はじめにコーチ型マネジャーと二つの時間 最近は、企業のマネジャーのほとんどが、プレーイング・マネジャーとして、マネジャーとプレーヤー両方の役割を担っています。
マネジメントの仕事だけではなく、自分自身にもノルマが課せられています。
このため、マネジャーといえども、いったん自分が達成すべき数字を持てば、当然、数字を優先させます。
部下がどれだけ成長したかを測る指数というものがはっきりしているわけではないため、マネジャーの部下育成の技量はあまり評価されないという現実もあります。
こうして、部下育成は後手に回るようになります。
しかし、それでは、今は数字が上がっていても、部下が育たないことによって、やがて業績は下がってしまうでしょう。
現実に、ここにきて、高い離職率、品質の低下、納期の遅れ、仕事の進捗が見えないこと、チームワークの低下、社員の利己的な態度などが問われるようになりました。
マネジャーの不在がクローズアップされています。
実際にマネジャーがいない。
マネジャーはいるが、マネジメントはない。
部下にマネジャーとして認められていないのです。
部下の育成、業務管理、優れたチームワークは、マネジャーのマネジメント能力に負うところが大きい領域です。
しかし、マネジャーが実際にマネジメントする段になって、どう部下とコミュニケーションを交わすかという壁に行き当たり、そこで停滞してしまうケースが少なくありません。
にもかかわらず、部下とどのようにコミュニケーションを交わすかについて、マネジャーを教育している企業は多くはなく、そういうことは、できて当然というところへ追いやられています。
また、これまでは、上司という「権威」からものを言うことができましたから、とりたてて組織内でのコミュニケーションの必要性が問われなかったという事情もあります。
しかし、状況は変わりました。
「権威」を振りかざせば、部下は会社を辞めてしまうのです。
不況にもかかわらず、新入社員の三割は、三年以内に辞めてしまいます。
彼らとコミュニケーションを交わす能力、彼らを未来に向けて育てる能力が求められているのです。
そのことが、企業の存続に関わってきています。
〈三分間コーチ〉は、今すぐ可能なマネジメント手法として考えられました。
一回に三分ぐらい、コーチとして部下と話す、というマネジャーにも部下にも負荷のかからない関わり方、そして、お互いに効果の上がる方法として考案され、実際に試され、効果を上げている方法です。
マネジメントの手法については多々述べられていますが、どこで、どう使ったらいいのか判断に困るものが少なくありません。
これに対し、〈三分間コーチ〉は、次の〈二つの時間〉をとることを最優先させた、きわめてシンプルなマネジメント手法です。
ひとつは、部下について考える時間をとる。
もうひとつは、部下と的を絞った短い会話をするための時間をとる。
三分がむずかしいのであれば、一分でもいい。
とにかく部下と関わる時間をつくることを最優先させたマネジメント手法です。
いつ、どの場面で部下と関わるのかと、考える必要もありません。
一般に共通して、部下が上司とのコミュニケーションを求める場面というものがあります。
その場面について知っていれば、そのとき、その場で、部下とコミュニケーションを交わすことができます。
そして、そのとき、目の前で起こっていることをテーマに会話を交わすのです。
では、具体的には、どんな場面で、どんなふうに? それは、これから本書の中でお話しします。
本書を読んだあと、実際に、あなたの職場で、あなたが部下と関わるのによい場面が見えてくるようになるはずです。
その場面が見えてくれば、あなたと部下の双方に負担なく、しかし、驚くほど効果的に、部下を育成していくことができます。
もちろん、三分という短い時間の中で最大の成果をあげていくためには、いずれ、コーチングのスキルを学ぶ必要はあるでしょう。
しかし、まずは、部下と関わり、コミュニケーションを交わすこと。
そののちに効果的なスキルを学ぶことが現実的だと思います。
やがて、近い将来、つねに、必要なその瞬間、その場で、三分間の質の高い会話〈コーチング・カンバセーション〉を軽やかに交わす〈三分間コーチ〉、すなわち〈コーチ型マネジャー〉が、日本はもちろん、国際社会の随所で活躍するようになるでしょう。
伊藤 守
はじめに
第 1章この三分間が組織を変える!
1二つの時間をつくるなぜ期待したとおりに仕事は進まないのか?マネジャーが日々遭遇していること部下と話す時間をつくる今、その場で、その瞬間に!部下について考える時間をとる相手が知ってほしいと思っていることを知る二つの時間をつくる 2三分間コーチは、コミュニケーションのプラットホームをつくる on going(現在進行形)な会話創造的な会話コーチングのあとの内側の会話 3実行されることの量とスピードが変わるなぜ、決めたことが実行されないのか?組織全体の動きのスピードが上がる結果を生む、コミュニケーションの頻度と場面「目標面談」では遅すぎる!
第 1章 この三分間が組織を変える!
1 二つの時間をつくる
なぜ期待したとおりに仕事は進まないのか?「ヴィジョンや戦略が計画どおり実行されない」「部下が育たない」「仕事の進捗や状況がよく見えない」「納期が守られない」「品質が低い」 多くの企業が、多かれ少なかれ、こうした課題をかかえているものと思います。
そこで、システムの導入や仕組みづくり、風土改革、社員研修が、提案され試みられます。
どれも、アイデアレベルでは期待させるものです。
ところがいざ、それを実行に移してみると──結果が思ったように出るわけではありません。
たしかに、システムや仕組みは大切です。
けれども、それだけで会社組織が変わるわけではありません。
ともすると、いいアイデアや計画は、それだけで、目標を達成し、ビジョンを実現してしまう力を持っているかのような錯覚をもたらします。
しかし、それらを実行し、実現するのは、システムや計画そのものではなく、〈人〉なのです。
あくまでも、人が行うことなのです。
実際にそれを行う人を不在にしたアイデアや計画が実現するはずもありません。
実際の仕事は〈人〉が行っているものです。
そして、人は、計画したとおりに動くわけではないのです。
アイデアや計画の段階で、それを行う一人ひとりの社員の適性や志向性、感情や欲求がどう働くかについて論じられることはあまりありませんが、実際には、社員一人ひとりには、それぞれ得意不得意があります。
さらに、社員は生身の人間ですから、それぞれの持つ感情や欲求が仕事に大きく影響します。
全員に同じ行動を、ロボットのようにつねにむらなく求めることには、もともと無理があります。
これらのことは当然わかっているはずです。
ところが、計画の段階では、それは排除されてしまうのです。
けれども、もし、ほんとうに事業計画どおりに業務を遂行しようとするのなら、業務に関する知識以上に、人間に対する知識が必要です。
人間はどうしたら、アイデアや計画を実行に移せるのか?社員が、自発的に、喜んで、情熱を傾けて、仕事に取り組んでいくようになるために、何ができるのか? これらについての知恵が求められているのだと思います。
それも、人間一般、社員一般、部下一般ではなく、目の前の自分の一人ひとりの部下についての知識と知恵が求められているのだと思います。
【3秒間ナレッジ】1実際の仕事は〈人〉が行っているもの。
そして、人は計画したとおりに動くわけではない。
マネジャーが日々遭遇していること マネジャーは、会社のアイデアを実行に移す要です。
マネジャーによるマネジメントがなければ、会社組織は動きません。
人も育ちません。
会社にとってマネジャーによる社員のマネジメントは、会社のすべてを機能させる「てこの支点」になっています。
しかし、会社によっては、「はじめに」でも述べたように、マネジャーが不在であったり、マネジャーはいても、マネジメントがなかったり、部下からマネジャーとして認められていないというケースも見られます。
そもそも、マネジャーは何をしているのか? マネジャーの責任範囲はどこまでなのか? これらについての認識が、部下との間で、共有されていない可能性もあります。
では、マネジャーとは、いったい何をする人なのでしょうか? 次にあげるのは、マネジメントに必要な事項、つまり、一般にマネジャーに求められるタスクです。
1 スケジュール管理とタイム・マネジメント 対象となる仕事の完成に必要な要素を細かく分析し、成功するように手を打ち、個々の作業をメンバーに割り当て、その進捗を確認する。
このため、部下がその仕事に力を集中できるよう環境を整え、仕事が予定どおりに進んでいるかについて定期的にレビューする。
2 実施戦略の立案 仕事の優先順位を決める。
部下一人ひとりの能力とスキルを明らかにし、仕事全体を実施可能な状態にする。
3 リスク・マネジメント 仕事上、対顧客上、運営上、生じるさまざまなリスクに備え、できるだけ早い段階で手を打ち、対応する。
4 判断 仕事の進行中に必要な決定を行う。
自分で決められないケースは決定権者に依頼する。
5 部下育成 部門またはチームとしての長期的な仕事を考慮し、必要なスキルを洗い出して、部下に身につけさせる。
と同時に、それがどの程度身についているか、また、実績はどうかという、部下に対する「評価」も行う。
以上が、マネジメントのおもな要素ですが、実際には、組織や相対的地位に応じて、ほかにもいろいろ、マネジャーとしての役割があることでしょう。
この全部を一つひとつ実行していくためには、どうしても、協力的な部下が必要です。
しかし、現実にマネジャーが日々、遭遇しているのは、次のような課題です。
1 指示待ち・受け身の部下の自発性をどう高めるか? 2 報告・連絡・相談をしない部下とのコミュニケーションをよくするには? 3 納期を守らない、遅刻をする部下にどうやって責任感を持たせるか? 4 営業が苦手で萎縮している部下を行動させるには? 5 現場や他部門と話をしない部下のコミュニケーションを促進するには? 6 目標やビジョンを持てない部下への関わり方は? 7 仕事に自信がない部下に自信を持たせる関わり方は? 8 顧客志向のない部下の顧客意識を高めるには? 9 会議で発言しない部下が発言できるようになる関わり方は? 10 自分の利益にしか関心がない部下に、会社に関心を持たせるには? 11 自分にしか興味がなく、後輩を育成しない部下の意識を変えるには? 12 自己主張が強く、人の話を聞かない部下の協調性を高めるには? これらの課題への対応に、マネジャーは日々頭を悩ますことになるのです。
そのためか、最近は、「マネジメントから離れて、専門職につきたい」という声もよく耳にするようになりました。
けれども、これらの課題はこれまでにもありました。
従来からずっと続いてきた課題です。
にもかかわらず、これらのことが、今なぜ、特にマネジャーたちを悩ませているのでしょうか? ひとつには、従来のマネジメントの方法、つまり、上司が部下に対し、権威や力で一方的に強制する方法が通用しなくなってきていることがあげられます。
権威に依存しないで部下を動かし育成していく、より高度な能力が、一人ひとりのマネジャーに求められるようになってきているのです。
その能力の重要なひとつが、コミュニケーションの能力です。
コミュニケーションによって部下を育成していく能力です。
そして、このコミュニケーション能力について語るとき、必ず出てくるのが、コーチングの発想であり、スキルです。
最近では、ほとんどのマネジャーが、多かれ少なかれ、コーチングに関する知識を持っているようです。
しかし、では、それが十分に部下の育成に生かされているかというと、そうとも限らない、それが現実でしょう。
どうしたら、ただでさえ忙しい、自分の日々の業務を止めずに、部下と関わり、部下を有能にしていくというミッションを果たすことができるのか? その過程で、マネジャー自身もまた有能になっていくには? 本書でご紹介する〈三分間コーチ〉は、そうした課題に応える、もっとも現実的な方法として考えられました。
すでに一部の企業で実行され根付きつつある、最新の HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)手法です。
集中的、継続的、長期的に実践されることによって、部下はもちろん、マネジャー自身も有能になっていきます。
新しい習慣を身につける場合、何でもそうであるように、重要なのは、理解 →実践 →理解 →実践 →理解 →実践 → ……のサイクルです。
試してみながら読み進んでいくと、効果的だと思います。
部下と話す時間をつくる さて、部下とのコミュニケーションというと、まず、どのように話したらいいのか、何を話したらいいのか、あるいは、どのように聞いたらいいのかということがとりあげられがちです。
命令するのではなくて部下が自発的に仕事をするようになるためには、一方的に話すのではなく部下の話を聞くこと、それもただ聞くのではなくて傾聴が大事だ、それには、こういう方法がある……といった具合で、書店に行けばスキル集が花盛りです。
たしかに、スキルも大切です。
けれども、それがほんとうに根付くには、それ以前に重要なことがあります。
それは、まず、部下と会話する時間を持つことです。
当たり前のようですが、コミュニケーションの内容をとやかく言う以前に、そもそもコミュニケーションがない、もしくは、圧倒的に少ない、時間をとりたくても時間がとれない、話すきっかけがつかめない、というのが、多くの上司の現状ではないでしょうか。
このため、〈三分間コーチ〉は、まず、部下のために時間をとる、そのための知恵に重点を置きます。
三分の時間を、その人のためにとる。
ついでではなく、その人と話すという目的を持ってつくることです。
何をどんなふうに話すかなんてことはあとでかまいません。
条件がそろえば、会話は必然的に起こりますから。
それよりも、まず、三分の時間をとることです。
なぜなら、三分の時間をその人のためにつくること自体が、「きみはチームの大事な一員だ。
きみの成長を望んでいる。
きみは認められている」というメッセージを送ることになるからです。
情報の収集と伝達だけがコミュニケーションの目的なのではありません。
それ以前に、相手を認め理解しようとすること、つまり、コミュニケーションは、それを交わすことそのものが目的なのです。
今、その場で、その瞬間に! 部下との時間をとるのに、わざわざアポをとったり場所をとったりする必要はありません。
廊下で立ったままでも、相手のデスクの横でも、ときには電話でもいいでしょう。
〈三分間コーチ〉にとって大切なもうひとつのポイントは、仕事の動きを止めないこと、業務の流れに沿って行うことです。
営業から帰ってきたとき、「今日はどうだった?」 新しい役割にまだなじんでいないとき、「仕事、慣れた?」 企画書を書いているとき、「どこまでできた?」 業務の流れに沿って、今その場で、目の前に起こっていることについて話すこと、お互いに、見てわかる、聞いてわかる、触れてわかることをテーマにすること、これはコーチングの基本でもあります。
この基本を満たすものであるとき、三分間の会話〈コーチング・カンバセーション〉は、新しい視点を持つのに十分な時間となります。
【3秒間ナレッジ】 2何を話すかよりも、三分間をその人のためにとる、そのこと自体が、あなたがその人を大事にしていることを伝える。
ある大手食品会社のマネジャーは、朝、何も言わずにすーっと入ってきて席につく部下がいたら、これは何かあるに違いないと、その場で声をかけるそうです。
そのタイミングを逸してしまうと、三分ですむ話が一時間二時間になってしまうからと。
そして、部下のほうから「マネジャー」と声をかけてきたときには、しまったと思うそうです。
なぜ彼の様子にもっと早く気づいてやれなかったのかと。
「部下の変化を観察していて、そのサインを見逃さない」とは、よく耳にすることばですが、それは口で言うほど簡単ではありません。
四六時中、部下を観察しているわけにもいかないのですから。
結局、あきらめてしまうことになります。
で、現実的な方法は、毎日、部下と会話することです。
その過程で、部下から直接聞くこともできるでしょうし、こちらから聞くこともできます。
部下について考える時間をとる 部下がコーチを求めているとき(多くは、当の本人は気づいていませんが)をキャッチするためには、部下の日々の業務内容やその進捗状況を知っていることが前提となります。
このとき、お互いの間に信頼関係が築かれていれば、もっといい。
そのためには、コーチングの時間をとると同時に、もうひとつの時間──部下について考える時間をとることが必要です。
何かあったときではなく、ふだんから、部下についてだけ考える時間が必要なのです。
──今、必要としているスキルは?──強みは?──どんな能力を持っているか?──今の仕事を選んだ動機は?──過去の成功体験は?──今、どういう状態にいるのか? どこを向いているか?──どんなときに、いちばん力を発揮するのか? 部下について考えるということは、部下のデータベースをつくることとイコールです。
部下について知っておく必要のあることのリストをつくり、それを満たします。
ある水産会社の常務は、毎日の部下とのやりとりを日記につけています。
そして毎朝、一年前の同じ日付の日記を読んでから出勤し、その日記をもとに、たとえば、「今日、たしか誕生日だったよね」とか、「以前のきみは、こういうことで悩んでいたけれど、ずいぶん仕事の質が上がっているね」と、さりげなく声をかけるといいます。
彼は、全国を飛び回り、地方にいる部下ともできるだけ直接会って話すよう努めているそうです。
部下が理解して合意しなければ、上層部で方針を決めても組織は動かない、と知っているからです。
また、ある大手の販社のマネジャーは部下との面談の前に、部下について知りたいことを次のようなリストにし、それらをもとに具体的な質問を考えています。
1 基本的な情報(誕生日、趣味、家族構成、これまでの業績) 2 今の状態(体調、人間関係、仕事との相性) 3 仕事のスキル、タスク 4 能力(リーダーシップ、コミュニケーション) 5 適性、キャリア このとき、漠然と考えていても、何か思いつくわけではありません。
そこで、部下について知りたいなと思うことをことばにし、それを自分自身に問いかけてみるのだそうです。
そして、部下の答えを想像してみるのです。
たとえば、──この会社に入って何年になるのか?──これまで、どんな仕事を手がけてきたのか?──いちばん自分に合っている仕事はどれだと思っているだろうか?──どの曜日がいちばん調子がいいんだろう?──コミュニケーションは得意だろうか?──ストレスはどうやってコントロールしているだろうか? もちろん、ほんとうのところは、本人に聞いてみなければわかりません。
だから、聞くことになるというわけです。
「きみは一週間のうち、どの曜日がいちばん調子がいい?」「そうですね、火曜日が結構いいんですよ」「そうか、それじゃ火曜日にピークを持ってくるようにして、あとは流せ」「はあ」「そんなに毎日がんばるなんてできないんだ。
調子のいい日に、新規をとったり、むずかしい案件を片付けるようにするんだ」 わたしも、何年か前、部下について知るために、質問リストをつくってみました。
部下一人ひとりの強みや弱みについて、自分がいったいどれだけ知っているのか、チェックしてみたのです。
思っていた以上に知らないことが多くて驚きました。
そこで、本人たちに聞いていきました。
聞いている間にいろいろと話は発展していき、仕事のことについて、今考えていることについて、会議では出てこないアイデアを聞くことができました。
また、自分のマネジメントがどれだけ機能しているかも知ることができました。
リストどおりに部下に「問いかけ」ることが、質問のリストをつくる目的なのではありません。
質問のリストをつくる行為そのものが部下について考えることになります。
わからないから聞いてみたい、という動機付けになります。
そこに、質問のリストをつくることの価値があります。
さらに、同じことを自分自身にも問いかけることによって、自分自身や自分と仕事の関係についても新しい視点を得ることになります。
さらに、そうやって同じ問いを「共有」することによって、部下との対等な立場での会話が可能になるのですが、これについては、「問いの共有」として、あとの章で詳しくお話しすることにします。
相手が知ってほしいと思っていることを知る わたしたちは、人を評価するとき、知らず知らずのうちに、「好きか、嫌いか」で判断してしまいがちです。
そうでなければ、「損か、得か」「敵か、味方か」。
そして、一度その二極化から結論を出してしまうと、なかなかそれ以上は知ろうとしなくなってしまいます。
「だって、嫌いなんだから」。
これは、十代の若者のせりふではありません。
わたしがつい最近、五十代の会社経営者から聞いたことばです。
上司の、部下についての知識は偏りがちです。
部下の性格分析や仕事の能力、過去のいくつかの業績については知っていても、今、部下は、どういう状態にいるのか、どんな助けを必要としているのか、何を学ぶ必要があるのかといったことについては、よくわかっていません。
そして結局、自分のわかっている範囲、それも過去の情報で、部下と接してしまいがちです。
しかし、何事も、大切なのは、つねに〈今〉です。
現在の部下が、何を思っているのか? どこへ向かっているのか? どこでつまずいているのか?──それを知らなければ、彼らと〈関係〉を築くこともできなければ、彼らの能力を引き出すこともできません。
【3秒間ナレッジ】 3部下について自分が知らないということを知る。
知らないことに気づけば知りたくなる。
こうして、部下のことを考えることが、部下を大切にするということだ。
わかったつもりのままでいたり、知ることを面倒がったりせずに、ちょっとの隙間時間に、部下について考えることです。
電車の中で、コーヒーを飲みながら、散歩しながら、机の前で──部下と実際に話す時間をとるのと同じように、部下について考える時間をとることです。
具体的には、部下に関して、二、三のことを自分に問いかけてみます。
彼(彼女)は、──どういうときにストレスを感じているか?──どんな価値観を持っているか?──強みは何か?──仕事から、お金以外では何を手にしているか? こうした質問をつくり、自分で答えてみます。
このプロセスが部下について考えることにつながります。
そして、質問に答えられない、知らないということに気づいてはじめて部下に対する興味、関心がわいてきます。
知らないことに気づくことが、次の行動へと人を動機付けます。
二つの時間をつくる ほんとうは部下の全員とゆっくり話をしたい。
でも、現実には時間はあまりありません。
それでも、できるだけ多くの人と話すためには、躊躇しないことです。
職場で近くを通ったとき、すれ違ったとき、目の前を歩いていたとき。
そのチャンスを逃したら、次はいつあるかわかりません。
その場で躊躇せずに、声をかけます。
そのためにも、いつでも自分から声をかけられるように、話しかけられるように、この人とはこう話したいということを、部下全員分、準備しておくのです。
部下のデータベースをつくることで、日報を読むことで、毎日部下一人ひとりのことを考えることで──その積み重ねがコミュニケーションを交わす起因になります。
三分間の〈コーチング・カンバセーション〉の時間をつくる。
同じように、部下について考える時間をつくる。
この二つの時間はお互いに連動しています。
そして、この二つの時間をつくることが、あなたのチームを、そして、組織を変えます。
2 三分間コーチは、コミュニケーションのプラットホームをつくる
on going(現在進行形)な会話〈三分間コーチ〉が行うコーチングのイメージは、いわば駅のプラットホームです。
日々の業務のなかで、部下との〈間〉に、三分間、いわば、会話するためだけのプラットホームをつくるようなものです。
わざわざ談話室や会議室に行く必要はなくて、ちょうど、電車を待つ間、駅のプラットホームに二人で立って、電車が来るまで会話するようなイメージです。
そのプラットホームでは、ただ雑談をするのではなくて、目標について、スキルアップについて、チームワークについて、タスクについて、また、互いを知るための情報交換、フィードバックなど、的を絞った会話〈コーチング・カンバセーション〉をします。
三分間は、たしかに話し込むには十分な時間ではないかもしれません。
しかし、一回に多くのことを話しても、すべて理解して、それを行動に移せるわけではありません。
それよりも、三分間会話し、その過程で、現状を認識し、次にどこへ向かうかについて確認する。
次の三分ではそのレビュー(振り返り)をし、また次にどこを目指すかについて会話する。
──次の電車でどこへ行くのか?──何をしに行くのか?──この先、どこで乗り継いだらいいのか? このように、現実の変化をとらえながら、〈 on going(現在進行形)〉で会話を続けます。
変化する現実に対応するために、〈 on going〉であることは、上司と部下との間の会話〈コーチング・カンバセーション〉の条件です。
次の電車が来るまで長くて三分。
一回に三分は短いように思えますが、それを繰り返し、継続すれば、まとめた一時間、二時間に勝る効果を得ることができます。
十日、百日と繰り返せば、会社全体のコミュニケーションに影響を与えないではいません。
創造的な会話 たとえば朝、今日一日のビジョンやスケジュール、 TO DOについて、三分間のコーチングを行うだけで、その日の業務の効率はずいぶん違います。
実際に、朝、三分間のコーチングを行っている企業からは、社員の次のような感想が寄せられています。
・軽くブリーフィングしてもらうことで、やろうとしている仕事の内容が明確になる。
・その日の山場になる仕事に対するハードルが下がり、エネルギーが上がる。
・コーチしてもらうことで、はじめての業務にも自信を持って臨むことができる。
・メリハリがつく。
・先延ばしにしていたことも三分の間で決断できる。
・朝、会社に来る前に、その日のことを考えてから出社するようになった。
・仕事のスタートが早まった。
・頭の整理整頓ができている状態になった。
このように、業務の効率化、社内のコミュニケーションの活性化などの効果は、三分間のコーチングを始めたその日から現れます。
けれども、その効果はこれだけではありません。
それは、部下一人ひとりの成長を促し、創造的、生産的にしていくということです。
というのも、たしかに、三分間の会話はそこで終わりますが、その後も、自分の内側での会話は続くからです。
三分間のコーチング・カンバセーション、その後に続く自分との会話が人を生産的、つまり創造的にしていきます。
実は、〈三分間コーチ〉の特徴は、会話そのものというより、三分間の会話と次の三分間の会話の〈間〉にあります。
コーチングのあとの内側の会話 この〈自分の内側の会話〉について、もう少し詳しく見てみましょう。
だれかに言われたことや尋ねられたことが、その場では、すぐに反応できなかったけれど、その後も頭の中に残って、その答えを探し続けたり、いろいろと発想を展開していくことになるような経験はだれにでもあると思います。
この、自分の内側で続く会話のことを〈セルフトーク〉といいます。
いわば、わたしたちの内側の会話で、多くは、自問自答の形をとります。
鋭い指摘や奥の深い質問のあとではよく起こります。
効果的なコーチングのあとでも、当然起こるでしょう。
上司から発せられた問いに対する答えを探すプロセス、会話の内容を咀嚼するプロセスが、〈セルフトーク〉として、部下の内側で続くわけです。
つまり、会話というのは、その場で相手に影響を与えるだけではないのです。
というよりも、実際に人の行動に影響を与えるのは、会話のあとに個々の内側で続く〈セルフトーク〉です。
互いの中に、〈セルフトーク〉が始まり、それが、人の考えや行動に影響を与えます。
【3秒間ナレッジ】 4会話そのものではなく、会話のあとのセルフトークが、人の行動を決定する。
言い換えれば、わたしたちは、会話を交わすことによって、お互いへの理解を深めると同時に、会話を通じて、これまで自分が持っていた考え方や物事のとらえ方を改めて見直す、そして、そこに新しい解釈を加え、試みるという作業を行っています。
ちょうど古いカーナビのソフトを入れ替えるような作業を自分の内側で行っているわけです。
そうやって、現実への対応力を高めていきます。
〈三分間コーチ〉は、部下の育成と目標達成を目的としますから、会話を持つときは、この〈セルフトーク〉の働きを理解し、それを活用するよう意識します。
つまり、 会話の中での気づき →セルフトークでの熟考 →選択 →行動 この流れが起こり、目標へ向かう行動が生まれることが、個々のコーチングの目標となります。
よく、気づけば行動は変わると思われているようですが、気づいただけでは行動は変わりません。
〈気づき〉には、いわば暗闇をサーチライトで照らすような働きがあり、それは貴重なものですが、サーチライトで暗闇を照らしただけで行動が起こるわけではないのです。
ライトに映し出されたものを見て、熟考し、選択する時間が必要です。
〈熟考〉し、次に〈選択〉してはじめて行動に移すことができます。
〈三分間コーチ〉が適切にコーチすれば、部下の内側では、三分間の会話から受けた刺激や〈問い〉に始まった会話〈セルフトーク〉が、その後も続き、それが、現実を見る視点を変えます。
そして、その視点の変化に伴う考え方や解釈の幅の広がりが、やがて、行動に変化をもたらすようになります。
言い換えれば、新しい思考、行動が生まれるわけです。
つまり、創造です。
ほんとうの会話とは、創造以外の何ものでもありません。
3 実行されることの 量とスピードが変わる
なぜ、決めたことが実行されないのか? あるとき、わたしがコーチさせていただいている、ひとりの経営者の方が言いました。
「五年前に、コンサルタントを入れて、事業計画をつくったんだが、二年経ってみると、まるで予定と違うんだ」「そうですか。
それで、どうしましたか?」「違うコンサルタントを入れて、三ヵ年計画をつくった。
今度の計画はすごくいい。
それに、役員も全員関わってつくった」 一年後にお会いしたときに、お尋ねしてみると──「今度は、社員に目標を出させ、それをまとめて計画するという方法をとる」「前回のは?」「あれは、計画に無理があったのと、途中でいろいろ予定外のことが起こりすぎた」 すばらしいアイデアを思いつき、綿密なプランをつくったからといって、それがそのまま実行されるわけではありません。
アイデアやプランと実行することの間には、大きな溝があります。
そして、そのことは、この章の最初にも述べたように、個人についても組織においても、大きな課題のひとつです。
では、どうするか? その答えがコミュニケーションです。
コミュニケーションこそが、アイデアやプランと実行との間の溝に橋を架けます。
アイデアやプランを実行に移すためには、相応の量と質のコミュニケーションが必要なのです。
運輸業のマネジャーは、自分の上司によく言われたことを思い出すそうです。
「もし、お前に言われたとおり部下が動くのなら、お前はいらない」 上司には、そのアイデアやプランを翻訳して部下に伝え、部下の行動に結びつけ、行動を修正し、目標に向かわせ続ける能力が求められるのです。
・議論が白熱し、盛り上がったのだから、現場も変わったはずだと思っていないか? ・すばらしい計画を立てれば、実行されるのが当たり前だと思っていないか? ・部下全員に「イエス」と言わせれば、次の瞬間から行動が起こると思っていないか? ・よく発言しスマートに話す社員が、ほんとうに会社に貢献しているのか? ・業績の上がらない部下や部署の責任を問えば、彼らは変わるのか? ・会議室で問題を解決すれば、それでほんとうに問題が解決するのか? ・目からうろこが落ちたら、行動はほんとうに変わるのか? ・わかったら、物事は実現するのか? 【3秒間ナレッジ】 5アイデアやプランと実行の間には溝がある。
【3秒間ナレッジ】6上司の言うとおりに部下が動くなら、上司はいらない。
アイデア、プランと実行の間の溝は、コミュニケーションによって埋められます。
仕事の開始時、途中、終了時、あらゆる場面で、コミュニケーションが必要です。
同時に、アイデアやプランを練る人たちと、それを実行する人たちとの間にどれだけ信頼関係が築かれているかも問われます。
〈三分間コーチ〉が、そのコミュニケーションと信頼関係を醸成します。
そして、アイデアやプランと実行との間の溝に橋を架けるのです。
組織全体の動きのスピードが上がる さて、個人と組織の双方にとってのもうひとつの大きな課題は、〈スピード〉でしょう。
物事が実行される速さは、いまや個人にとっても組織にとっても死活問題と言えます。
ところが、従来のマネジメント手法では、どうしてもこのスピードが遅くなりがちです。
というのも、通常、部下育成に際して、上司は、「教える」「指導する」などの手法を用いて部下を教育します。
いずれも重要な手法ですが、これらだけでは、つねに上司の指示を仰がないと行動できない部下を育ててしまうことになります。
すると、日々変化する現実への対応が遅れ、ひいては、会社全体の動きのスピードが減速してしまうことになります。
すると、どういうことが起こるかというと、まず、他社やほかの人が先にそのことを実現してしまったり、ようやく実行されたときにはすでに環境が変化していて、アイデア自体が古いものになってしまっていたりします。
そればかりではありません。
できない理由や言い訳を考える時間を与えてしまうことになったり、ときには、反対勢力が生まれてきてしまったりします。
時間がかかる分、予期しなかった事態に遭遇する確率も高まるでしょうし、社員の熱意が低下する恐れもあります。
これらの問題を解決するには、社員の一人ひとりが、目の前の課題を的確に判断し、対応していく自律性を持っていくことでしょう。
そのような部下を育成する必要があります。
そして、今、部下育成の手法として、各企業で、コーチングが盛んに取り入れられているのは、この部下の自律性を養ううえで、コーチングが有効だからです。
コーチングでは、基本的に「アドバイス」はしない、問題解決もしない、ただ、問題とのつき合い方をコーチします。
これにより、部下のそれぞれが、現場で起こることに、毎度上司の指示を仰がなくても自分で対処できるようになるのです。
すると、 アイデア →企画 →決定 →行動までのスピード 失敗からやり直すまでのスピード 指示 →実行までのスピード ビジョン →戦略 →戦術決定 →実行 →目標達成までのスピード すべてのスピードが速まります。
その結果、組織全体の目標達成、成長のスピードが速まります。
リアルタイムで情報が共有されるため、つねに新しい情報を取り込みながら、アイデアをアップデートできるからです。
また、かかる時間や計画に誤りがあった場合も、すぐに修正したり、新しい戦略に切り替えることができます。
さらに、結果が早く出ることによって、社員のモチベーションも高い状態で維持されます。
物事が実現するスピードが速いということは、抵抗勢力が生まれてしまったり、サボタージュが生まれてしまう前、みんなのモチベーションが高いうちに実現してしまうということでもあります。
【3秒間ナレッジ】7組織の成長のスピードは、一人ひとりの社員の自律性の度合いに比例する。
組織の成長のスピードを上げるのは上司の叱咤激励ではありません。
スピードは、社員一人ひとりの自律性のレベルに比例します。
また社内のコミュニケーションの醸成の度合いに比例します。
ともに、上から指示してできるようなものではなく、日々、積み重ね、つくりあげられていくものだと思います。
結果を生む、コミュニケーションの頻度と場面 さて、一般に、わたしたちの業務を妨げる、もしくは、そのスピードを遅らせてしまう要因は、次の五つです。
1 優先順位がわからない、間違っている。
2 スキル不足(実行のためのスキルが足りない)。
3 優柔不断(小さな取捨選択を迷って、なかなか決められない)。
4 不安(失敗や自分に対する評価への恐れから、途中経過の開示が遅れる)。
5 モチベーションの低下(たいていは 1〜 4の結果として起こる)。
これらのことはみな早めに、上司に相談する、質問する、要望する、つまり、アウトプットすれば解決する問題です。
ほとんどは簡単なコミュニケーションで解決することです。
ところが、それをしないでひとりでかかえ込んでいたり、いつまでも迷っていたりすると、その間、業務は事実上ストップし、多くの場合、ただ、疲労感・被害者意識がたまっていきます。
当然、モチベーションは低下し、その結果、さらにスピードが落ちます。
で、遅れや問題が外からもわかる状態になったところで、上司が「おいおい」と声をかけ、時間をかけて軌道修正するということになるわけです。
さらにやっかいなことに、これらは、一度解決すればそれですむというものではなくて、たいていの場合、何度も、一定の頻度で起こってきます。
【3秒間ナレッジ】 8組織の成長のスピードの遅れの最大の原因は、一人ひとりのコミュニケーションの遅れにある。
このためにも、業務の流れに沿って、必要な場面をとらえてコーチします。
仕事のはじめ、途中、営業から戻ってきたとき、企画書を書いているとき、ちょっとアウトプットが遅れているとき、小さな進展があったとき……あらゆる場面で、コミュニケーションを躊躇しないことです。
それにより、部下にとっては(そして、上司自身も)、 ・着手の前の躊躇の時間がなくなる。
・無駄に迷っている時間を減らすことができる。
・問題点が早くわかるので、早く手が打てる。
・方向性がずれているとき、すぐに軌道修正できる。
・アイデアをアウトプットすることによって、次のアイデアが生まれやすくなる。
・ポジティブなフィードバックによって自信を得、生産性が増す。
といった状態になり、組織全体の行動と目標達成(場合によっては、目標や計画そのものの見直しや調整)のスピードは速まります。
「目標面談」では遅すぎる! ところで、一般に、上司が部下の状態を知ったり、目標を確認したりするのに用いられているのが、いわゆる「目標面談」です。
が、年に一度や二度のそれでは足りない、追いつかないのは、すでに、おわかりだと思います。
事実、わたしたちが企業に勤めるビジネスマンを対象に行った調査(調査対象六七九人 うち有効回答数五六八人 二〇〇七年十月実施)によると、面談を受ける側の七九%が面談が役立っていると答え、さらに、もっと頻繁に行ってほしい、上司に自分についてもっと知っていてほしい、単に仕事上の能力だけではなく、まだ発揮されていない能力のあることも知っていてほしいと望む声もたくさんありました。
以下は目標面談を受けることは役に立つと答えた人たちが、具体的に何に役立っているかについて述べたものです。
・ふだん言えないことを言ったり、確認できたりする貴重な場だ。
・目標を明確にでき、定期的に仕事の進捗の確認、現状分析ができる。
・フィードバックを受けることで、軌道修正ができる。
・自分の目標と上司の考えている内容のすりあわせができ、以後の行動に生かせる。
・現状と今後の取り組みが明確になって、行動しやすくなる。
・問題を整理したり、優先順位を決めたり、問題点を解決したりするヒントになる。
・自分への評価を率直に聞ける。
・自分の業務に対する思いや目標を聞いてもらえる。
・お互いの信頼関係が深まる。
・会社の方針と自分の目標の方向性が一致しているかどうかを確認できる。
・日ごろの思いを話すことで、共通の目標に向かってがんばろうという気持ちになる。
・目標を設定することによって、スキルを向上させることができる。
・他人に話すことで自分の考えがまとまり、仕事に対する責任感が増す。
一方で、面談が役に立っていないという声も、残念ながらたくさんありました。
・上司が自分の思いを一方的に言うだけである。
・上司にわたしの担当している業務知識がないため、適切なアドバイスがもらえない。
・業務内容の変化が激しく、目標が現状に追いついていない。
・面談で具体的な目標が形になることは少なく、雑談や漠然とした内容で終わる。
・長期目標の重要性よりも短期目標の緊急性が肥大化し、近視眼的になりやすい。
・面談者が人事権を持っているため、本音での話を切り出しにくい。
・一時的には効果があるが、一年に一回の実施のため、結局は自助努力となる。
・仕事の進捗や結果の評価に重点が置かれ、フォローや先につながる提案がない。
・目標をかかげなくてもやらなくてはいけないことは決まっている。
・そこでの意見が会社全体に反映されるわけではない。
・面談の結果が評価にどう結びついているかわからない。
面談は、上手に活用されれば部下について知る効果的な場となります。
だから、それを行っていない、もしくは、形式的にしか行っていないのは論外として、たとえ、効果的に行っていたとしても、それだけで、上司が部下について知るのは不可能なようです。
それには、頻度が少なすぎます。
時間的にも、関係を築いたり修復したりするのに十分とはいえないでしょう。
だいたい、面談の場面で、部下についてはじめて気がつくことがあるようでは遅すぎます。
四半期、半年、一年と時間をあけてしまっては、〈今〉の〈生〉の部下を知ることはできません。
そして、つねに、〈今〉の〈生〉の部下の状態と業務の状態を知らなければ、組織に求められている成長のスピードはとうてい得られません。
実際、「一回の面談よりも、ふだんのコミュニケーションが大切だ」という声も多数ありました。
つまり、最初にお話しした〈 on going(現在進行形)〉であることが大切なのです。
組織全体が、 on goingでともに進んでいくためには、つねに、 on goingのコミュニケーションが必要です。
年に一度か二度、一時間話すより、その六十分を二十回に分けて、業務の流れに沿って、 on goingの会話をするほうがずっと効果があります。
今、目の前で起こっていることについて、お互いに見てわかる、聞いてわかる、触れてわかることについて、その場で、あるいは、起こる直前に、話します。
では、具体的には、どんな〈場面〉で三分間のコーチングを行うと、もっとも効果的なのでしょうか? これについて、わたしたちの会社で行った調査結果(調査対象八五三人 うち有効回答者数六〇五人 二〇〇七年十一月実施)をもとに、これから、章をかえて詳しくお話ししましょう。
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