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第七章 現場重視の会社に不況なし

目次

経営者は現場に入れ

「三現主義」とよくいいます。「現場」「現物」「現実」を見る重要性を指す言葉ですが、とくに「現場」へ出かけていかないことには、「現物」と「現実」は絶対に見えてきません。

自社の工場や倉庫、支店へ出かけていく。あるいは、小売業であれば、販売の最前線である店舗に顔を出す。さらに、仕入れ先、取引先を訪問する。見えないものを知るには、経営者は絶対に現場を知らないといけないのです。

それが経営の基礎になるものであり、自社の工場へ足を運ばない、自社の店へ行ったことがないというのでは、まともな経営ができるはずがありません。

ところが、快適な本社オフィスにどんと構えて、工場や支店、店舗、ましてや倉庫へはあまり行きたがらない経営者が少なからずいます。

本社で決裁しなければいけない仕事や来客、会議がたくさんあるというのがその理由ですが、とりわけ中小企業の経営者は時間をつくってでも現場を回らないといけません。

私の知る範囲では、代表者(経営者)がメーカーであれば工場、わが社のような問屋であれば倉庫、小売店であれば店舗に早朝から入るのを何年も続けている会社は、「ものすごく」がつくほどよい業績を上げています。

あとでお話しするように、たぶん、現場からたくさんのことを教えてもらっているからでしょう。私は定期的に直営店や FC店、流通センター、京都支店などへ出かけていき、社員と顔を合わせます。特別に用事があるわけではありません。

用事があれば、電話をすればよいわけで、あくまで「元気で頑張っているか」と顔を出すことに意義があるのです。

顔を出すだけではなく、ジャンケンをしてプレゼントを渡したり、おやつや食事をご馳走したりするなど、いろいろなことをやって楽しみます。

別に物で釣っているわけではないのですが、そういうことを含めて歓迎される経営者にならないことには、社員から率直な情報を得られないからです。

行くには行っても、アラを見つけてあれこれ注意ばかりする経営者は、現場から嫌われて、何か問題があっても経営者にバレないよう表面を糊塗するだけで、情報を伝えようとしなくなります。

「またいつ来てくれますか」と待ってもらえる経営者になることが大事なのです。現場では、経営者と話がしたいと思っている人が大半です。

現に、わが社の社員は私が行くのを待ってくれていて、「こうしてほしい」「ああしてほしい」という要望を出してきます。

それで現実を知り、変えるべきところを改善していくことで、社員の働く現場の環境を少しずつ改善しています。

私が行かないことには、本人が改善点に気づいていてもいいません。私が行ったら、ようやく教えてくれるわけです。

中小企業の場合、現場の人たちの判断だけではなかなか大きな改善に踏み切れず、経営者である私が話を聞いて判断する必要があります。

というのは、経営者であれば、思い切って資金を投入してもし失敗しても、自分で責任を取れるからです。社員はそういうわけにいきません。

万一失敗したら責任を取って解雇されるおそれがある以上、失敗が怖くて思い切った発言ができない場合があります。

現場のことは、現場で実務に携わっている人がいちばんよく知っています。経営者が行って、現場の改善点や要望を具体的に聞く。

そのうえで実行するか、しないかを即断し、実行する場合は、「よっしゃ、こうしよう」と話し合ってすぐに決めればよいのです。

現場のいうことは基本的に正しいのですが、費用対効果などですぐに実行できないものもあります。

そのときは、「これをしてもこれだけの効果しかない。もう少し考えてみてはどうか」などと、なぜしないかを本人に説明して納得してもらうようにすれば、次からも情報は出てくるでしょう。

商品の箱が語りかけてくれる

朝六時に摂津流通センターに出勤して、毎日、四時間から五時間は現場にいます。

掃除をすることもあれば、整理整頓をしていることもあるのですが、現場で入出荷に携わり、商品を自分の目で見て、自分の手で大切に扱っていると、〝箱は生きている〟ことを痛感させられます。

たとえば、いかにも元気で勢いのある箱は、「この商品は売れるよ」と私に語りかけてくるのに対して、売れていない商品の箱は古くて傷んで見えるのです。

「商品が話しかけてくる」というと、頭がおかしくなったのかと思われかねないので、あまり公言しませんが、あるとき、こんなことがありました。

私がトイレに行こうと思って歩いていると、これからトラックに積み込む予定の商品の段ボールが通路に並べてあるのが目に入りました。

段ボールは、納入先ごとに区分けされ、それぞれにお得意先の名前を記入したラベルが貼ってあります。

普段ならそのまま通りすぎるのですが、ある納入先の段ボールが突然、「私を持っていっても、お金をくれませんよ」と話しかけてきたのです。

幻聴ではなく、確かに私の耳にはそう聞こえました。摂津流通センターへ移ってきて七年目、過去に一度としてそんなことはありませんでした。

危惧した私は、センター長や担当の営業マンに、「この商品は絶対に出荷したらいかん。先方は金をくれんで」と出荷中止を即座に指示しました。

ところが、担当者は「そんなことは絶対にありません。これまでも入金がいっぺんも遅れたことがないから、何とか出荷させてください」と言い張ります。

弟の社長からも、「会長、何とか認めてやってほしい」といわれたので、最終的に私も「仕方がない」と折れました。

支払いが遅れがちであるとか、経営危機の噂が流れているとか、何か予兆でもあれば私の話にも説得力があったのですが、その会社は、一見すると何の問題もなく順調に見えていたために、担当者にすれば、出荷を停める理由がわからなかったのでしょう。

その根拠が「商品が語りかけてくれた」というだけでは信憑性に乏しく、私としてもしつこく「やめておけ」といって、「頭がおかしくなったのか」と思われるのもイヤです。

やむなく妥協したのですが、案の定というか、予想通りというか、支払い日が過ぎても、その会社から入金がありません。

倒産はしていないのですが、お金を払ってくれないのです。合計で八百万円。最後に出荷した額は、その四分の一にあたる二百万円です。

私は四十年以上も経営してきて、八百万円も回収できなかったのは初めての経験です。

あの時点で出荷をやめておれば、その二百万円は助かったのですが、「入金がない」と聞いたときに、不思議なほど腹が立ちませんでした。私は、出荷することが決まった時点で、「お金はもらえない」と半ば諦めていました。

むしろ、「やっぱり、商品が語りかけてくれたことは正しかった」とかえってすっきりしたくらいです。

翌朝一番、担当営業者が真っ青な顔で私の部屋にやってきて、「申し訳ありませんでした」と平謝りに謝ったときも、ひと言も怒りませんでした。

「君、そんな顔をしてお得意さんに行っても、お菓子は一つも売れへんぞ。私が諦めたんやから、君も諦めたらええ。気にしないでいいから、笑顔で回ってこい」と、すっかりしょげている担当者を逆に元気づけると、彼はパッと顔を明るくして営業に出かけていきました。

いまさら何をいっても、出荷した時点へ時間を逆戻しできない以上、怒っても担当者がかわいそうなだけで、怒らないほうがかえって反省してくれます。

過去は変えられないけれども、これからの未来は変えられるのですから、本人がそれをよい教訓にして二度と同じ過ちを犯さないようにしてくれれば、授業料は高くついたものの、得たもの

ものははるかに大きいのです。ちなみに、その会社はいまも営業を続けています。何度か督促したら、分割で三百万円くらい入金してくれました。

結局、残りは損金で処理しましたが、仕入れた商品の代金を支払わないとは、経営者はどういう品格をしているのでしょう。そんな会社とは関わらないに限ります。

適正在庫を守る

「商品が語りかけてくる」とは、自分でも不思議で半信半疑なのですから、他人であれば、なおさら信じるのは無理かもしれません。

一ついえることは、現場に入って毎日毎日商品を大事に扱い、「ありがとう、ありがとう」と商品に語りかけていると、いざというときには、商品はいろいろと発信して教えてくれるのではないかと思っています。

わが社が取り扱っているお菓子のアイテムは、ざっと八百五十種あります。新しく入ってくる商品が月に十種類か二十種類。

平均十五種類で、年間で約百八十にものぼりますが、新商品とほぼ同数の商品が消えていくため、トータルの数はさほど変わりません。

それほど商品の入れ替わりが激しい中で、「この商品は売れるだろう」「あの商品は難しいかな」ということも、箱を眺め、商品に触れ、語りかけているうちに、長年の経験によってある程度わかります。

とくに新発売された商品は、どういうお菓子なのか、中を開けて社長が必ず味見をします。

小売店、消費者を代表して商品を仕入れる以上、形状、味、香り、歯ざわり、手ざわり、食感などを知っておくことは当然です。

インターネット・ビジネスが拡大している昨今、画面で商品写真と価格を見て仕入れる業者が増えてきましたが、私はその気持ちがわかりません。

自分が試食していない商品を、どうして小売店や消費者に奨められるのでしょう。それがお菓子の卸問屋であるわが社の責任だと思っています。商品の鮮度にも気を配っています。

業界の平均在庫日数が六日 ~十一日であるのに対して、わが社は三・八日。業界平均の二分の一以下の短い日数で商品商品を回転させる努力をしているのも、少しでも新鮮でおいしいお菓子を消費者に届けたいと願っているからです。

そのため、多くの商品は入荷した当日に出荷し、在庫として置く場合も、後から入荷した同じ商品と識別して「先出し商品札」を掛け、商品が順序よく回転するように工夫しています。

商品を効率よく回転させるには、適正在庫を保つことが重要になります。

そのポイントは、商品そのものの数とアイテム数を絞って仕入れることです。しかし、売れる商品を絞り、売れない商品を仕入れていたのでは、逆効果です。

売れ筋は何か、どういう売れ方をしているかを見極めて仕入れることが重要で、それを私は、現場で商品に触れることで教えてもらいました。

販売現場の POSデータに頼る人もいますが、 POSデータは店頭に並べたあとに、どれだけ売れたかを教えてくれる事後報告にすぎません。

「意外に売れたな」「やっぱりあかんかったか」と確認はできても、この商品が売れるか、売れないかを前もって教えてくれるものではないのです。

私はそれよりも、現場で把握した自分の〝カンピュータ〟のほうを信じ、一〇〇%とはいわないまでも、九〇%以上の確率で外しません。

それは特別なことではなく、毎日商品を大事に扱い、見続けていれば、誰でもが察知できることです。

わが社で取り扱っている八百五十という商品アイテムも、流通している数から見ればかなり絞っています。

アイテム数を絞ることで在庫を減らせるとともに、パソコンへの入力や発注書の発行などの手間をそれだけ少なくできるメリットもあります。

それがコスト削減を生み、利益率を押し上げてくれる結果にもなるわけです。倉庫を見てもらえばわかりますが、商品の配置や積載も独特です。

動きの少ない商品は、七十センチほどの高さの特注台の上に配置します。女性社員がかがまなくてもピッキングできるためです。

段ボール箱ごと出荷する商品は、箱と同寸法のキャスター付き台車に積み上げておき、作業に合わせて移動させます。

いずれも、次の工程の人が少しでも効率よく作業でき、負担のかからない出荷環境をつくりあげていくことがねらいです。

以前、トヨタ自動車の組み立てラインを見学させてもらったときに、車のボディや多くの部品が流れるように集約され、組み立てられていく光景を目の当たりにして、そのすごさに感銘を受けました。

わが社は卸売業で、規模もはるかに小さい会社ですが、現場の根底に流れている思想はトヨタと変わりありません。

ちょっとした工夫によるコストダウンの積み重ねが、わが社のような卸売業の利益を生み出してくれるのです。

出荷する商品はコンピュータによって、 U字形の出荷ラインの上で、配送先別に集荷、梱包などをおこないます。

そのための最新の仕分けシステムを三カ所に合計一億八千万円をかけて導入しました。

現在では摂津、堺、京都の各流通センターに一台ずつ、計三台入っており、おそらく、これだけの自動化ラインを導入しているのは、業界では少ないのではないかと自負しています。

一億八千万円を使っても、楽してたくさんの作業ができれば、働いている社員にとっても、会社にとっても利益です。

商品の回転率を上げるのにも寄与してくれています。現在の在庫日数である三・八日を三日にまで縮めるのが、将来の目標です。

小売店がそれ以上の速さで商品を売らないと過剰在庫を押しつける結果になりかねないため、わが社が一段ときめ細かくお店をバックアップしていくことが重要になってきますが、それが実現できれば、わが社はもっともっと強くなるでしょう。

ロングセラー商品を中心に販売

お菓子の新商品はだいたい年間千 ~二千アイテム発売され、商品によってはテレビコマーシャルなどで大々的に宣伝して売り出されます。

ヒットする商品もあれば、期待したほど売れない商品もありますが、私が重視する販売戦略は、ナショナルブランド( N B)商品とロングセラー商品を中心とする仕入れであり、わが社の直営店とフランチャイズ( F C)店では、この二つの商品を中心に品揃えしています。

菓子業界の常識でいえば、ナショナルブランド商品とロングセラー商品はどこの小売店でも売っており、店の特徴が出ないばかりか、値引き合戦の対象になりやすいため、あまり儲からないとされています。

大手のスーパーやコンビニのチェーン店が、プライベートブランド( PB)商品を開発して販売する戦略を取っているのも、利益率が高いからですが、どれだけ成功しているかは疑問です。

全国で売られている N B商品は、味も品質も安定しており、大量に生産されているため、価格も高くありません。安心して消費者に提供できます。

数がたくさん出ているということは、それだけ消費者から支持されている証拠であり、みんなが好んで買ってくれるのが N B商品といってよいでしょう。

たとえば、小売価格が百円の同一の商品で、 N B商品の利益が一〇%、そうでない商品の利益が一二%だとしても、私は迷うことなく N B商品を仕入れます。

利益率の高い後者のほうが儲かるように思えますが、売れる数が少なければ意味がありません。

同じ数だけ売れたら後者の商品のほうが得ではないか、と考えるのは欲というものです。そんなに自分の都合のよいように、物事は運びません。

いままで商売をしてきて、好況だといわれていたら、いつの間にか不況が押し寄せていたというのが常でした。

世の中はよいことだけではなく、かといって、悪いことばかりでもありません。よいことと悪いことが交互する。それだったら、消費者の好む商品を置いたほうが間違いないのです。

N B商品、ロングセラー商品は、いかなるカテゴリーであれ、消費者がいつまでもその味、その品質を愛し、定期的に買っていく商品です。

子ども連れで店にやってきたお母さんが、自分の子ども時代や青春時代の思い出がたくさん詰まった懐かしいお菓子が並んでいるのを目にしたら、きっと心が浮き浮きしてくるでしょう。

そんな店づくりをするには、それらの商品を中心に品揃えしておく必要があります。

新商品はテレビの CMなどで派手に宣伝され、 POPも目のつくところに置かれ、メーカーの営業担当も熱心に奨めます。

そこで、売れるだろうと思って、その新商品を店のいちばんよい場所、消費者の目につきやすい場所に陳列した結果、確実に売れる N B商品、ロングセラー商品は隅へ追いやられます。

菓子店の商売のコツは、あくまでも、堅実に売れる商品を中心に品揃えすることです。

新商品がロングで売れていく商品へと成長するケースは稀有で、一時的に売れたとしても、ブームが去れば売れ残ってしまう危険性があります。

そうしたリスクを冒すよりは、計算の立つ N B商品、ロングセラー商品を一番よい場所に並べ、着実に売上を上げていったほうがはるかに賢明なのです。

大手の製菓会社においても、会社の屋台骨を支えているのは、十年以上にわたって売れつづけているロングセラー商品だという話からも、それはわかるでしょう。

ただ、 N B商品、ロングセラー商品を中心にする販売戦略は、前述したとおり、店の特色が出ず、値引き合戦の対象になりやすいのが問題です。

わが社の直営店、 FC店では、その N B商品、ロングセラー商品をどこよりも安く消費者に提供することで、ライバル店と差をつけてきました。

値段を下げるために、わが社は、明治製菓、森永製菓、グリコ、ロッテなどの大手をはじめ、すべてのメーカーと直接取引をおこない、少しでも多くの利幅の確保に取り組んでいます。

さらに、流通センターの在庫日数が三・八日という業界トップの回転率を実現するなど、業務効率を極限まで追求して、 N B商品、ロングセラー商品を安く販売しても利益の出る体質をつくりあげてきたのです。

商品の顔が見える平台・平積み陳列

国民一人当たりがお菓子に使う平均単価は、年間二千五百九円です(平成十八年度)。

現在はオーバーストアで、競争が熾烈な中で利益を出していくのは大変ですが、地域で運動会や遠足があると、わが社の直営店や FC店へ買いに来られる方が少なくありません。

お菓子の専門店として、 N B商品、ロングセラー商品を中心に豊富なお菓子を安い価格で取り揃えていると同時に、楽しく買ってもらえる店づくりを大事にしているからです。

自分では「売れないだろう」と思った商品でも、店へ来て買い物を楽しんでもらうお客様のことを考えて、あえて出荷します。

店頭にあられ、ビスケット、チョコレートなどさまざまなアイテムの商品を用意し、かつ、あられならあられで多様な種類を取り揃えておかないと、消費者には喜んでもらえません。

売れ残りやすい商品でも、いちおう店頭に置いておく必要があるわけです。商品の陳列の仕方も大事です。機会があれば、「お菓子のデパートよしや」をのぞいてみてください。

スーパーマーケットやコンビニなどで見るような五段の陳列棚に商品を並べてあるのではなく、背の低い平台に商品が平積みされているのに気づかれるでしょう。

この平台・平積みの陳列法は二十年前に私が考案した方式で、創業の地の天満市場に最初に出した直営店で始めたものです。

それまでは、「スーパー陳列」と呼ばれ、いまも多くの店で見られる、五段の棚に商品を立てて並べる陳列をおこなってきました。

現在でも、多くの種類の商品を置けるスーパー陳列方式が業界の常識ですが、難点は、下段に陳列されている商品がかがまないと見えないことです。

また、棚に貼ってある値札で、商品の上部が隠れている場合もあります。消費者は、野菜でも果物でも、目で先においしさを読みます。お菓子もまた同じです。

このお菓子は数字でいえば八十のおいしさ、こちらのお菓子は七十のおいしさ、あちらのお菓子は百と、まずは目で食べます。

そして、実際に買って帰って食べてみたら、八十と思っていたおいしさが九十だったら大満足。

逆の場合はがっかりですが、消費者に商品の顔を一〇〇%見てもらえるように陳列しないことには、そうした楽しみも生まれません。

その商品の顔を一〇〇%見せる重要性に気づいた私は、どうしたらよいかと思案して、天満店の陳列棚を五段から四段へ、さらに三段へと一段ずつ減らしてみました。

陳列できる商品数はそのぶん少なくなりましたが、商品の顔は前よりもよく見えます。すると、売れ行きが違ってきたのです。私はそれで自信を持ち、試行錯誤した末に行き着いたのが、平台・平積みです。

当然、社内外から反対はありました。

「商品をたくさん並べられないから、二段にしてはどうか」などいろいろな声があった中で、「お菓子は目で見るもの。

とりあえず、一度やってみよう。結果を見てから判断し、ダメだったらいつでも変えられる」と押し切りました。結果は大成功でした。

陳列を平台・平積みに変えたことで商品の顔が一〇〇%見えるために、買い物がすごく楽しめて、三つ買うところを五つ買っていかれ、売上が三割もアップしました。

大人も子どもも、見ているだけで楽しいと、ついつい商品をカゴに入れてしまうのでしょう。私は、子どもでも買い物を楽しめるようにと、専用の小さくて軽い買い物カゴを店に用意しました。

お母さんと一緒に来店した幼い女の子が、自分ひとりでカゴを提げ、うれしそうにお菓子をその中へ入れている姿を目にすると、「買い物をする楽しみは大人でも子どもでも変わらないな」とつくづく思います。

子どもは安いか高いかではなく、まずいかおいしいかで判断し、必ずおいしいものを選びます。N B商品、ロングセラー商品はまさにそのおいしいお菓子お菓子の代表です。

子どもたちは、それらのお菓子の顔が自分の目線で一望できて、自分で手に取れる高さの平台に平たく積んであると、喜んで買っていってくれます。

子どもはファンになってくれると、「あそこの店へ行こう」となります。同じお菓子が買えるならどこの店でもよい、ということは少ないのです。

子どもにせがまれると、親御さんも一緒にやってきて、子どものころに食べた昔懐かしい味のお菓子を発見して思わず買っていかれます。

お菓子の価格破壊を関西で最初にやりはじめたのも、天満の店です。安売りは、先にやったところが勝ちます。

わが社が、一般の店では五百円するお菓子を四百円、三百円で売り出したところ、爆発的に売れました。平台陳列で売上が上がったことで、安売りが可能になり、それがまた売上増につながっていったのです。

陳列専門の業者は、私が平台・平積みを最初に考案したとき、「これは、コロンブスの卵よりすごい開発ですね。どこの店もやっていませんよ」と激賞してくれました。

小さな子どもの手の届かない、目に触れない陳列の仕方をして、「売れない」と嘆いている感覚が私には理解できません。店づくりから間違っているということでしょう。

しかし、十年一日のごとく同じ商売の形態を続けていては、業績を維持できません。

私が初めて導入したお菓子のフランチャイズ展開も、その後、同じようなチェーン店が誕生し、以前ほどには儲からなくなりました。

現状に甘んじることなく、「これはよい」と思うことは、絶えず業界に先んじてトライしていく勇気が必要です。成功するかしないかは二の次です。私は、自分がいかにも大成功してきたかのように話していますが、成功したのはせいぜい二割程度。

その陰には、何倍もの失敗がありました。しかし、失敗があるからまた成功もあるといえます。失敗をしたら、人間はなぜ失敗したのか、その原因を追究しつつ、どう解決したらよいかを考えます。一生懸命に考えるから、次の成功を生み出せるのです。

商品別ではなく価格別に陳列

平台・平積みとともに、もうひとつ、わが社が考案した陳列アイデアは、価格別に商品を並べたことです。

スーパーやコンビニに代表されるとおり、多くの店ではお菓子を、キャラメル、キャンディ、チョコレート、ガム、ビスケットというように商品別で陳列しています。それが、いわば業界の常識でした。

そのほうが、消費者は同じ商品群の中で自分の好きなものを選びやすいと思われていたわけです。しかし、私にいわせれば、キャンディばかりを買う消費者はいません。

「キャンディも欲しい」「チョコレートも欲しい」「ビスケットも欲しい」と思うのが、消費者の心理です。

商品ごとに陳列されていると、いちいちキャンディの売り場、チョコレートの売り場を探し、さらに値段も調べなければいけません。

わが社の直営店や FC店へ行けば、百円コーナーには、一個百円で買えるキャンディも、チョコレートも、ビスケットも陳列されています。

五百円を握りしめて買い物に来た子どもは、「どれにしようかな」と自分の好きなお菓子を五つ選べるわけです。

計算も簡単です。子どもにとって、どちらが楽しく買い物ができるでしょう。価格別に並べるメリットはほかにもあります。商品に価格ラベルを貼らなくてすむことです。そのための人手も、経費もいりません。そのぶんさらに安く消費者に提供できます。

買うほうも、商品を引っくり返して値段を調べる手間がいらないので、それだけ買いやすくなります。

他社もいまではラベルを貼っていないようですが、わが社は二十年前からずっと続けてきました。

わが社では、社員の募集や社員への利益の還元などの経費は本社が持つなどして、店舗当たりの経費を非常に低く抑え、小売りの利幅を平均二〇%しか取っていません。

スーパーなどは三〇% ~三五%は取ります。

たとえば、ある商品の仕入れ値が七十四円とすれば、よそは三五%を乗せて百円で売るのに対し、わが社は二〇%しか乗せないのですから八十八円から九十円で売れるわけです。

野菜や魚や肉、弁当などの食料品のついでにお菓子を買ってくれるスーパー、コンビニと異なり、お菓子の専門店である「よしや」では、安くないとお客様お客様はわざわざ足を運んでくれません。

かといって、安いだけでも来てくれません。適正な価格で、さらに、品揃えが豊富で、商品がきちんと陳列されている。店舗の清掃が行き届いている。社員の挨拶、笑顔も大事です。

それらのバランスが取れていて、買う楽しみがあってこそ、お客様は足を運んでくれるのです。お菓子で夢を語れる。そこが、コンビニとは違う専門店の強みです。

お客様に商品をたくさん買わせることが私の本意ではありません。あくまでもお菓子の世界を楽しんでもらうことにあります。

そのため、店の者には、「あまり売ってはいけない。客単価を上げるな」といっているくらいで、一回にたくさん買ってもらうよりは、来店数を多くする店づくりに力を入れています。

週に三回来てくださるお客様に、どうしたら週に四回来ていただけるかを考えないと店は長続きしません。

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