視していたからだと反省をし、心を入れ替える決意をしたからといって、そう簡単に反省できるものなのでしょうか?

売れない本を書いた私は、よく反省し再び売れない本を書いた

私がそうじ力をテーマに国内で出版した冊数は、33冊になります。

その中には、いまだに毎年増刷され、出版から11年目で100万部を超えた『3日で運がよくなる「そうじ力」』(三笠書房)があります。

この書籍は15年以上にわたり読者の要求を満たし続けている本です。その他にも30万部、20万部の本もありますが、残念ながら全く売れなかった本もあります。

その本は、私の中ではとても力を入れて書いたものでした。参考書籍も60冊以上を読み、何度も書き直して完璧に仕上げました。

一番努力して苦労した本です。自信があったにもかかわらず、全く売れなかったのです。

これは、編集者が悪かったのでも、出版社が悪かったのでもありません。私が書いたわけですから、これはもう私自身の責任です。私は深く反省しました。その次の本は、もっと時間をかけて丁寧に仕上げました。

しかし、またしても売れませんでした。そうです。そうなんです。「反省する」ことは難しいのです。

誰も望んで倒産するわけではありません。倒産することを目標に、商売を始める人はいないのです。お客様に喜んでもらって、その結果、利益が出ることを願っているはずです。

そして社員にも多く給料を出したい、だから、社長は孤独の中、人一倍努力するのではないでしょうか。

しかし、理屈でわかっていても、反省して、心が入れ替わらなければ、何をどうやっても、お客様に買ってもらえないのです。

自分では気づかない潜在意識下で、お客様を無視しているからです。心を入れ替えることは難しいのです。

特に、社長となると、信念もプライドもあるので、なかなか自分の間違えを素直に認めて反省することができないのです。

私自身も、本が売れて全国に講演へ出かけたあたりから、会社に行かない日が続き、環境整備をしなくなりました。

社長としての姿勢も作家としての姿勢も、自覚症状がないまま、少しずつ崩れて、読者のための本ではなく、自分のすごさをPRするための本を書くようになったのです。

いつしか謙虚さを忘れ、天狗になっていました。わかっていたはずなのに難しいのです。

だから一倉先生は環境整備を社長学に入れた

だから、一倉先生は、環境整備を社長学の中心に入れたのです。経営理論よりも優先して、環境整備行動を強く指導したのです。

会社には、社長がこれまで自分で決定して作ってきたすべてが現れています。会社は社長の心の現れです。

いい時もあったでしょう。でも今は頭打ちになっている。もうこれまでのやり方が古くなっている。あるいは赤字に転落している。そういうものが環境に現れています。

その過去と対峙する行為が、環境整備です。心はどうであれ、環境整備を行ったところから変化し始めます。

使わないものを捨てる、汚れを取る、残ったものを整える、これまで自ら作り出した環境を、自分の力で変える行為です。自らまいた種を自ら取り除く。つまりこれは責任を取る行為なのです。

業績が良くないということは、社長が反省できていないということです。それは自分の責任だとは受け止めていないということになります。

どこかで必ず責任転嫁しているはずです。社員の能力が低い、買ってくれない客が悪い、国の政策が悪いなど、他人のせいや環境のせいにしているはずなのです。

逆に自分を責める人もいます。社長として何て能力が低いのか、だめな自分だと、自己卑下します。行き着く先は、病気を作り出すしか道はありません。

このように、何かのせいにしたり、自分を責め続けている限りは、絶対に反省はできません。環境整備は、心がついてこなくても、行動から入っていくことができます。

ものを捨てる、汚れを取る、整える、それらを繰り返すことで、心が落ち着いてきて、やがて客観的に自分を見つめることができます。

何が間違っていたのか、何が傲慢だったのか、何が頭打ちになっていたのか、何が赤字の原因だったのか。

頭ではなく心でわかるようになってきます。そして、知るのです。自分のことばかり考えていたことを。

自分の心配、自分の不安、自分の苦しみ、あるいは好況の時は、自分の才能、自分の成果、自慢の心と天狗になっていたことがわかってきます。お客様を無視し続けていた自分の姿が見えてきます。

そもそも、お客様の要求にお答えして、商品やサービスでより幸せになっていただくために始めた事業であったはずなのに、いつしか、自分中心になっていたことを知るのです。

責任ある立場にありながら、お客様を無視していた自分に気づきます。ここで初めて、「反省」に入るのです。環境整備によって反省し別人格となるのです。

もう一度お客様の喜んでいただける商品とは何か、サービスとは何かを考えることのできる人格へと変わっていくことでしょう。

その時、アイデアは降り注ぎ、未来は希望に満ち溢れるのです。会社の業績は、嘘のように上がっていきます。企業経営においての社長の姿勢が正されるからです。

このように環境整備には、行動によって心を変える力、反省させる力があります。反省することで、社長はお客様に対する正しい姿勢を取り戻すことができるのです。

これはわかりやすいように赤字会社の社長を例にしましたが、実は赤字会社の社長は、環境整備を行いやすいのです。というのは、藁をもつかむ思いとなっているからです。

プライドもすべて捨てて、環境整備をやりなさい!と言われれば素直にやるしか道は残されていません。そういった意味では、倒産寸前の社長は幸いです。

実際に業績が上がっていくのを体験すれば、事業経営には、環境整備は、絶対に手放してはいけない武器となります。実体験として、環境整備のすごさというものを知ることができるからです。

私が本当に伝えたいのは、企業経営をしているすべての社長に環境整備は必要だということです。

すべての社長に真摯にこれを受け止めて欲しいのです。

一倉先生は、会社というのは自然にしていれば必ず潰れるようにできていると言っています。その理由は、お客様の要求が常に変わっていくからです。

今、売上が上がっている会社でも、お客様がいつ急に買わなくなるのかはわかりません。

だから社長は常にお客様の要求に合わせて、自分の心を変えて、会社を作り変えていく必要があります。

そういった意味でも、すべての社長、またはお客様を持っているすべてのリーダーは、環境整備を常日頃から続けていくことが重要なのです。

社長の姿勢を正すために、一倉先生が社長学の中心に環境整備を入れたことを理解できたでしょうか。

この環境整備は、一倉先生が最終的に到達した境地だと私は思っています。世界に経営学は溢れていますし、とても優れた経営理論もあるでしょう。もちろん一倉先生もその一人です。

しかし、社長の心を根底から正す実践法が入った経営学はないでしょう。

掃除を大切にしている会社はあるかもしれませんが、一倉先生が認識していた環境整備は、予想をはるかに上回る深さがあります。

その秘密を第3章で解説していますので、楽しみにしてください。

社長専門のコンサルタント一倉定、通称「鬼倉」

さて、環境整備を社長学に入れた、偉大なる一倉定先生について、エピソードをお伝えしましょう。まえがきでも少し触れましたが、一倉定先生は、社長専門のコンサルタントでした。生前指導した会社は驚くことに1万社を超えていたと言います。

なぜ、これほどまでに多くの会社を指導できたかと言うと、赤字会社を中心に指導していたのですが、生涯、顧問契約を1件も結ばなかったからだと言います。

必要な期間、社長を指導し軌道に乗せ、黒字化の見通しがつけば、必要とされる次の会社へ行くのです。一倉先生はなぜ、赤字会社を中心に指導しようとしていたのでしょうか。

それは、経営コンサルタントとして独立する前、勤めていた会社が4社倒産する経験をしたからだそうです。

世の中が変わったのに社長が経営方針を変えなかったがために、会社が倒産して、自分も含め社員が生活の糧を失い、厳しい現実の中に放り投げられてしまったのです。

当時、一倉先生は子供がまだ小学生で、大変苦労したそうです。

経営とは社長の決定次第で、会社の運命、社員の運命が決まるということを、嫌というほど体験して、社長専門のコンサルタントになったのです。

また、社長たちからは恐れられたコンサルタントでもありました。社長を小学生のように怒鳴りつける。

また、灰皿が飛んでくる、額にマジックで×印を書かれた社長や、長い時間、無言の指導を受けた社長もいました。別名「鬼倉」。なぜ鬼倉となったのでしょうか。

一倉先生がコンサルタントを始めた頃に、指導を依頼してきた社長が、アドバイスを実践しなかったことがありました。そして倒産。

「もっと強く、怒鳴りつけてでも実践させていれば、この倒産はなかっただろう。これからは、鬼になる。罵倒してでも、実践させる。鬼倉になる」

『ゆがめられた目標管理【復刻版】』より

深い後悔、深い悲しみ、深い愛情から鬼となる。強い覚悟を感じます。

目的は「会社は絶対に潰させない!赤字会社を黒字化する!」きれいごとが通用しない、ドロドロに汚れた現実の中で、汗と油と泥にまみれながら、赤字会社を救ってきたのです。

お金がない社長は出世払いで指導したと言います。困っている社長をほっとけない、何とかしたいという行動が、気がつけば1万社以上になっていたのです。

その実践に裏づけされた考え方は、「一倉定の社長学」として全10巻にまとめられています。

一人でも多くの人たちに一倉定を伝える

しかし、しかしであります。社長しか手に取らないというのは、もったいなさ過ぎます。きれいな化粧箱に入っていて、タイトルも難しそうで、しかも分厚い。

立派な社長室の本棚に飾られるのにふさわしい外見はしていますが、本当は死にものぐるいで、明日の糧を得ようとしている中小企業、店舗、飲食店のオーナーが読むべき本なのです。

一倉先生は、社長専門コンサルタントですが、現代では商売をしている方が多様化しています。

家族経営から従業員が百人未満、一人で副業している人、ユーチューバー、フリマアプリで販売している人もそうですね。

経済活動している人、すべての人に本書を読んでいただきたいと思っています。必ず、黒字化します。

必ず、あなたの会社にはお金が入り続けます。お金が溢れて、雇用が増えて、地域を豊かにし、日本の国を黒字化しましょう。

いや、そうしなければならないのです。新しい未来を創るリーダーが今、必要なのです。本書は、環境整備に特化して、一倉先生のお言葉を解説する形で論じていきます。

一倉哲学からそうじ力という思想を見出し、環境整備について20年以上研究してきた私が解説しました。

実践し実績を積み上げてきた者として、語らせていただきます。一倉社長学の中心には、「ワンマン経営」「お客様訪問」「経営計画書」があります。

「ワンマン経営」は、会社のすべての責任は社長ただ一人にあるということです。責任を持つから決定ができます。

「お客様訪問」は、お客様を無視して赤字になっているのであれば、社長が自らお客様に直接聞きに行きなさい、ということです。

「経営計画書」は、お客様の要求に答えていく会社の未来ビジョンを、言葉と数字で明確に計画書として作成することです。

それらに「環境整備」を組み合わせることによって、理解と実践が加速することでしょう。

この他にも、「資金運用計画」「直接原価計算」「ランチェスター販売戦略」「会社内部の最小管理」があることも付け加えておきます。

すべては、お客様の要求に答えるために、社長自身を作り変えていく方法です。そこから未来の事業が創造されます。まずは、環境整備です。

すべての活動の原点だからです。本書を読んで環境整備のすごさを知ってください。そして、実践してください。

第2章以降、一倉先生による珠玉の言葉をもとにしながら、あなたの心に革命を起こし、大発展していくための方法を解き明かしていきます。

読み終えたあとには、すぐに環境整備したくなること間違いなしです。私とともに、一倉式環境整備による精神革命を起こしていきましょう。

コラム一倉定の環境整備の始まりに、まさかのドラッカー?

一倉定の社長学の講座が開始されたのは、1973年でした。環境整備が社長学に正式に登場するのは意外と遅く、1993年に発刊された『新・社長の姿勢』です。

ところが、2021年9月に復刻された、一倉先生の記念すべき第1作『あなたの会社は原価計算で損をする』は1963年に書かれたものですが、4章経営の費用節減に「清潔・整とん」の項目があるのです。

これには驚きました。すでに一倉式環境整備の実施思想が固まっているではありませんか。

さらに驚くことは、「清潔・整とん」の解説文として、何とP・F・ドラッカーの『現代の経営』続編を引用しているのです。

私はドラッカー先生を敬愛しているので、尊敬する御二方が環境整備について記述されている文を読んで、感激しました。

この感激はあくまでも私の個人的なものであり、貴重な紙面を使って私欲を満たすものですが、偉人二人のコラボをここに載せましょう。

ドラッカー氏の言を次に引用しよう。

──『現代の経営』続編より──『労働者の勤労意欲を昂揚するもっとも重要な手段の一つは、ちり一つ見当らないまでに作業場を清潔に保つことだといわれている。

これらの活動は、経営者がつねに労働者の仕事を真剣に考慮していることの一つの証拠となるばかりでない。経営者がみずからに課している〈基準〉、さらに経営者の善意や能力といったものを労働者に示すものとなるのである』

これほど、清潔・整とんは重要なものだということであるが、ここでひとつ、読者に考えていただきたいことがある。

それは、清潔・整とんは勤務時間内にやらせるべきか、作業時間終了後にやらせるべきかということで、どちらが経営にとってプラスになるかということである。

筆者の見解は、重要な事がらであるならば貴重な勤務時間を充当すべきであって、勤務時間外にやらせるということはとりもなおさず、〝重要ではない〟という意志表示である、ということだ。

『あなたの会社は原価計算で損をする【復刻版】』より

ここでのドラッカーの引用文は、1957年に発刊された『現代の経営』(野田一夫監修、自由国民社発刊版、絶版)からです。

ドラッカー先生は、環境整備について多くは語っていませんが、その中で、一倉先生がドラッカーの右記の文を引用したのは、その後、一倉式環境整備が完成される予言的なものがあると感じました。半世紀以上経った御二方の環境整備の考えは、今でも輝きを放っています。

整備された建物からは建物の精が、磨き抜かれた機械からは機械の精が、清浄で強力な精気(オーラ)を発し、これが遠く四百キロも離れた得意先にまで届いたからだ、と解釈したいのである。

そんなことがある筈がないといわれようが、こうした現象を他にも見ているのである。

一倉定の社長学第9巻『新・社長の姿勢』より

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次