第三章 インコタームズ
- 1.インコタームズの定型取引条件で決まること
- (1)義務が決まる
- (2)貨物の引渡地点が決まる
- (3)負担するコストが決まる
- 2.「インコタームズ2020」の構成
- 3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件
- (1)EXW(工場渡し)~ Ex.Works~
- (2)FCA(運送人渡し)~ FreeCarrier~
- (3)CPT(輸送費込み)~ CarriagePaidto~
- (4)CIP(輸送費保険料込み)~ Carriage,InsurancePaidto~
- (5)DAP(仕向地持込渡し)~ DeliveredatPlace~
- (6)DPU(荷卸込持込渡し)~ DeliveredatPlaceUnloaded~
- (7)DDP(関税込持込渡し)~ DeliveredDutyPaid~
- (8)FAS(船側渡し)~ FreeAlongsideShip~
- (9)FOB(本船渡し)~ FreeonBoard~
- (10)CFR(運賃込み)~ CostandFreight~
- (11)CIF(運賃保険料込み)~ Cost,InsuranceandFreight~
- 4.「インコタームズ2010」から「インコタームズ2020」への主な変更点
- (1)FCAでの買主の費用負担による「積み込み証明付記」(OnBoardNotation)のオプション追加
- (2)CIF・CIPで付保する保険の種類
- (3)FCAとDで始まる用語における売主または買主による輸送手段の手配
- (4)DATのDPUへの表記変更
- 5.定型取引条件は何を使えば良いか?
- (1)売主が使うべき定型取引条件
- (2)買主が使うべき定型取引条件
- 6.定型取引条件の誤用例と慣習的な使用例
- (1)誤用例
- (2)慣習的に使われている定型取引条件
- 4.物流に関わる重要な書類
- (1)船荷証券(B/L)
- (2)船積書類
- (3)為替手形
- (4)荷為替手形
- (5)航空貨物運送状(AWB)
第三章 インコタームズ
インコタームズは、国際商業会議所(InternationalChamberofCommerce:C)によって、1936年に初めて制定されました。
それ以前でも、貿易ではローマ字を組み合わせたコードを使って、取引条件を決める方法が行われてきましたが、コードの解釈が国によって一致していなかったことから、貿易をめぐるトラブルが起きていました。
こうした弊害を除くため、国際商業会議所は、世界共通に使用するインコタームズというコードと、それぞれのコードの統一した定義を作る必要があったのです。
国際商業会議所は、その後も、国際物流や輸出入通関手続きの変化などに対応して、1953年、1967年、1976年の改定を経て、1980年以降は、「インコタームズ1980」、「インコタームズ1990」、「インコタームズ2000」、「インコタームズ2010」と、近年では10年に一回改定されてきています。
最新版は、2019年9月に発表された「インコタームズ2020」です。
インコタームズとは、「InternationalCommercials」を略した「国際通商定型条件」を意味する言葉です。
「Terms」は、複数の条件が定義されている用語の意味で、「定型条件」と翻訳されています。
インコタームズは、「インコタームズ2010」からは、「国内および国際取引の定型条件使用のための国際商業会議所規則」(ICCRULESFORTHEUSEOFDOMESTICANDINTERNATIONALTRADETERMS)となっています。
「TRADETERMS」とは、「取引用語」でもあり、それぞれの取引用語には、複数の条件が定義されていて、しかも定型の用語ですから、「定型取引条件」と訳されています。
一部の用語は、国内取引に使われるので、「国内および国際取引の定型条件使用のための国際商業会議所規則」となっています。
世界の貿易業者は、インコタームズの「定型取引条件」を使って、ビジネスをしています。
インコタームズというツールを使えなければ、貿易をしたくても、値段さえ決められないほど、重要なものです。
インコタームズは、英語版が原文ですが、邦訳付きの「インコタームズ2020」が、国際商業会議所日本委員会から発行されています。
貿易の仕事に従事されている方々は、机上に常備しておかれることをお勧めします。
1.インコタームズの定型取引条件で決まること「インコタームズ2020」には、ローマ字三文字を組み合わせたコードで表示される11の定型取引条件があります。
インコタームズの定型取引条件ごとに、複数の定義が定められていますから、どの定型取引条件を使うかがで決まると、自動的に幾つかのことが決まります。
(1)義務が決まる売主・買主のそれぞれが何を行う義務があるかが決まります。
何処から何処までの輸送を手配するか、損害保険をかける義務は? 輸出許可を取得する義務は? 輸入許可を取得する義務は?、。
(2)貨物の引渡地点が決まる定型取引条件によって、売主から買主に貨物が何時どこで引き渡されるか、つまり売主から買主への「リスクの移転時点」が決まります。
貿易では、貨物の引渡し前の区間は、売主は自らのために損害保険を掛け、買主は引渡し以降の区間に対して、買主自身のために損害保険を掛けます。
つまり、売主も買主も、国際間の物流リスクは損害保険にリスクヘッジします。
国際間の物流は、売主も買主もノーリスクで行う、これは、貿易の基本です。
貨物の引渡地点は、輸出国の場合と輸入国の場合に分かれます。
輸入国で引渡が行われるのは「Dで始まる取引条件(到着ベースの取引条件)」で、その他は全部、輸出国で貨物が買主に引き渡されます。
輸出国のどの場所で引き渡されるかは、それぞれの定型取引条件によって決まっています。
ここで注目していただきたいのは、国内取引では、買主または買主が手配した運送業者が買主を代表して、実際に引き取る貨物を見たうえで貨物の引渡が行われます。
これはどの国の国内取引でも同じです。
ところが、貿易では、「Dで始まる取引条件」は別ですが、その他の定型取引条件で契約すれば、貨物は輸出国で売主から買主に引き渡されます。
つまり、買主がまだ貨物を見ていない段階で、貨物が買主に引渡される、この点が国内取引と貿易取引との大きな違いの一つです。
(3)負担するコストが決まるどの定型取引条件を使うかを決めると、売主・買主のそれぞれが、どの費用を負担するかが決まります。
輸送費用、輸出通関費用、船積費用、荷揚費用、輸入通関費用……、これらの諸費用はどちらが負担するかが、定型取引条件を決めることによって、自動的に定まります。
インコタームズでは、これらの他にも、相手方への通知義務や情報提供による助力義務等、貨物の輸送や荷渡し、通関に必要な事項が定められています。
2.「インコタームズ2020」の構成「インコタームズ2020」(「インコタームズ2010」も同様)の11ある定型取引条件は、「いかなる単一または複数の輸送手段にも適した規則」と「海上および内陸水路輸送のための規則」の二つの分類構成に分かれています。
そして、「いかなる単一または複数の輸送手段にも適した規則」は、更に「引渡が輸出国で行われる規則」と「輸入国で行われる規則」に分かれます。
「海上および内陸水路輸送のための規則」は、すべて輸出国で引渡が行われます。
この分類構成を直感的に理解するには、「いかなる単一または複数の輸送手段にも適した規則」の中の「引渡が輸出国で行われる規則」(EXW・FCA・CPT・CIP)を「コンテナ・空輸貨物の取引に使う「コンテナ・空輸用語」、「いかなる単一または複数の輸送手段にも適した規則」の中の「輸入国で行われる規則」(DAP・DPU・DDP)を「到着ベースの用語」または「D用語」、「海上および内陸水路輸送のための規則」(FAS)・FOB・CFR・CIF」を、バラ積み貨物の取引をする時に使う「在来船用語」または「バラ積み用語」と理解すると、すっきり整理して覚えることができます。
日本の場合は、四方が海に囲まれていますから、貨物は「コンテナか航空機で運ぶ」か、あるいは「在来船でバラ積みして運ぶ」かのいずれかしかありません。
「コンテナ・空輸用語」と「在来船用語」を対比するようにして覚え、それ以外にDで始まる「到着ベースの用語」(D用語)があると捉えれば、すっきりと分類構成を理解することができます。
欧米の陸続きの国同士であれば、トラック輸送や鉄道輸送等も、「いかなる単一または複数の輸送手段」の中に入ってきますから、「コンテナ・空輸用語」のひとことで捉えるわけにはいきませんが、日本の場合の貿易貨物は、コンテナで運ぶか、航空機で運ぶか、あるいは在来船に載せて運ぶかしか方法はありません。
単一の輸送手段で運ぶ貨物なのか、あるいは複数の輸送手段で運ぶ貨物なのかを考えるよりも、コンテナまたは空輸で運ぶ貨物か、在来船にバラ積みする貨物かを考えることで、直感的に輸送形態の違いを理解することができます。
インコタームズの定型取引条件には、「コンテナ・空輸用語」、「在来船用語」(バラ積み用語)および「到着ベースの用語」(D用語)の三つがあると覚えておきましょう。
(インコタームズ2020の定型取引条件)
*EXWを除く10の定型取引条件では、上記「引渡の時点」以外に、輸送途上で貨物を転売する場合(「洋上転売」も含みます)は、貨物の売買契約を締結した(これを「調達」と言います)時に、売主から買主に貨物の危険が移転する
(貨物が引き渡されること)としています。
3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件それでは、「インコタームズ2020」で定められている、それぞれの定型取引条件について詳しく解説します。
(1)EXW(工場渡し)~EXWは、インコタームズの中でも、売主の義務が一番少ない用語です。
貨物を置いてある場所が、工場であれば「工場渡し」、倉庫であれば「倉庫渡し」となります。
①引渡時点EXWでは、売主は、貨物を買主が手配した、貨物受領のための車両に積み込む必要はありません。
工場または倉庫に置いてある貨物を、売主が「そこに置いてある貨物を積んでいってください!」と言えば、売主から買主への貨物の引渡しが完了します。
ただ、買主の車両に、売主が貨物を積み込まなければならない事情があれば、売主・買主のどちらが、積込みのリスクと費用を負担するかを明確に決めておく必要があります。
どうしても、売主のリスクと費用負担で、車両に貨物を積み込む必要があるのであれば、EXWでなく、次に説明するFCAを使って契約すべきです。
②輸出許可取得義務EXWでは、売主には輸出国での輸出許可を取得する義務がありません。
当然、EXW価格には、輸出通関諸費用も含んでいません。
となると、貨物の引渡しを受けた後、買主は自らの費用で、国内運送をかけ、輸出手通関手続きをし、その費用も負担しなければなりません。
日本では、関税法によって、海外の買主側が、日本のフォワーダーを税関事務管理人として任命し、委託を受けた日本のフォワーダーが、買主の名義で輸出通関手続きを行うことができます。
米国でも、米国から輸出する場合、海外の買主側が、米国の通関業者を買主の輸出代理人として任命すれば、米国の通関業者が輸出通関手続きを行ってくれる仕組みになっています。
この方法はどこの国でもできる訳ではなく、関連法制度が整備されている日本や欧米の先進国に限られます。
EXWは、買主にとっては「貿易取引」用語ですが、売主にとっては「国内取引」用語です。
③用語の使い方EXWの後ろに引渡地、続いて単価を表示します。
引渡地は、通常、売主の工場(Works)か、自社倉庫(Warehouse)のことが多いと思いますが、外部倉庫でも構いません。
引渡地が工場の場合、「EXW▲▲▲Warehouse.○○」。
、「○○▲▲▲、、、、」。
④消費税EXWで取引した場合、販売した貨物が輸出されても、売主にとっては国内取引ですから、消費税課税業者であっても消費税の還付は受けられません。
通常、日本の消費税課税業者が輸出をすれば、輸出貨物の売上に対して、消費税は免税です。
一方、輸出貨物の仕入れ控除することで、輸出された貨物の消費税が、売主企業に戻る仕組みになっています。
しかし、輸出したことを証明するために、輸出貨物の輸出通関関連の書類を保存しておかなければなりません。
しかし、EXW条件で取引した場合、売主は輸出通関手続きを行いませんので、輸出通関書類も手元に一切ないことになります。
輸出通関関連の書類がなければ、消費税の還付を受けることはできません。
EXW以外の定型取引条件を使って契約をするのであれば、売主は必ず輸出通関手続きを行いますから、消費税課税業者であれば、輸出貨物に関わる消費税は、仕入れ控除を起こすことで還付されます。
消費税非課税業者には、輸出貨物の消費税還付はありません。
(2)FCA(運送人渡し)~貨物の運送契約を締結して、運送を請け負う業者を「運送人」(Carrier)と言います。
実際に貨物を輸送する船会社や航空会社は実運送人ですから、まぎれもない運送人ですが、実運送人の輸送を手配するフォワーダーも、運送人です。
LCL貨物であれば、売主や買主が運送契約を結ぶのはフォワーダーですから、フォワーダーが運送人になります。
LCL貨物の集荷場所であるCFSは、運送人の施設ですから、CFSも運送人とみなされます。
FCL貨物の場合は、船会社と直接運送契約を結べば運送人は船会社となり、その船会社が特定のCYを指定すれば、そのCYも船会社の施設ですから運送人です。
航空貨物の場合、航空会社は実運送人でまぎれもなく運送人ですが、航空貨物を集荷するコンソリデーター(航空貨物代理店)も運送人です。
「Free」Carrie、「、」。
、、、。
①FCAの使い方FCL貨物の場合、空のコンテナを自社工場か、自社倉庫に持って来て、バンニングするのが普通でしょう。
この場合の価格表示は、FCAの後ろに具体的な工場の所在地と工場の名称を記載して、価格を表示します。
例えば、「FCAXXFactory,○○」、「○○は、、」。
LCL貨物の場合の価格設定は、○○倉庫㈱東京港の△△CFSで貨物を買主に引き渡すのであれば、「FCATokyo△△CFS,○○Warehouse,」Ltd.。
US$150pe、k「logra○△△、、CFSに」貨物を持ち込む。
での費用込みでFCAの場合、売主が貨物を買主に引き渡した後、売主は売主の費用と責任で輸出国での輸出許可を取得する義務がありますから、輸出に必要な諸掛はFCA価格の中に、コスト算入しておかなければなりません。
②引渡地点売主と買主が、LCL貨物の引渡地点を、輸出港の特定のCFSとすることで合意した場合、売主は、売主が手配するトラックなどで、貨物をCFSに持って行くことが多いでしょう。
この場合、トラックがCFSに到着して、トラックから貨物が
卸せる状態で、CFS側に貨物の処分を委ねた時に、貨物は売主から買主に引き渡しとなり、貨物のリスクは買主に移転します。
FCAでは、CFSのような外部の場所が引渡地の場合、売主はトラックなどの積載車両から、自ら貨物を降ろす手段を持ちませんから、運送人の施設であるCFS側に貨物の処分を委ねた時に、売主から買主に引き渡しが完了するのです。
FCL貨物であれば、売主の工場や倉庫で、買主が手配した空のコンテナに、売主が貨物を積み終えた時に、貨物は売主から買主に引き渡されます。
コンテナに貨物を積み込むためのフォークリフトなどを、実運送人が売主の工場や倉庫に持参するのは非現実的です。
ですから、売主の施設が引渡地の場合、買主が手配した輸送手段に、売主が貨物を積み込んだ時点で、売主から買主への貨物の引渡が完了します。
③損害保険貨物が売主の工場(または倉庫)に置かれていて、そこで貨物をコンテナに積む場合、売主は貨物を置いてある場所からコンテナに積むまでの区間は保険をかける必要はありません。
なぜなら、FCA契約の場合、買主は「外航貨物海上保険」(損保会社によって「貨物海上保険」というところもある)をかけて、リスクを保険にヘッジします。
この時に、買主がかける保険は、売主の工場や倉庫でコンテナなどに貨物を積み込むために、最初に動かされた時に保険が開始し、通常の輸送過程を経て、仕向地の買手の倉庫で荷卸しが完了した時に終了します。
貨物をコンテナに積もうとした時に、貨物がフォークリフトから落ちて破損しても、買主がかける外航貨物海上保険でカバーされますから、保険などかけないなどという貿易の素人を相手に取引すると、売主は思わぬリスクを背負い込むことになります。
CFSを引渡場所とした場合、売主はCFSまでの国内運送保険をかけ、買主はCFS以降をカバーする「外航貨物海上保険」をかけます。
「外航貨物海上保険」がスタートする起点は、貨物がCFSの門をくぐった時からです。
引渡地点が必ずしも保険の起点と一致するわけでないことを覚えておきましょう。
(3)CPT(輸送費込み)~CPTでは、仕向地またはあらかじめ売主と買主が合意した、仕向地の特定の地点までの輸送費を、売主が負担します。
仕向地とは、貨物の輸送先のことで、通常は輸入国の港、CYなどを指します。
①CPTの使い方CPTの後ろに仕向地、続いて単価を表わします。
売主と買主は、どの仕向地までの貨物の輸送を売主が手配するか、あるいは仕向地のどの特定の地点まで、売主が輸送を手配するかを決めたうえで、売主は運送人と運送契約を結びます。
コンテナを輸送する船は、ほとんどが特定の港から特定の港まで、定期的に就航する定期船と呼ばれる船で、この場合、輸出港のCYから輸入港のCYまでの輸送契約となります。
LCL貨物の場合、フォワーダーとの輸送契約で、輸出港のCFSから輸入港のCFSまでの輸送とすることが一般的です。
コンテナを定期船で輸送する場合、単に「CPTHongKongUS$1,200percase」で値決めすれば、「香港のコンテナヤード(CY)まで、コンテナで輸送するための輸送費込みの値段で、1,200米ドル」という意味になります。
香港のコンテナヤード(CY)に貨物が到着した後、売主はコンテナをデバン(貨物をコンテナから降ろすこと:Devan)する義務はありません。
デバンは、買主の仕事です。
②引渡地点CPTの場合、引渡地点は、売主が自ら契約した運送人に、貨物を引き渡した時、または貨物の物理的な占有を、運送人に移した時となります。
CPTの場合、「仕向地または仕向地の特定の地点」はCPTの右側に表示しますが、引渡地点は
表示する場所がありません。
契約書には「PlaceofDelivery」として、売主と買主が合意する引渡場所を明記すると良いでしょう。
③損害保険売主の工場や売主の倉庫で貨物をコンテナに積む場合、FCAと同様、売主は保険をかける必要はありません。
買主が外航貨物海上保険をかけます。
CFSを引渡場所とする場合、売主はCFSまでの国内運送保険をかけ、買主はCFS以降の「外航貨物海上保険」をかけます。
貿易では、物流リスクは、売主も買主も損害保険にリスクヘッジするのが基本です。
保険料率は、気にするほどのものではありませんし、すべてのコストは、値段にコストインしておけば、最終的に買主が負担することになります。
損害保険をかけるのはもったいないとか、今まで一度も事故に遭ったことがないから保険はかけないと言うのであれば、「ノーリスクの貿易」ではなくなってしまいます。
貿易は、リスクを冒してまでするものではないことを覚えておきましょう。
上記のとおり、CPT契約で注意することは、仕向地と引渡地の具体的な地点を明確にしておくことです。
この二つが不明確だと、運送契約と保険付保を的確に行うことができません。
(4)CIP(輸送費保険料込み)~CIPでは、売主が、仕向地または合意された仕向地の特定の地点までの輸送費を負担する以外に、損害保険(外航貨物海上保険)も売主の費用負担でかけます。
①CIPの使い方CPTと同じく、CIPの後ろに仕向地、続けて単価を表示します。
「CIPShanghaiUS$1,500perM/T」の価格は、通常の定期船輸送の場合、上海のコンテナヤード(CY)まで、コンテナで輸送するための運賃と保険料込みで、1M/T当たり1,500米ドル」という意味になります。
②引渡地点CIPの場合も、CPTと同様に、引渡地点は、売主が自ら契約した運送人に、貨物を引き渡した時、または貨物の物理的な占有を、運送人に移した時です。
CIPでも、「仕向地または仕向地の特定の地点」はCIPの右側に表示しますが、引渡地点は表示する場所がないので、契約書には「PlaceofDelivery」として、売主と買主が合意する引渡場所を記載します。
③損害保険CIPは、売主が買主に対して保険をかける義務を負います。
FCAやCPT契約でも、売主は保険をかけますが、それは物流リスクをヘッジするために、自らのためにかけるものです。
例え、保険をかけなくても、買主との間では保険をかける約束はしていませんから、買主から文句を言われることはありません。
しかし、CIPでは、買主がリスクを負う区間に対して、売主が買主に保険付保の義務を負います。
売主が買主のために付保する保険は、「インコタームズ2010」では最小限の保険である、外航貨物海上保険の協会貨物約款(InstituteCargoClause:ICC)の「ICC(C)」で良いとなっていましたが、「インコタームズ2020」では、別途合意または慣習があれば、ICC(A)以外の損害保険をかけても良いものの、そうでなければ、売主は最大限のカバー範囲である「ICC(A)」を付保しなければならないことに変更されました。
ただし、買主が戦争保険やストライキ保険を要求する場合、売主は買主の費用で、それ(ら)を付保することが、インコタームズで規定されています。
CIPは、工業製品の取引で多く使われる定型取引条件です。
ICC(A)は、水濡れや自然災害による損失も補償対象となります。
CIPで契約すると、売主は、買主に貨物が引き渡されて以降の輸送区間に対して、ICC(A)をかける義務を、買主に対して負います。
従って、貨物を運送人に引き渡すまでは売主が国内運送保険をかけても、あるいはかけなくても良く、運送人に貨物を引き渡して以降の区間に対して、買主のために外航貨物海上輸送保険をかければ、インコタームズの規定に合致することになります。
しかし、貿易の実務では、売主も買主も、自らにリスクがある輸送区間を対象に、損害保険をかけて、物流リスクを保険にヘッジするのが常識です。
LCL貨物で、CFSを貨物の引渡場所とするのであれば、CFSまでは、売主が国内運送保険をかけ、CFS以降は売主が買主のために外航貨物海上輸送保険のICC(A)をかけます。
FCL貨物で、自社工場(倉庫)でバンニングするのであれば、売主は、自社工場(倉庫)で貨物積込みのために、貨物が最初に動かされた時に開始し、仕向地の買手の倉庫で荷卸しが完了した時に終了する外航貨物海上保険をかけます。
(5)DAP(仕向地持込渡し)~DAPと次に述べるUで共通している点は、引渡場所となる仕向地または合意された引渡地点は、輸入通関前の地点であっても、輸入通関後の地点であっても構わない点です。
ただし、DAPも次に述べるUも、輸入国での輸入通関義務は、買主にあります。
ですから、輸入通関後の地点を引渡地点とする場合、輸入通関を行っている間の貨物の滅失・損傷等のリスクは、買主に移ります。
つまり、貨物が輸入通関する場所に着いてから、通関が終わって輸送が始まるまで、売主の貨物に対するリスクは、一時的に買主に移り、輸入通関後に輸送が開始されると、貨物のリスクは再び売主に移ります。
DAP、DPUともに、輸入国に貨物が輸送されるまでに、経由する国(地域)があって、もし経由地で徴収される費用や税金等があれば、売買契約で別段の合意がない限り、それらは全て売主の負担になります。
一方、DAPとDPUで異なるのは、DAPでは輸送車両の上に貨物が積載されたままの状態で、買主に引き渡されますが、DPUでは輸送手段から荷卸しされて買主に引き渡される点です。
買主が、輸送車両の上に貨物を積んだままの状態で、買主が輸入通関を切って、さらに別の場所にそのまま移送するのであれば、DAPの定型取引条件で契約します。
①DAPの使い方DAPの後ろに、仕向地または合意された引渡地点を記載し、次に単価を表示します。
「DAPXXXRailwayStationUS$1,800perM/T」と表示すれば、「国境を接するXXX鉄道駅で、貨車に貨物が載ったままの状態で貨物を引き渡す、そこまでの費用込みで、1M/T当たり1,800米ドル」ということになります。
XXX鉄道駅は、輸入通関前の駅でも、輸入通関後の駅でも構いません。
②引渡地点貨物が、仕向地または合意された引渡地点に到着し、輸送手段から荷卸しする準備ができている状態で、貨物の処分が買主に委ねられた時が、売主から買主への貨物引渡となります。
具体的には、仕向港のCYを引渡地点とすることもできますし、鉄道の駅を引渡地点とすることも可能です。
貨物は荷卸しされないで買主に引き渡されますから、買主がそこから別の場所に貨物を輸送することもできます。
③損害保険損害保険は、貨物が自社工場・倉庫で、輸送車両に貨物を積載する動作を開始した時に保険がスタートし、あらかじめ合意されている仕向地または合意された引渡地点に到着するまでの区間に対して、売主が外航貨物海上保険をかけます。
仕向地内の特定の地点以降は、買主が必要により国内運送保険をかけます。
売主がかける外航貨物海上保険は、水濡れも自然災害もカバーするICC(A)をお勧めします。
(6)DPU(荷卸込持込渡し)~この定型取引条件は、「インコタームズ2010」では、DAT(DeliveredT)の名称でした。
「インコタームズ2010」におけるDATの「ターミナル」は、必ずしも一般的に認識されている終着地点としてのターミナ
ルだけでなく、それ以外に売主と買主が合意する特定の「場所(Place)」もターミナルとすることができるようになっていましたが、狭い意味でターミナルが解釈される懸念をなくすために、「インコタームズ2020」ではDPU(DeliveredatPlaceUnloaded)に変更されました。
この場合の「Place」には「ターミナル」も含む「場所」という意味なので、定型取引条件としての定義には、何ら変更はありません。
「Unloaded」とは、「輸送車両から荷卸しして」貨物を引き渡すという意味です。
売主は、輸入国の仕向地または仕向地内で合意した特定の場所があれば、そこで輸送手段から貨物を荷卸しして買主に引き渡します。
それまでのリスクと費用は売主の負担です。
合意されたターミナルがなければ、売主は仕向地または仕向地における場所を決めることができます。
①DPUの使い方DPUの後ろに、仕向地または仕向地における特定の場所を記載し、続いて単価を表示します。
「DPUSanFranciscoCFSe」は、「売主が、サンフランシスコのSまでの運送費用を負担し、CFSで荷卸しして引き渡す条件で、1個当たり100米ドル」という意味です。
②引渡地点輸送手段から貨物が荷卸しされ、買主の処分に委ねられた時に、売主から買主に貨物が引き渡されます。
貨物は荷卸しして買主に引き渡されますから、買主がそこから別の場所に貨物を輸送することを企図するのであれば、DPUでなくDAPで契約すべきです。
引渡地点は、DAPの場合と同じく、輸入国の通関前の場所でも、通関後の 場所でも、どちらでも構いませんが、輸入通関後の場所を引渡地点とする場合、輸入通関中の貨物のリスクは、一時的に買主に移ります。
③損害保険損害保険は、貨物が自社工場・倉庫で、輸送車両に貨物を積載する動作を開始した時から、仕向地または合意されている仕向地内の特定の場所に到着するまでの間、売主が外航貨物海上保険をかけます。
引渡地点以降は、買主が必要により国内運送保険をかけます。
売主がかける外航貨物海上保険は、水濡れも自然災害もカバーするICC(A)をお勧めします。
(7)DDP(関税込持込渡し)~EXWは、売主にとって最も義務の少ない定型取引条件でしたが、DDPは、逆に、売主の義務が最大となる用語です。
売主は、輸出国での通関手続きだけでなく、輸入国での輸入手続きも行わなければなりませんが、売主が、輸入国(地域)での輸入通関手続きを行うことは、どこの国でもできる訳ではありません。
関連法令が整っている日本や欧米等の先進国に限定されます。
売主にとって注意を要するのは、日本の消費税に相当する付加価値税(ValueAddedTax:)や輸入関税はもちろんのこと、経由地で徴収されるその他の税金も含めて、売買契約で別段の合意がなければ、全て売主の負担になることです。
①引渡時点DDPは、売主が、輸入国での通関手続きを行い、仕向地または仕向地内のあらかじめ合意された地点まで貨物を輸送し、荷卸しの準備ができている輸送手段の上で、貨物を買主の処分に委ねた時に、リスクと費用の負担が売主から買主に
移転して、貨物の引渡しが完了します。
②用語の使い方DDPの後ろには、仕向地または仕向地内のあらかじめ合意された地点を記載し、その次に単価を表示します。
「DDPXXFactory,○○Company,Ltd,U.S.A.US$2,500perpound」は、「売手は、米国の○○会社のXX工場までのリスクと輸送費用を負担する条件で、1ポンド当たりの単価は2,500米ドル」という意味です。
③損害保険損害保険は、貨物が自社工場・倉庫で、輸送車両に貨物を積載する動作を開始した時に保険がスタートし、あらかじめ合意されている仕向地に到着するまでの区間に対して、売主が外航貨物海上保険をかけます。
仕向地での貨物引渡以降は、買主が必要により国内運送保険をかけます。
売主がかける外航貨物海上保険は、水濡れも自然災害もカバーするICC(A)をお勧めします。
以上が、輸出国で引渡が行われる「コンテナ・空輸用語」と、輸入国で引渡が行われる「あらゆる貨物」の取引に使える「到着ベースの用語」(D用語)の定型取引条件でした。
次は、バラ積み貨物の取引に使う定型取引条件について、ご説明します。
(8)FAS(船側渡し)~貨物の引渡時点は、売主が本船の船側に貨物を置いた時です。
売主は、そこまでのリスクと費用を負担し、買主はそれ以降のリスクと費用を負担します。
①FASの使い方「FASYokohamaIncoterms」2010US$1,50、pのrよ/Tうに、FASの後ろには。
船積港を挿入、し「て単価を表示します、横浜港で本船の船側に、バラ積みの契約貨物」1M/T当。
たでりの1,500米ドル用を売主が負担する条件で②引渡地点本船船側に貨物を置いた時点で、売主から買主に貨物が引き渡されます。
③損害保険売主は、本船船側までは国内運送保険をかけ、買主はそれ以降の区間に対して、外航貨物海上保険をかけてリスクヘッジします。
(9)FOB(本船渡し)~「FreeonBoard」とは、売主の責任は、貨物を本船船上に置くとなくなるという意味です。
バラ積み貨物の取引に使われる用語の一つです。
コンテナ・空輸貨物の取引に使うことは、適切ではありません。
①FOBの使い方FOBの後ろに、船積港を挿入して単価を表示します。
「FOBTokyoUS$1,500perM/T」とすれば、「東京港で本船にバラ積みの貨物を置くまでの費用とリスクを売主が負担する条件で、1M/T当たり1,500米ドル」の意味です。
本船に貨物を置いて以降、貨物のリスクは買主に移ります。
②引渡地点貨物の引渡地点は、「インコタームズ2000」までは、貨物が「輸出港で本船の手すりを通過した時」となっていましたが、「インコタームズ2010」から、貨物が「輸出港で本船に置かれた時」に変更されました。
「インコタームズ2000」までは、貨物をクレーンで吊り上げて、本船への積込作業をしていた時に、クレーンから貨物を落下して、貨物が本船の欄干に当たって……、さて船の上に落ちたか(引渡済み)、あるいは海没したか(引渡前)」などと、クイズみたいな想定問答が行われていたものです。
「インコタームズ2010」以降は、輸出港で本船に貨物が置かれるまでは、売主の責任となって、売主の責任範囲は若干拡大されましたが、すっきりした形になりました。
③保険売主も買主も、相手に対して保険をかける義務は負っていないのですが、売主は、本船船上に貨物を置くまでの輸送区間に対して、国内保険の一種である「輸出FOB保険」(内航貨物海上保険)をかけます。
買主は、本船船上に貨物を置いて以降の区間に対し、外航貨物海上保険をかけて、リスクヘッジします。
内航貨物海上保険は、艀輸送に対応した国内保険の一種で、やはり自然災害に対しては、保険会社は自らを免責としています。
(10)CFR(運賃込み)~CFRでは、売主が仕向港までの海上輸送賃を負担します。
換言すると、買主は、仕向港までの海上輸送賃込の値段で貨物を売主から買います。
「CostandFreight」のCostとは貨物本体の価格のことで、Freightは海上輸送賃を指します。
売主は契約で指定された仕向港まで、あるいはあらかじめ、売主と買主が合意していれば、仕向港の特定の地点までの輸送費用を、CFR価格の中に織り込んでおきます。
①CFRの使い方CFRでは、CFRの後ろに仕向港を挿入し、単価を表わします。
例えば、「CFRDalian」US、90「perM/T、売主は、バラ積みの貨物が大連港に、貨物滅失・損傷のリスクはるが、輸出港で本船に貨物を置くまでは売主が負担、それ以降のリスクは」買1M/T当がた負りう900米い。
ドうル条件で②引渡地点CFRでの引渡地点は、FOBとまったく同じで、「輸出港で貨物が本船上に置かれた時」です。
売主がどこまで輸送費用を負担するかということと、リスクの負担範囲とは、関連性がありません。
買主から、「売主が輸入国までの海上運賃を負担するのだから、リスクも輸入国に貨物が着くまで売主が負って当然ですね?」と言われて、思わず納得してしまいそうですが、貿易では、「輸送運賃の負担範囲」と「リスクの負担範囲」には関連性がありません。
③損害保険前述のFOBと同じく、売主も買主も、相手に対して保険をかける義務はありませんが、売主は、本船船上に貨物を置くまでの輸送区間に対して、国内保険の一種である「輸出FOB保険」(内航貨物海上保険)をかけます。
買主は、本船船上に貨物が置かれて以降の区間に対し、外航貨物海上保険をかけて、買主が負うリスクをヘッジします。
(11)CIF(運賃保険料込み)~
CIFでは、価格の中に、運賃だけでなく、海上保険料も含みます。
つまり、仕向港または、あらかじめ合意していれば、仕向港の特定の地点までの運賃と保険料を、売主が負担し、買主はそれらのコスト込みの価格で、売主から買うことになります。
①CIFの使い方CIFの後ろに仕向港を挿入して、単価を表示します。
「CIFSingaporeUS$950perM/T」は、「シンガポール港に到着するまでの運賃と海上保険料込の価格で1M/T当たり950米ドル」の意味になります。
②引渡地点貨物の引渡地点は、FOB、CFRと同じで、貨物が「輸出港で本船に置かれた時」です。
③損害保険売主は、貨物が自社工場・倉庫で、輸送車両に貨物を積載する動作を開始した時に保険がスタートし、仕向港または、あらかじめ合意していれば、仕向港の特定の地点までを保険対象区間とする外航貨物海上保険を、一気通貫でかけます。
付保する外航貨物海上保険の種類は、別途合意または慣習になっている取引であれば、ICC(C)以外でも良いのですが、そのような合意も慣習もなければ、ICC(C)を付保することにより、インコタームズでは、売主の買主に対する保険付保義務が履行されたとみなします。
買主がICC(C)以上のカバー範囲の保険を要求する場合、例えば、ICC(A)やICC(B)、あるいは、戦争保険やストライキ保険を要求するのであれば、売主は買主の費用で、それ(ら)を付保しなければならないと、「インコタームズ2020」は規定しています。
ただし、売主のリスク負担区間を含む保険を一気通貫でかけることになるため、果たして売主にとってICC(C)が適切かどうかは、一考の余地があります。
台風による水濡れ、地震、津波など自然災害による貨物の被災事故の多くは、輸出港で貨物が船積み待ちをしている状態で発生しています。
CIFでは、本船船上に貨物が置かれるまでは売主が危険を負担しています。
水濡れ、地震、津波などの自然災害による損失がカバーされないICC(C)では、売主自身が危険にさらされます。
インコタームズの規定は、一つの基準にすぎず、それを厳守することが、必ずしも安全な貿易に直結しないことがあることに留意しましょう。
CIFは、木材、鉱石等のバラ積み貨物の取引に使われることが多いことから、「インコタームズ2020」でも、売主の保険付保義務はICC(C)のまま据え置きとされました。
4.「インコタームズ2010」から「インコタームズ2020」への主な変更点2020年1月1日以降、「インコタームズ2020」が「インコタームズ」の最新版です。
「インコタームズ2020」は、その前のバージョンである「インコタームズ2010」からの大きな変更点は、次のとおりです。
(1)FCAでの買主の費用負担による「積み込み証明付記」(OnBoardNotation)のオプション追加コンテナ貨物は、貨物がCYやCFS等で、フォワーダー等の運送人に引き渡されると、受取船荷証券が発行され、受取船荷証券に「積み込み証明付記」(OnBoardNotation)が記されると、受取船荷証券は船積船荷証券として扱われます。
CFRとCIP契約では、売主が運送契約を結びます。
この場合、運送人にコンテナ貨物が引き渡されれば、売主の費用負担で受取船荷証券が発行され、コンテナが本船に積載された後に、売主の費用負担で、受取船荷証券にOnBoardNotationが記されます。
運送契約が、売主と運送人との間で結ばれますから、運送人に貨物が物理的に引き渡されると、運送人が受取船荷証券を売主に発行し、貨物が船積みされると、受取船荷証券にOnBoardNotationが付記されることに、何ら矛盾点はありません。
しかし、FCA契約では、通常、買主が、輸出国の貨物の引渡場所から輸入国までの運送契約を、運送人と結びます。
売主が、買主が手配した運送人に貨物を物理的に引き渡すと、貨物引渡しの証として、運送人は「受取船荷証券」を売主に発行します。
売主の次の責務は、輸出手続きをとって輸出許可を取得することです。
輸出許可が出れば、買主が契約した運送契約に基づいて、船積が行われ、船積みされると、受取船荷証券にOnBoardNotationが付記されます。
しかし、OnBoardNotationの付記が行われるのは、売主がすべての責務を完了してからですから、売主は「受取船荷証券」へのOnBoardNotationの付記に、必ずしも関与する必要がないかもしれないのです。
一方で、L/C、D/P・D/A決済であれば、売主は、OnBoardNotation付きの船荷証券(船積船荷証券)を銀行に提出しなければ、貨物代金の支払いを銀行から受けられないという問題があります。
送金決済であれば、売主はOnBoardNotationを取らないかもしれません。
しかし、買主は、輸入国で貨物を運送人から引き取るために、OnBoardNotation付きの船荷証券(船積船荷証券)が絶対に必要です。
FCAの定型取引条件の定義と貿易の実務との間で起きる、このチグハグな現実。
この問題への対応策として、「インコタームズ2020」で、次のような趣旨のオプションを追加したのです。
:「売主・買主が合意して、買主が運送人に対し、買主の費用と危険負担で、貨物が船積みされた旨記載された運送書類(例えば、OnBoardNotationが付記されたB/L)を売主に発行するように指示した場合、売主は、典型的には銀行を通じて買主にそのような船荷証券を提供する義務を負う」。
(2)CIF・CIPで付保する保険の種類「インコタームズ2010」では、CIP契約で売主が買主に対して負う保険付保義務は、最小限の保険であるICC(C)をかければ良いとしてきましたが、「インコタームズ2020」では、別途合意または慣習になっていない限り、売主はICC(A)を付保することに変更されました。
買主が戦争保険やストライキ保険を要求する場合、売主は買主の費用で、それ(ら)を付保します。
CIPは、コンテナや空輸で輸送されることの多い工業製品の取引で使われる定型取引条件なので、水濡れや自然災害による損失も補償対象となるICC(A)を付保することは、現実にかなった変更だと思われます。
(3)FCAとDで始まる用語における売主または買主による輸送手段の手配今までの「インコタームズ」は、サードパーティの運送人と運送契約を結んで、貨物の輸送を行うことを想定して書かれていましたが、陸続きの国の企業同士では、FCAで契約した買主が、自社の輸送車両で取りに行って、貨物を運んで来るケースもあり、またDAP、DPU、DDPでは、売主が自社の輸送手段に貨物を積載して運ぶケースもあります。
「インコタームズ2020」では、このように、サードパーティとの運送契約をまったくしないで、輸送を行うことが現実にあることを考慮して、FCAでは「買主による貨物の運送契約の締結」に「買主による運送手段の手配」を加え、DAP、DPU、DDPでは「売主による貨物の運送契約の締結」以外に「売主による運送手段の手配」を挿入しました。
(4)DATのDPUへの表記変更「インコタームズ2010」でのDAT(DeliveredT)が、「インコタームズ2020」で、DPU(DeliveredatPlaceUnloaded)に変更となりました。
「ターミナル」(終着地点)の言葉が、世間一般に認識されている「ターミナル」と理解されることがあったため、誤解を避けるために、そのような「ターミナル」も含め、それ以外に売主と買主が合意する特定の「場所(Place)」であることを明確にするために、DPUの表記にしたものです。
「Unloaded」とは、「輸送車両から荷卸しして」貨物を引き渡すという意味ですから、売主は、輸入国の仕向地または仕向地においてあらかじめ合意した特定の場所があれば、そこで輸送手段から貨物を荷卸しして買主に引き渡します。
5.定型取引条件は何を使えば良いか?それでは、インコタームズの11ある定型取引条件の中で、どれを使うのが良いのでしょうか? 売主と買主とでは、自ずと違います。
(1)売主が使うべき定型取引条件売主にとって、貨物の引渡ができるだけ早い時点で行われること(リスクが早く買主に移転する)と、売主がリスクを負っている輸送区間に対して、自然災害もカバーされる「外航貨物海上保険」を、売主がかけられる定型取引条件が望ましいと言えます。
これらの条件にかなうのは、コンテナ・空輸貨物の取引であればCIP、バラ積み貨物の取引であればCIFです。
「インコタームズ2020」では、CIPの場合はICC(A)、CIFの場合はICC(C)を売主がかければ、売主が買主に対して負う保険付保義務は履行されると規定しています。
「インコタームズ2020」でも、また「インコタームズ2010」でも、買主がそれ以上の補償範囲の保険や追加の補償を求める場合、売主は買主の費用でそれに応じるべきだとしています。
しかし、CIP、CIFで売主がかける保険が、「貨物を買主に引き渡す前の売主にリスクがある区間」も含む場合、最低限の補償範囲の保険であることが、売主にとって不利になってしまいます。
CIP、CIFで売主がかける保険は、「貨物を買主に引き渡す前の売主にリスクがある区間」を含んで付保する場合、売主自身のためにも、最大範囲の保険が最も望ましいと言えます。
従って、売主が使うべき最善の定型取引条件は、CIPまたはCIFで、付保する保険をICC(A)とすることが、最善ということになります。
CIP、CIFに次ぐ定型取引条件としては、貨物の引渡ができるだけ早い時点で行われる定型取引条件です。
この条件を満足させるのは、コンテナ・空輸貨物の取引であればFCAまたはCPTです。
バラ積み貨物の取引に使うFOBとCFRは、売主が一番使ってはいけない定型取引条件です。
この二つは、貨物の引渡が最も遅いうえに、売主は自然災害による被害をカバーしない「国内運送保険」か「内航貨物海上保険」しかかけられません。
売主にとっては、最悪の定型取引条件です。
(2)買主が使うべき定型取引条件買主にとっては、輸出国での貨物の引渡ができるだけ遅い時点で行われることと、買主が日本の保険会社に「外航貨物海上保険」のICC(A)をかけることができる定型取引条件が望ましいと言えます。
日本の保険会社に保険をかけるのは、諸外国と比べて支払が迅速で公正な支払がされるためです。
この二つの条件にかなうのは、FOBとCFRです。
輸出では最悪だった定型取引条件が、輸入では最善の定型取引条件となります。
次善の定型取引条件は、貨物が輸出国で、最も早く買主に引き渡されるFCAかCPTです。
自然災害をカバーする外航貨物海上保険、ICC(A)をかければ問題ありません。
絶対に避けるべき定型取引条件は、CIP、CIFの二つです。
CIPかCIFで契約すれば、売主は必ず自国の保険会社に保険をかけます。
その保険会社が迅速に支払に応じるか、公正に対応してくれるかどうかは分かりません。
さらに、貨物が買主に引き渡されて以降に事故が起きれば、買主は売主の国の保険会社に直接保険求償しなければなりません。
もちろん、売主に手助けをお願いすれば、売主は善意で便宜を協力するかもしれませんが、CIP、CIF契約では、売主は買主に対して保険をかける義務を負うだけで、保険をかけおわって保険証券に裏書きして買主に送れば、それ以上の義務はありません。
「インコタームズ」は、売主が掛けた保険であっても、売主が買主のために保険求償をする義務までは課してい
ないのです。
それでも、CIPやCIFで輸入契約をしますか? リスク回避の観点からすれば、すべきでないことは明白です。
6.定型取引条件の誤用例と慣習的な使用例定型取引条件をしっかり学んだことがなかったり、以前の古いバージョンのインコタームズの知識のままで新しい情報に更新されていなかったりして、正しくない定型取引条件を使っているケースが散見されます。
(1)誤用例①EXW(工場渡し:ExWorks)「インコタームズ2010」でも「インコタームズ2020」でも、EXWは、買主にとっては「貿易に使う用語」ですが、売主にとっては「国内取引用語」です。
良く見られる誤用例は、FCAとEXWを混同しているケースです。
「インコタームズ」では、EXWを使った場合、売主には輸出許可を取得する義務がありません。
工場や倉庫に置いてある包装済みの貨物を、買主に「持って行ってくれ!」と言うだけで、売主の義務は完了します。
従って、EXW価格には輸出通関費用を含みません。
売主が輸出許可を取得する義務を負うのであれば、EXWではなく、FCA(運送人渡し)を使って契約すべきです。
②EXGODOWN(倉庫渡し)倉庫渡しの意味で使っている人を散見します。
これは、インコタ-ムズにない定型取引条件です。
倉庫渡しであれば、「FCA〇〇Warehouse」を使いましょう。
③ExFactoryまたはExMill(工場渡し)工場渡しの意味で使わっている人がいます。
これも、インコタ-ムズにはない定型取引条件です。
工場渡しであれば、「FCA〇〇Factory」を使いましょう。
④FOB○○工場「工場渡し」のつもりであることは想像できますが、FOB(本船渡し)の使い方としてはまったく正しくありません。
正しくは「FCA○○factory」です。
⑤CNF(Cost&Freight)C&Fの意味でCNFと表記して使っている人が、海外でも国内でも散見されます。
CNFは、C&Fから派生して自然発生的にCNFと表記するようになったもので、正しくは、CFRです。
⑥C&F(Cost&Freight)1990年のインコタームズで、それまでのC&F(CostandFreight)が、EDI(ElectronicDataInterchange:電子データ交換)時代の到来に対応し、コンピューターに打ち込みやすいように「CFR」に変更されました。
それから、何十年経っているのでしょうか? いまだにC&Fを使っている人も少なくありません。
正しくは、CFRです。
⑦FOBAirport・CFRAirport・CIFAirport
「インコタームズ1976」でFOA(FOBAirport)が創設され、航空貨物の取引で、FOBの定型取引条件を使った時代はありましたが、「インコタームズ1990」でFOBAirport(FOA)は廃止され、空輸貨物の場合もFCA()。
それから、何十年も経つのに、いまだに「FOBNaritaAirport」を使っている人が、少なくありません。
古いままの貿易知識がアップデートされていないのです。
正しくは、「FCANaritaAirport」、「CPT」、「Airport」。
(2)慣習的に使われている定型取引条件慣習的に使われている定型取引条件もあります。
費用負担と引渡時点が不明瞭になりがちですから、費用負担と引渡時点を明確にして使えば、問題ありません。
①C&IまたはCNI(CostandInsurance)インコタームズは、民間の団体である国際商業会議所が策定している取引のための規則で、国際条約でも法令でもありませんから、自動的にすべての貿易取引に適用されるものではありません。
売買当事者がインコタームズを使って取引することに合意することによって、取引当事者はインコタームズに拘束されます。
「インコタームズ2020」は、貿易の当事者によるインコタームズ規則の変更を禁止はしていませんが、規則を変更する場合は、売買契約書の中で、変更が意図する効果を明確にすることを求めています。
C&IまたはCNI(CostandInsurance)は、貨物の引渡と運送費の負担はFOBまたはFCAと同じですが、売主が買主に対して外航貨物海上保険をかける義務を負うという意味で、第三者間の取引でも、親子関係やグループ内企業同士の取引でも、慣習的に使っている人が少なくありません。
FOBまたはFCAで輸出した場合、外航貨物海上保険は、通常、買主が自国の保険会社を通じて付保しますが、海外の保険会社は往々にして審査に時間がかかりすぎたり、十分な損害補償をしてくれなかったりしがちです。
売主が、日本の保険会社に付保すれば、迅速な審査と円滑な保障が得られやすいことを期待して、実質的にはFOBまたはFCA条件での取引ですが、保険は日本側でかけるという意味で使われています。
C&IまたはCNI(CostandInsurance)は、インコタームズの11の規則にはない用語で、その定義もインコタームズには書かれていませんし、そのままでは、C&I(CNI)が「FOB+Insurance」の意味で使われているのか、あるいは「FCA+Insurance」の意味で使われているかも、不明瞭です。
コンテナ貨物を輸出する場合、定型取引条件を「FCA」としたうえで、「Insuranceshallbe」effectedbySellerat。
Seller’s、「」、。
②EXWLoaded車載費込みの工場渡し条件という意味ですが、「EXWloadedatSeller’s」expensebut、trisk.’s。
③FOBStowed&TrimmedFOBは、貨物が本船に置かれるまでが売手のリスクと費用負担ですが、「積付(Stowage)費用と馴らし(Trimming)費用込み」という意味で、バラ積みの穀物や石炭などの取引に使われます。
売手が積付けと馴らしの費用とリスクを負担する場合であれば、「Cargo」shallbestowedan。
trimmedatSeller’s④CFR(CIF)LinerTermまたはBerthTerm
バラ積み船の「不定期船」の場合、運賃は、船会社が船に積んでから、仕向地の港に輸送するまでが基本です。
が、LinerTermまたはBerthTermの文言が入ると、「定期船条件」の意味になり、積地での積込費用と揚地の荷揚費用込みの運賃となります。
荷揚時の危険負担について、売主・買主のどちらにするかを決めておくのが良いでしょう。
貿易では、費用を持つかどうかと、リスクを持つかどうかは、まったく別の問題です。
⑤CFRLandedまたはCIFLanded「陸揚費用込みの運賃込み」または「陸揚費用と運賃保険料込み」の意味で使われています。
危険負担が不明なので、「CFRlandedatdestinationatSeller’s」、「risk.’」CIFlandeda、dexpenseibutaatSBuyer’s。
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