
●「思考」によってトーマス・エジソンとの共同事業を実現した男
思考というものは、一つの実体、しかもその思考内容そのものを現実化しようとする衝動を秘めている実体、といってもよい。それは強力なエネルギーを持っている。
それゆえ、思考が明確な目標、忍耐力、あるいは強い願望とあいまって成功に向かって作用し始めるとき、思考は強烈な実体になる。
※明確な目標→忍耐力→実現
こうして、人間は自分が考えているような人間になるのである。

エドウィン・C・バーンズは「あなたが真底そうしようと望んだことは必ず実現する」という一大事実を体験した人の一人である。
彼の出発点は偉大なエジソンの共同事業者になりたい、という燃えるような願望であった。バーンズのこの願望は極めて明確なものだった。
彼はエジソンの下で働くのではなく、エジソンのパートナーとして働きたいと考えていたのである。
ここでバーンズがどのようにして、その願望を現実のものにしていったかを観察すれば、強い願望が富に結びつく原理を理解することができるだろう。
この願望を抱いたとき、バーンズはそもそも何から手をつけてよいのかさっぱりわからなかった。それどころかバーンズには次のような二つの大きな問題があった。
一、彼はまだ一度もエジソンと会ったことがなかった!
二、エジソン研究所のあるニュージャージー州のイーストオレンジまでの汽車賃がなかった!
いかがだろうか。
あなたにはこのような二つの大きな障害にくじけない心構えが今あるだろうか?たいていの人はこれだけでがっくりしてしまうものだが、バーンズの願望は月並みのものではなかった。
とにかくエジソン研究所に彼はたどりついた。そして開口一番、こう言ったものである。
「エジソンさん、私はあなたと共同で事業を行いたくて、こうしてはるばるとやってきました」これがエジソンとバーンズの初めての出会いだった。エジソンはこのときの感想を、後年、次のように語っている。
「バーンズはまるで浮浪者のような姿で私の前に現れてね。びっくりしたもんだよ。でも私は彼の表情から、この男は一度決心したことは必ずやりとげる、という気性を持っているな、と見て取ったんだ。
彼と一緒に事業をしてわかったことは、バーンズは手に入れたいものがあればその願望に自分のすべてを賭け、その結果、必ず勝利を収めるという素晴らしい脳力を持っているということに尽きるね。
あるとき、そんな彼を見て、私は彼が求めているチャンスを与えてやろうと思ったんだ。彼が信念を貫く決意を持っていることがよくわかったからなんだが……。もちろん、そのときの私の判断は間違ってはいなかったよ」もちろんバーンズは最初から共同事業ができたわけではない。
最初は安い賃金で雇われていた。そのため、何カ月たっても自分の目指していた明確な願望を達成できる気配はなかった。
しかしエジソンと共同事業をしたいという彼の決意はますます強くなる一方であった。心理学者は、人間は何かを本気でやればそれは必ず実現する、と言っている。
当時のバーンズは本気でエジソンの共同経営者になることを願っていた。目標を達成するまであきらめない決意だった。
彼には、「いつまでもこんなことをしていても仕方がない。いっそのことセールスパーソンにでもなろうか」などといった考えは一切なかった。
彼はたとえ残りの人生のすべてを賭けても、エジソンとの共同事業を必ず実現したいと固く心に決め、それが必ず実現することを信じていたのである。
不動の信念に支えられて、願望(目標)を最後まで追求する、という強い意欲(モティベーション)が、あなたの人生を大きく左右することを心にとめておくこと。
※明確な目標→不動の信念→忍耐力→実現
そしてまた、このような脳力は誰もが持っている、ということも。
当時はバーンズも意欲(モチベーション)の力の大切さを、正しく認識していなかったかもしれない。
しかし彼の心の中にある強い願望のおかげで、あらゆる反対意見にも屈することなく、とうとう最後には自分の運命を大きく変化させることに成功したのである。
チャンスは姿を隠してやってくる。バーンズが待ち望んでいた願望実現の扉は、彼が期待していたものとは違う形でノックされ、しかもまったく予想もしなかった方向から開かれたのである。
実際、願望実現というのは、このように当初の願望とは異なった結果として実現することがよくある。
そしてこれこそチャンスに特有のトリックなのである。チャンスはいつも意外なところからやってくるという皮肉な習性がある。チャンスはまた、不運とか一時的な敗北の影に隠れてやってきたりもする。
※チャンスは思っていた別の角度から突如現れる。ただそのためには行動あるのみ。
したがって人々はこのチャンスを見逃してしまうことも多いのである。エジソンはそのころ、「エジソン式蓄音機」と呼ばれた新しい機械を完成したばかりだった。
ところがエジソン研究所のセールスパーソンたちは、この新製品に対してほとんど熱意を示さなかった。というのも彼らはよほど努力しないと、この機械は売れないと決めてかかっていたからだ。
そのとき、バーンズは自分にチャンスがめぐってきたと感じた。彼は、エジソンの蓄音機が売れることを確信していたのである。そしてこの機械は実際、飛ぶように売れていった。
あまりにも売れたので、エジソンは彼との間でその機械の全国独占販売契約を交わすことになった。こうしてバーンズは最初の、しかしそれにしては莫大な富を築いたのである。
しかし彼はそれよりも、もっと重要なことを発見した。
それは、「(信念を持って)一つの考えを強く持ち続ければ、必ず金持ちになれる」ということだ。彼は当時すでに当時の金で八億円ないし一二億円は稼いでいた。
しかしより重要なことは、彼が金銭には代えることのできない財産を得たということにある。
その財産とは、成功の原則を活用することによって、目に見えず、手で触れることもできない思考が物理的な報酬に変わりうるという事実を知ったことである。
バーンズは、その考えを持ち続けることによってエジソンの共同経営者となることができた。そのうえ、なおいっそうの莫大な富も手に入れたのであった。
彼が最初に持っていたものは、明確な願望とそれを達成するまでは決してあきらめないという固い決意だけだった。
●ゴールの九一センチ手前で物質化した心の壁
最もよく見られる失敗の原因は、一時的な敗北にすぎないのに、すぐに願望の維持をあきらめてしまうことである。願望の大小は別として、誰でも一度や二度はこのような経験があるに違いない。
ゴールドラッシュの時代に、R・U・ダーヴィーの伯父も一攫千金を夢みて西部へ出かけて行った。
しかし伯父は、人間の思考の中にこそ、無尽蔵の金脈が隠されているということを知らなかったために、大失敗をすることになる。
伯父はシャベルとピックを持って仕事にかかった。そして、一カ月以上も掘り続けたのち、ようやく鉱脈を掘り当てる、という幸運に恵まれた。
さっそく彼は金鉱石を運び出す機械を購入するために、メリーランド州ウィリアムズバーグの故郷へ帰り、親類や近所の人々から資金を借りて機械を買い込んだ。
そして再びダーヴィーをつれて鉱山に戻った。ダーヴィーたちの掘り出した鉱石はコロラド州で最も良質のものであったので、彼らはあっという間に借金を返済してしまった。
あとは儲けるだけである。鉱脈を掘り進むにつれて、ダーヴィーたちの夢はますます大きくなっていったのはもちろんだ。
しかし、ある日突然、金鉱脈がなくなってしまった。同時に彼らの夢もはかなく消え去ってしまった。そこにはもはや、ひとかけらの金鉱石も残ってはいなかったのである。ダーヴィーたちは絶望の中にありながらも、祈るような気持ちでさらに鉱山を掘り続けていった。
しかし結局彼らはすべてが夢と消え去った現実を認めざるをえなかった。
彼らは最後に、採掘設備の一切をたった数万円という安い値段で屑物商に売り払い、打ちひしがれて汽車で故郷へ帰って行った。
その後、その屑物商は鉱山技師に頼んで、試しにこの鉱山の再調査をさせてみた。
その結果、調査した技師の計算が正しければ、ダーヴィーたちがあきらめた所からわずか九一センチ下に新たな金鉱脈が眠っていることがわかったのである。
そして実際、そこから金鉱脈が発見されたのである。いうまでもなく屑物商はこの鉱脈から何十億円という金鉱石を掘り出したのだった。屑物商は願望を断念するまえに、念のため専門家の意見を聞くという知識を持っていたのである。
「人がやめろといっても私は決してやめない!」このように言って、ダーヴィーはそのときの失敗分の何倍ものお金を取り戻した。むろんずっと後になってのことであるが。
それは彼が、願望はお金に変えることができる、ということを明確に認識したからである。彼がこの発見をしたのは、生命保険のセールスパーソンになってからのことであった。
ダーヴィーは九一センチ手前でやめてしまったために大損をしたことを肝に銘じ、「私は以前、ゴールから九一センチ手前であきらめてしまったために大損をしたが、今度は、人が保険は必要ないと言っても絶対にあきらめない」と自分に繰り返し繰り返し言い聞かせることにより、大成功できたのである。
ダーヴィーは年間四億円を超す売り上げ実績をあげ、あっという間に優秀なセールスパーソンの一人となった。彼はあきらめの早い男から、食らいついたら放さないしぶとい男に変身したのである。
成功の裏には敗北がある。一時の敗北だけですべてを投げ出してしまうことは簡単だ。実際多くの人々がそのようにして願望を持つこと自体をあきらめてしまうのである。
※一度の敗北で諦めてしまってはいけない。
五〇〇人以上にのぼる成功者が口をそろえて私に語ったこと、それは、大きな成功というものは人々が敗北感に屈してしばらく経ったときにやってくるものである、ということだ。
敗北とは本当にいじわるなもので、皮肉なペテン師のようなものである。このことをあなたは肝に銘じておくべきだ。そしてこのペテン師は成功の一歩手前で人々を挫折させることを、何よりも喜びとしているのである。
※敗北はペテン師。人々を挫折させることを喜びにしている。
●五〇セントの教訓
ダーヴィーが大学を卒業し、金鉱での経験を活かして新しい人生の第一歩を踏み出そうとしていたころ、幸運にも彼はあるできごとに遭遇した。
そして、これをきっかけに彼は、「ノー」という言葉が、必ずしも本当の「ノー」を意味するものでないことを発見したのである。
そのころ、伯父は小作人を多くかかえて、大農場を経営していた。ある日の午後、ダーヴィーが伯父の手伝いをして、挽臼で小麦を挽いていたときのことである。
粉挽き小屋の扉が静かに開き、黒人の小作人の女の子が入ってきた。伯父はその幼い女の子に目をやり、見つめ、そして荒っぽく聞いた。
「何の用だ」と。女の子は弱々しい声で答えた。
「ママが五〇セントもらってくるようにって言ったの」「あー、ダメ、ダメ。さっさと家に戻るんだ」「はい」と彼女は返事をすることはしたが、いっこうにその場を動こうとはしなかった。
伯父はそのまま仕事に気をとられていたので、彼女がそこを立ち去らずにいることに気付かなかった。それで再び顔を上げたとき、彼女がまだそこに立っているのを知り、思わずどなりつけた。
「家に帰れと言ったのがわからんのか。早く行かないとこらしめるぞ!」その女の子はまた「はい」と答えた。
それでも彼女はそこを動こうとはしなかった。伯父は小麦の袋を床に置くと、そばにあった天秤棒を手に取り、けわしい顔つきで彼女のほうへ近寄っていった。ダーヴィーはかたずを飲んでそれを見ていた。気の短い伯父がその子に今にも襲いかかるのではないかと思ったからである。
ところが伯父が彼女に近づく前に、彼女のほうが先に、一歩前に踏み出したではないか。そして伯父を見上げて、甲高い声でこう叫んだのである。
「ママはね、どうしても五〇セントがいるの!」〔‘Mymammy’sgottahavethatfiftycents!’〕伯父は立ちすくんで、しばらく彼女の顔を見つめていたが、やがてゆっくりと天秤棒を床に置いた。
そして、なんとポケットから五〇セントを取り出して彼女に渡したではないか。女の子はお金を受け取ると、伯父の顔をじっと見たまま、ゆっくりとドアのほうへさがっていった。
彼女が小屋から出て行くと、伯父はがっくりと肩を落とし箱の上に座り込んで、しばらくぼうぜんと宙を見つめていた。
伯父は今体験したことを考え、恐怖にも似た気持ちを感じていたのである。ダーヴィーもまた考え込んでしまった。小さな黒人の女の子が白人の大人を、完全にノックアウトしてしまうのを見たのはこれが初めての経験だった。
彼女のとった行動を振り返ってみていただきたい。あれほど激怒していた伯父を完全におとなしくさせたものは、いったい何だったのだろうか。彼女はどのような力を使ったのか。
ダーヴィーの頭の中はいろいろな疑問で混乱してしまった。
しかしこれらの疑問に対する答えが出たのはその後何年もたって、私がこの事件について聞いたときのことだった。
奇妙な偶然といおうか、私がこの不思議な出来事をダーヴィーから聞いたのは、昔ダーヴィーの伯父が女の子に五〇セントを渡したまさにその古い小屋の中においてであった。
●〝ノー〟には〝イエス〟の血が流れている
ダーヴィーは話し終わると私に言った。
「伯父をあれほど完全に打ち負かしてしまうとはね。ヒル先生、あの子はいったいどんな不思議な力を使ったんでしょうね」ダーヴィーのこの疑問に対する答えは本書の中にある。
詳しく説明しておいたので、誰もがあの小さな女の子が偶然にも発揮した不思議な力を身につけ、かつ発揮することができると思う。
次の項でこの不思議な力の一端が、紹介されることになるだろう。
この不思議な力の謎はこの章で明らかになるかもしれないし、あるいはほかのところで突然あなたの心にひらめき、解明されることになるかもしれない。
またそれは一つのアイデアとして姿を現すかもしれないし、願望とその達成計画という体系的な形で現れるかもしれない。
いずれにしてもそのヒラメキがあれば、あなたは過去の挫折から立ち直り、過去の経験を将来に向かって活かすことができるようになるのだ。
小さな女の子が無意識に使ったこの不思議な力の謎について話し終わったとき、ダーヴィーは生命保険のセールスパーソンをしていた三〇年間を振り返り、この女の子に教わったことのおかげで自分は成功したのだ、ということを認めた。
「私は苦しい立場に追いやられると、いつもこの古い粉挽き小屋で、目を輝かせて敢然と立っていた女の子の姿を思い出すようにしたんですよ。
そして何としてもこのセールスを成功させなければならないと自分自身に言い聞かせたのです。振り返ってみると、セールスが成功したのは、いつもお客が『ノー』と言ってからだったんです」またダーヴィーは金鉱山で失敗したことについても、それが自分自身のミスであったことを率直に認め、次のように語ってくれた。
「金鉱山での失敗の経験は、実は、神の恵みのようなものだったと思います。あの失敗から私は、どんな困難に出会っても必ずやり通す、ということを学んだのですから。この教訓はどの分野であれ、成功するために最も必要なことでしょうね」
※どんな困難にも立ち向かい絶対に諦めず必ずやり通すこと。
●経験の中で見出した成功の秘訣
この金鉱脈の話は生命保険のセールスパーソンの間で語り継がれることだろう。
私が言えることは、この二つの経験のおかげでダーヴィーが年間数百億ドル以上、生命保険を売り上げるまでに成功したということだ。
ダーヴィーの経験はどこにでも見られる平凡なものであるかもしれないが、彼にとっては自分の人生を左右するほど大きな力を持っていたのである。
彼にとっては人生最大の経験だったのだ。彼が富を築くことができたのはこの二つの経験を分析し、その経験の中に成功の秘訣を見出し、それを身につけ応用したからにほかならない。
●成功のカギを発見する余裕のない人のために……
では、自分の失敗の原因を突き止め、成功へのカギを発見するだけの時間的余裕のない人はどうすればよいのか。どのようにすれば失敗をチャンスに変える力が身につくのだろうか。
このような人々のために、本書やコンプリート・プログラムというものを私たちは開発したのである。
実際、多くの人々はこの範疇に属するだろう。この問題に対する解答は本書を含めた成功のためのプログラムの中に詳しく出ている。
あなたがいろいろな疑問を持ち、その答えを見出そうとするならば、その答えは本書やコンプリート・プログラム(あるいはビデオ・プログラム)を見聞きするうちに、あなた自身で見つけることができるだろう。
成功を手に入れるために必要なものはただ一つ。健全で素直なものの考え方である。
本書やオーディオ・プログラムあるいはビデオ・プログラムなどで、いろいろな話を紹介するのは、素直で健全なものの考え方を身につけるヒントをあなたに与えるためなのである。
次のような言葉がある。
「富は、ある日突然、まったく予期しない形で目の前に現れるので、一般の人々は自分が富を得ていなかったときには、それがいったいどこに隠れているのかわからないのだ」この言葉には多くのショッキングな真実が含まれている。
富は、人がある精神状態に達したときに、いとも簡単にやってくるのだ。ではどのようにして富を迎えられるような精神状態をつくり上げればいいのだろうか。
※ある精神状態??
私は富豪と呼ばれる人々がいかにして成功したか、その秘訣を明らかにするためにアンドリュー・カーネギーとの約束の期間も含めて、かれこれ三〇年間も研究を続けてきた。
そして明らかになったのは、彼らもまたあなたと同じように「金持ちになりたい」という願望から出発しているということである。
この成功の秘訣を理解し、活用することができれば、あなたの生活は(金銭だけではなく)あらゆる面で改善されてくる。
そのうちきっとあなたも、心の中で明確に思い浮かべることはすべて現実のものとなるという真理が、確信できるようになるだろう。
これは決しておまじないでも何でもないのだ。この世に働く現実の法則なのである。人間の最大の欠点は、「不可能」という言葉に慣れすぎていることである。
多くの人々が常識を打ち破り、不可能を可能にし、運命を切り開き、限界を乗り越え、成功を収めたその秘訣を広く伝えるために、本書が作られたのである。
成功は成功を確信する人のもとに訪れる。少しでも失敗を意識すれば失敗する。
※失敗を意識する意味は全くない。
本書は、失敗の恐怖にとりつかれている人々に、成功への確信を与えることを目的に著されたものである。多くの人々は、自分勝手な考え方や固定観念でものごとを評価したり決定したりするという欠点を持っている。
すでに貧乏や絶望を味わっている人々は、今さら本書に接したところで成功などできるものか、と思ってしまうかもしれない。
こういう人たちのために、一人の中国人の話をご紹介しよう。ある中国人がアメリカで教育を受けるため、シカゴの大学に留学してきた。ある日、彼はハーパー学長とキャンパスで立ち話をした。
そのとき学長は、この中国人に、「アメリカ人の最も大きな特徴は何だと思うかね?」と尋ねてみた。すると彼はこう答えたという。
「偏見だと思います。アメリカ人の目は、まともにものを見ていないのではないでしょうか」私たちはこの中国人の言葉に反論ができるだろうか。
私たちは、ともすれば自分たちに理解できないことは信じようとしない。アメリカ人に限らず、おそらくどの国の人間もそうであろう。
●V8は不可能か?
ヘンリー・フォード(一八六三~一九四七)が、有名なV8エンジンを開発しようと決意したときの話がある。
フォードは八個のシリンダー(気筒)を組み込んでエンジンを製作しようと思い、技師に設計を依頼した。
ところが、フォードのアイデアをもとに設計図を描いた技師は、このシリンダーエンジンが理論的に不可能であるという結論を出した。
「なんとしても完成させるのだ」と、フォードは命令した。「しかし不可能なものは不可能です」と技師は言う。
「とにかくやってみたまえ。たとえどれだけ時間がかかってもいいから、完成するまではこの仕事だけに打ち込むんだ!」やむなく技師たちはその仕事にとりかかった。
しかし、半年たっても「不可能なものは不可能」であった。そしてさらに半年が過ぎても、何の成果もあがらなかった。とはいえ技師たちも、可能な限り想像力を働かせたことは事実だ。
だがその年の暮れ、フォードは再び技師たちと話し合ったが、そのときも技師たちは、フォードの命令どおりに行うことは絶対無理だ、と報告するしかなかった。
「とにかく何度でも作ってみるんだ。私にはどうしてもそれが必要なんだ」とフォードはなおも命じた。
いったい、何が生じたのか。それからまもなく、まったく突然、技師たちはV8エンジンを完成させてしまったのである。こうしてついにフォードの執念は勝利に結びついた。
フォードは成功のノウハウを理解し、活用したおかげで、大成功を収めたのだ。これから先もこのフォードの話を忘れないでほしい。そして、この偉大な成功の秘訣を記憶しておいていただきたい。
ヘンリー・フォードを大富豪にした秘訣を、そのままあなたの心に刻みつけておくことができるならば、あなたもフォードと同様の成功を収めることが必ずできるのだ。
※必要なら手に入れるまで執着すること。
●あなたは自分自身の運命の支配者である
詩人ヘンリーは、「我こそが運命の支配者にして我が魂の船長なり」と言っている。つまり自分の思考をコントロールできるのは、自分だということだ。
あなたの頭の中にある考えが生まれても、ヤル気がなければ好ましい状況をつくりだすことはできない。
たとえばあなたの願望が莫大な富を築くことにあるならば、金持ちになりたいという願望を強く胸に焼きつけなければならないのである。
金持ちになりたいと強く願うことにより、具体的な計画が生まれてくる。
詩人ヘンリーが言いたかったのは、このことだと思う。ヘンリーは詩人であって哲学者ではなかったので、この真理を詩的に表現したのであろう。
成功するための考え方を学ぶ心の準備はすっかりできたことと思う。どうか心を開いて学んでいただきたい。
これまで多くの人々が(ナポレオン・ヒルの)成功のノウハウを応用してきた。それはあなたにとっても必ず役立つことだろう。このノウハウを実行に移すことは決して難しいことではない。
何年か前、私はウェストヴァージニア州にあるセーラム大学の卒業式で記念講演を行ったことがある。
この講演の中で私は、成功するためのノウハウのことを真剣に話した。私の話を聞いて、一人の学生が大変感銘を受けたようであった。
この学生はのちに国会議員となり、フランクリン・D・ルーズベルト大統領のもとで要職についたが、彼から私の講演した成功ノウハウについて、後年、その感想が届けられた。ここに紹介しておこう。
ナポレオン・ヒル博士へ
私は国会議員になり、人々のいろいろな苦悩がわかるようになりました。苦悩をかかえている多くの人々にとって少しでも役に立てばと考え、このようにお手紙を差し上げる次第です。
一九二二年のセーラム大学の卒業式で私はあなたの記念講演を聴きました。そのときあなたの講演のおかげで、私は国民に対する責任感と将来への使命感を持つことができました。
私がこうして成功したのもひとえに、あなたのあのときの講演のおかげです。
昨日のことのように覚えていますのは、ヘンリー・フォードが教育らしい教育を受けず、貧乏で、しかも有力なコネもないのに、ついには高い地位にまでのぼりつめたお話でした。
あのとき私は講演がまだ終わらないうちに、今後どんなに多くの困難に遭遇しようとも、必ずやそれらを克服し、自分で自分の人生を切り開いていこうと決心したのでした。
今年も、そしてこれからも毎年何万人という学生たちが卒業していきます。彼らも当時の私と同様、あなたから実践的な教えを受けることを期待しています。
彼らはどの方向に人生を踏み出したらよいのか、何をどういうふうにやって人生を切り開いていったらよいのかを知りたがっています。
これまでに多くの人々の悩みを無数に解決してこられたあなたの知恵を、ぜひお貸しください。現在、わが国では、成功ノウハウを活用して成功したいと思っている人がどれほど多いかわかりません。
十分な資金もないまま、出発しなければならない人々、あるいは失敗を取り戻さなければならない人々が実にたくさんいます。
このような人々を救うことができるのは、あなた以外にはいないと信じています。
ジェニングス・ランドルフ
こうして私は、あの講演から三五年たった一九五七年に、再びセーラム大学の卒業式で記念講演をすることになったが、そのとき私は名誉文学博士の称号を贈られた。
一方、ランドルフは世界有数の航空会社のエグゼクティヴとして、またのちには上院議員として活躍を続けている。
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エッセンス①()
▼一文無しだったエドウィン・C・バーンズが成功したように、燃えるような目標や願望があれば、自分の人生を切り開くことができる。
▼目標や願望に向かって正しく努力すれば、その分だけ成功は近づいてくるのに、あと一歩のところであきらめてしまう人が多い。
▼目標や願望を持つことがすべての達成の第一歩である。たとえ子どもでも、目標や願望を持っていれば大男を打ち負かすことができる。自分の目標を前向きに考える習慣を身につければ、不可能と思われたことも実現することができる。
▼ヘンリー・フォードがそうであったように、信念を持って執着すれば、不可能を可能にすることができる。
▼心で考え、できると信じたことは実現できる。

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