会社や組織において人は3つの要素を考えなければならない。
業務個人(自分)組織(自分以外)多くの人は入社当初、3つの要素がすり合っていて、不安はありつつも希望に胸が膨らんでいた。
「早く仕事で結果を出して(業務)、能力を高めて(個人)、組織に貢献していこう(組織)」こんな風に、3つの要素はつながり、同じことのように考えられていたのだ。
しかし、入社してからしばらくたって業務に追われて日常化してくると、次第にこの3つは、反目し合ってくる。
「今の仕事がつまらない(業務)から、成長実感も湧かないし(個人)、そもそも会社がどこに向かってるのかわからないんだよな(組織)」こんな風に、3つの要素は離れていく。
その結果、人はやりがいをなくして組織から去っていく。
本書では、組織に属する人が働きがいを感じながら、成長と成果を上げるために、この3つ(業務/個人/組織)の側面について、上司と部下が対話を通してすり合わせをしていくことの重要性について説いています。
さらに、上司が具体的にどう対話を進めていけばいいのか、つまり何を(What)どう(How)すればいいのか、現場で実際に使える型とスキルを余すところなく紹介します。
この「対話によるすり合わせ」が組織で実施されていくことで、上司はマネジメントが楽になり、部下は働きがいが向上し、組織のパフォーマンスは上がっていきます。
そして、この鍵を握るのは上司であるマネジャーです。
これから、マネジャーが組織でどんな対話を行っていけばいいのか、その答えを探る旅にさっそく出かけましょう。
はじめに今、組織では対話できるマネジャーが求められている多くのマネジャーと話をしていると、よくこういった声を聞きます。
マネジャー「何度言ってもやらないんですよ。
何を考えているのかわかりません」私「なるほど。
部下の方の考えていることがよくわからないんですね」マネジャー「そうです。
僕らのときの〝普通〟が通用しないんですよ。
全然目線がすり合ってないんです」一方、部下の方と話をしていると、よくこういった声を聞きます。
部下「うちのマネジャーは言うことがコロコロ変わるし、こっちの状況を全然わかってないんです」私「なんだか、考えていることが違いそうですね」部下「そうなんです。
マネジャーと考えが全然すり合ってないんです」「すり合わせ」、どこの組織に行ってもよく聞く言葉です。
「ちょっとこれ、上とすり合わせてきます」「それ、ちゃんとすり合わせた?」──あなたの職場でもよく耳にするのではないでしょうか。
私は組織人事コンサルタントとして、ときにはビジネスコーチとして、企業の方と面談やコーチングという形でお話をします。
そのときに出てくる問題で一番多いのが、関係者、とくに上司や部下との対話がそもそも行われておらず、考えがすり合っていないということです。
いや、もう少し正確にいうならば、私との対話を通して「すり合っていない」という課題に気がつくのです。
普段は、先ほどの例のマネジャーのように「なんで何度言ってもできないんだろう?」という問題事象に留まっています。
そこで、解決に向けて次回までに「部下と対話して考えをすり合わせてくる」という宿題が課されます。
部下の方も同じです。
部下「正直、上が何をどこまで期待してるかわからないんですよね」私「それ、上司の方に聞きました?」部下「いえ、ちょっとタイミングがなくて聞いてないです。
がんばって話してすり合わせてきます」こんな一見、当たり前と思えるやりとりが非常に多いのです。
つまり、問題が起きてい
ることの原因が、上司と部下との認識の相違であり、それを対話によってすり合わせていないことが多々見受けられるのです。
この対話不足によって起こっていることは、「仕事を通して自己実現をしたい」「やりがいのある職場で働きたい」と考える優秀層の離職や、モチベーションが下がって自発性を失った退職予備軍といわれる従業員の増加などさまざまです。
昨今、働き方の意義が変わり、とくに自己成長が望めない職場から去る人が増えています。
対話もなく、ただ業務に必要な情報を指示されて、それをこなすだけの生活を続けていることで起こる結果です。
しかし、部下が自分の言いたいことを言えて、マネジャーがそれをしっかりと受け止め、組織としての考えも伝えてくれる「対話」の場があれば、部下はもっと働きがいを持って仕事に取り組めるはずです。
このような状況の中、私は、前著『シリコンバレー式最強の育て方人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング』(かんき出版)で、組織の上司と部下の対話が不足していることに対して、1on1ミーティングの必要性を述べ、そのやり方についてご紹介しました。
そして、時流もあってか予想を超えるたくさんの反響をいただきました。
最近では、1on1ミーティングは数多くの企業や組織で導入されて、各種メディアでも特集が組まれるなど、ある種の社会現象になるほどの勢いです。
今日、組織における1対1の対話の重要性が増しているのをひしひしと感じます。
しかしその一方で、私はある1つの危機感を抱いています。
多くの組織で1on1などの定期的な対話がなされ始め、おおむね開始当初は、上司・部下ともにお互いを知ることができて、高い満足度を示します。
ただその後に、対話の必要性を理解し、効果的に継続していく組織と、だんだん話すネタも尽きてきて、マンネリ化し、形式的なものになっていく組織とに二分されるのです。
一度対話が形式的なものになってしまうと、1on1などの場があったとしても、上司・部下どちらともなく、「今回はスキップでお願いします」という回数が増えて、やがて対話自体がなされなくなる。
そのようなことが実際、起き始めているのです。
せっかく始まった組織の対話がなくなっていく。
私はこれに大きな危機感を抱いています。
このままいくと、組織を形成していくうえで必要な対話が、消滅するのではないかと思うのです。
なぜなら、昨今の社会情勢は、就業時間内は効率が求められて、目先の業務の話しかする時間がなく、就業時間外は社内の人との交流はしないという人が増えているなど、対話をできないというまことしやかな理由がたくさんあるからです。
では、組織の中で1on1などの対話が続かないのは、必要がないからでしょうか。
私は、そうは思いません。
少なくとも対話を始めてうまくいかない組織に起こっていることは、必要がないから続かないのではなく、単に正しいやり方を知らず、正しい研鑽が積まれていないだけの問題です。
逆に言えば、正しいやり方を知って研鑽を積めば、効果的な対話が継続できるのです。
だからこそ、結局「何を」話せばいいのか、そして、「どう」話を深めていけばいいかをもっと多くの人に知ってほしいと私は考え続けてきました。
もちろん、今までも対話するテーマ(質問項目)について紹介するものは、世の中にさまざまありました。
しかし、「それで十分なのか?」「話すテーマに偏りはないのか?」──要するに、上司と部下ですり合わせておくべき「全体観」を、もっとわかりやすく示すことはできないだろうかと思ったのです。
本書は、私がその問題意識を持ちながら、1on1をうまくマネジメントに活用している人のお話をうかがう中で見出した共通点を整理したものです。
つまり組織において上司と部下が「何を」テーマに対話を始めて、「どう」話を進めてすり合わせていくのかを「型」にまとめて、ご紹介しています。
本書を読めば、上司と部下が「何を」「どう」対話し、すり合わせればいいかがわかります。
そして、実際に対話していくことで、部下の成長が促進されて成果が上がり、従業員エンゲージメントも高まっていくと確信しています。
今、組織では、そのような対話ができるマネジャーが求められているのです。
毎日忙しく責任感を持ってがんばっている現場のマネジャーを見るにつけ、何とかその努力が報われてほしいと思い、本書を執筆しました。
本書がそんなマネジャーの方々の指南書としての役割を少しでも果たすことができたならば、これに勝る喜びはありません。
2020年4月世古詞一
はじめに今、組織では対話できるマネジャーが求められている本書の使い方
第1章なぜ、組織において対話が必要なのか
選ばれるために、企業は「対話」にたどり着いた対話を始めた組織で、部下が思いを語り始めた対話型マネジャーが組織の未来をつくる1on1ミーティングはブームで終わるのか本書の全体像対話型マネジメントを実施しているマネジャーの気づき・感想
あなたは組織の評価制度の変遷を知っているか組織をつくってきた人から組織を理解するうさん臭さを消すには文脈とタイミングがすべて自部署に異動してきた部下との対話例人間関係ボックス部下を取り巻く人間関係を知っているか部下にとって大切な3種類の社内関係者組織方針ボックス組織の方向性の情報格差をなくす組織の方針を語るにはタイミングがあるマネジメントが「単なる連絡係」になっていないかなぜ多くの上司は「逆ホウレンソウ」できないのかおわりに対話型マネジャーは自己との対話を土台にする
本書の使い方本書で使う「対話」という言葉は、相互にじっくりと話し合うことであり、主に1on1ミーティング(以下1on1)の場面でなされることを想定しています。
そのようなイメージで読み進めてみてください。
また本書では、効果的な対話を行うための「すり合わせ9ボックス」という「型」や、「すり合わせる技術」という「コミュニケーションスキル」をご紹介し、それらを活用した「対話例」や「質問例」をふんだんに取り入れています。
ぜひ何度も読み込んでみてください。
というのは、1on1をうまくいかせるコツは、対話のパターンに慣れることだからです。
英語の学習と同じように、対話のパターンに慣れていくと、自然に効果的な対話ができるようになります。
同時に、対話の正解を知ることが重要です。
もちろん、対話の正解は1つではありませんが、どのような正解があり得るのか、その引き出しをたくさん持つことで安心感が得られるはずです。
ですから、「こういう感じが良い対話なんだ」という対話例を、たくさん読み、聞き、見て、身体に刷り込んでいくことが最良の方法なのです。
そのため本書では、対話例の箇所に背景色がついています。
また、上司のセリフの下段にはポイントが書かれている箇所があり、「この質問では何のスキルが使われているのか?」「この質問はどういった意図があるのか?」がわかるようになっています。
そのポイントを理解し、最終的にはそれを見なくても、対話の要点がわかるようになることがゴールです。
本書を最後までじっくりと読んでいただければ、上司と部下の単なる会話と、意図された対話の違いがはっきりとわかるでしょう。
そして、何度も読み込み、実践していただければ、対話が楽しいものになり、部下の継続的な成果や成長に欠かせない重要なものになってくるはずです。
対話があなたの強力なマネジメントツールになるのです。
第1章なぜ、組織において対話が必要なのか
選ばれるために、企業は「対話」にたどり着いた日本国内の少子化傾向が続く中、若手人材の流出はいまだ一定割合続いています。
大卒の就職後3年以内離職率は2010年から2016年まで軒並み30%台前半で推移(厚生労働省「新規学卒者の離職状況」)し、また2019年にツナグ働き方研究所が実施した「就業意向に関する調査」によると、入社3年目の若者(17~29歳の正社員・契約社員・公務員)の中で、「辞めるかどうか迷っている」と回答した「退職予備軍」の若者は47・3%と、約5割に上りました。
就業観が変化し、働きがいや自己実現を求める若手人材の流出と、退職予備軍など会社を辞めるわけではないけれど、はたして会社にコミットをして働いているかどうかわからない社員の存在感も増しています。
あるマネジャーの方は、こんなことを言っていました。
「若手が辞めていく。
1年目は何とかしのげても、3年ほどして仕事ができるようになると辞めていきます。
今いる部下についても、いろいろと対策を打って何とか今の会社にいてくれている状態ですね。
これ以上、会社にコミットさせるのは厳しいです」ワーク・ライフ・バランスが重視され、働く時間が以前よりも減る中、従業員が業務をすること以外で会社とかかわる機会は減っています。
さらに、政府も後押しをする副業も今後本格化し、従業員は会社以外から報酬を得る選択肢をたくさん持つことができます。
そのような環境下で、従業員に自組織で働き続けることを選んでもらえるのか。
組織と従業員のWinWinを真剣に考えなくてはならない状況になってきました。
こうした社会情勢を背景にして、組織内における対話の重要性が見直され、米シリコンバレー企業を中心として行われていた組織内コミュニケーションである「1on1ミーティング」を日本でも実施する組織が増えてきました。
2019年5月には、NHKの「ニュース7」で、「1on1ミーティング大手企業で導入始まる」という見出しで特集が組まれました。
この特集では、大手電機メーカーのパナソニックが全社で1on1を導入し、原則2週間に1回15分程度、日々の業務で課題に感じていることや目標の進捗、それに将来のキャリアプランなどについて話し合うと伝えていました。
頻繁に話をすることでコミュニケーションが深まり、昨年度、ある部署で行ったアンケートでは、従業員の半数以上が「仕事の成果が上がった」と回答したとのことです。
1on1ミーティングとは、主に部下の育成・モチベーション向上を目的とした定期的かつ高頻度な上司と部下の対話の場です。
従来の面談と何が異なるかというと、その目的が主に「部下のための時間」であることです。
従来のいわゆる「面談」は上司が職務上必要な場でした。
部下を呼んで、評価の振り返りや目標設定などを行い、最終的にその内容のアウトプットを人事や経営に提出する、いわば「上司のための時間」だったといえるでしょう。
このように、構造として上司が必要だった面談と、純粋に部下のための1on1ミーティングでは、目的が異なります。
ですから、それに合わせて実施するやり方も、必要となるスキルも変化させていかなければならないのです。
対話を始めた組織で、部下が思いを語り始めた繰り返しになりますが、このような対話の重要性を認識して、1on1ミーティングを始める組織が増えています。
その中で、私がかかわった企業・団体の事例を紹介します。
携帯販売などを手がけ、全国に複数の店舗を持つA社では、昨今の大きな社会変化に合わせて考えて動ける自律型人材の育成に課題を抱えていました。
従来のように、本部からの指示を従順に行うだけでは、店舗ごとに異なる顧客ニーズに合致しないことも増え、自分で考えて動ける人を育てていくことが急務だったのです。
そのためには、上司の一方的な指示で成果を上げるやり方ではなく、対話によって部下に考える機会を与え、自ら気づきを得て行動する支援をしていくことが必要でした。
1年半が経ち、部下は上司から問われるクセがついて、普段でも上司と話す際に自分の考えや意見を言うようになりました。
また、IT企業のB社では、離職率が上昇しているという問題がありました。
その原因として、社内の従業員満足度調査の中で、評価の納得感との間に関連性が見られました。
また、離職率以上に、会社として辞めてほしくない人が辞めていることも問題でした。
それらの状況から、評価の納得感を高めてモチベーションアップにつなげるために、定期的な対話の機会を取り入れました。
従来から行われていた、半期の期初での目標設定面談、期中での中間面談、半期末での評価査定面談に加えて、半期で3回ミーティングを追加して毎月対話の機会を設けたのです。
内容は、評価をベースに成果と成長についての振り返りを行いました。
これにより、評価納得感は同調査で10ポイント近く上昇しました。
しかし、それ以上に良かったことは、定期的に対話を行うことで、上司に対しての信頼感が高まり、普段は疑問に思っていても話せなかったことを話してくれる事例が複数出てきたことでした。
また別の会社では、会社の指示ではなく自ら対話の機会を設けたマネジャーがいました。
その理由を聞くと、こう語りました。
「普段、気がつくとメールやメッセンジャーなどのツールでしか、部下とコミュニケーションをしていないことがあります。
1日中、業務の具体的なやり取りしかしていないので、『部下が今何を考えているか?』がわからず、不安なところがあったのです」このように、社内コミュニケーションがツールを介してばかりになり、部下と本音で話せていない上司が、意図的に対話の機会をつくっています。
これも今の時代を反映しています。
Cさんは、Slackなどのチャットで話し合われていた内容を題材に、対面で話をするそうです。
「実際に、あのやり取りで疑問に思うところなかった?」このように、ツールコミュニケーションでの曖昧な点を、対話していくことで明確にして部下の不安を取り除くことに活用していました。
さらに、対話を頻度高く行うことで、上司と部下の信頼関係が強固になり、部下の成長が促進されるなどの効果も生まれています。
対話型マネジャーが組織の未来をつくるこうした対話を通して、部下に考えるきっかけを与えて変容させていくマネジャーが、今必要とされていると私は思います。
指示されたことだけを従順に行う部下を育てるのではありません。
自ら考えて問題を発見し、解決策を見出し実行していく人を育成するのです。
そして、まだ使われていない部下のポテンシャルを引き出して、才能を開花させる。
それを可能にするのが「対話」であり、それができる人が「対話型マネジャー」です。
対話型マネジャーは、これまでのマネジャーとは違い、上司自ら部下の問題解決をするのではなく、対話によって部下に考えさせて、まだ曖昧な考えを言語化する手伝いをします。
それによって、部下自身の問題発見能力が養われ、解決策を自身で考えられるようになります。
つまり、部下の成長支援をベースとしながら、業務成果支援も行うのです。
さらに、対話型マネジャーは組織のハブとして、組織方針などの組織の考えと部下の考えをすり合わせていきます。
とくに、昨今は所属する組織に物理的にかかわる時間が減っています。
残業時間が従来より厳しく管理されていたり、職場の人と飲みに行く機会も減りました。
また、企業も終身雇用を従業員に約束できなくなってきたため、ステップアップの転職や副業など、今の組織に頼らず個人が強くならなければいけない時代になりました。
このように、放っておくと個人と組織の距離が離れていくような方向に世の中は動いています。
だからこそ、対話型マネジャーの必要性が際立つのです。
組織の考えと個人の考えを対話によってすり合わせ、つないでいくのです。
1on1ミーティングはブームで終わるのかこのように、対話によるメリットは多々あり、一定の効果があるのは事実です。
実際、1on1などの対話を始めて数回は、多くの上司と部下にポジティブな反応が見られます。
お互いの知らない面を話せて、相互理解が深まるためです。
しかし、だんだんとマンネリ化してきて、次のような問題が起こっていることもまた事実です。
私が、さまざまな組織とかかわる中で見聞きしたのは、以下のような6つの懸念点です。
1そもそも、対話の正解がわからない1on1の正解やゴールが何なのかを、明確に理解している人は多くありません。
「この対
話が部下の成長につながっているのか?」「部下のメリットになっているのか?」、それを上司自身がわかっていないのです。
また、1on1自体がブラックボックスなので、第三者からタイムリーなフィードバックをもらうことができず、自身のコミュニケーションが正しいのかを実感することもありません。
2上司が言いたいことを言う場になっているそして、何が正解かわからないと、上司はとりあえず部下に対して思っていることを伝えます。
良かれと思って、それが上司の価値とばかりに自らの経験を語ります。
結果、上司ばかりがしゃべっている状態になります。
これが一概に悪いわけではありませんが、「部下のための時間である」という目的に立ち返ったときに、はたして部下が言いたいことを言えていない状況が効果的なのかを考える必要があります。
3話が場当たり的で、思いつきで進んでいる同じように、何が正解かわからない中で、上司はとりあえず部下に質問をします。
それで話が盛り上がれば、結果オーライとしてしまい、意図を持って対話を進めようとしていません。
話が思いつき、場当たり的であり、網羅性もないので、部下にとって効果的な対話になっていないのです。
4形式的なものに終始しているさらに、マネジャー自身が1on1の目的を把握できていないままただ形式的に実施しているケースも増えています。
たとえば、1on1の実施状況を人事に提出する仕組みになっている組織があります。
この場合、上司が提出するシートの空白を埋めて出すことが目的になり、部下としては「話したら全部筒抜けになるのでは?」と不安になって本音が話せません。
また、上司も目の前の部下との対話プロセスよりも、提出するシート、さらにはそれをチェックする人事や経営に意識が向いてしまうのです。
5従来型の業務進捗確認の場になっているそのような状態では、1on1は部下のための時間といいつつ、フタを開けてみると、よくある業務進捗確認の場になっている実態があります。
もちろん、これも悪いわけではありません。
部下も有意義に感じるところもあるでしょう。
しかし、今までのコミュニケーションと変わらず、主に上司が進捗を確認したいがために設けられた場になっています。
6雑談ばかりで、意味を感じられないまた、1on1は上司と部下の相互理解の場でもあるので、お互いに仕事以外のことや興味のあることについて話しても構いません。
しかし、そればかりになると、いつも表層的な
話ばかりになり、マンネリ化して、1on1の意味を感じられない状態になってしまいます。
これは、話すテーマについて考えが及んでいないことと、対話を深掘りしていくために必要な上司のコミュニケーションスキルの不足が原因です。
これらは、1on1などの対話を始めてみて起こりやすい問題です。
こういった状況を放置していくと、「やっぱり1on1なんて意味ないよね」「対話は必要なときにすればいいよね」となっていき、結果として組織の対話はどんどん行なわれなくなっていくでしょう。
私は、せっかく始まった組織の対話がなくなっていき、組織が弱体化していくことを非常に危惧しています。
一方で、それに対してこんな反論をする人もいるかもしれません。
「継続されないということは、そもそも組織に必要ないのではないか?」しかし、私はそうは思いません。
それは単に正しいやり方を知らず、正しい研鑚が積まれていないだけの問題だと思っています。
逆に言うと、正しいやり方を知って研鑚を積めば、効果的な対話が継続できるはずです。
なぜなら、私がかかわっている組織の多くでは、上司も部下も1on1の意義や重要性を認識して取り組み、コミュニケーションスキルの向上もしており、対話の時間が必要不可欠なものになっているためです。
私はこの5年程、研修で現場のマネジャーとたくさん接して感じることがありました。
習ったことを基に、対話型・支援型マネジメントを意識して愚直に取り組むと、どんな人でも一定ラインまでレベルアップするということです。
1回しかお会いしていない方はわかりませんが、フォローアップ研修を含めて、3回、4回とお会いする方の変化には驚かされます。
これは希望です。
とても良い意味で想像以上でした。
では何に驚いたかというと、日本の組織にいる方々の真面目さです。
習ったことを正確に理解して実践していくのです。
日本的組織は「型」に強いのです。
型に強いとは、その型を確実に機能させるための、誠実さ、責任感、貢献する心などの価値観を持っている人が組織に多いということです。
ですから本書では、その強みを生かして実践してもらうために必要となる対話の「型」を紹介していきます。
本書の全体像本書の全体構成を図で示しています。
第2章では上司と部下で「結局、何を(What)対話すればいいのか」を、「すり合わせ9ボックス」として紹介しています(図11)。
この9ボックスに基づいて対話することで、意図した対話を行うことができ、対話でのヌケモレ感がなくなります。
次に、いくら話すテーマが決まっていても、「どう(How)対話していくのか」、対話を深めて展開させていくためには、コミュニケーションスキルが必要になります(図12)。
第3章、第4章では、2つのスキルを「すり合わせる技術」としてお伝えします。
さらに、そのスキルを活用した実践編として、9つのボックスの1つひとつについて第5~7章で紹介していきます。
対話によって認識をすり合わせるというのは、表面的なことだけではありません。
各ボックスにおいて今までそんなに意識していなかった深い部分まで掘り下げてすり合わせることが重要になります。
これは全編を通して、触れていきます。
対話型マネジメントを実施しているマネジャーの気づき・感想ここでは対話することの意義や意味を感じて、対話を継続的に行っている方々の声を紹介します。
ぜひ対話を行っていくうえでのヒントにしてください。
上司から寄り添わないと、本当に思っていることは話してくれない「今まで自分はオープンなつもりでした。
わからないことがあったら、いつでも来てくださいというスタンスだったので。
しかし、それでは部下は来てくれない。
対話の機会をこちらからつくらないと、つまり『こっちに来て』と寄せるのではなく、こちらから『寄らなきゃいけない』。
そうしないと、本当に思っていることは話してくれないのだとわかりました」(40代男性医療メーカー)深い対話で部下の中の依存心を発見できた「1on1ミーティングをしてみて、部下の中に(私に)助けてもらうという気持ちがものすごくあるのだ、とわかりました。
安心してもらえるのはいいのですが、依存に近いものがあって、それは深く話をしてみないとわかりませんでした。
対話が薄かったんだと気がつきました」(50代男性金融)任せているつもりが、一方的に話していたことに気づいた「私は、部下に任せるタイプのマネジメント・スタイルで、部下の自主性を重んじることを信条にしていました。
もちろん、最初のゴール設定も部下の声を聞いてすり合わせているつもりでした。
しかしあるとき、他部署の人からその部下に関して『上にやれって言われたからやっていると言ってましたが、目線合ってますか?』と指摘を受けて愕然としました。
自主性を重んじているつもりが、後から振り返ってみて、実は私がしたいことを部下に言わせていたんだと気づきました。
その後、部下と1on1で話すと納得感がなかったことが判明しました」(40代男性IT)期待を伝える個別ミーティングで、普段の関係性も深まった「個別でのミーティングを増やすことで、飲みに行く回数も前より増えました。
誘いやすくなったのです。
また、対話では、期待を伝えることを意識しています。
そうすること
で、部下からも『これをやりたい』などの意見が出てくるようになりました。
以前はまったく出てこなかった将来についての話もするようになりました」(40代男性金融)人の背景を気にするようになり、部下への理解が深まった「人の背景を見て話すようになりました。
『この人はどういう風になりたいか?』『なぜこの会社に来ているのか?』『どんなことが今一番の問題意識なのか?』などです。
そうすると、今まで目先の業務の話がほとんどだった1on1でも、キャリアの話などを自然に行えるようになりました」(30代女性IT)曖昧な認識を「わからない」と言ってくれて流さなくなった「対話するごとに、さまざまな面ですり合ってきている実感があります。
まず、組織に対する問題意識がすり合っていると、部下に対して『どう思う?』という投げかけがしやすくなる。
話が早いし気持ちが良いです。
すり合っていないと、話が長くなりがちで、重い空気になることが多い。
一方、部下からは『それ、どういうことですか?』という質問が増え、適当に流さずに、わからないことをちゃんとわからないと言ってくれるようになりました」(40代男性広告代理店)上司の自分が部下に相談しやすくなった「どちらかがモヤモヤしているときに、根本がすり合っていると、お互いで言語化しやすくなります。
お互いに『わかる、わかる』という状態にたどり着くのが早くなりました。
上司の私が相談しやすくなり、部下との距離感が近くなったのを感じます」(50代男性サービス)
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