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第1章 品質管理の基本(品質;品質管理 ほか)

本書は、学生や若いビジネスマン、新任の管理職の皆さんを対象に、「品質管理」の基本用語と考え方を、図表を使って、わかりやすく解説したものです。 品質は、形のある商品だけでなく、無形の商品、たとえばサービスにも存在します。したがって、品質管理は、製造業に限らず、すべての業種に必要な活動です。また、品質管理の活動は、会社の製造部門、工場部門だけが実施しても、顧客に対して品質を保証することはできません。会社のすべての部門で、実施する必要があります。 このような背景から、品質管理の知識を必要とする人は、広範囲にわたります。したがって、本書では、専門家向けの解説は極力避けました。 本書は、見やすさと使いやすさを考慮して、 1用語ごとに左右見開きの形をとっています。左頁に解説の文章を、右頁に図や表を載せています。 本書は、全体が5つの章から構成されています。 第 Ⅰ章では、品質管理の全体像をつかめるように、基本となる知識を解説しています。 第 Ⅱ章は、品質管理の核心である品質保証について、その考え方と活動の内容、品質保証のための技法を取り上げています。また、品質保証の国際規格である、 ISO 9000ファミリーについても解説しています。 第 Ⅲ章は、品質管理で重要視している改善活動について、問題解決という視点から解説しています。 第 Ⅳ章では、品質管理を実践するために必要な、基本的な技法を解説しています。 第 Ⅴ章は、統計的方法について、基本的な技法と知識に絞り、解説しています。統計的方法の活用は、品質管理活動の特色の1つです。 なお、本書の中で使用している、グラフ、チャート、帳票類などの例は、実際に企業で活用されているものに、筆者が修正を加えたものです。 本書が、品質管理を勉強する読者のみなさんにとって、有益な書となれば幸いです。──改訂第 5版にあたり── 1995年に初版を刊行以来、 2002年に第 2版、 2007年に第 3版、 2010年に第 4版と改訂を重ね、このたび、初版以来 20年を超えて、第 5版を刊行することとなりました。今回の第 5版では、項目の並び替え、読者からご指摘いただいた図の修正、 ISO 9000およびシックスシグマに関する記述の修正を行いました。 また、第 4版と同様に、品質管理検定( Q C検定)試験の参考書としても利用できるようにしました。本書は品質管理の入門書という位置づけにあるので、検定試験のレベルとしては 3級に相当しています。 検定試験については、本文とは別に設けてある Coffee Breakで検定試験の 4級レベルで要求される用語の一部を解説すると同時に、検定試験そのものの情報も取り入れています。 2016年7月内田 治 ビジュアル・品質管理の基本目次第 Ⅰ章 品質管理の基本 1 品質 2 品質管理 3 総合的品質管理 4 品質管理の思想 5 PDCAのサイクル 6 事実に基づく判断 7 層別 8 小集団活動と QCサークル 9 方針管理 10 日常管理 11 機能別管理 12 管理項目 13 QC診断 ● Coffee Break 5 S・ほうれんそう第 Ⅱ章 品質保証の考え方 14 品質の保証 15 品質の計画 16 工程の管理 17 品質の検査 18 品質情報システム 19 品質保証システム 20 品質展開 21 信頼性の保証 22 製造物責任 23 顧客満足度 24 ISO 9000ファミリー 25 ISO 9001 26 品質工学 27 シックスシグマ活動 ● Coffee Break 5 W 1 H・ 5ゲン主義第 Ⅲ章 改善の進め方 28 改善活動 29 問題の種類 30 問題解決のステップ 31 QC的問題解決法 32 QCストーリー 33 テーマの選定 34 現状の把握 35 目標の設定 36 要因の解析 37 対策の立案と実施 38 効果の確認 39 標準化 40 課題達成型 QCストーリー ● Coffee Break QCDPSMEの管理第 Ⅳ章 品質管理の手法 41 QC七つ道具と新 QC七つ道具 42 パレート図 43 チェックシート 44 ヒストグラム 45 散布図 46 管理図 47 グラフ 48 特性要因図 49 連関図 50 系統図 51 マトリックス図 52 PDPC 53 アローダイアグラム 54 親和図 55 マトリックス・データ解析法 ● Coffee Break 品質管理検定( QC検定)第 Ⅴ章 統計的方法 56 統計的品質管理 57 データの種類 58 データの収集 59 基本統計量 60 計量値の分布 61 計数値の分布 62 幹葉プロット 63 箱ひげ図 64 母集団と標本 65 サンプリング 66 仮説検定

67 区間推定 68 相関分析 69 回帰分析 70 分割表 71 抜取検査 72 規準型抜取検査 73 工程能力の調査 74 実験計画法 75 多変量解析 76 MTS法 77 官能評価 ● Coffee Break 品質管理検定──3級と 4級カバーイラスト/もとき理川「品質」という言葉は、さまざまな意味で使われています。品質管理で対象にしている品質の範囲も、実に広範囲です。本書では、製品やサービスについて顧客が要求している性質や性能を品質と呼ぶことにします。 品質とは、製品またはサービスが、顧客の使用目的と要求を満たしているかどうかを評価するための性質や性能のことで、本来備わっているべき性質や性能が顧客の要求を満たす程度であるとも言われます。 品質には、製品の企画段階で決まるもの、設計段階で決まるもの、そして、製造段階で決まるものがあります。 企画段階で決まる品質を企画品質といいます。これは製品コンセプトに盛り込まれる品質のことです。顧客の要求を満足する製品やサービスを提供するためには、最初に顧客の要求している品質(使用品質)を定義し、それが製品コンセプトに盛り込まれる必要があります。 設計段階で決まる品質を設計品質といいます。これは設計図や製品仕様書で定められる品質のことで、製品を作る側が目標とするものなので、「ねらいの品質」とも呼ばれます。 製造段階で決まる品質を製造品質といいます。これは製造された製品がねらいの品質に合致しているかで評価する品質なので、「適合の品質」ともいいます。 品質管理で対象としている品質は、製品やサービスの品質だけでなく、それらを作り出す仕事の質や業務の質も含まれています。企業が適正な利潤をあげるには、買い手を満足させる商品やサービスを常に提供しなければなりません。そのために欠かせないのが、製品を計画・生産・販売する技術と、製品の質を確保するための品質管理活動です。 品質管理は、英語では「 Quality Control」と表記され、この頭文字をとって、 QCと略して呼ばれています。 品質管理とは、顧客(買い手)の要求を満たす品質の製品あるいはサービスを経済的に作り出すための管理技法です。 品質管理の最も大きな目的は、製品やサービスの品質を一定以上の水準に確保して顧客に提供することです。このための活動を品質保証と呼んでいます。品質保証は、幅広い品質管理活動の中でも中核をなす活動です。 品質管理のもう1つの重要な目的として、改善があります。改善には、製品やサービスの品質に関する改善(品質改善)と業務の改善があります。企業では、利潤を確保するため、あらゆる業務で、効率的かつ効果的に仕事を進めることが要求されます。そのためには、業務の中で発生するいろいろな問題を解決し、より有効な新しい方法を常に探索する必要があります。これが業務の改善です。改善活動は問題解決活動とも呼ばれています。 改善活動は、やみくもに進めても効率があがりません。品質管理の分野では、改善活動のための進め方と技法が提唱されています。それらの技法を活用しながら改善活動を進めていく必要があります。製造や技術の一部の部門だけが品質管理活動を実施しても買い手の満足を得ることはできません。全部門で全社員が参加して品質管理を実施することが必要です。全社で実施する品質管理活動を総合的品質管理と呼びます。 総合的品質管理は、英語では「 Total Quality Management」と表記され、この頭文字をとって TQMと略して呼ばれています。総合的品質管理とは、製品やサービスを生産してから顧客に渡すまでのすべての段階(渡したあとのアフターサービスや製品の廃棄も含む)において全組織が実施する体系的な品質管理活動です。 顧客の満足する品質を備えた製品やサービスを提供するには、市場の調査、研究開発、製品の企画、設計、生産準備、購買・外注、製造、検査、販売およびアフターサービス、さらに財務、人事、教育など企業活動の全段階にわたり、品質管理活動が必要になります。このために実施されるのが TQM活動です。 このように TQMは全部門、全段階で、全社員が、品質の保証という共通の目的に向かって実施することが欠かせません。したがって、経営トップ層の強力なリーダーシップのもとで組織的に実施することが求められます。 TQMには、経営の質を含むあらゆる質、つまり総合品質( Total Quality)を管理する活動という側面もあります。品質だけでなく、原価、量、納期も品質と結びつけて管理していく必要があります。

品質管理には、思想面、手法面、運営面にそれぞれ大きな特徴があります。思想面での特徴が、「 QC的考え方」といわれる基本思想です。この考え方は、品質管理を進めていくうえでの基盤になるものです。 QC的考え方は、以下の3つに大別できます。 ①品質に対する考え方 さまざまな経営要素の中でも品質を最優先に考える「品質第一主義」、顧客が真に欲しているものを探し出して提供し、顧客の満足を優先して考える「消費者指向」、自分の作り出した結果の受け手は、お客様であるととらえて、良い結果を後工程に引き渡そうと考える「後工程はお客様」などがあります。 ②管理に対する考え方 管理活動の基本的な進め方を示す「 PDCAのサイクル」、事実とデータに基づく判断を重視する「事実による管理」、良い結果を得るためには、良いプロセスが必要であると考え、プロセスを管理の対象とする「プロセス管理」、顧客の要求する製品を提供するには、製品の企画や設計段階における品質管理が大切であると考える「源流管理」などがあります。 ③改善に対する考え方 解決すれば効果の大きい問題、重要な原因に的を絞って改善を進める「重点指向」、異質なものを分けて、管理や分析をするときに使われる「層別」、データの変動に着眼して、分析を進める「ばらつきの探求」などがあります。同じように製造しているつもりでも、良い製品と悪い製品があるのは、どこかにばらつきがあるからです。品質管理では、 Plan-Do-Check-Actの手順で、仕事や管理を進めることが重要視されます。この手順は、方針や課題を達成する活動の基本的な進め方としても利用され、管理のサイクルとも呼ばれています。 PDCAのサイクルとは、 Plan(プラン =計画)、 Do(ドゥー =実施)、 Check(チェック =確認)、 Act(アクト =処置)の4つのステップで構成されます。 どんな活動でも、最初に計画を立て、その計画に沿って実施し、実施した結果を確認するというのが、基本的な進め方です。結果を確認したときに、目標と結果の間に差異が認められたならば、処置(修正、是正)を施し、つぎの活動に備えます。つぎの活動は再び計画から始まります。このようなサイクルを「 PDCAを回す」と呼んでいます。 最初の Planのステップでは、後にくる Doの計画(実行計画)だけでなく、 Checkと Actの計画(管理計画)も立てておくことが大切です。「やるだけやって、結果の確認方法や処置方法は、あとで考える」というのでは、 Checkと Actがあいまいになり、 PDCAが回らなくなります。 PDCAのサイクルに類似の概念として、デミング博士( W. E. Deming)が提唱したデミング・サイクルがあります。これは、品質管理の基本的な進め方を示す図で、調査・設計、製造、検査、販売・サービスのサイクルを、品質を重視する観念と、品質に対する責任感に基づいて回していくことが品質管理では重要であることを示しています。品質管理では、事実に基づく判断を重視します。この場合の事実とは、データのことです。データを収集し、データによる判断と行動をすることが、事実に基づく判断での、品質管理の科学的な根拠となっています。 ものごとを「事実で語る」には、現象を詳細に観察することが大切です。たとえば、製品のキズが問題になったとします。どんなキズが、どこに発生しているかを観察することは、キズが発生する原因を発見する重要な手がかりになります。このような観察に加え、キズの数、面積、深さといったデータを収集すると、原因を探るうえで効果的な分析が行えます。 このように「現場、現物、現実」をよく観察して、何が起きているのか把握する態度を三現主義といいます。三現主義の実行は、事実に基づく判断を実践することでもあります。 事実を示すデータは、使用目的によって、 ①改善に使うデータ、 ②保証に使うデータ、 ③管理に使うデータの3つに分類できます。 改善に使うデータには、現状の把握や、問題の原因を追及したり、あるいは対策を決定するのためのデータがあります。 保証に使うデータには、いつ、どこで検査したのかといった検査のデータや、工程の記録などがあります。 管理に使うデータには、工程(プロセス)を管理するためのデータや、製造条件の調節のためのデータがあります。たとえば、製品の品質を示すデータは、その製品が作られる工程の状態を表していますので、工程の管理に利用できます。

層別とは、興味の対象となる集団を、何らかの共通点を持ったグループ(層)に分けることです。層別は、現状を把握したり、問題の原因を見つけるための、データ処理のテクニックです。 層別してデータを処理する目的は、2つあります。 ①グループに分けて比較したい ②異質なものを別々に扱いたい たとえば、ある製品の不適合品率が問題になり、製造した機械が原因ではないかと考えたとします。すると、どの機械で製造しても不適合品率が高いのか、機械によって不適合品率に違いがあるのかといったことを調査する必要が出てきます。この場合、不適合を示すデータを機械で層別して、各機械の不適合品率を比較することになります。分析の結果、機械によって大きな差が認められると、今度は不適合品率の高い機械と低い機械の違いを追及することで、不適合の原因を見つける糸口をつかむことができます。 また、不適合といっても、外観の不適合や性能の不適合など、現象が異なる場合には、不適合現象ごとに対策を考えなければいけません。このようなときには、不適合品を現象で層別して、分析することになります。 データを収集するときには、あとでいろいろな観点から層別できるように、興味の対象となるデータだけではなく、関係のありそうなデータや、履歴(測定日、測定者、測定器)も記録しておくことが大切です。日本の品質管理の大きな特色として QCサークル活動が挙げられます。同じ職場内で少人数で構成されるグループ(サークル)を作り、グループごとに職場で発生するさまざまな問題を解決していく活動が QCサークル活動です。 TQM活動には、経営トップの品質方針を全社員に展開して進めていくトップダウンの活動のほかに、職場で生じる問題を、同じ職場の人たちが集まって解決していく小集団活動があります。このような小集団活動を QCサークル活動といいます。 QCサークル活動は、グループで進める活動であることと、従業員が自主的に運営する活動であることが特色です。 グループで進める活動として、 QCサークルとは別に、プロジェクトチームを編成して、品質問題に取り組む方式があります。しかし、プロジェクトチームの場合には、最初に会社から与えられたテーマがあり、そのテーマに精通した人々が各職場から集められ、活動します。そして、プロジェクトの完了とともに、プロジェクトチームは解散します。 これに対して QCサークルの場合は、サークルのメンバーが相互に話し合って活動のテーマを1つ決めます。そして、自主的にテーマに取り組み、完了すると、つぎは別のテーマに取り組むという進め方をします。プロジェクトチームが一時的であるのに対して、 QCサークルは永続的なものです。 かつては、 QCサークルの活動は、日本特有のものでしたが、いまや世界的な広がりを持っています。

品質管理を効率的に進めるためには、経営トップが会社としての品質に関する方針を明示し、各部門はその方針の達成に向けて行動していくという、一連のしくみが必要になります。このためのしくみが、方針管理です。 方針管理は、方針の展開と管理によって実施されます。 方針の展開は、最初に経営トップが会社方針を明示することから始まります。つぎに、各部門がその方針を受けて、部門ごとの方針、たとえば、部方針を策定します。さらに、その下位組織、たとえば、各課が、課方針を策定するという流れになります。 したがって、方針管理における各方針は、上位職の方針を反映したものでなければいけません。トップの方針を受けて、部長方針が決まり、部長方針を受けて、課長方針が決まるようなしくみになります。このような上位と下位の連鎖で方針を設定するしくみを方針展開と呼びます。 方針には、目標と方策があります。このうち方策とは、目標を達成するための手段です。たとえば「新規設備を導入して、工程の不適合品率を 0. 1%にする」という場合、「工程の不適合品率を 0. 1%にする」というのが目標で、「新規設備の導入」が方策です。 方針管理で対象している方針は、品質方針だけではありません。利益、原価、納期、生産量、新製品開発などの重要な経営要素に関する方針も方針管理の対象になります。なお、方針の切り替えは、通常 1年ごとに行われます。品質管理活動は、現状の品質を維持するための活動と現状の品質を向上するための活動に分けることができます。方針管理が品質の向上をねらいとした活動であるのに対して、品質の維持をねらいとした活動が日常管理です。 たとえば、ある製品の不適合品率が 10%だったとします。ここで何らかの改善を施し、 10%から 1%に下がった場合、再び悪い状態( 10%)に戻らないよう、いつも不適合品率 1%を維持できるようにすることが、日常管理の役割です。 日常管理を行う前提として、作業の標準(取り決め)が存在している必要があります。現状を維持するということは、いつも同じ結果が得られるようにするということですから、そのためには、同じ作業をする必要があります。標準がなければ、同じ作業をすることはできません。 日常管理は一般に、 PDCAのサイクル( →第 Ⅰ章 5)で進めます。最初に標準の設定と確認を行い( Plan)、標準通りの作業を実施( Do)、作業の結果を確認して( Check)、結果が当初のねらい通りでないときには是正処置をとる( Act)という進め方になります。標準から始まるので、 Standardの Sを使って、「 SDCAのサイクル」と表現されることがあります。 なお、日常管理の対象となる業務は、品質にかかわる業務だけではありません。日常的に行っている業務ならば、すべて日常管理の対象になります。たとえば、経理部などが行う売掛金の管理などは、日常管理と考えてよいでしょう。品質、原価、量(納期)を QCDといいます。これらを確保する活動は、複数の部門にまたがり、部門別の管理だけでは部門間の連携や情報の伝達に関する活動を管理できません。部門間の活動を有効に管理するシステムが機能別管理です。 品質が確保されていることを保証する活動を品質保証といいます。品質保証を行うには、営業、開発、設計、製造、技術などの複数の部門が連携して活動する必要があります。そして、こうした連携活動を管理するには、部門を横断する部門間管理のしくみが必要になります。 機能別管理は、経営要素別に部門間管理を行う管理のしくみです。部門別管理をタテの管理とすれば、機能別管理はヨコの管理といえます。 機能別管理には、品質に関する品質保証、原価に関する原価管理、生産量に関する生産量管理(納期管理)などがあります。また、新製品開発管理、営業管理、人材開発管理なども機能別管理のしくみで進めることができます。 TQM活動では、これらの機能別管理の中で、品質保証に最も重点を置きます。 会社は部門別にタテの組織で通常は動いています。したがって、ヨコの管理である機能別管理を効率的に進めるには、機能ごとに委員会(たとえば、品質保証委員会)を設ける必要があります。委員会は、各部門から選出されたメンバーで構成され、各機能に最も関係の強い部門が主管部門となって、全体の取りまとめを行うようにします。

管理とは、 PDCAのサイクルを回すことです。このサイクルの中で、チェックしなければいけない項目や特性のことを、管理項目といいます。 PDCAのサイクルを回すためには、管理項目が必要になります。 作業や方策を実施したときには、実施結果がねらい通りの出来映えであったかどうかを確認する必要があります。この行為は、 PDCAのサイクルでいえば C( Check)のことですが、作業の出来映えとして、何をチェックするかが管理項目と呼ばれるものです。 たとえば、製造工程の管理ならば、その工程から作り出される製品の品質を示す特性(厚さや重さ、平滑さなど)が、管理項目になります。また、伝票処理という業務であれば、伝票の処理枚数や処理ミスの件数などが管理項目として考えられます。 さて、作業の結果(管理項目)に影響を与える要因は、作業に着手する前や、作業の途中でチェックする必要があります。たとえば、ある製品を作るのに熱処理をして加工する作業が必要な場合、熱処理時間や温度などは、出来上がった製品に影響を与えるはずです。したがって、熱処理をする前と、熱処理を行っている途中で時間や温度をチェックする必要があります。このようなチェックの項目を管理項目に対して、点検項目と呼びます。 結果系のチェック項目が管理項目、要因系のチェック項目が点検項目と考えるとよいでしょう。品質管理の活動は、その活動自体が計画通りに進められているかどうかを定期的にチェックする必要があります。品質管理の活動が適正に運営されているか調査する方法として、 QC診断(品質管理診断)があります。 QC診断とは、個々の製品の品質を診断することではなく、品質管理活動全体を診断することです。 たとえば、設計部門は製品仕様書を決められた手順で作成しているか、製造部門は工程管理ができているか、品質保証部門は顧客の苦情を分析して関係部門に伝達しているかなど、品質管理全般のしくみが正確に運営されているかどうかを担当者が入念にチェックします。そのうえで、問題点を発見したり、改善策を提案することが QC診断の目的です。 QC診断には、社内の人間による社内 QC診断と、社外の人間による外部 QC診断があります。社内 QC診断の場合は、通常、社長と品質管理の担当役員などが診断者になります。外部 QC診断の場合は、社外の QCの専門家が診断者になります。外部 QC診断は、問題点の発見のほかに、自社の品質管理レベルを把握することができるという長所があります。 品質管理活動の表彰制度に「デミング賞」があります。この賞は、特定の企業とは中立的な立場にある第三者(デミング賞委員)によって公正な審査が行われ、表彰に値するかどうかが決定されます。デミング賞は、品質管理活動の表彰としては、日本で最も権威があるとされ、日本製品の品質向上に大きな貢献をしてきました。

5 Sとは、次の5つの言葉を指します。 「整理・整頓・清掃・清潔・躾」 これらの言葉は、ローマ字で書くと、すべて Sで始まることから、 5 Sと呼ばれています。 品質管理活動では、生産現場で、決められたルールを確実に守るということが、重要視されます。これは、まさに「躾」の問題です。躾には、礼儀作法、マナーのほかに、ルールを守るということも含んでいます。また、工場では、塵やほこりが不適合品の原因となります。このことを防ぐための基本は、「清掃・清潔」にあります。特に精密機械工場では、大変な労力とコストを払って、塵やほこりの除去に努めています。 こうしたことから、 5 S運動は、品質管理という観点からも、重要な役割を果たしている運動といえます。 一方、品質管理活動は、多くの人が携わり、自主的な活動以外は、上司からの指示や命令で活動が遂行されます。その活動を円滑にすすめるためには、「報告・連絡・相談」が重要です。この「ほうこく・れんらく・そうだん」を略して「ほうれんそう」「報連相」と呼んでいます。報告は口頭で済む場合もありますが、文書やグラフなどが要求されることもあります。連絡は重要度や緊急度を考慮して行います。正確かつ迅速な連絡は、問題の拡大や未然防止に役立つものです。相談は問題を解決する上で、自分だけでは処理できないような事態に際したとき、不可欠なものです。自分一人でかかえこまずに、上司や先輩に相談するようにこころがけることが大切です。相談するときには、相談内容が相手に伝わるようにする必要があります。品質保証( Quality Assurance; QA)は、 TQM活動の中核となる活動です。そして品質保証活動は、製品またはサービスのライフサイクルを通じて、すべての段階で実施される活動です。 品質保証活動は、一般に品質の計画、確保、確認、約束、伝達の5つの活動で構成されます。 ①品質を計画する活動 顧客の要求する品質を把握し、製品コンセプトに盛り込む活動(品質企画)と、製品コンセプトに基づき、具体的な製品の品質目標を定めて、仕様書や設計図に盛り込む活動(品質設計)があります。なお、品質を計画する活動には、このような個別の製品の品質に関する計画のほかに、品質管理活動全体の計画があります。具体的には、品質方針の策定や品質保証のシステム作りを行うことなどが挙げられます。 ②品質を確保する活動 所望の品質レベルを満たす資材や原料の調達と、製造工程での品質の作り込みがあります。 ③品質を確認する活動 品質の検査と品質の調査があります。品質の検査では、ねらい通りの品質が確保されているかどうかを確認します。品質の調査では、買い手に渡ってからの品質と、顧客の満足度を調べます。 ④品質を約束する活動 買い手との契約に基づき、製品に関する補償をする活動です。 ⑤品質を伝達する活動 品質に関する情報を処理し、関係する部署に伝達する活動です。使用者の要求を考慮した品質を企画し、それに基づいて製品を製造する際の品質に関する目標を設定することが品質の計画です。品質の計画は、製品の開発および設計段階で行われる品質保証活動です。 新製品を開発するには、まず、顧客のニーズ(要求)や社会の動向に関する情報を収集します。そして、収集した情報をもとに、製品のコンセプトを作ります。このような作業を製品企画といいます。この段階で顧客が要求している品質をコンセプトに盛り込みます。これが、品質の企画です。 品質の企画に際しては、品質に使用品質が反映されるようにする必要があります。使用品質とは、「使用者が要求する品質、または品質に対する使用者の要求度合」と JISでは定義されています。使用品質を探索するための手段として市場調査があります。市場調査とは、顧客、製品、サービス、販売方法、広告などに関する事実や意見を調査することです。 製品のコンセプトは、設計図や仕様書として具体化します。これが製品設計です。この段階で品質の設計を行います。品質の設計というのは、製造の目標となる品質(ねらいの品質 =設計品質)を決めることです。 設計品質は、使用品質と照らして妥当なものになっていなければいけません。そのことを検証する方法として、設計審査(デザインレビュー)があります。設計審査とは、製品の設計段階で、性能や機能、原価などを考慮しながら、設計についての審査を行うことです。

「ねらいの品質」を実現するのが製造の役割です。品質の良し悪しは製造工程に左右されます。したがって、製品の品質を確保するには、購買品と製造工程の管理、つまり工程管理が重要になります。 製造段階でねらい通りの品質を確保するには、品質に影響を与える原因の管理(要因系の管理)と、製品の品質特性の管理(結果系の管理)が必要になります。製造工程におけるこれらの管理活動を総称して「工程管理」と呼んでいます。 工程管理には、 QC工程図と呼ばれる帳票がよく活用されます。 QC工程図とは、製造工程の中の各段階で、品質特性として何をチェックするか、品質に影響を与えるものとして何をチェックするかを明記した一覧表です。 QC工程図の作成にあたっては、前もって製造工程の中で、何が品質に影響を与えているかを、工程解析によって明らかにしておく必要があります。工程解析とは、製品の品質特性と工程上の要因との関係を分析することです。 製品の品質に大きな影響を与える要因として、原料・材料( Material)、機械・設備( Machine)、製造方法( Method)、人( Man)を挙げることができます。これらは、英語の頭文字から 4 Mと呼ばれます。製造工程で品質を作り込むためには、この 4 Mの管理が重要です。 機械・設備の管理については、 TPM( Total Productive Maintenance)という、設備保全に関する方法があり、多くの企業で導入されています。製品の品質がねらい通りに確保されているか否かを判定するのが検査の役割です。検査には、完成品に対して行う最終検査だけでなく、工程内で行う中間検査や、購入品の受入検査などがあります。 検査は品質を確認するための活動です。検査とは「品物またはサービスの1つ以上の特性値に対して、測定、試験、検定、ゲージ合わせなどを行って、規定要求事項と比較して、適合しているかどうかを判定する活動」と JISでは定義されています。 検査には製造した製品をすべて調べる全数検査と、一部だけを抜き取って調べる抜取検査があります。全数検査のほうが確実な検査と考えがちですが、自動検査機などによる検査でなければ、仕事量が膨大になり、結果的に見落としなどが発生する可能性が高くなります。 しかし、人命にかかわるような非常に重要な特性に関する検査は、破壊検査(検査された製品は破壊される)の場合を除いて、たとえコスト高になっても全数検査を実施する必要があります。 検査は合否の判定方法によっても分類することができます。製品の特性を調べて、適合品と不適合品に分け、不適合となった製品の数または不適合の数で合否を判定する方法を計数値検査といい、長さや重さなどの特性を測定し、その測定値または測定値の平均値によって合否を判定する方法を計量値検査といいます。

製品の企画段階から、販売後の使用段階に至る過程で、さまざまな品質に関する情報が得られます。これらの情報は、品質情報と呼ばれ、品質保証活動を効果的に運営するために活用されます。 品質の維持と改善のためには、以下のような情報が必要になります。 ①顧客がどのような品質を要求しているか ②どのような品質をねらいとするか ③製造工程の各プロセスで品質が確保されているか ④出荷可能な品質が確保されているか ⑤製品の使用者は満足しているか これらの品質情報を、収集、加工、保管、伝達するためのしくみが、品質情報システムです。 収集 製品の品質情報を各部署や社外から収集するには、製品やサービスの品質を評価・計測する技術を蓄積しておかなくてはなりません。 加工 収集した品質情報を加工するには、データを整理し、解析する技術が必要になります。統計的方法は、データを解析するための有効な手段になります。 保管 収集および分析した品質情報は、必要な情報が、迅速かつ容易に探し出せるように、保管と検索の方法を併せて考えなければいけません。このための最良な方法は、コンピュータの活用です。品質情報を電子化して、データベースを構築しておくと、情報の検索が容易になります。会社の各部門は、製品の企画から販売に至るすべての段階で、品質保証活動を実施します。この活動が、組織的に、効果的に実行できるように、各部門の果たす役割を明確に規定したプログラムが、品質保証システムです。 品質保証活動は、製品やサービスのライフサイクルを通じて実施されます。製品の一般的なライフサイクルは、つぎのような 7段階に整理できます。 ①調査・企画 ②試作・設計 ③生産準備(工程の計画・開発) ④生産 ⑤販売・サービス ⑥販売後の活動 ⑦廃棄・リサイクル 品質保証システムは、これらの各段階で行われる品質保証活動を、組織的に実施するためのしくみです。 品質保証システムを図で表示したものが、品質保証体系図です。品質保証体系図は、一般には、縦方向に品質保証のステップ(または、製品やサービスのライフサイクル)を配置し、横方向には各部門を配置したマトリックスの形をしています。マトリックスの内部には、各ステップで、各部門が実施する業務が明記されます。品質保証体系図は、品質クレームが発生した際に、品質保証システムそのものの欠陥を究明するのに役立ちます。顧客の要求する品質を製品で実現させるには、設計する段階で決まる品質特性に、要求品質を反映させておく必要があります。この要求品質と品質特性を結びつける手段が、品質展開です。 顧客の要求する品質は、たとえば、「軽くて、破れにくい製品が欲しい」といったように、言語で示されるのが一般的です。このような要求品質を製品として具現化するには、軽さを評価する特性、破れにくさを評価する特性を設定(数値化)して、各特性のねらい値を設計段階で定める必要があります。 言語で表される顧客の要求品質を、数値で評価することができる品質特性に変換し、要求品質と品質特性の関連を明らかにしていく方法が「品質展開」です。 品質展開の過程は、要求品質展開表の作成、品質特性展開表の作成、品質表の作成の3つに分けることができます。 ①要求品質展開表 顧客の要求品質を細分化・統合化して、整理した表です。もとになる顧客の要求に関するデータは、アンケート調査やクレーム情報から収集します。 ②品質特性展開表 要求品質に対応する品質特性を細分化・統合化して、整理した表です。 ③品質表 上記の要求品質展開表と品質特性展開表を、行と列に配置し、相互の関連を表示した二元表です。 品質表を作成することで、顧客の要求品質が、製品の品質に反映されているかどうかをチェックすることができます。

製品が、与えられた条件のもとで、規定の期間中、要求された機能を果たすことができる性質が信頼性です。寿命が長い、故障が少ないといった、信頼性の高い製品を実現させることは、品質保証の役割です。 性能が優れていて、機能が豊富な製品であっても、頻繁に故障する製品は、品質が良いとはいえません。故障が少ない製品を提供するには、信頼性を保証するための活動が必要になります。 信頼性保証の活動としては、設計の段階では、 FTA(故障の木解析)や FMEA(故障モード影響解析)、 DR(設計審査)などが挙げられます。また、試作の段階では、信頼性試験を実施し、データの収集と解析を行います。 信頼性保証の活動に万全を期しても、絶対に故障しない製品を作ることは事実上、不可能です。そこで、信頼性を確保するための活動に加えて、保全という活動が重要視されます。 保全には、予防保全と事後保全があります。予防保全は、故障を未然に防止し、常に製品を使用可能な状態に維持するための活動です。事後保全は、製品の故障時に使用可能な状態に回復させるための活動です。保全のしやすさを保全性といいます。故障時の修理が容易な製品は、保全性が高い製品です。保全性も、信頼性保証の対象です。 信頼性を数量的に評価するための尺度には、信頼度、故障率、 MTBF(平均故障間隔)などがあります。また、保全性の尺度には、 MTTR(平均修復時間)などがあります。製造物の欠陥により、人の生命、身体、財産に被害が生じた場合に、製造業者等が負うべき損害賠償の責任を製造物責任( Product Liability; PL)と呼びます。製造物の欠陥防止は、品質保証の重要な課題です。 製造物責任によるトラブルを未然に防ぐには、製造物責任防御( Product Liability Defence; PLD)と、製品安全( Product Safety; PS)で万全を期すことが必要です。 製造物責任防御とは、製造物責任について定めた法律である、製造物責任法( PL法)に絡んだ訴訟に備えることです。 PL法に基づいた裁判では、製造者に証拠の提示が要求されますから、証拠となる記録の保存が重要になります。また、多額の損害賠償への備えとして PL保険への加入も考える必要があります。 製品安全とは、製品の欠陥、危険性を排除して、安全性を確保することです。製品の欠陥には、設計上の欠陥、製造上の欠陥、警告・表示上の欠陥があります。これらの欠陥を防止して、安全性を確保するための活動は、信頼性を確保する活動と同じです。信頼性を安全性に置き換えることで、信頼性保証の活動を、ほとんど利用することができます。 安全性解析においても、故障を危険に置き換えることで、 FTA、 FMEAなどの信頼性の解析手法を適用することができます。これらの手法に加えて、 PDPC(新 QC七つ道具)と呼ばれる手法も、安全性解析には有効です。なお、安全性解析では、危険をどれだけ予測できるかが重要です。

優れた品質の製品やサービスを提供することで、顧客満足( Customer Satisfaction; CS)を向上させることが、品質保証の大きな目的です。顧客満足度は、品質保証活動の評価尺度にもなります。 製品やサービスに対して、苦情が発生するのは、顧客が不満を感じているからです。それでは、苦情がなければ、顧客は満足していると判断してよいかというと、そうではありません。 苦情がないのは、当たり前の品質が確保できているだけであって、満足度が高いことの証拠にはなりません。顧客の満足度は、実際に調査をしなければ把握できないのです。 顧客満足度調査では、人、製品、サービス、価格のそれぞれに対する満足度と、すべてを合わせた総合的な満足度を調査するのが一般的です。 評価の対象としては、特定の製品やサービスを取り上げる場合と、企業が提供するすべての製品やサービスを取り上げる場合とがあります。ある特定の製品品質だけを評価の対象とする場合を品質調査と呼ぶことがあります。 調査には、企業が独自に行う調査と、第三者機関が行う調査があります。企業が独自に行う調査の場合、自社で実施する場合と、外部の調査専門機関に依託する場合があります。 調査の方法は、質問紙によるアンケート調査が一般的です。また、アンケートの実施にあたっては、面接法、郵送法、電話法、会場法など、種々の方法を用います。国際標準化機構( International Organization for Standardization; ISO)が制定する品質マネジメントシステムに関する規格が ISO 9000( JIS Q 9000)ファミリーです。このファミリーは ISO 9000、 ISO 9001、 ISO 9004、 ISO 9005で構成されています。 品質に対する要求や意識は、国によって大きく異なります。このことは貿易において、品質に関するトラブルを引き起こす原因となります。こうしたトラブルを防止するための世界共通の品質マネジメントに関する規格が ISO 9000ファミリーの規格です。この規格に合致していることを取引の必要条件にすれば、どの国の企業とも安心して取引できます。規格に合致しているかどうかの判定は第三者機関が審査します。 ISO 9000ファミリーは、組織が効果的な品質マネジメントシステムを実施し、運用することを支援するために開発された規格で、 ISO 9000、 9001、 9004で構成されています。 ISO 9000( JIS Q 9000)は品質マネジメントシステムの基本と用語を説明しています。 ISO 9001( JIS Q 9001)は顧客の要求事項や適用される規制要求事項を満たした製品を、組織が提供できるだけの能力をもつことを実証するのに必要な品質マネジメントに関する要求事項を規定しています。 ISO 9004( JIS Q 9004)は品質マネジメントシステムの有効性と効率の双方を考慮した指針を提示しています。 ISO 9005( JIS Q 9005)は品質マネジメントシステムを持続的に成功させるための指針を提供しています。品質マネジメントシステムが実現すべき要求事項を規定した規格が ISO 9001( JIS Q 9001)です。この規格はマネジメントのしくみに関する規格であって、個々の製品やサービスの品質を保証するものではありません。 ISO 9001の認証を取得するには、会社の品質マネジメントシステムを、正式な機関に審査してもらう必要があります。 審査を受ける会社は、当然のことながら、 ISO 9001で規定されている要求事項を実施していなければいけません。要求されている活動を行わずに、自己流の品質保証活動をしていたのでは、認証取得はできないということです。 このことは、企業独自の品質マネジメントシステムを構築してはいけないという意味ではありません。規格に合致した活動を実施したうえで、さらに独自のシステムを開発するようでなければ、競合他社に優る高度な品質を提供することはできません。 ISO 9001では、品質マネジメントシステムに関する要求事項をいくつかの項目に分けて規定していて、項目ごとに具体的な要求内容で構成されています。ここで規定されている要求事項は、顧客と利害関係者の満足と信頼感を確保することを目指したものになっています。 要求事項に共通して見られる特徴としては、品質に関係する活動の「手順化・文書化・記録化」することを要求していることです。

田口玄一氏によって提唱された、機能性と安定性を重視した品質改善のための方法論を体系的に整理した学問が品質工学です。品質工学は、「タグチメソッド」と呼ばれることもあります。 品質工学は管理不可能な要因による影響を受けにくい製品を作ることを目的としています。自動販売機を例にとると、この機械は購入者がお札を入れると、製品を出すという機能(はたらき)を持っています。お札にしわや汚れがあると、自動販売機から製品が出てこないということでは、その機械は使いものになりません。購入者には新札を使う人もいれば、しわだらけのお札を使う人もいるからです。お札の状態というのは管理不可能です。したがって、自動販売機のような製品の場合には、どのような状態のお札が入ってきても、安定して機能するものを開発する必要があります。 品質工学で用いられる主要な方法は、パラメータ設計と許容差設計です。パラメータ設計とは、品質に影響を与える誤差(ノイズ)に強い安定した設計を行うための方法です。製品の品質が環境条件や使用条件に左右されないようにすることを目標としたアプローチです。一方、許容差設計とは、品質とコストのトレードオフを考えながら設計する方法です。一般に安定した機能を確保しようとすると、製造コストが上がります。そこで、機能が確保できないことによる損失とコストをはかりにかけながら設計をするのが許容差設計です。なお、品質工学では SN比と呼ばれる尺度による解析が行われます。製造や仕事のプロセスで生じるばらつきを小さくすることで、品質を改善していこうとする組織的な活動です。アメリカで生まれた活動体系で、多くの点は日本の TQM活動と共通しています。 シックスシグマのシグマ( σ)は、ばらつきの大きさを表す標準偏差のことです。平均値から 6 σ離れたデータが生じる確率は極めて小さく、不具合の発生率をこの確率と同等なものとしようという目標を掲げて、品質の改善活動を展開するのがシックスシグマ活動です。具体的には、不具合の発生率を 100万分の 3以下にすることを目指す活動です。 シックスシグマ活動は製品の品質だけでなく、仕事の品質も対象にしています。したがって、注文書の記入ミス率なども目標として挙げられます。注文書を 100万枚発行した場合、その中の記入ミスは 3枚以下にしようという改善活動を展開します。 シックスシグマ活動の目的は、あらゆる品質の改善ですから、日本における TQM活動と同じです。また、データを収集して、統計的に解析するという活動を採り入れていますので、 TQM活動で推奨している QC七つ道具や統計的方法が活用されます。なお、シックスシグマ活動は、改善のための組織を構成して、プロジェクト方式で、問題解決活動に取り組みます。この点が日常の組織の中で改善活動を展開していく TQM活動と異なります。 ところで、 100万分の 3という確率は、厳密には平均値から 6 σ離れたデータが生じる確率ではなく、 4. 5 σ離れたデータが生じる確率に相当しています。

5 W 1 Hとは、次の6つの言葉を指します。 ① What「なにを」 ② When「いつ・いつまでに」 ③ Who「だれが・だれと」 ④ Where「どこで」 ⑤ Why 「なぜ」 ⑥ How 「どのように」 企業の中で行動するとき、あるいは、計画を立てるときには、この6つの要素を明確にすることが大切です。 5ゲン主義とは、次の5つの言葉を指します。 ①現場 ②現物 ③現実 ④原理 ⑤原則 品質管理活動では「現場・現物・現実」をよく観察することが、重視されています。これは「三現主義」と呼ばれています。これに「原理・原則」を加えたものが、 5ゲン主義です。三現主義で製品や行程、人の動きなどを観察しても、問題の存在に気づかなくては意味がありません。こうなっているはずだ、こうあるべきだという原理・原則に照らし合わせてものごとを観察すると、問題を発見しやすくなります。仕事の中で発生した問題を、効率的に解決する能力、あるいは問題が発生する前に対応策を施して、問題を回避する能力が企業では要求されます。こうした問題を解決する能力の育成も、 QC活動のねらいの1つです。 改善活動は問題解決活動とも呼ばれます。ここでの「問題」とは、一般につぎのように定義されています。 問題とは、目標と現状の差である この定義を利用すると、問題を解決するというのは、目標と現状の差をなくすことになります。ここで、目標を「あるべき姿」、現状を「いまの姿」と言い換えることもできます。目標には、上司から与えられるものと、自分で設定するものがあります。 問題解決活動は、問題を明確にすることから始まります。これは、当たり前のことのようですが、問題を明らかにせずに、問題の解決に取り組んでいるケースがかなり見られます。 問題を明確にするということは、上記の定義からもわかるように、目標と現状を明確にすることです。たとえば、「不適合品率を下げよう」というだけでは、どれだけ下げるのか、いまの不適合品率はどの程度なのかが不明確です。目標と現状の一方、あるいは、両方が不明確である状態では、問題が明確になっているとはいえません。 問題には、現状が目標(基準)から逸脱していて、すでに好ましくない状態にある「発生型」の問題と、目標を高く設定して、現状との差を作り出す「設定型」の問題があります。問題解決活動を効率的に進めるには、問題の性格を把握し、その性格にあった解決活動を展開する必要があります。問題は、さまざまな着眼点から、いくつかのタイプに分けることができます。 解決すべき問題がどのような特徴を持っているのか分析するには、現状と目標に着目します。 現状に着目するときには、まず、問題にしている結果の時間的変化を把握します。結果が、 ①良いときと悪いときがある、 ②いつも悪い、 ③時間の経過とともに悪くなっている、のどのパターンなのかを把握します。 つぎに、ある時点における結果のばらつきを把握します。 ①ばらつきが大きい、 ②ばらつきは小さいが、ねらいが目標とずれている、 ③ばらつきとねらいの双方に問題がある、のどのパターンなのかを把握します。 目標に着目するときには、目標の方向で問題の性格を把握します。目標には、不適合品率のように「低ければ低いほどよい」目標と、売上高のように「高ければ高いほどよい」目標があります。さらに、低いほどよい目標は、事故の件数のように、最終的には「ゼロにしたい」目標と、作業時間のように「ゼロにはなりえない」目標に分けることができます。自分が設定した目標が、これらのどのパターンなのかを把握します(この分類は狩野紀昭氏による)。 なお、問題を、悪さの発生を防ぐケースと、より高いレベルの良さを追求するケースに分類する考え方もあります。

問題を解決しようとする際、直感で解決策を考え、実行しようとする人がいます。直感は大切ですが、他の問題に直面したときにも、その直感が当たるとは限りません。問題解決の進め方には定石があります。 問題解決活動には、大きな3つの局面があります。 ①問題を明確にする局面 最初に、解決すべき問題を明確にする必要があります。問題を明確にするとは、目標と現状を明確にし、そのギャップを把握することです。 この局面は、「何が起きているのか」という問いに対する答えを見つけます。 ②原因を発見する局面 問題が明確になったならば、その問題を引き起こしている原因を追及します。原因分析、あるいは要因解析と呼ばれています。 この局面では、「なぜ起きているのか」という問いに対する答えを見つけます。 ③解決策を発想する局面 問題を解決するための具体的な手段を追求します。悪さの原因を除去・回避するには、何をしなければいけないのかを考え、その案を実行に移します。 この局面では、「何をすべきか」という問いに対する答えを見つけます。 問題のレベルには、問題がはっきりしない、原因がわからない、解決策がわからない、という3つのレベルがあります。取り上げた問題がどのレベルかで、上記 ①〜 ③のどこに力をいれるかが決まります。効率的な問題解決法が、いろいろな分野で提案されていますが、 QC活動における問題解決活動では、 QC的な見方・考え方で問題を解決していく「 QC的問題解決法」が重視されます。 QC的問題解決法は、方法と思想に特徴があります。 方法面での特徴は、問題を効率的、科学的に解決していくところにあります。 問題を効率的に解決するために、 QCストーリー( →第 Ⅲ章 32)と呼ばれる手順に沿って問題解決活動を進めます。 問題を科学的に解決するために、「事実に基づく分析」、つまり、データの収集と分析を重視します。収集したデータは、 QC七つ道具や統計的方法といった技法で分析します。 思想面での特徴としては、重点指向、ばらつきの重視、プロセスの重視があります。 解決したときに効果の大きなものから優先して手をつけていこうという考え方が、重点指向です。 不適合品率の低い工場と高い工場、売り上げの高い店と低い店といったように、同じ結果が得られるはずなのに、結果が異なっている状況に着目し、問題の原因を探求しようとする考え方が、ばらつきの重視です。 悪い製品が作られるのは、悪い作り方をしているからです。問題を解決するには、問題を生み出しているプロセス(方法、工程)を改善しなければいけないという考え方が、プロセスの重視です。

問題解決の基本プロセスは、問題の設定、原因の分析、対策の立案です。これらをさらに細かく分けて手順化したものが「 QCストーリー」です。この手順は、 QCサークル活動の改善手順としても使われます。 次頁に示した8つのステップが QCストーリーの具体的な手順です。企業によっては、このステップを若干変更して利用しています。たとえば、現状の把握と目標の設定を1つのステップにまとめて、「現状の把握と目標の設定」としたり、テーマの選定のあとに「活動の計画」を追加したりしています。しかし、これらも本質は変わりません。 QCストーリーでは、各ステップのうち、特に現状の把握と要因の解析に力点を置きます。要因の解析というのは、問題を引き起こしている原因を追及することです。 QCストーリーは、好ましくない結果(不適合品、事故など)がすでに発生してしまったケースの問題に適用すると効果的です。悪さの発生状態を現状の把握で明らかにし、悪さを発生させている原因を、要因の解析で追及します。このように結果から原因を追及していくアプローチを解析的アプローチと呼び、このアプローチに適した問題を原因指向型問題と呼んでいます。 なお、 QCストーリーは、問題解決の手順として利用されるだけでなく、改善活動を報告するための手順としても利用されます。8つのステップを目次として、活動のプロセスを整理すると、わかりやすい発表や報告をすることができます。テーマは、上司から与えられるケースと、自分で選ぶケースがあります。自分で選ぶ場合には、担当している業務の中で、特に困っていること、あるいは抱えている課題の中から選定します。 テーマは、品質に関するもの、コストに関するもの、納期や生産量に関するもの、設備に関するもの、売り上げに関するものなど、いろいろ考えられます。自分の業務との関係で選ぶことになります。 テーマの表現は、悪さを減らす方向のものなのか、良さを伸ばそうとするものなのかがわかるようにします。 たとえば、「熱処理工程の不適合品率を低減する」とか、「商品 Aの売り上げを拡大する」といったように、何をどうしようとしているのかがわかるように表現します。 テーマの選定にあたっては、最初に、「テーマ候補」を複数挙げます。困っていること、心配していること、次工程に迷惑をかけていることを列挙します。 つぎに、複数のテーマ候補を「効果の大きさ」「緊急性」「実現性」などの観点から評価します。この評価結果を総合的に判断して、取り組むテーマを決めます。 なお、 QCサークル活動では、できるだけグループのメンバーに共通するテーマを選定するようにします。 テーマ決定までのプロセスを整理し、記録として残しておくと、別のテーマを決めるときや、「テーマの選定理由」を第三者に説明するときに役立ちます。テーマの選定のつぎには、テーマに関する現状を把握します。具体的に、どのように悪いのかを把握していきます。現状の把握によって明確になった情報は、のちほど行う要因の解析でも利用します。 現状の把握によって明らかにしなければいけないことは、ばらつきの有無です。問題としている悪さの発生状況にばらつきがあるのかどうか、あるならば、どのようにばらついているのかを把握します。ばらつきの把握とは、たとえば、不適合という悪さが発生している場合、いつも不適合品率が高いのか、高いときと低いときがあるのか、どの工程でも不適合品率が高いのか、高い工程と低い工程があるのかといったことを把握することです。 ばらつきの有無を把握する際のポイントは、 ①時系列で(時間順に)変化を見る ②層別して違いを見ることです。 時系列で見ることによって、良いときと悪いときがあるのか、いつも悪いのか、あるいは、急に悪くなってきたのかなど、くせを把握することができます。 また、工程別、方法別、原料別、人別、症状別など、いろいろな観点で層別( →第 Ⅰ章 7)して、現状を把握することで、悪さが発生するケースと発生しないケースがあるのかどうかを発見することができます。層別は QC活動のあらゆる場面で重要視されている考え方です。

テーマが完了したかどうかは、設定した目標に到達できたかどうかで判断します。したがって、目標はできるだけ数値で示すようにします。数値で目標を示せないテーマでは、あるべき姿を定性的に示すことになります。 目標を設定するというのは、 ①目標項目、 ②達成基準、 ③達成期限の 3点を明確にすることです。 言い換えると、「何を、どこまで、いつまでに」達成するかを表現した目標を立てることが重要です。目標項目で「何を」を明確にし、達成基準で「どこまで」、達成期限で「いつまでに」を明確にします。 達成基準は、数値で示すことが望まれます。数値で示された目標の達成基準を、目標値といいます。目標値は、現在の水準を示した現状値と併記するほうがわかりやすくてよいでしょう。単位も現状値と目標値は、同じものにします。たとえば次のように設定します。(例)目標項目:キズ不適合品率 達成基準:目標値 = 0. 5% (現状値 = 1. 2%) 達成期限: 2016年8月末日 なお、達成基準を数値で示すことが難しいテーマもあります。たとえば、「品質保証体制の整備」といったようなテーマです。このような場合は、整備された状態を言語で表現します。また、整備できると何が良くなるのかと考えて、たとえば、クレームが減るのであれば、クレーム件数を目標値の1つに設定します。要因の解析とは、問題の原因を追及し、本当の原因を特定することです。 QCストーリーの中で、最も重要視されるステップです。原因を正確に特定して早期に対策を打つことが、問題の再発防止に欠かせません。 要因の解析は、つぎの3つのステップで構成されます。 ①原因候補の洗い出し ②原因候補の絞り込み ③真の原因の確認 原因を追及するには、まず、考えられる原因をリストアップします。これが原因候補の洗い出しです。「考えられる」原因ですから、リストアップされた原因は、あくまでも頭の中で考えた仮説にすぎません。 つぎに、リストアップされた複数の原因候補の中から、本当の原因である可能性が高いものをいくつか選択します。これが原因候補の絞り込みです。この段階では、原因の可能性が高いというだけですから、本当に原因かどうかはわかりません。 最後に、絞り込まれた原因候補が、本当に原因であるかどうかを、実験や調査を行って確認します。これが真の原因の確認です。実験では、悪い結果の再現も試みるようにします。たとえば、悪い結果を生み出す原因候補として、温度の上昇が考えられるならば、わざと温度を上昇させて、悪い結果が発生するかどうかを見ておきます。実験や調査が不可能なときには、記録されている過去のデータを利用します。

対策には、「応急処置」と「恒久処置」があります。不適合となった製品を修正して、良品にするのが応急処置です。一方、不適合の発生原因を除去し、再発防止をねらいとした対策をとるのが恒久処置です。 対策の立案で考える「対策」とは、応急処置のことではなく、恒久処置のことです。恒久処置をとるには、要因の解析で明らかになった原因に対して、対策をとることが必要になります。 原因に対する対策は、 ①原因を除去する対策と ②原因の影響を遮断する対策の2つに大きく分けることができます。 原因そのものを除去することができれば、問題は発生しなくなります。しかし、それが可能な場合と不可能な場合があります。たとえば、ある製品が湿気を含むのは、雨が原因だというような場合には、雨が降らないようにする対策は不可能です。このようなときには、原因はそのままにしておいて、それが悪さの発生につながらないような対策を考えます。 対策を練るときは、まず複数の案を出します。それらの対策案を、効果の大きさ、費用、実現性、安全性、副作用などで評価し、実行に移す対策を決定します。 対策の実行にあたっては、だれが、いつ実施するのかを明確にした実行計画を立てます。この際、対策の予想効果を明確に把握しておくことが大切です。なお、一度に多数の対策を実施すると、効果があったときに、どの対策が効いたのかわからないという問題が起こることがあります。対策を実施した場合、その効果を確認します。効果の有無は、最終的には、目標を達成できたかどうかで判断します。また、実施した対策が、別の問題を引き起こしていないこと(副作用)の確認も行います。 対策の効果は、つぎのような観点で把握します。 ①目標の達成基準に到達したか ②現在の状態より改善されたか ③対策のねらいは達成できたか ④副作用は発生していないか ⑤効果を金額で示すといくらになるか ⑥当初は考えなかった別の効果は生じていないか 対策の効果は、具体的な数値として把握し、グラフや表などを使って視覚的に表現します。また、対策後だけ表示するのではなく、対策前と対策後を比較できるように、対策の前後を表示するようにします。さらに、目標値も併せて表示します。 対策を打ったにもかかわらず、効果が見られない場合には、その理由を考えます。 ①目標が高すぎたのか ②真の原因と思っていたものが見当はずれであったのか ③対策が間違っていたのか ④効果が現れるのに時間がかかるのか 効果が現れなかった理由が、 ①〜 ④のどのケースなのかを考えずに、対策だけをやり直してもうまくいきません。対策の効果が確認できたら、今後はその効果が永続するように維持管理をして、再発防止に努めなければなりません。維持管理のためには、効果のあった対策を標準として定め、遵守するようにすることが大切です。 標準を設定して、活用する行為を「標準化」と呼びます。 効果のあった対策や業務を標準化するためには、まず、だれが( Who)、いつ( When)、どこで( Where)、なにを( What)、なんのために( Why)、どういう方法で( How)行うのかの 5 W 1 Hを明確にします。 つぎに、これを標準として定め、文書化します。それが「標準書」です。標準書には、単なる手順だけでなく、こうすれば良い結果が得られるという、ポイントも記載します。標準書ができあがると、標準通りの作業を実施するための準備をします。準備とは、標準の遂行に必要な知識や技能を身につけるために、教育や訓練を行うことです。この準備が終われば、あとは標準に基づいた作業を実施していくことになります。 ところで、いつでも、だれもが標準通りの作業を実施してくれるとは限りません。したがって、標準通りに作業が行われているかどうかをチェックし、標準が守られていなければ是正していく管理体制が必要になります。このような管理を維持管理、あるいは日常管理といいます。 標準は、必要に応じて、あるいは、定期的に見直しをする必要があります。

悪い結果が発生しているのではなく、より高いレベルの目標を達成したいというようなテーマや、対策案の探索が問題解決のカギをにぎるようなテーマには、課題達成型 QCストーリーが有効です。 目標から手段を追求するようなアプローチを設計的アプローチと呼び、このアプローチに適した問題を目標指向型問題と呼ぶことがあります。このような問題を解決する手順として、「課題達成型 QCストーリー」が利用できます。 次頁に示したステップが課題達成型 QCストーリーの一般的な手順です。 課題達成型 QCストーリーが、通常の QCストーリーと大きく異なる点は、「要因の解析」というステップが存在しないことです。これは、原因指向型の問題を対象にしていないからです。課題達成型 QCストーリーでは、方策の立案と最適策の追求に重点を置きます。方策とは、目標を達成するための手段です。 課題達成型 QCストーリーは、つぎのようなテーマに適用してみるとよいでしょう。 ①現状のレベルを大幅に向上させる革新的なテーマ ②魅力的な品質を創造するテーマ ③初めて取り組む仕事に関するテーマ ④予測される問題に事前に対処しようとするテーマ ⑤繰り返しがない(少ない)仕事に関するテーマ ⑥原因はわかっていても対策が見つかっていないテーマ 品質管理の現場では、次の7つの項目を重点的に管理しています。 ① Q 「 Quality」 =「品質」 ② C 「 Cost」 =「原価」 ③ D 「 Delivery」 =「量・納期」 ④ P 「 Productivity」 =「生産性」 ⑤ S 「 Safety」 =「安全」 ⑥ M 「 Morale/ Moral」 =「士気/倫理」 ⑦ E 「 Environment」 =「環境」 QCDは経営の三大要素とも呼ばれていて、品質管理活動の中でも機能別管理の中核をなしているものです。その他の要素について、管理すべき項目の例を以下にあげます。 P(生産性): 1日あるいは 1時間当たりの生産数量や生産金額 S(安全):生産現場における事故の発生件数や無災害継続日数 M(士気):出勤率、提案件数 E(環境):汚染物質排出量、環境関連法律の遵守度 ちなみに、 Eに教育( Education)を含める場合もあります。企業では人材育成という観点から、さまざまな教育が実施されていますから、教育も管理の対象とするのは当然のことです。教育については、実施率や受講率などが管理すべき項目としてあげられます。 以上のように、管理すべき項目を明確にすることは、管理のサイクルである PDCAを回すうえで必須の作業となります。

QC活動では、データを収集し、そこから得られる情報に基づいて対処するということが頻繁に行われます。データからさまざまな情報を読みとるために使われる基本的な道具が、「 QC七つ道具」と「新 QC七つ道具」です。 QC七つ道具とは、パレート図、チェックシート、ヒストグラム、散布図、管理図、グラフ、特性要因図の7つの手法を指します。これらの手法は、主として、数値で示すことができるデータ(数値データ)を分析するための道具です。 新 QC七つ道具とは、連関図、系統図、マトリックス図、 PDPC、アローダイアグラム、親和図、マトリックス・データ解析法の7つの手法を指します。これらの手法は、主として、言語データを分析するための道具です。言語データとは、「豊かな生活とは、自分の好きなことができる生活のことだ」というように言葉で表現されるデータのことです。 これらの道具は、利用する場面も異なります。 QC七つ道具は、 PDCAサイクルの中ではチェックの段階でよく用いられ、品質改善を進めるうえで重要な論理的な思考や数値分析を伴うような作業に役立ちます。一方、新 QC七つ道具は計画の段階でよく用いられ、問題解決を進める過程で何かを新たに見つけ出したり、異なる手法を発想する際に効果的な道具です。 これらの道具を効果的に活用するには、目的にあったデータを集める必要があります。また、データをさまざまな観点で層別してから活用することも有効なテクニックです。複数の問題が存在するときに、重要な問題から先に取り上げたり、多くの原因の中から、結果に対する影響度の高いものから対策を打っていくことを「重点指向」といいます。パレート図は、重点指向に役立つ道具です。 パレート図は、イタリアの経済学者パレートによって考え出されたもので、この手法をアメリカの経営コンサルタントであるジュラン博士が、 QCの分野に応用しました。棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた複合グラフで、重要な問題を発見するのに役立ちます。 たとえば、ある製品の不適合を減らすことを考える場合、最初に、不適合の内容を調べるのが定石です。いま、不適合項目として、キズ、曲がり、反り、形違いの4つの不適合があったとします。このとき、各不適合項目の数を集計し、数の大きい順に並べます。そして、横軸に不適合項目、左側の縦軸に不適合の数をとり、棒グラフで示します。すると、どんな不適合が多いのかを発見することができます。 さらに、右側の縦軸に、各不適合項目が全不適合の何%を占めるかを表す比率(累積比率)をとって、折れ線グラフで示します。このようなグラフを描けば、どの不適合項目で重点的に対策をとるべきかが明確になります。 パレート図には、好ましくない結果(不適合の数など)を表すデータを使うようにします。また、数量だけでなく、不適合による損失金額でも作成してみると、別の重要な問題が発見されることがあります。仕事を確実に進めるための作業に、点検があります。仕事に着手する前に、必要なものが準備できているかどうかといった確認行為です。この点検を見落としなく行うために役立つ道具がチェックシートです。 チェックシートには、点検用と記録用の2つの使い方があります。 点検用チェックシートは、点検すべき項目の抜け落ちを防止するのに役立ちます。たとえば、機械の点検作業を考えてみます。機械をいつも正常に作動させるには、定期点検や整備作業が不可欠です。このとき、どんな項目を点検し、どんな所を整備するかは、あらかじめ決まっているものです。ところが、点検するのは人間ですから、ある項目をうっかり点検し忘れてしまうということが生じます。こうしたうっかりミスを防止し、点検作業を確実に実施するためには、点検項目や整備項目を一覧表にし、点検済みのところにはチェックマークを入れるようなシートがあると役に立ちます。このような目的のために使われるシートが点検用チェックシートです。 もう1つの記録用チェックシートは、問題の解決などで必要となるデータを収集するときに使います。収集したデータは、グラフや表にして分析しますので、あとでデータの整理や集計がしやすいように設計します。 チェックシートには、決まった様式はありません。チェックシートはチェックリストとも呼ばれます。

品質の状態を調べるには、データを収集・整理して、ばらつきを読みとる必要があります。最も基本的な方法は、どんなデータが何個あったかという整理の仕方です。この結果を棒グラフで表示したのがヒストグラムです。 品質が良いということは、その製品に決められている「規格」に製造した製品が合致しているということです。規格外の製品が多ければ、品質が悪いことになります。 品質を調べるには、製品に関するデータを収集し、どんな値のデータが多いのか、どの程度の範囲でばらついているのか、といった分布状態を把握する必要があります。それには、度数分布表と呼ばれる集計表を作ります。度数分布表は、データの範囲を適当な区間に分割し、各区間に存在するデータの個数(度数、あるいは頻度という)を集計した表です。 ヒストグラムは、この度数分布表の度数を縦軸にとり、横軸に区間をとった棒グラフです。ただしヒストグラムでは、棒と棒の間隔はあけないのが一般的です。 ヒストグラムを視察するポイントは、 ①中心の位置、 ②ばらつき状態、 ③分布の形、 ④飛び離れた値の有無、 ⑤層別(グループ分け)の必要性、 ⑥規格値との比較、などです。 ヒストグラムによって分布の形を検討するには、少なくともデータの数が 50〜 100は必要です。データの数が少ないときに、ヒストグラムの形を吟味しても意味がありません。なぜならば、棒の数(区間の間隔)を少し変えただけで、形がまったく変わってしまうからです。気温が上がると事故が増える、鉄板を厚くすると強度が高くなるといったように、 2種類のデータの関係を把握するときに役立つのが、散布図と呼ばれるグラフです。原因の確認によく使われます。 散布図は、 2種類の測定結果を示すデータに基づき、2つの測定項目の関係を調べるときに使われるグラフです。たとえば、製品中の不純物の量と製品の不適合品率の関係を調べる場合、不純物の量と不適合品率を示すデータを収集して、散布図を作成します。この際、 2種類のデータは、対応している必要があります。 いま、 30人の身長と体重のデータを収集して、身長と体重の関係を調べようとする場合、身長のデータをとった 30人と、体重のデータをとった 30人が、違う人間では意味がありません。同一人物の身長と体重のデータを 30人分とる必要があります。このように、人物という点で対応しているデータを、対応のあるデータと呼びます。 対応のある 2種類のデータの一方を x、もう一方を yとして散布図を作成したとき、「 xが増加すると yも増加する」という傾向がある場合、 xと yの間には正の相関関係があるといいます。逆に、「 xが増加すると yは減少する」という場合、 xと yの間には負の相関関係があるといいます。 散布図では、原因を示すデータを横軸に、結果を示すデータを縦軸にとるようにします。また、横軸と縦軸の長さは、ほぼ同じにして、正方形の中で点が散布するようにします。

管理図は、製造工程が安定した状態にあるかどうかを判断するためのグラフです。安定した状態とは、異常が発生していない状態です。管理図によって、工程の状態を示すデータが異常か正常かを判定することができます。 製造工程の状態は、その工程から製造される製品の品質に表れます。したがって、製品の品質を示すデータ(品質特性値)を観察することで、製造工程の状態が把握できます。 品質を示すデータはいつも同じ値になるとは限りません。たとえば、品質特性値が製品の寸法である場合、設計のねらいが 5ミリであっても、作られる製品は 6ミリだったり、 3ミリだったりして、データはばらつくのが普通です。そこで、ばらつく原因を2つに分けます。1つは、避けられない偶然原因、もう1つは、見のがせない異常原因です。データのばらつきが、偶然原因によるものか、異常原因によるものかを判定するための道具が管理図です。 管理図は、折れ線グラフに、 2本の管理限界線と 1本の中心線を記入して作成します。そして、 2本の管理限界線に挟まれた領域のデータのばらつきは、偶然原因によるものと判定し、管理限界線の外に出たデータは、異常原因によるものと判定します。データが管理限界線の外に出たときは、工程で何かいつもと違うことが起きている可能性がありますので、その原因を追及し、処置をとる必要があります。管理限界線を超えるデータがなく、クセもなければ、その工程は安定していると考えられます。データを分析するための最も基本的で、かつ最も重要な作業がデータのグラフ化です。グラフには、いろいろな種類があるので、同じデータで複数のグラフを作成すると、グラフごとに別の情報が得られることがあります。 グラフには多くの種類があります。よく使われる代表的なグラフには、つぎのようなものがあります。 ①棒グラフ :数量を比較する ②折れ線グラフ :動きを見る ③円グラフ :比率を見る ④帯グラフ :比率を比較する ⑤レーダーチャート:バランスを見る なお、 QC七つ道具のパレート図、ヒストグラム、散布図、管理図もグラフの一種です。 データをグラフ化するのは、データを分析する場合か、プレゼンテーションでの道具として活用する場合が一般的です。 データの分析で使うグラフは、データを「見る(視る)」ためのものですから、分析する人にとって見やすいものを作成します。 プレゼンテーション(報告、説明)で使うグラフは、「見せる(魅せる)」ためのものですから、他人(視聴者)が見やすいものを作成する必要があります。タイトルや字の大きさなどにも気を配らなければいけません。 現在では、パソコンのグラフ作成ソフトを利用することで、データを簡単にグラフ化することができます。不具合が発生したとき、その原因として候補がいくつも想定できる場合、それらの原因候補が一覧できるように整理すると、原因の究明が効率よく進みます。原因候補を系統的に整理し、図で示すのが特性要因図です。 まず、特性要因図の特性と要因という言葉の意味を解説しておきましょう。「特性」とは「結果」のことです。また、「要因」とは、「重要な原因」を意味します。ただし、特性要因図においては、「重要な原因の候補」と考えてください。 特性要因図とは、ある1つの結果と、その原因として想定されるものを図で整理したものです。 QCストーリーのステップにおける「要因の解析」(問題の原因を追及すること)でよく使われる手法です。要因の解析では、まず最初に考えられる原因候補をリストアップします。このリストを分類・整理するのに役立つのが特性要因図です。 特性要因図を作成するには、最初に特性を決めます。たとえば、「部品の誤実装」とか、「販売予算の未達成」というように、取り上げる特性を決めます。そして、図の右端にその特性を表示します。つぎに、要因を特性の左側に思い浮かぶままに書いていきます。ただし、整理しやすいように、いくつかのグループごと(大きな要因ごと)に分けて書きます。 特性要因図の要因は、あくまでも原因の候補にすぎず、仮説であるという点に注意してください。本当の原因かどうかは、データで確認するまでわかりません。特性要因図は、データ解析の準備として、使うべき道具です。

連関図は、複雑に絡み合った問題の原因を追及するのに適した手法です。問題とその原因、および原因同士の因果関係を矢線を使って整理し、改善すべき重要原因や根本原因の絞り込みに使います。 連関図は、 QCストーリーにおける「要因の解析」でよく使われる手法で、原因追及の道具です。したがって、連関図を活用する場面は、特性要因図と同じです。 連関図を使うと、問題と原因の関係だけでなく、原因同士の関係も整理できますので、原因が複雑に絡み合っているときの原因追及に有効な道具です。たとえば、車両事故の原因として、交通ルールの無視とスピードの出しすぎが考えられたとします。連関図は、この2つの原因同士の関係も図で示すことができます。 連関図では、矢線を使って因果関係を表示します。矢線は、原因から結果へ矢を向けて引きます。実際に作成するときには、「なぜなぜ問答」を繰り返し、1つの原因が浮かんだら、そのまた原因は何かと順次考えていきます。 連関図の中で、矢線を受けていない原因(原因をそれ以上追及できないもの)を根本原因と呼んでいます。問題の防止には、この根本原因への対策を考えればよいことになります。ただし、手の打ちようがない根本原因もあります。その場合には、根本原因の1つ前の原因に対して対策を考えます。 また、矢線が多く出ている原因や、矢線を多く受けている原因は、重要な原因として着目するとよいでしょう。目標(目的)をどのように達成するのか、すなわち方策(手段)を順序立てて決めるには系統図が役立ちます。系統図を作るには、目的達成のために何をすべきかというアイデアを創造する力が必要になります。 目標達成のためにどのような手段をとるべきかは、難しい問題です。そこで系統図を作り、とるべき手段を解きほぐす作業が行われます。 QCストーリーのステップにおける「対策の立案」、課題達成型 QCストーリーにおける「方策の立案」や「最適策の追求」、方針管理における「方針の展開」などの場面で活発に利用されます。 系統図では、目的と手段の連鎖を考えて展開していきます。たとえば、「新商品 Xの拡販を図る」という目的があったとします。この目的を達成するための手段として「商品 Xのセールスポイントを明確にする」が考え出されました。つぎに、これを目的と置き換えて、「明確にする」ための手段を考えます。こうして、目的と手段の連鎖を利用して、手段を展開し、具体的な実施項目のレベルになるまで展開を続けます。 系統図では、左端に最も大きな目的を書き、そこから右側へ展開していきます。したがって、右端に位置する手段が最終手段で、実施項目になります。ただし、最終手段は、すべてが実施可能であるとは限りません。コストなどの制約によって実施不可能な場合もあります。そこで、可能性、必要性(効果)、経済性(コスト)、作業性、安全性といった観点から各最終手段を評価し、実施項目を決定します。

複数の問題と複数の原因が絡み合っている場合、問題と原因の対応関係を整理するには二次元的に整理する必要があります。複雑な事象間の対応関係を整理するのに役立つのがマトリックス図です。 いま、 4人( A、 B、 C、 D)の技術者がいたとします。また、技術者の教育講座が 3コース( 1、 2、 3)あったとします。 Aさんは 1と 2のコース、 Bさんは 1と 3、 Cさんは 2と 3、 Dさんは 2のコースを受講していたとします。このような場合、技術者の各人を列に、教育講座の各コースを行に配置した表を作り、各人が受講したコースには〇という記号をつけて情報を整理すると全体の情報を把握しやすくなります。このようにして作られる表がマトリックス図です。 マトリックス図では、対応関係を見ようとしている項目(技術者、教育講座)のことを事象と呼んでいます。また、各項目の中身( A、 B、 C、 D、 1、 2、 3)を要素と呼んでいます。マトリックス図とは、2つの事象に属する各要素を行と列に配置し、その交点に各要素の関連の有無を示した表のことです。 マトリックス図には、いろいろな種類がありますが、特によく使われるのが、つぎの4つです。 ① L型マトリックス(事象が2つのとき) ② T型マトリックス(事象が3つのとき) ③ Y型マトリックス(事象が3つのとき) ④ X型マトリックス(事象が4つのとき)ある対策を実行に移すと、実行過程でさまざまな障害が発生し、当初の計画通りに進まないということがよく起こります。 PDPCは、実施過程で起こりうる事態を事前に予測しながら、一連の手段を計画するための道具です。 PDPCは「 Process Decision Program Chart」の略で、「過程決定計画図」と訳されます。この手法は近藤次郎博士によって発案されたものです。 PDPCは、 QCストーリーのステップにおける「対策の立案」、課題達成型 QCストーリーにおける「最適策の追求」や「最適策の実施」でよく使われる手法です。 新製品を開発するようなプロセスは、試行錯誤の連続、失敗と成功の繰り返しです。このような場合の計画作りには、すべてが順調に進行した場合の理想的な(楽観的な)計画と悲観的な計画をうまく合成させることがポイントになります。合成させた計画を立案するときに役立つのが PDPCです。 PDPCは、やってみなければ先が見えない、相手のあることなので自分の計画通りにいくとは限らないといったような局面での計画立案に有効です。たとえば、 ①研究・開発の計画立案、 ②絶対に防止しなければいけない重大事故の防止策立案、 ③営業活動・受注活動における戦略立案、などです。 PDPCには、特別な作成ルールや、正式な形はありません。自由に作成できるところが、特徴でもあります。完成した PDPCは、次頁の図のようにフローチャートに似たものになります。アローダイアグラムは、作業や実施項目の最適な日程計画を立案し、効率よく進捗管理を行うのに適した手法です。アローダイアグラムを使うと、同時に進められる作業や、時間的な余裕の有無が明確になります。 アローダイアグラムは、仕事やプロジェクトの開始から完了までの作業項目を、時系列に並べて矢線で結んだ図です。 日程計画の立案や進捗管理の手法としては、ガントチャート(バーチャート)がよく使われます。ガントチャートは、縦軸に実施項目、横軸に月日をとり、線を使って、計画と実績を表示するグラフです。 アローダイアグラムは、ガントチャートよりも、つぎに示すような点で有効な手法です。 ①ある作業に遅れが生じたときに、全体の日程にどのような影響が生じるかをつかむ。 ②日程に余裕がある作業と、余裕のない作業をつかむ。 ③最短日程と最長日程を算出する。 実施項目を順序関係にしたがって矢線で図示するところは、 PDPCに似ていますが、 PDPCのように不測事態の発生までは考慮していません。 アローダイアグラムは、 QCストーリーのステップにおける「対策の立案と実施」、課題達成型 QCストーリーにおける「最適策の実施」、プロジェクトや工事の日程計画立案などでよく使われる手法です。また、アローダイアグラムは PERTと呼ばれる手法の基本となる図です。

製品に対する意見や発想などの多くは、数値ではなく一般に話される言葉です。これら多数の言葉(言語データ)を統合し、集約するのに適した手法が親和図です。断片的で、漠然としたイメージを具体化するときにも有効です。 親和図は、テーマの発見や問題の整理、顧客の要求品質の把握などによく使われる手法です。 親和図の作成は、ブレーン・ストーミングやアンケートなどで得られる言語データを統合し、要約しながら進めます。たとえば、手帳という製品に対する顧客の要求として、ある顧客は、「軽いものが欲しい」と言い、別の顧客は、「小さいものが欲しい」と言うことがあるでしょう。そこで、これらの言語データを統合し、顧客の要求を「携帯性が優れている手帳が欲しい」と要約します。 親和図は、言語データが語っている意味の近さ(親和性)に注目し、近いもの同士を統合することで、言語データを要約する手法です。顧客の要求を表すような言語データは、計画的に系統立てて収集されることは少なく、ばらばらに得られることが多いものです。これらの言語データは、統合して要約しないと、重要なポイントが見えてきません。 言語データには、つぎのようなものがあります。 ①事実データ:(例)パソコンが作動しなくなった ②推定データ:(例)部品がこわれたからだろう ③発想データ:(例)部品を交換すれば直りそうだ ④意見データ:(例)簡単に修理できるようにしてほしい製品の品質は、複数の特性で評価されることが多いものです。複数の特性が計測されると、特性ごとの評価だけでなく、特性を総合的にみた評価も必要になります。このようなときに利用されるのがマトリックス・データ解析法です。 マトリックス・データ解析法は、新 QC七つ道具の中で唯一、数値データを扱う手法です。この手法は統計的方法(多変量解析法)の1つで、統計学では主成分分析法と呼ばれる手法です。 いま、乗用車の品質を考えてみましょう。品質を決める特性としては、燃費、馬力、最高速度など複数の特性が考えられます。このとき、何種類かの乗用車について、これらの特性を示すデータがあれば、燃費はどの乗用車が優れているか、馬力はどれか、最高速度はどれかというように、特性ごとの比較ができます。一方、複数の特性を別々に評価するのではなく、総合的に評価したいという場合もあります。このようなときに適用されるのがマトリックス・データ解析法です。 マトリックス・データ解析法を利用すると、複数の特性を合成した総合指標を算出することができます。この総合指標で対象(モノやヒト)を評価すれば、総合的な評価が可能になります。 マトリックス・データ解析法は、総合指標の作成のほかに、似ている製品と似ていない製品といったような対象のグルーピングや商品の位置づけ(ポジショニング)などにも利用されます。

品質管理検定( QC検定)は、品質管理に関する知識をどの程度持っているかを筆記試験により客観的に評価するもので、 1級から 4級までの4つの級があります。 各級の対象者は次のようになっています。 ■ 1級 品質管理部門のスタッフ、技術系部門のスタッフなど企業内において品質管理全般についての知識が要求される業務にたずさわる方々 ■ 2級 QC七つ道具などを使って品質に関わる問題を解決することを自らできることが求められる方々、小集団活動などでリーダー的な役割を担っており、改善活動をリードしている方々 ■ 3級 QC七つ道具などの個別の手法を理解している方々、小集団活動などでメンバーとして活動をしている方々、大学生、高専生、工業高校生など ■ 4級 これから企業で働こうとする方々、人材派遣企業などに登録されている派遣社員の方々、大学生、高専生、高校生など 品質管理に関する知識が、どの程度まで身についているかを測るために、品質管理検定を受験されるとよいでしょう。 また、社内の品質管理教育における効果の測定手段として、利用することもできます。品質管理の中でも、特に統計学の手法を応用した活動が統計的品質管理( Statistical Quality Control; SQC)です。統計学に裏付けられた、データの収集方法および解析手法を活用して品質管理を進めます。 品質管理の歴史は、製造工場の品質を管理する手段に、管理図と抜取検査の方法を用いたことから始まります。つまり、品質管理の原点は SQC(統計的品質管理)なのです。現在、 SQCという用語は、つぎの2つの意味で使われています。 ① TQM全体の中で、統計的方法を利用した活動の部分 ②現在の TQMと対比して、統計的方法だけを重視した初期の品質管理 統計的方法をデータの解析に利用する大きなねらいは、データの変動を「意味のある変動」と「意味のない変動」に分解し、変動しているデータから、何らかの規則性を見つけ出すことです。たとえば 1本のネジの寸法に 0. 5ミリのズレがあった場合、そのズレは偶然なのか、あるいは何本かに 1本の頻度で生じるのかを知るためには、統計的方法が有効です。 統計的方法は、データを収集するときにも利用されます。数学的に裏付けされた統計理論を使って、誤差を見積もり、設定した誤差の範囲で結論を出すには、どのくらいの数のデータを収集すればよいかといったことを検討します。 統計的方法を用いて、データを処理するには、コンピュータを利用します。パソコン上で稼働する高品質で信頼性の高い統計ソフトウェアが市販されています。統計的方法を使って数値データを処理する場合には、対象としているデータが、どのような性質のものかを考慮しなくてはいけません。データは性質によっていくつかの種類に分類できます。 統計的方法の対象となるのは、数値データです。数値データは、数学的な性質によって ①計量値、 ②計数値、 ③順位値の3つに分けることができます。 ①計量値 測定器具などで「測る」ことによって得られるデータです。たとえば、重さや長さ、時間などが計量値です。とりうる値が「連続的」であるという特徴があります。連続的であるというのは、測定器具の精度が許す限り小数点以下何桁でもとれて区切りがないということです。 ②計数値 「数える」ことによって得られるデータです。たとえば、不適合品数、事故件数などが計数値です。とりうる値が「離散的」であるという特徴があります。たとえば、不適合品の数が 1. 5個ということはあり得ず、 1と 2の間の値は存在しません。このようなデータを離散的といいます。 ③順位値 「比べる」ことによって得られるデータです。この種のデータは、官能検査や、アンケート調査において、多く見られます。たとえば、いくつかの商品を提示しておいて、好きな順に順位をつけてもらうようなアンケート調査を想定してください。このときに収集されるデータは、 1位、 2位といったような順位を示すデータになります。このようなデータを順位値といいます。

データの収集は、新たにデータをとる場合と、過去のデータを利用する場合があります。新たにデータをとるには、調査や実験をします。過去のデータを利用するには、保管されている記録類やデータベースを利用します。 データの集め方には、調査をして集める方法と、実験をして集める方法があります。どちらの方法を用いるにせよ、データを収集する前に、目的(何を知りたいか)と、解析方法(どのように分析するか)を決めておくことが重要です。 個々のデータは、対象(モノ、ヒト)を測定することで得られます。データの取り方(測定の方法)には、 ①測る、 ②数える、 ③比べる、 ④問う(聴取する)、 ⑤感じるといった方法があります。 観察するときに、見ようとしている対象が、速く動きすぎて見えない、また、小さすぎて肉眼ではとらえられないなどの問題が生じることがあります。このときには、ビデオ、カメラ、顕微鏡などを利用します。 収集したデータは、いつでも、だれもが利用できるように保管しておく必要があります。この際、担当者だけでなく、当事者以外の人も、利用できるようにしておくことが、情報の共有化という点から重要です。 データの保管と検索(欲しいデータを探し出すこと)を効率的に行うために、コンピュータを使ったデータベースシステムを利用することを推奨します。最近では、データの収集までもコンピュータによって自動化する例も見られます。データの集まりから情報を読みとるには、データの特徴を示す指標(たとえば、平均値や標準偏差)を計算し、データを要約します。データから計算されるこれらの数値を統計量と呼んでいます。 データの分布状態は、分布の中心位置、散布度(ばらつきの大きさ)、形の3つでとらえることができます。 ①分布の中心位置 中心位置がどこにあるのかを示す代表的な指標として、平均値と中央値があります。中央値とは、データを値の大きい順(小さい順)に並べ替えたときに、まん中の順位に相当するデータです。飛び離れた値(はずれ値)が存在しなければ、平均値と中央値は近い値になります。 ②分布の散布度 分布の散布度を示す代表的な指標として、標準偏差と範囲があります。標準偏差とは、平均値と個々のデータの値との差(偏差)を、平均化した指標です。範囲は、データの中の最大値と最小値の差です。通常、データ数が 10個以下のときに用います。ばらつきが大きいということは、平均値から離れた値をとるデータが多いということですから、標準偏差と範囲の数値も大きくなります。 ③分布の形 分布の形を示す指標として、歪度(ひずみ)と尖度(とがり)があります。歪度で分布の対称性を見ます。尖度で分布のすその長さを見ます。この2つの指標によって、分布の形が、左右対称かどうか、すそを引いているかどうかを見ることができます。工業で扱うデータでは、左右対称な分布になるのが一般的です。

計量値を扱う統計的方法の多くは、データが正規分布と呼ばれる分布に従うことを前提に理論が構築されています。収集したデータが、正規分布に従っているかどうかにより、データの解析に用いる統計的方法も変わります。 ある製品の寸法を Xとして、その Xがデータを取るたびに確率的にいろいろな値に変化するとき、 Xを確率変数と呼び、それぞれの確率を表現したものを確率分布といいます。測定して得られるような計量値のデータは、確率分布として、正規分布と呼ばれる分布に従うことを仮定しています。正規分布に従うデータは、ヒストグラムを書いたときに、分布の中央付近の柱が最も高くなり、その柱を中心に左右対称の形になります。製造工程が安定している場合、工業製品の長さや重さなどの測定値は、正規分布に従うのが一般的です。 データが正規分布に従っていると、 Xがある区間の値に入る確率を計算することができます。このときに用いられるのが、確率密度関数と呼ばれるもので、この関数を積分することで、確率を計算します。正規分布は平均値の値 μと標準偏差の値 σが決まれば、形が決まる確率分布で、確率密度関数はつぎのような式で表現されます。 平均値が μ、標準偏差が σの正規分布を N( μ、 σ 2)と表現することがあります。正規分布の中でも、平均値が 0、標準偏差が 1であるような分布を標準正規分布と呼んでいます。不適合品数や不適合数のように、数えて得られる計数値データは、小数点以下のデータが存在しない飛び飛びの値となります。このようなデータは離散データと呼ばれ、確率分布として離散分布と呼ばれる分布が利用されます。 計数値データの分布は、離散分布と呼ばれますが、離散分布の代表的なものとして、二項分布とポアソン分布があります。 二項分布は不適合品の数のように、結果が不適合か適合かというように2つのどちらかしか得られないようなデータの確率分布として利用されます。一方、ポアソン分布は不適合品数のように、製品の欠点数や事故の数といったデータの確率分布として利用されます。 いま、不適合品率が 5%の工程があるとすると、その工程で 100個の製品を製造すれば、 5個の不適合品が製造されることが予想できます。しかし、不適合品率が 5%の工程であっても、 100個の中に常に 5個の不適合品が製造されるわけではありません。 4個や 6個のときもあります。 0個のときもあります。不適合品の数はデータを取るたびに変わります。このように、不適合品の数はデータを取るたびに変わる確率変数となります。この確率を表現したものが二項分布で、不適合品が発生する確率を求めるときに使います。 ポアソン分布は、二項分布と同様に、数えて得られるデータの確率分布として利用されるもので、不適合品の数ではなく、不適合を示す内容の数を扱うときに用います。データの特徴を把握するには、統計量を計算するだけでは不十分で、グラフによる表現によって、視覚的な判断を加える必要があります。データをグラフにすることで、分布の形や、はずれ値の有無などを把握できます。 データの分布状態を把握するのに適したグラフとしては、ヒストグラムのほかに、幹葉プロット、ドットプロット、箱ひげ図などがあります。 ヒストグラムは、データの存在範囲をいくつかの区間に区切って、それぞれの区間にデータがいくつ存在するかを、棒グラフで示したものです。ヒストグラムの欠点は、棒の中身が見えなくなってしまうことです。たとえば、 25から 35の間に、データが2つ存在するとしましょう。ヒストグラムでは、2つ存在しているということが、棒で表現されるだけですので、もとの2つのデータが、 26と 27であっても、 26と 34であっても、その違いは見えなくなります。この欠点を補うグラフが、幹葉プロットです。 幹葉プロットを作成するには、最初にデータを 2ケタの形にします。もともと 2ケタならば、そのまま用います。 3ケタ以上あるときには、大きいほうの 2ケタを使います。たとえば、 123というデータならば、最後の 3を無視して 12とします。こうして、各データを 2ケタの形にしたならば、大きいほうのケタの数字を「幹」、小さいほうの数字を「葉」として、幹葉プロットを作成します。駅の構内で見かける時刻表の表示形式が、幹葉プロットに似ています。

データは、平均値や標準偏差などの基本的な統計量によって、数値的に要約することができますが、グラフを用いて、視覚的に要約することもできます。箱ひげ図は、データを視覚的に要約するためのグラフです。 箱ひげ図を作成するには、その準備として、データを5つの指標に要約します。ここで用いる指標は、平均値や標準偏差ではなく、 ①中央値、 ②最大値、 ③最小値、 ④上側ヒンジ、 ⑤下側ヒンジの5つです。この5つにデータを要約することを五数要約といいます。 上側ヒンジとは、最大値と中央値の中間に位置する値で、全データの 75%がその値より小さくなるところです。また、下側ヒンジとは、最小値と中央値の中間に位置する値で、全データの 25%がその値より小さくなるところです。 上側ヒンジと下側ヒンジの差は、ヒンジ幅、または、四分位範囲と呼ばれ、ばらつきの大きさを示す指標として用いることができます。 箱ひげ図の作り方は、まず、中央値、上側ヒンジ、下側ヒンジを使って箱を作ります。つぎに、ヒンジ幅の 1. 5倍のところまで、各ヒンジから線(ひげ)を引きます。ひげの先端は、ひげ端と呼びます。ここで、最大値や最小値が、ひげ端より箱に近いときには、最大値(最小値)をひげ端にします。ひげ端より大きい、または、小さいデータは、はずれ値として、丸などの記号で表示します。このようにすることで、はずれ値の発見を容易に行うことができます。統計学では、調査・研究の対象とする集団を、母集団といいます。データを収集する場合、母集団を構成しているもの全部からデータを集める方法と、母集団の一部を抜き取って、データを集める方法があります。 母集団という用語は、「調査・研究の対象となる集団」という意味のほかに、「標本により処置をとろうとする集団」という意味もあります。標本とは、母集団から抜き取ったものの集まりです。たとえば、ある製品のデータを収集したとします。その目的が、製品を作り出している工程を改善するためであるとすると、処置の対象は、製造工程ですから、この製造工程が母集団になります。そして、データを収集した製品の集まりが標本になります。 母集団を構成している要素の数が、有限の場合を有限母集団と呼び、無限の場合を無限母集団と呼びます。 たとえば、箱詰めされたリンゴがあったとします。そのリンゴを出荷してよいかどうかを判定するために、箱から何個かのリンゴを抜き取って検査するような場合、母集団は箱全体のリンゴで、その数は有限個ですから、これは有限母集団です。 母集団から抜き取った一部の標本を調べることで、母集団全体の様子を探ろうとする方法を標本調査法といいます。標本は選ぶ人の意思や感情が入らないように抽出する必要があります。このためには、乱数やくじ引きを使うランダムサンプリング(無作為抽出)と呼ばれる方法を用います。

研究の対象となる集団(母集団)から、一部の個体(人や製品)を抜き取る行為をサンプリングと呼んでいます。サンプリングは、工場における抜取検査や顧客満足度調査などのアンケート調査において実施されます。 サンプリングは母集団を構成する人や製品をすべて調査できないときに、母集団から一部を抜き取る行為です。サンプリングの際に重要なことは、抜き取られた一部が全部を代表しているように選ぶことです。たとえば、小学生のお小遣いを調査しようという場合、すべての小学生を調べずに、一部の小学生をサンプリングしてデータを収集するのが一般的です。このとき、高学年の小学生ばかりを抜き取ってしまっては、抜き取られた小学生が、すべての小学生を代表しているとは言えません。そのような小学生から得られたお小遣いの結論は、低学年の小学生には適用できないでしょう。 母集団を代表するような人や製品を選ぶために、無作為に選ぶという方法が使われます。無作為に選ぶとは、選ばれる確率が等確率になるように選ぶということです。 実際の場面では、全体から無作為に選ぶことが効率的でない場合もあります。全国にいる小学生から無作為に 100人を選ぶよりも、東京都内にいる小学生を無作為に選ぶほうが容易な作業です。そこで、最初にどの都道府県を調べるかを無作為に選び、つぎに、選ばれた都道府県の中から無作為に小学生を選ぶといった方法も提案されています。このようなサンプリングを多段サンプリングと呼んでいます。母集団の平均値や分散、あるいは不適合品率などに関してある仮説を立て、母集団から抜き取った(とみなせる)標本のデータを使って、その仮説を統計的に検証していく方法を仮説検定といいます。 いま、ある製品の重量の設計値(ねらいの値)が、 50 gであったとします。実際には、工程で製造される製品の重量は、さまざまな原因によって、常に 50 gになるとは限りません。そこで、母集団(製品の重量という測定値の集まり)の平均値が、 50とみなせるかどうかを、データで確認します。このときに利用する手法が、仮説検定です。 仮説検定においては、最初に2つの仮説を立てます。 仮説 0「母平均は 50である」 仮説 1「母平均は 50ではない」 仮説 0のことを帰無仮説と呼び、 H 0という記号で表します。また、仮説 1のことを対立仮説と呼び、 H 1という記号で表します。上の2つの仮説を仮説検定の流儀で表現すると、つぎのようになります。 帰無仮説 H 0: μ = 50 対立仮説 H 1: μ ≠ 50 帰無仮説 H 0と対立仮説 H 1のうち、どちらの仮説を採択すべきか、データを使って判定する方法が仮説検定です。 仮説検定では、 H 0が成立しているのに、 H 0を棄却してしまう誤りを第一種の誤りと呼びます。第一種の誤りを犯す確率は自分たちで設定でき、その確率を有意水準と呼びます。母集団の分布を決めるような数値を母数と呼びます。これには、「母平均」や「母分散」などがあります。母集団から抜き取った(とみなせる)標本のデータを使って、母数の値を見積もる方法を統計的推定といいます。 母数の値は、有限母集団ならば、母集団に属するすべての対象を測定すれば知ることができます。しかし、一般的にはすべての対象を測定することはまれですし、無限母集団の場合にはそもそも不可能です。そこで、母集団から抜き取った標本のデータを使って、母数の値を推定することになります。 たとえば、ある製品の寸法を測定した標本データが 100個あるとします。そのデータから求めた平均値が 5 cmだった場合、この値はたまたま得られた標本の平均値であって、母平均の値ではありません。しかし、ランダムに標本を選べば、母平均の値も 5に近いと想像できます。こうした考え方で母数の値を推定する方法を「統計的推定」といいます。 統計的推定には、「母平均は 5ぐらいであろう」という結論の出し方と、「母平均は 3から 7の間に含まれるであろう」という結論の出し方があります。前者のように、母数の値を1つの値で推定する方法を点推定と呼び、後者のように区間で推定する方法を区間推定と呼びます。 区間推定を用いると、推定の確かさを、ある確率で保証することができます。この確率のことを信頼率と呼び、 90%、 95%、 99%といった確率がよく使われます。なお、信頼率を Q%にしたときの推定区間を Q%信頼区間と呼びます。

2つの変数の間に相関関係があるかどうかを、数値的に判断するには、相関係数と呼ばれる指標を利用します。相関係数と散布図を併用して、2つの変数間の相関関係を分析する方法を相関分析といいます。 いま、ある製品の硬度に問題が発生したとします。このとき、硬度に影響を与えているものとして、製品に投入する硬化剤の量が考えられたとすると、硬度と硬化剤の量の関係を分析する必要が出てきます。2つの変数(硬度と硬化剤)の間の関係を分析する手法として、相関分析があります。 相関分析は、「散布図の視察」という視覚的分析のステップと、「相関係数の吟味」という数値的分析のステップで構成されます。相関係数は、通常 rという記号で表され、 − 1から 1までの値をとります。 − 1 ≦ r ≦ 1 相関係数の符号は、正( +)のときには、正の相関関係があることを、負( −)のときには、負の相関関係があることを示唆しています。 相関関係の強さは、相関係数の絶対値 | r |または二乗値 r 2で評価します。どちらも 1に近いほど相関が強いことを意味します。相関関係が存在しないときには、相関係数の値は 0に近い値(ちょうど 0になることはまれです)を示します。 相関係数は、データ数との関係で吟味する必要があります。データの数が少ないときには、母集団の相関係数(母相関係数 ρ)が 0かどうかの仮説検定を行う必要があります。2つの変数の間に何らかの関係があるかどうかを判断するには、相関分析を利用すればよいのですが、多くの場合は、関係を具体的な式で示す必要にせまられます。このときに利用されるのが回帰分析と呼ばれる方法です。 相関分析で、2つの変数の間に相関関係があることがわかったならば、つぎは、具体的にどのような関係があるのかを知りたくなる場面があります。たとえば、ある製品の硬度 yと、製品中の硬化剤の量 xとの関係を、つぎのような一次式で表現することを考えます。 y = a + bx このとき、 aと bの具体的な値を知ることができれば、*硬化剤の量 xの値で、硬度 yの値を予測する*硬度 yを所望の値にするために、硬化剤の量 xをいくつにするか決定するといったことが、可能になります。このようなときに利用する方法が、回帰分析と呼ばれる方法です。 回帰分析では、最小二乗法という理論を使います。最小二乗法によって、 xと yのデータを使って、 aと bの値を推定することができます。なお、回帰分析によって求めた直線を回帰直線、式を回帰式と呼びます。 回帰分析には、2つの変数 xと yの間に、直線関係を想定する直線回帰(単回帰分析)と、曲線関係を想定する曲線回帰(多項式回帰)があります。また、1つの変数と複数の変数との関係式を求める重回帰分析と呼ばれる手法もあります。

2つの変数間の関係を調べるときに、変数がどちらも量的なときには散布図を作成します。しかし、どちらも質的なときには、分割表を作成して変数間の関係を分析します。分割表は、クロス集計表とも呼ばれます。 分割表とは、 n個のデータを、ある1つの属性に注目して分類し、その結果をさらに別の属性で分類したときに得られるデータの数を、属性同士を組み合わせた表に整理したものです。たとえば、 100個の購入製品があるとします。この 100個を、品質という属性で、 1級品、 2級品、 3級品の3つに分類したとします。さらに、3つの級ごとに製造会社という属性で、 A社、 B社、 C社、 D社の4つに分類すると、品質と製造会社の組み合わせは、 12通りできます。 100個の製品を、 12通りの中のどの組み合わせになるのか集計することをクロス集計と呼び、クロス集計の結果を示した表が分割表です。この例のように行の数が 3、列の数が 4の分割表を、 3 × 4分割表といいます。分割表のデータを視覚化するには、帯グラフやステレオグラムが適切です。 2 × 2分割表は、分割表の中で最も小さな表であり、「四分表」とも呼ばれています。品質管理では、行に良品数と不適合品数をとり、列に不適合品率を比較したい要素を2つ並べて、2つの不適合品率に差があるかどうかを調べるのによく使います。たとえば、 A工場と B工場で同じ製品を製造しているような場合に、2つの工場の不適合品率に違いがあるかどうかを分析するときに利用することができます。製品を検査するときに、製造した製品をすべて検査する方式を全数検査といいます。これに対し、すべての製品の中から一部を抜き取って、抜き取られたものだけを検査する方式を抜取検査といいます。 抜取検査は、破壊検査のように、全数検査が不可能なときや、検査に多大な費用と時間がかかるときに有効な検査方法です。 抜取検査では、ロットが合格か、不合格かを判定します。ロットというのは、同じ時期に同じ状態で製造された製品の集まりのことです。ロットから製品を何個か抜き取り、抜き取った製品について、品質の評価を行います。そして、この情報に基づき、ロットの合格・不合格を判定します。ロットから抜き取られた製品の集まりをサンプルといいます。サンプルの中の個々の製品を検査単位と呼びます。 抜取検査は、ロットの合否に用いるデータの種類によって、計数型と計量型に大別できます。計数型では、個々の製品が良品か不適合品かを判定したデータを利用します。計量型では、製品について何らかの特性を測定したデータを利用します。 抜取検査は、検査方式の設計思想によっても分類できます。売り手(生産者)と買い手(消費者)の両者を保護する立場で設計された検査を規準型、不合格と判定されたロットは全数の選別を行うように設計された検査を選別型といいます。また、品質レベルによって「きつい検査」「なみ検査」「ゆるい検査」を使い分ける検査方式を調整型といいます。品質の良いロットが抜取検査で不合格となる確率を生産者危険といい、品質の悪いロットが抜取検査で合格となる確率を消費者危険といいます。規準型抜取検査は、生産者危険と消費者危険の両方を一定の小さな値となるように実施する抜取検査です。 規準型抜取検査には、計数規準型抜取検査と計量規準型抜取検査があります。計数規準型抜取検査は、不適合品率で検査方式を決めるものです。できるだけ合格にさせたい良いロットの不適合品率を p 0、できるだけ不合格にさせたい悪いロットの不適合品率を p 1とします。不適合品率 p 0のロットが不合格になってしまう確率が生産者危険で、 αと表します。このとき、合格する確率は 1 − αとなります。一方、不適合品率 p 1のロットが合格してしまう確率が消費者危険で、 βと表します。計数規準型抜取検査では、通常、 αを 5%に、 βを 10%に設定して、検査方式を決定します。検査方式の決定というのは、製品を何個抜き取ってくるのか( nと表す)ということと、その中に何個の不適合品があったら、ロットを不合格とするのか( cと表す)というルールを決めることです。 nと cを決めるには、 JIS Z 9002という数表を使うと便利です。 nと cを決めたならば、検査特性曲線( OC曲線)と呼ばれるグラフを作成して、検査方式がねらいの αと βを満たしているかどうかを確認します。 計量抜取検査は、抜き取った製品の特性値を測定して、その平均値が規格外になっている割合にもとづいて、ロットの合否を決める検査で、 JIS Z 9003という数表が使われます。

品質基準を満たした製品を生産できる能力のことを工程能力といいます。工程能力は、質的能力を示すもので、生産手段を 100%に稼働させたときの生産量を示す生産能力とは異なります。 製品の特性(寸法や重量)には、通常、規格限界が決められています。たとえば製品の重量は、 200 gから 210 gの間でなければいけないといった許容範囲です。規格限界には、下側規格限界( SLと表す)と上側規格限界( SUと表す)があります。重量の例でいえば、 SLが 200 g、 SUが 210 gです。また、下側と上側の片側にだけ規格限界がある場合と、両側に規格限界がある場合があります。 製品の特性に規格限界が設定されていれば、品質基準を満たしているかどうかを、製品の測定値が、規格限界内であるかどうかで判定することができます。 規格限界内の製品を生産できる能力のことを工程能力といいます。工程能力を高めることは、品質管理の目標でもあります。工程能力を評価する指標が工程能力指数( PCI、または Cp、 Cpkと表す)です。工程が安定している場合、製品に関する測定データは、正規分布に従うのが一般的です。正規分布に従うデータは、全体の 99. 7%が、平均値から ± 3 ×標準偏差の範囲内に存在します。この範囲の幅は 6 ×標準偏差になっていて、この幅が、規格の幅( SU − SL;公差)に比べて大きいか小さいかを見ることで、工程能力を評価しようとするのが、工程能力指数です。データを収集する方法には調査と実験があります。実験計画法は、できるだけ少ない実験回数で、できるだけ多くの情報を取り出すための実験を計画する方法と、実験データを統計的に解析する方法を提供します。 実験計画法とは、以下の2つのことを体系的に整理した方法論です。 ①実験の計画方法 ②実験データの解析方法 実験を計画するときには、自分たちが興味を持っている仮説を検証できるような実験を行う必要があります。このためには、実験のときに変化させるもの、変化させずに固定するもの、変化してしまうものを明確にすることが大切です。実験のときに変化させるものを因子と呼びます。 因子を1つだけ取り上げる実験方法を一元配置実験、因子を2つ取り上げる実験方法を二元配置実験、3つ以上の因子を取り上げる実験方法を多元配置実験と呼んでいます。 実験によって得られたデータは、統計学的な観点から解析する必要があります。因子を変化させたことによる効果が、誤差程度のものなのか、本当に有効なものなのかを見分ける必要があるからです。この目的を達成するために用いられるデータの解析方法として、分散分析と呼ばれる手法があります。分散分析を用いると、実験データの変動を誤差による変動と、因子を変えたことによる変動に分解することが可能になります。

3種類以上のデータで構成されるデータの集まりを多変量データと呼んでいます。多変量解析は、多変量データを解析するための方法の総称です。工場における操業記録などを解析するときに役立つ方法です。 製造工場では、工程における熱処理温度、熱処理時間、原料の投入量など、多種類のデータを記録しているものです。これらのデータを個々に解析するのでなく、まとめて解析するための方法が多変量解析です。 工場で記録されたデータ間には、相関関係が認められることが多くあります。たとえば、熱処理温度が高いときには、熱処理時間は短いというような関係です。こうした相関関係を考慮しながら解析するためには、多変量解析を用いる必要があります。相関関係を考慮しなくてもよければ、データを個々に解析することで結論を導くことができます。 多変量解析の世界では、熱処理温度や熱処理時間などの数量データで構成される測定項目を量的変数と呼んでいます。一方、原料の種類や機械の種類、製造担当者の性別といった数量では表現することができないデータで構成される変数を質的変数と呼んでいます。質的変数を扱う多変量解析としては、数量化理論と呼ばれる手法があります。 多変量解析を用いることによって、測定項目間の関係を数式モデルで表すことも可能になります。また、複数の項目で評価された品質を総合して評価したいという場面でも活用することができます。 MTSはマハラノビス・タグチ・システム( Mahalanobis − Taguchi − System)の略称で、異常なデータが正常なデータから、どの程度離れているかを計測する方法です。正常なデータの定義は解析者が行うことになります。 MTSは、品質管理の分野では、適合品と不適合品の判別、医学の分野では健常者と疾患者の判別などに効力を発揮する手法です。 一般に MTSではマハラノビスの距離と呼ばれる数学的に計算する距離が活用されます。適合品と不適合品の判別を例にとると、最初に適合品に関する複数種のデータ(たとえば、寸法、重量など)を集めます。そしてデータの重心(平均値)を求めます。つぎに、この重心から各データがどれだけ離れているかをマハラノビスの距離で示します。適合品のデータならば、適合品の重心から離れていないはずです。一方、不適合品のデータの場合には、重心から離れているはずですから、マハラノビスの距離が大きくなるという理屈です。ここで、適合品のデータの集まりを単位空間と呼んでいます。単位空間として、不適合品のデータを用いることも可能です。ただし、単位空間はできるだけ均一なデータで構成されないと、この解析はうまくいきません。したがって、品質管理の場合には、適合品のデータで正常空間を作成するのが定石です。 MTS法は、適合品と不適合品の判別だけではなく、どのような要因が適合品と不適合品に分けるのか、すなわち、不適合の発生要因を探索するのにも有効な手法です。人間の五感(味覚、視覚、聴覚、嗅覚、触覚)を使い、製品を評価することを官能評価(または官能検査)と呼んでいます。官能評価は、新製品の企画や製品の検査工程で用いられます。官能評価による検査の方法を官能検査と呼んでいます。 官能評価は目的によって、つぎの 2種類に大別されます。 ①嗜好型 ②分析型(識別型) 嗜好型とは、好きか嫌いか、美味しいかまずいかを問うような評価です。消費者の好みを聞くような調査では、嗜好型評価が用いられます。 一方、分析型とは、辛いか甘いか、合格見本に合致しているかどうかを問うような評価です。製造された製品が適合品か不適合品かを決めるような検査において用いられます。 官能評価の分野では、評価する人のことをパネルと呼んでいます。パネルは一般の消費者と、評価を専門の仕事とする検査員に分けることができます。新製品を企画するような嗜好型評価のときには、パネルとして消費者を含めておく必要があります。 製品の検査で行う分析型評価では、識別能力のあるパネルが必要になります。識別能力とは、濃度 5%の食塩水と 10%の食塩水の味を区別することができる、濃度が高いのはどちらの食塩水かを当てることができるというような、異なるものを五感で区別できる能力のことです。官能評価を用いる検査では、検査員を養成するための教育が必要になります。

品質管理検定( QC検定)の 3級と 4級では次のような項目が問われます。 ■ 3級の主な内容・データの取り方とまとめ方・工程能力指数 ・QC七つ道具の見方、作り方、使い方・新 QC七つ道具の名称と目的 ・QC的ものの見方と考え方・管理と改善の進め方・品質の定義と分類・工程管理の方法 ・QCストーリー・検査の定義と種類・標準化の目的と意義 (注) 3級には 4級の試験範囲も含まれます ■ 4級の主な内容・品質管理の重要性 ・PDCAと SDCA ・QCストーリー・小集団活動・ムリ・ムダ・ムラの除去・重点指向・工程と異常・検査の定義と種類・適合と不適合・標準化の定義と標準の種類・事実に基づく判断 ・QC七つ道具の名称と目的・層別・職場の管理項目・ほうれんそう ・5 W 1 H・三現主義 ・5ゲン主義 ・5 S・マナーと安全 品質管理の仕事に従事している人は 2級以上を目指していただきたいと思います。 3級と 4級は、その前のステップ、入門レベルですから、新入社員や学生向きといえるでしょう。内田 治(うちだ・おさむ)静岡県伊東市生まれ。東京理科大学大学院修士課程修了。現在、東京情報大学総合情報学部総合情報学科准教授。東京農業大学兼任講師(主著)『すぐわかる EXCELによる品質管理』(東京図書、 1998)、『すぐに使える Rによる統計解析とグラフの活用』(東京図書、 2010)、『数量化理論とテキストマイニング』(日科技連出版社、 2010)、他多数ビジュアル品質管理の基本電子書籍データ作成日 2018年1月 10日 第 1版著者 内田 治発行者 金子 豊発行所 日本経済新聞出版社 東京都千代田区大手町 1‐ 3‐ 7 〒 100‐ 8066 電話( 03) 3270‐ 0251(代) http:// www. nikkeibook. com/《この電子書籍について》 ●おことわり この電子書籍は、 2016年7月 15日に印刷物として発行された『ビジュアル品質管理の基本』( 5版 1刷)を底本として制作しました。 この電子書籍では、技術上の制約により一部の漢字を簡易慣用字体やカタカナで表記している場合があります。 ご覧になる端末機器や、著作権などの制約上、写真や図表など底本の一部の項目をやむなく割愛していることがあります。また、端末機器の機種や搭載フォントの違いにより、表示に差が認められることがあります。 この電子書籍は、横書きでレイアウトしています。あらかじめご了承ください。 ●禁止事項 この電子書籍は著作権法などによって著作物として保護されています。著作権者または日本経済新聞出版社から許諾を得ずに利用できるのは、私的使用、引用など、著作権法上の例外規定の範囲に限られます。著作権者らの許諾を得ずに、複製、公衆送信、翻訳・翻案などを行うことは禁じられています。

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