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第十一章 貿易における22種類のリスク

目次

第十一章 貿易における22種類のリスク

  • 1.コミュニケーションリスク
  • (1)「共通の言語」を欠くリスク
  • (2)「コミュニケーションの基本動作」ができないリスク
  • 2.貿易の基礎知識と能力を欠くリスク
  • 3.安全保障貿易管理違反のリスク
  • (1)リスト規制
  • (2)キャッチオール規制
  • (3)違反すると……
  • (4)買い引き合いがきたり、売り込んだりする場合
  • (5)該否判定の方法
  • 4.カントリーリスク(非常危険)
  • (1)カントリーリスクを知る方法
  • (2)カントリーリスクの回避策
  • 5.信用リスク
  • (1)信用調査の方法
  • (2)最終的には、日常のコミュニケーション、企業訪問、商談交渉を通じての見極め
  • 6.クレームリスク
  • (1)品質クレーム
  • (2)ディレイシップメントのクレームリスク
  • (3)ショーテージのリスク
  • (4)マーケットクレーム
  • 7.ロング・ショートのリスク
  • (1)ロングとは?
  • (2)ショートとは?
  • (3)ロング・ショートが生じるリスク
  • (4)ロング・ショートが生じるリスクを最小限にするには?
  • 8.(1)動植物の検疫リスク
  • (2)放射性物質の規制のリスク
  • 9.認証とラベル表示のリスク
  • (1)基準認証の取得
  • (2)ラベル表示
  • 10.輸送開始前に滅失・損傷の原因があるリスク
  • (1)輸出梱包の強度
  • (2)コンテナの故障
  • (3)コンテナ内での積付不備
  • 11.対価確保前にモノやサービスを提供するリスク
  • (1)対価確保前にやりがちなこと
  • (2)相手を信じるのでなく、リスク回避をする
  • 12.商習慣・契約観念の違いからくるリスク
  • 13.温度変化のリスク
  • 14.不適切な荷扱いのリスク
  • 15.為替リスク
  • (1)為替先物の予約
  • (2)為替予約の手順
  • 16.輸出入関連法令違反のリスク
  • 17.海外課税のリスク
  • (1)PE認定のリスク
  • (2)個人所得税課税のリスク
  • (3)移転価格税制のリスク
  • (4)独占禁止法違反のリスク
  • 18.輸入ビジネスのリスク
  • (1)社会経済発展段階のギャップ(時代差)からリスクを判断
  • (2)時代差を埋めてリスクの低い輸入取引を実現するには?
  • (3)製造立ち合いは買主が売主に提供する生産支援のサポートあとがき

第十一章 貿易における22種類のリスク

第三章では、インコタームズの定型取引条件ごとのリスク移転について、第五章では「物流リスク」、第七章では「決済リスク」について、また第八章では「知財権のリスク」について説明しました。

また、第九章の「契約書」では「製造物責任のリスク」にも触れました。

しかし、これらのリスクの他にも、国際ビジネスの第一線で活躍するビジネスマンが知っておくべき18種類のリスクがあります。

既出の「物流」、「決済」、「知財」、「製造物責任」の4種類と合算すると、全部で22種類のリスクとなります。

これら、貿易に潜むリスクを知って、それらのリスクを極力排除することで、自信をもって貿易に邁進できるようになります。

1.コミュニケーションリスク「コミュニケーションリスク」には、「共通の言語を欠くリスク」と「コミュニケーションの基本を欠くリスク」の二つがあります。

どちらも、貿易を行うには、無視できない大きなリスクです。

(1)「共通の言語」を欠くリスク貿易で商談を行うには、売主と買主の間に、「共通の言語」が必要です。

これは、当前のことですが、意外と自覚できていない人が多いのです。

「共通の言語」は、コミュニケーションの大前提です。

海外側が、日本語を話すのであれば、「共通の言語」があることになりますし、日本側も海外側も英語を話すのであれば、これも「共通の言語」があることになります。

しかし、海外側が英語圏でない場合、日本側も海外側も英語の分かる人がいなくて、どちらも自国語を話す人しかいないのであれば、「共通の言語」はないことになり、円滑なコミュニケ―ションは望みようもありません。

「共通の言語」は、貿易を行う上で必要な能力の一つです。

「共通の言語」がなければ、貿易をするのは無理です。

①筆談で大丈夫?漢字圏の企業と取引するのに、「筆談で大丈夫!」と豪語する人がいます。

簡単な値段交渉程度であれば、筆談で通じるでしょうが、クレームのような複雑な説明を要する事態が生じた時は、筆談ではどうにもなりません。

しかも、日本語の漢字と漢字圏の国とでは、同じ漢字でも同じ意味とは限りません。

筆談でさえ、「誤解」が生じることがあります。

かつて、文化庁が出版した日本語教育研究資料、『中国語と対応する漢語』(1978年12月発行)を基に数えてみたところ、漢字二文字の言葉で、日本語と中国語とで、意味が通じないものが約25%、意味がずれているものが約23%、意味が日本語も中国語もほぼ同じものが約52%でした。

ほぼ半分の漢字で、意思疎通に問題が起きる可能性があるのです。

金銭がからむ貿易で筆談など、とんでもないことです。

②「共通の言語」は貿易でのコミュニケーションの大前提海外バイヤーの中には、日本語を話す人も少なくありませんし、日本語のできる人を通訳として同道するバイヤーもいます。

こちらが外国語を話せない場合でも、日本語のできる相手に商談対象を絞れば、支障なく商談することができます。

しかし、一方では、日本語ができない海外バイヤーも数多くいます。

その方が多いでしょう。

主催者側が通訳を用意してくれる「海外展示会」や「海外バイヤーとの商談会」に参加した企業から、後日『海外から外国語の手紙が来たのですが、当社には外国語のできる人がいないので、翻訳してくれませんか?』という依頼を受けた経験は、海外展開の支援機関で仕事をしたことのある人であれば、一再ならずあるはずです。

「海外展示会」や「海外バイヤーとの商談会」で、契約に至っていなかっただけでも幸いです。

「共通の言語」のない相手と契約したら、契約履行の時にどうやってコミュニケーションをとるのでしょうか? 品質クレームが来たら、どのようにして複雑な内容を説明するのでしょうか?「共通の言語」は、貿易でコミュニケーションをとるための前提となる大事な条件です。

③「共通の言語」の壁を乗り越える方法「共通の言語」の壁を乗り越えるには、二つの方法があります。

一つは、自分で外国語を勉強して、商談できるようになることです。

例えば、英語を使って商談をした経験のない人にとって、英語で商談するような語学力を培うのは、無理だと思う人がほとんどかと思われます。

しかし、商談ではきわめて限られた単語しか使いません。

宴席での会話では、どんな話題が飛び出すか分かりませんから、かなりな語彙力がないと、会話は難しいのですが、通常の商談であれば、その気になれば、さほど難しいことではありません。

二つ目の方法は、通訳を使って、コミュニケーションをとる方法です。

ところが、通訳を介してのコミュニケーションには、情報の伝達率と通訳の立ち位置という「通訳のリスク」があることを認識して、上手に通訳を使うようにしましょう。

・情報の伝達率自分の言うことを、ほぼ100%相手に伝えてくれて、相手の言うことも100%自分に伝えてくれるのが通訳だと思っている人が多いのですが、伝達率100%などというのは、専門的な訓練を受けたプロの通訳でない限り、あり得ないことです。

伝言ゲームをすれば、同じ日本語でも、情報が正確に伝わるのは難しいことが分かりますが、通訳を介したコミュニケーションは、日本語と外国語での伝言ゲームみたいなものです。

90%程度を正確に通訳して伝達してくれれば、相当優秀な通訳です。

80%でも傍目にはかなり優秀な通訳だと映ります。

通常の商談では、自分が伝えたいことの7割以上が相手に伝われば、ほぼ支障なく商談ができます。

情報や意思の伝達率が6割以下の場合は、話のツジツマが合わなくなることが起きます。

通訳を介した円滑なコミュニケーションを図るには、質の高い通訳を使うことはもちろん必要ですが、話す側にもコツが必要です。

伝えたいことを、長い時間、一挙に話すのでなく、短く区切って話すようにすると、情報伝達率は、飛躍的に上がります。

ただし、文章の途中で区切らないようにしてください。

日本語は、否定語が文章の最後にきますから、文章の途中で区切られると、肯定するつもりなのか、否定するつもりなのかが分からないまま、逐語訳しなければならず、通訳泣かせとなります。

・通訳の立ち位置自社の通訳は、一般的に、自社側の立場で通訳するものです。

相手方の通訳は、相手方の立場で通訳します。

相手方の通訳だけを通して商談することは、それなりのリスクがあります。

ですから、通訳は自社で抱える方が安心です。

お互いにそれぞれが自社の通訳を立て、お互いに相手側の発言を自国の言語に通訳するのが、最善の方法です。

こうすることによって、通訳の立ち位置による恣意的な通訳を、防ぐことができます。

外部の通訳に臨時に通訳してもらう場合、その通訳はどちらから頼まれて、通訳の仕事をするのか、つまり報酬はどちらからもらうかが、ポイントです。

当然、報酬を払ってくれる側の立場に、通訳は立ちます。

ところで、通訳が、通訳自身の立ち位置に立つことがあります。

通訳が、意図的に発言者の言葉と違う翻訳をすることによって、その通訳に利益になるケースでは、通訳が「悪意の通訳」になる可能性もあります。

中には、通訳が、まともに通訳しないで、自分の意見ばかり主張して「通訳」にならない場面も、頻繁に目にしてきました。

通訳は、本来、情報の伝達役ですが、自分の意見を主張する当事者になってしまうことがあります。

これも、正しい情報を伝えないという意味で、通訳のリスクです。

「通訳の立ち位置」は、「通訳のリスク」の大小を左右する大きなポイントです。

通訳に依存してコミュニケーションをとる時は、その通訳が「どの立ち位置」に立つ可能性があるかを見定めて、リスクの有無と大小を判断するようにしましょう。

・「通訳のリスク」を回避するには伝達率と立ち位置という通訳のリスクを回避するための唯一の方法は、通訳を牽制し、通訳をサポートできるだけの外国語能力を身につけることです。

高度な語学力は必要ありません。

通訳がどういうテーマについて翻訳しているか、翻訳し忘れた部分があるかどうかが分かる程度で良いのです。

それだけで、通訳に対して牽制になり、またありがたいサポートになるのです。

同時に、悪意の通訳のリスクに対しては、強い抑止力を発揮できます。

結局、通訳を牽制できるだけの語学力を持つ人を養成するか、あるいは採用することが、「通訳のリスク」を回避する抜本的な方策になります。

そのレベルであれば、それほどハードルが高いわけではありません。

(2)「コミュニケーションの基本動作」ができないリスク円滑なコミュニケーションは、信頼できる相手としての条件ですし、また、ビジネスを着実に進める上での条件でもあります。

しかし、コミュニケーションのための基本動作のできない人が、海外にも日本にもかなりいて、それが貿易のリスク要因になることがあります。

①「コミュニケーションの基本動作」ができない典型例相手が「コミュニケーションのための基本動作」を欠いていると、次のようなことが頻発します。

・問い合せしても、返事が遅いあるいは返事がない。

・相手方に都合の良いことだけは連絡がくるけれど、自分に不都合なことはこちらから確認を求めない限り、返事してこない。

・自らの発言や主張が、理由なく突然変わったり、覚えていないとトボケたり、いったん確認したことを、ちゃぶ台返ししたりする。

・会って話をする時に、こちらの眼を見て話さない。

(会話は、言葉だけでなく、眼で相手の表情を読み取りながら行われますから、眼を見ないことは、コミュニケーションする意思を欠くことの証左です)。

②「コミュニケーションの基本動作」とは?「コミュニケーションの基本動作」とは、「質問に対して迅速に回答すること」と、「すぐ返事ができないのであれば、とりあえず、いつ頃回答できるかを相手方に連絡すること」、この二つだけです。

この二つの基本動作が身についていれば、何も難しいことはありません。

しかし、この習慣が身についていなければ、貿易ではリスクとなります。

こちらが基本動作のできない場合、相手はこちらを「いい加減な」相手だと思うでしょう。

逆に、相手がこのような企業であれば、リスクがありますから、取引相手の候補から外すべきです。

コミュニケーションリスクのある企業と輸出契約をして、船積が間近に迫った段階で、確認を要することがあったとしましょう。

相手に連絡しても、迅速に返事がこなければ、船積みして良いかどうか、困る事態に追い込まれることがあり得ます。

船積みしてはいけないのに、船積みしてしまったら、どうなるのでしょうか? コミュニケーションリスクが具現化して、実損が生じる可能性があるのです。

ですから、取引先の選定には、「コミュニケーションの基本動作」が身についているかどうかで、フィルターにかけます。

このリスクのある相手かどうかは、日常の連絡と返事の返ってくる様子で判断できます。

どの「信用調査書」にも書かれていないことですが、ビジネスをしていくうえで、とても重要な要素です。

海外展示会に出展した場合、展示会でブースを訪れてくれた方々に、御礼のEメールを送って、今後の取引の可能性について打診します。

そのEメールに対して、返事がこないからと言って、執拗に返事をくれるように督促する必要はあ

りません。

返事がこなければ、取引先候補から外せば良いのです。

「コミュニケーションの基本動作」を身につけていない相手を、執拗に追いかける価値はありません。

なお、日本にも、「コミュニケーションの基本動作」が身についていない人たちが少なからずいます。

経験則によれば、おおよそ半数近くの日本の企業は、基本動作ができていません。

つまり、半数近くの日本企業は、そもそも海外展開の能力を欠いているとも言えます。

海外企業に取引先候補として選定してもらうには、全社をあげて、基本動作の訓練をして、それができるようにすることをお勧めします。

貿易を語る前に、まず「社員教育」です。

2.貿易の基礎知識と能力を欠くリスク「第四章 貿易の商慣習」で、自社が貿易の基礎知識を知らないと、海外バイヤーから雑談の話し相手になり得ても、取引相手とはなり得ないことの具体例をご紹介しました。

この本で勉強された皆様は、すでに「国際物流」、「貿易の規則(インコタームズ)」、「貿易の商慣習」、「貿易決済の方法」などの「貿易の基礎知識」を身につけられたでしょうから、海外側に貿易の素人だなどと思われて、商談相手にされないことはないでしょう。

しかし、海外側の取引先が、貿易の基礎知識と能力を欠いていたら、どうなのでしょうか? 相手は、「国内取引の常識」で商談に臨むでしょう。

売手から買手への貨物の引渡は、輸入してから自分がモノを見て問題ないと判断した時とするのが、当たり前だと主張するでしょう。

損害保険などは、付保する必要性さえ認識していないかもしれません。

貿易の基礎知識と能力を欠く相手との商談では、最初から「話が噛み合わない」はずです。

こうした相手と取引すれば、相手側が貿易の基礎知識と能力を欠いているリスクを、まともに被ってしまいます。

貿易知識を欠く取引先は、取引対象から、躊躇なく外さなければなりません。

貿易の基礎知識のある相手かどうかを確認する方法は、簡単です。

雑談の中で、相手が、次のような貿易特有の言葉を知っているかどうかを、相手の表情や眼も含めて、確認すれば良いのです。

また、この質問への回答次第で、相手の貿易知識の弱点がどこにあるかを知ることができます。

・「オファー」や「ビッド」という言葉を知っているか?(貿易の商慣習)・FOBやCPTというインコタームズの定型取引条件を知っているか?(貿易の規則)・B/Lという言葉を知っているか?(国際物流)・L/CやD/Pという決済方法を知っているか?(国際決済)・フォースマジュールや準拠法という言葉を知っているか?(国際契約書)

3.安全保障貿易管理違反のリスク米国とソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)が対立していた東西冷戦時代には、対共産圏輸出統制委員会:CoordinatingCommitteeforMultilateralExportControls:COCOM)による対共産圏輸出規制(ココム規制)が行われていました。

東西冷戦が終わってからは、日本では、経済産業省が、国際的な枠組みに基づいて「安全保障貿易管理制度」という「輸出規制」の仕組みを作って、すべての企業や個人が遵守するよう求めています。

「安全保障貿易管理制度」には、「リスト規制」と「キャッチオール規制」があります。

(1)リスト規制リスト規制とは、武器、原子力、生物・化学兵器、ミサイル関連など、国際的な平和維持の観点から、輸出を規制するための仕組みで、経済産業大臣の輸出許可がなければ輸出できません。

具体的には、輸出貿易管理令の別表第1の1~15項で指定されているモノと技術に該当する場合、どの国に輸出する場合でも、事前に経済産業大臣の許可を受けなければなりません。

(2)キャッチオール規制キャッチオール規制の「キャッチオール」とは、「すべての品目を捕捉する」という意味ですが、食品と木材などは、この規制対象から除外されています。

輸出先の国により、2019年8月1日まで「ホワイト国」と「非ホワイト国」に分類されていましたが、同年8月2日から、「ホワイト国」を「グループA」に、「非ホワイト国」を「グループB」、「グループC」、「グループD」に分類することが公表されました。

この時、韓国が「旧ホワイト国」であったのが、「グループB」に移された以外、他の国の扱いに、実質的な変更はありませんでした。

グループAの国とは、日本と同様に、国際的な平和維持の観点から、安全保障貿易管理の仕組みを作って、国外への輸出を規制している国のことです。

グループAからDの国々は、次の表のとおりです。

(グループAからDの国々)

キャッチオール規制に該当するかどうかを判断するチェックポイントは、次の三つです。

・輸出先がグループAの国か否か?(どこの国に輸出するのか?)・用途は軍事用か否か?(何に使うのか?)・最終需要者は軍需企業か否か?(どこが使うのか?)グループAの国向けの輸出であれば、キャッチオール規制では、経済産業大臣の許可は不要です。

グループAの国以外に輸出する場合は、「用途」と「最終需要者」を問います。

用途が軍事用であったり、最終需要者が軍需産業や軍事技術の研究開発機関であったりする場合、経済産業大臣の許可が必要です。

特に注意が必要なのは、「最終需要者」です。

「輸出した商品が、まさかそんな軍需企業に行くとは知らなかった」という釈明は、許されません。

売主は、あくまでも最終需要者を正確に把握して判定する義務があり、「知らなかった」は許されません。

なお、最終需要者のブラックリストは、経済産業省が、「外国ユーザーリスト」という形で、同省のホームページ(HP)で公開しています。

リストには、アフガニスタン、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、北朝鮮、シリア、台湾、中国、インド、パキスタン、香港など数百もの経済組織が掲載されています。

「外国ユーザーリスト」に掲載されていない相手でも、軍需関連の組織や機関であれば、当然、輸出前に、経済産業大臣に申請しなければなりません。

なお、輸出先、用途、最終需要者といった客観的要件で申請する以外に、「インフォーム要件」による申請が必要になることがあります。

「インフォーム要件」は、経済産業大臣から、「大量破壊兵器等の開発、製造、使用または貯蔵に用いられる恐れがある」または「通常兵器の開発、製造または使用に用いられる恐れがある」として申請すべき旨の通知(インフォーム通知)を受けている場合に、申請許可が必要となります。

(3)違反すると……違反すると、一定期間の輸出禁止などの行政処分だけでなく、刑事告発されることがあります。

処分や処罰はもちろん痛手ですが、企業にとって社会的名誉を損なうことになりますから、このリスクを安易に考えることは禁物です。

規制対象は、日本での居住者から非居住者向けの「モノ」および「技術」の取引です。

海外駐在員は、多くの場合、自社の社員であっても日本の非居住者ですから、本社から海外駐在員への「技術移転」の際には、安全保障貿易管理の法令に違反しないよう格別の注意が必要です。

(4)買い引き合いがきたり、売り込んだりする場合買い引き合いがきたり、売り込みをかけたりする場合、リスト規制とキャッチオール規制の対象なのかどうかの該否判定(該当するかどうかの判定)を行います。

商社が輸出する場合、メーカーから「リスト規制非該当証明書」を発行してもらいます。

メーカーが発行する「非該当証明書」には、商品(輸出対象品の名称と型式等)が「輸出貿易管理令別表第1の1項から15項に該当しない」旨の記載があり、続いて「ただし輸出貿易管理令別表第1の16項に該当」(つまりキャッチオール規制に該当)することが記載されています。

メーカーは、リスト規制に関しては判断できますが、キャッチオール規制に関しては、どのグループ国向けの輸出かどうか、何に使われるのか、最終需要者は誰かなどを知り得る立場にありませんから、このような記載内容になるわけです。

メーカーが輸出する場合は、メーカー自身が「キャッチオール規制」への該否判定を行います。

商社が、メーカーに対して「リスト規制非該当証明書」の発給を要請しても、応じない場合、商社が「リスト規制」と「キャッチオール規制」の該否判定の両方を行います。

(該否判定のフロー)

(5)該否判定の方法同じ商品を反復継続して輸出する場合、該非判定の手続、輸出管理責任者、該非判定責任者などの「社内輸出管理体制」を作って該否判定を行います。

該否判定の方法には、「項目別対比表」と「パラメーターシート」の二つがあります。

一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)、日本機械輸出組合(JMC)からサンプルやシートを入手できます。

①項目別対比表法令の条文に照らして、各項目への該非を判定するもので、シンプルな構成です。

②パラメーターシートパラメーターシートは、各分野の専門家が、品目分野毎に作成したもので、フローチャート式になっています。

関連法令の条文に精通していなくても判定することが可能です。

なお、経済産業省は、フォワーダーに対して、輸出通関手続きの際に、売主から該否判定書を提出させるように行政指導しています。

4.カントリーリスク(非常危険)カントリーリスク(非常危険)とは、一国での政治、経済の急激な変化や、政治的あるいは宗教上の過激な対立や治安悪化、政府による規制措置などで、契約当事者の契約履行に大きな影響が出たり、契約当事者が損失を被ったりするリスクを言います。

自然災害が多い国も、カントリーリスクが高いと見なされます。

取引ターゲット国(地域)を決める際に、カントリーリスクの大小で、候補先を絞り込むことは、貿易のリスク回避の視点からも、大切なことです。

(1)カントリーリスクを知る方法世界各国のカントリーリスクは、NEXIのホームページに掲載されています。

ウェブ上の検索画面で、「日本貿易保険カントリーリスク」をキーワードにして検索すれば、すぐにたどり着けます。

これは、先進国で構成している経済協力開発機構(Organisation:forEconomicCooperationandDevelopment。

大企業以外の企業の場合、一般論として、体力は不十分なので、特定の一つの国に入れ込んでしまって、その国との取引が、一時的であってもある日突然止まった場合、会社経営が行き詰まってしまうかもしれません。

カントリーリスクに対する自社の耐性を意識しておく必要があります。

OECDのカントリーリスク評価は、欧米の専門家による、世界各国の経済・金融・財政面でのリスク分析がメインです。

近隣諸国との関係に由来する地政学的なリスクは、それぞれの国の地理的な場所によって左右されるため、専門家といえども、全世界に共通のカントリーリスク分析に反映するのは不可能です。

従って、NEXIのHPに掲載されているカントリーリスクを参考にしつつ、地政学的なリスクを加味して、日本にとってのカントリーリスクを自社で判断するようにします。

(2)カントリーリスクの回避策カントリーリスクを回避する方法は二つあります。

①特定国(地域)への売上の偏重を制御特定の国との契約がある日突然できなくなってしまっても、経営が多少苦しくなったとしても、致命傷にならない程度に、カントリーリスクの大きな国(地域)との取引の比重を、一定以下にコントロールすることをお勧めします。

取引対象国(地域)は、できる限り分散化することで、リスクは制御できます。

特定の国(地域)に売上が集中した場合、その超えてはならない比率は、常識的には会社売上の3割程度。

あらかじめ、決めた上限を超える場合、どんなに魅力的な価格で注文が来ても応じない、自らが決めた決まり事は、必ず守る姿勢を堅持します。

②保険にリスクヘッジNEXIの「一般保険(個別保険)」は、船積み前と船積み後のカントリーリスクおよび信用リスクをカバーします。

「中小企業・農林水産業輸出代金保険」は、船積み後のカントリーリスクとバイヤーの信用リスクをカバーしますが、船積み前のリスクはカバーしていません。

このように、カントリーリスクを貿易保険にヘッジする方法は、常に完璧とは限りませんが、やはり、自社で特定国との取引に偏重しないように制御して、取引対象国を分散化することが、中長期的には、カントリーリスクを抑える有効な方法です。

すでに契約済みの取引については、可能な限り、貿易保険にリス

クヘッジします。

5.信用リスク信用リスクとは、買主の支払能力不足や倒産のような、買主側が債務不履行になるリスクを言います。

「第七章決済リスク」で、決済リスクの少ない決済方法を選んで契約することに努め、どうしてもリスクの高い決済方法でやらざるを得ないのであれば、「貿易保険」にリスクヘッジをして取引を行うこと、そして、万が一、貿易保険に決済リスクをヘッジできないのであれば、その契約はしないこと、これが「貿易の基本」であることを説明しました。

この「貿易の基本」を守っていく限り、貿易での個々の取引の「与信リスク」は、基本的に危惧する必要はありません。

国内取引での信用調査は、個々の取引で代金不払いや、取りはぐれが起きそうな相手との取引を回避するために、資産のある優良取引先を選別することが目的ですが、貿易での信用調査は、個々の取引の与信リスクの懸念よりも、将来的にガッチリと組んでいける、将来性のある取引相手を発掘する目的で行います。

その意味では、取引候補先に関する、幅広い情報を含んでこそ、貿易の信用調査は意味があります。

(1)信用調査の方法海外企業の信用調査を行うには、「商業興信所に調査を依頼する方法」(CreditAgency)、「同業者などに照会してもらう方法」(TradeReference)、NEXIを利用する方法などがあります。

しかし、最終的には、日常のコミュニケーション、企業訪問、商談交渉を通じて、自分で相手を見極めて判断することが肝要です。

①商業興信所に調査を依頼する方法(CreditAgency)民間の興信所や保険会社が、世界的な範囲で企業情報を提供しています。

次の二つの会社が有名です。

一つは、米国のDun&Bradstreet社のD&Bレポート(海外企業情報レポート:ダン・レポ)で、日本では、東京商工リサーチ(TSR)が、代理店として窓口になっています。

ダン・レポは、日本の貿易業界では、ほとんどの人に知られている信用調査書です。

もう一つは、フランスに本店を置く貿易保険・取引信用保険専門の保険会社、「コファス」(Coface)です。

同社の日本法人「コファスサービスジャパン株式会社」は、ジェトロ・メンバーズの会員向けに、特別料金で「外国企業信用調査サービス」を提供しています。

こうした「商業興信所の企業調査情報」を利用する際に、注意すべきことがあります。

それは、先進国の企業はともかくとして、新興国の企業情報に関しては、そこに記載されている内容を、鵜呑みにしないということです。

調査会社は、通常、調査対象の企業から、財務諸表などの提供を受けて企業情報を作成しますが、新興国では、何通りもの財務諸表を作成している企業が、数多くあります。

つまり、信用調査会社に提供する財務諸表が、真実のものとは限らないことが良くあるのです。

新興国企業の信用調査書は、参考程度の意味合いでしかないと考えるのが、無難でしょう。

②同業者等に照会してもらう方法(TradeReference)取引先候補とすでに取引関係にある他社に聞いたり、同業者に照会したりして、情報を集める方法が、「トレードリファレンス」(TradeReference)です。

この方法は、取引先候補の方に、情報が洩れる可能性があるので、堂々と書面で問い合わせる訳には参りません。

口頭で情報収集できる機会があれば、実施します。

③日本貿易保険(NEXI)を利用する方法NEXIの利用方法については、「第七章決済リスク」の「6.日本貿易保険(NEXI)」の項でご紹介しましたが、高額な信用調査書を取り寄せるよりも、NEXIの海外商社名簿による格付制度を利用されることをお勧めします。

取引相手候補の企業が、海外商社名簿に登録されていなくても、中小企業基本法上の「中小企業者」の場合、8件まで無料で格付けしてくれますし、有償でも一件1万円程度で、調べてくれて格付けしてくれます。

信用調査書はもらえませんが、格付結果を知ることができるので、十分です。

貿易保険を利用中か、利用を検討している企業が利用できるもので、貿易保険を利用する意図のない企業は利用できませんが、NEXIの企業格付けで、信用度を判断するのは、簡便で使いやすい方法です。

(2)最終的には、日常のコミュニケーション、企業訪問、商談交渉を通じての見極め上述のとおり、幾つかの信用調査の方法がありますが、日常のコミュニケーション、企業訪問、商談交渉の過程を通じて、最終的に相手を見極めることが大切です。

特に、新興国とのビジネスの場合は、この方法が最も確実な判断方法です。

その会社を訪問すれば、雑談の中で、「自社ビルなのか、賃貸ビルなのか」、「社有車はどのくらいあるか」といった資産の状況は聞き出せますし、何よりも、その会社の従業員が、生き生きと仕事しているのか、あるいはつまらなさそうに仕事をしているのかを、直接目にすることで、その会社と取引して良いかどうかが直感的に分かります。

最終的には、自分の目で見て判断することが、一番頼りになります。

6.クレームリスク貿易取引をしていると、クレームは付き物と言っても過言ではありません。

さまざまなクレームがありますが、最も多いのは、「品質クレーム」と「ディレイシップメント(船積遅延)クレーム」、「マーケットクレーム」、さらに、バラ積みの貨物では「ショーテージ(数量不足)クレーム」です。

クレームを受けると、「逃げ腰」になる人がいます。

しかし、クレームに対して「逃げ腰」になれば、相手はすぐにそれを察知します。

それを契機に、その後のビジネスは、ギクシャクしたものになって行くでしょう。

クレームを受けたら、すぐ事実確認を行います。

こちら側の契約違反であれば、発生原因と今後の改善策を説明し、協議のうえ解決方法を決めて実行します。

クレームは、迅速に解決すれば、信頼関係を強化する絶好のチャンスになります。

クレームを、後ろ向きに捉えるか、前向きに捉えるかで、ピンチになるか、チャンスになるかが決まります。

クレームには、迅速に、誠意をもって対応しますが、何が何でもまずは謝るという日本的対応は厳禁です。

謝れば非を認めたことと理解されてしまいます。

貿易では、まず謝るのではなく、真っ先に事実を確認することです。

その上で、確かに自社に原因のあることが判明した段階で、初めて謝ることになります。

(1)品質クレーム買主が売主に対して「品質クレーム」を提起できる、唯一の正当な理由は、「輸出した貨物が、契約に定めている品質基準に合致していない」ことです。

その他の理由は、「品質クレーム」を提起する根拠になりません。

品質クレームに限らず、売手も買手も、相手方に対してクレームできるのは、契約違反があった時だけです。

ですから、契約書の品質・規格の決め方は重要で、曖昧な品質・規格の決め方をすると、トラブルの原因を作るだけです。

①現実的な対応とはいえ、現実には、次の商売が控えていることもあります。

理不尽なクレームでも、ある程度それに応じて、次のビジネスに繋げる方が得策なこともあります。

そこは、ビジネスマンとして柔軟に考えるとして、そのような場合であっても、理不尽なクレームが繰り返されないように、「今回のクレームは、売主として認めない」旨、前例としないことを確認したうえで、「双方の今後の関係に鑑みて、求償に応じる」とすることが、現実には良く行われるクレーム解決の方法です。

②必ずクレームしてくる相手国により相手によりですが、貨物が着いたら、何はともあれ、売主にクレームしてくる海外企業もあります。

「クレームして相手が応じてくれば、儲けもの」とばかりに、ともかく貨物が着けばクレームしてくるのです。

そうこうしているうちに、次のビジネスの引き合いを出してきて、前回の値段よりも、クレーム分だけ安くせよと要求するのです。

次の商売で値引きさせることが、クレームの目的で、クレーム自体を駆け引きの道具とするのです。

中には、このような海外企業もあります。

③生産・加工管理水準の国際基準への引き上げ生産・加工管理水準を、国際基準に引き上げていく努力も必要です。

欧米の先進国は、関税の引き下げなどに対応しながら、一方では、高いハードルの「国際基準」を設けて、国内産業を保護する傾向にあります。

生産・加工管理水準を国際基準に引き上げていかなければ、近い将来、輸出することが難しくなっていきます。

薬品や肥料などの製造分野では、GMP(GoodManufacturingPractice:適正製造規範)が、国際基準としてありますが、大企業にとっては、国際基準の取得は、それほど難しいことではないでしょう。

問題は、中小・零細業者の多い食品業界です。

米国、欧州連合(EU)、中国、ロシアなどの国々では、HACCPを実施している工場で製造された食品を、輸入の前提条件にしていく流れにあります。

HACCPは、国連の食糧農業機関(FoodandAgricultureOrganizationoftheUnitedNations:FAO)と世界保健機関(WorldHealthOrganization:WHO)が、1963年に設立して作った「コーデックス委員」(CodexAlimentariusCommission:CAC)が、食品の国際基準として制定したものです。

しかし、国によりHACCPの内容は同じでなく、世界どの国にでも通用する「グローバルHACCP」は、今のところ存在していません。

日本でも、各都道府県が展開している所謂「都道府県HACCP」や業界団体によるHACCP基準など、複数のHACCPはあるものの、国際的に通用する権威あるHACCPにはなっていません。

ISO22000やFSSC22000は、HACCPを取り込んだ形になっていて、しかも国際認証規格として認められているので、それらを取得することによって、HACCP導入企業として認めてもらおうとする動きもあります。

また、厚生労働省は、2018年6月に食品衛生法の一部を改正して、原則として、すべての食品などの事業者に、HACCPによる衛生管理またはHACCPの考え方を取り入れた、衛生管理を行うように制度化しましたが、これとて、国として、HACCPの認証制度や承認制度を導入しようとするものではありません。

HACCPは、基本的には、輸出先の国が定めるHACCPをクリアーすることが、輸出できるかどうかの基準となります。

GAPに関しては、ヨーロッパで作られたGAPが、すでに世界標準化していて「グローバルGAP」と呼ばれています。

日本は、国際基準に合致した農業分野の「ASIAGAP(アジアGAP)」を推進しつつありますが、輸入国側でどれだけ認知されるかが鍵です。

(2)ディレイシップメントのクレームリスク契約の船積時期までに、船積みできなければ、買主からディレイシップメント(DelayShipment:船積遅延)のクレームを受けます。

少しばかりの心構えや契約のコツ、あるいは、正確なインコタームズの知識があれば、ディレイシップメントリスクを回避できることが、少なくありません。

①船積時期で無理しない商談の時に、買主はできるだけ早く船積みするように、要求することが多いのですが、売主は、このような場合、多少無理な船積時期の要求であっても、ついつい商売を取ることに、前のめりの姿勢になってしまい、相手の要求を無理して受けがちです。

こうして契約した場合、結局、契約の船積時期を守れずに、船積遅延が起きやすいのです。

商談の時に、「ちょっと無理かも!」と不安が横切ったら、絶対に無理しないと、自らに言い聞かせましょう。

輸出で、自分が無理しないだけでなく、輸入でも、相手に対して、無理な要求はしないようにします。

相手に無理してお願いした場合、結局、相手がそのとおりにできず、苦しむのはこちらです。

ビジネスに対する熱意や、やる気は大切ですが、それと無理をすること、無理をさせることとは、別次元の問題です。

②L/C開設と船積時期契約で、船積時期が20XX年3月(ShipmentinMarch)、L/C開設期限が、20XX年2月末日(LetterofCredittobeestablishedwithinFebruary)だったと仮定します。

買主がL/Cの開設に手間取って、3月29日にL/Cを開設したのであれば、明白な契約違反です。

ところが、3月29日にL/Cが開かれたのでは、売主がL/Cの到着前に船積みするリスクを冒さない限り、契約どおりの船積みは不可能に近く、船積は恐らく4月にずれ込みます。

しかし、この場合、売主が期限どおりに船積みしなかったことで、売主は買主から船積遅延のクレームを受けるリスクがあります。

もちろん、L/C開設期限を守らなかったのは、買手の契約違反ですが、売主が船積期限を守らなかったことも事実です。

こうして、L/C開設遅れと船積遅れのクレーム合戦が起き得ます。

こうした事態になるのを防ぐには、契約で、L/C開設期限と船積期限を連動させておきます。

例えば、「有効なL/C到着後、40日以内に船積みする」のように、L/C到着と船積時期を関連付けておくだけで、クレーム合戦になるのを防止できます。

(3)ショーテージのリスク船積みした数量が多すぎて、買主からクレームがついたという話は、聞いたことがありませんが、数量が少なければ、必ずクレームがつきます。

数量不足のことを、単に「ショーテージ」(CargoShortage)と言います。

①コンテナ貨物でもショーテージが起きますコンテナ貨物は、バンニングされた時点で、シール(封印)されます。

税関検査でコンテナを開ける場合、シールはいったん剥がされますが、検査が終われば再びシールされ、シールされたまま輸入国に到着します。

この限りでは、コンテナ輸送でショーテージが起きるはずはありません。

が、現実には、船員がコンテナシールを外して抜き荷したり、国(地域)によっては、税関吏が検査時に抜き荷したりすることがあるようです。

コンテナシールを外した場合は、シールが取り付けられていなかったり、当初のシール番号と異なるシールが、取り付けられたりします。

また、コンテナが損傷していると、損傷個所から貨物が漏れて、ショーテージが起きることもあります。

コンテナ貨物のショーテージは、一件当たりの不足数量がそう多くないことが特徴です。

②バラ積み貨物(在来船貨物)のショーテ-ジクレームは金額が大きいバラ積み貨物(在来船貨物)も、抜き荷によるショーテージのリスクがあります。

液状の貨物の場合は、荷卸しの際、どうしても船内に残留する部分があるので、積載重量と、荷揚重量とで差が出ます。

また、商品によっては、水分の自然蒸発などによる自然欠減で、ショーテージが起きるものもあります。

③ショーテージクレームを起こさない方法「第十章 契約書の基礎知識」の「7.売買契約のビジネス条項」、「(3)数量(Quantity)」で、数量の齟齬を防止する方法について、数量齟齬の許容範囲を決めることや、「積地最終」(ShippedFinal)、「揚地最終」(LandedFinal)といった方法を紹介しました。

この他、同じ商品の取引で、ショーテージクレームが頻繁に起きる場合、損保会社に「ショーテージ保険」ができるかどうか、相談してみるのも手です。

(4)マーケットクレーム契約してから、商品の需要と供給の関係が大きく変化して、相場が大きく動くことがあります。

契約価格より相場が下振れした場合、まだ船積みされていない段階では、買主は、契約履行の先延ばし、契約単価の値下げや契約破棄を目論んで、些細な理由を見つけて、売主に難癖をつけてくることがあります。

すでに貨物が仕向港に到着して、輸入通関済みの段階では、「品質が悪い」という理由で、クレームをしてきます。

このように、契約後の市況の変化に起因するクレームを、「マーケットクレーム」(MarketClaim)と呼び、貿易業界では、「商道徳に反する重大な行為」として、固く「ご法度」になっています。

マーケットクレームをしてくる相手は、貿易のルールを守らない、不誠実な相手ですから、それ以降の新規取引は行うべきではありません。

7.ロング・ショートのリスク売買というのは、「売り」と「買い」の両方の取引条件が成立していれば、基本的にリスクはありません。

しかし、「売り」か「買い」のどちらかが成立していなければ、それは「リスク」だと認識する必要があります。

(1)ロングとは?輸出商品の仕入契約をして、輸出契約ができていない場合、契約上のロング(買い持ち)の状態になります。

そのまま、輸出契約がない場合、仕入契約の履行時期がくれば、貨物を引き取らなければなりません。

仕入契約を履行して、その貨物を倉庫に搬入して保管すれば、その貨物は、在庫保管状態のロング(在庫)となります。

在庫のロングになると、金利と倉庫料(金倉:キンクラ)が日々かさみ、実損が生じます。

これが、ロングのリスクです。

(2)ショートとは?輸出商品の仕入契約ができていないのに、輸出契約をした場合、契約上のショート(空売り)状態となります。

仕入契約ができないまま、船積時期が来れば、輸出契約を履行しなければなりません。

しかし、そうしたくても、荷渡しする玉がなければ、ノンデリ(引渡不能:NonDelivery)となり、ノンデリのクレームを受けることになります。

クレームを受けないためには、どんなに値段が高くても、貨物を仕入れて船積みするしかありません。

これが、ショートのリスクです。

(3)ロング・ショートが生じるリスク仕入契約と輸出契約をして、売り繋ぎができていても、ロング・ショートのリスクが生じることがあります。

「売り」も「買い」も、無事、売買の契約が成立した後で、販売先が契約破棄すれば、ロング(買い持ち)の状態になります。

逆に、売買の契約が成立した後、仕入先が契約破棄すれば、ショート(空売り)の状態になります。

ですから、売り繋ぎ済みであっても、ロング・ショートの状態になるリスクは常にあるのです。

(4)ロング・ショートが生じるリスクを最小限にするには?海外の販売先からの契約破棄リスクは、L/C決済の方法で、代金を事前に確保することで、基本的に回避できます。

D/P、D/A決済の場合は、貨物代金の何割かを前金として送金させることで、海外側から契約破棄してくるリスクを、抑えることができます。

前金を送金してきた後で、海外側が契約を破棄すれば、前金は「没収」します。

海外側は、前金部分が丸損となりますから、そのリスクは冒さないでしょう。

送金決済分の残額をD/P、D/A決済とするのであれば、貿易保険にリスクをヘッジします。

しかし、仕入先からの契約破棄リスクを解消する手立ては、残念ですが見当たりません。

仕入には、「仕入与信リスク」が厳然と存在していることを認識して、仕入先を選別するしかありません。

8.輸出先国(地域)の輸入規制リスク世界の国々(地域)は、生態系の保護や、家畜や農作物に悪影響を与える病虫害や疫病の進入防止のために、輸入される動植物や食品に対して検疫を行っています。

肉類では、いったん疫病が発生すると、その国からの輸入が禁止されたり、規制されたりします。

植物でも、それは起こり得ます。

放射性物質による輸入規制も一部の国(地域)で行われています。

食肉や動植物の貿易では、輸出国で、動物の疫病や病虫害が発生すると、輸入国(地域)側では、たちまち輸入規制が実施されます。

このリスクは、食品などの取引では、常に潜在的にあるリスクです。

(1)動植物の検疫リスク世界各国とも、植物や動物の輸入には、動植物検疫制度を設けています。

自国の生態系や家畜・農作物に影響を与える危険のある外国の動植物、あるいは絶滅が危惧される動物などは、世界各国とも、種類により、輸入全面禁止、検疫証明書があれば輸入を許可、輸出国での指定施設、認定施設、選定施設などの固定施設で処理あるいは指定地域で栽培され検査を受け、輸出国の検疫証明書が発給されたものであれば輸入許可、といった規制措置を講じています。

動植物検疫がらみの規制は、放射性物質の規制同様、頻繁に変更されますから、具体的な輸出アイテムを決めた段階で、輸出ターゲット国(地域)の規制状況を、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、動植物検疫所、日本貿易振興機構(JETRO)などのホームページ(HP)で、確認することをお勧めします。

①植物の輸出野菜・果物・樹木などは、植物防疫所から植物防疫証明書の発給を受けて輸出します。

しかし、証明書があっても、実際の貨物に有害病虫が付着していれば、仕向国での輸入は許可されませんから、有害病虫付着のない貨物の出荷に努めます。

②木材を梱包材に使って輸出する場合木材を梱包材に使って輸出する場合、使用する木材の種類により、日本で消毒措置をしたうえで、農林水産省傘下の植物防疫所が発行する植物検疫証明書や、植物検疫協会が発行する消毒証明書を添付する必要があります。

③厳しい規制の肉類牛は牛海綿状脳症(BovineSpongiformEncephalopathy,BSE)と口蹄疫、豚は口蹄疫、鶏は鶏インフルエンザと、それぞれ重大な疫病が発生する都度、世界の各国は、相次いで輸入禁止措置を取ってきました。

輸入を解禁する際、主要輸入国では、輸出国に対して、指定処理施設、認定処理施設、選定処理施設など、固定施設での処理を義務付ける傾向が強まってきています。

④検疫がカントリーリスクの一部を構成する国検疫は、本来、自国の農作物や生態系に影響を与える病虫害が、外国から入ってくるのを防いだり、家畜や動物の伝染病が外国から入ってくるのを防いだりするためのもので、純粋に防疫上の観点から、実施するものです。

しかし、現実には、検疫を非関税障壁の道具としたり、自国産業の保護のために利用したり、政治的な目的を達成するための道具にしたりして、本来の検疫の目的から離れた運用をする国があります。

このような国は、カントリーリスクの高い国として、貿易をする対象国を絞り込む際、厳しい目で見なければなりません。

(2)放射性物質の規制のリスク2011年3月の福島原発の事故以降、世界各国は、日本からの輸入、特に食品の輸入に対して、厳しい制限を加えています。

日本の特定地域の食品の輸入を停止したり、輸入するには、産地証明書や放射性物質の検査証明書を必要としたりする国(地域)もあります。

諸外国のこうした輸入規制は、すべてが、自国民の健康被害を考慮して取っている措置とは言えません。

ある国は、その国の大使館や領事館を置いている都市や県でできた食品を、輸入禁止にしています。

その国の大使館や領事館の人たちの健康は、心配ないのでしょうか? 一部の国が、政治的な目的のために、放射性物質を口実にしているのは、誰の目にも明らかです。

ただ、放射線による各国の輸入規制は、先進文明国を中心に、徐々に全面解除の方向に向かっています。

9.認証とラベル表示のリスク各国(地域)では、品目により、「認証」と「表示」を義務づけています。

輸出ターゲット国(地域)の「認証」と「表示」に関する情報を集めることは大切ですが、輸出ターゲット国(地域)で、その業種の規制に精通した相手を選ぶだけで、認証や表示についての法規制情報の壁を、乗り超えることができます。

本来、海外の輸入企業は、自国の規制を熟知しているべきですが、グローバル化の流れにあっては、新規参入する企業が常に出てきます。

素人企業は、当然ですが、自国の規制について無知なことが少なくありません。

ジェトロなどの支援機関から、情報を取るのも有用です。

が、必ずしも最新の情報をいつでも入手できるとは限りませんから、最終的に、「取引相手先から最終確認を取ってから輸出する」ようにしなければなりません。

認証やラベル表示の問題で、輸入できなかったり、販売できなかったりした場合、輸入当事者である買主が、直接的な損害を被ります。

買主の責任を明確にする意味で、「取引相手先から最終確認を取ってから輸出」します。

取引相手が、自国の認証とラベル表示制度に自信を欠くのであれば、「試験的な輸出を経て」、「本格的な取引に移行」する慎重さが必要です。

(1)基準認証の取得世界の多くの国(地域)では、電気や電波・通信などに関わる機器の「基準認証」規制を設けています。

日本も、電気用品安全法に基づくPSEマーク制度を実施しています。

欧州連合(EU)では、ローズ指令と呼ばれる電気・電子機器に対する「危険物質に関する制限」(RestrictionofHazardousSubstances:RoHs)指令や、リーチ規制と言われる化学物質に対する「REACH」(Registration,Evaluation,、Authorisation。

andRestrict、on機of械Ch・mi電al子)機規器制・圧力容器・玩具など「中国ではEマーク制度を」実電施気し製て品い・まタすイヤ・玩具などに対する。

これらの商品は、こうした認証を取得したうえで、輸出しなければなりません。

RoHsやCEマーキングなどの海外規格情報、規格適合評価試験など、技術面での支援(証明書発行を含む)は、「広域首都圏輸出技術支援センター」(MTEP))に所属する東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県、横浜市の公設試験研究機関が、中小企業の海外展開支援サービスの一環として行っています。

国際規格や海外の製品規格に関する相談や情報提供、海外の製品規格に適合した評価試験などの技術的な支援が受けられます。

関東圏以外の企業にも、サービスが広がりつつあり、将来的には全国的な規模での海外展開支援の体制が整えられていくものと思われます。

(2)ラベル表示どの国にも、食品、化粧品などの商品は、ラベル表示に使用する言語や表示項目、字の大きさなどを定めている法令があります。

法令に基づいて、「名称」、「内容量」、「原材料名」(または成分)などを表示しなければ、輸入国での

販売はできません。

輸出するには、相手国の法令規定で定められているとおりに、表示する必要があります。

取引相手に、印刷用の版下を作ってもらえれば、日本で版下を印刷業者に渡すことによって、表示ラベルを印刷できます。

この場合、版下は相手が作りますから、表示内容に関しては、日本側も、誤表示のリスクを回避できます。

ラベルの表示内容を自社で作成する場合は、取引相手から、最終的に書面確認を取るようにします。

確認を取らないで、ラベルの誤表示のリスクを負うことは、避けなければなりません。

10.輸送開始前に滅失・損傷の原因があるリスク国際間の物品の移動はノーリスクで行います。

そのために、売主も買主も、損害保険をかけるのが、「貿易の基本」の一つで、輸送途上の事故による貨物の滅失や損傷は、保険でカバーされることは、「第五章 物流リスク」で説明しました。

しかし、貨物が輸送途上で滅失・損傷しても、滅失・損傷の原因が、輸送開始前に存在していた場合、損保会社は、輸送途上の事故ではないとして、損害賠償を拒絶します。

(1)輸出梱包の強度売主は、長距離の輸送に十分堪える強度を持つ梱包で、出荷しなければなりません。

梱包自体が強度不足だった場合、輸送途上で滅失・損傷しても、「その原因は、輸送が開始する前から存在していた」として、損害保険では賠償されません。

輸出梱包には、国際間の輸送に堪えるだけの強度が必要です。

(2)コンテナの故障自社の工場や倉庫でバンニングする場合、空のコンテナを工場や倉庫につけ、コンテナ内に貨物を積み込みます。

これをシッパーズパック(Shipper’sPack)と言います。

CFSでフォワーダーがバンニングするのはフォワーダーズパック(Forwarder’sPack)で、船会社や航空会社がバンニングするのをキャリアーズパック(Carrier’sPack)と言います。

コンテナの故障の有無を確認するのは、バンニングする会社の責務です。

天井に穴が空いているコンテナに、貨物をバンニングして出荷した場合、コンテナ内の貨物が、水濡れしたり、漏洩したりするかもしれません。

そうなったとしても、シッパーズパックであれば、売主には保険金が支払われません。

水濡れや漏洩の原因が、輸送開始前から存在していたからです。

コンテナに故障がないことを確認するのは、フォワーダーズパックの場合はフォワーダーですし、キャリアーズパックであれば、運送人である船会社や航空機会社の責任です。

(3)コンテナ内での積付不備自社の工場や倉庫でバンニングする場合、空のコンテナを工場や倉庫につけて、自社でコンテナ内に貨物を積み込みます。

バンニングが終わると、運送人による運送開始となりますが、バンニングする際、コンテナ内での貨物の積付が不適切で、貨物が輸送途上で滅失・損傷しても、その原因は、輸送開始前から存在していたとして、損保会社は補償を拒絶します。

11.対価確保前にモノやサービスを提供するリスク貿易では、代金を先に払ってしまえばモノがこない、モノを先に出せば代金を払ってこないということが、昔から頻繁に起きてきました。

だからこそ、代金が確実に売主に入金し、貨物は確実に買主の手に渡るという絶妙な仕組み、信用状(L/C)決済の方法が編み出されたのです。

L/C決済の原型は19世紀にまで遡ると言われますが、これによって、貿易における売主の「決済リスク」と、買主の「荷受リスク」を同時に解消できました。

L/Cは、貿易業界における叡智の結晶です。

対価を確保する前に貨物を船積みせざるを得ないD/PやD/A、出荷後の後払い送金などは、リスクのある決済方法です。

そこで、「第七章 決済リスク」で、NEXIの貿易保険にリスクをヘッジする方法を解説して、保険にリスクヘッジできなければ、契約しないことを強調しました。

(1)対価確保前にやりがちなことところが、相手方から対価を受け取っていないのに、相手が求めるままに、ノウハウを開示してしまったり、技術資料やサンプルを送ってしまったり、果ては、デモ機まで提供してしまったりすることが、現実に起きています。

相手は、目的を達成すれば、もう商談などする意味はありませんから、その次には、先方から商談を打ち切られたり、相手先が雲隠れしたりします。

その段階で、「騙された」ことに気づくのですが、手遅れです。

本格的な商談に入る以前でも、先に、モノやサービスを提供するのでなく、必ずそれに見合う対価を取るべきです。

価値が少なければ、対価なしでも構いませんが、価値あるものは、すべて対価をもらってからです。

これも、「貿易の基本」です。

(2)相手を信じるのでなく、リスク回避をする貿易では、相手を信じるのでなく、リスクを回避することが大切です。

相手を信じてリスクをさらせば、リスクは必ず牙を剥きます。

相手を信じることで、ビジネスが上手く行っているのであれば、それはたまたま運が良かったに過ぎません。

たまたまの運に委ねて商売をするのであれば、それは、会社に馬券を買わせることと同じです。

会社に馬券は買わせる人はいないでしょう。

「信じるのではなく、リスク回避をする」、これも、「貿易の基本」です。

12.商習慣・契約観念の違いからくるリスク日本のIT業界は、特殊です。

日本国内のITビジネスの契約は、最終的な規格を細かく決めないで、曖昧な目標規格だけを決めて、契約した後で随時「すり合わせ」をしながら、最終形に仕上げていきます。

ですから日本のIT企業が海外のIT企業にソフトウエアやゲームなどの作成を委託すると、海外側は、契約書に書いてある規格が最終規格だと思っていますから、契約してから日本側が「摺り合わせ」をしようとすると、契約規格の変更と受け取ります。

契約規格の変更であれば、それまでに作業してきた工程の一部が無駄になることがありますから、報酬価額の上乗せを要求してきます。

発注した日本側にしてみれば、お互いに「摺り合わせ」をして、最終形に仕上げていくのが「常識」ですから、そのコストも込みで報酬価額を決めたという認識です。

そこで、日本側と海外側との意見の対立が生じます。

これが、商習慣・契約観念の違いからくるリスクです。

海外側には、すでに日本企業との苦い取引経験を経て、日本のIT業界の「擦り合わせ文化」に慣れている企業もありますから、日本側としては、海外の取引相手を選ぶ際に、日本の「擦り合わせ文化」を理解しているか否かを確認して、起用の可否を決めることです。

あるいは、日本側が、海外の「契約文化」を前提として最終完成形の規格を決めて、契約することも一つの方法です。

13.温度変化のリスク遠距離の輸送途上で、貨物によっては、輸送途中の気温変化の影響で、変色、変質、変形、亀裂、形状変化などが生じるリスクがあります。

コンテナ船の航路によっては、赤道を超えるものもありますし、インド洋や赤道近くを通る船もあるでしょう。

コンテナ船の一番上に積まれているコンテナは、直射日光を浴びると、常温のコンテナ内の温度が低温調理可能な温度まで上昇し、モノによっては結露したり、カビが生えたりします。

輸送経路によっては、常温品でもリーファーコンテナ(ReeferContainer:冷蔵・冷凍コンテナ)を使った方が良い場合があります。

もちろん、冷蔵品や冷凍品は、リーファーコンテナを使います。

リーファーコンテナ内の温度は、船会社によって設定できる温度帯は異なりますが、通常は25℃~+25℃、または30℃~+30℃の範囲内です。

輸送中のリーファーコンテナ内の温度は、温度データロガーで自動的に記録されます。

買主から事故の連絡があれば、船会社からコンテナの温度記録を取り寄せて、原因を究明します。

コンテナの故障などによる輸送途上の事故であれば、貨物の損失は損害保険でカバーされます。

保険会社は、船会社と賠償交渉をすることになります。

14.不適切な荷扱いのリスク世界中どの国も、日本と同じような荷扱いをするわけではありません。

乱暴な荷扱いしかできない国(地域)も現実にあります。

モノは、手で持ち上げて、そのまま高いところで両手を離すことが習慣になっていれば、日本では壊れない包装でも、確実に壊れます。

不適切な荷扱いのリスクは、生活習慣というカルチャーの違いが一つの原因です。

商品によっては、花卉のように、直射日光に当ててはいけないモノがあります。

しかし、貨物を取り扱う空港の作業員が、そのことを知らなければ、直射日光の当たる場所に、花卉の商品を置いてしまうことが起きます。

輸入地には、鮮度不良の花卉が到着します。

このような不適切な荷扱いのリスクを見極めるには、取引を開始する前に、念のため、貨物が輸送されるルートを訪問して、どのような問題が起こり得るかを、調査します。

輸送ルートは、単に最短ルートが最善とは限りません。

適切な荷扱いがされるかどうか、特殊な商品であれば、その荷扱いに慣れた港湾や空港なのかどうかを基準に、輸送経路を選定する考え方が必要です。

果物を日本から中国に輸出していたある日本の業者は、中国の東北地方で売るのに、大連港で陸揚げすると荷傷みが激しいことから、種々試験をした結果、上海港で陸揚げして、陸路で東北まで輸送するルートを選択しました。

不適切な荷扱いのリスクを考慮した結果です。

15.為替リスク貿易で常につきまとうのは、為替リスクです。

日本円建てで契約すれば、日本側に為替リスクはありませんが、相手方に為替リスクが生じます。

米ドル建てで契約すれば、米ドル使用国でない限り、売主と買主の双方が、それぞれ日本円と米ドル、現地通貨と米ドルとの為替リスクにさらされます。

相手方の現地通貨が、貿易決済に使用できる国際通貨であれば、現地通貨建てで契約することも可能ですが、その場合は、日本側に為替リスクが生じます。

(1)為替先物の予約このような貿易についてまわる為替リスクは、契約通貨の外貨先物を予約することで、回避できます。

仮に、20XX年の1月下旬に、買主側から、商品代金5万ドルが、入金する予定であれば、売主は、銀行との間で、5万ドルの外貨を、20XX年の1月下旬に、銀行に売る約定を銀行とします。

この約定は、銀行の立場からすると、5万ドルを売主から買って、売主に日本円を支払う約定です。

ですから、銀行にしてみれば、米ドル、5万ドルの買い、つまりBuyingということになり、適用する為替レートは、TTB(電信買相場:TelegraphicTransferBuyingRate)のレートです。

輸入取引の場合は、銀行に日本円を払って、ドルを売る(Selling)ことになりますから、適用するレートは、TTS(電信売相場:TelegraphicTransferSellingRate)となります。

銀行は、営業日には毎日、半年先までのTTBとTTSの為替レートを公表します。

公表されるレートは半年先までですが、必要があれば1年先でも2年先でも、銀行は、個別に先物の為替レートを呈示します。

20XX年の1月のTTB先物(またはTTS先物)を予約するには、ドルを銀行に売る時期によって、次のような引き渡しの方法があります。

引渡時期の範囲が狭いほど、売主に有利なレートになります。

・月確定日渡: 例 20XX年1月24日・暦 月 渡: 例 20XX年1月(1月1日~31日)・順 月 渡: 例・特定期間渡: 例(2)為替予約の手順外貨の先物取引をするには、銀行の審査を経て、「外国為替予約取引約定書」を結ぶ必要があります。

買主と商談する際は、為替先物相場を参考にして算出した、外貨建てのオファー価格を買主に呈示して商談をします。

オファー、ビッドを経て、商談が妥結すると同時に、銀行に為替予約を行ないます。

予約は、銀行とウェブ上でオンライン予約することが可能です。

為替予約をして、為替レートが確定することで、円貨ベースでの売上予定額や利益も確定し、為替相場の変動による為替リスクを、回避することができます。

16.輸出入関連法令違反のリスク貿易業者には、税関による輸出入事後調査(「事後調」と言います)が行われることがあります。

調査の重点は、輸出では、安全保障貿易管理に関わる禁輸国への迂回輸出がないか、輸出するのに許可が必要な品目で、無許可輸出していないか、麻薬原料やアスベストなどの禁輸品の輸出の有無などです。

輸入では、脱税の有無が主な調査対象です。

輸入の違反例として良くあるのは、買主が提供した部品に係る費用の申告漏れ、買主が支払った価格調整金(インボイス金額以外の貨物代金)の申告漏れ、低価インボイスによる輸入申告、輸入貨物に係るライセンス料の申告漏れ、輸入貨物に係る業務委託手数料の申告漏れなどがあります。

買主から売主への輸入貨物に関わるライセンス料の支払いや、業務委託手数料等は、貨物のコストの一部ですから、それらを含めた価額で輸入申告しないと、脱税したことになります。

低価インボイスとは、アンダーバリュー(UnderValue)のインボイスのことで、実際の貨物の価額より低い価額を記載したインボイスを言います。

アンダーバリューのインボイスを使って輸入申告すると、関税と消費税の脱税ですから、特に悪質な行為と見なされます。

なお、帳簿類は、輸出では5年間、輸入では7年間、書類は輸出入とも5年間の保管が義務付けられています。

17.海外課税のリスク貿易をしていると、外国から課税される「海外課税のリスク」が生じることがあります。

海外課税の主なリスクには、「PE認定のリスク」、「個人所得税のリスク」、「独占禁止法違反のリスク」および「移転価格税制のリスク」の四つがあります。

(1)PE認定のリスク恒久的施設(PermanentEstablishment:PE)という税務上の概念があります。

PEとは、事業を行う際に主要な役割を果たす場所を言い、支店、出張所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫などが該当します。

事業を行うのに準備的・補助的な役割しか果たさない場所はPEではありません。

国際税制では、「PEなければ課税なし」という大原則があります。

ですから、通常、出張者が海外に行って、商品を売り込んだり、買い付けを行ったりしても、その国で課税されることはありません。

出張者は、通常、PEでないからです。

ところが、海外での技術指導や設備の据付などを伴う契約で、長期に技術者を海外に派遣した場合、その地の税務当局が、「PE認定」をして課税してくることがあります。

一人の出張者が長期に滞在している場合でも、短期出張者を入れ替わり立ち代わり派遣して滞在させている場合でも、事実上、本社の事業拠点になっていると税務当局が見なせば、PEとして認定してきます。

長期滞在とは、中国、タイ、インドネシア、ベトナムは、6ヶ月以上の滞在で、これを超えると「PE認定」されます。

国ごとの「長期」の定義は、日本とその国との租税協定で決められています。

「PE認定」の厄介な点は、税務当局による一方的な見なし課税になることです。

税務当局は、PEの活動によって、本社がどれだけの利益を上げたかを証明する資料の提出を求めますが、簡単に対応できるものではありません。

最終的には、見なしで法人税などの計算をして課税される結果になりがちです。

海外企業との間で、技術指導や設備据付工事などの契約をする場合、前述の長期滞在にならない据付期間であれば、PE課税のリスクは回避できます。

もちろん、契約だけでなく、実態のうえでも、滞在期間は「長期」未満でなければなりません。

(2)個人所得税課税のリスク「所得税」には「法人所得税」(法人税)と「個人所得税」(所得税)があります。

「法人所得税」(法人税)の課税原則は、「PEなければ課税なし」ですが、「個人所得税」(所得税)の課税原則は、「所得の源泉国に課税権あり」です。

「所得の源泉国」とは、例えば海外駐在員の場合、会社は、駐在員の給与の一部を日本で払ったり、留守宅手当を日本で支給したりするのが一般的です。

そうした日本払いの報酬が支払われるのは、その駐在員が海外の国で働いているか

らです。

つまり、その駐在員の所得の源泉は海外のその国にあり、課税権はその国にあります。

日本で支払われる駐在員の給与の一部や留守宅手当などに対する所得税の課税権は、海外の駐在国にあって、日本の税務署には課税権はありません。

従って、その駐在員は、日本払いの部分の報酬も含めて、駐在国で納税申告をして個人所得税を納税しなければなりません。

海外駐在員の場合は、赴任した日から「日本の非居住者」、「駐在国での居住者」扱いになりますから、個人所得税は赴任日から任地で課税されることになります。

出張者の場合、国や、租税条約により、異なりますが、通常、年間滞在日数が183日未満の外国人をその国での「非居住者」とし、その国での収入がなければ、課税されることはありません。

ただし、出張者が183日以上の長期にわたってその国に滞在すると、その国の「居住者」扱いとなって、その年の収入は、その国で納税しなければなりません。

この場合、海外のその国の納税証明書があれば、日本側で納税したその年の所得税は、外国税額控除の形で全額還付されます。

(3)移転価格税制のリスク移転価格とは、モノやサービスが移転する価格、つまり売買価格やサービス料金のことです。

親会社が子会社に役員を派遣するなど、実質的な支配関係にある会社同士が行う取引では、恣意的に移転価格を設定すれば、親会社の利益を多くして、子会社の利益を少なくすることができますし、逆に親会社の利益を少なくして、子会社の利益を多くすることも可能です。

しかし、恣意的な価格で取引すれば、どちらかの国の税務当局に、税の取りはぐれが生じます。

取りはぐれた側の税務当局が、移転価格税制を盾に、課税するのは当然です。

親会社の所在国の税務当局と、子会社が所在する国の税務当局のいずれもが、法人税等の取りはぐれが生じないようにするには、お互いに支配関係にない独立した企業同士が行う価格(これを「独立企業間価格」と言います)で、親会社と子会社が取引することです。

第三者企業から見積もりを取ったり、通関統計で輸出入価格を参照したりして、親子間の取引価格を決める方法が一般的です。

また、親子間での取引価格を頻繁に変更すると、移転価格に対する税務当局の疑念を惹起するかもしれませんから、親子間での取引価格の変更は、慎重に考えなければなりません。

(4)独占禁止法違反のリスク販売店契約で、相手方が輸入した後、国内で再販売する価格を、日本側が指定したり制限したりすると、相手国での独占禁止法または不公正取引防止法違反とされ、販売店契約が無効とされるリスクが生じます。

輸出先の国での販売店同士、あるいは平行輸入業者との無用な過当競争を避けるために、再販価格の下限を指示したくなる気持ちは分かりますが、外国側がこれを行うことは厳に戒めなければなりません。

販売店契約書で、再販価格の指定などは、絶対にしないように注意しましょう。

18.輸入ビジネスのリスク海外から輸入する場合、とりわけ新興国からの輸入には、注意が必要です。

新興国では、生産環境も、人々の意識も、今の日本のレベルでないところで、商品が作られます。

日本側は、価格が安いメリットがあるから、輸入契約をするのですが、価格が安いのは、それなりの生産環境で作られるからで、そこにあるリスクを無視することはできません。

(1)社会経済発展段階のギャップ(時代差)からリスクを判断新興国で、今、見られる社会現象が、日本では何時頃あったのかを考えると、日本とその国との「社会経済発展段階のギャップ」(平たく「時代差」と言います)が、どのくらいなのかが分かります。

例えば、その国での初任給が幾らかを調べてみます。

それが、日本ではどのくらい前だったかで、時代差の年数が分かります。

その国で、地下鉄が普及し始めたのはいつだっただろうか? 今、公害が社会問題になっていれば、日本との時代差は、50~60年程度。

小売の業態は、日本では個人商店から、百貨店、スーパーマーケット、コンビニ、専門店、ショッピングモールへと推移してきました。

その国では今、どの段階なのでしょうか? 日本では、百貨店が光り輝いている時代がありました。

今、新興国のその国ではどうでしょうか?このように観察すると、日本と新興国とでは、国によって差はありますが、総じて30~50年程度の時代差があることが分かります。

つまり、新興国から輸入するということは、基本的に、30~50年前の日本の企業にモノを作ってもらうことと同じだ、と考えて良いのです。

そう考えることによって、見えなかったリスクが見えてきます。

(2)時代差を埋めてリスクの低い輸入取引を実現するには?新興国からの輸入取引で、品質や納期遅れが起こらないようにする方法は、一つしかありません。

それは、製造前、製造中、製造後の各段階で、売主が品質や納期が契約どおり遵守できるように、買主側が売主をサポートすることです。

輸入ビジネスを成功させるための最大のポイントは、ここにあります。

工場の製造加工設備が最新鋭でも、工場の従業員や管理者の意識は、最新鋭とは限りません。

価格が安いことだけに目を向けないで、日本との社会経済発展段階のギャップからくるリスクが、輸入商品に付随して来ないようにしなければなりません。

買主側が、商品の製造前、製造中、製造後の全段階で、品質と納期の工場側の管理に立ち会うために、品質管理要員を工場に派遣することを、売買契約締結の前提条件とします。

ただし、日本側が工場での製造立ち会いや工場出荷前での品質検査をした場合、輸出された貨物が品質不良であっても、日本側が製造立ち会いや出荷前の検品を行ったことを盾に、品質不良のクレームを拒絶することが起きがちです。

こうしたことが起きないようにするには、契約書に次の内容を明記しておくことが必要です。

;「商品が、売主の工場で製造される際、買主は、買主の代表を売主の工場に派遣して、製造工程に立ち会わせることができる。

また商品が売主の工場から出荷される前に、買主は代表を売主の工場や保管場所に派遣して、この契約の商品の品質及び数量を検査することができる。

買主の代表が、製造工程立ち会いおよび/または商品を検査した結果、この契約の品質条件を満たさないと判断した場合、売主は、当該商品を出荷しないものとする。

また、買主の代表が、製造工程立ち会いおよび/または商品を検査したとしても、この契約の品質規格条件と船積数量などの条件を含む、契約書に記載されている売主の義務にはいささかの変更も軽減も生じず、売主は、契約に規定されている売主の義務を履行するものとする。

」(3)製造立ち合いは買主が売主に提供する生産支援のサポート売主側は、製造立ち合いの提案をすると、最初は抵抗するかもしれません。

しかし、貨物が日本に着いてから、クレーム交渉になる煩雑さを考えれば、そうなる機会が劇的に減る方法を選択する方が賢明なことは、話せばすぐ分かることでしょう。

製造立ち合いは、買主が買主のために行うのではなく、買主が売主に提供する生産をサポートするサービスの提供です。

この方法で、輸入取引を実施すれば、輸入のリスクは大幅に低減するだけでなく、輸入商品の販売先に対して、自信をもって販売できますから、ビジネスを強固なものにできる効果があります。

このような製造立ち合いの仕組みを実行する、人材も資金も時間もないのであれば、輸入業者としての資格はありません。

輸入業者は、日本の国内法上も、国内製造品における製造業者と同じ立場に立つ、輸入品に対して責任ある存在だからです。

あとがき本書のような、「リスクの視点」に主軸を置いた、実戦に役立つ「知識と知恵」を随所に織り込んだ貿易実務の書籍は、今まで必要であったにも関わらず、ほとんど「空白状態」でした。

それは、主として営業マンに必要な貿易実務が、商社やメーカーの貿易部門の中で、先輩から後輩へと伝えられてきたことが、大きく関係しています。

一方、新たに貿易を始めようとする企業は、主に貿易事務について解説した貿易実務の書籍や、海外展開を支援する組織が行う貿易セミナー等から、貿易知識を習得するしかありませんでした。

しかし、それらの多くは、貿易の営業マンが必要とする貿易知識というには、しっくりこないものが大半でした。

「新しいことを学ぶには20時間あれば良い」と言われています。

「貿易の基本」も同じで、20時間あれば十分です。

貿易知識がないまま、海外展示会や商談会に出かけた場合の「時間と経費の無駄」を想起すれば、一回5時間で4日間の時間が取れないなどと申し訳する言葉に、何ら説得力はありません。

本書が、「貿易の基本」を学ぶ礎になることを願っています。

本書は、貿易営業で活躍される方々にとって、直接的に役立つ貿易実務書として執筆しました。

初めて貿易の仕事に携わろうとする方、従前から貿易をやっていて、古い貿易知識のままアップデートできていない方、系統立った貿易の勉強をしたことがなく、今さら人に聞けないでいる方、確実に利益を出し、絶対に損を負うことのない安全な貿易取引をしたい方、そして各支援機関で、海外展開の支援業務に携わっておられる方々のための、座右の銘として、役立つものと確信しています。

また、貿易業務の一部分の仕事に携わっている方にとって、全体の中での自分の仕事の位置付けを知るうえでも、本書は有益です。

皆様の忌憚のないご意見、ご指導を賜ることができれば幸甚です。

【著者紹介】太田(おおた・みつお)◎――東中ビジコン・代表~「経営と貿易のコンサルタント」~大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)卒業。

住友商事株式会社にて、海外展開の戦略作り、中国・東南アジアとの貿易や駐在員事務所、現地法人、自社製造工場などの立ち上げから運営まで、34年間にわたって携わりました。

2004年、“東中ビジコン”を興し、コンサルティング・講演・執筆活動に専念。

中小企業の海外展開を支援する国際化支援の専門家として、貿易の基本、企業進出の手順、進出後の異文化環境における企業経営の方法、海外子会社を統括管理する手法や撤退方法等について発信を続けています。

中国食品の安全性が問われた際は、NHK『視点・論点』・『ニュース深読み』・『クローズアップ現代』、『ガイアの夜明け』や数多くのニュース・ドキュメンタリー番組に出演しました。

東中ビジコンのウェブページは下記のとおりですが、「東中ビジコン」で検索すれば、トップにヒットします。

東中ビジコンhttp://www002.upp.sonet.ne.jp/tohchu_bizcon/consul.html

営業マンのための貿易実務~最新の「インコタームズ2020」に対応!~発行日 2019年12月24日著 者 太田光雄本作品の全て、または一部を、著作権者に無断で複製・転載・配信・送信、或いは内容を無断で改変する等の行為は、著作権法によって禁じられています

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