第十章目の前の人のため、が共同体感覚なんですか?
[ドラさんの宿題]目先の共同体よりも、もっと大きな共同体を大切にする
ハッハッハッ。
吐く息がかすかに白い。
おでこと頬に当たる空気が冷たい。
二週間ぶりに走る皇居のお堀端は秋の気配がますます色濃くなっているようだ。
北の丸の銀杏はすっかり黄金色に変わり、路上に落ちて絨毯のように敷き詰められている。
ジョギングシューズで踏みしめるとカサカサと乾いた音がする。
さあ、早くジョギングを終わらせて、急いで会社へ行かなくちゃ。
今日は朝一番からプロジェクト会議がある。
遅れるわけにはいかないぞ。
あれから、プロジェクトはユウとボクの提案通り「残業」ではなく「業務」を減らす方向で進み、ムダな業務の洗い出しが着々と進んでいた。
営業、クリエイティブ、管理、それぞれに思いがけぬほどムダが見つかり、変革の実現はもうすぐそこまできていた。
しかし、それ以上に驚いたことがある。
それは、ボクがユウから学んだ話し方、すなわち①共感②提案が、プロジェクトメンバー全員の共通言語になっていったことだ。
誰が命令したわけでもないのに、みんなが自然とそうなっていった。
すると、不思議なものでドラさんがボクに課してくれた宿題までもがごく自然に達成されたのだ。
「自分とは異なる意見を攻撃と見なさない。
相手と異なる意見を言うことを恐れない」その目標がボク個人だけでなく、プロジェクト全体で達成されたのだ。
ボクはこんなにポジティブな空気を体験するのは初めてだった。
気がつけばプロジェクトは明るく、活発な雰囲気に満ちあふれ、大きな成果が得られるのは間違いないように思われた。
ボクはユウをますます尊敬するようになっていった。
同期入社で同じ年なのが嘘のようだ。
しかし、年齢なんて関係ない。
尊敬する相手から謙虚に学ぶんだ。
ボクはそう思うようになっていった。
その手始めとして、ボクはユウのデスクに置いてある本を片っ端から買って読むことにした。
そしてユウに頼んでお勧めの本をたくさん教えてもらった。
驚くべきことにユウもまた、ドラさんと同じくアドラー心理学の本をたくさん読んでいることがわかった。
そして、アドラー心理学の考え方をすべての骨格としたうえで、それに極めて近い考え方であり、かつ具体的な技術であるアサーティブネス、コーチング、クライアント中心カウンセリングなどを学んでいることがわかった。
ボクは空腹に耐えかねた犬が食事を貪るかのように、それらの本をガツガツと読んだ。
これまでボクはこの手の難しい本を読むのが大の苦手だった。
しかし、なぜか今回は違う。
驚くべきことに、ボクの頭に小難しそうな理論やカタカナがスルスルといとも簡単に入ってくるのだ。
「ドラさんのお陰だ!」ボクにはすぐにわかった。
これまでドラさんに直接教えてもらったこと、そして自分が体験したことがすべてそれらの本に書いてある。
頭に入るのは当たり前のことだった。
ボクは本を読む前に「既に」学んでいたのだ。
だから、すぅーっと体に入っていった。
ボクは改めてドラさんに対する感謝の気持ちでいっぱいになった。
本を読む。
わかる。
試してみる。
うまくいく。
また本を読む……。
それを繰り返しているうちに、ボクは仕事がどんどん楽しくなるのを感じていた。
いや、そればかりではない。
リカやハヤト先輩やプロジェクトの仲間たちとの人間関係までもが、滑らかになっていくのを実感した。
アドラー心理学ってすごい。
ユウってすごい。
ドラさんってすごい。
そして……。
ボクも、ちょっとだけすごい……かも。
いや、ボクだってすごいぞ。
ボクは自分を認めることを恥ずかしく思わなくなっていた。
これがドラさんが言うところの「自分への勇気づけ」なのだ、と改めて実感している。
そういえば、最近、気になることがある。
それは、ドラさんが会社を休みがちであることだ。
彼がアメリカから日本に戻って、もう一年になる。
これまでドラさんは一日たりとも会社を休んだことがなかった。
それが、この一ヶ月だけで既に三回も休んでいる。
しかも、今回は一週間も会社を休んでいる。
それだけではない。
理由が何だか曖昧なのだ。
「ちょっと実家でいろいろとあってね……。
しばらく福岡へ帰省してくるよ」そういえば、以前ドラさんが携帯電話で実家のお母さんらしき人と話しているのを聞いたことがあったっけ。
ドラさんはいつになく真剣な表情をしていたな。
たしか、お父さんは福岡で小さな町工場を経営していると言っていた。
そして妹さんが経理を手伝っているとも。
ドラさんは「田舎の典型的な町工場。
とても経営とは呼べない零細企業さ」と言っていたけど、もしかしたらご家族に何か起きているのかもしれない。
そんなことを考えていたら、リカに突然肩をハグされ、ボクは反射的にビクッとした。
「一課のエース、リョウく~ん!最近、数字が伸び悩んでいるじゃないのよ!あんたが売ってこないと、うちの課の数字も伸びないんだから頼みますよ!」「ほら。
ツヨシを見てよ。
まだ第三クォーターが半分も終わっていないのに早々とクォーター目標を達成して、ランキングトップを独走中よ。
リョウも早く追いつけ、追い越せ!頑張ってぇ~」リカがやたらとボクにタッチしてくる。
これはもしかしたら逆セクハラではないのか?もっとも、ボクは迷惑どころか大歓迎。
嬉しくて仕方がないけれど。
そうだ。
今度、リカを食事にでも誘ってみようかな。
もしかしたらうまくいくかな。
でも、断られたらどうしよう……。
最近は「課題の分離」が上手にできるようになってきたけれど、リカとの間ではどうもうまく活用できない。
そういえばアドラー心理学の本の中で、対人関係は「愛の課題」が最も難しい、と書いてあったな。
そして課題が難しいほど、その人のライフスタイル、つまりは性格や価値観が如実に表れる、と。
ということは……。
ボクはまだまだ「課題の分離」がうまくできていない、ということになる。
だって、リカをデートに誘って断られたらどうしよう……そんな風に「相手の課題」をずっと考えてしまっているんだもの。
「リョウ!売上、頼んだわよ!」そう叫んでリカは立ち去った。
そうだ。
デートの誘いの前に、まずは数字、数字、と。
よーし、どこから数字を組み立てようか。
やはり、ボクにとっての最大のクライアントであるロイヤル自動車から大きなキャンペーンを受注するのが一番の近道であろう。
ボクは、セコ課長からもらっていた宿題に取りかかることにした。
セコ課長からもらったオーダーは、同社の主力車種、高級車ゴールデンの燃費の良さを訴える広告キャンペーンを考えてくれ、というものだった。
今や、燃費は軽自動車や小型車だけの課題ではなくなっている。
欧米のセレブがこぞってハイブリッド・カーを好むように、燃費が良い車に乗るということは、今やステイタスにもなっているのだ。
それはガソリン代を節約する、という低次元のレベルではない。
燃費の良い車に乗るということは、その車の保有者が地球に優しいエコなライフスタイルを送っていることを表している。
だから、お金に不自由しないセレブまでもが、こぞって燃費を気にするようになったわけだ。
当然ながら、ロイヤル自動車の高級車種ゴールデンにもそれは波及している。
同社も必死になってエンジンやボディーを改良し、燃費を下げているのだ。
しかし……。
ボクは思った。
広告業界の間では、ロイヤル自動車の燃費データがどうも怪しい、という噂が駆け巡っている。
どうやら同社エンジニア部門の幹部がついマスコミ相手にポロッと漏らしてしまったらしい。
「経営からの強い圧力で燃費データをねつ造してしまった」と。
もしも、それが事実であれば、これは広告業界のみならず、日本いや世界を揺るがす大問題となるだろう。
もちろん、それに関連する広告キャンペーンを展開した広告代理店もつるしあげられるだろう。
いや、それより何より、ねつ造したデータを信じて車を買う数万人の消費者が一番の迷惑を被ることになる。
しかし……。
あくまでもこれは噂の域を出ていない。
不確かな情報を元に、せっかくの広告キャンペーン依頼を断ることはできない。
ましてや今、ボクは喉から手が出るほどに受注が欲しい。
ここは、くだらない正義感などを持ち出さずに、ドカンと広告を受注してしまえばいいのではなかろうか。
それこそがボクの利益であり、我が一課の、ひいては我が社全体の利益にもつながるのではなかろうか。
そういえば、ドラさんからの教えで「共同体感覚」が大切だ、というものがあったな。
「自分のことと同じように相手のことを大切にすること」それが共同体感覚だと学んだ。
ボク個人だけでなく、一課や会社全体の利益を考える、ということはまさに「共同体感覚」そのものだ。
であれば、この営業は進めるべきだろう。
ただ、ボクは何か釈然としないものを感じていた。
アドラー心理学が、そのような近視眼的なことを勧めるだろうか?これまで、ボクに対して常に正しい道を示す羅針盤であったアドラー心理学。
それが、不正まがいのキャンペーンを推し進めることになるのが、どうも腑に落ちなかった。
そもそも、共同体感覚って何だろう?そうだ。
ドラさんに聞いてみよう。
待てよ、ボクは思い出した。
ドラさんは今、福岡に帰省中だ。
こんなときに限って休みだなんて……。
もしもドラさんがこの場にいたとしたら、確実にボクは相談していたことだろう。
しかし、ドラさんだって実家で大変な思いをしているに違いない。
今、電話をかけて余計な心配を増やしたくない。
では、いったい、どうすればいいんだろう。
そうだ!ロイヤル自動車の件であることは内緒にして、ユウにそれとなく聞いてみよう。
ヒントがもらえるかもしれない。
ボクは目の前を通り過ぎようとしているユウを呼び止めた。
「ユウ!ちょっと教えてほしいことがあるんだ」ユウは、ニッコリ笑うと、いいよ、と気安い調子で答え、打合せスペースに腰掛けてくれた。
「あのさぁ。
共同体感覚ってあるだろ。
あれ、例えば目の前の人が不正を犯しているのを見つけたとしようか。
自分よりも相手のことを思いやって、それを内緒にしておくほうが共同体感覚に沿っているんだろうか?それとも、それをやめさせるほうが共同体感覚に近いんだろうか?ねぇ、どっちだと思う?」ユウは意外な質問に驚いたのか、一瞬、無言になった後に、ゆっくりと口を開いた。
「リョウの身に、いったい何があったのかはわからないけど。
アドラーはこう言っているよ。
『相反する社会要求の複雑な問題に対しては、永遠の視点から見るように。
そうすれば、抗しがたい要求、恐れからくる誤った物の見方、不安やゆがんだ目的から離れて社会生活の基本的なルールを考えることができる』とね」「例えば、目の前の人の利益を優先するのではなく、学校や会社全体を。
また、学校や会社の利益を守ることよりも、さらに大きな共同体として社会全般や国全体の利益を。
そして国よりも世界や宇宙全体の利益を。
そう考えれば判断を間違わない。
リョウも読んだ本じゃないか。
もう一度読み返してみたらどうだい?」なるほど。
たしかに、ルドルフ・ドライカースの『アドラー心理学の基礎』にそんな一節があったような気がするぞ。
と、いうことは……。
なるほど。
よし、わかったぞ!ボクはユウに急いで礼を言うと、もう一度、ロイヤル自動車からもらったオリエンテーションの資料を読み込むことにした。
ボクは、勇気を振り絞ってロイヤル自動車のセコさんに電話をかけることにした。
受話器を持つ右手が汗でしっとり湿っている。
ボクは一時間前に、我が社のメディア購買担当部門の部長に確認して「ロイヤル自動車の燃費データ不正改造事件」が近々スクープ雑誌に掲載される予定である、との情報を得てあった。
であれば、余計に当社としては関与してはならない案件ということになるだろう。
トゥルルルル。
呼び出し音が鳴る。
相手が受話器を取り、いつものセコ課長の声が、ハイ、と答えた。
ボクは背筋を伸ばしたまま、直立不動の姿勢で電話に向かって話し始めた。
受話器を通してセコさんの怒鳴り声がする。
ボクは受話器を耳から離し気味にしながらセコさんからの罵詈雑言を受け止め続けた。
ボクはロイヤル自動車からの大型受注を得ることができず、売上に大きな穴をあけてしまった。
それだけではない。
既に受注をもらっていたキャンペーンまでもがキャンセルされてしまい、大きなビハインドを背負ってしまったのだ。
その後、ロイヤル自動車の不正燃費データ改造事件はマスコミに発表され、同社は大きく信頼を失墜してしまうことになった。
我が社が広告のお手伝いをこちらから断ったことで、車を買う予定だったユーザーに迷惑をかけることはなかった。
目の前のロイヤル自動車の利益よりも、より広い社会全体の利益を優先した。
アドラーが言うところの「永遠の視点」を優先したわけだ。
しかし、ものごとはそんなにスッキリと片付くわけではない。
我が社が断ったキャンペーンという油揚げをライバルの広告代理店博識社というトンビがかっさらっていったのだ。
彼らはロイヤル自動車の大型広告を次々と展開した。
さぞや莫大な売上を獲得したことだろう。
もちろん、その後にそのキャンペーンは世間から糾弾されたわけだが、博識社がつるしあげられることはなかった。
あくまでもロイヤル自動車だけが叩かれた。
どうやら世間は博識社を犯罪者ではなく被害者として捉えたようだ。
「未必の故意」とは取らなかった。
我が社のライバル博識社は巨大な売上を手にしつつ、消費者からの信頼は失わずに「うまいことやった」のだ。
ボクは思った。
アドラー心理学の教えに基づくボクの判断は正しかったのだろうか。
もしかしたら、あのまま知らん顔をして売上をあげたほうが良かったんじゃなかろうか。
しかし、ドラさんは言ってくれた。
「リョウ君。
キミの判断は正しいよ。
売上があがらなくても良かったじゃないか。
キミは、キミの良心に嘘をつかなかったのだからね」ボクにとってはその言葉だけが救いだった。
なぜならば、ロイヤル自動車の売上が大きくマイナスとなった結果、第三クォーターのボクは目標未達成のままクリスマスを迎えることとなったからだ。
年末の最終日まであと四営業日しかない。
もしも、ボクが未達成で終われば、営業一課全体も未達成になるのは確実だ。
ボクは複雑な思いだった。
クリスマス間近ともなると、外はかなり北風が冷たいけれど、社内は暖房でポカポカと暖かい。
「リョウ君。
ちょっといいかな。
会議室で話そう」ドラさんがボクを呼んだ。
ロイヤル自動車の件に違いない。
ドラさん得意のスリーピースも社内では暑すぎるのだろう。
ドラさんはジャケットを脱いでベストとワイシャツでやってきた。
そして、いつものように胸ポケットにずらりと並んだボールペンの一本を抜き取って、クルクルと回しながらボクに話しかけてきた。
「実はね……ボクの実家の話なんだけれどもね……」期末間際の営業的に緊迫した状況だから、てっきりロイヤル自動車の件だと思い込んでいたボクは、ふいをつかれてうろたえた。
えっ!ドラさんの実家で何かあったんですか……。
「あぁ。
うちの親父が小さな町工場をやっているのは知っているよね。
うん。
実はね。
親父は肺がんで、あと余命一ヶ月、持つかどうかわからないんだ。
それでね。
お袋がね。
ボクに『福岡へ帰ってきてくれ』とね。
そればっかりを繰り返して……」「いや、たしかに同じことをもう十年前からずっと言われ続けて、ボクはずっと断っていたんだけれどね。
ただ、今度ばかりは親父がこんなことになっちゃって。
お袋もすっかりやせ細って、妹も気弱になっちゃって」「だからね。
リョウ君。
ボクは、この会社を辞めて、実家の町工場を継ぐことに決めたんだ。
もう、人事には伝えて了解をもらってある。
リョウ君。
これがキミに伝えたかったことだ。
ボクのわがままを許してくれないか」えっ?ドラさんが退職?いったい……何を突然言い出すんだ?そんなバカな……そんなこと、あり得ない!あり得ていいわけがない!ボクは頭の中が混乱して言葉が出てこなかった。
しばらくして、ボクがかろうじて絞り出した言葉は、「そんな……自分勝手な……」というものだった。
そして、言葉にしてから、ハッと気がついた。
本当にドラさんは自分勝手なんだろうか。
ボクの頭の中に想像上の年老いたおばあさんが浮かんできた。
とてもさびしそうで所在なさそうな表情をしている。
寝たきりのおじいさんもいる。
その二人の手を握り励ますドラさん。
不安そうに町工場の従業員たちがそれを見守っている。
そうか。
わかったぞ。
ドラさんは自分勝手なんかじゃない。
自分勝手なのはボクのほうだ。
ドラさんを失いたくなくて、頼りにしたくて、退職に反対するボクのほうこそが自分勝手だ、とわかったのだ。
そして思った。
ドラさんほどの才能であれば、サラリーマンよりも経営者になるほうがいいに違いない、と。
ウチの会社という小さな共同体にとって、ドラさんを失うことは痛手だけど、日本という大きな共同体のためにはそっちのほうがいいかもしれない。
それこそが「永遠の視点」なのかもしれない。
ボクの小さな痛みよりもそっちのほうが、きっと大切だ。
無表情でじっと会議室の白い壁を見つめているドラさんに向かってボクは言った。
「ドラさん、申し訳ありません。
暴言を吐いてしまいました。
ドラさん。
ぜひご両親と従業員さんを大切にして下さい。
ご自身のご決断を大切にして下さい。
心配は不要です。
後は任せて下さい。
ドラさんから教えてもらったことを活かして、必ずや立派なチームをつくりあげます。
ボクたちを信じて下さい」そう熱く語っていたのだ。
ドラさんはじっと白い壁を見つめたままだ。
そして、ゆっくり目をまばたかせてから決意を振り絞るようにかすれ声を発した。
「リョウ君……ありがとう……」そしてボクの手を取り、ギュッと握りしめた。
「リョウ君。
もうキミに伝えることはあとわずかしかない。
ただ、だからこそ、残りわずかな宿題をキミに出そうと思う。
今回の宿題はもうわかっているね。
『目の前よりも大きな共同体にとっての利益を優先する』これがキミの宿題だ」「しかし、今回のロイヤル自動車の件で、キミは既にこの宿題をなし遂げた。
しかも、ボクが福岡に帰省して、いないときに、自分一人の判断でそれをやり遂げたんだ。
ボクはキミを誇りに思うよ。
いいかい。
この判断基準をずっと忘れずにいてくれたまえ。
頼むよ」そう言って、ボクを抱き寄せた。
ドラさんはとても座高が低いので一瞬、ボクがドラさんを抱っこする母親になったかのような気分がした。
しかし、抱きしめられドラさんの温もりを感じると、逆にボクが子どもだった頃の気分を思い出した。
母に抱かれた記憶が鼻の奥にツンとよみがえってきた。
温かな感情があふれてきた。
[ドラさんの宿題]目先の共同体よりも、もっと大きな共同体を大切にする
[コラム]より大きな共同体の利益を優先する企業や学校、地域社会などの組織に所属して目標達成を追求していると「果たして組織の判断は正しいのだろうか?」と疑わしく思うことがあるでしょう。
また、何らかの理由で転職を決断し、現在の会社を退職するときに「自分のわがままで現在の会社に迷惑をかけてしまう。
自分の判断は正しいのだろうか?」と悩むこともあるでしょう。
そんなときこそ、本章の教え「より大きな共同体の利益を優先する」が役に立つでしょう。
もしも自分が所属する組織にとって利益となるけれど、より大きな社会全般にとって迷惑をかけてしまうのだとすれば、後者を優先した判断をすることが幸福な人生を歩むことにつながるでしょう。
同様に、転職することでお世話になった会社に迷惑をかけてしまうとしても、次の会社で現在以上に能力を発揮し、社会の役に立つのであれば、そちらを優先することこそが良い判断になるでしょう。
しかし、それですべてがバラ色の結末になるとは限りません。
本章でリョウ君は「より大きな共同体を優先する」ことに一旦納得した後で、しかし、現在の職場に迷惑をかける様を目の当たりにして迷いが生じています。
今後、彼に対して組織から何らかのおとがめがあるかもしれません。
アドラー心理学では、自分が下した判断に対して責任を取ることが求められます。
果たして、リョウ君はどのように対応していくのでしょうか。
コメント