①ネガティブなトラウマに支配されている過去の失敗体験にとらわれていて、褒められるのが苦手。マイナス思考癖が染み付き、「でも」「だって」「できない」などの否定語を連発する。いつも悪い結果を妄想。自分には能力がないと信じ込んでいる。②いつも不安がいっぱいいつもビクビクしていて不安感や警戒心が強い。こうなったらどうしよう、ああなったらどうしようと未来への根拠のない不安にとりつかれている。③自分のせいと責任を背負い込む何でも自分が悪いと思い、相手の機嫌が悪いと自分のせいだと感じて、すぐに謝る。生きていることに罪悪感を持っている。他人の責任も自分が取ろうとする。「ごめんなさい」「すみません」「私のせいです」が口癖。④自分の価値を低く見積もる自分の価値を割り引いて考え、低く見積もる傾向がある。正当な自己評価ができない。現実を見ようとしない。他人から評価されても、「こんなの普通です」「たいしたことありません」と返す傾向がある。⑤誰にでも従順すぎる従順で依存的。他人の発言を素直に受け止めて従うが、裏を返せば自分で決められない。自分がなく、「はい。その通りにします」「どうしましょうか。どうしたらいいですか?」という対応になりがち。⑥現実世界との関わりを避ける無感情、無表情。感情が麻痺し、希薄なタイプ。人と会うのを避けがち。話を振られても「よくわからない」、相手の話にも「へー」「ほー」「ふーん」といった受け答え。⑦素直になれないあまのじゃく素直な気持ちを打ち明けられない。気持ちとは逆のことをしてしまう。興味があっても関心のないふりをする。誰かが心配して声をかけても、言いたいことに蓋をして「別にいいよ」と言ってしまう。⑧どうせうまくいかないと最初から負け犬になるやってみもせずに最初からあきらめている、期待しない。すぐに、いじけたり、すねたりする。「どうせ自分なんか」が口癖。⑨自己肯定感が低く、相手を責めることで自分が正しいと認めさせようとしてしまう傷ついていることに気づきたくない。常にイライラが止まらない。決めつけた言い方をする。ありえない理屈で文句を言う。「バカにされた!」と感じることが多い。⑩怒りをぶつけて許されるかどうかをテストしてしまう普段は普通だが、人格が変わるくらいキレてしまうことがある。見返し思考・見捨てられ不安が強く、自分がキレても見捨てない人かどうか、相手の愛情を確認しないと気がすまない。⑪傷つく前に壊してしまったほうがいいと思い込みがち自分でチャンスや幸せ、成功を壊してしまう。自分の行動が理解できない。後悔と安堵を繰り返す。恥をかかされたり傷ついた過去の経験の原因が自分にあると考え続けている。傷つく前、捨てられる前、失望される前に自ら立ち去る。傷つかないように自分を守り、絶望感を回避しようとする。いい状態は続かないという思い込みがある。
はじめに――敏感で繊細だからこそ、「声」で変われる冒頭でご紹介した11個の傾向は、私が分類した「思考の悪癖パーソナリティ・ワーストイレブン」です。「悪癖」と言っても、あなたが〝悪い〟わけではありません。ただ、あなたが過ごしていいはずの穏やかな毎日に〝いい影響を与えない〟クセ、という意味です。常日頃、陥りやすいマイナス思考癖を分析していただくための分類ですが、どれか(または複数)に当てはまるようなら、行きすぎた思い込みや反省グセ、極端に悲観的な考え方に基づいた行動をとっていると言えます。他人や自分の感情に、極端に振り回されがちなので、感情に柔軟性が持てず、緊張感が高い傾向にあります。それゆえ、身動きがとりづらく、息苦しくなってしまうのです。これらのパーソナリティが生まれた原因は人それぞれかと思います。しかし、共通しているのは、これによって主に人前で話すことや他人と会話することが、苦しく、つらくなっているということではないでしょうか。でも、安心してください。本書では、そんな苦しみからあなたを解放し、自分で自分を守る方法をお伝えしていきます。本書は、これら11の思考のクセに対応したものですが、本書でご紹介するメソッドがお役に立てるパーソナリティの中で、私がいま特に注目しているのがHSP(HighlySensitivePerson)です。HSPとは、生まれつき感受性が強く、何事に対しても敏感にとらえがちな人々のことです。冒頭の「思考の悪癖パーソナリティ」の中にも、HSPが含まれていると私は考えています。いま、世の中の5人に1人がHSPだと言われています。HSPの人は、内向的で控えめ。普通の人よりも傷つきやすく、自己評価が低い傾向があるそうです。そして、じっくり深く物事を考えるので、一見すると「不器用」に見えることも多いのです。敏感であるがゆえに、他人のちょっとした一言に傷つきやすい。繊細であるがゆえに、自己評価が低くなってしまう。そういう人が、自分の「声」や「話し方」にコンプレックスを抱えているケースを、私はレッスンを通じて何度も見てきました。声が小さく聞き返されてばかり。うまく話ができないせいで自分の意見が通りにくい。また、他人から声や話し方を揶揄されることも多い。内向的で物静かな人は、いわゆる「声が大きい人たち」の恰好の餌食になりがちです。自分の意見が通りにくかったり、人から軽んじられたり、ときにはマウンティングされて嫌な目に遭ってしまうこともあります。「声が大きい人の意見が通る」「目立った人のほうがえらい」といった風潮がある今の社会では、外交的でアクティブな人たちに比べると、HSPや内向的な人は、「損をしている」「生きづらい」と感じることも多いでしょう。でも、もしもあなたが「ほかの人が期待しているような明るくはきはきとした話し方をしなければならないのではないか、それができない自分は、ダメな人間なのではないか」と感じ、自己嫌悪に陥っているとしたら、そんな必要はありません。内向的な人には、実に豊かな感受性を持っていて、物事の本質をはっきりと見極められる人が多いと感じます。自分自身について掘り下げて考えていくのがうまく、自分ひとりでも豊かな時間を過ごすことができます。実は他人が知らないひそかな特技を持っていたり、プロレベルに極めた趣味を持っている人も少なくありません。そんな才能のある素晴らしい人なのですから、その長所に目を向けず、「自分はダメだ」などと思う必要はありません。あなたは、ただ単に「自分の意見を外に伝えること」が得意ではないというだけなのです。自分の意見を言うのが苦手で、人前で話すと緊張してしまう。ただそれだけのことなのです。そもそも、性格を変えたいと思っても、個人の内面を変えるのは、なかなか大変なことです。特に緊張しやすい性格や人前で話すことへの苦手意識は、簡単に変えられるものではありません。事実、私自身、ボイストレーナーになる前は、人前で話すことが大の苦手で、「声を出すのが怖い」という思いをずっと抱えてきました。そして正直に言うと、ボイストレーナーとして活動する現在でも、大人数の前でレッスンをしたり、企業研修など何百人もの前で講義するたびに、「緊張するなぁ」「うまくいかなかったらどうしよう」とドキドキしています。緊張して、以前は前の日に寝られなくなることもありました。でも、そんな私がなぜ大人数の前でも、話をすることができるのか。それは、声や話し方で緊張や自信のなさを悟られないようにすることができているからです。緊張している人や話すことが苦手な人は、無意識のうちにそれが声や話し方に現れます。結果、それが聞き手に伝わり、「この人は緊張しているな」「この人は自分に自信がなさそうだな」と思われたり、ときには「マウンティングしても怒らないだろう」とつけこまれてしまう。でも、仮に人前で話すことに緊張感や苦手意識を持ち続けていたとしても、それを声や話し方で、上手に隠すことができればいい。そう考えた末に、まさに私自身のためにつくり上げたのが、この本でご紹介する「ポーカーボイス」と、それを最大限に生かすための「ポーカートーク」「ポーカーメンタル」です。詳しくは後述しますが、上につく「ポーカー」とは「ポーカーフェイス」のポーカーで、私の造語です。「ポーカーボイス」を使えば、人前で話をするときに、ドキドキしていることを悟られにくくなる。その結果、「自信がありそうな人だな」「落ち着いている人だな」と周囲から思われるようになります。本書は、かつての私のように、他人の反応や言動を気にしすぎてコミュニケーションがうまくいかず、そのことで、「生きづらさ」を感じている方々に向けて執筆しました。自分の内面を〝悟られない〟声を手に入れることで、あなたの人生はもっともっとラクになるはずです。
私を頼ってきてくださる方々の中には、第一線で活躍する俳優さんや大企業の経営者もいらっしゃいます。人前に立つことが前提の職業の方であっても、人知れず、他人を気にしすぎる悩みを抱え、ポーカーボイスで乗り切っているのです。第1章~第3章ではポーカーボイスのつくり方を中心にお話ししていきます。声の出し方を覚えたら、今度は「ポーカートーク」を身につけましょう。第4章では、引っ込み思案で、言いたいことをなかなか言葉に出して言えないストレスを抱えている方、プレゼンやスピーチが苦手な方向けに使える〝型〟をお伝えします。話し方の本には、よく「論理的に伝えれば伝わる」「他人を変えようとするのではなく自分が変わろう」などと書かれていますが、それではうまくいきません。本書では、相手にわかりやすいように論理的に話す方法だけでなく、相手が考えていることにもフォーカスし、相手に動いてもらったり、同意を取り付けたりできる話し方を身につけます。ビクビクしていることや動じていることを悟られない声の出し方・話し方を身につけたら、最後は、ビクビクそのものを減らしていく、「ポーカーメンタル」をつくっていきましょう。感情の取り扱い方を変えてあげれば、緊張と自然に付き合えるようになり、むしろ、人前で話すことも楽しいという感覚にすらなってくるのです。ポーカーメンタルのつくり方は第5章でお伝えします。自分の内面を変えることは、難しい。でも、ほんの少しだけ意識して声や話し方を変えることで、嫌な思いをしたり自己嫌悪に陥ったりすることを防いで、自分自身を守ることができる。ビクビクする自分から解放されたい、そんな自分をなんとかしたいと感じている方は、ぜひ、このまま読み進めてください。司拓也
あなたに、こんな思考のクセはありませんか?はじめに――敏感で繊細だからこそ、「声」で変われる第1章他人の顔色を気にしてビクビクしていた私が、人前で堂々としゃべれるようになったワケ自信がある人に見える「ポーカーボイス」とは声の不調はコミュニケーションの不調をもたらすあだ名は「ささやきクン」ポーカーボイスの効果事例❶入社を希望していた会社の面接を機に、一念発起事例❷中学校時代の朗読がきっかけで、話すことが恐怖に基本は「響きのある、通る声」
第2章当たり前に使われているあのアプローチは、繊細な人には逆効果!
全体の緊張を解く「VSMメソッド」こんなトレーニングはすぐにやめるべき!❶大きな声をとにかく出し続ける練習法❷過去のトラウマを探る療法❸コミュニティ・グループセラピー❹恐怖を感じる体験をさせて、実は大丈夫だと認識させる療法(暴露療法)❺無意味なポジティブシンキング
第3章自信ありげで感じの良いポーカーボイスのつくり方
声を変えるのは「喉・声帯・おなか」の三つのパーツメイントレーニング簡単に喉を開く方法メイントレーニング①喉を開いて話す方法を身につける「あくびトレーニング」世界一簡単に身につく腹式発声腹式発声であがり症も改善するメイントレーニング②腹式での発声法を身につける「みぞおち発声法」多くの人が悩んでいる「こもった声」を1分で解消メイントレーニング③1「場を明るくする通る声」をつくる「ニャニャニャ発声法」キンキンとした声を落ち着かせる方法メイントレーニング③2信頼感がアップする「響きのあるカリスマ声」を手に入れる「モーモー発声法」タイプ別トレーニング緊張でうまく声が出ないときタイプ別トレーニング①説得力が生まれる「骨伝導胸震発声法」舌をひっぱるだけで通りの良いクリアな声にタイプ別トレーニング②通る声と滑舌の良さが手に入り、喉の痛みも解消する「舌ひっぱり体操」声が出てくる場所をイメージする
タイプ別トレーニング③クリアで通る声になる「鼻下0・01ミリ時速1500キロ発声法」顔の筋肉をほぐして自然な表情にタイプ別トレーニング④表情豊かに話せるようになる「あおいうえお体操」もっと落ち着く究極の深呼吸タイプ別トレーニング⑤本番前に心が落ち着く「逆腹式呼吸法」タイプ別トレーニング⑥流暢に言葉があふれているように見える「0・01秒ブレス習慣」鼻炎による声の悩みも解決タイプ別トレーニング⑦鼻声を改善する「鼻詰まり解消発声法」タイプ別トレーニング⑧カクカクした話し方を流暢にする「声粒立てトレ」それでもうまく声が出ないときタイプ別トレーニング⑨何をしても声が出づらいときの応急処置「発声感覚インストール方法」声に良い飲み物、良くない飲み物とは?
第4章つけこまれない、マウントされない、言いたいことが言える、ポーカートークのつくり方
超簡単なのに超効果的動じていない人に見える会話術扱いづらい人への対処法❶ハラスメント・嫌味・悪意のある問いかけ迎撃STEP①「オウム返し作戦」迎撃STEP②「どうして、そう思うんですか~~作戦」迎撃STEP③「相談&ありがとう作戦」❷何かを頼まなければならない場面迎撃STEP①「オウム返し作戦」迎撃STEP②「気持ち→理由→気持ち→リクエスト作戦」落ち着いて説明できる方法❶「説明」シーンの基本ポイントSTEP①STEP②STEP③、❷説明の型をマスターする相手に確実に伝わる二つの最強の方法METHOD①PREP法METHODCPREP法METHOD②TNKフリートーク法METHOD③CPREP+TNK組み合わせピンチのときに役立つ会話術❶すぐに言葉にできないときの応急処置法❷ミスを繰り返し、上司に叱られたときクリップボード・シールド作戦❸つけ込まれない姿勢と目線❹相手とラクに話せる位置関係METHOD①Lポジション(カウンセリングポジション)METHOD②Iポジション
第5章気にしすぎる自分が気にならなくなるポーカーメンタルのつくり方
心の舵取りの仕方SとMの二つの緊張を取れば実力の9割は出せる意味のある緊張、意味のない緊張S緊張(身体瞬発型緊張)とはS緊張を取る方法①目の緊張を取る――心配症・不安症気質を解消する②喉の緊張を取る――「一言目が出にくい」を解消する発声時の喉の詰まりを軽減するトレーニング③舌の緊張を取る――滑舌でバカにされなくなる④顎と口の緊張を取る――言いたいことがはっきり言えるようになる顎の緊張を取る「あうあう体操」⑤大腰筋の緊張を取る――弱気が消え、勇気がわく⑥脳の緊張を取る――「頭が真っ白で言葉が出ない」を解消するスラスラ言葉が出てくる、表情豊かに話せる「鼻腔共鳴発声」M緊張(慢性的メンタル緊張)とは?M緊張の弊害M緊張を取る方法❶心身全体の緊張グセを取る――心も身体も一瞬で軽くなる❷雑念や不安が気にならなくなる「マインドフルネス呼吸法」❸過去のマイナス感情を取る――不安・怒り・トラウマから解放されるプラス思考はうまくいかない日本人の98%はマイナス思考気質新しい考え方を取り入れる「ノーミーニング法」「思考の悪癖イレブン」で分析する❹心に現れる批判の声を消去する心の中の聞こえてくる悪意ある批判を消すトレーニングおわりに――「内向的で繊細」と「人とうまく話せない」は別物
トレーニングの解説動画について本書で紹介するトレーニングの一部には、解説動画を用意しています。動画を用意しているトレーニングには、本文中に下記のアイコンを記しています。下記のURL、またはQRコードからアクセスして、参考にしてください。https://tsukasataku.com/page748/
自信がある人に見える「ポーカーボイス」とは「自分の声が好きですか?」「自分の話し方は好きですか?」そう問いかけられたとき、「はい」とストレートに答えられる人は、そう多くはないのではないでしょうか。実際、私のスクールで受講生にアンケートを取ったところ、およそ8割の方が「自分の声が嫌い」と答えました。自分の声に自信が持てない。自分の話し方が好きじゃない。そんな悩みを抱えている方にぜひ試していただきたいのが、「ポーカーボイス」です。「はじめに」でも少し紹介した「ポーカーボイス」について、本章の冒頭でご説明させてください。みなさんは、「ポーカーフェイス」という言葉をご存知かと思います。これは、ゲームのポーカーに由来しますが、目の前の相手に自分の感情を一切悟らせない表情のことです。何を言われても、どんな状況であっても、感情を隠し続けることで誰にもその人の考えていることや心理状態を理解させません。ポーカーボイスも、まさにこれと同じ考え方です。人間の声や話し方は、表情と同じく、その人自身のパーソナリティや心理状態、自信の有無を表す鏡のようなもの。「素」のままの声や話し方で他人と接すれば、あなたの心理状態は、対面している相手に筒抜けになります。素で向き合うコミュニケーションが大切なときは、もちろんたくさんありますが、本書では、緊張感やビクビクしている状態を相手に悟られることで本題が伝えられなくなるなど、コミュニケーションに支障が出るのを回避することを目的としています。ポーカーボイスを使ってあなたの「声」や「話し方」を装うことで、自分のビクビクした感情や想いを相手に気づかれないようにすることができるのです。声の不調はコミュニケーションの不調をもたらす自分の声や話し方にコンプレックスがある人は、他人に何かを伝えようとすると、とても不安になってしまいます。仮に相手が信用できる人であったとしても、「否定されるのではないか」という不安が頭をよぎると、怖くて声が出づらくなります。そうなると、話すことが億劫になり、なかには話すことが怖くなって黙りこくってしまう人もいます。日常的に声を出していないと、声の機能はどんどん退化します。機能が退化すれば、当然、声を出すときに以前よりも苦労するので、さらに話すことが苦手になっていきます。最初は話すことへの苦手意識だけだったところに、さらに機能面での問題が生じてしまう。結果、ますます「声を出すのが面倒くさい」という悪循環に陥ってしまいます。大切なのは、この悪循環のループを断つこと。そのループを断ち切らないと、人との関係をますます拒絶してしまい、いろんな機会や出会いを失うことにつながり、さらに苦しくなってしまいます。それを避けるためにも、緊張していない自分を〝装う〟ことで気持ちをラクにしたい。「ポーカーボイス」を使って日々ほんの少しでもいいので、「声に出して伝える」という行為を続けてみると、人と接することへの恐怖感や苦手意識は次第に弱まっていきます。本書のタイトルは「声の出し方」ですが、一方で、忘れてはならないのが「心の持ち方」です。多くの場合は、「自分に自信がない」という意識をケアせず、声や話し方だけを身につけて状況を変えようとしても難しいのです。とはいえ、いきなり「自分に自信を持て!」と言われても、困ってしまうでしょう。なぜなら、自分の性格や意識は一朝一夕で変えられるものではないからです。そこには長い時間や工夫が必要ですし、もっと言うと、性格など無理して変えなくてもよいのではないでしょうか。むしろ、あなたの個性はそのままに、ラクな気持ちで生きられる方法を見出せばいいと私は自分自身の経験から思うのです。声や話し方を変えることで、〝見せかけの性格〟は変えられます。内心ドキドキしていても、声が堂々としていれば、緊張が悟られることはありません。緊張しやすくて、人と話すのが苦手。自分の意見に自信が持てない。他人の気持ちの動きに敏感で、すぐに遠慮してしまう。傷つくのが怖くて、コミュニケーションを遮断したくなる。そういう繊細で傷つきやすい人のためにこそ、「ポーカーボイス」は存在します。まず自分の内面を変えようとするのではなく、一言でもいいから声を出して、自分の意見を他人に伝えられるようにする。そこから、「自分の意見を伝えられた」という自信が生まれ、話すことへの苦手意識は緩和されていきます。「声や話し方を変えることで、そこまで変わるわけがない」そんなふうに感じる方もいるかもしれません。でも、私自身、かつては自分の声や話し方に悩み、そのせいで日々のコミュニケーションに疲れてしまった人間の一人でした。あだ名は「ささやきクン」
「君みたいに緊張しやすい人は、多分うちの会社では無理ですね」これは、私が大学生の頃、就職活動中に出会った面接官の人が、気の毒そうに放った一言です。「はじめに」でもふれましたが、現在はボイストレーナーとして、ひと様に「話し方」や「声」について教える立場でありながら、実は昔の私は極度の話下手でした。何かを話そうとしても、声が震えてしまって、うまく話ができない。人の目を見て話すのが苦手。こんな自分が何か意見を言っても、どうせわかってもらえないだろう。そんな思いを抱えていたため、人前に出るとうまく話ができませんでした。大学に進学して、4年生になると、就職活動が始まります。私も300社近い面接を受けました。でも、元来人見知りの私が面接に行って、パフォーマンスをうまく発揮できるわけがありません。「面接官の目をしっかり見て話す」「ハキハキと笑顔で話す」などという面接の基本のキすら、全くできていませんでした。どんなに憧れの会社であっても、どんな立派な志望動機があったとしても、声が小さくて、震えていて、視線も合わせられない人の話は、誰もまともに聞いてはくれませんでした。一度、母校の先輩に、面接もかねたOB訪問をさせてもらったときなどは、あまりに緊張しすぎて手が震えてしまい、出していただいたコーヒーのミルクをスーツにこぼしてしまったほどです。そんな私の姿を見た先輩から、同情心たっぷりに言われたのが、冒頭の一言でした。受けても受けても、面接に落ち続ける日々。最後のほうは心が折れそうになったものの、卒業ぎりぎりまで就職活動を続けて、「君は緊張しやすいし、口下手だけど、すごくまじめそうだから」という評価をいただいて、ようやく保険会社に内定をもらうことができました。しかし、社会人になっても、私の話下手はなかなか治りませんでした。あまりにも私の声が小さくて、話をするには耳をそばだてなければならないため、周囲の人々からは、「ささやきクン」「つぶやきクン」というあだ名をつけられていました。ただ、周囲の人から、どれだけ「声が小さい」「何を言っているのか聞き取れない」と言われても、自分ではどこをどう直せばいいのかわかりませんでした。むしろ「声というのは生まれつきのものだから変えることはできないんだ。自分は一生、声が小さいままで生きていかなければならないんだろう」とあきらめていたように思います。当時の私にとって、人に話しかけられることは、ただただ恐怖でしかありませんでした。どうせ、うまく話せないのもわかっているし、自分の意見を上手に伝えられないのもわかっている。声が聞き取りづらくて、相手にも迷惑をかけてしまうのではないか。だったら、できるだけ話をしたくない。次第にそう思うようになっていました。ところが、入社して数年後。そんな私の意識を一変させる出来事が起こります。それは、社内で労働組合の議長に選ばれたことでした。労働組合の議長ともなれば、会社の経営陣を相手に大きな声を張り上げて、いろんな条件交渉をすることが求められます。また、会議も頻繁にあるので、議事進行なども担当しなければなりません。議長に選ばれたと聞いたときには、目の前が真っ暗になって、「どうしよう!」と顔面蒼白状態になりました。「ただでさえ人と話をするのが苦手なのに、人前に立って話さなければならない。しかも、場合によっては、会社の経営層という最も緊張する人々を相手に、話をしなければならないかもしれない。きっとこのままの声では、『何を言っているか聞こえない』と文句を言われて、終わってしまうのではないか……」そう考えたときに、まず真っ先に私の頭をよぎったのが、「自分の声と話し方をなんとかしなければならない」ということでした。声は変わらない。話し方も変わらない。ずっとそう思い込んで、「どうせ生まれつきのものだから、仕方がない」という一言で片づけていましたが、どうにもならない事態に直面して、私は必死でした。そこで、書店に行っていろいろ調べたところ、「ボイストレーニング」の存在を知りました。恥ずかしい話ですが、私はそれまで、その存在を全く知らなかったのです。早速、自分が通える範囲内で、良さそうなボイストレーニングを受けてみたのです。そして、プロから教わることで、「自分の声や話し方は、努力次第で変えることができる」と知りました。トレーニングの結果、労働組合の議長としてきちんと自分の意見を言えるようになり、周囲の人からは「あの〝ささやきクン〟が、こんなに変わるなんて……」と驚かれるようにまでなったのです。自分の声や話し方を変えたことで一番強烈な変化を感じたのは、周囲の人たちの接し方です。それまでは、「声が小さい」「話し方がぼそぼそしている」という理由で、自分の意見に真剣に取り合ってもらえなかったり、相手からまともに向き合ってもらいづらい状況にありました。あまりにおどおどしている私を見て、周囲の人から気の毒そうな目で見られることも少なくありませんでした。また、気が強い人や目立ちたがり屋の人からすると、おとなしくて無口な私は恰好のターゲットでした。職場の気の強い上司やクライアントなどからは、矢継ぎ早にいろんな質問をされたり、声や話し方をからかわれたりすることも多く、そのたびに、「なんでこんな思いをしなければならないんだろう」と思うこともありました。ところが、堂々とした声や話し方を身につけた途端に、周囲からそうした態度をとられることが激減したのです。声や話し方が堂々としていても、私自身の内面は相変わらずです。緊張しやすいし、誰かと話をするときは、内心ドキドキしっぱなし。意見や考え方も変わらないままです。変わったのは声と話し方だけ。それでも、周囲の態度は大きく変わるのです。ほんの少し努力して、「ポーカーボイス」を身につけただけで、世界が180度別のものになる。これは、私にとっては非常に大きな衝撃でした。その後、ボイストレーニングを継続していくうちに、次第に「自分と同じように声や話し方で損をしている人に、ぜひ自分と同じような経験をしてもらいたい」と思うようになり、会社員を辞めてボイストレーナーの道を歩むことに決めました。ポーカーボイスの効果
ポーカーボイスによって改善する悩みとは、どのようなものでしょうか。人前に出ると言いたいことが言えなくなってしまう声が大きい人の前に出ると、萎縮して黙り込んでしまう自分の意見を言う前に、「相手に否定されるのではないか」と不安に思う「自分の意見に自信がない」「自分の意見なんてたいしたことがないから、他人に聞かせるまでもない」と思う自分の言葉を聞き返されてばかりで話すのが億劫になる「笑い方が変だ」「話し方が変だ」と言われる自分の希望があっても言い出せず、最終的には相手の意見に流されてしまう他人からマウンティングをされやすいと感じる他人に配慮することができる優しい人だからこそ、「自分の話なんておもしろくないのでは」「自分の話し方や声は変なのではないか」と必要以上に感じてしまう。他人の意見を尊重できる人だからこそ、「自分に自信がない」と感じてしまう。他人の表情や声の動きに敏感だからこそ、他人の言葉を真剣にとらえて、そのたびに傷ついてしまう。前述しましたが、非常に繊細で敏感なことは、実は、「悪い性格」ではないのです。本当は素敵な特性なのですが、社会の中で生きていこうとすると、つらいことが出てきてしまう。そんな人にこそ向いているのが、ポーカーボイスです。ここからは、実際に私のレッスンを受けて、変化があった二人の受講生の事例をご紹介していきます。事例❶入社を希望していた会社の面接を機に、一念発起「聞こえなかったので、もう一度、言ってください」小さい頃から憧れていた某企業の面接時。当時就職活動中の大学生だったAさん(30代男性)は、面接官に鋭い声でそう問いかけられた瞬間、頭の中がパニック状態になりました。「僕の声って、聞き取りづらいんだ!」「どうしよう、これでもう印象が悪くなってしまったんじゃないか」「この面接、失敗しちゃったな……」そんな思いが頭をよぎり、それ以降の面接で大きな声を出せなかったうえ、何を答えたかすらも覚えていないほど放心状態に。当然、面接は不合格。後日届いた「今後のご活躍をお祈りしています」という一文が添えられたメールを見て、「やっぱり自分はダメなやつだ」と自己嫌悪に陥りました。ごく普通の好青年に見えるAさんですが、昔から自分にあまり自信がなくて、意見を口にするのが大の苦手。一言で言えば、非常に内向的なタイプだったそうです。家族や友達と外で食事するとき、自分が食べたいものが言えず、いつも相手の食べたいものを食べることになる。友達と旅行に行くときに、自分がやりたいことがあっても「自分の提案なんて、みんながおもしろいと思うわけない」と思って、提案できない。好きな女性がいても、「自分なんかが好きだなんて言ったら、迷惑なんじゃないか」と思い、どうしても自分の気持ちを伝えられない。そんな思いを、何度も経験してきたそうです。「もうこんな人生は嫌だ。もっと自分に自信を持って言いたいことが言える生き方をしたい」そして冒頭にお話しした面接での失敗をきっかけに、自分の声や話し方を見直したいと思ったAさんは、私のレッスンの受講生としてやってきました。彼と話をしてみたところ、もともとの声は非常に明瞭で、決して悪いわけではありません。ただ、彼はとても繊細な性格で、周囲の意見に敏感に反応してしまうタイプの人でした。だからこそ、自信のある話し方ができず、周囲からは「自信がなさそうな人」「声が聞き取りづらい人」だと思われていたようでした。私のレッスンを受けて、ポーカーボイスを身につけた後、彼は就職活動に再びチャレンジするために1年留年し、翌年、また同じ企業へ入社希望を出しました。書類審査は再びパスし、いよいよ面接。すると今度は、「声が聞き取りづらい」と言われることもなく、面接もスムーズに終了。数週間後、見事に内定を得ることができたそうです。とはいえ、30代になった今でもやはり人前に出ると緊張するとAさんは言います。ただ、どんなに緊張していても、ポーカーボイスやポーカートークを心がけていれば、相手にそれを悟られることはなく、以前に比べると周囲の人からバカにされたり、意見を軽んじられたりすることもなくなったそうです。また、心境の変化なのか、人から自分の意見を否定されることを、そんなに怖いと思わなくなったと語っていました。Aさんに芽生えてきた自信が会社側にも伝わったのでしょうか。今年はなんと社内で新入社員の採用担当を頼まれたそうです。昔の自分の姿を思い出しながら、面接に挑みたいと意気込んでいました。事例❷中学校時代の朗読がきっかけで、話すことが恐怖に幼少期から10代に負った心の傷が原因で、話すことが苦手になってしまった人もいます。私のクライアントであるBさん(40代女性)も、その一人です。物心がついた頃から、人前で話をするときはいつも緊張してしまう性格で、大きな声を出すのが苦手だったそうです。そんな彼女が、人前で話すことに対して決定的な恐怖心を持つきっかけとなったのが、中学時代の国語の授業で朗読をしたときの出来事でした。ただでさえ人前で話すのが苦手な彼女が、最も苦手だったのが朗読の時間。その日も、先生に指名されて、彼女が下を向きながらぼそぼそとした声で朗読を始めると、クラスの男の子たちがクスクスと笑っています。「全然、声が聞こえませ~ん」とふざけながら誰かが言うと、クラス中からどっと笑いが起きたそうです。
国語の先生も、そんなクラスの男の子たちをたしなめながらも、「Bさん、もうちょっと大きな声が出せるといいわね」と少し笑いながら、言いました。その瞬間、「私の話し方っておかしいんだ」「私の声って、変なんだ。恥ずかしい……!」と感じた彼女は、以来、人前で話すことにますます恐怖を感じるようになり、人と話をすることを避けるようになっていきます。誰かと話をしようとすると心臓がバクバクと激しく鳴り、動悸が始まって、話の内容よりも「自分はうまく話せているんだろうか」「ちゃんと声が出ているんだろうか」ということばかりが気になってしまう。なんとか高校、大学へは進学したものの、困ったのが就職先でした。面接が苦手な彼女は、就職活動ではことごとく失敗。なんとかコネクションをたどって、親の知り合いの会社に勤め出すようになります。新入社員としての初めての仕事に、電話応対を任されますが、ここでもまたトラブルが……。鳴った電話の受話器を取ったはいいものの、「きちんと話ができるんだろうか」、電話越しに話をしているときも、「自分の声はちゃんと聞こえているんだろうか」とドキドキして心臓の鼓動が全身に響き続ける。最初の数カ月は、それでもなんとか頑張って働いていましたが、無理がたたったのでしょうか。ある日、会社で受話器を取った瞬間、突然、一切の声が出なくなってしまったのです。当然、声が出なければ、会話もできませんし、仕事になりません。病院にも行ったものの、医師からは「神経性のストレスだと思います。しばらくは、ゆっくり療養してください」と言われるばかり。数週間お休みをもらった後も、結局声は回復しません。電話番兼事務職として採用されたので、声が出ない以上は業務がこなせない。結果、会社を辞めることになりました。その後、自宅療養を経て再び声が出せるようになったものの、この出来事がトラウマになり、「人とのコミュニケーションが必要になる仕事は自分には向かない」と思うようになってしまったそうです。そこから10年近く、就いた仕事はすべて、データ入力など人と顔を合わせず話すことも必要ない事務作業の業務委託ばかり。プライベートでも、「また声が出なくなったら怖い」と、新しい友達をつくったり、誰かと出かけたりするようなことは一切ありませんでした。ただ、30代半ばの誕生日に将来のことを真剣に考えるようになり、私のトレーニングを受けることにしたのだそうです。これまでの経緯を訥々と話してくれた彼女に、最初に私が思わずかけた言葉は「よくやってきましたね」という一言でした。そうすると、彼女はぽろぽろと涙を流しながら、声を出して泣き始めました。10代で「人前で話すのが怖い」と思うようになってから、十数年間。たった一人でその苦手意識と戦ってきた彼女は、抱えている重荷も相当なものだったでしょう。十数年以上もの間、ほとんど人と話をしていなかったものの、トレーニングを重ねるにつれて、彼女はきちんと人に伝わる落ち着きのある声を出せるようになっていきました。現在でも、まだ人と話すことには多少苦手意識があるそうです。でも、トレーニングを受けたことで、おどおどと話すクセもなくなり、非常に自信にあふれた声を身につけることができました。現在の心境を聞いてみると、「やっぱりまだ人と話すのは苦手かもしれません。でも、人前に出て、誰かと話をする際に、自分の声や話し方を気にすることがなくなりました。人と会うことを避けなくてもよくなったので、行動の選択肢も増えたと思います。お休みの日に買い物に出かけて、店員さんに話しかけられても怖くなくなったし、会話自体を楽しめるようになったことも、とてもうれしいです」とのこと。現在、彼女は、以前から興味のあったスポーツサークルに入り、そこでの新しい出会いを楽しんでいるようです。基本は「響きのある、通る声」さて、ここまで二つの事例をご紹介してきましたが、では、声を出すことが苦手な人でも、自分の緊張感やおどおどとした感情を隠し、相手に信頼感を与えられる「ポーカーボイス」とは、果たしてどんな声なのでしょうか。例えば、昨日まで静かに話をしていた人に、いきなり「ハキハキと大きな声を出せ」と言っても難しい。でも、安心してください。ポーカーボイスの基本は「響きのある、通る声」です。心理学的にも、ゆっくりと落ち着いた声は、聞き手に信頼感や大人っぽい印象を与えるため、「この人は自信がありそうだな」「この人は信頼できそうだな」と思われやすい傾向にあります。言葉数を多くする必要はありません。少なくても、あくまで、ゆっくり落ち着いて話すことができれば、それで十分自信のある人というイメージづくりはできます。大きくて明るい声を無理に出す必要もありません。あなたの控えめで思慮深い性格に合わせて無理のない穏やかな声で話せば、それで信頼感を生むことができるのです。
コメント