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第1章優秀なパートを育てたいなら「会社のルール」を教えなさい

目次

「理解」させればパートは最大の協力者になる

「会社のルール」を教えることが戦力化の第一歩

パートを戦力化できない理由のひとつは、「会社の方針・ルール」を教えていないからです。パートも「知らないこと」「知らされていないこと」があると、不満を募らせます。

パートが頑張れるのは、「方針やルールが明確になっている」ことが前提です。私たちが野球を観て楽しめるのは、ルールがわかっているからです。

もし、基本的なルールや用語を知らなかったら、どうして得点が入ったのかがわかりません。ゲームが進んでいくのをただ眺めているだけで終わります。

ルールもスコアもわからない状態では、「頑張らないパート」がまともです。「0対0だから頑張るのか」「1対0で勝っているから頑張るのか」「0対1で負けているから頑張るのか」がはっきりしていなければ、頑張りようがありません。

ですが、会社の方針、業績、目標をきちんと説明すれば、パートは、会社にとって最大の協力者になります。女性(武蔵野の場合、パートの9割以上が女性、しかも主婦です)は男性よりも責任感が強く、「ルールを守りながら成果を上げる能力」に秀でているからです。

パートの文句は、向上心のあらわれ

パートが口にする文句には、「2種類」あります。ひとつは「後ろ向きの文句」。もうひとつは、「会社を改善してほしい」の前向きな文句です。

「後ろ向きの文句」を言う人は、文句を言われる立場を体験させると、文句を言わなくなります。以前、内勤のパートのひとりが、「外回りの担当者は、サボってばかり」と文句を言うから、ダスキンのレンタル(配達)に「1日現場同行」をさせたことがあります。

すると、お客様のところに走って配達するため、ヘトヘトになって、文句を言わなくなりました。反対に、外回りの担当者が、「内勤の人は、いつもエアコンが効いているところで仕事ができて、うらやましい」と文句を言ったときは、コールセンターで1日中電話を取らせた。

ひっきりなしにかかってくる電話の応対が終わったとき、「2度とゴメンだ」と前言撤回しました。文句を言うのは「体験がないから」です。

体験をさせると「隣の芝は、青くなかった」ことが身にしみて、文句を言わなくなります。自分の立場だけで後ろ向きの文句を言っていた人も、文句を言われる立場を経験すれば、周囲のことを考えるようになります。

一方、「会社を改善してほしい」という前向きな文句は、向上心のあらわれです。向上心のない人は、「ここを直したほうがいい」「あそこは良くない」といった文句を言ったりはしません。

ですから、前向きな文句は、見方を変えると、「今のやり方よりも、こういうやり方のほうがいいのではないか」という、パートからの改善提案として受け止めることができます。

会社改善のための前向きな文句を言われたときは、「だったら、あなたに改善してほしい」と言うことが大切です。

私が社長になった当初、武蔵野のナンバー2は、創業者・藤本寅雄の奥さんの妹、多田博子でした。新人パートが入ったとき、多田が、「今度入ってきた佐々木さんは、『こうしたほうがいい』『この部分を変えたほうがいい』と文句ばかり言う」と嘆くので、私は、佐々木を管理部門のチーフにしました。

「文句を言うのは、それだけ問題意識を持って仕事をしている証拠だ」と判断したからです。その後、佐々木は水を得た魚のように業務改善に取り組み、結果を出した。

多田の退任後はコールセンター事務管理の部長に抜擢し、「パート部長」として力を発揮してくれました(現在は退職)。

ご主人の扶養から外れないことが彼女の条件だったので、「昼間に要所だけ出社して、仕事をして帰宅する」という生活を送っていました。月収が10万円に満たないパートが、その数倍の給料をもらっている課長ふたりを采配しました。

佐々木の薫陶を受けたのは滝澤美佳子(現部長)です。多くの社長は、「文句を言ってくるパートは、うっとうしい」と決めつけ、話も聞かずに上から抑えつけます。だから、問題意識を持っているパート(優秀なパート)を戦力化できません。

パートが会社を辞める「3つ」の理由

従業員(社員、パート、アルバイト)が会社を辞める理由はいろいろありますが、大きく、次の「3つ」に分けることができます。①「仕事」が嫌で辞める②「上司」が嫌で辞める③「会社」が嫌で辞めるこの中で、辞めていく「パート」に多いのは、③「会社」が嫌で辞めるです。

「①『仕事』が嫌で辞める」は、人事異動を行うなどして、仕事の内容を変えることで、離職を防ぐことができます。

「②『上司』が嫌で辞める」は、上司とパートの間に、コミュニケーション不全が起きています。コミュニケーション不全は、多くの場合、上司に責任があります。面談やランチ会・飲み会のスケジュールを定例化するなど、社内の風通しを良くするしくみが必要です。

「③『会社』が嫌で辞める」のは、会社のしくみを教えていないからです。女性は、「会社のルールを知らない(知らされていない)」と不満を募らせ、離職率が高くなります。

ですから、「賞与の額はポイントによって決まる」「手当は給与時に支給する」「有給休暇はワークフローで決裁をあげる」といった会社のルールを明確にして、周知することが重要です。

女性は、何よりも不公平を嫌う

下世話な話で恐縮ですが、私は独身時代に、「歌舞伎町の夜の帝王」というあだ名がつくほど、キャバクラに精通していました(笑)。

私がキャバクラでモテたのは、どのキャストとも、平等に、公平に接したからです。モテない社長は、気に入ったキャストにだけチップを1万円渡し、他のキャストにはあげない。

だから、「ケチ社長」と陰口を叩かれます。私なら、1万円のチップをひとりにだけ渡すことはありません。「10人のキャストに1000円ずつ」渡します。歌舞伎町のキャバクラで私の悪口を言う女性がひとりもいないのは、私が、「えこひいき」をしなかったからです。

女性にものをあげるときは、どんなものでも、必ず全員平等にしなければいけません。女性が2人いたら、「目の前」で、「2人同時」に渡すことが大切です。女性が3人いるのに、どら焼きが2個しかなかったら、どちらにもあげないほうがいい。

もしくは、2個のどら焼きをそれぞれ半分に切って4等分にして、自分がひと切れ取って、残りを3人に分けるのが正しい(次の図参照)。

女性は、何よりも不公平を嫌います。一人ひとりに公平に接しないと、「あの人ばかりえこひいきして……」と不満を感じてやる気を失います。パート間の不公平をなくす努力が大切です。

どうして給料が下がったのに「嬉しい」と言えるのか

毎年安定的にパートの給与を上げていくと、「長年いるパートは仕事ができなくても給料が高く、新しいパートは能力が高くても給料が低くなる」ことがあります。

給料格差がわずかであれば不満は出ませんが、差があり過ぎると、不公平になります。「長くやっている」ことと、「能力がある」ことは別です。本当の公平とは、「チャンスは平等に与え、成績によって処遇の差をつける」ことです。

武蔵野は60歳以上のパートが多くいます。そこで、年齢や勤続年数による給料格差を是正するために、「エナジャイザー」(参照)という適性診断ツールを使って、「60歳以上で単純能力が50を下回る人」は給料を下げることにしました。

ただし、1年後の再診断で「50」を超えたときは、1年分遡って給料を払い戻す敗者復活制度を設けました。対象者13名のうち、「50」を超えたのは、ひとりだけでした。

そこで、13名全員を集めて「基準に達したのはひとりです。他の方は申し訳ありませんが、給料を規定の額に下げます」と説明しました。給料を下げられたのに、パートからは文句が出ませんでした。

それどころか、「全員の前で社長が言ってくれたことが、嬉しかった」という感想が寄せられたのです。個別に説明されると、「自分の能力が低かった」という事実を受け入れなければならず、プライドが傷つきます。

ですが、全員の前で説明されるのであれば、「給料が下がるのは、自分だけではない」ことがわかるし、プライドも傷つかない。だから、給料が下がっても「嬉しかった」と言えた。

ルールが明確になっていれば、差をつけてもいい

武蔵野はパートを公平に扱いますが、頑張ったパートと頑張らなかったパートの賞与額には差をつけます。差をつけても文句が出ないのは、「経営計画書」に、「賞与は、1年以上在籍のパート・アルバイトに上司が評価して、規定の比率で支給する。賞与は全12ポイントによるポイント制とする」と明記してある(参照)からです。

「えこひいき」はいけませんが、ルールが明確なら、差をつけても文句は出ません。方針やルールを決めずに、場当たり的に差をつけるから「不公平だ」と文句が出ます。女性は、男性よりも、「守る能力」を持っています。母親が子どもを育てることに秀でているのも、守る能力が高いからです。

また、男性は次から次へと新しい変化を求めますが、女性は違います。変化することよりも、「決められたことを、決められた通りに実行する」「最後まで、根気よく続ける」ことが得意です。

パートを戦力化できない理由のひとつは、会社にルールや方針がなく、行き当たりばったりの指示を出すことです。上司によって指示が違ったり、方針がその都度変わったりすることをパート(女性)は嫌がります。

普通の会社は、社長と、専務と、部長と、課長と、係長の言うことが微妙に違うため、パートは「どれが正しいのか」がわからなくなって、迷います。

しかし武蔵野は、実行すべき方針や守るべきルールが「経営計画書」に書いてあるため、ブレがなく、安心して仕事をすることができます。繰り返しになりますが、スポーツや遊びにもルールがあるように、会社にもルールが必要です。

「決められたことを、決められた通りに実行したい」というパートにとって、ルールが「紙」に書かれていることは、とても大切です。ダスキン事業は、「同じサービスを同じお客様に繰り返し売る」ビジネスです。

武蔵野が優良企業になれたのは、パートが経営計画書で決められた方針に従って、同じ仕事を愚直に、誠実に、毎日繰り返した結果です。

【経営計画書】(うち、パート・アルバイト・契約社員に関する方針は次を参照)武蔵野のすべてを書き記したもの。経営理念、長期事業構想、社員教育、人事評価、採用、クレーム対応、資金運用、実行計画など、会社の方針と数字が明文化された手帳型のルールブックと、クルマの運転のしかた、タクシーの乗り方、道の覚え方に至るまで、具体的に明記した武蔵野手帳がある。

株式会社武蔵野経営計画書パート・アルバイト・契約社員に関する方針

1.基本⑴雇用は期間指定する。期間は各部門で定める。

①必ずパートの50%以上の賛同を得て採用する。

②新人は入社1ヵ月以内に総務が主催するオリエンテーションに参加し、武蔵野を知る。受講させない上司は、反省文を提出する。

③新人は入社後5日以内に上司と先輩3人で飲み会を開き、ギャップを埋める(ランチ可)。

④自己都合の退職は、1ヵ月前までに上司へ報告をする。

⑵給与・手当は、各事業部の基準により、部・課長の申請で上下する。

⑶給与は、15日〆切・25日払い、とする。

⑷賞与は、1年以上在籍のパート・アルバイトに上司が評価して、規定の比率で支給する。

賞与は全12ポイントによるポイント制とする。1ポイントは、上限金額の10%(50,000円の時は1P5,000円)

⑸許可なく半期50時間以上残業した人は賞与を支給しない。

①毎月5分以内でプロセス評価を行う。上司評価(4P)

A評価……4P

B評価……3P

C評価……1P

評価基準は部門毎に決定、絶対評価で良い。

②環境整備(2P)……自部門の半期合計

平均点116点以上………………2P

111点~115点……1P

110点以下………………0P

※100点以下だと75%以下とする。

③方針共有点(3P)

社内行事に参加でポイント獲得バスウォッチング……1P

早期勉強会ライブ……1P

※バスウォッチング半日参加は0.5P、早朝勉強会ビデオは1回0.5P。

半日の定義は、スタート(西荻窪から三鷹)から本社までと、本社から最後までとする。

社内アセスメント参加……1P

サンクスカード毎月5枚以上……1P

政策勉強会参加……1P

④エナジャイザー受診(上期)……1P

⑤課題図書の感想文を提出(下期)……1P

2.保険加入規定

⑴社会保険(厚生年金、雇用、介護、健康保険)加入1日、又は1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、通常の社員のおおむね4分の3以上の人

⑵雇用保険加入上記規定に満たない人で・所定労働時間が週20時間以上の人・6ヵ月以上雇用される人3.有給の申請

⑴パート・アルバイトも有給残を給料明細でカウントする。

⑵有給申請は必ずワークフローにて決裁をあげる。事後申請は2営業日までに行う。4.手当政策勉強会………………3時間×最低賃金オリエンテーション……3時間×最低賃金バスウォッチング………時間×最低賃金アセスメント……………時間×最低賃金

給与時に手当として支給する。交通費は別途支給する。

5.社内不倫社内不倫は懲戒処分。

6.その他どんなことでもわからないことは、すぐに上司に相談する(場合によっては、上司を飛び越えて相談しても良い。後でフィードバックする)。

女性は、仕事を正確にする能力が高い

「有限会社そのべ」(福島県/園部幸平社長)は、福島県内で飲食店(「幸世庵」「茅の器」)を経営しています。従業員40名のうち、30名がパートです。

園部幸平社長は、「男性よりも女性のほうが、作業が細かい」と感じています。「レシピさえしっかり決まっていれば、女性は、『これを何グラム、これを何グラム使って……』と、レシピ通りに仕事をします。

それに、時間も正確です。『この時間までに、これを30個用意してほしい』とお願いをすれば、きっちり仕上げます。一方で男性は、大雑把なところがありますね(笑)。

ですから、男性と女性に同じことをやらせたら、間違いなく女性のほうが優秀です。でも、女性は、『冒険すること』が苦手かもしれません。

『工夫してみて』とか『どうすれば味が良くなるか考えてみて』とお願いすると、悩むところがあります。当社の場合ですと、『冒険が得意なのは男性、確実に仕事をするのは女性』といった感じですね」(園部社長)

「株式会社ロジックスサービス」(宮城県/菊池正則社長)は、東北6県において、構内物流事業、ビジネス業務委託事業などのアウトソーシングサービスを行っています。従業員170名中、パートは70名です。菊池正則社長も、「女性は、方針を守ろうとする力が高い」と感じてます。

「パート課長の横山靖子さんは、会社に対する不満が部下から上がると、こう言って、みんなを納得させている。『経営計画書に社長が書いているのだから、しょうがないでしょ。他の会社とは違うかもしれないけれど、ロジックスサービスはこのルールでやるしかないのだから、みんなで協力して』。女性は、男性よりも、決められたことを決められた通りに実行する力があると感じます」(菊池社長)

会社の方針を「共有」、そして「実行」させる!

経営計画書を全従業員が共有し、絆を深める

「株式会社アムズプロジェクト」(茨城県/平沼正浩社長)は、パチンコホール「AMZ」、フィットネスクラブ「ヴィスポ」、ラーメン店「正元」、リラクゼーションサロン「ジャスミン」など、さまざまな店舗を展開しています。

2011年ごろからパートの戦力化に注力した平沼社長も、経営計画書の方針をパートに周知させる重要性を実感しています(「アムズプロジェクト」では、パートではなくアルバイトとして雇用)。

「以前は、会社側が社員とアルバイトの間に垣根をつくっていたので、『アルバイトは、決まった時間に出社して、限られた時間の中で、最低限の作業をしてもらえばいい』と考えていたんです。

だから経営計画書の方針は、社員だけが実行すればいいものであって、アルバイトには適用していませんでした。でも、『社員はやるけれども、アルバイトはやらなくていい』では、統率が取れないことがわかりました。

そこで現在は、アルバイトの底上げのために、垣根を取り払っています。社員もアルバイトも関係なく、すべての従業員を『家族』とみなし、方針の徹底を図っています。社員もアルバイトも関係なく、従業員一人ひとりが会社と思いを共有することが大切ですね」(平沼社長)「アムズプロジェクト」では、「朝の挨拶は1対1で、全員と握手」が基本です。

経営計画発表会など、100人単位で人が集まるときは、握手をするだけで、10分以上かかることもあります。平沼社長が「1対1の握手」にこだわるのは、「社員もアルバイトも分け隔てなく家族であり、一人ひとりを平等に、大切に扱いたい」思いからです。

新人パートは入社1ヵ月以内にオリエンテーションに参加させる

パートには入社前に、武蔵野のルールについてきちんと説明をします。そのため、入社後に「そんなことは聞いていなかった」という不満が出ません。

「政策勉強会に出る」「入社後5日以内に、上司と先輩と飲み会(ランチ会)を開かないといけない」「ホームページに写真が掲載される」とわが社の決まりを事前に説明し、「こういうことができないと、採用しません」と、はっきり伝えています。

わが社のパートは、「武蔵野はこういう会社だ」と承知のうえで入社するので、入社前と入社後とのギャップが少ない。だから辞めません。また、中途社員、パートを問わず、入社後には、「オリエンテーション」を受けてもらいます(「3時間×最低賃金」の手当を支給)。

オリエンテーションで教えるのは、武蔵野の歴史、武蔵野の取り組み、武蔵野のルールについてです。経営計画書の「パート・アルバイト・契約社員に関する方針」には、「新人は入社1ヵ月以内に総務が主催するオリエンテーションに参加し、武蔵野を知る。受講させない上司は、反省文を提出する」と明記されていて、参加を義務付けています。

わが社は、「努力文2枚で反省文。反省文2枚で始末書。始末書2枚で賞与半額」に繰り上がる決まりで、上司は、「賞与が半分になるのは困る」という不純な動機で、パートをオリエンテーションに参加させます。オリエンテーションは、入社時だけなく、「誕生日月」も参加を求めます。地位や社歴にかかわらず、年に一度は必ず出席が決まりです。

オリエンテーションに参加することで、仕事の基本である挨拶や返事などをあらためて振り返ると同時に、会社の方針を再確認することができます。

「ノアインドアステージ株式会社」(兵庫県/大西雅之社長)は、全国25校とタイ(バンコク)に、生徒総数3万人以上を有する国内最大級のテニススクールです。

大西社長は、『社長!すべての利益を社員教育に使いなさい』(あさ出版)を出版するなど、社員教育に力を入れている社長としても知られています。大西社長は「早い段階で、会社の方針、価値観、理念を浸透させることがパートの戦力化につながる」と考えてます。

「スキルや仕事のやり方よりも先に、ノアイズム(『ノアインドアステージ』の考え方)やチームワークを教えることが大切と思ってます。それをしないですぐに現場に送り込むと、仕事に心がこもりません。

掃除ひとつとっても、運営方針やノアイズムを理解してから取り組めば、それは接客に変わります。けれど、何もわからないまま手を動かすだけでは、それは作業にしかなりません。

作業が続くと、パートは『自分は、使われている駒にすぎない』と感じて、モチベーションを下げます。ですから、採用面接のときも、入社後のオリエンテーションのときも、ノアの考えをしっかり説明しています」(大西社長)パートから正社員となり、現在、フロント業務を統括する「ノアインドアステージ」の責任者、小坂隆子さんも、オリエンテーションの大切さを強調します。

「私がオリエンテーションを担当するときは、理念の説明のあとで、『でも実は、すべての社員が理念を体現できているとは言い切れません。社員もまだ頑張っている途中です』と、正直に話しています。

そして、理念がうまく体現できていない事業所には『だからこそ、新人のみなさんの力が必要です。ある事業所では新人のみなさんがノアイズムを理解し、実践した結果、先輩社員が感化されてすごくいい雰囲気に変わった事例があります。

だから、変えるのはみなさんの力です。みなさんを採用したのは、事業所を変える力を持った人財だと思ったからです』と説明しています。

最初のオリエンテーションで、正直に現状を伝える。そして、『力を貸してください』と期待を込める。そうすることで、パートさんの目的意識も変わる気がします(小坂さん)

パートに自部門の実行計画を立てさせる

わが社のパートは、積極的に経営に参画します。自社を良くする情報をもっともたくさん持っているのは、パートやアルバイトです。現場でじかにお客様と接しているので、お客様が何を思い、何を望み、どういうご要望を持っているかを肌で知っています。

真実は現場にしかないから、パートの声を拾い上げなくては、業務改善は実現しません。年2回(半期に1度)開催する「社内アセスメント」にパートが自主的に参加し、2017年4月は427名(うち社員220名)参加と過去最高人数になりました(パートが作成した実行計画の一例は、次の図を参照)。パートが積極的に改善提案をしてくれるのは、「自分がこの会社の一翼を担っている」という自覚と自負があるからです。

【社内アセスメント】「経営計画書」の方針を実現するために、各部門が上期・下期の実行計画(具体的な施策)をつくる。実行計画の作成には、全社員とアルバイト・パートも参加する。部門ごとに半年間を振り返り、実行してきた施策の中で、「成果が出たもの」「成果が出なかったもの」を検証する。成果が出たものは継続し、成果が出なかったものは新たな施策に変更する。

多数決で決めさせてはいけない

社内アセスメントでは、次のような流れで実行計画の作成をします。

  1. リーダーを決める
  2. メンバー一人ひとりに「付箋紙」を配る
  3. 問題点や課題を各自が自由に書き出す
  4. 付箋紙を模造紙に貼る。同じ意見は統合し、違う意見は残す
  5. チーム全員で「どのアイデアがいちばん良いか」を決定
  6. 「目的」「重点方針」「目標」などを決め、実行計画策定する
  7. 他部門に「このように業務改善をする」

と発表付箋紙を使っているのは、「現場の事実を拾い上げる」ためです。話し合いだけで終わらせると、職責上位者や、声の大きな人の意見が通ってしまい、「お客様と接している現場(パート)」の意見が上がってきません。

また、議論は形が見えませんが、付箋紙で貼り出せば目に見えるため、解決すべき問題点が明確になります。多数決はせず、合意で決めます。多数決だと少数派が納得しないので、本気で取り組みません。そこで、時間はかかっても全員が納得するまで話し合って決めています。

社内アセスメントへの参加は、賞与のポイントに連動します。不参加は、ポイントがもらえないので、賞与額が下がります。また、社内アセスメントに参加したパートには「時間×最低賃金」の手当を支給します。

自分たちで計画をつくるから、仕事が楽しくなる

社内アセスメントに臨む前の準備として、部門ごとに「プレアセスメント」を行ってます。事前に、「前期の振り返り」「現在のボトルネック部分の洗い出し」「新規の改善提案」などをまとめておく。プレアセスメントを行うと、社内アセスメント当日には参加できないパート・アルバイトも、話し合いに参加できます。

以前、あるパートが私に、「どうして私たちがプレアセスメントに参加しなければいけないのか」と嚙みついてきたので、私は、「じゃあ、出なくていいです」と言って、新卒の女性社員に実行計画をつくらせました。すると今度は、「仕事がわかっていない新卒社員が決めた計画に、どうして私たちが従わなければいけないのか」と文句を言い出した。

結局、「パートのほうが現場を知っているし、実務能力もあるから、自分たちで計画をつくりたい」と考えをあらため、彼女は社内アセスメントに参加するようになったのです。パートが文句を言うのは、「嫌だから」というより、「知らないから」です。便利なことや嬉しいことを体験すると、文句を言わなくなります。

文句を言うことと、やりたくないことは違います。パートが社内アセスメントやプレアセスメントに参加するのは、「自分の意見が経営に反映されるのは、嬉しいことである」とわかっているからです。

多くの会社は、パートに権限を与えないので、現場からの改善提案が上がりません。しかし私は、「実務能力に社員と差がないなら、パートも経営に参加させるべき」の方針です。

人は、無意味な仕事を強制されると苦痛に感じます。ですが、自分たちでつくった計画を自分たちで実行する」ことになれば、モチベーションが上がって、仕事が楽しくなります。

なぜ武蔵野のパートはハイレベルな提案ができる?

常務、滝石洋子を驚かせた提案とは?

ひとりのパートが、社内アセスメントの場で、常務取締役の滝石洋子にこんな提案をしたそうです。

「滝石さん、コールセンターの人件費はいくらかかっていますか?◯◯◯万円ですね。では、その金額は変えませんから、みんなの働く時間を変えてもいいですか?忙しくなる時間帯には人を多めにして、そうでない時間帯には人を少なくしたほうが効率が良くなると思うんです。お客様もお待たせしませんし」滝石は、パートから上がってきた改善提案のレベルの高さに驚いたと言います。

「今よりもパートの戦力化が進んでいなかったときのことです。パートさんを集めて、『会社を良くするにはどうしてほしいですか?』と聞いたことあります。

すると、彼女たちから、こんな提案が上がってきました。『事務所に傘立てがなくて、傘の置き場に困るから、傘立てをつくってほしい』。私は、『なるほど。私も気がつかなかった』と同意したものの、内心は、『え?それのどこか改善なの?そんな簡単なことでいいの?』とレベルの低さに驚きました(笑)。

そんな彼女たちが『人件費を踏まえながら、自分たちでシフトを組みたい』と言ってきたんです。本当に嬉しいですね。改善提案の質が上がったのは、会社の方針や価値観を理解し、自覚を持ってくれたおかげだと思います」(滝石)

「メリーメイド小金井支店」が、「売上全国第1位」を達成した理由

「ダスキンケア事業部メリーメイド小金井支店」は、2015年・2016年の「売上全国第1位」を達成しています(メリーメイドは、ダスキンとアメリカのメリーメイド社との提携により誕生した家事代行サービス)。

「売上全国第1位」を達成した大きな要因は、パートの「提案力」の高さにあります。提案力には、2つの意味があります。ひとつは、「お客様への商品提案力」です。売上全国第1位に貢献したパート、南聖愛は、「目標が遠くにあっても、できることを最後までやる姿勢が結果につながる」ことを実感しています。

「12月に入って、今年も残り1ヵ月もないというのに、目標とする売上よりも200万円足りなかった。『足りないよね、足りないよね。無理だよね』と言いながらも、『でも、何かできることがあるはずだから、やってみよう』と、みんなの意識は同じ方向に向いていました。結果的に『あれよ、あれよ』という間に達成した感じです。

店長の尾崎未佳(事業部最年少)が、『断られてもいいから、お客様にどんどん提案してみよう』と声をかけたので、私たちも、無理を承知でお客様に提案をしたんです。『こういうところが汚れているので、今日は、こちらのお掃除もいかがですか?』。

金額は安くありませんから、『お客様に、これ以上負担をかけていいのかしら』と最初は躊躇もしましたが、提案してみると、『そうね、実はあそこの汚れが気になっていたのよね』と言って、喜んでくださった。

もちろん、私たちもコミッション(成果報酬)をいただけるから(笑)、みんな必死に提案しましたね」(南)もうひとつの提案力は、「業務改善に対する提案力」です。

南は、「実行計画を自分たちの手でつくることで、パート同士の価値観を共有できる」と話しています。

「私は入社16年目ですが、武蔵野のことを本当に理解できるようになるまで、7、8年はかかったと思います。『実行計画』をつくるときも、それまではあまり参加しないで、上の人がつくった計画を実行するだけでした。

ですが今は違いますね。パートの中に『みんなでつくろう』という意識があって、みんなが同じ方向を向いて、同じ価値観を持って仕事をすることができています。以前の私たちは、『何か新しいことをしないといけない。何をすればいいのだろう?』と悩んでいました。

ですが小山さんから、『成果が出ているものをもっとやって、成果が出ていないものはやらない』と教えていただいて、迷いがなくなりました。社内アセスメント(参照)の参加率もとても高いですね。支店のみんなで話し合い、その場で考えを共有できるので、ブレずに仕事ができるようになったと思います」(南)

個人の売上目標を明確にして、やる気をうながす

「売上全国第1位」を達成した「メリーメイド小金井支店」の店長、尾崎未佳が取り組んでいるのが、「営業ができる女性組織づくり」です。

尾崎は54期経営計画発表会で優秀社員賞を受賞し、入社6年で部長に昇進しました。

「私が店長になってから取り組んだことは、支店内で個人の数字を競う『キャンペーン』を導入したことです。

パートさんに『ひとり5万円』の売上目標を与えて、『2ヵ月間で目標を達成できるように、お客様にご提案する』といったキャンペーンをしています。

目標を達成できたときは、個人表彰の他に(上位3位まで)、高級レストランで食事をしたり、屋形船を貸し切るなどして、みんなで楽しめるイベントを企画します。

私が『キャンペーンをやろう』と言ったとき、反発する声もあったと思うんです。でも、私には届きませんでした。なぜなら、ベテランの南さんが率先して協力してくださったからです。

長く働いているパートさんの信用を得ることができれば、その方が下に伝えてくれます。南さんのほうが、私よりもずっと上手にまわりを説得してくれました。

個人に売上目標を与えるときは、キャリアや出勤日数、出勤時間を考慮して差をつけるようにしています。南さんが6万円なら、新人さんや出勤数が少ない人は2万円にするなど、目標値を『頑張れば達成できる数字』にしています。

具体的には、パートさんの実績の120%くらいの数字です。それと、仮に3人で現場に出て、その中のひとりが提案した場合は、3人全員にコミッションをつけて、3人で分けるようにします。

すると、『この前はあの人にコミッションを分けてもらったから、今度は自分が取らないと』という気持ちになると思うんです。

最初はみなさん、『キャンペーンなんて無理~』と言いますが、目標に手が届きそうになったとたん、エンジンがさらにかかってきますね(笑)」(尾崎)また、尾崎はパートに「支店の数字」を公開し、協力を仰いでいます。

数字を開示したほうがパートのやる気が出るからです。「昨年末(2016年12月)は、200万円マイナスだったので、『ヤバい、ヤバい』と言ってお願いをしたんです。蓋を開けてみたら、プラス110万円になっていて、日本一を達成できました」(尾崎)

社員からパートになった従業員から見た武蔵野の働き方

「ダスキン小金井支店」の加藤あゆみは、大学卒業後に正社員として武蔵野に入社しました。結婚後いったん会社を離れ、その後、パートとして復職しています。

正社員だった期間を含めると、15年間、武蔵野で働いています。社員とパート、両方の立場を知る加藤にとって、武蔵野はどういう会社に映っているのでしょうか。

「私がパートになったのは9年ほど前ですが、その頃からパートに対する評価がさらに高くなった気がします。

社員だった頃は、『パートは、与えられた仕事だけをする』のイメージが残っていましたが、実際に私自身がパートになってみると、社員もパートも同じように『プラスアルファ』を求められますし、やればやっただけ評価していただけます。

パートになったばかりの頃は、正直、自分がどこまで、何をしていいのかがわからなかったんです。社員もパートもやる仕事は一緒だけれど、

私の中で、『社員を立てないといけないのかな。自分は一歩引いて仕事をしないといけないのかな』と迷いがありました。

滝石(常務取締役)に相談してみたら、『そういうのはまったく関係ない。自分からどんどん仕事を見つけてやりなさい。見てくれる人が絶対いるし、評価もしてくれる。だから、立場を気にせずに頑張りなさい』とアドバイスをいただきました。

滝石に背中を押されてからは、まわりを気にしなくなりました。自分の手が空いている時間を使って営業の手伝いをしていたら、ありがたいことに、『縁の下の力持ち賞』をいただくことができたんです。

武蔵野では、私だけではなくて、パートさんの多くが自発的に仕事をしていると思います。手が空いているときに環境整備をしている人もいますし、『何か仕事はありませんか?』と自分から声をかける人もいます。

武蔵野は、『誰かの役に立ちたい』という思いを持っている人にとって、とてもやりがいのある職場だと思います」(加藤)本社「コールセンター」で社員として働いていた牛島絵里奈も、結婚を機に武蔵野を退社し、2015年1月からはパートとして働いています。

「自分がパートになってはじめて、『武蔵野のパートさんは、ここまでやっているんだ』と、そのすごさがわかりました。社員でも大変なことを当たり前のようにやっているのですからね」(牛島)

社長の覚悟がなければパートの戦力化は成功しない

社長が変わればパートが変わり、会社が変わる

常務の滝石洋子は、「パートの戦力化が進んだいちばんの要因は、社長の小山(私)が変わったから」と言います。「先代の社長は、元学校の先生で温和な人でしたが、小山は真反対。だから、正直、大嫌いだったんです、小山のことが。目立ちたがりのヤンキーな坊ちゃん、みたいな感じでしたから(笑)。ところが、です。

社長になってからの小山は、どんどん、どんどん、変わっていきました。一生懸命仕事をして、鍛えられて、辛酸をなめて、頑張って乗り越えて……を繰り返すと、人は変わる。言動もそうですが、見た目も変わりました。長髪でチャラかったのに、社長らしく見えるようになってきたんです。

小山が変わったことで、社員も、パートも変わった。そして、会社が変わった。武蔵野のパートのレベルが高いのは、小山自身のレベルが上がったからです」(滝石)

「経営サポート業務管理部」の山路浪子と「商品管理」の工藤キノは、ともに勤続37年のベテランパートです。2人とも75歳ですが、iPadを使いこなし、若手と同じように勉強をしています。山路と工藤も、私の、そして武蔵野の変化を見続けてきました。

「今はもうありませんが、入社後、10年くらい、コーヒーサービスの商品管理をやっていたんです(オフィスコーヒーサービス)。午前10時から午後4時までの約束だったのに、そのうち『朝9時に来てくれない?』と言われ、最後は『朝8時30分から夜8時までやってくれ」と……。コーヒーの仕事は、当時、『本当にブラックだ』と思いました(笑)。

ところが今では、iPadを持たされたり、どんどん新しいしくみが入っていって、残業も少なくなって、会社も大きく変わりましたね。

経営計画書に『パート・アルバイト・契約社員に関する方針』が明記されてからは、パートの価値観が揃うようになってきたので、パートの定着率も上がって、辞める人が少なくなったと思います」(山路)「小山さんはね、意外と、あたたかみがあるんですよ(笑)。

小山さんも最初は家庭を持っていなかったけれど、結婚して、お子さんができてからは、以前よりも人にやさしくなった気がします(笑)。

それに小山さんは、本当に何でも知っていて、物知り博士ですよね。誰よりも勉強している。だからその分、社員やパートにも勉強する機会を平等に与えてくれます。いくつになっても成長意欲を満たしてくれる会社ですね。

iPadも、まだまだ完全に使いこなせているわけではありませんし、この年齢で覚えるのは大変ですけど(笑)、最低限のことはできるようになったと思います」(工藤)

パートがやる気を出さないのは、すべて「社長」の責任

「株式会社近森産業」(高知県/白木久弥子社長)は、食品製造と施設管理の会社として業務を拡大しています。白木社長が役員に就任したのは、2013年。

それまでは公認会計士として、東京の監査法人に勤務していました。「高知に戻って経営に携わったときは、東京の上場企業のような組織をつくろうと思ったんです。

そうしたら、『東京のやり方を持ち込むな!』とパートさんから猛反発を食らいまして……。『東京から戻ってきた娘が、わけのわからないことを言っている』と、まったく相手にされなかったですね。

パートさんは全然言うことを聞いてくれないし、陰で私の批判ばかりしているし、夜も寝つけず、社長になりたくないと思っていたときに、小山社長の本と出会った。

『もう、この人に頼るしかない!』と思って期待に胸を膨らませて実践経営塾に申し込みましたが、あろうことか、経営塾の初日に、小山社長を怒らせてしまったんです。『お金を返すから、帰りなさい』って。その日はずっと涙目でした(笑)」(白木社長)

私が白木社長を叱ったのは、社長としての覚悟が足りなかったからです。

白木社長は、私との面談で、こう言いました。「私には、やりたいことがたくさんあります。公認会計士の仕事も続けたいし、母親にもなりたいし、でも、会社も継がないといけないし、私はいったい何からはじめればいいですか?」

社長になるということは、従業員の生活を背負うということです。だから、大きな覚悟が必要です。「あれもやりたいし、これもやりたい」という中途半端な気持ちで務まるほど、簡単な仕事ではありません。

それまでの私には、『パートさんの生活を良くしよう』という発想も、責任感もありませんでした。ですが、小山社長に叱られて、目が覚めました。

パートさんの生活を守るのは、社長になる私の責任です。パートのみなさんはさまざまな事情を抱えながら、一所懸命働いてくださっている。それに報いるのが、私の仕事です。そのことがわかってからは、私もへこたれなくなりました。

私の言うことを聞いてくれない従業員を集めて、『みなさんに還元するためにも、うちの会社を良くしたいんです!そのためには常に考えて努力して、改善し続けないといけないんです!』と涙ながらに訴えたら、『やりましょう!』と言ってくれる人が増えてきました。

最後は泣き落としですが(笑)、全員一緒に同じ方向を向けるようになった気がします。その後、これならやっていけると自信がつき、2016年に社長に就任しました」(白木社長)

会社がいちばん苦しいときに賞与を払う

武蔵野の「ダスキン事業部第2支店」に勤務する荒井初江(74歳)は、勤続22年のベテランパートです。彼女は、「22年間で、会社の仕事が嫌だとか、人間関係が嫌だと思ったことは一度もない」と言います。

「よく、『昔の小山社長は、今の何倍も怖かったんじゃありませんか?』と聞かれるのですが(笑)、私は怖いと思ったことが一度もないんです。怖いどころか、小山さんは、パートの生活を守ろうという気持ちが、誰よりも強かったと思いますね。

世の中全体が不景気に見舞われて、どの会社も規模を縮小したり、賞与を出さなかったときでも、小山さんは、『会社がいちばん大変な時期だからこそ、パートに賞与を出す』と言ってくださいました。

『どの会社も暗い雰囲気になっているから、うちの会社は賞与を出そうと思う。そうすれば、少しは気分も明るくなるよね』と。それは小山さんのやさしさであり、社長としての覚悟なのだと思います」(荒井)

あいまいな返事はせず「できる、できない」をはっきりさせる

パートから「こうしてほしい」という要望が出されたときは、「できる、できない」「良い、悪い」をはっきりと答えるべきです。

多くの社長(上司)は、「『できない』と断ったら、辞められてしまうのではないか」と気にして、あいまいな返事でその場をしのぎます。

ですが私は、できないものは「できない」と、みんなの前ではっきりと答えるようにしています。パートが辞めるのは、「できない」と自分の意見を否定されたからではありません。「自分の意見を汲み取ってもらえなかった」からです。

上司が返事を濁したり、先送りしたり、いい加減な対応でやり過ごすと、女性は反発します。「汲み取る」と、「合意する」は違います。「汲み取る」は、「意見に耳を傾ける」ことです。

パートの要望をきちんと受け止め、検討した結果として「できない」と言うのであれば、パートは辞めません。以前、内勤事務のパートを採用したときのことです。

当初は事務だけのつもりでしたが、「お客様に電話をかける」という業務を増やすことにしました。するとパートは、「私たちの仕事は事務です。『電話をかける』とは言われていません。電話をかけるなら辞めます」と不満を口に出したのです。私は、パートの要望を受け止めたうえで、はっきりと方針を伝えました。

「今日から仕事内容を変えます。仕事が増えるので、時給も変えます。『どうしても電話をかけたくない』という方には退職金をお支払いするので、他の会社に移ってください」当時、パートは20名ほどいましたが、誰ひとり辞めませんでした。

私が会社の方針を明言したから、彼女たちは納得してくれたのです。「株式会社関通」の達城社長も、「パートさんの意見を汲み取ることが大切」だと考えています。

「全部マルを出さなくてもいい。ダメならダメと言ってあげることです。できないことに対しても、『こういう理由でできません』とはっきり言うことが大事です。

ただ、会社は常に変化しているので、今は無理でも半年後はできる可能性があります。だから、『半年経ったらできるかもしれないから、そのときも同じ問題意識を持っていたら、もう一度言ってください』と伝えています。『何回も言ってくれ』と言っておくと、本当に何回も言ってくれますね(笑)」(達城社長)

パートの声を無視して、現場改善はできない

「株式会社低温」(奈良県/川村信幸社長)は、冷凍食品・冷蔵食品専門の物流会社です。約50名いるパート(女性は8割)は、冷凍食品の梱包作業、冷蔵食品の仕分け作業を行っています。

川村社長は、「将来的に、パートの中から役職者や幹部を出したい」と考えています。その目的は2つあって、「社員の意識を変えること」と、「パートの自主性をうながすこと」です。

「社員の中には、『パートやアルバイトは、社員の手足となって作業をするのが当たり前』『社員の立場はパートよりも上』と短絡的に考えてしまう人もいます。

実際は、パートのほうが能力が高くても、そのことに気づかず、余計な指示を与えたり、自分の指示通りに動かそうとする。

パートは現場をよく知っているから、『こうしたほうが職場は良くなる』と問題意識を持っています。けれど、上から目線の社員に気を遣ったり、発言を控えたりして、言われたことしかやらなくなってしまう。

そこで、一部のパートに役職(パートリーダー)を与えました。役職を与えれば、パートはこれまで以上に責任感をもって仕事をします。

自発的に活躍するパートを見れば、社員も『パートも社員も業務上の差はない』ことを理解できます」(川村社長)「株式会社ナビック」(東京都/那須直人社長)は、洋服のタグ(洋服に付いている下げ札)やプリントネームに特化した印刷会社です。

那須社長も川村社長と同様に、「真実は現場にある」と考え、現場からの改善提案を進んで取り入れています。

「優秀なパートさんは、生産性が高いだけではありません。私たちでは気がつかないような小さな問題も見逃さずに、『もっと、こうしたらいいのではないか』と提案してくれます。

以前、私たち幹部が、『こうすれば良くなるだろう』と思って取り入れたことが、現場ではまったく逆の結果につながったことがありました。

原価も安く手間もかからないと思って受注した仕事が、原価も手間もかかる結果になっていた。パートさんから、『なぜ、現場にいる私たちの意見を聞いてくれなかったのか』『実際にやるのは私たちなのに、勝手に決められると困る』と注意を受け、私も反省しました。

現場のことをいちばんよく知っているのはパートさんです。パートさんの意見を無視しては業務改善は実現しないと実感しています」(那須社長)

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