第七章 決済リスク
- 1.貨物代金を取りはぐれ
- (1)泣き寝入りして諦める
- (2)裁判で解決
- (3)商事仲裁で解決
- (4)裁判も仲裁もカネがかかる
- (5)話し合いで解決
- 2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法
- (1)前払送金と後払送金
- (2)貿易ではあり得ない「月末締め翌々月送金受領」条件
- (3)蔓延する「一部は前払送金、残金は後払送金」
- (4)第三者同士の取引で出荷後送金支払条件は不可
- (5)送金決済のリスクヘッジ方法
- 3.D/P・D/A決済のリスクとそのヘッジ方法
- (1)銀行に支払保証義務はない
- (2)D/PよりD/Aの方がリスクは高い
- (3)スタンドバイL/Cの開設
- (4)貿易保険へのリスクヘッジ
- 4.信用状決済のリスクとそのヘッジ方法
- (1)信用状開設銀行倒産のリスク
- (2)ディスクレのリスク
- (3)B/Lの危機への対応
- 5.国際ファクタリングのリスク
- (1)時間がかかる
- (2)非常危険は免責
- (3)ファクターの倒産リスク
- (4)ディスピュートによるファクタリング停止
- (5)買主による減額支払
- (6)ファクタリングに適した取引
- 6.日本貿易保険(NEXI)へのリスクヘッジ
- (1)NEXIの利用方法
- (2)主な貿易保険の種類
- 7.輸出取引信用保険
- 8.各決済方法と推奨利用当事者
第七章 決済リスク
決済リスクは、物流リスクと並んで、貿易取引の中で最もリスクの高い部分です。
貿易決済の方法については、前章の「貿易決済の基礎知識」で学びましたが、それぞれの決済方法のメリットとデメリットを認識して、リスクのない決済方法やリスクの少ない決済方法を選ぶことが肝要です。
そしてリスクの高い決済方法であれば、必ず経済産業省傘下の株式会社日本貿易保険(NipponExportandInvestmentInsurance:NEXI)、「」。
、。
、。
、「」。
1.貨物代金を取りはぐれ貿易で貨物代金を回収できなくなった時は、どうすれば良いのでしょうか?(1)泣き寝入りして諦める体力のある大企業でなければ、ズバリ! 「泣き寝入り」が最善の方法です。
代金を取りはぐれて、それを回収できる唯一の方法は、相手に支払能力があって、支払う気になった時だけです。
国際間では、体力のある企業以外では、相手に確実に払わせる方法も、相手に強制的に支払わせる方法さえもありません。
もがけばもがくほど費用がかさんで、「損の上塗り」になります。
「泣き寝入りして諦める」のがベストです。
(2)裁判で解決裁判はどうでしょうか? 日本側が売主で、日本で裁判所に訴えて、日本側が勝訴した場合、係争相手の資産が日本にあれば、それを差し押さえて強制執行できます。
しかし、相手の資産が日本にない場合、相手国で強制執行できるかどうかは、国によって違います。
少なくとも新興国で強制執行できる国はほとんどありません。
相手国で裁判を起こして勝てば、相手国で強制執行することはできます。
しかし、新興国では、あからさまに自国企業に有利な裁定をします。
勝訴することが期待できないのです。
(3)商事仲裁で解決裁判がダメなら、民間の裁判所である商事仲裁組織による仲裁はどうでしょうか?商事仲裁は、ニューヨーク条約加盟国同士の企業であれば、仕組みとしては強制執行できるとされています。
しかし、現実には、特に新興国の企業との紛争では、強制執行拒絶のケースが数多くあります。
商事仲裁も最善な方策とは言えません。
(4)裁判も仲裁もカネがかかるところで、裁判にせよ商事仲裁にせよ、もう一つ大事なことがあります。
それは、どちらもかなりカネと時間がかかることです。
弁護士費用や仲裁裁定員の費用負担、紛争解決にかかる長い時間、そうして得られる結果を考えると、体力のある大企業は別として、ほとんどの企業にとって、裁判も仲裁も単なる「損の上塗り」になる選択肢でしかありません。
裁判や商事仲裁で争えば、弁護士費用も含めて、普通に数百万円単位の、それも次の桁に近い費用がかかります。
大企業でなければ、そうした費用負担に堪えられないでしょう。
次に掲げるのは、国際商業会議所の仲裁にかけた場合に、おおよそ必要な費用です。
係争金額15万ドルで、裁定員3人を立てて仲裁してもらい、首尾よく係争金額満額の回収に成功しても、62%は仲裁にかかる費用で持って行かれてしまいます。
手元に残るのは38%だけです。
一般的に、係争金額が100万ドル以下では、仲裁に訴えても割に合わないと言われています。
(国際商業会議所による仲裁費用の計算例)
*裁定費用中に、係争金額100万ドル未満は5万ドル、係争金額100万ドル以上は10万ドルの弁護士費用を加算して計算。
(5)話し合いで解決億単位の商売であれば、コストと時間をかけて、裁判や仲裁で相手と闘う価値があるかもしれません。
しかし、それほど金額の張らない取引であれば、話し合いで解決するのが一番です。
話し合いであれば、第三者に余分な金を払う必要がありませんから、弁護士や仲裁員の費用を負担したと思って、相手とある程度の痛み分けで決着する方が利口でしょう。
つまり、話し合い解決が、最も安上がりの解決法です。
ただし、これも相手に支払う能力と意思のあることが大前提で、それがなければ、「泣き寝入り」がベストということになります。
代金の取りはぐれが起きた場合のことを心配するよりも、取りはぐれない決済方法を選択し、取りはぐれる危険のある決済方法の場合は、貿易保険へのリスクヘッジができれば契約を行い、貿易保険へのリスクヘッジができなければ、契約しないことにします。
貿易で最もリスクの高い決済で、果敢に無謀にリスクを張ることは、お勧めできません。
2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法送金決済は、何と言っても、手続きが簡便で、決済が迅速に完了することです。
送金の根拠となる契約書などがあれば、「外国送金依頼書」に記入するだけです。
大手の銀行であれば、インターネットを通じて、ウェブ上から銀行に送金依頼することができます。
L/C決済やD/P・D/A決済に比べて、決済実務面での負担が大きく軽減されることはメリットです。
しかし、送金には、メリットがある反面、リスクもある点を直視しなければなりません。
(1)前払送金と後払送金買主が、船積みより前に、貨物代金の一部または全額を、売主に支払うのが、前払い決済(AdvancedPayment)です。
この場合、売主が貨物を出荷しなければ、買主は丸損を被りますから、前払送金した時点で買主にリスクが生じます。
売主が船積みした後で、買主が貨物代金の一部または全額を支払うのが、後払い決済(DeferredPayment)です。
この場合、買主が貨物を出荷した後に、買主が支払わなければ、売主は貨物をタダで提供した結果になります。
(2)貿易ではあり得ない「月末締め翌々月送金受領」条件「月末締め翌々月送金受領」条件で、輸出している企業が少なくありません。
このため、「相手が代金を送金してこない」という相談が絶えません。
このような売掛での輸出は、「信義則」を前提とする国内取引では、どこの国でも標準的な決済方法になっています。
しかし、貿易では本来あり得ない決済条件です。
取りはぐれが起きた場合、買主側に強制的に代金を支払わせる、関連法令や司法機関等のビジネスインフラは、国内取引ではどの国にも揃っています。
しかし、国際間では、商事仲裁の仕組みを利用できる、体力のある大企業は別にして、その他の企業にとっては、買主に対して強制的に代金を支払わせるビジネスインフラは、現実には存在していません。
「月末締め翌々月送金受領」などと言う海外バイヤーがいたら、貿易知識を欠く不見識な人だと疑うべきです。
(3)蔓延する「一部は前払送金、残金は後払送金」「前払送金は買主にはリスクが高く、後払送金は売主にとってリスクが高い」となると、貨物代金の「60%は船積み前に送金支払、残金40%は着荷後に送金支払」や、「90%は船積み前に送金支払、残金10%は着荷後に送金支払」のように、代金の「一部を前払送金し、残金は貨物が輸入地に到着した後、後払送金してくる」というように、前払送金と後払送金を併用することで、お互いの妥協点を見出すのが一般的です。
ただ、この決済条件には、次の二つの重大な問題があります。
①前払送金のタイミング次第で生じる契約破棄のリスク前払送金部分が入金する前の段階で、輸出する商品の製造や調達に着手した場合、相手から契約破棄の通告がくれば、製造や調達のために費やした費用や買い込んだ原材料などが無駄になるかもしれません。
これが、「契約破棄のリスク」です。
「契約破棄のリスク」を防止するには、前払送金を受領してから船積みするまでに必要なリードタイムを十分考慮して、船積時期を決めるようにします。
あるいは、契約書で、「船積時期は、前払送金の入金を売主が確認した後、○●日
以内とする」(Shipmentshallbemadewithin○●「○●」、。
、「」。
、「」。
②後払送金部分で買主が握る最終価格決定権もう一つの問題は、残金の後払送金の部分についてです。
貿易は、売主と買主が合意した価格で売買が行われます。
しかし、残金の後払送金部分があることで、買主が最終価格決定権を握ることになりかねません。
理由は、何とでも言えるでしょう。
「到着した貨物を検品したが、品質が良くない」という理由で、買主が一方的に後払送金部分の金額を減額して送金してくる、あるいはまったく送金してこないということが起こり得ます。
実際、「後払送金部分を送金してこない」という相談は、かなりあるのです。
相手が送金してこなければ、打つ手はありません。
せいぜい、次の契約には応じないくらいしか、対抗策はないでしょう。
「泣き寝入り」だけが、それ以上の損を出さない最善の方法になってしまいます。
貿易は、「確定した価格」で取引するものです。
後払送金部分を設けることによって、取引価格が未確定状態にあることと同じ結果になってしまいます。
これは、売主にとって「何のために輸出しているのか」と疑問符がつくほど、不利なことです。
送金してこない理由が、貨物の品質に難があるということであれば、これも「貿易の基本」を踏み外す、由々しき問題です。
貿易では、「貨物代金は契約どおりの金額で100%決済を行って売主に支払い、貨物の品質などに問題があるのであれば、それは別途クレームという形で買主から売主に提起し、売主と買主の双方が協議のうえ、その解決方法を決める」のです。
貨物代金の支払とクレームは別物です。
これも「貿易の基本」です。
後払送金では、実質的に、最終価格決定権を買主に与える結果になりがちですが、それをさせない方法があります。
それは、契約書で次に掲げるような「相殺の禁止」と「延滞金利」の二つの条項を入れる方法です。
(記載例)相殺の禁止:、、、、、。
、。
延滞金利:、買主が支払期日までに商品代金を支払わなかった、支払期日から実際の支払日までの未払金額に対し、年率25.0%で計算した延滞金または適用される法、でい許ず容れさかれ低るい最利大率利で率計の算。
売主に支払うものとする、この延滞金利および商、売主の要求があり次第。
(4)第三者同士の取引で出荷後送金支払条件は不可送金決済は、本来、親会社と子会社間などの身内同士の取引であれば、何の問題もありません。
しかし、第三者同士の取引では、リスクの高い決済方法ですから、特に輸出取引の場合、売主としては、出荷後送金支払条件で取引してはなりません。
他社にない代替のきかない商品で、継続的に売れる商品であれば、前の取引の代金を買主が送金してこなければ、次の取引には応じないやり方で、売主は決済リスクを一定額の範囲内に抑えることは可能です。
ただ、売主との取引を手仕舞いしようとする意図を持つ買主であれば、最後にかなり多い数量を、代金後払いで輸入しておいて、その代金を送金してこないということは、十分起こり得ることです。
リスクのある決済方法で取引していれば、そのリスクは何時か必ず
牙を剥きます。
第三者同士の取引で出荷後送金支払条件は、リスクが高いことを認識しておきましょう。
(5)送金決済のリスクヘッジ方法船積み後の後払送金リスクを回避するにはどうすれば良いのでしょうか? ①貨物代金100%入金後のB/L送付船積み後の後払送金部分がある決済条件の場合、契約書で、「売主は、輸出代金の100%入金を確認後、直ちにB/Lを買主に送付する」と規定します。
船会社は、B/Lの呈示がない限り、貨物を引き渡さないので、B/Lが担保となって、買主の売主に対する送金を動機づけます。
買主は貨物が欲しい限り、船積み後すぐに送金してこざるを得ません。
この方法で、買主が後払送金してこないリスクはかなり軽減できるでしょう。
また、この決済方法は、買主が前払送金したのに、売主が貨物を輸出してこないという買主側のリスクを解消するためにも有効です。
この方法で取引するには、あらかじめ契約時に、相手と合意しておく必要があります。
②船積み後一定期間経過してからの後払送金リスク「船積み後90日以内の送金条件」で契約すれば、売主がB/Lを手元にホールドしておくわけにはいきません。
売主は、船積みの後、B/Lを買主に送付し、買主が船会社から貨物を引き取った後に、送金時期がくることになるでしょう。
この決済方法では、B/Lを担保として、買主に送金を動機づけることができません。
この場合、NEXI(日本貿易保険)の貿易保険にリスクヘッジできるのであれば、契約しても構いませんが、NEXIが貿易保険を引き受けてくれないのであれば、決済リスクのヘッジができませんから、この取引は契約してはなりません。
危惧することは、必ず現実のものになるものです。
3.D/P・D/A決済のリスクとそのヘッジ方法D/P・D/A決済のメリットは、買主にとって、比較的安価なコストで決済できることです。
しかし、売主にはリスクが潜んでいます。
(1)銀行に支払保証義務はないD/P・D/A決済で、買主側の銀行が果たす役割は、売主の取引銀行から送られてきた為替手形を買主に引き渡すこと、買主に為替手形に対して決済させたり(D/Pの場合)、あるいは為替手形を引き受けさせたり(D/Aの場合)すること、回収した代金を売主の取引銀行に送金すること、買主が倒産したり不払いしたりすれば、そのことを売主の銀行に連絡することなどです。
売主側の取引銀行は、買取方式では、荷為替手形を売主から買い取って、売主に代金を支払いますが、それでも、何らかの事情で、買主側の銀行が買主から代金回収できなければ、売主の取引銀行は、売主に支払い済みの貨物代金を返還するように要求してきます。
D/P・D/A決済では、銀行は何の支払保証もしませんから、買主の会社が倒産すれば、買主の取引銀行は、売主の銀行を通じて、買主が倒産したことを伝えてくるだけです。
荷為替手形が買主側の銀行に到着しても、買主が代金は払わないし、船積書類も要らないと言えば、売主は、銀行にお願いして船積書類を戻してもらい、フォワーダーに頼んで、貨物を引き戻すことになるでしょう。
相場商品で、契約した時点よりも相場が下がっていて、貨物を引き取れば損失が発生するような場面では、買主の意志次第で、このようなことが起きます。
D/P・D/A決済では、銀行は買主への代金取立の依頼は受けても、支払いたくない、支払わないと買主が言うのであれば、その意向に反して、買主から取り立てる義務はありません。
D/P・D/A決済は、売主にとってリスクの高い決済方法です。
(2)D/PよりD/Aの方がリスクは高いD/P決済の場合、決済と書類の引渡しが同時に行われますから、買主が貨物引取の意志がある限り、通常は問題が起こらないと考えて良いでしょう。
しかし、D/A決済では、買主は、ユーザンス付きの手形に対して、支払を確約すれば、銀行は船積書類を買主に渡し、貨物を引き取って輸入通関してしまいます。
その後、ユーザンス期間中に買主の会社が倒産すれば、貨物を引き戻す方法はありませんし、商品代金も回収できません。
売主にとって、D/A決済は、D/P決済よりもさらにリスクが高いのです。
通常、第三者同士の取引で、D/A決済で契約することは避けるべきです。
(3)スタンドバイL/Cの開設D/P・D/Aでの決済は、リスクが高いことから、D/P・D/A決済で契約する際に、買主に対して「スタンドバイL/C」(StandbyL/C)も開設するように売主が求めることがあります。
スタンドバイL/Cとは、D/PやD/Aで輸出代金が支払われなかった場合に、有効となるL/Cのことです。
第三者同士の企業の取引で、D/P・D/A決済、特にD/A決済で取引するのはリスクが高いことから、代金が支払われなかった時のために、念のためスタンドバイL/Cの開設を契約で義務付けます。
ただ、この方法の問題点は、スタンドバイ
L/Cの開設料です。
これが高ければ、買主は嫌がるでしょうし、買主がスタンドバイL/Cは開かないと言うのであれば、D/P決済やD/A決済のリスクは、貿易保険にヘッジするしかありません。
(4)貿易保険へのリスクヘッジNEXIの「中小企業・農林水産業輸出代金」、「輸出手形保険」などを付保し、D/P・D/A決済で、荷為替手形が決済されないリスクをヘッジします。
第三者間の取引で、NEXIの貿易保険にリスクヘッジできない場合、取引契約の締結は見送りとします。
グループ企業同士、親子関係の企業同士であれば、問題が起きても、企業同士の話し合いで解決できる可能性が高いでしょうから、D/P・D/A決済でも問題はないでしょう。
4.信用状決済のリスクとそのヘッジ方法信用状決済は、最も安全な決済方法と言われ、主として第三者同士の取引で利用されてきています。
しかし、信用状決済にも幾つかのリスクがあります。
(1)信用状開設銀行倒産のリスクL/C決済では、開設銀行が売主に対して支払保証をしますから、売主にとっては安心です。
開設銀行は、買主の与信リスクを負担してくれるのです。
しかし、L/Cの開設銀行が倒産してしまえば、支払保証の意味がなくなります。
倒産の危険が少ない一流銀行が開設するL/Cであれば安心ですが、すべての企業が一流銀行と取引できるものでもありません。
現実的には、L/C開設銀行の倒産はL/C決済のリスクとして認識しておき、倒産の危険のある銀行からL/Cを開いてくるのであれば、そのリスクを回避するように必要な手立てを講じます。
①確認信用状(ConfirmedL/C)L/C開設銀行倒産のリスクに巻き込まれないようにするには、売主は、買主との契約交渉の際、L/Cの開設予定銀行を確認し、その情報をもとに、売主の取引銀行である買取予定銀行に対して、L/C開設銀行として問題がないかどうかを確認します。
買取銀行が買取を拒絶するような銀行が、L/Cを開設するのであれば、買主に対して、他の一流銀行に支払を連帯保証させるように要求します。
この連帯保証付きのL/Cを「確認信用状」(ConfirmedL/C)と呼びます。
ただし、連帯保証をする銀行は、保証料を取りますから、買主のコストはその分増えます。
買取銀行は、確認信用状であれば、買取を拒絶する理由がなくなります。
②サイレントコンファーム(SilentConfirm)買主が確認信用状を手配できない場合、「サイレントコンファーム(SilentConfirm)」の方法があります。
サイレントコンファームとは、L/C発行銀行や買主に知らしめることなく、売主が取引銀行に保証してもらう方法です。
保証料は依頼主である売主が負担します。
③輸出手形保険NEXIの輸出手形保険に、リスクをヘッジする方法です。
この保険は、買取銀行が買い取った荷為替手形が、最終的に不払いになって、買取銀行が損失を被っても、NEXIが買取銀行に対して、損失額の95%を保険金で支払って、銀行の損失を補填します。
銀行は、荷為替手形を買い取って、買主に支払い済みの貨物代金の5%相当額を、銀行にリファンドさせますから、結果的に、銀行の損失はゼロとなります。
売主の損失は銀行に戻入する5%だけです。
通常、5%程度の利益は見込んで取引をするでしょうから、売主側でも、コストを割り込むような実損はほぼ生じないことになります。
輸出手形保険は、買取銀行がNEXIと契約し、保険料は売主が負担します。
買主が、確認信用状(ConfirmedL/C)の開設に同意せず、買取予定の銀行もサイレントコンファームを拒絶し、NEXIが輸出手形保険の付保を拒絶したり、他の貿易保険の付保を拒絶したりするのであれば、リスク回避策はありません。
この場合、売買契約の締結を諦めます。
リスクを冒してまで、無理して取引することはありません。
(2)ディスクレのリスク
通常、L/Cで要求されることは、①船積有効期限以前の日付を発行日とするB/Lが船積書類の一つとして含まれていること、②インボイス、パッキングリストなど、L/Cに記載されているとおりの船積書類であること、③前述の船積書類を含む荷為替手形が、L/Cの有効期限内に買取銀行に呈示されること、です。
これらの条件を満たしていない、あるいはこの条件に一致しないことを、ディスクレ(discrepancy)と言います。
ディスクレがある場合、L/C発行銀行の支払保証は無効となり、買主がディスクレを応諾しない限り、銀行は支払を拒否(Unpaidと言う)します。
つまり、ディスクレがあると、開設銀行が支払保障をしてくれるのが、売主にとって、L/Cのメリットだったのに、買主が同意しなければ払われなくなってしまいます。
L/C決済なのに、実質的にD/P決済と変わらなくなってしまいます。
売主が買取銀行に提出した書類が、L/Cに書かれている諸条件と完全に一致していれば、L/C発行銀行は確約どおり、支払を実行しなければなりません。
①L/Cのアメンド船積み前にL/Cの記載内容では、ディスクレが起きてしまうことがあらかじめ分かっている場合、売主は買主に対してL/Cをアメンド(修正)させます。
アメンドされたことを確認するまで、船積みしてはいけません。
買主によっては、ディスクレを理由に支払を拒絶して、貨物を引き取らなかったり、値下げした価格でアメンドするから、それを売主が受諾すれば、支払に応じると回答してきたりすることがあります。
中には、L/Cに、「FullsetB/L」を買取銀行に提出するように記載してある一方で、「1/3B/Lを直送」などという、誰がどうやってもディスクレが生じてしまう、自己矛盾を内包しているL/Cもあります。
L/Cの記載内容は仔細にチェックしましょう。
また、買主の「要求どおり、アメンドした」というだけの連絡をもらって、船積みしてはなりませんし、開設銀行へのアメンド依頼書のコピーがファックスやメール添付のpdfファイルで送られてきても、船積みしてはいけません。
銀行から「買主のアメンドを承諾するかどうか」の確認が来てから、それを応諾して、船積を実行するようにしてください。
買主によっては、アメンドしていないのに「アメンドした」と連絡してきたり、銀行にアメンド依頼書を出したあと、それを撤回していたりすることがあります。
相手を信用するのでなく、確実にアメンドされたという事実を自らが確認したうえで、船積みしなければなりません。
アメンドは、ディスクレが起きる原因を解消して、不払リスクを撲滅する、もっとも確実な方法です。
②書類差し替え買取銀行からディスクレを指摘された場合、どうすれば良いでしょうか? 例えば、L/Cで要求されている書類の一つに、「Commercial」InvoiCe。
と記載して、「たとします」CommercialInvoice。
のタイ、しかし、売主が「銀行に」CommercialInvoice、のタイトルの書類を出。
ディスクレとなります、「」Commercial、InvoiCe、と書かれた書類を提出し。
先の書類と差し替えれば、ディスクレは解消します。
③ケーブルネゴインボイスの綴りが多少違う程度であれば、売主は再度書類を作り直して、差し替えれば済みますが、そう簡単に作り直せない書類でディスクレが生じた場合、買取銀行を通じて、発行銀行に対してディスクレの内容を連絡し、買取に応諾して良いかどうかを、SWIFT(Society:forWorldwideInterbankFinancialTelecommunication、、。
、「」。
④アプルーバル扱い輸出地の銀行が買取も、ケーブルネゴもしないで、買取書類を開設銀行に送ります。
開設銀行が、買取書類をチェックのうえ、ディスクレを承諾して、買取銀行に支払を行い、買取銀行が売主に対して支払を実行する方法が、「アプルーバル(Approval)扱い」または「取立扱い」です。
⑤L/Gネゴ
「開設銀行が買取銀行への支払を拒否した場合、売主は輸出代金を買取銀行に弁済する」旨の「損害賠償念書」(LetterofGuarantee:L/G、またはLetterofIndemnity:L/I)を、売主が買取銀行に提出して、買い取ってもらう方法もあります。
この方法を「L/Gネゴ」(L/GNegotiation)と言います。
ディスクレが軽微な内容の場合に行われますが、発行銀行がディスクレを承諾せず、買取銀行に支払わなかった場合、買取銀行は売主に支払済みの代金をリファンドしてもらう必要が生じます。
売主にはリファンドできる余力が必要ですので、買取銀行が、L/G扱いに同意するかどうかは、買取銀行の売主に対する与信枠にかかっています。
⑥ディスクレ理由のアンペイド買主がディスクレを理由に支払拒絶(Unpaid)をすると、銀行は、貨物受領に必要なB/Lを買主に渡さないため、買主は貨物が欲しい限りは、ディスクレを承諾せざるを得ません。
しかし、契約した時から市況が大きく変化していて、買主が貨物を引き取ると損失を被るような状況であれば、買主が貨物引取を拒絶することもあり得ます。
貨物はすでに船積みされて出航しているでしょうし、輸入港に到着しているかもしれません。
その場合、売主は、貨物をシップバック(ShipBack)しなければならなくなり、売主に損失が発生します。
船積書類を揃える(ドキュメンテーションと言います)際、L/Cで要求された全ての書類でディスクレを起こさないように、細心の注意を必要とします。
売主にとって、L/C決済で最も神経を使うのがこのドキュメンテーション作業です。
(3)B/Lの危機への対応近隣国同士の貿易で、L/C決済やD/P・D/A決済のように、荷為替手形が伴う決済方式の場合、本船が出航してから数日で、輸入国の仕向地(港)に貨物が到着してしまいます。
L/C決済やD/P・D/A決済で、船積書類が輸出地の銀行を経由して買主の銀行に到着するには、通常一週間程度の時間がかかります。
買主側は、貨物が到着しているのに、B/Lが到着していないので、輸入通関手続ができないばかりか、港での保管料が発生することがあります。
買主にとっては、コスト増になる事態で、これを「B/Lの危機(B/LCrisis)」と言います。
海上輸送の迅速化によって、近年、B/Lの危機の発生が恒常的になってきたこともあり、貿易業界ではさまざまな対応策が取られています。
①B/Lなしで貨物を引き取るオーソドックスな方法買主が、買主の取引銀行と連帯保証をした保証状(LetterofGuarantee:L/G)を船会社に差し入れれば、B/Lがなくても、貨物を船会社から引き取ることができます。
この方法は、B/Lが未着でも貨物を引き取ることができる、最もオーソドックスな方法です。
通常であれば、買主は、銀行との間で、輸入代金を決済したうえで、B/Lを銀行から受領し、銀行から受け取ったB/Lを船会社に提出して、貨物を受け取るという手順を踏みます。
しかし、銀行が保証状(L/G)で船会社に対して連帯保証をする以上、後日到着したB/Lにディスクレがあっても、あるいは買主が引き取った貨物に、契約違反の事態が発見されたとしても、銀行は買主に対して貨物代金を支払わせます。
買主が貨物代金を銀行に支払えば、銀行はB/Lを買主に渡し、買主はB/Lを船会社に提出して、船会社に差入れた保証状(L/G)を回収し、それを銀行に提出します。
この方法は、B/Lの危機を輸入側だけで解決することができるうえに、輸出側では、ディスクレや着荷貨物に契約違反があっても、貨物代金が100%支払われるメリットがあります。
②船積書類の直送売主が、B/Lなどの船積書類を、DHLやEMSなどのエアークーリエで直送すれば、B/Lは1~2日で買主に届き、買主はB/Lの危機に直面することなく、貨物を引き取ることができます。
しかし、L/C決済やD/P・D/A決済では、B/Lが銀行を通じて買主に渡ることで、銀行が商品代金を取り立てる、あるいは支払を確約させる機能があるわけで、B/Lが、銀行を介在しないで買主に直送されれば、銀行が商品代金を取り立てる、あるいは支払を確約させることができなくなります。
L/C決済なのにB/Lの一通を直送し、残り二通を銀行経由で船積書類として送付した場合、L/Cにディスクレがあれば、買主はそれを理由にアンペイドとし、直送されたB/L一通を使って、船会社から貨物を受け取ることができます。
つまり、代金支払なしで(無料で)、貨物を手に入れることが可能になるのです。
D/PやD/A決済でも、買主が直送されたB/Lを使って貨物を受領してしまえば、銀行経由の取立手形である為替手形に対して、買主はアンペイドをすることも可能です。
従って、L/C、D/P・D/A決済の場合、船積書類の直送は、絶対にしてはなりません。
第三者同士の企業の取引では、船積み前あるいは船積み直後での貨物代金100%の送金決済条件の場合、売主は代金が100%入金したことを確認すれば、船積書類を直送しても問題ありません。
船積み後一定期間経過してからの送金条件での契約でも、貿易保険にリスクヘッジできていれば、船積書類を直送しても問題ありません。
身内同士の企業でも問題ないでしょう。
これらを除いた他のケースでは、船積書類は買主に直送してはなりません。
③船積書類の船長託送要求買主から、「B/Lを含む船積書類を、貨物船の船長に託送して買主側に届くようにして欲しい」という要請を受けることがあります。
「船長託送」という船積書類の送達方法は確かにあって、これを行えば、買主はB/Lの危機に直面せずに済みます。
しかし、「船積書類の船長託送」も、銀行を経由しないで船積書類が買主に渡る点では、船積書類の直送とまったく同じです。
L/C、D/P、D/A決済の場合、船積書類の船長託送などあり得ないことです。
第三者同士の企業では、100%船積み前の事前送金の決済条件であれば、船積書類の船長託送は問題ありません。
身内同士の企業でも問題ないでしょう。
これ以外のケースでは、船積書類の船長託送は不可です。
④売主によるL/G発行「B/Lなしでの買主への貨物引渡を指示する保証状(LetterofGuarantee、:L/G)を」売主から船会、という要請をうにして欲しい。
買主から、船会社ががあります、B/Lなし、その後引渡を行い、B/Lを持った人が現れて貨物引渡を求めた場合。
船会社、そこで償で対応するしかありません、損害賠償責任を明記した売主、船会社/Gに対して発、船会社は安心して。
売主、ただする買主企、船会社としてはすことができます、貨物の価額やL/G発行者の損害賠償能力。
どを考慮してこの方法であれば、買主は、B/Lの危機に遭わないで貨物を引き取れます。
しかし、売主にとっては、銀行を経由してのB/L送達と、銀行を経由する取立決済が連動しているL/C、D/P・D/A決済であれば、その意味を失いますから、L/Gの発行などあり得ないことです。
第三者同士の企業では、100%船積み前の事前送金の決済条件であれば、売主によるL/Gの発行は問題ないでしょう。
また、船積み後、売主がB/Lをホールドし、貨物代金が100%入金したことを確認できれば、船会社に対して売主がL/Gを差し入れても問題ないでしょう。
身内同士の企業の取引でも、売主がL/Gを差し入れても、問題は起こらないでしょう。
これら以外のケースでは、売主によるL/Gの発行は不可です。
買主側が船会社に保証状(L/G)を提出して貨物を引取った場合、買主は、後日到着した船積書類に、ディスクレがあっても支払拒絶はできませんが、売主が船会社にL/Gを差し入れた場合、買主は後日到着した船積書類にディスクレがあれば、支払拒否することができます。
現に、日本側の売主が、何年か取引実績を積んできた海外の買主を、すっかり信用してしまい、買主が出してきた「売主による船会社へのL/G差し入れ」の要求に応じたために、貨物を引き取られ、L/Cは些細なディスクレを理由にアンペイドされ、結果として、貨物をタダで盗られてしまったケースが起きています。
何のために、銀行経由で船積書類が回付されるのか、初心を忘れてはいけません。
海外との取引で、個人ベースで相手を信用することは構いませんが、個人ベースの信用で会社をリスクにさらしてはなりません。
個人格ベースでの信用で、法人格ベースのリスクが見えなくなってしまうのでは、国際ビジネスに携わる営業マンとして失格です。
⑤サレンダーB/LサレンダーB/L(Surrendered:B/L、「元地回収」荷証券)も。
元地回収船荷証券とは、B/Lの発行場所で回収されるB/Lを意味します。
輸出国で貨物が船積みされると、船会社は、売主にB/Lを発行します。
売主は、B/Lが発行されると、その場で船会社宛てに裏書して、B/Lを返却します。
船会社は、いったん発行して戻されたB/Lに、「SURRENDERED」(元地回収済み)のスタンプを押して、一枚目のコピーを売主側に渡します。
船会社は、輸入国(地域)側の自社の出先や代理店に対して、当該B/Lが元地回収済みであることを連絡します。
船会社は、B/Lは回収済みですから、第三者が出て来て、B/Lと引き換えに貨物を引き渡すように、要求されるリスクはありません。
船会社は安心して、買主に貨物を引き渡すことができます。
B/Lの元地回収は、決済とはまったく連動しない貨物引取の方法です。
L/C決済の条件で契約しても、買主が「サレンダーB/L」の要求を出して来て、売主がそれに同意すれば、L/C決済の意味がなくなってしまいます。
「サレンダーB/L」も、身内同士の取引でしか行ってはならない方法ですが、第三者同士の取引では、船積み後、売主がB/Lをホールドし、貨物代金が100%送金入金したことを確認できれば、「サレンダーB/L」化することは可能です。
もちろん、船積み前に100%貨物代金の送金を受ける条件であれば、B/Lが発行されると同時にサレンダー化することは問題ありません。
ところで、サレンダーB/Lは、「B/Lの危機」を解消する方法として編み出された変則的な「慣行」で、信用状統一規則(UCP600)にも規定されていません。
つまり、適用される国際ルールがないため、荷主と運送人との間で紛争が起きた場合、明示的に示された解決方法が存在しないことが、問題視されるようになってきました。
⑥「海上貨物運送状」(SeaWaybill:SWB)サレンダーB/Lは、現状では依然として利用されていますが、一般財団法人日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)では、リスクを低減させ、電子化を促進するために、「海上貨物運送状」(SeaWaybill:SWB)の利用を推奨しています。
SWBも高速化するコンテナ輸送に対応して登場したもので、身内同士の継続的な取引では、SWBを使うことが増えています。
SWBは、表面の記載事項はB/Lと同じですが、B/Lと違うのは、有価証券でないことが明示されていることです。
「貨物の受領書」と「運送引受条件記載書」の二つの機能はかね備えています。
SWBにも、B/L同様に、本船に貨物を積載した旨の「OnBoardNotation」(積み込み証明付記)が必要です。
船会社は、本船入港前に、SWB記載のNotifyParty(着荷通知先)宛に、「ArrivalNotice」(A/N:)貨物到着、を送付し、受荷主は、A/Nに署名して提出すれば、D/O(DeliveryOrder:。
SWBは、ICCの信用状統一規則(UCP600)では、L/C取引に使用される「流通性のない海上運送状」として、B/LやAWBとともに、関連規定があり、万国海法会(Comit「」、、、。
SWBでは、買主が貨物を引き取るのに、SWBそのものは不要で、正当な受荷主であることを証明できれば(通常、船会社にサイン登録をしてサイン照合で証明)、船会社は貨物を引き渡します。
AWBでは、買主の取引銀行を受荷主とすることで、当該銀行が貨物を仮想担保とすることができることから、第三者間の取引でも利用できるのですが、SWBは、銀行、フォワーダー、船会社などに浸透しきれていない嫌いがあります。
例えば、社内にまだSWBの取扱マニュアルがない、L/CやD/P・D/Aの申込書に、SWBの選択肢が設けられていない、SWBの仮想担保価値についての社内評価がまだできていない、といった状況が個別の物流と金融の関連企業にはあるようです。
そのため、SWBの採用には、念のため、それら関係者の事前確認の取得をお勧めします。
現状では、身内同士の取引での利用は問題ないので、元地回収船荷証券(サレンダーB/L)を使っているのであれば、その代わりにSWBを使うことを推奨します。
⑦B/Lと運送状(Waybill)の相違点B/LとSWB・AWBの相違点を次に掲げます。
(船荷証券・海上貨物運送状・航空貨物運送状の相違点)
5.国際ファクタリングのリスク国際ファクタリングにも、リスクが潜んでいます。
(1)時間がかかるファクタリングを利用するには、かなり前の段階から、買主側とファクターの両方とコンタクトしながら、事前準備をする必要があります。
輸入国側のファクターの信用保証を取るのに、通常、3週間程度かかります。
(2)非常危険は免責国際ファクタリングでは、相手先企業の信用リスクは担保されますが、非常危険は担保されません。
(3)ファクターの倒産リスク利用するファクターが倒産するリスクもあります。
ファクターが倒産すれば、買主側から代金を徴収することができなくなってしまいます。
(4)ディスピュートによるファクタリング停止着荷貨物に対して、買主から「品質が悪い」とか、「数量が足りない」、あるいは「着荷が遅延した」といったクレーム(国際ファクタリングでは、「ディスピュート(Dispute:係争)」と言う)が提起された場合、ファクターの信用保証はその時点で停止となります。
ディスピュートの場合、ファクターがすでに売主に支払済みであれば、いったんファクターにリファンドし、売主と買主がクレーム解決の方法について協議を行って両者が合意すれば、輸入国のファクターは、合意した価格で買主から貨物代金を徴収し、輸出国のファクターは、新たに合意した価格で、売主から売掛債権を買い取ります。
(5)買主による減額支払買主側が正式にディスピュート(Dispute)を提起しないで、着荷貨物の品質不良などを理由に、輸入国の提携ファクターに対して、貨物代金の一部を減額支払することが起きています。
この場合、輸出国のファクターが、輸出債権を売主から買い取り済みであれば、売主に対してすでに支払済みの金額との差額を戻し入れるように要求してくるでしょう。
本来、貿易とは、売主と買主が合意した契約価格で100%決済が行われ、品質などのクレーム問題は、決済とは絡めないで、別途売主と買主が協議して、解決方法を決めるべきものです。
少なくとも、L/C決済は、貨物自体の問題とは完全に独立して決済される仕組みになっています。
国際ファクタリングは、金融取引とはいえ、貨物自体の実取引と分離されていない点で、売主にとって不利です。
このことから、ファクタリングを利用できるのは、買主が理不尽なことを主張しない、信頼できる相手の場合に限られます。
やはり、貿易事務上の負担はありますが、L/Cが最も安心できる決済方法であることに、変わりありません。
(6)ファクタリングに適した取引ファクタリングは、ディスピュートが提起されるリスクを心配する必要が余りない、親会社と海外子会社、同一グループ内の企業間での決済に向いています。
第三者同士の企業間決済の方法としては不向きです。
6.日本貿易保険(NEXI)へのリスクヘッジリスクが高い決済方法で契約する場合、そのリスクを貿易保険にヘッジします。
保険会社が保険を引き受けないのであれば、その商取引契約はしてはいけません。
貿易は、博打ではありません。
大きなリスクを背負い込んでまで、行うものではありません。
政府が100%出資している、経済産業省傘下の株式会社日本貿易保険が、大企業向けだけでなく、中小事業者のための貿易保険も取り揃えています。
(1)NEXIの利用方法NEXIの貿易保険を利用するには、保険利用企業と海外の取引予定企業の登録が必要です。
①保険利用者のウェブユーザー登録NEXIのホームページ(https://www.nexi.go.jp/)から、ウェブ上で利用企業の企業情報を登録します。
②海外商社(バイヤー)登録貿易保険の利用には、海外の取引相手先が、NEXIの海外商社名簿で格付されている必要があります。
海外商社名簿に掲載されていない取引先の場合、信用調査書があれば、格付してくれます。
信用調査書は利用企業が手配することも可能ですが、NEXIに格付依頼をすれば、一件1万円くらいの費用で、NEXIが信用調査をして格付してくれます。
この場合、信用調査書は開示されませんが、格付結果は知ることができます。
中小企業基本法上の「中小企業者」であれば、8件まで無料で格付をしてくれます。
格付が決まれば、それぞれの決済条件による保険引き受けの可否や保険料率などが分かります。
(2)主な貿易保険の種類NEXIは、「中小企業・農林水産業輸出代金保険」を始め、さまざまな貿易保険を用意しています。
主なものを次に紹介します。
①中小企業・農林水産業輸出代金保険資本金10億円未満の中堅・中小企業、農林水産業従事者などが利用できる保険です。
船積み前の段階でのリスクには対応していませんが、船積み後の非常危険と信用危険に起因する代金回収不能リスクをカバーしています。
保険料率は、相手先の格付や船積日から代金決済日までのユーザンス期間(最長180日以内)の長短によって、おおよそ0.4%から4%程度ですが、最低保険料は3,000円です。
契約金額が5,000万円以下の日本からの輸出契約が対象で、NEXIが定めるバイヤーの与信枠内であることが付保要件です。
保険申込みができる期間は、輸出契約の締結日以降、船積日から起算して5営業日後までの間で、契約書などのコピーは、申込の段階では不要。
事前に、NEXIが提携する金融機関からNEXIに連絡があれば、保険料は10%割引です。
契約書のコピーは保険金を請求する際に必要です。
保険金は、原則として請求後1ヶ月以内に支払われますが、商品に対するクレームなど、バイヤーとの係争が原因で輸出代金が支払われない場合、仲裁手続などによって問題が解決するまでは保険金の請求はできません。
損失額の95%が補填されます。
②貿易一般保険(個別保険)中小企業・農林水産業輸出代金保険の要件を満たさない場合、つまり、資本金10億円以上の企業や中小企業法の要件を満たさない企業、契約金額が5,000万円超の日本からの輸出契約や、仲介貿易契約などでは、中小企業・農林水産業輸出代金保険は利用できませんが、貿易一般保険(個別保険)を利用することは可能です。
貿易一般保険は、船積み後の非常リスクと、信用リスクによる代金回収不能な事態に対応する点は、中小企業・農林水産業輸出代金保険と同じですが、それ以外に、船積み前であっても、輸出相手国の戦争や内乱などの非常リスクが原因で、船積み不能になって生じる損失もカバーします。
非常リスクによる損失のカバー率は任意で決めることができ、60~97.5%、信用リスクは非常リスクのカバー率を上限として、回収不能部分の60~90%が保証されます。
保険申込ができる期間は、中小企業・農林水産業輸出代金保険と同じく、輸出契約の締結日以降、船積日から起算して5営業日後までの間で、契約書などのコピーは、申込の段階では不要です。
契約書のコピーは保険金を請求する際に必要です。
③限度額設定型貿易保険限度額設定型貿易保険は、年間契約型の保険で、輸出契約ごとの保険申込みは不要です。
保険対象バイヤーが複数あれば、バイヤー毎に、一年間有効な保険金支払限度額を設定します。
保険料は年間保険料の一括前払いですが、申込者が中小企業の場合は2回分割払いもできます。
日本国内から貨物を輸出する契約と仲介貿易(日本以外から出荷される三国間貿易)契約が対象です。
ただし、輸出契約などの締結から決済までの期間が1年以内、船積日から決済期限までの期間が6ヶ月以内が条件です。
カバー範囲は、船積み前の輸出不能または船積み後の代金回収不能による、非常危険と信用危険で、いずれもカバー率は損害額の90%です。
④輸出手形保険輸出手形保険を利用するには、売主の取引銀行がNEXIとの間で「輸出手形保険契約」を締結している必要があります。
NEXIとの保険契約の当事者(被保険者)は、売主の取引銀行です。
保険料は、取引銀行が売主から徴収してNEXIに支払います。
輸出手形保険とは、日本からの輸出取引が対象で、D/P、D/AおよびL/C決済での代金回収不能をカバーします。
荷為替手形一本ごとに付保手続きする必要があり、保険料もその都度発生します。
銀行は、船積日から21日以内に、荷為替手形を売主から買い取り、買い取った日から5営業日以内にNEXIに、その旨通知します。
銀行は、手形不渡日から1ヶ月以内にNEXIあてに「輸出手形保険損失発生通知書」を提出します。
銀行が荷為替手形を買い取らず、手形取立方式で回収する場合、この保険の適用対象外です。
また、売主が買主に一部のB/Lを直送した場合も、この保険は不適用です。
B/Lでなく、AWBやSeaWaybillの場合は、受荷主(Consignee)が手形取立銀行になっている必要があります。
手形金額の95%の保険金がNEXIから銀行に支払われ、銀行は売主から5%分の買戻しを行うことで、銀行は一銭も損失を被らないで済みます。
また、売主は、手形が満期になって決済されれば、100%の商品代金受領が確定し、手形が満期になっても決済されなければ、銀行から買取方式で支払われた商品代金の5%を銀行に戻すことで、結果的には95%の商品代金受領が確定します。
売主は5%程度の利益は見込んだうえで取引するでしょうから、実質的な損害は発
生しないことになります。
売主が買主に対して損害保険をかける義務を負う定型取引条件(CIP・CIF)での輸出契約では、商品の種類により、必要かつ充分な外航貨物海上保険を付保し、さらに戦争保険約款とストライキ約款も付保しなければなりません。
⑤貿易一般保険(企業総合保険)すでに貨物の輸出実績があり、今後も継続的かつ反復的に輸出取引が見込める企業で、取引先バイヤーに極端な偏りのない企業であれば、会社全体で締結することが原則です。
保険対象を、1契約あたりの1千万円までの範囲で「すそ切り金額」として設定し、少額取引を保険対象から除外することができます。
100%仲介貿易契約や自社の子会社向け取引などを、オプションで追加または除外することもできます。
輸出契約と仲介貿易における非常危険または信用危険による、貨物の出荷不能と貨物代金回収不能による損失がカバーされます。
船積み前の輸出不能による損失は、非常危険・信用危険ともに80%、船積み後の代金回収不能による損失は、非常危険が97.5%(100%も可能)、信用危険が90%のカバー率です。
7.輸出取引信用保険NEXIの貿易保険が、幅広いリスク範囲をカバーしているのに対し、民間の損害保険会社が行っている貿易保険は、「輸出取引信用保険」と言って、保険対象を継続的な輸出取引を行っている企業に限定しています。
取引先の国の輸入制限、為替取引制限、戦争、地震などの非常危険による損失と、取引先の倒産や債務不履行などの信用危険による損失を、9割程度の一定割合でカバーします。
損害保険業務を行っている主要各社は、日本商工会議所が団体引き受けをして、各地の商工会議所会員企業が利用できる団体輸出取引信用保険と、企業規模に係らず利用できる一般の輸出取引信用保険を展開しています。
各社の団体輸出取引信用保険と一般向け輸出取引信用保険は、同じ内容ではありませんが、「輸出売上高」と「取引先数」で、各社それぞれ目安の基準を設けているようです。
一例として、ある損保会社は、団体輸出取引信用保険では、輸出売上高5億円未満、取引先数最少2社、一般向け輸出取引信用保険では、売上5億円以上、取引先数最少5社以上を付保できる基準としています。
団体輸出取引信用保険では、審査費用、保険期間中の売上高通知、四半期毎の輸出売上高の通知のいずれもが不要です。
損害保険ジャパン日本興亜株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社などが、日本商工会議所と組んで団体輸出取引信用保険の商品を展開しています。
8.各決済方法と推奨利用当事者決済方法によって、リスクのない方法もあれば、リスクのある決済方法でも、それぞれリスクの大小があります。
リスクの有無とリスクの大小によって、どのような契約当事者がどの決済方法を利用できるかを、目途として参考にできるようにしたのが次の表です。
第三者間同士の企業の取引では、代金の取りはぐれが起きても、大企業を除いて、代金を回収する手段はありませんが、親子関係にある企業同士の取引や同一グループ内の企業同士の取引であれば、話し合いで解決できることが多いと思われます。
特に、第三者間同士の企業の取引では、必ずリスクヘッジをしたうえで取引を進めるようにしなければなりません。
(決済方法と推奨利用当事者)
コメント