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第十章 契約書の基礎知識

目次

第十章 契約書の基礎知識

  • 1.契約書とは?
  • (1)契約書はあれば良いのか?
  • (2)良い契約書とは?
  • 2.契約書式の戦い
  • 3.契約書式の戦いに対する救護策
  • (1)ユニドロワ原則
  • (2)裏面約款
  • (3)定型書式提供側に不利とならないための防御策
  • 4.買手有利のウィーン売買条約
  • (1)瑕疵担保責任の期間は最長2年間
  • (2)瑕疵による代金の減額
  • (3)支払義務の発生
  • (4)契約違反に対する予防的救済手段
  • 5.英米法書式と非英米法の契約書
  • 6.契約書の種類
  • (1)売買契約書
  • (2)その他の契約書
  • 7.売買契約のビジネス条項
  • (1)商品名(CommodityName)
  • (2)品質・規格(Quality&)
  • (3)数量(Quantity)
  • (4)単価と定型取引条件(UnitPriceandTradeterms)
  • (5)支払条件(Payment)
  • (6)包装(Packing)
  • (7)船積時期(TimeofShipment)
  • (8)船積港・荷揚港(PortofLoading・PortofDischarging)
  • (9)引渡地と仕向地(PlaceofDelivery&n)
  • (10)積み替えと分割船積(Transshipment&PartialShipment)
  • (11)買主が必要とする船積書類(Buyer’sRequiredDocuments)
  • (12)シッピングマーク(荷印)(ShippingMark)
  • (13)最終条件(Final)
  • 8.売買契約の一般条項(GeneralTerms&Conditions)
  • (1)個別契約書(IndividualContract)
  • (2)増加費用(IncreasedCost)
  • (3)検査と品質保証(Inspection&Warranty)
  • (4)インコタームズ(Incoterms)
  • (5)銀行費用(BankingCharges)
  • (6)製造物責任(Productliability:P/L)
  • (7)支払遅延損害金(LatePaymentInterest)
  • (8)相殺禁止(Offsetting)
  • (9)知的財産権(IntellectualPropertyRights)
  • (10)譲渡禁止(Assignment)
  • (11)不可抗力(ForceMajeure)
  • (12)完全合意(EntireAgreement)
  • (13)準拠法(GoverningLaw)
  • (14)紛争処理(DisputeSettlement)
  • (15)違約賠償(LiquidatedDamages)
  • (16)守秘義務(Confidentiality)
  • (17)通知(Notice)
  • (18)契約解除(Termination)
  • (19)期限の利益逸失(Acceleration)
  • (20)契約言語(Language)
  • (21)契約発効と自動更新(Effectuation&AutomaticalExtension)
  • (22)存続条項(Survival)
  • 9.販売店契約書(DistributorshipAgreement)と代理店契約書(AgencyAgreement)
  • (1)販売店と代理店の違い
  • (2)販売店契約と代理店契約のどちらが良いか
  • (3)販売権・代理権の種類
  • (4)独占権の要求
  • (5)権利に見合う義務の賦課
  • (6)販売店契約に必要な条項

第十章 契約書の基礎知識

貿易では、契約面からも、リスクを最小限に抑える必要があります。

そのために、売主に有利な契約条項とはどういう内容なのか、買主に有利な契約条項とはどのような内容なのか、あるいは売主と買主の双方に、対等あるいは相互主義的な内容の契約条項とはどういうものかを知っておけば、商談を有利に進めることができます。

国内取引では、契約書を交わさないで取引することが商慣習になっている業界もありますが、貿易では契約書を作らない商慣習になっている業種はありません。

貿易では、契約書を作成してそれに当事者が署名することが、「貿易の商慣習」です。

「商談」とは、契約条項を詰めていく過程のことです。

契約条件を詰め切った段階で、合意事項を確認するために、契約書を作るのは「貿易の基本」の一つです。

1.契約書とは?貿易商談では、「貿易の商慣習」に従って、オファー、ビッドのやり取りを経て、売主か買主のどちらかが、相手が提示した一括条件であるオファーまたはビッドをアクセプトして、その回答が相手方に届いた瞬間に、契約が成立します。

契約が成立すれば、契約書の有無に関わらず、契約は有効に存在することになります。

しかし、問題は、当事者間で契約を巡って紛争が発生した時、「商談で合意した」、「合意していない」の議論をしたところで、水かけ論に終わるでしょう。

契約書を作っていなければ、契約の内容を証明するものは、何もありません。

紛争が起きても、解決する拠り所がないことになります。

(1)契約書はあれば良いのか?「契約書は、特別に定義された言葉が必要だから難しいもの」という心理的な抵抗感からか、「契約書があれば良い」と考える人が少なくありません。

「英文の契約書の雛形が欲しい」という相談者は少なくないのですが、「英文契約書雛形の各条項の意味はお分かりでしょうか?」と質問すると、多くの人が「いいえ! 契約書があれば良いのです」と答えます。

契約書の雛型をそのまま使えば良いと考えているのでしょう。

しかし、取引の実態は、契約書の雛形より柔軟性に富んだものが多いので、ほとんどの場合、契約書の雛形のままでは、取引の実態を反映した内容になりません。

取引の実態を反映しない契約書は、好ましくありません。

雛形をベースとして、契約書の内容を商売の実態に即した形に手直しする、知識と能力を身につける必要があります。

そのためには、いきなり英文契約書の雛形を求めるのでなく、日本語で契約書の各条項の意味を、しっかりと理解しておくことが基本になります。

本章では、国際契約書に盛り込まれる契約条項について、「日本語」でその意味や重要度などを解説し、売主に有利な条項、買主に有利な条項、売主と買主の双方に対等あるいは相互主義的な内容の条項がある場合は、それらについての解説と例文も呈示しています。

これらを理解することで、英文契約書の雛形を見ても、各条項の意味が理解しやすくなるだけでなく、商談を有利に行うことができるようになります。

日本語で理解できていないものが、英語で理解できるはずがありません。

また、取引相手が出してくる契約書は、相手方に有利な、つまりこちらに不利な契約書の内容になっています。

この場合でも、自らに有利・不利、あるいは双方に対等か相互主義的な条項の表現の仕方を知っていれば、各条項に対して、修正意見を相手方に示して、交渉することができます。

これができなければ、相手が提示する契約書にそのまま署名して、不利な取引を強いられることになってしまいます。

ちなみに、「契約書は、特別に定義された言葉が必要だから難しいもの」ではありません。

契約当事者同士の理解に、齟齬の生じることのない文言を使った契約書であれば、立派な契約書です。

特別な言葉や難しい言葉を使った「立派な」契約書でも、契約当事者同士が、異なった解釈ができる契約書であれば、「良い契約書」とは言えません。

(2)良い契約書とは?大企業の場合は、紛争が起きても、体力がありますから、裁判でも商事仲裁でも、戦う方法はあります。

大企業が目指す契約書は、「戦って勝てる契約書」です。

しかし、紛争が起きても十分に戦う体力のない企業は、契約違反をしないような取引相手を選んで、契約違反しにくい契約書、相手が訴えを起こしにくい契約書、問題が起きても話し合いで解決するしかない契約書を目指すべきです。

つまり、「良い契約書」とは、「戦わない契約書」なのです。

①契約を守ってくれる取引相手選び相手が、契約違反ばかりするので、「契約は、守るのが当たり前ではないか!」と息巻く人がいます。

しかし、国際間の取引、特に新興国との取引では、契約が守られないことが起きるのも現実です。

現実を直視すれば、「契約は守られないことがある」という前提で契約すべきです。

この前提で考えると、契約書は、相手が契約を守らざるを得なくなるような、いささかの曖昧さも残さない、きっちりとした内容でなければなりません。

先進国との取引は別ですが、新興国とのビジネスで、相手が必ず契約を守ってくれるのであれば、これほど楽な商売はありません。

「契約は契約だ!」の考えは正しいのですが、一歩、日本の外に出れば、それは日本の常識に過ぎません。

契約を守らないつもりで、契約する人などいないと思われるかもしれません。

しかし、新興国では、「とりあえず契約をしておいて、有利な環境であれば契約を守ろう。

不利な状況になれば、契約は履行しない!」と考える人が少なくないのです。

明治大正期、当時のヨーロッパの古い記録文書の中に、「日本人は契約を守らないから気をつけるべし」という記述があるそうです。

1950~60年代、われわれの先輩たちが、「韓国、台湾は、契約を守らないから気をつけろ!」と言っていたことが記憶にあります。

今では、「韓国、台湾は、契約を守らないから気をつけろ!」という人はほとんどいません。

企業は、資産を蓄積して余裕が出てくれば、契約を守るようになります。

新しい取引先候補に対して、資産状況を調査したり、信用調書を取り寄せたりして、その企業に対する販売与信枠を設定します。

つまり、与信枠の大小を設定する重要な判断材料は、相手企業の資産の多寡であることを、国内ビジネスであれば、誰でも知っています。

これは、海外ビジネスでも同じです。

契約違反をしない取引相手選びの基本は、相手企業に十分な資産があるか否かを調べて、取引先を選別することです。

②契約違反しにくい契約書作り契約交渉で、遠慮なく、徹底して、お互いに議論を戦わせることが肝要です。

契約書に署名してから口論になる契約書は、最悪です。

いささかの曖昧さをも残さないようにすることが大切です。

「不良品については、双方協議のうえ解決する」という文言を契約書に書いても、何の意味もありません。

「双方協議のうえ解決する」とは、「解決方法は決めていない」と書いてあるのと同じです。

肝心なことは、不良品が出たら、具体的にどうするかを契約書の中で決めておくことです。

契約書作りでは、契約履行の過程で起こり得ることを想定し、それが起きた場合は、具体的にどのように解決するかを決めます。

お互いに、自らの主張に近い解釈ができるように、玉虫色の表現で妥協してはなりません。

十中八九、玉虫色にしたその部分で、揉め事が起きるものです。

国内取引の契約書で良く見られる「双方協議のうえ、解決する」は、国際契約書では、意味をなさないことを心に銘記しておきましょう。

③相手が訴えにくい契約書作り紛争を解決する最善の方法は、当事者同士が話し合いで解決することです。

裁判をしたり、商事仲裁をしたりすれば、弁護士などの第三者に支払う多額のカネが必要です。

話し合いで解決すれば、第三者への支払はゼロですから、裁判や仲裁に必要な第三者に払うカネの、何分の一で済むと考えれば、話し合いの結果、お互いに「痛み分け」で解決できるではありませんか。

「話し合い」、これが最も出費が少なくて、かつそのつもりであれば、最短の時間で解決を見ることができる最善の策です。

しかも、裁判や商事仲裁で戦えば、取引相手とは「戦闘モード」になりますから、それ以降の取引関係は切れてしまうでしょう。

「話し合い」で円満解決すれば、お互いの信頼関係が、従前にも増して強固になることさえあります。

契約書には、紛争処理条項と呼ばれる条項を入れますが、あくまでも、「戦う」ための条項ではなく、「戦わない」ための条項としての趣旨を、商談の際に相手に説明することです。

詳しくは、本章の「8.売買契約の一般条項(GeneralTerms&Conditions)」の「(14)紛争処理(DisputeSettlement)」で、詳しく説明します。

2.契約書式の戦い貿易には、「契約書式の戦い」(BattleofContractFormat)があります。

それは、契約書式を用意した側が、有利な条件で契約できるという「先手必勝」を意味する言葉です。

契約書式をあらかじめ作っておいて、主要条件の交渉が妥結すると同時に、自社の契約書式を相手方に提示して、署名を求めます。

契約書式は、通常、自社の権利はできるだけ多く、義務はできるだけ少なく、相手方の権利はできるだけ少なく、義務はできるだけ多い内容で作成するものです。

相手方は、契約書式を提示されると、契約書の各条項を理解できる人であれば、自社に不利な条項が数多く記載されているので、修正を要求するでしょう。

しかし、たいていの場合、主要条件の交渉で、お互いに粘りに粘って商談するため、売主が納期どおりに貨物を出荷して、買主が貨物を必要な期限までに輸入するだけの、余裕ある時間はそれほど残っていないものです。

契約書式をベースに、各条項の修正交渉をしても、最終的には時間切れになり、契約書式を提示された側は、満足のいく修正ができないまま、署名せざるを得なくなるのが「落ち」です。

結局、契約書式を出した側に有利な契約内容で契約が成立する、これが、先手必勝の「契約書式の戦い」です。

契約書の重要性を認識していないと、相手が提示してきた契約書を十分チェックしないで、そのまま署名してしまい、後で不利な状況に追い込まれてしまうことがあります。

商談に臨む前に、あらかじめ自社の契約書式を作っておくことが肝要ですが、仮に相手方が作った契約書式を提示しても、契約書の各条項の意味を理解し、売主に有利な書き方、買主に有利な書き方、対等あるいは相互主義の書き方を知っていれば、即座に対案を提示して、不利な条項を是正させることができます。

こうした知識がなければ、相手の出してきた契約書式に、そのまま署名するしかありません。

貿易の営業マンとして、契約書に関する知識と能力は必須です。

3.契約書式の戦いに対する救護策「契約書式の戦い」では、契約書式を用意した側が有利に契約できることが多いことから、ユニドロワ原則には、この弊害を緩和する考え方が明記されています。

(1)ユニドロワ原則日本の法務省を含む政府機関によって構成される「国際私法統一協会」(TheInternationalInstitutefortheUnificationofPrivateLaw:ユニドロワ)は、特定の国の法的伝統や政治経済状況に拘束されることなく、国際取引に適用される、均衡のとれた準則の確立を目的として、「ユニドロワ原則」(UPICC)を制定しています。

ユニドロワ原則とは、「国際商事契約原則」(UNIDROITPrinciplesofInternationalCommercialContracts:通称「ユニドロワ原則」:略称UPICC)のことです。

ユニドロワ原則の最新版は「ユニドロワ原則2010」です。

ユニドロワ原則(UPICC)では、定型約款を提示されて、その中身も良く読まないで契約してしまい、後日、契約書の文言をめぐって意見が対立した場合、「定型約款のうち、相手方が合理的に予期しえなかった性質の条項は効力を持たない」としています。

また、契約当事者双方が、お互いに自社の定型書式を提示してそれらに署名した場合を想定して、「当事者双方が、定型条項を使用し、これらの定型条項以外について合意した時は、契約はその合意された内容および定型条項のうち、内容的に共通する条項に基づいて締結されたものとする」としています。

商談が妥結して、相手側が先に契約書式を出してきた場合、自社の契約書式をベースに、契約の細部を詰めるように提案します。

相手方の契約書式をベースに細部を詰める場合、自社に不利な契約条項は、修正を求めるようにします。

あるいは、ユニドロワ原則に従って、売主が出した契約書式と買主が出してきた契約書式の両方にお互いが署名し、両契約書の記載内容が同一の条項だけを発効させるという方法もありますし、一般条項の交渉で、お互いに妥結できないのであれば、契約を見送る選択肢もあります。

契約条件は、売主と買主のビジネスでの力関係が大きく左右しますから、こちら側の力関係が相手よりも強いのであれば、強気に出ても問題ないでしょう。

ちなみに、中国は、国内法である「契約法」で、契約の解釈をめぐって意見が対立した際は、定型書式を用意した側に不利な裁定をすると明記しています。

これは、ユニドロワ原則の考え方を、国内法に反映したものです。

(2)裏面約款契約書の表側に契約の主要条件を、書き込むようにしてあって、その裏面に、一般条項を小さな文字で印刷してある契約書があります。

契約書の裏面に印刷してある契約条項を「裏面約款」と言います。

これも定型書式の一種です。

裏面約款付きの契約書の表側を「タイプ条項」、裏面約款を「印刷条項」と呼ぶこともあります。

(3)定型書式提供側に不利とならないための防御策紛争になった時に、契約書式を提示した側に不利な判断をされないようにするには、定型書式のまま、あるいは裏面約款のまま、修正なしで署名するのでなく、相手方に「修正しなくて良いか」と注意を喚起し、一ヵ所だけでも良いの

で、必ず手書きで修正し、その修正箇所に双方が署名するようにします。

こうすれば、一方的に契約書式を相手方に押しつけて契約したのではなく、相手方が契約の隅々まで吟味し、納得したうえで署名したという証左になります。

これによって、「定型約款のうち、相手方が合理的に予期しえなかった性質の条項は効力を持たない」というユニドロワ原則の前提条件を否定する論拠になることが期待されます。

4.買手有利のウィーン売買条約貿易環境を形作るものに、「国際物品売買契約に関わる国際連合条約」(通称、ウィーン売買条約、UnitedNationsConventiononContractsfortheInternationalSaleofGoods:CISG)」があります。

この条約には、申し込みと契約の成立、当事者の権利義務、危険の移転と契約違反に対する救済などの内容が盛り込まれています。

日本は、2008年の国会でこの条約を承認し、2009年8月1日から、この条約を発効させました。

締約国には欧米諸国が多く、アジアでは、中国、韓国、シンガポール、日本、モンゴル程度に留まっています。

ウィーン売買条約は、締約国の企業同士が締結した契約書であれば、条約が自動的に適用されます。

しかも、全体としてこの条約は、「売主不利」、「買主有利」の内容になっています。

ただし、ウィーン売買条約は、全条項が任意規定なので、契約書に条約と異なる記述があれば、その部分については、個別契約が優先適用となります。

欧米向けの輸出が多い日本の大企業の多くは、契約書で「国際物品売買契約に適用される国際連合条約の適用を全面排除する」としています。

これを「オプトアウト(適用除外)」といいます。

ウィーン売買条約の適用をすべて排除することも、あるいは一部だけ排除することも可能です。

なお、ウィーン売買条約は、物品の売買だけに適用されるもので、サービス貿易には適用されません。

(1)瑕疵担保責任の期間は最長2年間ウィーン売買条約は、「買主が、合理的な期間内に不適合の性質を特定した通知を売主に行わなければ、物品の不適合を援用する権利を失う。

ただし、物品交付の日から最長で2年以内」としています。

瑕疵担保責任の期間が、物品の引渡から最長2年間となっているので、2年間もの間、品質保証をすべきでない商品であれば、契約書で、適切な期間の瑕疵担保期間を決めておかなければなりません。

契約書を交わさないで取引していると、2年間の瑕疵担保責任を負うリスクに晒されているかもしれません。

(2)瑕疵による代金の減額条約では、「物品が契約に適合しない場合、代金がすでに支払われたか否かを問わず、買主は、代金を減額できる」としています。

これでは、買主が勝手に商品代金を減額することができてしまい、売主に不利です。

(3)支払義務の発生条約では、「当事者が別段の合意をしない限り、買主は、物品を検査する機会を有する時まで、代金支払の義務を負わない」としています。

当事者は、通常であれば契約で「別段の合意」をしますから、問題はないとしても、契約書さえ作らないで取引していれば、「別段の合意」があることを証明できません。

その場合、買主が物品を検査するまで、代金を払わなくても良いことになってしまいます。

(4)契約違反に対する予防的救済手段

条約は、「相手の契約違反が予想される場合、自己の義務履行を停止することができ、場合によっては履行前でも契約を解除できる」としています。

相手が契約違反しそうだと予想できれば、契約履行をやめても良いし、契約履行前に契約を解除できるのです。

これでは、契約が契約にならない可能性があります。

以上のように、ウィーン売買条約は、売主にとって無視できない問題点を含んでいます。

日本からの輸出の場合、自社の契約書式で「国際物品売買契約に適用される国際連合条約の適用を全面排除する」として、条約の適用を全面的にオプトアウトしておくべきです。

ただし、日本が輸入する立場であれば、ウィーン売買条約をオプトアウトする必要はありません。

5.英米法書式と非英米法の契約書契約書の構成は、欧米の正式な英文契約書の様式では、まず、契約書のタイトルに次いで、「この契約書は(ThisAgreement)」という主語で始まり、契約発効日ならびに契約当事者が、どこの国の法令の下で設立され存続している会社なのか、その社名と住所も含めて記載し、その次に、「以下のことを証明する(WITNESSETHTHAT)」の文言が来て、その次の「前文(Whereasclauses)」で、契約当事者それぞれが契約するに至った動機や目的を記載します。

そして、「そこで従って、両者は次のとおり合意する(NOW,THEREFORE,bothpartiesheretoagreeasfollows)」の文言で、いよいよ各契約条項の記述に入っていきます。

契約条項の冒頭には、「定義条項」(DefinitionsClause)がきます。

このように、正式な英文契約書は、定型様式が決まっていて、英米法の国同士の企業は、この書式に従って契約書を交わしています。

書式には、伝統的な書式に加え、簡易式の書式もあります。

(英米法の国の伝統的な契約様式)

(英米法の国の簡易式契約書式)

英米法以外の国の企業は、こうした英米法の国の様式にとらわれる必要はありません。

単刀直入に、「日本国・○○会社は、XX国・△△会社と、以下合意に達した」の出だしで、第一条という具合に、契約内容の記述に入っていくのが普通です。

複雑な契約の場合は、契約書の中で使う主な用語の定義を、冒頭で規定したうえで、契約条項を記載することも行われています。

(欧米以外の一般的な契約書式)

中国や東南アジアとの契約では、非英米法書式の契約書を多く見かけますが、最近では、中国やアジア諸国から欧米への留学経験者が増えている関係で、中国やアジア諸国でも、欧米式の契約書式で契約するケースが増加する傾向にあるようです。

6.契約書の種類契約書には、次のような種類があります。

(1)売買契約書契約書を作成する側が売主であれば、販売契約書(SalesContract)、買主が作成すると購入契約書(PurchaseContract)とすることが多いのですが、販売契約書であっても、購入契約書であっても、あるいは売買契約書(Sales&PurchaseContract)であっても、契約書のタイトル自体は、契約の内容に影響を与えないので、契約書のタイトルを巡って、相手と揉める必要はありません。

契約書は、当事者それぞれの「権利と義務」を記載するものなので、よしんば、契約書にタイトルがなくても、当事者それぞれの「権利と義務」が書かれていれば、立派な契約書と言えます。

契約書のスタイルには、スポット契約書と基本契約書の二つがあります。

①スポット契約書一回のビジネスだけのために作成する契約書を、「スポット契約書」と言います。

ビジネス条項と一般条項から構成されます。

ビジネス条項は、ビジネスの実態が忠実に反映されるように、取引対象の品名、規格、価格、数量、支払条件などを記載します。

一般条項とは、基本的にどの契約にも、共通して盛り込まれる条項を言います。

スポット契約書では、ビジネス条項も一般条項も、一つの契約書の中に書きこむ方法と、契約書の表面に、ビジネス条項のフォーマットを空欄で印刷し、契約書の裏面に、一般条項を印刷しておく裏面約款方式があります。

スポット取引の件数が多い場合、裏面約款方式が便利です。

②基本契約書同じ取引先と同じ商品を、繰り返し、頻繁に取引する場合、「基本契約書」という長期契約書を締結する方法が便利です。

「長期契約書」とは、通常、1年以上の有効期間の契約を言います。

基本契約書では、取引の基本的な事項を、契約書の本体で定め、具体的な取引の都度「個別契約書」を作成していく方法が一般的です。

基本契約書なしで、発注書と発注請書だけで取引しているケースも散見されますが、発注書と発注請書だけで商売するのは、国内取引の商慣習であって、国際取引にはこの商慣習はありません。

(2)その他の契約書

売買契約書の他に、「販売店契約書」や「代理店契約書」、加工賃を払って加工を委託する取引について取り決める「委託加工契約書」、特定の業務を外部の企業や個人に委託する「業務委託契約書」、自社の特許や商標などを、相手先が使うことを許諾する「ライセンス許諾契約書」、特定の技術を相手方に供与するための「技術供与契約書」、フランチャイザーと呼ばれるフランチャイズ事業者が、フランチャイジーと呼ばれる加盟者との間で締結する「フランチャイズ契約書」等々、それぞれの業態や取引形態に対応した契約書があります。

7.売買契約のビジネス条項ビジネス条項として契約書に記載する項目には、基本的に、品名、品質・規格、数量、単価、支払条件、包装条件、船積時期、船積港、荷揚港、(指定)引渡場所、(指定)仕向地、船積書類、マーキングおよび積替えと分割船積の可否等があります。

(1)商品名(CommodityName)契約が対象とする商品の名称を記載します。

(2)品質・規格(Quality&Specifications)品質・規格の決め方には、次に説明するような幾つかの方法がありますが、実際には、多くの場合、取引する品目によって、品質・規格を特定するための慣習的なやり方がほぼ決まっています。

その方法に従うことが、最も自然かと思われます。

①数値による条件長さ、幅、高さ、材質・材料、強度、色彩などで、主として数値で規格を記載します。

②国家規格等の条件JIS(日本工業規格)、JAS(日本農業規格)などの国家規格や業界団体が定めている等級で品質・規格を表示します。

品質・規格(Quality/Specifications)

③サンプル条件「品質・規格はサンプルと同じ」(aspersample)と規定します。

通常、売主と買主の双方が、契約時にサンプルを複数保管しておきます。

時間経過とともに、色や形、重量や容積などが変化するような商品の場合、サンプル条件で契約すると、紛争の原因になることがあります。

サンプル条件での契約は、契約する時には、簡単で便利ですが、紛争の起きやすさが欠点です。

サンプルは、あくまでも参考サンプルとしての位置づけとして、契約書では、できる限り、数値化した形で、品質・規格を定める方法が望ましいと言えます。

④特殊な業界基準穀物などの取引で使われるFAQ(平均中等品質条件:FairAverageQualityTerms)や、木材の取引で使われるGMQ(適正商品質条件:GoodMerchantableQualityTerms)といった品質・規格の決め方もあります。

ただし、FAQは、ほぼ無選別と同じ意味ですし、GMQは、品質規格を決めにくい木材の取引で使われるもので、売れることを売主が保証するようなものですから、他の業界では使えません。

一般的に広く使える規格の表示方法ではありません。

⑤ブランド・トレードマークブランドやトレードマークで、品質・規格を決める方法です。

ブランドやトレードマークが、高い品質や規格を保証していて、業界で不動のステータスを確立していれば、この方法で、品質・規格を表示することは可能ですが、通常の商品では使えません。

(3)数量(Quantity)数量の決め方も、それぞれの商品や業界によって、慣習がありますから、それに従います。

①数量単位の種類取引に使う数量単位は、商品によって、重量、容積、個数、包装数、長さ、面積などがあります。

重量では、トン(MetricTon:M/T)、キログラム(kilogram:kg)、ポンド(lb.)が使われることが多いのですが、トンには、M/T(MetricTon)の他に、国によっては、ロングトン(LongTon:L/T)やショートトン(ShortTon:S/T)を使うことがあるので、注意が必要です。

L/Tは1016.0469088kg、S/Tは907.18474kgです。

容積は、立米(m3)、バレル(barrel)など、個数では、個(piece)、ダース(dozen)。

包装数では、ケース(case)、バッグ(bag)。

長さでは、メートル(meter:m)、フィート(feet:ft.)、ヤード(yard:yd.)。

面積では平米(m2)、平方フィート(squarefeet:sift)などが使われています。

②増減の許容条件バラ積み貨物(在来船に積む貨物)の場合、契約どおりの数量や重量きっかりで、船積みすることは至難の業に近いので、契約書では、通常、数量の過不足を容認する条件を定めます。

「5%moreorlessatseller’soption」(5%以内の過不足は売主の任意)、あるいは「Quantity:5%moreorlessallowed」(数量:5%増減は許容される)といった文言を、数量条件欄に書き込みます。

5%は、商品によっては、3%や10%もあり得ますし、契約当事者の合意次第です。

なお、国際商業会議所(ICC)が定める信用状統一規則UCP600では、「L/Cが、包装単位の数または個々の品目数を記載しておらず、かつL/Cの金額を超えないことを条件として、物品数量の5%を超えない過不足が許容される」と規定して

います。

これは、平たく言えば、袋詰めの数が決まっていない、バラ積み貨物の場合、5%多く積むことも、少なく積むことも許容されるということです。

さらに、aboutとか、approximatelyと書いてあれば、10%までの過不足が許されることになっています。

これらは信用状統一規則のうえでの決まり事で、L/C決済で銀行が買取りを行う際の指針であっても、売買契約の当事者に向けてのものではありません。

従って、どこまでの増減が許されるかは、売買当事者同士の合意次第です。

③数量の齟齬を防止する方法バラ積み貨物の取引では、売主が船積みした数量よりも、買主の荷揚数量の方が少ないことが、頻繁に起きます。

水分の自然蒸発などで重量や容積が減るような商品特性がある場合、次のいずれかの方法で、紛争の発生を防ぐことができます。

・数量齟齬の許容率を決めておく(上記②の例)。

・減る分を予想して過積みする。

・輸出地での数量検査を以って確定とする積地最終条件(ShippedFinal)または仕向地に到着した時点での計量を以って確定とする揚地最終条件(LandedFinal)とする。

④重量測定方法重量の測定方法には、次に掲げるような方法があります。

・貨車貫:トラックや鉄道貨車車両に貨物を積んだままで、計量台の上で重量を計り、車両から貨物を降ろした後で、再び計量台の上で重量を計って、その差を貨物の重量とする方法が、貨車貫による計量方法です。

石炭や鉄鉱石のような在来船の船倉にバラ積みする貨物で利用される方法ですが、難点は車両の数が多いほど、誤差が大きくなりがちなことです。

・ドラフトサーベイ:船に貨物を積む前と貨物を積んだ後の、船の喫水線(船体が水面と交わる線)の差から、貨物の重量を算出する方法がドラフトサーベイ(喫水検査)です。

ドラフトサーベイによる計算は、比較的正確な重量が算出できるものの、世界各地の海水の比重は同じではありませんから、厳密に言えば、ある程度の誤差が生じることは避けられません。

・船上解袋:商品を数十キロ単位の定量で詰めた麻袋(GunnyBag)や、フレキシブルコンテナバッグ(FlexibleContainers:フレコン)を、船上で解袋しながらバルク積みする方法です。

解袋した麻袋やフレコンの数で積載重量を計算しますが、買主側が、解袋した袋が定量であったかどうかを、確認する方法がないことと、船上で解袋するため、どうしても袋の糸などの異物が貨物に混入することが、船上解袋の難点です。

・吊りベルト付きフレコン:クレーンで積み降ろしできるように、吊りベルトのついたフレコンに定量の商品を入れ、解袋しないでフレコンのまま、船倉に積み込み、積み込んだフレコンの数で重量を算出します。

フレコンを解袋しないこと、そのままの状態で仕向港(地)に輸送されることから、重量誤差が生じても、原因を確認しやすい特徴があります。

コンテナ貨物では、バンニングされた時点で、コンテナはシール(封印)されます。

税関検査でコンテナを開ける際、シールはいったん剥がされるものの、検査が終われば再びシールされ、シールされたまま輸入国に到着します。

コンテナ輸送の場合、輸送途上での抜き荷は、シールを壊さない限り不可能なため、積載した当初から数量が不足していたか、輸送途上で水分が蒸発して重量不足になるといった、自然欠減が原因で数量不足が起きる以外は、基本的に数量欠減になることはありません。

(4)単価と定型取引条件(UnitPriceandTradeterms)単価は、インコタームズの「定型取引条件」(TradeTerms)を使って取り決めます。

「定型取引条件」を「貿易条件」、「建値用語」と言う人もいます。

インコタームズの11ある用語の中には、売主にとって国内取引となるEXW、買主

にとって国内取引となるDDPがあるので、「貿易条件」の言葉ではすべての用語がカバーできませんし、「建値用語」では、標準価格設定に使う用語の意味になることから、インコタームズとはギャップがあります。

やはり、「定型取引条件」が良いでしょう。

(5)支払条件(Payment)

それぞれの支払方法の契約書記載例を紹介します。

①電信送金(TelegraphicTransfer:T/T)a)船積み前送金の場合:T/TRemittancebeforeshipment.  b)出荷後送金の場合:T/Tremittancewithin〇daysaftershipment(○の箇所には船積み後何日までの送金か、数字を入れます)c)契約後△日以内に代金の〇%を送金、残額は船積み後送金。

ただし、売主の銀行口座に代金が100%入金したことを確認後、直ちに売主はB/LをEMSで送付:T/Tremittanceforthe〇%ofamountwithin△daysaftercontracteddateandforthebalanceaftershipment.SellershallsendB/LbyEMSpromptlyuponconfirmingthat100%ofthecontractamounthasbeentransferredtoSeller’sbankaccount.(○および△の箇所には数字を入れます)②D/P・D/Aa)D/P決済の場合:DocumentagainstPayment(D/P)b)D/A決済の場合:DocumentsagainstAcceptance(D/A)at〇dayssightafterB/Ldate(○の箇所には船積み後何日までの支払か、数字を入れます)③信用状 信用状の場合は、開設予定の銀行名も入れます。

a)一覧払い信用状の場合:IrrevocableLetterofCreditatsighttobeissuedbyXXBank,HongKongb)ユーザンス付き信用状の場合:IrrevocableLetterofCredit〇daysaftersighttobeissuedbyXXBank,HongKong(○の箇所には船積み後何日までの支払か、数字を入れます)支払条件は、貿易取引で最もリスクの高い部分です。

輸出代金を取り損ねれば、大企業は別ですが、通常、相手に強制的に支払わせる現実的な方法はありません。

唯一、回収できることがあるとすれば、相手が自主的に支払う気持ちになって払ってくることだけです。

決済条件は、このことを十分認識して取り決めます。

リスクがある決済方法の場合、必ず貿易保険にリスクヘッジします。

貿易保険付保が、何らかの理由で断られるのであれば、契約は見送ります。

これは、安全に貿易取引を行うための「貿易の基本」です。

(6)包装(Packing)契約書に、単に「Seller’sExportStandardPacking」と書くケースもありますが、こうした実質的な意味のない言葉を書くよりも、具体的な梱包内容を記載する方が、荷扱いの面で実務的です。

(記載例)a)バラ積み貨物:Bulk(またはinBulk)b)フレコン貨物:FlexibleContainer.Eachcontainer50kgsgrossfornet.(風袋込み50kgフレコン)「GrossforNet」とは、風袋込みの重量(GrossWeight)を正味重量(NetWeight)と見做すという意味。

定量の麻袋や、フレコンのまま、解袋しないでバラ積みするのであれば、そのバッグ数を○,○○○bagsのように表示します。

c)コンテナ貨物:Tobepackedin3plykraftpaperbag,with1plyPEinnerbag,eachcontaining20pieces.30bagspackedinaCartonBoxandthen450Boxesina20’Container.CartonSize:○X○X○cm.(一層のポリエチレンを内張りした三層クラフト紙製の袋、各袋20個入り、1カートン30袋詰め、20フィートコンテナに450カートン。

カートンサイズ:○○○。

(7)船積時期(TimeofShipment)船積時期の決め方には、下記のような「期間を指定する方式」と「特定の起点から期間を指定する方式」があります。

①期間を指定する方式(船積時期の指定方法)

②特定の起点から期間を指定する方式上記のように船積時期を期間指定する方法以外に、「L/Cが到着した後〇日以内に船積」という船積時期の指定方法があります。

例えば、「Shipmenttobemadewithin〇daysafterreceiptofLetterofCreditwhichtheBuyershallopenbytheendofOctober」としますと、「10月末日までに買主がL/Cを開設し、そのL/Cが到着してから〇日以内に船積みする」の意味になります。

この決め方は、L/Cが到着していない状態で、生産(調達)手配を余儀なくされて、最終的に契約破棄されてしまったり、船積時期直前までL/Cが開設されなかったりして、契約破棄のリスクに晒されながら、生産(調達)手配をせざるを得なくなる事態を避けるための決め方です。

「〇days」は、L/Cが到着してから生産(調達)を手配し、さらに船積みに要する日数を計算してその日数を、リードタイムとして設定します。

なお、船積日はB/LやSWB等の発行日、コンテナ専用船に積む場合は、「OnBoardNotation付きの船積船荷証券(ShippedB/L)または海上貨物運送状(ShippedSWB)」が発行された日、航空貨物の場合は、AWBの発行日です。

(8)船積港・荷揚港(PortofLoading・PortofDischarging)船積港と荷揚港は、ビジネス条項に欠かせない条項です。

(9)引渡地と仕向地(PlaceofDelivery&PlaceofDestination)EXW、FCA、FAS、FOB契約の場合、定型取引条件の右側に、貨物の引渡地(船積港)を記載します。

一方、CPT、CIP、CFR、CIF契約では、定型取引条件の右側に、貨物の仕向地(荷揚港)を記載します。

DAP、DPU、DDPでは、貨物の引渡地と貨物の仕向地は、輸入国の同一の場所となり、やはり定型取引条件の右側に具体的に記載します。

定型取引条件の右側には、引渡地(船積港)と仕向地(荷揚港)のいずれかを記載するだけで、両方を記載することになっていません。

定型取引条件では、それでも支障ないこともありますが、買主が外航貨物海上保険を的確に付保するためには、FCA、CPT契約の場合のように、両方が明確になっていないと支障が出るケースもあります。

EXW、FCA、FAS、FOB契約で、売主が貨物の仕向地(仕向港)を知らなくても、あるいはCIP、CIF契約で貨物の引渡地を買主が知らなくても、支障はないのですが、契約書のビジネス条項欄中に、「引渡地」(引渡港)と「仕向地」(仕向港)の記載欄を設けておき、両方とも記載する習慣を養っておくと良いでしょう。

①引渡地(PlaceofDelivery)の明記FCA契約では、FCA〇〇Factoryのように、引渡地点をFCAの右側に明示します。

外航貨物海上保険は、引渡地を開始時点として、買主がかけるので、買主はあらかじめ、貨物が売主の工場(倉庫)でバンニングされるのか、あるいは外部のCFR等の倉庫で運送人に物理的に引き渡されるのかを、知っておく必要があります。

そのため、FCA契約での契約書には、引渡場所を具体的に記載するようにします。

CPT、CIP契約では、CPTHong、kongのように、これらの用語の右側に、仕向地(PlaceofDestination)を表示しますが。

輸出国での引渡地(、laCPTのf場el合veのy)引は渡表地示はしません、自ら契約した運送人に貨物を引き渡した時。

または貨物の、売主と買主が運送人に移した時です、引渡地について合意していなければ、売主の任意で引渡場所を決める、買主が引渡場所を知らなければ、買主は外航貨物海上保険の起点。

的確に、従ってとが、CPT契約では、売主と買主は、引渡場所について合意し。

CIP契約の場合は、売主が引渡地を決める立場にあり、外航貨物海上保険を付保する立場にありますから、保険起点の問題は心配ありません。

CFR、CIF契約の場合の貨物の引渡時点は、本船船上に貨物が置かれた時です。

これは、インコタームズの規定ですから、改めて契約書に記載する必要はないでしょう。

DAP、DPU、DDP契約では、これらの用語の右側に、輸入国の仕向地が明示され、仕向地が引渡地点となります。

工場(倉庫)から引渡地点までの外航貨物海上保険は、売主が手配しますから、買主にとって、外航貨物海上保険の起点云々は問題ではありませんから、この場合も、改めて契約書に記載する必要はないでしょう。

②仕向地(PlaceofDestination)等の明記FCAでは引渡地(PlaceofDelivery)を、FAS、FOB契約では船積港(PortofLoading)を、それぞれの用語の右側に表示しますが、定型取引条件には、仕向地(荷揚港)を記載する箇所はありませんので、契約書の仕向地(仕向港)欄に記載するようにしましょう。

EXWは、売主にとっては国内取引なので、仕向地の記載は不要です。

(10)積み替えと分割船積(Transshipment&PartialShipment)輸出港から仕向港(地)まで、直行する船や航空機がない場合、途中で積み替えることになります。

積み替えによって、費用がかかりますし、貨物の荷痛みのリスクも大きくなります。

そのため、買主は、積み替えを嫌うのが普通です。

積み替えを禁止する場合は、「Transshipmentisprohibited」または、「Transshipmentisnotallowed」、積み替えを許容する場合は、「Transshipmentisallowed」と、契約書に記載します。

また、契約した数量を一回の船積でなく、複数回に分割して船積みすると、輸出側での輸出手続きや船積に関わる費用が、一回で契約数量の全量を船積みするよりも割高になります。

輸入する買主も、輸入コストが高くつきます。

しかし、一度に大量の貨物が着荷すると保管場所に困るし、当面それほどの数量をすぐ必要としないという買主の事情がある場合、買主側としては、分割船積を選択することがあります。

分割船積を禁止する場合は、「Partialshipmentisprohibited」または、「Partialshipmentisnotallowed」あるいは、数量の後に「inonelotshipment」と記載します。

分割積みを許容する場合は、「Partialshipmentisallowed」です。

(11)買主が必要とする船積書類(Buyer’sRequiredDocuments)買主が輸入する際に必要とする、売主が取り揃えるべき船積書類(ShippingDocuments)を確認して、契約書に書きます。

L/C決済の場合、買主がL/Cで必要書類を指定しますが、売主が予期していない書類を、列挙して指定してくる買主も中にはいます。

本条項は、契約書に必須の条項ではありませんが、記載する方が、契約の履行が、円滑に行えます。

通常、必要とされる書類の例を次に掲げます。

①署名済みのインボイス 3通 ②梱包明細書 3通③無故障船荷証券(B/L)~指図式・白地裏書され、着荷通知先(NotifyParty)をL/C開設依頼者とするもの~ 正本1通および副本2通。

④原産地証明書 3通⑤品質証明書 3通 ⑥船積み通知のコピー 3通 等。

(12)シッピングマーク(荷印)(ShippingMark)シッピングマークは、マーキング(Marking)、ケースマーク(CaseMark)とも言われます。

通常、輸入側が指定することが多いのですが、売主が決めることもあります。

シッピングマークのデザインや記載項目は、特に決まり事はありませんが、通常の記載項目は、輸入者または輸出者を標示する主マーク(MainMark)、仕向港を標示する仕向港マーク、原産地マーク(MadeinJapan)の他、品質マークや企業ロゴを付けることもあります。

マークは、次に掲げる目的にかなう必要があります。

①一瞥して、貨物の中身が分かること。

②よその貨物と混じらないよう、識別が容易で仕分け作業に便利なこと。

③必要な場合、貨物取扱上の注意事項を記載すること。

例えば、FRAGILE–HANDLEWITHCARE(壊れ物・取扱注意)、DANGEROUS(危険品)、THISSIDEUP(天地無用)、KEEPDRY(水濡れ注意)、KEEPOUTOFTHESUN(直射日光禁止)等。

複数の梱包がある場合、連続ケース番号(:)、。

(13)最終条件(Final)輸送中に品質が変化する商品の場合、積地での品質を売主が保証する積地最終条件(ShippedFinal)と、揚地での品質を売主が保証する揚地最終条件(LandedFinal)があります。

品質だけでなく、数量も積地最終(ShippedFinal)あるいは揚地最終(LandedFinal)とする場合もあります。

積地最終とした場合、買手は着荷貨物の状態が、契約やインボイスと異なっていてもクレームできません。

逆に揚地最終の場合、売主は買主の言い分に対抗できなくなる恐れがあります。

一度限りの取引であればともかくとして、長期的な取引関係を目指すのであれば、あるいは、よほど信用できる取引相手でない限り、最終条件(Final)は使わない方が良いでしょう。

8.売買契約の一般条項(GeneralTerms&Conditions)一般条項とは、個々の取引ごとに変わることのない一般的な条件、あるいは基本契約書の本体に盛り込む条項のことを指します。

(1)個別契約書(IndividualContract)基本契約書を作り、具体的に契約した都度、個別契約書を作ってそれに署名する方式をとった場合、基本契約書には「個別契約書」についての条項を設けて、個別契約書の契約成立方法や、個別契約書の様式などについて規定します。

(記載例)a)買主が発注書(OrderSheet)を売主に送り、売主が発注請書(SalesConfirmation)を買主に発送した時に、個別契約が締結されたものとする。

個別契約では、必要により、品名、品質・規格、数量、単価、支払条件、包装条件、船積時期、船積港、荷揚港、(指定)引渡場所、(指定)仕向地、船積書類、マーキングなどの取引条件を規定するものとする。

b)個別契約は、この契約に従うものとし、発注書および発注請書の様式は、売主および買主の双方が、別途協議のうえ定める。

発注書および発注請書は、ファックス、電子メール、電子メールに添付する方法で送付できるものとする。

c)個別契約は、この契約と一体の不可分の構成部分であるが、個別契約の内容とこの契約の関連する条項の内容とが一致しない場合、個別契約の規定を優先する。

(2)増加費用(IncreasedCost)経済環境の突然で急激な変化、戦争や治安悪化によるリスクの高まりなどが生じると、突然、輸送賃が値上げされたり、あるいは戦争保険やストライキ保険をかける必要性に迫られたりすることがあります。

契約してすでに取引価格が確定した後に、このような事態になった場合、その増加する費用は売主・買主のどちらが負担するのかを決めておきます。

記載例では、買主が負担するとしています。

買主が、「増加費用は売主負担」と主張するのであれば、折半負担で折り合う選択肢もあるでしょう。

(記載例)この契約を締結して以降、海上または航空運賃、税金、損害保険およびその他政府関連の諸掛り等、売主が契約を履行する上の費用が増加した場合、買主は売主の請求に基づき、これらの増加した費用を売主に支払って負担するものとする。

(3)検査と品質保証(Inspection&Warranty)国内取引では、売主が出荷前に数量と外観をチェックし、納品場所では、買主が商品の数量と外観を検査して、問題がなければ、納品(引渡)となります。

つまり、「売主の検査」の後、買主による検査を経て納品されます。

検査と納品は、ほぼ同時に行われます。

そして、それとは別に、後日、内在的な商品の瑕疵が見つかれば、売主は「品質保証期間」内でそれに対応します。

つまり、通常の国内取引では、「売主の検査」と「買主による検査」、「納品」があり、さら

に「品質保証期間」が設定されています。

貿易では、「売主の検査」があり、次に「引渡」(納品)が行われ(通常は輸出国で引渡)、その後で、貨物が輸入国に到着してから、「買主による数量と外観の検査」が行われ、それとは別に、「品質保証期間」が契約で定められていて、内在的な商品の瑕疵の発見に備えます。

「売主の検査」と「品質保証期間」の二つは、国内取引と同じですが、「引渡」(納品)と「数量・外観の検査」がほぼ同時ではなく、「到着ベースの定型取引条件(Dで始まる用語)」での契約を除けば、引渡(納品)は輸出国で行われ、数量・外観の検査は輸入国で行われます。

つまり、買主がまだ貨物を検査していないのに(見てもいないのに)、貨物が先に買主に引渡される(納品される)点が、国内取引と貿易とで、大きく異なっています。

①売主による出荷前検査(Seller’sInspectionPriortoShipment)通常、売主は、出荷する前に、商品が契約に規定する数量と品質条件を満たしているかどうかを検査して確認し、買主に対してその証明書を発行します。

これを「出荷前検査」と言います。

日本が輸出する場合、日本企業は海外からの信頼が厚いため、海外側は売主自身が発行する検査証明書を受け入れる場合が多いのですが、日本企業と初めて取引する相手先の場合、公的検査機関や第三者の検査機関が発行する証明書を求めることがあります。

第三者の検査機関に検査を依頼すると、十万円単位の費用がかかることがあります。

このような場合、売主自身が発行する検査証明書で買主を説得するか、あるいは第三者の検査機関による検査費用を、買主が負担するように要求します。

契約交渉の際、「売主が発行する検査証明書」で合意しておくことをお勧めします。

(記載例)売主は、商品の引渡前に、公的検査機関または第三者の検査機関に依頼して、商品の出荷前検査を行い、商品がこの契約に規定する数量および品質条件に合致していることを証明する検査証明書を、船積書類の一つとして、買主に発給する。

②買主による再検査(Buyer’sReinspection)買主は、商品が仕向地(港)に到着した後、直ちに、商品の数量や品質を検査します。

これを「再検査」と言います。

売主の「出荷前検査」に次いで、貨物にとっては二回目の検査、つまり「再検査」(Reinspection)になるからです。

再検査によるクレーム提起期限は、輸出先国(地域)までの航海所要日数を考慮して決めますが、近隣諸国向けであれば、一般的には、船積日(B/L等の運送状発行日)または仕向港での荷揚日から30日、45日、長くても50日止まりでしょう。

船積みしてから一年も過ぎてから、数量が足りないとか、包装が破損していたなどとクレームがきても、原因を特定することは難しいので、短期間の期限を設定します。

この再検査で分かることは、外観チェックによる数量の不足と目視で分かる商品の外観上の瑕疵(包装の破損や汚れ)程度です。

記載例b)「数量の不足または瑕疵の原因が明らかに売主にある場合」を「数量の不足または瑕疵の原因が明らかに買主にない場合」とすると、買主有利の表現になります。

数量の不足や瑕疵の原因が売主にあることを確認した場合、金銭の支払によって解決するか、代替商品を提供することで解決するか、あるいは他の方法で処理することになりますが、できる限り、具体的な解決方法を契約書に明記しておくことをお勧めします。

問題が起きてから協議して決めるのでなく、起きそうな問題をすべて想定して、その解決方法をあらかじめ決めておくのが、国際契約書の在り方です。

問題が起きてから喧嘩するよりも、大喧嘩をして契約すれば、問題が起きてもスマートに解決できます。

(記載例)

a)買主は、商品が仕向地(港)に到着した後、直ちに、商品の数量および着荷状態を検査(以下、再検査という)する権利を有する。

b)再検査の結果、買主が数量の不足または商品の瑕疵を発見した場合、直ちに電子メールまたはファックスで売主に連絡するとともに、仕向港での荷揚日から○○日以内に、事故報告書を売主に提出して売主にクレームを提起するものとする。

数量の不足または瑕疵の原因が明らかに売主にある場合、売主・買主の双方は、協議のうえ、代替品を供給するか、あるいは賠償によって解決する。

c)売主が必要とする場合、買主は当該商品を検査する機会を売主に与えなければならない。

また、売主が必要とする場合、買主は公的機関または第三者の検査機関が発行する検査報告書を売主に提出するものとする。

検査報告書の作成および発行費用は、買主のクレーム請求を売主が受け入れた場合、売主の負担とし、クレームが成立しなかった場合は、買主の負担とする。

d)数量の不足または商品の瑕疵が、商品の引渡し後における輸送または保管に起因する場合、売主は損害賠償の責を負わない。

③品質保証期間(Warranty)契約書では、売主がどれだけの期間、商品の品質を保証するかを定めます。

荷渡しされた貨物の品質規格が、契約書で決められている品質規格条件に満たない場合にのみ、売主の品質保証責任が問われます。

何の根拠もなく、売主は、単に「品質が悪い」といった、漠とした買主のクレームに応じる必要はありません。

売主がクレームに応じなければならないのは、契約書の品質規格条項に違反している時だけです。

常識的な品質保証期間は、商品によって異なりますので、売主と買主が相談して決めます。

梱包数の不足や目視で分かる外装の破損といった、再検査時に提起すべきであった瑕疵は、この条項のクレーム対象ではありません。

あくまでも、クレームできるのは、商品の製造に由来するもの、商品に内在していた瑕疵、再検査時に外観チェックでは見つけることができない性質の瑕疵に限定されます。

この種のクレーム解決方法についても、金銭支払によって解決するか、代替商品を提供することで解決するか、あるいは他の方法で処理するか、具体的な解決方法を契約書に明記しておくことをお勧めします。

(記載例)a)売主は、商品が適切な環境で、適切に輸送・保管・使用されることを前提として、製造日から○ヶ月間を品質保証期間として、この契約に定める品質規格条件に合致することを保証する。

b)買主は、品質保証期間に、商品に瑕疵を発見した場合、直ちに電子メール又はファックスで売主に連絡するとともに、売主が求めた場合、買主は当該商品を検査する便宜を売主に与えるものとする。

瑕疵の原因が明らかに売主にある場合、売主・買主の双方は、速やかに協議のうえ、代替品を供給するか、あるいは賠償金の支払によって解決するものとする。

c)売主が求めた場合、買主は公的機関または第三者の検査機関が発行する事故報告書を、売主に提出する。

事故報告書の作成および発行費用は、買主のクレーム請求を売主が受け入れた場合は、売主の負担とし、クレームが成立しなかった場合は、買主の負担とする。

(4)インコタームズ(Incoterms)「インコタームズ」については、「第三章 インコタームズ」で、詳しく解説しましたが、インコタームズの何年バージョンかによって、各々の定型取引条件の定義が異なる場合があります。

契約書で、インコタームズのどのバージョン

を適用するかを特定していなければ、売主と買主の間で、インコタームズの定型取引条件の解釈を巡って、意見対立が生じる可能性があります。

インコタームズは、世界の物流の変化や、新たなビジネス形態の登場などを反映して、時代の要請に合うように、適宜変更されてきています。

時代に最も適合したインコタームズを使うという意味で、契約書では、「最新のインコタームズを適用する」のが適切です。

(記載例)この契約書は、国際商業会議所が定めている最新のインコタームズにより解釈されるものとする。

(5)銀行費用(BankingCharges)貨物代金の決済に関わる銀行の諸チャージを、売主と買主のどちらが負担するかに関しては、契約書に書かれていないことが多いのですが、契約書に銀行費用の負担区分について何も書かれていなくても、通常は、売主の所在国で発生する銀行の諸チャージは売主が負担し、買主の所在国(地域)で発生する銀行諸チャージは、買主が負担します。

しかし、取引相手が用意する契約書や、買主が開設するL/Cに、「すべての銀行諸チャージは日本側負担」などと記載してあることがあります。

その場合、銀行はL/Cの開設費用やアメンド費用まで、日本側に課金しますから、注意が必要です。

(記載例)売主の所在国で発生する銀行費用は売主が負担し、売主の所在国(地域)以外で発生する銀行費用は、買主が負担する。

(6)製造物責任(Productliability:P/L)日本の場合、製造物責任を負うのは、「製造者、加工者または輸入者」であることが、製造物責任法によって定められています。

輸入者が製造者と同じ位置付けにされていることに注意が必要です。

外国では、販売者も製造者と同じように、製造物責任を負うことになっている国もあります。

また、問題が起きた場合、被害者は、輸入国の輸入・販売者だけでなく、輸出国の売主、製造者、部品メーカーに至るまで、関係する人たちすべてを訴えることができる国もあります。

製造物責任を巡るトラブルの場合、国によっては、弾がどこに飛んでくるか、分からないのです。

ですから、取引する商品と輸出先によっては、保険にリスクヘッジしておく必要があります。

米国は訴訟大国ですし、中国は外資企業に特に厳しい目を向けています。

フランスは、自国民が被害を受ければ、フランスの裁判管轄とすることを認めています。

輸入業者は、海外の輸出業者から商品を買うのですから、その商品で問題が生じれば、海外の輸出業者がその国の輸入業者に対して責任を負うのは、契約上の道理です。

しかし、PLリスクは、他のリスクとは違って、契約ルート云々の道理を主張しても、契約ルートを飛び越えて、直撃弾が飛んでくるかもしれません。

それは、自動車業界を考えれば分かります。

自動車製造企業は、PLリスクを保険にヘッジしていますが、その自動車製造企業に部品を供給している部品メーカー各社にもPLリスクがありますから、保険にリスクヘッジしています。

つまり、PL保険は「関係者全員がそれぞれ入って、それぞれが自社のリスクを排除する」ものです。

輸入した業者が輸出業者に責任を問い、輸出業者が製造業者に責任を問うべきであるとのロジックは、理屈としては筋が通ります。

しかし、PLリスクの回避策としては現実的ではありません。

リスクは現実のものですから、リスク回避も現実的に対応しなければなりません。

PLリスクのある商品の場合、輸出業者がPL保険にリスクヘッジするのは当然ですが、輸入国では輸入・販売業者も法的責任を問われる可能性が大きいので、輸入・販売業者も、輸入国でのPL保険にリスクヘッジしておくことが求められます。

日本からの輸出商品に関しては、各地の商工会会員や商工会議所の会員であれば、「中小企業海外PL保険制度」を利用できます。

大手の損害保険会社が窓口になっていますが、まずは、最寄りの商工会や商工会議所に問い合せて、詳細を教えてもらうと良いでしょう。

また、最近では民間の損保会社も、中堅・中小企業のための「海外PL保険」商品を揃えていますが、危険度の高い商品は、保険をかけられないことがあります。

下記記載例は、文字面では義務条項ですが、買主側が自らのリスクに気づいていない場合に備えて、売主側が買主側のことに配慮する「親切条項」です。

(記載例)買主は、買主の国で製造物責任保険を付保し、売主は、売主の国で海外輸出PL保険を付保する。

(7)支払遅延損害金(LatePaymentInterest)ユニドロワ原則では、支払遅延の場合の遅延利息は、「銀行の最優遇短期貸出金利の平均的利率」で計算するとしています。

これでは、買主は、支払期限どおりに払わない場合、売主が銀行に成り代わって、優遇金利で買主に融資していることと同じになってしまいます。

買主が、期限どおりに支払うための動機づけになるには、支払が遅延した場合、懲罰的な金利を課すようにします。

しかし、一方では、懲罰的な罰金を一切禁止にしている国もありますし、法外な利息を課されることを防ぐために、法令で上限利率を定めている国が少なくありません。

法令規定を超える利率での遅延ペナルティは、違法な契約として無効とされるリスクがあります。

従って、その国の法令規定に触れる場合、法令で許される最大限の利率で損害金を計算するとします。

(記載例)買主が、商品代金を定められた支払期限までに払わなかった場合、支払期日から支払われる日までの期間、支払遅延金額に対して、年率18.5%または適用可能な法令で許容される最大利率の、いずれか低い方の利率で計算した支払遅延利息額を、支払遅延金額に加算して、売主が指定した銀行の売主の口座に送金して支払うものとする。

(8)相殺禁止(Offsetting)この条項は、支払条件が船積み後の送金支払の場合に必要です。

輸出した商品に対して、買主からクレームがついた場合、後払いの決済条件だと、売主が同意していなのにクレーム清算金を勝手に決めて、商品代金からそれを差し引いて、つまり商品代金とクレーム清算金を勝手に相殺して、支払ってくる可能性があります。

これは、そうさせないための条項です。

貿易では、商品代金の支払とクレーム解決の清算金は別の事柄で、基本的にそれらを絡ませて相殺処理する考えはしません。

これは、国内取引と貿易との大きな違いです。

貿易では、いったん取り決めた価格は、100%全額を売主に支払い、買主が受け取るべきその他のクレーム解決の清算金などは、売主と買主が話し合って金額を決め、あるいは契約書で計算式を決めておき、商品代金と相殺することなく、単独で支払われるようにします。

相殺を認めると、買主側が「商品の取引価格を最終的に決定する権利」を持つことになります。

せっかく決めた取引価格が、買手によって恣意的に変更されるリスクは、避けたいものです。

(記載例)買主が売主に提起したクレームが、売主から買主への金銭支払によって解決を図る場合、商品の契約代金は定められた支払期限のとおり、買主は売主に対して100%支払い、クレーム解決の賠償金は、別途、売主から買主への送金などの方法で清算する。

買主は、商品代金の支払を遅延させたり、クレーム解決賠償金を商品代金から差し引いたりしてはならない。

(9)知的財産権(IntellectualPropertyRights)一般的な商品売買契約の場合、知的財産権が関係する可能性があるのは、商品の商標や意匠ですが、通常の物品の売買取引では、知的財産権そのものを有償で使わせることはほんどありません。

商品売買で考えられる知財のリスクは、輸出先の国(地域)で、輸出商品の商標や意匠を冒認登録したり、あるいは類似の商標や意匠を登録したりしている人がいた場合、輸入・販売業者に対して、その商品の輸入と販売を差し止めて、すでに輸入・販売したものに対して、商標や意匠の使用料やペナルティの支払い、知財権の買い取りを求めてくるケースが考えられます。

このような場合に備えて、その責任を売主が負うのか、買主が負うのかを、契約書で決めておきます。

輸出予定商品の商標や意匠が、類似の商標・意匠も含めて、すでに登録されたり、出願されたりしていないかを、弁護士か弁理士に依頼して調査したうえで、輸出を実際に始めることで、このリスクは実質的に回避できます。

調査の結果、類似の商標・意匠も含めて、第三者で出願・登録されていないことが分かれば、現実には知財リスクはないのですから、本条は、売主が有利の内容としても構いません。

(記載例~売主有利~)売主は、特許、実用新案、商標、意匠、もしくはその他の知的財産権に関するいかなる侵害又は無断使用についても責任を負わない。

この契約中には、商品に含まれる特許、実用新案、商標、意匠、もしくはその他の知的財産権の譲渡と解釈されるいかなるものも含まないものとし、すべてのそれらの権利は、真実かつ合法的な所有者に保留される。

上記権利に関連して紛争が発生した場合、売主は自己の裁量でこの契約を解除および無効とすることができ、紛争に対して自らを免責とすることができる。

(記載例~買主有利~)売主は、商品が第三者の特許、実用新案、商標、意匠、もしくはその他の知的財産権を侵害しないことを保証するとともに、万一、商品の知的財産権に関連して、第三者との間に紛争が発生した場合、売主が自己の責任と費用でこれを解決するものとし、買主は一切の責任を免れるものとする。

なお、買主に経済的損失が発生する場合、買主は売主に対してその経済的損失の賠償請求をすることができる。

(10)譲渡禁止(Assignment)契約は、お互いに相手方を信用に値すると判断して締結するものです。

しかし、契約相手が、契約を他者に譲渡すれば、その前提さえ崩れかねません。

譲渡された相手の所在地次第では、契約を履行するためのコストが変わるかもしれません。

契約を譲渡された先が、自社と競合する企業の場合は、営業秘密の漏洩も懸念しなければなりません。

譲渡禁止条項は、このような事態が起こることを未然に防ぐためのものです。

この条項は、売主にとっても買主にとっても必要なものなので、売主・買主のどちらに有利に書けば良いかは考える必要はありません。

が、海外側が提示する契約書式では、往々にして、「日本側が契約譲渡する時は、海外側の同意が必要」と書いてあるだけで、海外側が譲渡する時のことには、一切触れていないものがあります。

相手が提示する契約書式には要注意です。

(記載例)売主および買主の双方は、相手方当事者の書面による事前の同意なく、この契約およびこの契約に基づくいかなる権利・義務も、第三者に譲渡しないことを確認する。

相手方の書面による同意がないまま行われた譲渡は、すべて無効とする。

(11)不可抗力(ForceMajeure)不可抗力は、フランス語の「ForceMajeure」(フォースマジュール)の言葉が使われています。

不可抗力とは、契約当事者の力では制御できない事態を言います。

一般的には、自然災害、戦争、内乱、暴動、ゼネスト、政府による突然の規制などは、契約当事者が制御できない事態なので、不可抗力に該当します。

個々の企業でのストライキは、企業自身が制御すべきもの、できるものですから、不可抗力ではありません。

しかし、売主有利の書き方では、ストライキ、電力不足、生産設備の不具合、原材料の入手困難等々、通常は不可抗力でない事態も、不可抗力として列記していることがあります。

売主の立場からすれば、それでも問題ありませんが、買主の立場からすれば、本来は不可抗力の事態ではないので、注意が必要です。

不可抗力の事態が起きて、契約履行が困難になれば、相手方に通知し、一定期間契約の履行を遅らせるか、あるいは相当長期間にわたって(通常6ヶ月程度)契約履行できない状態が続く場合は、無条件で契約を終結させることができると規定します。

「無条件で」というのは、お互いに「損害賠償請求なしで」を意味します。

不可抗力条項は、国内取引の契約書で目にすることはほとんどありませんが、国際取引の契約書では、欠くことのできない重要な条項です。

①相手側が用意している契約書式には要注意!相手側が用意する契約書式には、相手側に不可抗力の事態が発生した場合しか記載していないことがあります。

このような契約に署名してしまえば、海外側で不可抗力の事態が起きた場合は、契約履行の延期も、免責での契約解除もできますが、日本側で不可抗力の事態が起きても、日本側は、契約履行の延期も契約解除もできず、契約履行義務が継続することになります。

(記載例~一方的な内容~)(XXの箇所は、「売主」か「買主」の文言が入ります)。

自然災害・戦争・内乱・暴動・ゼネストや政府による突然の規制など、XXが制御できない不可抗力の原因により、XXにこの契約の履行不能又は履行遅滞の事態が生じた場合、XXは免責とする。

不可抗力の事由により、XXの義務履行不能又は履行遅滞が180日を超えた場合、XXは書面でもう一方の契約当事者に通知し、この契約を無条件で終結させることができる。

②標準的な記載方法売主と買主の双方にとって、公平な内容にする「落としどころ」は、お互いに不可抗力の事態が起きた時は、相手に対して契約履行の遅延や契約の終結を認めるという、相互主義の内容にすることです。

相互主義の内容は、次のようになります。

不可抗力の事態が発生した場合の具体的な通知方法も記載します。

(記載例~標準的な内容~)

a)売主および買主のいずれかが、自然災害・戦争・内乱・暴動・ゼネストや政府による突然の規制など、契約当事者が制御できない不可抗力の原因で、履行不能または履行遅滞を余儀なくされた場合は免責とする。

b)不可抗力の事態が発生した場合、当該当事者は、Eメールや電話などのあらゆる利用可能な通信手段を使って、速やかに相手方に通知し、かつ官庁が発行した証明書または不可抗力の事態について掲載した新聞刊行物などの不可抗力事態を証明できる書類を、事態発生から14日以内に相手方に送付する。

c)不可抗力の事由により、売主の引渡義務の履行不能または履行遅滞の期間が180日を超えた場合、この契約のいずれの当事者も、書面で相手方に通知することによりこの契約を終結させることができる。

(12)完全合意(EntireAgreement)契約当事者は、契約に至るまでの間に、資料を相手に提示したり、あるいは商売によっては、図面を何度も相手に渡したり、さまざまな議論を積み重ねて、そして最終的に合意に至って契約書に署名します。

そして、契約を履行していく過程で、相手方が、「色彩の規格は契約書に書かれていないが、商談の時に、貴方が出してきた資料には、色彩規格が書かれていましたよね! 貴方の説明でも色彩は保障するとのことでした」と、商談の時に相手方に渡した資料や、商談での議論や説明を持ち出して、議論が蒸し返されることがあります。

完全合意条項は、このようなことを防ぐためのもので、「商談の過程で話し合ったこと、合意したこと、そして交わされた資料等々は、契約の締結により、すべて無効となり、今現在有効なものは、この契約書に記載されていることだけに限定される」というのが、完全合意条項の趣旨です。

相手によって、契約してから商談を蒸し返したいと思う場合、この条項は意図的に契約書から外しておけば良いということになります。

(記載例)この契約は、契約締結時における売主・買主両者の合意事項を規定したもので、この契約の締結までに、売主と買主の間で行われた協議内容、合意事項または一方の当事者から相手方に提供された各種資料の内容や申し入れおよび説明内容などは、この契約に関し、すべて効力を持たないものとする。

(13)準拠法(GoverningLaw)準拠法条項とは、契約書記載事項の解釈を、どこの国の法律に照らして解釈するかを決めるものです。

例えば、貨物代金を買主が送金してこない場合、「売主の債権の有効期間はいつまでか」を準拠法で指定した国の法令を参照して解釈します。

国によって、民法、商法が定める債権の時効期間は、同じでない可能性があります。

このように、同じ言葉でも国によって内容が異なる場合に備えて、準拠法条項で、どの国の法令に基づいて解釈するかを定めておくのが、準拠法条項です。

戦って勝つことを目指す大企業が結ぶ契約書であれば、準拠法は重要な条項の一つです。

しかし、戦わないで話し合いで解決するための契約書を目指すなら、どの国でも、法令は常識的な内容でしょうから、準拠法をどの国の法令にするかは、実は大多数の中堅・中小企業にとっては、大きな問題ではありません。

①商談で、大もめにもめがちな準拠法条項ところが、「準拠法とは何か」を理解している人は、実はそう多くありません。

ですから、商談の時に、売主・買主の双方が、「準拠法は自国の法律とする」と主張して、商談が難航する一因になることが多いのです。

相手が、「準拠法とは何なのか」を理解していなくて、「自国の法律を準拠法にしたい」と頑なに主張するのであれば、準拠法をどこの国の法律にするかは、最終的に、相手に譲歩しても構いません。

しかし、確実にこちらの主張を通すべき条項があります。

それは、次の「14 仲裁」条項です。

②国内法とウィーン売買条約の関係準拠法条項は、「この契約の解釈は、XX国の法令に準拠する」、あるいは「XX法を準拠法とする」と記載するだけで良いのですが、XX国がウィーン売買条約の締約国の場合、「条約は国内法より優先」しますから、XX国の法令を準拠法にすると、まずウィーン売買条約が適用され、ウィーン売買条約に該当する項目がなければ、次にXX国の国内法で解釈されるという順番になります。

日本法を準拠法とする場合、日本はウィーン売買条約の締約国ですから、国内法より、ウィーン売買条約が優先適用されます。

日本からの輸出契約では、買主に有利な内容になっているウィーン売買条約の適用を排除(オプトアウト)します。

ただし、日本への輸入取引の契約書では、オプトアウトする必要はありません。

国内取引の準拠法は、言うまでもなく、どこの国でも自国の法令ですから、国内取引の契約書には「準拠法条項」はありませんが、国際取引の契約書では欠かせない条項です。

(記載例)この契約の解釈には、日本法を適用する。

この契約には、国際物品売買契約に関する国際連合条約の適用を全面的に排除する。

(14)紛争処理(DisputeSettlement)「第七章 決済リスク」の「1.貨物代金を取りはぐれ」の項目で、商品代金のとりはぐれが起きた時の最善の方法は「泣き寝入り」であること、裁判も商事仲裁も多額のカネがかかるので、紛争解決には「話し合い」が最善であることを説明しました。

「裁判」や「仲裁」に訴えることがないのであれば、契約書に紛争処理条項を書く必要はないと思われるかもしれません。

仮に、契約書の紛争処理条項に「契約当事者間の本契約に関わる紛争は、すべて売主・買主両当事者の話し合いで解決する」と記載したとしましょう。

善良な契約当事者同士であれば、これでまったく問題ありませんが、取引相手が「契約を守らず、何があっても責任はとらないで、逃げ切る」考えで、実際に相手がそのような行動に出た場合、打つ手がありません。

結果的に、「無意味な契約」になってしまう可能性さえあります。

このようなことを防ぐには、お互いに裁判や商事仲裁に訴えられる可能性を明確にしておくことで、お互いに契約違反を抑制する効果を期待することができます。

①裁判と商事仲裁それでは、裁判と商事仲裁は、どちらが良いのでしょうか? 裁判は、二審制、三審制の国が普通で四審制の国もあるのに対し、仲裁は一審で終わります。

また、裁判官は必ずしもビジネスの専門家とは限りませんが、仲裁の裁定員は、ビジネスに精通した人が選任されます。

さらに、裁判は公開で行われますが、仲裁は非公開です。

裁判より、仲裁の方が優れているのは、歴然です。

契約書に「商事仲裁で紛争を解決する」内容を記載しておけば、相手がいきなり自国の裁判所に訴えても、裁判所は「契約に書いてあるとおり、商事仲裁で解決せよ」と、門前払いをしてくれます。

つまり、商事仲裁で解決することを契約書に書くことで、裁判を避けることができます。

②商事仲裁仲裁機関が仲裁裁定を受け入れるには、「当事者がその仲裁組織で仲裁することに合意している」ことが必要です。

契約書の紛争処理条項で、単に「紛争は仲裁で解決する」としか書いてない場合、紛争当事者は、お互いに自国の仲裁組

織に裁定を委ねようとするでしょう。

紛争が起きてからでは、仲裁場所さえ、お互いに合意できません。

となると、契約交渉を通じて、当事者同士がどこの仲裁機関で仲裁するかを、あらかじめ合意したうえで、契約書に明記する必要があります。

話し合いでしか紛争解決できないようにするには、「相手が訴えにくい場所」を仲裁地とすることです。

その一つとして、日本を仲裁地とします。

しかし、そう主張すれば、相手は抵抗するでしょう。

日本での仲裁を相手に説得するために、相手が固執するであろう「準拠法」は、譲歩しても構いません。

話し合いで紛争を解決するしかない契約書にするには、紛争処理条項が最重要です。

これだけは、死守しましょう。

どうしても、相手が「日本での仲裁」に同意しない場合、仲裁地を第三国とすることで、妥協するしかありません。

その場合でも、仲裁地の選定は、交通の便から考えて、日本に近く、相手の国からできるだけ遠い国にすることが理想です。

ちなみに、アジアでは、シンガポール国際仲裁センター(SingaporeInternationalArbitrationCentre:SIAC)か、香港国際仲裁センター(HongKongInternationalArbitrationCentre:HKIAC)を仲裁地とするケースが多いのですが、香港は、2047年6月30日まで、軍事と外交を除いては、中国政府が直接支配することはないとされているものの、中国政府の直接的な支配が急速に強まっているため、公正な仲裁裁定が行われるかどうかに、疑問符がつく可能性があります。

国際的に著名な仲裁機関には、ICC(国際商業会議所)の他、ロンドン国際仲裁裁判所(TheLondonCourtofInternationalArbitration:LCIA)、アメリカ仲裁協会(TheAmericanArbitrationAssociation:AAA)があります。

仲裁地を巡って、当事者同士の合意ができない場合、相手から、被告地主義がお互いにとって公平ではないかという提案があるかもしれません。

被告地主義とは、訴えられた側の国で仲裁する方法です。

なるほど、訴えられた側の国で仲裁するのであれば、公平なようにも見えます。

しかし、それで果たして公平でしょうか?被告地主義は、文字面だけは、公平です。

しかし、問題は、実質的に公平かどうかです。

欧米の先進諸国との間の契約であれば、実質的にも公平かもしれません。

しかし、新興国との間で、被告地主義は公平でしょうか? すでに触れましたが、新興国で外国勢が争っても、勝てる可能性はほとんどありません。

一方、日本での仲裁は、間違いなく公平に裁定されるでしょう。

それで、果たして公平でしょうか。

文字面は公平ですが、実質的に不公平なのは明らかです。

被告地主義の仲裁には、もう一つ問題があります。

お互いに相手国で仲裁に訴えることができますから、日本と海外で、二つの仲裁が同時並行して行われるリスクがあります。

現に、こういう事例は起きています。

一つの仲裁案件でも堪えられないのに、同時に二つの仲裁案件など、とうてい堪えることはできないでしょう。

これは、被告地主義の大きな落とし穴です。

相手にも、こうした被告地主義の問題点を説明して、この方法は回避するようにした方が良いでしょう。

「準拠法の国と、紛争処理条項における紛争処理国は一致させるべきだ」という意見があります。

それは、商事仲裁になった際、準拠法の国と紛争処理国が異なると、準拠法の国の法令を紛争処理国の言語に翻訳する莫大な翻訳費用がかかることが、その論拠です。

戦える大企業の場合は、確かにそのとおりです。

しかし商事仲裁で戦うだけのヒト、カネ、時間をかけられない企業にとって、商事仲裁の仕組みはあっても、現実に利用できないので、商事仲裁の仕組みはないも同然です。

戦えない、戦わないのであれば、準拠法の国と紛争処理地の国が違っても、問題ありません。

翻訳が必要になる機会はないので、翻訳費用を気にかける必要はないのです。

良い契約書とは、トラブルが起きても、話し合いで解決するしかない契約書です。

そのために、少なくとも相手方が、仲裁を提訴しにくい紛争処理条項にすべきです。

大企業が理想とする契約書は、紛争が起きた場合に勝てる契約書です。

大企業とそれ以外の企業では、契約書の目的が違います。

(記載例~日本商事仲裁協会の推奨文言~)この契約からまたはこの契約に関連して、当事者の間に生ずることがあるすべての紛争、論争または意見の相違は、当事者相互の協議によって解決するものとする。

当事者相互の協議によっても解決することができない場合、日本国の社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、日本国東京都(または大阪府)において仲裁により解決する。

仲裁裁定は最終的なものであり、各当事者に対して法的拘束力を有する。

(15)違約賠償(LiquidatedDamages)違約賠償条項は、通常、「契約のいずれかの条項に違反した場合、違反した当事者は、もう一方の当事者に対して、損害賠償の責任を負う」という内容です。

売主有利の契約条項では、買主の違約責任を、「逸失利益を含む一切の損害」と厳しく規定する一方で、売主の違約責任を、船積みしたロットの商品価額以内に限定しています。

(記載例1~買主が全責任を負う条項の一例~)買主は、買主の契約違反により売主に損害を与えた場合、売主が被る逸失利益を含む一切の損害について、売主に賠償するものとする。

(「売主」を「買主」に、「買主」を「売主」に入れ替えれば、売主が全責任を負う条項になります)。

(記載例2~売主の責任を限定的な範囲とする条項の例~)売主は、売主の契約違反により買主に損害が生じた場合、買主が被る損害を賠償するものとする。

ただし、売主の賠償責任は、買主からの損害賠償請求の一部または全部に対して、損害賠償請求の商品が引き渡された際の船積みロットの商品価額を超えないものとする。

(16)守秘義務(Confidentiality)守秘義務条項は、通常のモノの売買契約書では、あまり必要ないと思われますが、相手方が、特許などの知財や、営業秘密を知る機会がある取引であれば、守秘義務を規定しておくのが良いでしょう。

(記載例)売主・買主の双方は、相手方当事者が開示または提供した秘密情報と営業秘密(以下、「当該情報」と言う)を守秘するものとし、相手方当事者が書面による事前の同意がない限り、この契約の有効期間中およびこの契約の終了後5年間、いかなる個人、法人および組織に対して、当該情報を漏洩しないものとする。

ただし、当該情報を業務遂行のために必要とする、売主および買主の従業員はその対象外とするが、売主および買主は、それぞれ売主および買主の従業員に対し、当該情報の守秘義務を書面により課すものとする。

(17)通知(Notice)通知条項は、契約当事者間の連絡方法や通知先の住所を明確にしておくための条項です。

企業に係る重要事項の変更があった場合も、お互いに相手方に通知するようにします。

(記載例)a)この契約に関わるすべての書面による通知は、直接の手渡し、電子メール、ファクシミリまたは国際エアクーリエサービス(以下、「通知方法」と言う)を利用して、この契約の末尾記載の各当事者の住所(または、通知方法で通知された新住所)に送付する。

b)この契約のいずれの当事者も、商号、代表者、資本金、業務責任者、連絡窓口担当者およびその他商業登記事項に重要な変更があった場合、遅滞なく本条に定める通知方法に従って、相手方当事者に書面で通知するものとする。

(18)契約解除(Termination)契約解除条項では、契約当事者が、契約を解除できる条件を規定します。

売主有利の書き方は「記載例1」のとおりです。

「記載例1」の中の「売主」を「買主」に、「買主」を「売主」に替えれば、買主有利の書き方になります。

お互いにこのような事態が起こったら、相手方の当事者が契約を解除できる形にするのであれば、「記載例2~相互主義~」の内容にします。

本条項は、国内取引の契約書でもよく見られる条項です。

(記載例1~売主有利~)売主は、買主に下記事由のいずれかに該当する事態が発生した場合、買主に書面で通知することにより、直ちにこの契約を解除することができる。

a)買主が、この契約に定めるいずれかの義務を履行せず、売主が、書面で当該不履行の是正を要求したのにも関わらず、書面通知後、依然として21日間を超えても是正されない場合、b)買主が支払不能の場合、または破産に関する任意あるいは強制申し立てが、買主に対して、もしくは買主を代理して行われる場合、c)買主が、債権者の利益のための包括譲渡を行う場合、または買主の営業もしくは財産について、管財人あるいは受託者が任命された場合。

(記載例2~相互主義~)この契約のいずれの当事者も、下記事由のいずれかに該当する事態が発生した場合、相手方当事者は、一方の当事者に対して書面で通知することにより、直ちにこの契約を解除することができる。

a)一方の当事者が、この契約に定めるいずれかの義務を履行せず、相手方当事者が、書面で、当該不履行の是正を要求したのにも関わらず、書面通知後、依然として21日間を超えても是正されない場合、b)一方の当事者が支払不能の場合、または破産に関する任意あるいは強制申し立てが、一方の当事者に対して、もしくは一方の当事者を代理して行われる場合、c)一方の当事者で、債権者の利益のための包括譲渡が行われる場合、または一方の当事者の営業もしくは財産について、管財人あるいは受託者が任命された場合。

(19)期限の利益逸失(Acceleration)この条項は、契約が満了、終結または解除となった場合、支払期限が到来していない債務が残っていても、相手方に与えていた支払猶予期限を定めた「期限の利益」は直ちに消滅する、つまり「残債をすぐ弁済せよ」ということを規定するものです。

(記載例)この契約が満了または解除により終結した時は、買主は、その売主に対する一切の債務につき期限の利益を失い、すべての債務を直ちに売主に対し、弁済しなければならない。

(20)契約言語(Language)契約書の記載言語を、日本語にするか、相手の国の言語にするか、あるいは英語にするかは、多くの企業が悩むところです。

①両国語併記は避けたい契約書の作成言語は、契約当事者の契約内容に対する理解が一致している限りにおいては、何語であっても構いません。

しかし、取引相手の会社に、日本語も英語も理解できる人がいなければ、自国語での契約書作成を要求するでしょう。

日本側に、相手の国の言語を分かる人がいない場合は、日本語での契約書作成を求めるでしょう。

このような場合、「両国語併記で作成」することで、結論は落ち着きがちです。

実際に、両国語併記で作成された契約書を、何度も目にしましたが、お互いに相手の国の言葉を理解できないことから、異なる内容で「併記」されている契約書が少なくありませんでした。

両国語を併記するのであれば、相手国の言語の部分は必ず、翻訳会社に出して自国語に翻訳してもらうことで、内容を検証できます。

この検証をしないのであれば、複数言語をともに正文とする契約書は、問題含みの契約書となる可能性が大きいので、避ける方が良いでしょう。

②日本語または相手国の言語での契約書作成日本の企業にとって、日本語の契約書であれば、正確にその内容を理解できますから安心です。

しかし、相手方に日本語に精通した人がいなければ、相手は日本語での契約書作成に躊躇します。

逆に、相手国の言語で契約書を作成した場合も、日本側に相手国の言語に精通した人がいなければ、同意しかねるでしょう。

つまり、日本語または相手国の言語での契約書作成が成立するためには、その言語に精通した人が双方の社内にいることが条件です。

③英語での契約書作成英語は母国語ではないけれど、お互いにまったく話せないわけではない英語で、契約書を作成することは良くあることです。

お互いの英語力次第では、理解にギャップが生じることはあり得ますが、そうした問題はあっても、現実には英語を理解する人は多いわけで、英語以外の言語と比較すれば、理解違いが生じる可能性は、相対的に少ないと思われます。

英語での契約書作成は、世界の共通言語なりの安心感があります。

(記載例)この契約は、XX語で一式2部を作成し、売主・買主双方が各1部を保有する。

(21)契約発効と自動更新(Effectuation&契約がいつ発効し、いつまで有効かを明記します。

有効期間が満了する際、最初に結ぶ契約で「自動更新」とするケースが大半を占めますが、最初の契約は不完全な内容である可能性が高いので、いったん契約を終了させ、次年度も取引を継続するのであれば、最初に結んだ契約書の内容を吟味したうえで、契約し直す方法をお勧めします。

最初の契約を吟味して新たに契約をし直す際に、「契約期間満了時に自動延長」とすれば、より完成度の高い契約書の内容で、「自動延長」していくことができます。

(自動延長の記載例)この契約は、売主・買主双方の署名が整った時に発効し、有効期間は1年間とする。

この契約のいずれかの当事者が、この契約の更新を希望しない場合、この契約が満了する日の50日前までに、相手方当事者に書面で通知するものとする。

通知されない場合、この契約は、さらに1年間自動的に更新されるものとする。

同様な手続は、その後の更新にも適用される。

(22)存続条項(Survival)契約が満了、終結または解除となった場合、まだ受け取ってない代金が残っていたり、履行途中の個別契約が残っていたりすることがあります。

買主側が、「契約が終わったのだから、未払いの商品代金も払う必要がなくなった」などと

言い出したのでは、売主はたまったものではありません。

このようなことのないよう、契約が終わった場合でも、その契約の特定の条項は依然として有効で双方を拘束すると規定しておくのが、存続条項です。

通常、契約書作成の最後の段階で、逐条ごとに、この契約が終結した時に、どの条項を存続させるかを、ひとつひとつ吟味して存続条項を決めます。

(記載例)この契約が、満了、終結または解除された場合でも、第( )条、第( )条、第( )条、第( )条、第( )条及び第( )条の各規定は依然として、売主・買主の双方を拘束する。

9.販売店契約書(DistributorshipAgreement)と代理店契約書(AgencyAgreement)販売店契約書と代理店契約書は、販売店や代理店としての権利と義務を盛り込んだ契約書です。

売買基本契約書の中に、販売店に関する条項を挿入して、販売店契約書とすることもあります。

また、売買基本契約書を締結し、それを参照する形で、販売店としての権利義務などを記載した販売店契約書を作ることもあります。

この場合、契約は、売買基本契約書、個別契約書、販売店契約書の三つで構成されることになります。

(1)販売店と代理店の違い販売店(Distributor)と代理店(Agent)を混同している人が多いので、注意が必要です。

日本では、「販売代理店」という言葉が、ごく一般的に使われています。

「販売代理店」とは、「メーカーに成り代わって販売を代理して行う店」という意味ですが、国際ビジネスでは、「メーカーに成り代わって販売を代理して行うお店」を「販売店」と呼びます。

国際ビジネスでは、販売店と代理店は、まったく異なる概念の言葉です。

日本語で考えるよりも、英語で理解する方が分かりやすいのですが、販売店は、「Distributor」、代理店は「Agent」です。

「販売店契約」は、「DistributorshipAgreement」、「代理店契約」は、「AgencyAgreement」です。

①販売店(Distributor)とは?販売店(Distributor)とは、何でしょうか? 日本の製造業者あるいは商社が、海外にモノを販売していくケースで説明してみましょう。

日本側が、海外の国で販売してくれる企業を見つけて、そこ向けに売っていくことにした場合、その会社を「販売店」と位置付けて契約を結び、そこ向けに、モノを輸出販売していきます。

日本側が売主で、海外の買主が販売店です。

日本側と販売店との関係は、対等な「売主と買主の関係」です。

販売店がその国で商品を販売する場合、商品の宣伝をすることが想定されれば、商標などの扱いや、日本側からの販売促進のサポートなどについて、販売店契約書の中に盛り込みます。

「販売店契約」が、通常の単なる「売買契約」と異なる点は、単なる「売買契約」では、売主と買主は、お互いに海を挟んで、水際で売買するだけであるのに対し、「販売店契約」では、販売店が売りやすいように、売主が販売店をサポートしながら、売買を行うことにあります。

売主が、海外側に一歩踏み込んだ形で売買を展開するのが、「販売店契約」です。

②代理店(Agent)とは?代理店(Agent)とは何なのでしょうか?

日本の製造業者か商社が、海外の国にモノあるいはサービスを売っていくのに、海外のその国で、日本側の立場に立って販売先を発掘したり、取引条件に関する情報伝達を仲介したりして、日本側と販売先との間で、契約を成立させるための情報連絡サービスを行い、それに対して日本側が報酬を支払う、これが代理店(Agent)です。

代理店が提供するサービスの内容や、報酬などの条件を定めたものが、代理店契約(AgencyAgreement)です。

売買契約そのものは、日本側の会社と海外現地側の輸入販売会社との直接契約となり、日本側は、仲介の労をとった代理店に対して、契約金額、売上金額、購入金額等に対して一定のパーセンテージで、成功報酬を支払います。

契約金額や売上金額でなく、契約数量や販売数量、購入数量をベースとして成功報酬額を計算することもあります。

また、固定報酬に成功報酬を加算するやり方も行われています。

以上のように、販売店と代理店は、まったく異なるものなのに、これら二つを混同して、「販売代理店」交渉を行うと、どのような結果になるのでしょうか? 一言でいえば、販売店契約なのに代理店契約の条項が入っていたり、あるいは代理店契約なのに販売店契約の内容が混在していたりで、訳のわからない契約書になります。

海外側と交渉を始める際、販売店契約なのか、代理店契約なのかを、確認したうえで、交渉を始められることをお勧めします。

(2)販売店契約と代理店契約のどちらが良いかそれでは、販売店契約と代理店契約のどちらが、売主として好ましいでしょうか? 契約相手と売買関係となる「販売店契約」の方が、売主として“手切れ”が良いメリットがあります。

代理店契約では、基本的に、代理店が必要とする経費などの費用をカバーできなければ、契約の持続性は担保されませんから、この意味で“手切れ”が悪く、代理店の管理に手間暇がかかるデメリットがあります。

商品そのものを担いで海外に売るのが、通常の「売買契約」であれば、「販売店契約」とは、「売る仕組み」を作って、その仕組みの上に、商品を載せて売っていくのですから、力量のある販売店に出逢えれば、自力で商品を担いで売っていくよりも、ずっとダイナミックな展開が期待できます。

販売店契約がお勧めです。

(3)販売権・代理権の種類次に、販売権と代理権の種類について説明します。

①販売権販売権には、次の3種類があります。

・排他的独占販売権(exclusivedistributorship):1社のみに販売権を付与します。

付与する側の元売・メーカーは、契約地域内での販売活動はできません。

文字どおり、排他的独占権です。

・独占的販売権(Soledistributorship):1社のみに販売権を付与する点では排他的独占販売権と同じですが、付与する側の元売・メーカーも契約地域を対象に販売活動を行うことができます。

元売・メーカーが、ネット通販で販売していたり、官公庁向けの取引を行ったりするのであれば、契約書に「ただし、売主は、契約地域へのネット通販および官公庁向け取引に関しては、自らの販路を通じて販売することができる」ことを明記しておきます。

・非排他的販売権(NonExclusivedistributorship):複数の会社に販売権を付与し、元売・メーカーも契約地域で販売活動をすることが可能です。

②代理権代理権には、独占性の観点から、次の3種類があります。

・排他的独占代理権(Exclusiveagency):1社のみに代理権を付与します。

付与する側の元売・メーカーによる契約地域内での活動はできません。

・独占的代理権(Soleagency):1社のみに代理権を付与する点では排他的独占代理権と同じですが、付与する側の元売・メーカーも契約地域内で活動できます。

・非排他的代理権(NonExclusiveagency):複数の会社に代理権を付与し、元売・メーカーも契約地域で活動できます。

また、代理性の観点から、代理店には、次の二つの種類があります。

・媒介代理店(CommissionAgent):代理店は仲介するのみで、契約は委託者が直接行います。

通常は、媒介代理店とします。

・締約代理店(LawfulAgent):代理店が委託者の代わりに契約すること(法律行為)ができます。

締約代理店は、法律行為ができますから、よほど信頼のおける相手でなければなりません。

(4)独占権の要求「排他的権利」や「独占権」は、「権利」ですから、海外側は今まで取引実績がなくても、いきなり「排他的権利」や「独占権」を要求してくるケースが少なくありません。

しかし、相手先がどのくらいの販売力があるのか、仕振り(Performance)がどうなのか等が分かっていないのであれば、「排他的権利」も「独占権」も与えるべきではありません。

独占権は、一定期間の非排他的権利での契約履行を経たうえで、あるいは、トライアル期間を設定して、相互のビジネスに対する確信と信頼関係が醸成されてから議論すべきものです。

(5)権利に見合う義務の賦課非排他的権利の契約の場合、販売店契約であれば、取引数量(または金額)を努力目標とします。

代理店契約でも努力目標を設定します。

独占権を与えた形の契約であれば、独占権付与に見合う相手方の義務は、販売店契約の場合は、商社・メーカーからの最少購入数量や購入金額を決めて、それに未達であれば、未達分について罰金(ペナルティー)を課す契約にします。

代理店契約の場合でも、顧客発掘件数や契約金額などの最小限の活動成果を義務化し、それに未達であれば、未達分についてペナルティを払わせます。

こうしてこそ、付与される独占権と付与された側の負う義務が、相見合うものになります。

権利だけ与えて義務を課していないケースが目立ちますので、注意が必要です。

(6)販売店契約に必要な条項販売店契約に必要な最小限の販売店条項について解説します。

①販売店の指名と販売権の許諾契約書を作らないまま、何年間も継続的に取引している中で、独占販売権を与えていると暗示する言動をしたことから、買主が「独占権を付与されている」と思い込んでいるために、取引関係を切ることができずに、苦慮するケースがあります。

これは、契約書を作成しないで、取引してきたことに起因します。

契約書は、必ず作成し、販売権を与えるのであれば、排他的独占販売権か、独占的販売権か、あるいは非独占販売権かを明確にします。

(記載例)売主は、買主に販売領域において商標を付した製品を販売する{排他的独占}・{独占的}・{非独占}販売権の権利を承諾する。

また買主はかかる許諾を受諾する。

({排他的独占}・{独占的}・{非独占}のいずれかを選択します)。

②販売領域を限定日本企業が海外と販売店契約や代理店契約を結ぶ場合、海外側が、契約の対象地域、つまり海外側が活動を展開できる販売領域を、「日本を除く全世界」のように、極力広い地域で要求してくることがあります。

日本側としては、相手の実力に相応しい地域だけに限定しなければなりません。

仮に「日本を除く全世界」を販売領域にするのであれば、それ相応の義務や目標を課す必要があります。

権利に見合うものを設定しなければなりません。

なお、中国企業と契約する場合は、中国特有の特殊事情を知る必要があります。

それは、契約で販売領域を「中国または中国国内」とした場合、「台湾」、「香港」、「マカオ」も販売領域に含まれてしまいます。

香港、マカオ、台湾を除外した中国の範囲に限定するには、販売領域を、「中国(ただし香港・マカオ・台湾を除く)」とします。

(記載例)この契約の対象とする販売領域(以下、領域と言う)は、(地域名あるいは国名を記入)に限定されるものとする。

③販売領域外への販売禁止一国の中で、地方ごとに経済圏が緩やかに独立していた時代から、全国規模で企業展開する企業が増えてくると、経済圏の線引きが難しくなってきます。

その中で、「販売領域外への販売」を禁止しても、地域ごとの販売店の活動が整然と行われるのは難しい現実があります。

販売領域同士で、ある程度のフリクションが生じることは避けられません。

問題が生じた際は、現実的に対応するしかありません。

(記載例)売主の書面による事前の同意がない限り、販売店は、製品を領域外の企業、経済組織、個人に販売しないものとする。

また、販売店は、製品を輸出する可能性のある企業、経済組織、個人に販売してはならず、販売店自らも製品を輸出してはならない。

販売店は、販売店が領域外から受領する如何なる引き合いについても、売主に照会するものとする。

④当事者間の関係海外の販売店と日本側の売主とは、「単なる売買関係」であることを規定する重要な条項です。

販売店は、往々にして日本側を代表・代理していると喧伝することで、再販売先に対して自らを権威づけがちです。

それを看過すると、想定外の義務が売主に発生するリスクがあります。

(記載例)売主と販売店は、単に売主と販売店の関係であり、販売店は売主の代理人ではないことを、売主と販売店の双方は認識のうえ承諾する。

販売店は、売主を代理して、いかなる義務あるいは責任も引き受けないものとする。

⑤競業禁止販売店候補を絞り込む際、あるいは契約交渉の最初の段階で、相手がどのような品目を扱っているのか、何処と販売店契約を結んでいるかをチェックし、競業品を取り扱っている場合、交渉対象から外す判断が必要かもしれません。

(記載例)販売店は、売主の書面による事前の同意を得ないで、製品と類似している製品を、輸入、購入、販売、配布、取扱い、または取引しないものとする。

⑥販売店の販促義務と売主の販促サポート通常の売買契約は、海を挟んでの水際取引なので、売主が輸出した後、買主が輸入した国でどう販売しようが、基本的に売主は関知しませんが、販売店契約では、売主は、一歩踏み込んで、買主が円滑に販売展開できるように、買主のために販売促進の支援をします。

支援要員の旅費負担は、記載例のように、売主の手弁当の例もありますし、販売店側が負担するケースもあります。

(記載例)a)販売店は、製品の販売促進のため、最善の努力をする。

そのため、販売店は、自らの費用で、営業要員、営業補助要員およびその他の職員を含む、適切な人員、設備および施設を維持し、また媒体を通じて適切に宣伝するものとする。

b)売主は、販売促進のため、売主が必要と判断する場合、販売店および販売店の再販売先を対象として、商品の技術的な支援および/または販売支援を行うことができる。

その場合、売主は、売主が派遣する要員の航空券代、宿泊費を含む旅費を自ら負担するものとし、販売店は、当該要員の受入れおよび支援目的の達成のために、必要な一切の便宜を提供するものとする。

⑦報告義務販売店契約を結んだのに、相手から何の報告もないという声を耳にすることがあります。

聞けば、契約で、活動動向に関する報告義務を、相手に課していないのです。

何の報告もないのは、当然のことです。

販売店契約では、定期的な「報告義務」を、販売店に義務づけます。

ただ、余り詳細な報告を義務づけると、実行されない確率が高まるので、実行可能な、簡易な項目にとどめる工夫が必要です。

(記載例)販売店は、売主が提供する書式に従って、次に掲げる項目に関する報告書を、四半期ごとに、売主に提供する。

a)販売領域内における商品の市場状況、競争者の動向b)商品の在庫、販売数および次期の販売予測c)販売店の期間中の販売活動および次期に予定する販売活動d)商品に関するクレーム、瑕疵の有無とその内容e)その他商品に関する重要事項⑧最低購入金額最低購入金額を定めるケースもあれば、最低購入数量を決めることもあります。

排他的独占販売権または独占的販売権を付与する場合、必ず最低購入金額(または数量)を義務として課しますが、非独占販売権であれば、義務ではなく「達成目標金額(または数量)」として、単なる努力目標とします。

義務とする場合で、未達の時はペナルティを課しますが、努力目標であれば、未達であってもペナルティは設けません。

目標に対して大幅な未達であれば、売主の裁量で、契約終了や販売権付与の解消を選択できるようにします。

記載例では、達成金額の計算根拠を、販売店から売主の銀行口座に入金済みの金額としています。

契約金額をベースに計算するようにすると、未達成になることが見込まれる場合、駆け込み的な契約で、ツジツマ合わせが起きるかもしれません。

記載例中のパーセンテージは一例ですから、取引の実態に照らして、適切と思われる数字に替えて対応するようにしてください。

(達成を義務とする場合の記載例)a)販売店は、売主から購入する商品の年間最低購入額を、次のとおり保証する。

この契約の最初の年: 〇〇万円以上

この契約の2年目: 〇〇万円以上この契約の3年目: 〇〇万円以上金額は、契約が履行され、販売店から売主の銀行口座に入金済みの金額に基づいて計算される。

b)本条の年間最低購入額に未達の場合、販売店は、この契約の重大な違反とみなされ、販売店は、未達金額の15%に相当する金額をペナルティとして、売主に送金して支払うものとする。

未達金額が目標の40%を超える場合、売主は、その裁量により、この契約を終了するか、または非独占販売権への切り替えを書面で通知することができる。

c)4年目以降の最低購買数量は、年度の開始前に、両当事者が交渉のうえ決定する。

合意が成立しない場合、この契約は自動的に終了する。

⑨商標一定の条件のもとでの商標の使用を許諾する条項です。

販売店が商品を販売するための商標使用ですから、通常は無償での使用とします。

(記載例)a)売主は、この契約期間中、販売店がこの契約に基づいて売主から購入して、再販売または頒布する製品の販売に供す目的に限り、売主の商標の使用を販売店に許可するものとする。

b)販売店は、販売領域およびそれ以外の地域において、売主の商標と同一または類似する商標の登録を申請してはならない。

c)販売店は、売主が指示または指定した方法で、商標を使用するものとし、売主の書面による同意なく、商標の使用方法を変更したり、商標を他の文字、名前、商標、デザインと組み合わせて使ったりしてはならない。

この契約が終了した場合、販売店は直ちに商標の使用を停止するものとする。

 

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