何から先にやるか、何をやらないか……それが決まれば段取りは半分以上終わっている。
1 段取りは、「決める」ところから始まる
■まず「決める」──それがスタートだ
ビジネスに限らずすべてのものごとは、まず「決める」ところから始まる。
たとえば、つくる料理が決まっていなければ材料も買えない。どれほど複雑な調理作業であろうと、まず「どんな料理をつくるか」を決めるところから始まるのだ。
同じように段取りも、「これから先のことを決めること」からスタートする。
人、物、お金という要素に目を向けて、これから先の仕事をどのように進めるかを予測する。つまり、誰と、どういう方法で、何を、いくらで、いつまでに──ということを決めるのである。
もちろん、これがなかなか決まらないから段取りがうまくいかずに困っているのだが、それでもまず、「いつまでにやるか」だけは決めてしまおう。
つまり、“締め切り”を設定してしまうのである。
では、そもそも「決める」とはどういうことだろうか。
- 予測して予定を立てる
- 未知なものであれば想像力を働かせる
- 何を、いつまでに、どういう方法でやるか、決断する
- 決まったら気持ちの整理をする(決意する)
- 具体的なスケジュールに落とし込んでいく
何かを決めるときには、このような要素や手順を考える必要がある。やや精神論めくが、行動を起こすには自分の決心が必要になるということでもある。人間、何かを始めるときにはいろいろ迷うものだ。
しかし迷ってばかりでは何も進まない。間違った決断でもいいから、とにかく決めてしまわないとスタートしない。もちろん、間違った決断ばかりでは困る。
だからこそ、先にあげた の「予測して予定を立てる」ことが重要になってくる。
出たとこ勝負で苦し紛れの対応をするはめにならないように、トラブルが発生したときにどうするかも決めておくのである。二の矢、三の矢……と次々と対処できるように用意しておくのだ。これも段取りの一つと言えるだろう。
■ときには“勘”も必要になる
「決める」ということは、あくまで冷静に、やるべきことをやるべき手順で実行するということだ。そのためには、何をどういう順番でやっていくかを決めなければならない。
この「優先順位」については、『 2優先順位をどう決めるか?』で詳しく説明するとして、ここではあえて、“直感”という要素の大切さに触れておきたい。
「論理的かつ妥当性があるのは Aプランだが、私の直感では Bプランでいきたい」 段取りのできる人が、そんなふうに言うことがある。
はた目には第六感のようだ。しかしこの場合の直感は、経験と実績、さらに深い思考に裏づけされたものである。
最初から勘の鋭い人は、あまりいない。だから私は、あまり「勘も大切だ」と言うつもりはない。最初は論理的に考えるほうがわかりやすいし、スキルアップも早いものだ。
しかし何年かすると、論理的に考えるだけではうまくいかない事態に遭遇する。
そのとき、「これまでいかに真剣に問題に取り組んできたか」という経験が重要なカギになる。一見、「根拠なき判断」のようでも、できる人の“勘”には必ず経験の裏づけがある。
経験は二年や三年では身につかない──と思われるだろう。事実その通りである。だからこそ、いきなり勘に頼ってはいけない。
しかし、勘をバカにしてもいけないということだけは覚えておいてほしいと思う。
勘を鋭くするためには、常に予測し、結果を検証する習慣を身につけることだ。勘とは根拠のないイメージではない。深く考えたことで身につく立派なスキルなのである。
なぜ私が、一朝一夕には身につかない“勘”というものを大切にするかというと、いざというときに直感でベストの選択ができる人には、考えに考えた経験があるからだ。
つまり、八割の論理的思考を土台に、二割の“勘”があると言ってもよい。ただし勘だけで仕事をしている人は、よほどの大天才でない限り必ずミスをするし壁にもぶつかる。勘だけで段取りを決めている人も、必ずミスをする。ものごとを決めるときは、基本的には勘に頼りすぎないことが大切なのだ。
2 優先順位をどう決めるか?
■まず最初にやるべきことを決める方法
たとえば、 ToDoリストにやるべきことが五つあるとする。この五つの優先順位を決める方法を説明したい。まずこの中で、どうしても今日やらなくてはいけないものを一つだけ選ぶのだ。
残りの四つはやらない。あるいは「一つしか今日はできない」と想定して五つを見渡す。そうすることで、本当にやるべき一つを選び出すことができる。
なぜなら、「今日は一つしかできない」と決めているのだから。この発想が大切になるのだ。
次に、先に選んだ一つはすでに仕事を終えたものと考えて、残り四つの中から「今日は一つしかできない」と思って一つを選ぶ。
これを繰り返して、五つの優先順位を決めていく。もちろん、一つの仕事にかかる時間や付帯する条件なども考慮する。それによって優先順位は前後するだろう。
ここで最も重視すべきは「納期(締め切り)」である。つまり、「いつまでにやらなければならないか」という要素を最重要視する。
段取りとは、「一定の時間内に最大限の効果をあげること」である。
ということは、「納期(締め切り)」は、優先順位を決めるとき、最も重視すべきポイント、ということになる。
■絶対に外せないことは何か、を考える
納期とも関連することが多いのだが、優先順位を決めるときに常に頭に入れておくことは、「当面、絶対に外せないことは何か」と考えることだ。
こういう発想があれば、仮に優先順位が低い仕事でも、「先に手を打っておこう」という気持ちも生まれる。
いずれにしても「絶対に外せない」こととは、そのほとんどが、いちばん先に手をつけておかなければならないことの場合が多い。
たとえば、その日一日の段取りと優先順位を考えるときも、「今日、絶対に落とせないことは何か」 と考えればいい。
また、一つだけに絞るときに必要な考え方は、リストアップした仕事のうち、「これをしないと、あとで大変なことになってしまう」 というものから優先順位の上位にランクづけすることだ。
■決めるのに迷ったら、どうするか?
優先順位の決め方の整理のために、表をつくってみた(次の図)。
それぞれの項目に、
A……自分にとっての優先順位
B……組織全体、チームにとっての優先順位
をつけていく。
これは、いわゆる ToDoリストに、優先順位の基準を加えてみたものだ。
Aと Bを見比べて、仕事の難易度、納期やその日その週のスケジュールを考慮して、総合判断をする。
ところで、仕事は一つずつこなせればそれに越したことはないが、往々にしていくつかの仕事が重なる。とくに、重要で緊急な仕事が重なったような場合は、うろたえてしまうことも多い。そうならないためにも、まず自分に問いかけてほしい。
- それぞれの仕事に、同時に対応できることはないか?
- 判断するのに“迷っている”場合、迷いの原因は何か?
- 規律(判断基準)に沿って判断する(規律をあらかじめつくる)
- 協力してもらえる人はいないか?
- 早くできるほうを選ぶ
- 上司に判断を仰ぐ(最後の手段)
重ならない仕事を、考えの中から外す 迷ったときには、このような考え方をして打開策を考えてほしい。そこから効率のよい段取りも生まれてくるはずだ。
■優先順位を決めるチャートをつくってみよう
次の図を見てほしい。これは私が考え出した、優先順位をつけるときのオリジナルチャートだ。
私は優先順位を決める際に迷ったときにはこの図を見て、やるべきことはどこに位置しているかをざっくりと見るようにしている。
まず横軸に「時間」を取る。
「急ぎでやるもの」から「締め切りは先のもの」……というふうに、いわば締め切り(納期、期限、デッドライン)を軸にする。
縦軸は「収支バランス(利益効率)」だ。「コストパフォーマンス」と言い換えてもいい。上に行くほど、コストパフォーマンスは悪くなる。
こうすると四つのマス目ができる。左下は、利益効率もよく(コストも低く、利益や売上の出そうなもの)、緊急のもの。右下は、利益効率はよいが緊急ではないもの。左上には、緊急ではあるが利益があまり出そうにない(利益効率が悪い)もの。そして右上には、納期も長く利益もあまり出ないものがくる。
基本的には、左下のマス目に入るものが最も優先順位の高いものだと言える。次が左上のマス目。あるいは右下のマス目に入るもの。最後は右上のマス目に入るもの──ということになるだろう。ただ、単に優先順位をつけるだけではいけない。
今、緊急を要するもの。急ぎではないが、近い将来に必ず必要となること……これらを分類するだけでなく、時間とコストを見て判断することで、たとえばコストをかけていい、あるいは自分の裁量で仕事を外注してもできるものがあれば、そうすることで作業時間は短縮できる。
自分が他にやるべき仕事に費やす時間をつくり出すことができるのだ。
このチャートは、順位をつけるだけでなく、「どうすればさらに段取りよく処理できるか」という対策を考えるものでもある。
そうやって打つ手を考えることで、仕事の余裕も生まれるし、あるいは納期を前倒しできることもある。
3 やるべきことと、やらないことを決める
■「やるべきこと」と「やりたいこと」を分けて考える
優先順位を決めるときに気をつけるのは、とりあえず、「やるべきこと」を ToDoリスト(あるいは『「気になることリスト」をつくってみる』)に書き出すことである。
しかし、「やるべきこと」と「やりたいこと」は違う。「やるべきことリスト」と「やりたいことリスト」は、分けて考えるべきだと私は思う。
リストづくりのとき、「やるべきこと」ばかりだと、息が詰まってくる。人間はそれなりに趣味も余裕も持って生きるほうが望ましい。
だからこそ、「やるべきことリスト」とは別に「やりたいことリスト」もつくって、両者のバランスを考えながら処理していくほうが精神的にもよい。
そして、優先順位が上位になった「やるべきこと」は迷わずにさっさとやる。できるだけ急いですぐに手をつける。ここで迷ったら、優先順位をつけた意味がない。
また、「すべて自分がやるべき」と考えていると、自分の都合や“やりやすさ”で優先順位をつけてしまうことになる。
仕事は一人でやるものではない。本来は、組織やプロジェクトにとって重要なものが優先順位の上位にくるべきものなのだ。
もちろんこれは、その人の仕事の性格にもよるだろう。極端な話、作家や画家などは、その人だけで仕事が完結することが多いから、あまり周囲のことを考えなくてよい。
しかし普通のビジネスマンは、上司や部下、関係先などのことも考えながら優先順位をつけていくのが本来のやり方だ。
「根回しも段取りの一つだ」 と言った人もいる。その通りだと思う。
■「何をやらないか」を決める
優先順位をつけるとき、発想を変えて、「何をやらないか」を先に決めていく方法がある。これを「劣後順位」と言う。
たとえば朝、仕事を始めるとき、あるいは夜、明日の仕事を考えるとき、普通は「やるべきこと」がどんどん頭に浮かんでくる。
しかしそもそも人間は、そんなにいっぺんにいろいろなことはできない。ある説によると、人間が一日でできることは最大六つ──と言われる。
それも、一つの仕事は一時間を単位に考える。これは、教育現場を見ればわかるだろう。学校はほぼ一時間単位で、六つ(多くても七つ)の授業が行なわれる。
「そんなことはない、私は残業もしているし、もっと多くの仕事をこなしている」 と言う人もいるだろう。だがそういう人は、仕事の中身が充実していないことが多いものだ。
一つの仕事に集中できるのは、だいたい一時間。そこで数分の休憩を取り、一日に六つの仕事をこなす──これが理想である。
そのためには、まず「何ができないか」「何をしないか」を考える。そうやって緊急度や重要度の低いものを削ぎ落としていくと、自然と重要なことが残る。
「やるべきこと」をすべて書き出すことは、それなりに意味があるが、精神的には追い詰められる感じになってしまう。それよりも「やらないこと」を考えるほうが、取り組み方にも余裕が出てくるはずだ。
■やることを片っ端から書き出すのも、それなりに有効だ
劣後順位づけと一見矛盾するようだが、私は朝、その日やるべきことをすべて書き出す。それもできるだけ細かく。
□午前中、 PHP ○ ○さんに電話連絡──などとするのではなく、
□午前中、 PHP ○ ○さんに企画書の件で電話連絡
□先月納品分の請求書を B社経理宛に郵送する
□他社新製品リサーチ一〇件
□午後二時、 C社にて × ×さんと打ち合わせ
□会議資料七人分をコピー
□午後五時、自社会議室にて部内会議
……といったふうに、作業ごとに細かく書いていくのだ。
相手が不在で連絡できなかったりすることも多いが、そういうときでも「不在、午後改めて電話すること!」などとメモしておく。
作業が終わったらその項目にチェックを入れる。あるいはマーカーで消してもよい。どんな小さな仕事でも、終わったらチェックを入れて消す──これだけで達成感を得ることができる。
もう一つ、 ToDoリストをつくるときのポイントは、「やれることと、やれないことを分ける」ということだ。これは先の劣後順位の発想とも通じるところがある。
やりたくてもやれないものを ToDoリストに掲げても、「望んでいるリスト」になってしまう。
それはまったく意味のないことではないが、仕事を遂行するということを考えれば、「やるべきこと、やれることリスト」とは別に考えるべきだろう。
そうしないと気になることがどんどん自己増殖していって、心の中で重い荷物になる。そうならないために、まず「願望」と「義務」を区別しよう。そして、 ToDoリストに掲げたものは、必ずやり遂げること。納期や締め切りを記入して、“その日”までにやり遂げるようルール化する。これも大切なことだ。
4 段取りを立てる際の「気持ちの整理法」とは?
■段取り力アップのために必要な仕事術
段取り力を高めるには、メモを取る、人とのコミュニケーションをはかる、などといった仕事術のレベルを上げることも重要だ。
だから、自分の仕事のレベルも知っておく必要がある。以下に、段取りと密接に関係する仕事術をあげてみた。
メモの習慣思いつきやアイデアをさっと書きとめる、ということが必要。情報を取捨選択する整理能力体系的に情報を分類して、必要なものだけを入手する精度とスピードが求められる。
人との接触能力相手の話を聞く力、さらには本音を察知する能力も必要。
また、障害があったときでも仕事を前に進めるために、無理なお願いを聞いてもらえるような人間関係をつくることも必要になる。
プレゼン能力杓子定規で当たり前な表現、儀礼的な表現をしても人は動いてくれない。
相手がなるほどと思うような表現力、アピールする力を確実に身につける。
このようなスキルを、焦らずに一つずつ身につけていこう。
■平常心を保つ工夫をしよう
段取りはある意味、すごく集中力を必要とする。自分の今までの経験や持ち得る情報を総動員して、未来を予測しようとするものだからだ。それには“平常心”を保てることも重要だ。いわば、精神の安定力を身につける。
そのためには仕事だけでなくスポーツなどの趣味を持ち、継続的に取り組むことも大切だろう。そこで重要なことが、身体の健康と同時に心の健康である。疲れているときに段取りは立てられない。
仮に立てたとしても、無理があったり、あとで収拾がつかなくなったりする。また、精神的に参っているときにも段取りは立てられない。考えがまとまらないからだ。
そもそも段取りとは、手順を確実に決めることである。精神的に疲れているときに、きちんとした手順を決めることは、とてもむずかしいものだ。
とはいえ、人間は常に元気でいられるとは限らない。落ち込んだり迷ったりする。そんなときに気持ちを切り替えられないと、気持ちはますます落ち込んでいく。
そうならないためには、まず今までのことと、これからのこととの間で、気持ちを入れ替える必要がある。
たとえばシャワーを浴びるだけでなく、ゆっくりと湯船につかる。冷たい水で顔を洗う。ヒーリング音楽を流す……。疲れて出かけるときは、鏡の前で笑顔をつくってからにする。
そもそも、心が疲れているときや揺れているときに、段取りなど立てられるわけがない。まず、自分の気持ちを整理する工夫をしてみよう。
段取りを立てるときは、野球のピッチャーがピンチのときに「フーッ」と息を吐いて集中するように、いったん落ち着こう。
慌てていては、いい球は投げられない。自分の悩みや気になることを紙に書き出すのもいいだろう。そのために一日かけてもいい。
そうすることで自然と気持ちが整理され、余裕も生まれる。そのことが、いい段取りにつながるのである。
たとえば段取りを立てる前には気持ちを落ち着かせるため、コーヒーなり紅茶なりをゆっくりと味わう。
それだけでも、スムーズに仕事が進むものである。段取りよくものごとが進んだときは、気持ちもすっきりする。
その爽快感が次につながり、いい段取りが立てられる。私はときどき、段取りよくものごとが進んだときのことを想像する。いわゆるイメージトレーニングだ。
たとえば、さっさと仕事が終わって、続いて「さぁ次は何だ!」と両手を広げて仕事を待っていられる自分を想像する。
予定時間に仕事が終わって、自分のやりたいことに集中して時間がたつのがわからないくらい毎日が楽しい自分を想像する。
働いたあとにはきちっと片づいた、何も置いていない机があるだけ──という状態をイメージしてみよう。
5 現状把握を的確に行なう視点を持つ
■鳥の視点と虫の視点を持つ
段取りのうまい人は、いわゆる「俯瞰する視点(鳥の視点)」を持っている。鳥が高いところから下界を見るように、全体をまとめて見ることができる。何(どこ)がスタートで、何(どこ)がゴールか──ということが、しっかりと把握できている。当然、優先順位についてもよくわかっている。
同時に、「虫の視点」も持っている。つまり、目前のことを的確に把握する目だ。この二つの視点を同時に持つことで、長い目で見ることもでき、直近の出来事に臨機応変に対応もできる。
この仕事にはどれだけの時間とコストをかければいいか、かけてもいいか……ということが把握できるようになる。
結果的に優先順位の立て方にも無駄がなくなり、ものごとがスムーズに進む。段取り力がついていくわけだ。
■起こるべきことを的確に予測して対策を立てる
二つの視点を持つということは、要するに“現状把握”がきちんとできる、ということにもつながる。たとえばイベントを開催するというテーマが決まっていて、天気予報では当日「雨が降る」らしい。
そこで、雨が降るとどんなことが起きるのか、まずシミュレーションをしておく。屋外ならテントが必要になる。
スタッフのレインコートも必要になるし、来場者の傘立ても必要になってくる……などといったふうに、そのシーンを想定するのだ。
そうすれば、準備するべき備品なども思い浮かんでくる。このようにして必要なことをリストアップして対応するのが、まさに段取りである。
起こり得る事態を想定した上で、“現状把握”をするということだ。今の自分が置かれている状況も把握しよう。そうすれば、打つ手が限りなく出てくることだろう。
6 作業時間を見積もる技術とは?
■それぞれの作業にどれだけ時間がかかるかを割り出す
私は段取りを立てるとき、それぞれの作業にどれぐらいの時間がかかるかを必ず見積もる。これをやらないと、時間に間に合わなくなったりする。
たとえばプレゼンを行なう場合は、プレゼン当日までに、どんな準備作業が必要かをすべて書き出すのだ。
□資料づくり
□他社製品リサーチ
□シナリオづくり
□リハーサル
□資料チェック
次にこれらの作業に順番をつける。何からやればいいかを決めるのだ。そして、それぞれの作業にどれぐらいの時間がかかるかを見積もっていく。
これをもとにプレゼン当日から逆算して、当てはめていく。これが段取りである。このとき、それぞれの作業の間に「余白の時間」を設けておくのがポイントである。
仕事はすべてが予定通り進むとは限らない。むしろ、トラブルが起こるケースのほうが多い。そういう事態に備えて、あらかじめ余裕を持たせてスケジュールを組むのだ。
このスケジューリングのために、自分がやっている仕事は、どれぐらい時間がかかっているのかを一度は記録しておくといい。
私は社会に出たとき、先輩や上司と比べて自分の仕事のスピードが恥ずかしいほど遅かった。
そこで、先輩のように早く仕事ができるようになりたいと思って、自分が任された仕事の作業時間と先輩の作業時間のスピードを測ることから始めた。
「この作業は三〇分でできる」と予測して、実際は「四五分かかった」などと、予測と実際の計測を繰り返し続けた。
そうすることで、仕事時間の読みができるようになった。“読み”とは見積もることでもある。段取りを立てる上で、この見積もり作業は大きな要素を占める。
というのも、時間通り進まなかったら、その段取りは失敗したということだからだ。段取りは、「時間の見積もりと割当て」と同義語だと言ってもいい。
■作業時間を、どう見積もるか?
段取りを立てるときに作業時間を見積もれないと、立てた段取りそのものが狂ってくる。作業時間の見積もりのポイントは、次のようなものだ。
□過去の経験や具体的なデータを参考にする。
とくにミスや事故、アクシデントのときの状況はしっかりと記録して、頭の中に叩き込んでおく。「こんなことが起こる可能性がある」という経験が段取りのためのアイデアを生み出してくれるようになる。
□頭の中の具体的な内容、時間、対応策、処理方法などをメモする。
□他人や外注へ振り分けられるものかどうか確認する。
□どれくらいの余裕を持たせるべきか(予備の時間)を考える。
ただし余裕時間が多すぎると仕事の質や効率が良くならないし、少なすぎると何かあったときの対応ができない。
7 人員構成やコストを見積もる
■整理ができれば、ミスやロスもなくなる
ミスやロスは、段取りの大敵だ。しかし、整理整頓をすることでミスは防げる。たとえば、情報の整理をする。そうすれば、必要な情報がすみやかに取り出せる。
また、机の周辺を整理することで気持ちも落ち着く。大事な資料がどこかに行って出てこないようでは、段取り以前の問題だろう。
自分の机回りだけに限らず、仕事をする時間や環境を整理することで、モノだけでなく、そこで働く人々の知恵や能力を活かす工夫も見つけ出すことができる。
「整理」とは、そういうものではないだろうか。モノの整理だけでなく、時間や情報の整理ができないと、いい仕事はできない。
段取り力とは、結局のところは、多くの要素を整理する力とも言えるだろう。整理するために、現場を見渡せば問題が見えてくるものである。
見えてくれば予測も立てやすい。不測の事態にも臨機応変に対応できる。
■時間とコストのバランスを考える
段取りを立てるとき、時間の見積もりと割当てだけでなく、作業の手間や人員構成、コストも見積もらなければならない。
人員構成、役割分担、かかる時間と成果……これらを総合的に考えるのが段取りだ。ある意味で段取りは、時間とコストのバランスで決まる。
提供する商品やサービスの準備に長時間かけていては、利益は出せない。テキパキとスピーディーに仕事をこなす感覚を持たなければならないのだ。
これは一人ひとりのデスクワークにも同じことが言える。時間通りにできても、コストがかかったのでは、その仕事は成功とは言えない。
たとえばイベントや展示会などに関わった場合、たくさんの協力会社やスタッフ、その人たちとの共同作業も考慮して、それぞれの経費の集計表を見てみる。
全体の大まかなコストを把握する習慣をつけるのだ。そうすると、いかに多くの種類のコストがかかるかが、リアルに見えてくる。これらがまず、ざっくりと、いくらかかるかを考える。
こうした経験を積み重ねることによって、たとえば展示会の規模(ブースの大きさや開催期間)を聞いただけで、予算がわかるようになってくるのである。
段取りを立てるためには、そういう経験の積み重ねも重要になってくる。
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