前章では単純に一つずつの要素の特徴を説明しました。しかし実社会で出会う人たちの人格は、複数の要素が組み合わさっているのが普通です。ここで前章のおさらいに、各要素の特徴を書き出します。 CP(厳格な父性):責任感・向上心・規律・自他に厳しい・指導的・正義感 NP(優しい母性):優しさ・共感力・面倒見のよさ A(大人の論理性):論理性・情報収集・分析・計算高さ・客観的・利己的 F C(自由な子供性):好奇心・行動力・創造性・感情的・わがまま A C(場に合わせる子供):協調性・顔色を伺う・自信がない・ひねくれる ※Aの客観的と利己的は相反するように見えて、客観的で独立した存在である事と、他人の利益を考えないという利己的な事は両立します。 2- 1いくつの要素を読み取れば人格がわかるか?エゴグラムの診断テストは5つの要素の組み合わせで人格を判断しますが、相手を観察して人格を読み取る場合は、『一・二番目に高い要素』と『一番低い要素』がわかれば充分です。もし3つもわからなければ、『一・二番目に高い要素』 or『一番高い要素と一番低い要素』でも構いません。要素の高い・低いを出すために人物を観察して、一つ一つの情報から各要素を加点・減点していきます。その点数によって高い・低いを決めますが、点数はそんなに厳密でなくても大丈夫です。一定の基準で人を見続けることで、自然と要素の高低がわかるようになります。・要素が一つも読み取れない場合まれにどの要素の特徴も見えない人がいます。そういう人に筆記の診断テストを受けてもらって結果を見たところ、全ての要素が低めでした。
通常は要素が低くても特徴が見られるものですが、全てが低い場合は打ち消し合ってしまい、特徴が何もない感じになります。このことから『つかみどころがない人』は、どの要素も高くない人だという事がわかります。こういう我が強くない人の能力は、成功した人の行動様式(人格)をコピーできることです。能力的に全く同じように模倣する事はできませんが、方向性としては合っているので、仕事の成果の向上が見られます。普通の人はどうしても自分らしさが邪魔をして、成功した人を模倣できません。・テストや質問では要素が読み取りにくい会社で様々な人にエゴグラムの診断テストを受けてもらいましたが、人物を観察して出した人格と、テスト結果が矛盾する人がチラホラいました。会社ではテストが人事考課につながると警戒され、優秀に見られようと美化して回答をする人がいます。これは一定以上の A(大人の論理性)があれば計算高さによって、自分の評価を上げようと考えるものなので、悪意のあるウソではなく自然な行動です。このようにテストは虚偽の回答が多いし、質問形式で対話をしても、相手はキレイごとで返すことが多いので言葉は信用しません。相手に美化の意図は無くても、 A C(場に合わせる子供)が高い人は質問者が喜びそうな答えを言おうとするので、結果として本当の人格がわかりません。だから本書の人を見抜く方法では行動を観察したり、行動の積み重ねである経歴を見ることで、要素を読み取っていきます。 2- 2全ての要素が高い人は、どんな特徴が出るのか?わたしの取引先に、新卒からわずかな期間であっという間に出世をした人がいました。その人を X氏として、要素が高い人の能力を説明します。 X氏と打ち合わせをする時、わたしはデータの入ったノートパソコンを持ち込んで話をしたのですが、 X氏は事前にわたしが送ったデータを暗記していました。かと言って冷たいデータ魔という感じではなく、感情表現が豊かで行動力もありました。・人を見抜く能力後にわたしは X氏と一緒に働くことになり、観察する機会が増えました。最も印象深かったのが、 X氏が目の前にいる人を見抜いているとしか思えない交渉力でした。商談や議論でも、 X氏が相手に魔法をかけたかのように誘導してしまいます。わたしは X氏にどんな方法でやっているのか聞きましたが、その方法は生来の能力が必要で、誰にでも再現できるものではありませんでした。部下のマネジメントでも彼はオフィス内をウロウロして 10以上ある島(班)を回り、雑談形式で状況を聞きだし、的確な指示やアドバイスを瞬時に出して次の班に移動していました。各班のクライアントは様々な分野に分かれていましたが、 X氏は全てを理解していました。 X氏の指示が的確だったことは、全体の売上・利益の向上の結果が物語っていました。わたしはその光景を見て、聖徳太子が 10人と同時に話しをしていたというのは、こういう事ではないかと思いました。
・全ての要素が高い X氏の能力(特に人を見る能力)を調べるため、エゴグラムの診断テストを受けてもらいました。その結果5つ中4つの要素が高く、残る1つも低いわけではなくて、中程度という事がわかりました。要素は、自分が高いものは他人の要素も読み取りやすいという特徴があります。例えば A(大人の論理性)が高い人は、自分と同じように Aが高い人の行動の意味が理解できます。もし自分の Aが低かったら、 Aが高い人の先を見越した行動を見ても『回りくどい事をするなぁ』と感じるだけでしょう。他の要素に関しても同様で、自分が高い要素は他人のものでも高低がわかります。 X氏は高い要素が多いため、直観的に人を見抜くことができたのです。もしその人格と矛盾することを相手が言えば、そこにウソや強いコンプレックスが隠されているとわかります。表の顔と裏の顔を理解する事で、相手が自覚していない性格さえも見抜くことができます。 X氏を 15年以上知っていますが、現在もまっとうな会社の社長として指揮をとり続けています。・全要素が高くなくても人を見抜ける全ての要素が高い人が頭の中でやっている事を、誰でも再現できるようにしたのが本書の方法です。要素に関する知識を頭に入れることで、直感とは別の方法で人を見抜くことができます。更に他人だけでなく自分自身の人格も理解できるようになるので、身の振り方が的確になります。例えば自分の人格に合った仕事に就くことで、人より上手く業務をこなせてストレスが少なく、高い報酬を得る事が望めます。 2- 3二つの要素の組み合わせ例二つの要素だけで人を見る場合、『一・二番目に高い要素』 or『一番高い要素と一番低い要素』で判断します。各要素を組み合わせるだけのシンプルな方法を、いくつか例をあげていきます。 ・CP(厳格な父性)と A(大人の論理性)が高い場合 CPは向上心があり、かつ Aによって学業成績も良いので、この二つが高い人は高学歴な事が多いです。学歴の流れ(小・中・高・大学等)を見ると、偏差値は高水準をキープか右肩上がりです。
大学に入る時だけ急カーブで偏差値が上がっているのではなく、それより前の学歴から直線的な軌道を描きます。例え家計の事情で高卒であったとしても、その高校の偏差値は高く、就職後にも努力をするので責任者の立場になりやすいです。 CPのリーダーシップから責任者の立場に向いていますが、なるとしたら厳格な上司です。自分自身にも厳格で、有給消化が会社の命令でない限りあまり使おうとせず、使ったとしても罪悪感を抱きます。頑固ですが、 Aの論理性があるので頑迷ではありません。しかし近くにいると圧迫感を感じます。 ・FC(自由な子供性)が高く、 A C(場に合わせる子供)が低い場合 FCが高い人は動きが活発で、声や表情がうるさめなので遭遇すると印象に残りやすいです。本人は自分のことを社交的だと思っていますが、同時に A Cが低いと周囲の人の顔色が読めないため、不興を買っていたりします。彼らは遠目で見ると人気者っぽく見えますが、接している人たちに評判を聞くとあまり好かれていないのがわかります。 A Cが極度に低い場合、わざと人に反発しているかと思うような態度をとります。だから彼らには人間関係の不和のエピソードが多いのですが、本人は周囲が意地悪なせいだと思っています。集団の中で反感を買いやすいですが、良く言えば皆が顔を見合わせて様子見をしている時に、その空気を破って行動できるという事です。 ・FC(自由な子供性)と A(大人の論理性)が高い場合 F Cの好奇心と Aの情報収集が合わさると、職場でカタカナ語(横文字)を連発するような人物像が浮かびます。こういう人は相手が知っていようがいまいが、カタカナ語が止まりません。 FCが優位なので賢く見えないですが、 A(論理性)が高いので学歴が高かったり難関資格を持っていたりします。ただ、 FCの方がより高ければ興奮してしまうため、 Aの論理性を押しつぶす場面が見られます。 F Cの行動力と Aの頭により、ベンチャーを起ち上げるタイプにもいます。しかし F Cの能力は若さ(体力)に比例するため、 FCが優位な経営だと体力が低下する 36歳くらいで上手くいかなくなってきます。 ・A C(場に合わせる子供)と NP(優しい母性)が高い人 A Cと NPが高い組み合わせは協調性・共感性が強く、自己主張が少なめです。職場では柔らかい雰囲気なので近くにいても圧迫感がなく、献身的に仕事をしてくれます。 A Cがより優位なら、誰かが放置した細かい事に気がつき、自分がやらねばと思って目立たない仕事ばかりやります。貧乏くじを引かされやすく、他人を利用する人間に捕まると都合よく使われて、人生をすり減らします。 ・NP(優しい母性)と A(大人の論理性)が高い NPの面倒見の良さと Aの論理性による処理能力の高さで、職場で頼りになるヘルプ係になります。
テレビドラマなどで頭の良い人は冷たい描写が多いですが、現実世界では NPも高くて有能で手助けもしてくれる人はいます。ただ、有能な人は給料が高くていい会社に集まるので、低レベルな会社ではあまり見ないタイプです。 Aだけが高いと計算高さから利己的な考えに偏りますが、そこに NPが入る事でバランスが生まれます。このように要素は組み合わさる事で欠点を補完します。 2- 4二つより多い要素の組み合わせ二つより多い要素の組み合わせでも、一つ一つの要素の特徴を重ね合わせるだけです。本章の最初に人を見る時に基本は『一・二番目に高い要素』と『一番低い要素』を探すとしましたが、現実では低い要素が拾えないなどの事例もあります。例えば高い要素ばかり三つが特徴として出る人もいます。三つも高いと、仕事選びを間違っていなければ職場で成果を上げているはずです。例えば C P(リーダーシップ)・ A(計画性)・ FC(行動力)の三つが高ければ、多少強引なところがあるものの、理論の裏付けのある責任者ぶりを発揮します。逆に低い要素が多ければ悪目立ちをしていて、採用時に審査がある普通レベルの会社ではあまり見ないはずです。・要素の特徴を組み合わせるだけ人を見抜く方法は使える知識にするため、ごくシンプルな方法をとっています。人格の5つの要素がどういうものか頭に入れて、それを組み合わせるだけで人格がわかります。人格を見た結果を記録として残したい場合は、対象人物の5つの要素の高低を数値化すればできます。ここまで読んで、まだ要素の特徴が覚えられなくても大丈夫です。要素の特徴が記憶に定着するよう、本書では様々な状況や実在の人物を例に、繰り返し説明します。 2- 5高くも低くもない要素高くも低くもない要素の扱い方に関して説明します。例えば A(論理性)が中程度の人は、テストの点が平均点くらいの人だと思ってください。それくらいあれば特に問題なく働くことができます。 A C(協調性)が中程度もあれば、空気を読まずに変な行動をする事もないし、我慢しすぎで潰れる事もありません。全ての要素が中程度なら、特徴が見えにくい平均的な人物になります。全ての要素が低い人も特徴を打ち消し合うので見えにくいですが、仕事も経歴も低迷している事が多いです。印象については人を見抜く方法ではあまり使いませんが、あえて参考のために言うと、全ての要素が低い人は影が薄くて植物的な印象になります。
全ての要素が中程度の人はこれといった特徴が出にくいものの、植物的ではない位の存在感はあります。要素が中程度あれば無難に仕事ができるので、経歴は可もなく不可もなくといった感じです。・二つの高い要素の組み合わせに、中程度の要素が加わる場合例えば A C(場に合わせる子供)と NP(優しい母性)が高く、 A(大人の論理性)が中程度だった場合を考えてみます。 Aが中程度くらいあれば、 A Cによる細かい視点で拾った情報を組み立てる事ができます。その結果を NPの共感性で、周囲の人に反発を受けることなく広めることができます。これが仕事だとしたら、周囲と協力をしつつタスクを進められる人になります。もし Aだけ突出していたら、 A C(他人の視点)が低くて気が利かない仕事になり、 NPも低いことで反感を買って仕事は進みません。このように要素は中程度あれば、プラスに作用しやすくなります。
コメント