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第五章 マインドセットで陥りがちな罠

目次

陥りがちな三つの罠

稼ぐ社長のマインドセットを行うプロセスの中で、陥りがちな三つの罠があります。この罠に掛かってしまうとマインドセットをしようと思ってもなかなかできず現状を変えることができません。

第一の罠「イケている自分」を捨てたくない…

マインドセットする、ということは、変容し新しい自分になるということです。

つまり、成功を収め、その時に築いた「イケている自分」を手放すことになるのですが、この「イケている自分」を手放すのを嫌がる社長さんがいらっしゃいます。このような場合、変容は起きません。これが第一の罠です。

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ある社長さんは起業し、売り上げを三億円まで成長させ、さらに六億円まで伸ばそうとしていました。しかし、あらゆる手を打ったのですが、どうしても六億円の壁を突破できません。

それどころか、売り上げが上がってくると組織内でトラブルが多発し、再び業績は下降。そして、なぜか人が離れてしまう。

そして簡単な業務のはずなのにミスを犯し、それが大きなダメージにつながっていく、ということが頻繁に起こってしまうのです。

これはどういうことなのでしょうか?この社長は、起業した後、努力を重ね、そして、ここまでたどり着きました。

その成功体験から、「自分でこの成功を築けた」「ここまでこれた自分はイケている」と感じています。それは当然のことです。

そして、次のステージ(ここでは六億円企業)に行くためには『今までとは違う自分になる必要がある』ということを無意識ではわかっているのです。

つまり、次のステージに行くためには、今の(イケている)自分を捨てることになる。それは嫌なので無意識が抵抗しているのです。

言葉では、「六億円を突破したい」と言っています。

つまり意識レベルでは本気で「次のステージ」に行きたいと思っているのですが、無意識レベルでは行きたがっていない、のです。

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「じゃあ、イケている自分を持ってはダメなの?」「自信にもなるし、いいじゃない!」という声も出てきそうですね。いいんです。これまでのイケている自分を捨てなくても。

ただし…次のステージに行くためには、その「イケている自分を手放せるくらいイケている自分になる」必要があるということなのです。

残念なことに、多くの社長はこの罠に陥りやすい傾向があります。

なぜなら、社長は過去に「何らかの形で、常識を超えた負荷を自分にかけ、そこから成功した」という経験をもっているからです。

  • *小学校、中学校の時、学級委員長だったり部長やリーダーをしていた。
  • *自分のハードルより高い受験にトライした。
  • *受験に落ちて失敗し、悔しくて猛勉強した。
  • *趣味や遊びにマニアックなほど没頭した。
  • *営業で死に物狂いにやり、トップセールスマンに上りつめた。
  • *強い劣等感があり、見返してやりたいという一心で起業しここまで来た。
  • *社長をしていた父が急に倒れ、経験もないのに社長になってなんとかやってきた。

このように目標や責任にコミットした結果、成功体験をもっている社長は普通の人達よりも「強い」信念や価値観を持っているのです。

だからこそ、その信念や価値観を手放せないという状態になりやすいのです。このように多くの社長がこの罠に掛かってしまいます。次のステージを目指すなら、今までの自分を変容させる。

そのためには、イケている自分を手放せるくらい、イケている社長を目指してください。

第二の罠「恐れ」と向き合いたくない…

第二の罠は、自分の恐れていること・嫌なことから目を逸らし、違う何かに手をつけることで、恐れと向き合わないようにしている状態のことです。これでは、深い部分からの変化は起こせないため「稼ぐ社長のマインドセット」を手に入れることはできません。

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ある社長さんは、二十億ある売り上げを三十億まで引き上げたい、と考えていました。そのため、様々なしくみの導入、社員研修などを取り入れました。しかし、どうしても上手くいかない、と悩んでいました。

私がお話を聴くと、その企業が取り組むべき点が明確になりました。それは「社長と副社長との間の確執」でした。

つまり、企業のサービスやしくみが課題ではなく、社長の副社長に対する「関わり方」に課題があったのです。

私がそのことを指摘すると「いやぁ ~、それはそうなのですが…それよりも今回導入した人事制度をなんとかしたいのです。それに、もっと社員教育をしっかりと…」と副社長との確執について触れようとしません。

本人も「なんとなく」わかっているのです。自分が何に向き合うべきなのか? しかし、そのことに触れたくないので、人事制度、社員教育など他のものを扱うことで「向き合うべきもの」から目を背けているのです。

この社長が「向き合いたくないこと」とはなんだったのでしょうか?社長は物事を慎重に捉えながら確実に進むタイプ。一方の副社長は、果敢に攻めるチャレンジャータイプでした。

社長は自分とは違うチャレンジャータイプの副社長を自分の弱点を補ってくれる頼もしい相棒と感じていました。

と同時に、副社長のどんなことでも恐れずにチャレンジする姿をみていると「自分が臆病な人間」に見えてしまうことがありました。

つまり、副社長をみていると自分の臆病さがクローズアップされてしまうのです。それが度重なり、いつのまにか副社長との関わりを避けるようになっていたのです。

この会社は今、新しい分野への進出に挑戦しようとしていました。そのためには、副社長の「果敢に攻める力」をより発揮してもらうことが必要でした。

しかし、社長は副社長の力を頼ろうとはしません。彼の力に頼ることは、自分の弱さを認めてしまうことになると感じ、彼を避けていたのでした。

しかし、社長は気づいていないのです。この新業態への「挑戦」は、副社長から感じる自分の劣等感を破り、自己変容を起こす「チャンス」であること。

そして、そのことが組織全体を次のステージに引き上げることにつながるということを。

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このように「向き合うべきこと」があるにもかかわらず、それを無意識で避けているケースがたくさん見られます。それは、自分のある部分を見たくない、受け入れたくない、ということから生まれる無意識の行動です。

「稼ぐ社長のマインドセット」を行い、自己変容を起こすためには「全ての自分を受け入れる」ことが必要です。

いいですか。いい自分を残し、嫌な自分を修正するのではありません。いい自分も嫌な自分も全て受け入れるのです。当然のことながら、それは気持ちのいいことではありません。

弱い自分。認めたくない自分。情けない自分。これらを丸ごと、そのまま受け入れる。このプロセスを通らない限り変容は起きないのです。

前述したように、サナギから蝶に変容する間は何も食べません(サナギでいる間じゅうは何も食べられませんよね)。つまり、サナギが蝶になるためには「何かを足す」必要はないのです。

自分の全ての細胞を排除することなく、受け入れて溶かして、そして再形成する。このようにして変容が起きるのです。これは「人の変容のプロセス」でも同じです。自分に「何かを足す」のではなく、全てを受け入れるのです。自分の中の恐れと向き合う。これが自己変容を起こすための必要条件なのです。

第三の罠 したいことがわからない…

事業を進めていく中で「自分が本当にしたいことがわからなくなった」とおっしゃる社長さんが数多くいます。

起業後、成長して大きな壁にぶつかった時に「この感覚」になる方が多くいます。このような感覚をモチベーション・ロス(モチベーションの消失)と言います。

これが第三の罠です。この罠に入ってしまうと、迷走状態になり、変容を起こすことができません。

「したいことがわからなくなった」という社長。しかし、それまでモチベーションがあったはずです。このような方に「起業時のモチベーションは?」と尋ねると、

  • 生活のため。
  • 家族を守るため。
  • その業種(商品、サービス)が好きだから!

というような受け答えが返ってきます。

しかし、それは本質的な動機ではありません。そうであるなら、起業でなく会社員というポジションでも、可能なのですから。

「起業」という道を選んだ本質的なモチベーションは、

  • ・若い頃、バカにされた。見返してやる( =誰かからバカにされている感覚)
  • ・自分は優秀だ。それを証明したい!( =自分が認められていない感覚)
  • ・とにかくサラリーマンが嫌!( =嫌なことは避けたい)

などマイナスな感情が色濃く含まれている場合があります。これはこれで、パワフルなモチベーションになります。

このモチベーションがあったからこそ、現在の状況を作ることができたのでしょう。

このように、〝したいこと〟ではなく、〝そうなりたくない〟という「恐れ」が原動力となっているモチベーションを「フィア・ベース」のモチベーションと言います。

フィア( Fear)とは「恐れ」のことです。

そして、このフィア・ベースのモチベーションの特徴には、爆発力がある、直ぐに行動に移せる、という利点があります。

そして、フィア・ベースをモチベーションにして経営をして来た場合、それが達成した瞬間、モチベーションを失うのです。

「見返してやろう!」という思いでここまできた社長は、ある程度の成功を収めた時、「見返してやる」必要がなくなったので、何をすればいいのかわからなくなるのです。

時代劇で、親の仇を討つために生き抜いてきた武士が、親の仇討ちに成功したら、その後自分が何をしていいのかわからなくなった、というのと少し似ていますね。

そして、起業ではなく、事業継承をした社長にもモチベーション・ロスが起こるケースが数多くあります。例えば、突発的な理由で、父の事業を引き継がなければならなかった…などという場合です。

従業員のため、家族のために自分が引き受けなければならない。責任感と義務。つまり、望んではいなかったが、しなくてはならなかった、と感じているなら、それはフィア・ベースのモチベーションです。

ある製造加工会社の経営者の事例です。

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この社長は、父が急に体調を崩し、息子である本人が事業を引き継ぎました。急な出来事でしたが「なんとかしなくては」と奮起し、会社を経営難から回避させた方でした。

しかし、八年経った今、業績は横ばい。いろんな手を打ったがどれも上手くいかず、むしろ業績はジリジリと下がっている。どうしたらいいかわからなくなっている、という状態でした。この方のお話を詳しく聴いていくと…。

『事業継承後「この会社をなんとかしなくては」という強い思いで一心不乱にやってきた。しかし最近は、上手くいかない。本音を言うと、ここにきてどうしても力が入らない。本気になりきれていない自分を感じる』と言うのです。

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これは何が起きているか、わかりますか? 事業継承した時は、父のため、従業員のためという思いが強く、それがモチベーションとなり、ここまで突っ走って来たのです。

しかし、八年間、懸命に走ってきたおかげで「なんとかしなくては」という状態を脱しました。と同時に、目的が達成されてしまったため、自分のモチベーションを見失ってしまったのです。

モチベーション・ロスが起きた場合、これも自分が変容するサインだと思ってください。そして「稼ぐ社長のマインドセット」をすることで、もう一度、自分の内側から湧き起こるエネルギーを見つけることができます。

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