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第二章 トップが倹約する会社に不況なし

目次

中小企業は日々倹約の積み重ねが大事

わが社の経常利益率は二%前後であり、業界でトップクラスを誇っています。

ナンバーワンの利益率があるからこそ、メーカーや仕入れ先、小売店、銀行などから信頼されて取引いただいているわけで、赤字続きの会社であれば、誰も相手にしてくれないでしょう。

高い利益率を上げるためには、当然のことながら、経費を徹底して節約するのが王道であり、それ以外にありません。

「入るを計って、出るを制する」という金言は、昔もいまも変わらない経営の鉄則なのです。

とくにわれわれのような中小企業では、小さい積み重ねが大事です。

大企業、中堅企業であれば、特許や技術を持っていてそれでメシが食えるかもしれませんが、中小企業の九九%は特許などを持っておらず、ましてやわが社は問屋ですから、メーカーから仕入れて小売店へ卸すのが仕事です。

メーカーからの仕入れ値は、基本的にどこの問屋も変わらないため、利益を出すには日々一円でも倹約していくしか方法がありません。

ですから、私は「経費を削減する」という言葉が大嫌いです。

「倹約の大切さを説いているのに、経費の削減という言葉が嫌いとはどういうことか」と、ちょっと怪訝に思われるかもしれませんが、業績が悪くなってから、慌てて「経費削減」「人員削減」を唱えるのはどうにも我慢ならないのです。

一円でも経費を節約して利益を上げるのは、経営者であれば当たり前のことであり、あらためて「経費を削減する」といわなければならないのは、経営者の怠慢以外の何ものでもありません。

もし、日々これ以上経費を削減するところがないくらいにまで削減しておけば、「経費を削減する」という言葉が口をついて出てくるはずがないわけで、私はその言葉を口にしなくてもよいように、徹底した経費の削減を積み重ねてきたつもりです。

わが社があまりにも経費削減を徹底しているのを見て、「トヨタ方式を取り入れているのですか」とよく質問されます。

トヨタは、乾いた雑巾をまだ絞るといわれるぐらいに経費削減の意識の高い会社で、そのトヨタと同等の評価を受けるというのは非常に名誉なことです。

しかし、私のところは別にトヨタを真似ているわけではなく、利益を出そうと思ったなら、吉寿屋でもトヨタでもやるべきことは同じで、これ以上ないぐらいに経費を削減するしかないのです。

常日頃からそこまでやっておかないと、厳しい状況になったときに生き残っていけません。

今度の世界的な金融危機の影響で天下のトヨタでさえ大幅な赤字だそうですから、中小企業ならなおさら大変です。

慌てふためいて経費を節約しようとしても、日頃からやっていないのですから、急にうまくいくはずがありません。経費は、景気の良し悪しに関係なく、削減するところがあってはいけないのです。

にもかかわらず、景気のよいときには経費の管理が甘くなり、それでも会社は何とか回っていくので見過ごされがちですが、景気が悪くなったときに、それが大きなダメージになります。

それゆえ、私としては、「経費を削減する」という言葉は絶対に口にしたくないのです。ちなみに、私が嫌いな言葉はあと二つあります。「苦労」と「初心に帰る」です。

「苦労」という漢字は、「労(働)を苦しむ」と書きますが、「働くことが苦しい」とは、私には考えられない話です。

私は働くことが何より好きで、会社のためにいくら努力をしても、それが大変であるとか、苦労であるとか思ったことは一度もありません。

人様から「苦労されたでしょう」といわれるのがイヤで、私は「努力をしても、苦労をしたことはいっぺんもありません」とついムキになって言い返してしまいます。

頑張って努力をしても一向に実らなかったとしたら、それは苦労になるのかもしれませんが、ありがたいことに、私がこれまでやってきたことは、すべて実っています。

だから、努力はしても、苦労をしたことは一度もないのです。よしんば実っていなかったとしても、私は、自分のしてきたことを「苦労」とは思いません。

苦しいなどという感情が少しでも入れば、「もっと頑張ろう」「次はこういうことに挑戦してみよう」という前向きな気持ちを持てなくなります。

あくまで、自分がいましていることは「苦労」ではなく「努力」であると考えれば、取り組む姿勢もおのずと変わってきて、よい結果を生み出せるのではないでしょうか。

私の嫌いな言葉のもうひとつである「初心に帰る」も、世間では当たり前のように使われています。

不祥事を起こして記者会見の場に出てきた人が、「初心に帰って頑張りたいと思います」「初心に帰って出直します」などと話すのを何度も耳にしました。

私にいわせれば、初心を忘れて帰らないといけなくなったから、不祥事を起こしたのです。

会社を辞めて独立した経営者は、「この事業で社会に貢献したい」「社員を幸せにしたい」といった高い志を持って会社を立ち上げます。

最初のうちは一日でも早く経営を軌道に乗せたいと思い、九時始まりであっても、少なくとも二時間前には会社に来るでしょう。

それぐらい必死になって努力をしないことには、できたばかりの会社はうまくいきません。資金繰りも大変なため、一円でも惜しんで経費を節約し、身を粉にして働きます。

その努力が実って会社の事業が順調に行きだすと、出社時刻がだんだん遅くなり、やがて十時ごろに出てくるようになります。

前の晩に遅くまで遊んで、寝るのが遅くなるからです。

経費も使い放題。初心を忘れてしまい、やがて会社は傾いてしまいます。

中小企業の経営は、経営者の心がけしだいで右にも行けば左にも行くために、初心は忘れてはいけないもの、ずっと持ち続けるべきものです。

初心は貫き通してこそ〝初心〟。途中で忘れて帰らなければならないというのはあってはならないことで、「初心に帰る」と軽々しく口にする人の気が知れません。

応接室に飲み物の収蔵ボックス

わが社では、お客様がお見えになっても、女性の事務員がお茶を出すことはしません。

応接室には冷蔵と保温のできる収蔵ボックスがあり、そこに缶コーヒーやお茶のペットボトルなどを入れておいて、お客様が来られたら、私がお出しします。

夏は冷えた飲み物を、冬なら温かい飲み物をそこから取り出して渡すだけなので、一分もかかりません。

女性社員に頼めば、炊事場に行ってお茶を淹れて運んでくるまでに、五分や十分はかかります。

お客様が見えるつど、わざわざ仕事の手を止めて、お茶汲みのためだけにそれだけの時間を取られるとしたらもったいない話で、年間にすればそうとうな時間のロスになるでしょう。

その時間は仕事をしてもらうほうが、コストの節約になり、会社にとってははるかにプラスです。

しかしながら、女性社員によるお茶汲みをなくして経費を下げたとしても、「何だ、お茶も出さないのか」とお客様が不快に思われたら、そのプラスは生きてきません。

経費を削減できて、なおかつお客様に喜んでもらえる方法はないかと考えて思いついたのが、飲み物を入れた収蔵ボックスを応接室に置いておくことでした。

これなら、私など応対する者が、「何を飲まれますか」とお客様の要望をお聞きして、ボックスから飲み物を取り出し、「どうぞ」と勧めればすみます。

お客様にはたいへん好評で、とくに暑い夏場には、「喉が乾いたから」と二本も三本も飲む人がいます。

缶コーヒーにしろ、お茶のペットボトルにしろ、わが社で取り扱っている商品ですから、原価は知れています。

私も気楽に勧められ、お客様にも気楽に飲んでいただける。経費を下げて喜んでもらえるのですから、一挙両得です。

蛍光灯の一本一本にスイッチ

わが社では、天井の蛍光灯の一つひとつにひもをぶら下げています。

来社された方がそれを見て、「何ですか、これ?」と不思議そうに理由をたずねられるので、「電気代を節約するためです」とお話しすると、一様に感心してくださいます。

昼休みなどの休憩時間にはすべての電気を消す。トイレの照明も、点けっぱなしせずに、出るときには必ず消す。

節電のためにここまで実行している会社はけっこうあるでしょうが、蛍光灯にスイッチのひもを取り付けて、個別に消している会社は少ないのではないでしょうか。

なぜそんなことをしたかというと、壁のスイッチでは、誰か一人でも仕事をしていると、その人の席に関係する照明のスイッチを切るわけにいきません。

たいていは、一つのスイッチで部屋全体とか部屋の半分、少なくとも四本くらいの蛍光灯が点くようになっていますから、一人で仕事をしているのに、余分なところの蛍光灯が灯ったままです。

ひもで一本一本の蛍光灯を消し点けできるようにしておけば、必要な人のところの蛍光灯だけを灯して、ほかのところはこまめに消すことができます。

ちょっと席を立つときでも、ほかの人に迷惑にならないのなら、ひもを引っ張って自分の席の蛍光灯を消し、戻ってきたらまた点ける。

それで節約できる電気料金は、微々たるものでしょう。しかし、「チリも積もれば山となる」です。

全社員が励行すれば、また、一年、二年……と継続していけば、その金額は幾何級数的に増えていくに違いありません。

そのつど状況が違うために、どれだけ電気代が安くなったか、具体的な数字は把握していませんが、年数を経るにしたがって、利益として積み上がっていることは実感しています。

蛍光灯だけでなく、席に誰もいないときは、どんなに暑い日でもクーラーを消します。クーラーはつけたり消したりするほうがかえって高くつくという

人もいますが、人間は習慣が大事で、それを励行することでほかのすべてもこまめにできるように習慣づけられます。

たとえば、歯磨きや手洗いをするときに、ほとんどの人は水を出しっぱなしです。

一人ひとりが歯を磨く間、石鹸で手を洗う間は水道を止めておくことを習慣づけたら、大変な量の水を節約できるでしょう。

会社の経費を削減できるだけでなく、下水管も浄水場もそれほど大きなものを必要としなくなるため、税金も節約できます。

ところが、一つを曖昧にすると、トイレのスイッチも、部屋の蛍光灯も、水道の栓も、すべてが曖昧になりかねません。

やるからには、徹底し、継続する。これが、何より大事なのです。

机の引き出しには、エンピツもボールペンも一本

倹約のポイントは、整理整頓です。必要なものは置き場所を決めて、すぐに取り出せるようにしておく一方で、不要なものは徹底して捨てる。

たとえば、書類でも、十種類を三種類にすれば、探す手間が減ります。探す時間を一回に二秒短縮できたとして、それに人数と日数と回数を掛け算していけばどうなるか。

たったの二秒が恐ろしい時間数に膨れ上がり、業績に影響してきます。わが社では、机の引き出しに入れておくエンピツもボールペンも一人一本と決めています。

これも、理由は同じです。二本も三本も筆記具があると、どれを使おうかと一瞬迷います。

その時間はせいぜい一秒か二秒程度かもしれませんが、その一秒か二秒を人数と回数で掛け算していくとやはり大きな時間数になり、その一、二秒を削減できるかどうかで、会社の業績が変わってくるのです。

また、もし全社で百人の社員が二本、三本の筆記具を引き出しの中に入れているとしたら、会社の中で百本、二百本の筆記具を死蔵しているのと変わりありません。

会社にとっては資産のムダであり、地球にとっては資源のムダです。

筆記具が二本も三本もあると、人間はついぞんざいに扱い、どこかに失っても、「もう一本あるから」と真剣に探そうとしません。

ボールペンの場合、キャップをはずしたままで放っておき、そのうちインクが乾いて書けなくなるということもありえます。

そうなると不良資産で、会社の損害です。一人に一本。

それがわが社の基本で、細かいことを徹底してこそ、紙一枚、水一滴を大切にする心が芽生えてくると思います。

ほかにも、直営およびフランチャイズの小売店「お菓子のデパートよしや」では、二十年くらい前から、百円コーナー、百五十円コーナーというように、価格単位で商品を並べ、一つひとつには値札を貼っていません。

スーパーマーケットやコンビニでは考えられないことですが、こうすることで商品に値札を貼る作業を省け、経費削減につながります。

お菓子は高額な商品ではないだけに、一円でも節約して利益を出さないといけません。一秒、二秒という時間、一本の蛍光灯の電気代、一滴の水道代、一本のボールペン代もおろそかにするわけにいかないのです。

地道な努力を重ねた結果、売上に占める総経費率は、業界平均が一〇% ~一二%のところ、八%台まで下げることができました。業界一の経常利益率はその成果といってよいでしょう。

経費節減はトップから

経費節減の大事さは、私がわざわざ声を大にしていわなくとも、ほとんどの経営者はご存じだと思います。

にもかかわらず、放漫経営でおかしくなる会社が後を絶たないのは、つまるところ、早朝出社と同様、頭ではわかっていても実行するのが難しいからです。

「質素倹約」「経費節減」などのスローガンを紙に書いて、会社の壁にでかでかと張り出したところで、経営者が会社の経費でゴルフに行ったり、高級クラブでお酒を飲んだりしているようでは、絵に描いた餅にすぎません。

吉寿屋より業績の小さい会社であるのに、経営者が週末になると別荘に出かけていったり、高級外車やクルーザーを得意げに乗り回しているところがあります。

それを見ている下の者は、自分たちが一生懸命に節約したお金でトップが遊んでいると思うとバカバカしくなり、誰も節約しようという気にならないでしょう。私は、昔もいまも平日はゴルフをしません。

メーカーや仕入れ先のコンペにはおつきあいしないわけにいきませんが、プライベートのお誘いはいっさいお断りしています。

もし私が平日にプライベートでゴルフに出かけたなら、ほかの役員にも、社員にも認めないわけにいきません。すると、会社はどうなるのか。答えは明快で、たちまち潰れてしまいます。

自分は平日にゴルフに行って、社員に「行くな」とはいえませんから、私も含めて平日ゴルフは禁止にしています。

また、私がゴルフで会社を休めば、もしも決裁しなくてはいけない案件があった場合、翌日に延びるため、経営に深刻なダメージを与えかねません。

翌日が日曜や祝日や連休日だった場合は、さらに二日も三日も先送りになり、それだけ経営判断が遅れてしまいます。

会長に決裁を求めてくるのはたいてい重要な問題で、速やかに行動に移せるように、一刻も早く結論を下さなければなりません。

中小企業というのは、日々決裁・実行の繰り返しで、一回のゴルフでの決裁の遅れは一日、二日であるかもしれませんが、平日ゴルフを毎月していれば、十年もすると何百日という大変な遅れを生みます。

そんなことで、商売に勝てるはずがありません。経営者は、休みの日にゴルフをすればよいのです。

プレー代が少々高くとも、それだけの給料を取っているのですから、何もマイナス要素の多い平日にわざわざ出かけていく必要はありません。

夜のおつきあいも、ほどほどにすることです。私は、業界の集まりなどで一次会に出席しても、二次会は辞退して帰ります。接待を含めて、クラブやカラオケバーへ行くこともしません。

吉寿屋は年間約二億円の利益を上げており、月に百万円程度の交際費を使っても経営に響くことはないのですが、いったん認めると、その百万円がいつのまにか一千万円に膨れ上がります。

そこが怖いところです。夜の世界が楽しくなって、ついつい使いすぎてしまうことが一つです。さらに、深夜の二時、三時まで飲んでいたら、翌朝五時に起きられません。

万一寝坊をして始業時間(午前八時半)までに会社へ出ていけなかったら、朝一番で決裁しなければならない案件が全部止まってしまいます。

それによる損失が積もり積もって、いつのまにか一千万円になってしまうのが二つめです。三つめは、前の晩に夜更かしをして、寝不足で思うように仕事ができないことによる損失です。

商談の際、正常な思考力であれば、この商品を千個仕入れて売るには、わが社はいくらで買い、いくらで売らないといけないかをさっと判断できますが、睡眠不足によって判断力が鈍っていると、そのあたりの計算ができずに高く買ってしまい、商談相手に負けてしまいます。

結果、大損するわけです。損だけですむどころか、知り合いの二代目は毎晩のように酒を飲み歩き、早死にしてしまいました。いくら楽しくても、命を縮めてまで遊びたいとは思いません。

むしろ、早朝から会社に出て、経営についてあれこれ考え事をしたり、商品の入った段ボールケースと対話しているほうが、私にははるかに楽しいのです。

ゴルフと同様、夜のおつきあいも断ってばかりいるため、お誘いがかからなくなりました。「つきあいの悪いやつだ」と嫌味の一つもいわれますが、私は平気です。

「あなたとのおつきあいはしませんが、うちの社員とは十分につきあっています。社員が喜んでくれたら、私はそれでいいのです」。

そう言葉を返すと、相手はムッとして二度と声をかけてきません。おかげで早寝早起きができるので、ありがたいことです。

もっとも、私の場合は、夜の九時、十時に寝て朝の五時に起きるという生活パターンを創業以来繰り返しているため、そんな遅くまで目を開けていること自体が不可能ですが……。

経営者が私服を肥やすと会社はダメになる

売上が十億円、二十億円の会社で、子会社を二つも三つも持っているところがあります。

たとえば、菓子卸販売業である本体の吉寿屋があり、ほかに子会社として「吉寿屋不動産」「吉寿屋興産」を持っているようなケースです。

「○ ○不動産」「 ○ ○興産」という子会社はほとんど活動実態がなくて、経営者とその身内が役員をやっている場合が少なくありません。

その設立目的の多くは、経営者とその身内が本体からだけでなく、子会社からも給料を取ることにあります。

いってみれば、自分たちの懐を増やすためだけの会社であって、本体が黒字だと子会社を通して根こそぎ儲けを持っていくけれども、赤字になるとボーナスカットなどそのツケを社員に押しつけるのです。

トップがそんな自分の欲得で会社の経営をやってうまくいくはずがありません。トヨタやパナソニックのような大企業がグループ会社を持つのは別です。

年間売上五百億円に満たない中小企業が二つも三つも子会社を持つ必要はないはずです。経費が余分にかかるだけで、かえってマイナスになります。会社の経費を節約する以上は、経営者がまず自ら襟を正さないといけません。

私は「お金はいらん」と口癖のようにいい、いっているだけでなく、本気でそう思っています。

「お金がほしい、お金がほしい」と思うから、不要な子会社をつくって給料をたくさん取ろうと考えたり、脱税をしたり、産地偽装など詐欺まがいのことをしないといけなくなるのです。

中小企業の経営者は、自分の裁量で何とでもなるために、いったん甘い汁を吸うと歯止めが効きません。

何も危ない橋を渡らなくとも生きていけるのに、欲が深いためにどんどん深みにはまっていってしまうのです。気づいたら世間にばれて、会社が潰れてしまう結果になります。

経営者本人が刑務所へ行くのは致しかたのないことですが、気の毒なのは働く場所と収入を失う社員たちです。

経営者の家族もつらい思いをします。経営者は欲に走る前に、ぜひとも社員や家族に対する責任の重さを考えてほしいものです。

かくいう私も、若いころからお金がほしいと思ったことは一度もないとはいいません。

人間ですから、人並みの欲があったことは否定しませんが、私利私欲で身の丈以上の贅沢をして会社を潰してきた人を何人も見てきました。自分も道を外さないように、自戒を込めて、「お金はいらん」を口癖にしているいるのです。

実際、お金はほとんど使いません。たとえ給料がゼロになったとしても、厚生年金がもらえます。妻とあわせて月々二十万円 ~三十万円は入ってくるでしょうから、生活するには十分です。

「いい服を着たい」「おいしいものを食べたい」「どこかへ旅行に行きたい」などといった欲求もあまりありません。

妻も私と同じく贅沢はせず、「有名な温泉に行った夢を見た」といって、家の温泉(風呂)に入って満足しています。

食べ物は取引先や知り合いからのもらいものがたくさんあり、それで間に合うため、お金を使うことがほとんどないのです。

友人などは、洋服にお金をかけない私を見て、「会長なのだから、もう少しいいものを身につけたらどうか」と冷やかすのですが、私は「ほっといてくれ。いまのままで十分やから」と取り合わないようにしています。

背広も靴も、すべて妻任せ。自分で買いに行かないため、自分の身につけているものがいくらかも知りません。キャッシュカードやクレジットカードも、いっさい持たない主義です。

現金しか持たないため、手持ち金以上は使いたくとも使えず、浪費する心配はありません。

ついでにいえば、私は、札入れも小銭入れも持っておらず、お札を裸のままズボンのポケットに入れて持ち歩いています。

硬貨はポケットの中でジャラジャラ音がするのと重くなるのがイヤで、ポケットに入れるのはあくまでお札だけです。

何かの拍子にお釣りの小銭をもらうことがあると、使わずに会社か自宅に帰ったときに取り出して置いておきます。

もともと自動販売機でタバコや飲み物を買う必要もないので、小銭がなくて困ったことはありません。いうまでもなく、賭けごとはしません。

素人がやっても損をするだけで、しまいに会社のお金に手をつけるか、借金まみれになるのがオチです。

もともと私は借金が好きではなく、自動車はもちろん家を買うときもローンを組まずに現金で支払いました。ローンや分割で買うと、たいてい金利がかかります。それもかなり高い金利です。

現金で買えば、金利がかかりませんし、場合によってはまけてもらえますから、そのぶん安く買い物ができます。私は同じ使うのでも、社員のためにたくさん使います。

利益のうち、税金に三分の一、社員のために三分の一、残る三分の一は万一に備えて別途積立金として内部留保にあてるというのが、私の考えです。

朝礼の場を利用して、社員に倹約をやかましくいっている経営者もいますが、口でいうよりも、会社の業績がよくなって、利益の一部を社員に還元していくほうが効果的です。

倹約すれば、きちんと自分の待遇(収入)につながるという理解が社員の間に浸透すれば、しめたもの。すすんで電気を消す、水道を節約するなど、黙っていても倹約を心がけるようになります。

経費を節約できて利益率が上がり、社員を豊かにできれば、それだけ税金を払い、社員と家族はお金も使うようになります。

すると、国がよくなり、社会全体がよくなっていくでしょう。つまり、自分の会社をよくして、社員の生活レベルを高めていくことは、結果として中小企業ができる一番の社会貢献なのです。

しかしながら、多くの経営者は、倹約を声高に唱えても、その成果を社員に還元しようとはしません。

それでは、決して倹約の習慣は社員に浸透するはずがなく、経費の削減も覚束ないでしょう。「節約すれば、自分たちにどういう利益があるのか」。それを目に見える形で示すことで、経費削減は最も効果があると思います。

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