第二章 インコタームズ
- 1.荷渡時期の保証問題(CPT契約の場合)
- 2.荷渡時期の保証問題(DPU契約の場合)
- 3.EXW契約とFCA契約
- 4.地震・津波による被害
- 5.コンテナ貨物のC&F契約
- 6.CIP契約の保険
- 7.DDP条件での留意点
- 8.CNI条件での取引
- 9.納品完了時点の合意
- 10.輸入通関前の検疫検査費用
第二章 インコタームズ
「」、、、、。
、、、。
、、、。
売主にとって国内取引の定型取引条件であるEXWは、FCAと混同して使われがちです。注意しましょう。
日本は、自然災害の多い国です。普段から、貿易貨物が被災しても、売主または買主が損失を被らないような定型取引条件を使って契約することを習慣づけておきましょう。
陸路続きの国同士の企業の取引が多い欧米では、買主の負担が最も軽い、買主にとっては国内取引である、DDP条件での取引が増えています。そのため、日本との取引でも、DDP条件を要求してくることがあります。
インコタームズの定型取引条件にはありませんが、CNI条件での取引が、一部の業者の間で定着しています。CNI条件での取引についても、認識を深めておきます。
また、インコタームズは、任意の規則ですから、貿易当事者の合意で、その一部を変更して使うことができます。
貿易の基本的な知識がないと、相手からの要求で、引き渡しや費用負担など、自社に不利な内容への変更に、同意してしまいがちです。インコタームズの定型取引条件の定義は、しっかりと覚えておきましょう。
1.荷渡時期の保証問題(CPT契約の場合)
(1)問題
「CPTSanFranciscoCFSUS$500perpiece」、荷渡時期(TimeofDelivery)を「October,20XX」の条件で、米国の業者と、輸出契約をしました。
米国側から、『日本側がサンフランシスコまでの運送賃を負担しているのだから、10月中にサンフランシスコ港に貨物が到着することを保障せよ!』と要求してきました。
さて、貴方は、どう回答しますか?
(2)ヒント
貿易をしていると、海外側から、この種の要求が出てくることが、良くあります。
「CPTSanFranciscoCFS」(サンフランシスコのコンテナフレートステーションまでの運賃込み)の価格で契約し、尚且つ、荷渡時期を「20XX年10月」で取り決めたわけですから、米国側の言い分に理があると思って、「はい! 10月のうちにサンフランシスコのコンテナフレートステーション(CFS)で、貨物を引き渡します」と返事してしまいそうです。
しかし、インコタームズのCFS条件では、貨物はいつ、どこで、売主から買主に引き渡されるのでしょうか?「インコタームズ2020」の定型取引条件は、全部で11ありますが、それらは、到着ベースの定型取引条件(D用語)が、輸入国での引渡しとなりますが、その他のコンテナ・空輸用語も、在来船用語(ばら積み用語)も、すべて輸出国で引渡しが行われます。
国内取引では、買主または買主の代理人(買主手配の運送人など)が、貨物を実際に目で見て、引渡しが行われます。
しかし、貿易では、買主が貨物を見ていないのに、Dで始まる定型取引条件を除けば、他はすべて、輸出国で、売主から買主に貨物が引き渡されます。
貿易では、Dで始まる定型取引条件の場合は、輸入国での貨物の引渡時点まで、売主が輸送費を負担しますが、それ以外の定型取引条件では、貨物の引渡しが輸出国で行われますから、貨物の輸送費を輸入国まで負担する定型取引条件の場合は、貨物が売主から買主に引き渡された後も、輸入国までの輸送費は、売主が負担しますから、両者の売主から買主への分岐点は、不一致となります。
次に掲げる「リスクと輸送費用負担の分岐点」のリストは、リスクの分岐点と輸送費用を負担する分岐点が、一致しているのか、あるいは一致していないのかを、各定型取引条件毎に表示しています。
今一度、インコタームズの「引渡地」と「輸送費の負担」について、正確に理解しておきましょう!
(3)回答例
次のように、米国側に回答しては如何でしょうか?「インコタームズのCPTの定義では、確かに、売主が仕向地の合意された地点または特定の地点までの輸送費を負担しますが、それとは別に、売主から買主への貨物の引渡しは、『売主が自ら契約した運送人に、貨物を引き渡した時、または貨物の物理的な占有を、運送人に移した時』に行われます。
従って、貨物が買主に引き渡された後のサンフランシスコCFSへの到着時期については、売主が通常の運送人を手配している限り、売主は保障する義務を負いません。
もちろん、できる限り、買主側のご要望にそうように、努力はしますが、確約はできませんので、ご理解のほどをお願いします。
なお、契約書には、念のため、「この契約書は、国際商業会議所が定める最新のインコタームズにより解釈されるものとする」の条項を入れておくことを、お勧めします。
2.荷渡時期の保証問題(DPU契約の場合)
(1)問題
「DPU SanFrancisco CY US$500 per piece」、荷渡時期を「September,20XX」で輸出契約をしました。
米国側から、「9月中に、サンフランシスコ港のコンテナヤード(CY)に、貨物が到着することを保障せよ!」と要求がありました。これに対し、貴方はどのように回答しますか?
(2)ヒント
DPUでは、売主は、輸入国の仕向地または仕向地内で、合意した特定の場所があれば、そこで輸送手段から貨物を荷降ろしして引き渡しますが、合意された場所がなければ、売主は仕向地または仕向地における場所を任意で決めることができます。そこまでの費用もリスクも、売主が負担します。
仕向地が、輸入通関後の地点である場合、輸入通関のために貨物を留め置いた時から、輸入通関後に輸送が再開されるまでの間の費用とリスク負担は、買主に帰属します。
(3)回答例
契約で、「September,20XX」を荷渡時期とすることで合意したのであれば、売主は、その期限までに輸入国の予め合意した場所で、あるいは荷渡場所が決まっていなければ、契約に定められた場所の中で、売主が決める任意の場所で荷渡しする必要があります。
従って、米国側への回答は、次のようになります。:「インコタームズ2020におけるDPUの定義のとおり、『September,20XX』中に、SanFranciscoCYで、貨物をお引き渡しするように、輸送手配をしますので、宜しくお願い申し上げます。」
輸送費用を売主が負担する点では、CPT契約も、DPU契約も同じですから、大した違いはないのではないかと考えて、DPU契約に、安易に応じないようにしましょう。
荷卸費用の負担は、CPT契約では、売主が締結する運送契約に荷卸費用が含まれていれば、売主が負担し、含まれていなければ、買主が負担します。一方、DPU契約では、売主が仕向地での荷卸費用を負担するという、微妙な違いがあります。
しかし、両者のもっと大きな違いは、リスクの分岐点(引渡地点)が、CPTでは輸出国であるのに対し、DPUでは輸入国で、売主から買主に貨物が引き渡されることです。
つまり、CPT契約は、国際間の取引が「水際」で行われるのに対し、DPUでは、売主が「買主の国内」で貨物の引渡しが行われます。
輸出商品の知的財産権を巡って、輸入国の第三者が訴訟を起こした場合、CPT契約では、売主が輸送を手配していても、買主が輸出国で貨物の引渡しを受けて、買主が輸入国に持ち込むのですから、売主は、契約に特段の条項がない限り、訴えられる対象となることは避けることができます。
しかし、DPU契約の場合、売主が輸入国で貨物を買主に引き渡しますから、輸入国の国内法が適用され、売主は無傷でいられない可能性があるのです。
CPT契約とDPU契約とでは、輸送費用などの負担は、似通っていますが、損害保険を付保する側や、引渡地点が異なります。
Dで始まる定型取引条件(到着ベースの用語)のほうが、売主が負担するリスク区間が長くなる点で、特に注意が必要です。
(CPT契約とDPU契約の違い)
3.EXW契約とFCA契約
(1)問題
EXWで契約した場合、輸出された商品の仕入れに関わる消費税の還付請求は、できるのでしょうか。
(2)ヒント
この「問題」は、ひとえにEXWでの契約が、輸出取引なのか、あるいは国内取引なのかにかかっています。消費税の還付手続きには、輸出許可書などの輸出したことを証明する書類が必要です。
EXW契約では、買主が必要とすれば、売主は輸出国における輸出許可を取得するための助力は、提供しても構いませんが、売主が輸出者となるわけではありません。
(3)回答例
インコタームズでは、EXW契約の場合、「売主は、輸出通関または物品が通過する第三国内の通関を行う義務はない」と明確に規定しています。
買主が輸出することを企図するのであれば、買主自らが、輸出国の輸出許可を取得しなければなりません。
日本では、関税法によって、海外の買主側が、税関事務管理人として、日本のフォワーダーを任命し、委託を受けた日本のフォワーダーが、買主の名義で輸出通関手続きを行うことができます。
この場合、輸出許可書などの輸出を証明する書類は、買主に帰属しますから、EXWは、買主にとっては、インコタームズに定める「定型取引条件」であっても、売主にとっては「国内取引用語」以外の何物でもありません。EXWでは、売主が消費税還付の請求を、起こすことはできません。
FCA契約であれば、売主は輸出通関義務を負いますから、売主が輸出手続きを行う必要があるのなら、EXWでなく、FCA契約にすべきです。
しかし、売主も買主も、EXWでは売主に輸出通関義務がないことを知らないで、お互いに、売主が輸出許可を取得するものだと思い込んで、EXW条件で契約すれば、当然、売主が輸出通関手続きを行いますから、輸出許可書などの関連する書類は、売主に対して発行され、売主に帰属します。
この場合、売主が消費税課税業者であれば、消費税の還付請求を行うことができます。消費税の還付は、消費税非課税業者の場合、還付請求することができません。
4.地震・津波による被害
(1)問題
コンテナが、港のコンテナヤード(CY)で、船積み待ちをしている時に、大地震が発生、続いて津波に襲われて、コンテナそのものが、津波にさらわれたり、残ったコンテナも、横転したり、水に濡れてしまい、輸出できなくなってしまいました。
輸出貨物が、このような自然災害に遭った場合、売主と買主には、どのような損害が生じるのでしょうか?
(2)ヒント
これは、自然災害の多い日本では、現実に、ここ半世紀の間だけでも、何回も現実に起きてきた問題です。
本「問題」に対する正解を導き出す基本的な考え方は、第一に、売買契約の当事者が、11あるインコタームズの定型取引条件のうち、どの定型取引条件を使って契約していたかを考えます。
使っていた定型取引条件によって、売主が危険負担していた時の事故なのか、あるいは買主が危険負担していた時の事故なのかが決まります。
第二に、危険負担中であった当事者が、どのような損害保険を付保していたかによって、損害が保険で救済されるかどうかが決まります。
次の「売主・買主が掛けるべき保険」を参照して、考えてみてください。
(売主・買主が掛けるべき保険)
(3)回答例
①EXWで契約していた場合
売主は、工場(倉庫)で買主に貨物を引き渡しますから、それ以降の港での船積み待ちは、買主がリスクを負担しています。
買主は、通常、外航貨物海上保険を掛けますので、それが、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)のどれを掛けていたかによって、保険で救済されるかどうかが、決まります。
ICC(C)を掛けていただけであれば、自然災害免責ですから、買主が被った損失はカバーされません。
ICC(A)かICC(B)を掛けていたか、あるいはICC(C)で、自然災害をカバーする特別約款を追加付保していたのであれば、保険で救済されます。
②FCAまたはCPTで契約していた場合
港で船積み待ちしていたということは、すでにコンテナ内に、貨物が積み込まれた状態で、被災したことになりますから、貨物は、売主から買主に引き渡し済みです。売主は、貨物を買主に引き渡し済みですから、商品代金を買主から受領する権利があります。
ただ、権利はあっても、決済条件が、仕向地に着荷後に送金して決済されることになっていたり、L/C決済でディスクレが生じたりすると、買主が貨物代金の支払いを拒否することは、あり得ることです。
インコタームズの定義からすると、ロジカルには、売主は貨物代金を受け取る権利があるとしても、商事仲裁で相手と闘うに見合う取引額であれば別ですが、現実には、そこまではできないということであれば、売主は、貨物代金を受領することができないこともあり得ることになります。
ですから、インコタームズの規則に忠実なだけでは、売主のリスクは、必ずしも万全とは限りませんが、インコタームズの規則に忠実でなければ、決済条件のリスク以前に、使用するインコタームズの定型取引条件によるリスクを回避することができません。
当然ですが、常に最善の定型取引条件を選択して契約する必要があります。
また、損傷した貨物の処分に関しては、フォワーダーは、どの定型取引条件で契約していたかに関わらず、荷主(輸出者)に対して、貨物の処分と処分費用の負担を求めてきます。
売主が、こうした費用を立て替えて支払っても、買主が立替金の清算に応じなければ、結果的に、売主がその費用を負担することになってしまいます。
このリスクは、避けようがありません。
買主は、通常、外航貨物海上保険を掛けますので、それが、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)のどれを掛けていたかによります。
ICC(C)を掛けていただけであれば、保険会社は自然災害を免責としていますから、買主が被った損失はカバーされません。
ICC(A)かICC(B)を掛けていたか、あるいはICC(C)で、自然災害をカバーする特別約款を追加付保していたのであれば、保険で救済されます。
③CIP、DAP、DPU、DDP契約の場合 CIP、DAP、DPU、DDP契約であれば、売主が外航貨物海上保険を掛けますから、売主が、ICC(A)かICC(B)を掛けていたか、あるいはICC(C)で、自然災害をカバーする特別約款を追加付保していれば、貨物の滅失棄損による損害は、保険でカバーされることになります。
前述の貨物の処分費用は、依然として懸案の問題として残りますが、貨物の損傷による損害は、保険でカバーされますから、売主にも買主にも発生しません。
契約の履行義務に関しては、契約書の不可抗力条項の規定次第となりますから、契約書では、必ず自然災害は不可抗力の事態であることを明確にしておき、事後の措置は、その不可抗力条項の規定に従って取り進めます。
④FAS契約の場合
FASは、通常、バラ積み貨物の場合で使われる定型取引条件ですから、コンテナ貨物の場合は、FASでの契約はほとんどないものと思われますが、仮にFASで契約したとしても、本「問題」では、「港のコンテナヤード(CY)で、船積み待ちをしている時」に、被災したので、貨物は、まだ売主のリスク下にあり、売主が掛ける保険は、国内運送保険なので、自然災害はカバーされません。
貨物の滅失・損傷による損失は、売主自身が負担することになります。
買主は、船側以降のリスクを負担します。
そのため、買主は、通常、外航貨物海上保険を掛けますが、本「問題」の場合、買主が付保した外航貨物海上保険は、被災した時点では、まだ保険が開始されていないので、買主が掛けた外航貨物海上保険を当てにすることはできません。
被災後の対応は、契約書の不可抗力条項の規定に従って、取り進めることになります。
➄FOB、CFR契約の場合
バラ積貨物用語であるFOBやCFRを、コンテナ貨物の取引に使うことはお勧めできませんが、現実には、多くの「貿易のプロ」を自称する人達が、コンテナ貨物の取引であるにも関わらず、バラ積貨物用語を使って取引しています。
これは、コンテナ・空輸用語が誕生する以前から、貿易に携わっていた人達が、古い貿易知識のまま、アップデートしないで、後輩達に「惰性で」、伝えてきたことに、その一因があります。
また、新たに貿易を始めようとする人が、フォワーダーや銀行の人達に、「皆さんは、どのインコタームズの定型取引条件を使っているのでしょうか?」と質問をして、「ほとんどの人は、FOBやCFR、CIFを使っていますよ」と教えられて、バラ積用語を使って輸出を始めるようになったことも、一因にあります。
フォワーダーや銀行の人達は、インコタームズの違いによる、ビジネスにおけるリスクに対して、一般的に、敏感とは言い難いですから、そのように答えるのでしょうが、貿易を行う当事者にとっては、ある意味では「死活問題」なのです。
上記のような問題点はあるものの、FOB、CFR契約では、売主は、内航貨物海上保険(輸出FOB保険)を付保します。
これは国内保険ですので、自然災害に対しては免責です。
FOB、CFR契約では、売主から買主に貨物のリスクが移転するのは、「本船船上に貨物が置かれた時」ですから、「港のコンテナヤード(CY)で、船積み待ちをしている時」に被災したのであれば、売主にリスクがあったことは明らかです。
売主は、FCAやCPTで契約しておけば、保険で救済されたかもしれないのに、FOB、CFRで契約したために、貨物の損害は自ら負担しなければならないのです。
それでも、「ほとんどの人は、FOBやCFR、CIFを使っていますよ」と教えられて、貴方は、バラ積用語を使って輸出を始めるのですか?⑥CIF契約の場合CIFもバラ積貨物用語ですから、コンテナ貨物の取引であれば、CIPの使用をお勧めします。
CIF契約であっても、売主から買主へのリスク移転は、FOBやCFRと同様に、「本船船上に貨物が置かれた時」です。
売主が付保する外航貨物海上保険が始まる起点は、日本が海外から輸入する貨物の場合は、通常、「貨物のリスクが買主に移った時」ですが、日本から輸出する場合、損害保険会社と相談して、「工場(倉庫)から出荷した時」を保険の起点とすることができます。
このように保険の起点を「工場(倉庫)から出荷した時」としておけば、「問題」のケースであっても、自然災害に起因する貨物の損傷・滅失などの損害は、保険でカバーされます。
もちろん、ICC(C)であれば自然災害をカバーする特約を付けるか、あるいはICC(A)、ICC(B)でなければなりません。
買主には、被災による直接的な損害は生じませんが、事故後の対応は、契約書の不可抗力条項の規定に従って、取り進めます。
以上のように、インコタームズのどの定型取引条件を使って契約するかは、重要な問題です。
付保する保険を売主がコントロールできるという意味で、コンテナ貨物を輸出する場合、ベストはCIP、バラ積貨物を輸出する場合は、CIFということになります。
もちろん、コンテナ貨物を輸出するのに、在来船用語(バラ積用語)を使用しないようにしましょう。
在来船用語での引渡時点は、コンテナ・空輸用語よりも、遅くなって、売主のリスク範囲が広くなってしまうからです。
5.コンテナ貨物のC&F契約
(1)問題
台湾のバイヤーと輸出商談中です。
弊社はCPTで契約したいのですが、先方は、「CPTでやったことがなく、今まで他社とはC&Fでやってきているので、C&Fでお願いしたい」と言っています。
貨物は、コンテナで輸送されます。
(2)ヒント
これ種のやりとりが行われることは、現実に良くありますので、どのように対応するかを知っておきましょう。
1990年に改定された「インコタームズ1990」で、C&Fは、CFR(CostandFreight)と表記するように変更されました。
それまで、インコタームズの中で、唯一「&」という記号を使った定型取引条件であったC&F(CostandFreight:運賃込み)は、コンピューターの普及と輸出入手続きのEDI(ElectronicDataInterchange:電子データ交換)化が進行する中で、「&」を使わない「CFR」と表記するように改められたのです。
それから、30年以上も経っているのに、いまだにC&Fを使っていて、しかもC&Fを使うことを、堂々と要求する人が、いまだに居ることには、驚かざるを得ません。
世界の貿易業者が、如何に「惰性」に任せたまま、新しいインコタームズの知識にアップグレードされていないかが、良く分かる事例です。
C&FとCFRは、「運賃込み」(CostandFreight)ですが、実は、C&FとCFRとでは、リスクの移転時点が異なります。
CFRでのリスクの移転時点は、「インコタームズ2000」以降は、「本船船上に貨物が置かれた時」です。
それ以前のインコタームズでは、「本船の欄干上を貨物が通過した時」が、売主から買主への貨物の引渡時点、つまりリスクの移転時点でした。
ですから、C&Fで契約すれば、「本船の欄干上を貨物が通過した時」がリスクの移転時期ですし、CFRで契約すれば、「本船船上に貨物が置かれた時」に、リスクが売主から買主に移るのです。
契約書に「この契約は、最新のインコタームズによって解釈される」の文言を入れてあって、C&Fで契約すれば、最新のインコタームズである「インコタームズ2020」には、C&Fという定型取引条件はありませんから、意味不明な契約になってしまいます。
契約書に「この契約は、最新のインコタームズによって解釈される」の文言がない場合のC&F契約は、「インコタームズ1980」に定めるC&Fの定義で解釈されるため、リスクは「本船の欄干上を貨物が通過した時」に移転することになります。
また、もう一つ、輸出する立場から問題視しなければならないのは、C&Fにせよ、CFRにせよ、これらは、バラ積貨物の取引に使う用語です。
1970年代に、コンテナ輸送方式が世界的に普及したことに伴って、輸出国では、最初に陸上を輸送、次に船に積まれて海上輸送、輸入国に到着すると陸上輸送というように、複数の輸送手段を使って、国際間を一貫輸送する「複合一貫輸送」が普及しました。
そこで、「インコタームズ1980」では、新たに「コンテナ・空輸貨物」などで輸送される貨物の取引に使う定型取引条件を創設して、旧来の定型取引条件は、在来船に積載して輸送する「バラ積み貨物」の取引に使用する定型取引条件として位置づけました。
その後、若干の表記方法の変遷を経て、最新版の「インコタームズ2020」では、コンテナ・空輸用語と、在来船用語(バラ積み用語)は、次頁に掲げる一覧表のように、明確に区別されています。
輸出においては、「在来船用語」(バラ積み用語)を使った場合と、「コンテナ・空輸用語」を使った場合とでは、売主から買主への貨物の引渡時点が、後になります。
つまり、売主の危険負担の範囲が広くなることで、売主のリスクが増えます。
ですから、売主は、コンテナ貨物の輸出取引では、必ず「コンテナ・空輸用語」を使って契約するようにしなければなりません。
ただ、このことを海外の買主側に素直に説明すると、買主としては、危険負担の範囲がより少ない「在来船用語」(バラ積み用語)を使うことに固執するかも知れません。
海外側に対して、どのように説明して、説得すれば良いのでしょうか?下記は、最新のインコタームズの一覧表です。
(インコタームズ2020の定型取引条件)
(3)回答例
次のように説得してみては如何でしょうか?「ご存じかと思いますが、インコタームズは、貿易環境の変化に合わせて、ほぼ10年に一度、改定されてきています。
C&Fという定型取引条件は、今から30年以上も前に、CFRと表記するように変更になっていますし、当時のC&Fと、現在のCFRとでは、その定義も変更されています。
それともう一つ、今から40年以上も前に、インコタームズの定型取引条件は、コンテナ・航空機で運ぶ貨物の取引に使う定型取引条件が作られ、それ以前に使われていた定型取引条件は、在来船で運ぶ貨物の取引に使う定型取引条件として位置づけられたのです。
インコタームズは、時代の変化に合うように改定されてきていますから、やはり、最新のインコタームズの定型取引条件を使って取引するのが、お互いにとって必要なことではないかと思います。
最新のインコタームズは2020年版で、C&Fに相当するコンテナ貨物の取引に使える定型取引条件は、CPTとなります。
是非、最新のインコタームズに沿って、CPTで契約交渉を取り進めたいと思いますので、何卒宜しくお願い申し上げます。」
6.CIP契約の保険
(1)問題
CIP条件で、輸出契約をしました。船積直前になって、買主側から、「保険は、ICC(A),(War&S.R.C.C.)Strikes,Riots,」and。さて、どのように対応すれば良いでしょうか?
(2)ヒント
CIPとCIFの二つの定型取引条件は、売主が、売主の費用で保険を掛ける義務を、買主に対して負う定型取引条件です。
これら以外の定型取引条件を使って取引しても、売主と買主は、それぞれ、自らにリスクがある区間については、必ず損害保険を掛けるのが、貿易の常識ですが、それは、相手方に対して保険付保の義務を負っているのではなく、自らが自らのために自発的に保険を掛けるので、売主が、買主のためにも保険を掛けるCIP・CIFとは、意味合いが異なります。
損害保険は、国内での輸送リスクに対応する「国内の運送保険」と、国際間の輸送リスクに対応する、「協会貨物約款」(InstituteCargoClauses:。ICC)とに分か、後者の保険は。
日本の損保会社は、新協会約款と呼ばれるICC(2009)を「基本約款」として採用し、『外航貨物海上保険』(損保会社によって「貨物海上保険」)の保険名称で、船舶輸送用のICC(A)、ICC(B)、ICC(C)と、空輸貨物用のICC(AIR)として商品化しています。
船舶輸送用の外航貨物海上保険の三つのうち、最もカバー範囲の広いのはICC(A)で、次にICC(B)が続きます。ICC(C)はカバー範囲が最も狭い保険です。
ICC(A)は、その昔、「AllRisks」と呼ばれていた保険に相当するものです。
これらの基本約款の他に、特別約款として、戦争約款(WarClauses)とストライキ約款(Strikes,Riots,andCivilCommotion:)。
さて、「問題」の海外の買主は、その世界最強となる保険を掛けるように、売主に要求してきましたが、実は、インコタームズでは、CIP、CIF契約の場合に、売主が掛ける義務を負う保険について、明文規定を設けています。
契約交渉の時に、買主側が保険の種類について要求してくる場合、売主としては、それを輸出販売価格に織り込むことができるのであれば、インコタームズの規定如何に関わらず、買主の要請を受け入れることは、まったく問題はありません。
しかし、本件の場合のように、契約後に、突然、最大範囲の保険付保を求めてきた場合、インコタームズの規定範囲を超えて、応じる必要はありません。
さて、どのように相手方に対して説明すれば良いのでしょうか?
(3)回答例
CIP契約の場合、最新の「インコタームズ2020」では、別途合意または慣習になっていない限り、売主はICC(A)を付保する義務を負います。
買主が戦争保険やストライキ保険を要求する場合、売主は買主の費用で、それ(ら)を付保することは構わないとしています。
「インコタームズ2010」では、CIP契約で売主が買主に対して負う保険付保義務は、最小限の保険であるICC(C)を掛ければ良かったのですが、CIP契約では、工業製品がコンテナや空輸で輸送されるケースが多いことから、水濡れと自然災害による損失も補償対象となるICC(A)を付保することに変更されました。
CIF契約の場合、インコタームズでは、付保する外航貨物海上保険の種類は、別途合意または慣習がなければ、ICC(C)を付保することで、売主の買主に対する保険付保義務が履行されたとみなします。
買主がICC(C)以上のカバー範囲の保険を要求する場合、例えば、ICC(A)やICC(B)、あるいは、戦争保険やストライキ保険を要求するのであれば、売主は、買主の費用で、それ(ら)を付保しなければなりません。
以上のインコタームズの規定を買主側に説明するとともに、どうしてもWar&S.R.C.C.(Strikes,Riots,andCivilCommotion)を掛けるのであれば、それは買主の費用負担になることで、納得していただきましょう。
7.DDP条件での留意点
(1)問題
米国の業者が、DDPChicago条件での取引を要求してきました。
DDPで契約する場合、物流リスクは、どのように回避すれば良いのでしょうか?
(2)ヒント
欧米では、買主にとって、最も便利な定型取引条件である「Dベース用語」での取引が増えてきているようです。
そうした一般的な背景から、日本の業者に対しても、Dベースでの取引を希望する欧米業者が出てきています。
とりわけ、DDP(関税込持込渡)は、輸入通関も売主が行うため、買主は契約した後、ただ貨物の到着を待っていれば良いという便利さがあります。
ただ、売主がリスク負担する区間が最大になるということは、それだけ事故に遭遇するリスクも大きくなるのは自明の理です。
現に、DDPで輸出契約し、輸入国で輸入通関した後、トラック輸送中に交通事故に遭って、貨物が破損してしまったケースも起きています。
ここでは、如何にして、貿易貨物の輸送リスクをゼロにできるかを、基本に立ち戻って、思い起こしてみましょう。
(3)回答例
売主の工場(倉庫)を起点とし、買主と合意したシカゴの特定の地点で、貨物を買主に引き渡すまでの区間に対して、外航貨物海上保険のICC(A)を付保したうえで、出荷します。
戦争保険、またはストライキ保険を付保する必要があるか否かは、その必要のある状況があれば、必ず付保するようにします。
DDP条件で契約しておきながら、外航貨物海上保険を掛けないで出荷したために、米国で輸入通関した後の陸上輸送中に、貨物を積載したトラックが、交通事故に遭ってしまい、貨物は全損、買主からは、契約違反でクレームを受けるという、泣き面にハチ状態に陥ったケースがあったことから、「貿易の基本」の原点を思い起こしていただくために、本「問題」を設けたものです。
8.CNI条件での取引
(1)問題
ある東南アジアの国の業者から、「CNI(またはC&I)で、輸入したい」という要請がありました。CNIとは、「Costand Insurance」の略で、FCAまたはFOBに、売主が保険を掛ける義務を負うことがポイントです。
買主が、買主の国の保険会社に保険を掛けても、なかなか賠償してくれないので、日本側で日本の保険会社に付保して欲しいのだとの説明でした。
さて、CNIでの契約要請がきた時、どのように対処すれば良いのでしょうか?
(2)ヒント
確かに、外国の保険会社の支払い振りは、日本の保険会社と比べると、だいぶ違うようです。
日本の保険会社は、一般的に、審査が早く、支払うべきものは、迅速に支払ってくれます。
新興国のバイヤーが日本から買い付ける場合や、日本企業で新興国に進出している子会社向けに、輸出を行っている企業では、新興国の保険会社では心もとないということで、CNIによる取引が、広く普及している実態があるようです。
CNIを使うことの問題点は、インコタームズで定められている定型取引条件ではないので、用語の定義が不明瞭なことです。
もちろん、取引当事者同士が、同一の定義で、認識できていれば、現実に、厄介な問題が生じることはないのですが、それでは、CNIのCとは「Cost」の略だとしても、実態として「FOB+Insurance」なのか、あるいは「」、。
、、。
しかし、一方では、日本の保険会社に、損害保険を掛けて欲しいという海外側の要望には、ビジネスを円滑にスピーディに行いたいという、切実なものがあることも事実です。
以上のことを考慮に入れて、インコタームズの定型取引条件を使って、実質的にCNIを企図する形にするには、どうすれば良いかを考えてみましょう。
(3)回答例
コンテナまたは航空機で輸送する貨物の取引であれば、定型取引条件として、FCAを使います。
また、在来船で運ぶバラ積みの貨物であれば、FOBを使います。
そして、その何れの場合でも、価格条件のRemarkとして、「InsuranceshallbeeffectedbySelleratSeller’saccount.」と記載します。
できれば、付保する保険の種類を、例えば次のように明記すると良いでしょう。
「Insurance,ICC(A)」こうすることによって、定型取引条件の定義が、インコタームズによって明確になり、尚且つ売主の日本側がどの種類の保険を掛ける義務を負うかも、明確になります。
9.納品完了時点の合意
(1)問題
ある日本の輸出業者は、CPT条件で、輸出商談をしたのですが、納品と代金支払いについて、海外の買主側が、「買主が、貨物の輸入通関を行い、実際に着いた貨物を見て検品したうえで、問題がなければ、納品完了とし、納品完了後5営業日以内に、貨物代金を売主の銀行口座に送金して支払う」という条件を提示してきたので、合理的な考え方だと思って、これを受諾しました。
仮に、着荷した貨物を、買主が検品し、品質不良を理由として、一方的に値引きされ、値引き後の残金を支払ってきた場合、㈱日本貿易保険の貿易保険にリスクヘッジしてあれば、値引きされた金額は、貿易保険でカバーされるのでしょうか?
(2)ヒント
これは、国内取引のやり方で、貿易しようとする誤った考えに基づくものです。国内取引の「納品」は、貿易では「貨物の引渡し」に該当します。
CPT条件では、売主から買主への貨物の引渡しは、インコタームズの定義によれば、本来、いつ、どこで行われるのでしょうか?また、貨物を検品したうえで、貨物代金の支払いが行われるというビジネスの構図ですが、この構図によって、売主は貨物代金回収のリスクに晒されます。それでは、貨物代金回収のリスクを、解消または減少させるには、どうすれば良いのでしょうか?
(3)回答例
CPT条件では、売主から買主への貨物の引渡しは、売主が自ら契約した運送人に、輸出国で貨物を引き渡した時、または貨物の物理的な占有を、運送人に移した時に行われます。これが、「納品完了時点」です。国内取引では、買主または買主の代理人が、実際に貨物を見たうえで、納品が行われるのが普通です。
しかし、貿易では、Dベースの定型取引条件を除いて、通常、買主が貨物を見たくても見ることができない、輸出国で、貨物は買主に引き渡されます。しかし、インコタームズは法令ではありません。
貿易当事者同士が、インコタームズが定める定型取引条件の定義と異なる合意をすることを、妨げるものではありませんので、海外の買主側が、「買主が、貨物の輸入通関を行い、実際に着いた貨物を見て検品したうえで、問題がなければ、納品完了」とすることで、合意すれば、それが有効になってしまいます。
また、貿易では、貨物代金の決済と、数量の不足や品質の瑕疵によるクレームとは、相関関係を持たせません。つまり、貨物が、売主から買主に荷渡しされれば、買主は、貨物代金を100%売主に支払います。
数量の不足や品質の瑕疵があれば、買主はクレームの形で、売主に問題を提起し、売主と買主との協議などを通じて、クレーム自体が妥当か否かを含め、仮に妥当なクレームであれば、代替品を供給するか、クレーム品の残存価額を査定したうえで、売主は買主に、その差額を貨物代金の決済とは絡めないで、別途、賠償してクレームを解決します。これは、貿易の基本です。
貨物代金の一部を、貨物が着いてから、検品したうえで支払う方法も、一部では行われていますが、この方法の問題点は、「価格の最終決定権を買主が持つ」ことになる、売主にとって、極めて不利な取引条件です。
貿易保険がカバーするのは、通常、カントリーリスクなどによる非常リスクと、売主側に起因しない一定期間以上の代金不払いなどの信用リスクの二つです。
買主が、品質不良を理由として、一部代金を払ってこない場合は、信用リスクではありませんから、㈱日本貿易保険の貿易保険で、カバーすることは期待できません。それでは、どうすれば良いのかと言うと、やはり、貿易の基本に立ち戻って、契約することです。
つまり、貨物代金は、100%支払ってもらうこと、品質クレームなどがあれば、それは貨物代金の支払いとは関連付けないで、クレーム請求を起こして協議し、クレームが金銭支払いで妥結すれば、別途、売主から買主に送金して解決することです。
貨物の船積みと貨物代金支払のタイミング次第では、貿易保険に付保して、代金回収リスクに備えます。国内取引の常識で、貿易しないようにしましょう!
10.輸入通関前の検疫検査費用
(1)問題
東南アジアのある国向けに、CPT条件で輸出契約をしたところ、買主から次の内容の要請がきました。
:「輸入港で、輸入通関前の貨物は外国貨物扱いです。輸入通関手続きの前に、検疫検査が必要ですが、外国貨物なので、検疫検査費用は、売主の費用負担となります。輸入通関が済むと内国貨物になるので、通関後に発生する費用は、弊社がすべて負担しています。これは、貴社だけでなく、弊社が輸入するすべての貨物に共通して、この方法で対応していただいています」
(2)ヒント
まず、CPT条件では、貨物が、どこで売主から買主に引き渡されるかを確認してください。そして、物品に関わる売主と買主の費用負担は、どの時点が分岐点となっているかも、合わせて確認してください。この「問題」のヒントは、そこが原点です。
(3)回答例
CPT条件では、貨物は、「売主が運送契約を締結した運送人に貨物を引き渡すことによって」、引渡しが行われます。これは、必ず輸出国で行われます。
貨物に関わる費用は、輸出国での引渡時点を境として、それ以前は売主の費用負担、それ以降は買主の費用負担です。
従って、輸入港で発生する検疫検査費用は、明らかに買主が負担すべきもので、貨物が「外国貨物」なのか「内国貨物」なのかは、関係ありません。
CPT条件では、輸入国の予め合意した地点があれば、その地点まで、合意地点がなければ、仕向地内の任意の地点まで、売主が、運送人と運送契約を締結します。
当然ですが、運送契約に、輸入港で発生する検疫検査に関する費用は、運送契約に含まれるはずもありません。輸入港での検疫検査費用は、買主の負担です。
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