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第七章 なぜ目標設定が必要なのか?

目次

新しいゴールを「脳にプログラミングする」方法〜目標設定と刷り込みを行う〜

新しいビジョンと目標を持たないと、古いビジョンと目標を再生することに終始しがちです。すると、去年と変わらない今年が訪れ、今年と変わらない来年が訪れます。「ここでは物事にほとんど変化がない」と考えるようになります。

才能と創造性は、日の前に刺激的なビジョンが現れたときにこそ発揮されます。

目標を設定し、その刷り込みを行い、新しいビジョンと理想、あるいは目標達成のための標的を新しい現実のイメージとして取り込むと、着実に自分を向上させる道が開けます。

第七章では、人間が持って生まれた目的志向の性質について考えます。

標的を持つことは不可欠です。新しい目標がないと古い目標を再生するしかなく、成長することができません。

目標を持たない人は、それが良いものであろうと悪いものであろうと、他人の意見に簡単に従ってしまう傾向があるのです。

第八章では、どうしたらより目的志向になれるかを学びます。

私たちは自分が思い描くイメージ、自分や他人に語る言葉、日標と感情を結びつけることによって、日標達成を目指します。高パフォーマンスの人たちは、特別なことを普通のように見せられる人たちです。

日標を大きなものにすると、それを達成するための道のりが成長の過程となりますcまた、大きな目標を持つことで、それまで気づかなかったリソース(資源)が見えてくるようになります。

第九章は、日標を書き表して肯定する「アファメーション」についての重要な章です。ポジティブなイメージと感情を引き出し、必要な変化を起こすための目標の書き表し方について学びます。第十章では、新しい目標を刷り込み、もう役に立たない古い目標を書き換える方法を教えます。

毎日のアファメーションで「書く、読む、刷り込む」のプロセスを学び、新しい状況の中にいる自分を思い描いてポジティブな感情と結びつけられるようにします。

日標の設定と刷り込みを行う理由とその方法を理解する人には、無限の可能性が広がります。

★目標設定が必要な六つの理由

あなたは「なぜ日標がそんなに重要なのですか?」「なぜ目標を設定するのですか?」とたずねるかもしれません。私には少なくとも六つの理由が挙げられます。

▼理由一。何の目標も理想も掲げなければ、自己破壊、死が待っている

数年前、『夜と霧』の作者でロゴセラピーという心理療法を確立したヴィクトール・フランクルとウィーンで会いました。

彼は「人間にとって、理想や目標を持つことは不可欠だ。日標なしでは死んでしまうか、自己破滅的な行動に陥る」と言っています。

フランクルの言っていることは、まったくの正論です。

目標を持たなければ、人は死んでしまいます。

朝鮮戦争でそれが証明されました。朝鮮戦争では、アメリカ史上のどの戦争よりも多くの戦争捕虜が死亡しました。

なぜでしょう? 中国と北朝鮮の共産主義者が、精神的拷間によって捕虜の生きる目標を破壊したからです。

彼らは捕虜につねに陰鬱な将来像を思い描かせ、仲間を密告する者に報酬を与え、恋人から送られてきた絶縁状や離婚申請書、手形回収通知を見せ、嘘の歴史で捕虜を洗脳しました。

徹底的に捕虜たちの将来への希望を打ち砕いたのです。捕虜たちは生きる目的を失いました。

まだ十八歳から二十三歳ほどの若者が、部屋の隅に這っていって頭に毛布をかぶると、四十八時間で何の肉体的原因もないまま死んでしまいます。

最初、この現象は「あきらめ病」と名づけられました。その後、通常は子どもたちに見られる「引きこもり行動」と同じであることがわかりました。

結婚生活が長く、とても仲のよい夫婦を観察してみてください。どちらかが死ぬと、残されたほうもすぐあとに続きます。

何の目的もないまま退職する人を見てください。退職時の年齢に関係なく、退職後平均十八ヵ月で死んでいます。

人は目標を持つか、死んでしまうか、そのどちらかしかありません。目標を持たない会社も長くは生き残れません。つまり、日標をあきらめると、あるいは何の目標も持たずにいると、体の全機能が停止するのです。

▼理由二。標的を失ったミサイルのように全システムが機能停止する

目標を持つことで、私たちは標的に向けて進むことができます。人間は本質的に目的志向の動物です。私たちには標的を探し出す能力が備わっています。

潜在意識が、それが何であれ、頭の中で最も支配的な目標やイメージに向かって私たちを動かすのです。目標はどんなものでもかまいません。

人間は本質的に目的志向なので、私たちは目標によって方向づけられ、人間形成がなされます。

人が適切に機能しているときには、目的や目標という観点からものを考えています。私たちの目的志向の思考や認識は、ミサイルの誘導システムと似たところがあります。

標的まで導いてくれる私たちの誘導システムは、頭の中にある、物事がどうあるべきかについての内的イメージです。

「私には家族の将来図がある」「私にはこの会社の将来像が思い浮かぶ」「私は次の体暇の行き先をもう頭の中に描いている」「私は今年どれくらいのお金を稼ぐかを思い描いている」誘導システムは、日標に向かって進むあいだ、正しいコース上にあなたをとどめてくれます。

自分を変化させ成長するためには、日標が必要です。

あなたの目標は、あなたに過去を引きずらせるものでしょうか? 現在を漂わせるだけのものでしょうか? それとも、未来に飛躍させるものでしょうか? この目的志向のメカニズムをどうプログラムするかがわかれば、それが行きたいところへどこへでも連れていってくれます。

▽理由三.意識的に目標を与えないと、すでにある目標を再生する

自分自身に新しい理想、イメージ、向かうべき目標を与えないと、明日は今日と代わり映えがしないものになり、それどころか昨年と比べてもほとんど変化のないものになるでしょう。何をしようとも、来週や来年や次の世代や次の状況を、驚くほど過去や現在と同じに見せるだけです。

つまり、日標設定はあなたを成長させ発展させるための重要な要素になるのです。目標を持つことは、生き続けるためにも絶対に必要です。

私たちは、自分が考えるものに向かい、自分が考える人間になります。

したがって、もし意識的に自分の人生のあり方、自分の家族のあり方、あるいは、来週、来月、来年の仕事についての期待を描かなければ、潜在意識が現在支配的なイメージを複製します。

そして、昨年の目標を何度も何度も繰り返すだけに終わります。人々が型にはまった日常を過ごし、同じ仕事を来る日も来る日も続けることを自分に許してしまうのはそのためです。

 一般に、私たちはそれを「マンネリ」と呼んでいます。新しい標的やイメージを送り込まないと、地域環境、自宅、収入レベル、家族について、古いイメージを使い続けることになります。

あなたの持つイメージは、脳の神経細胞の中ですでに建設されています。

あなたは環境に溶け込むことによって、特定の地域で育つことによって、周囲の人のあなたに対する扱いを受け止めることによって、イメージを発達させてきました。

▼理由四。自分で新しい目標を設定しないと、他人に使われる人になる

あなたは、周囲の動きにただ同調するだけになります。怠惰になったり、恐怖にかられたりして、自分で考えることができなくなります。

「あのクライアントは切り捨てよう」「ああ、それはいい考えだ」「あの新しい映画を見に行こう」「ああ、それはいい考えだ」「うちの車を売ったらどう?」「ああ、それはいい考えだ」。

わかりますか? どんなこともいい考えになるのです。

そして、他人があなたの頭の中に誘発するイメージに向かって動き、あらゆる提案に心を開いてしまうのです。それは、ラップミュージックかもしれません。誰かが国にする何かかもしれません。

「これって、ひどくない?」「何もすることがない」という不平や不満かもしれません。つまり、環境や周囲の人の提案や意見の影響を強く受けてしまいます。

自分自身で日標設定をしないと、潜在意識はそれを察知します。そして、ただ人と同じことをするだけになっていきます。

「まったく、それはいい考えだ。もっといい考えは思いつかないな」と言って、仲間と連れ立ってビールを飲みに行きます。

▼理由五。日標設定とアファメーションで、挫折への抵抗力をつける

前向きな勝利への期待を持つことで、すべての挫折を一時的なものにすることができます。

たとえば、ローズ・ケネディは多くの問題を抱えながらも、家族を一つにまとめました。彼女は知的障害のある子を生みましたが、立ち直りました。第二次世界大戦で息子と娘を失いましたが、立ち直りました。

大統領になった息子を暗殺されましたが、立ち直りました。もう一人の息子を大統領選挙中に暗殺されましたが、立ち直りました。スキャンダルに巻き込まれた息子がいましたが、立ち直りました。

日の前で夫を亡くしましたが、立ち直りました。孫の一人が片脚を切断しましたが、立ち直りました。自分は腰を骨折しましたが、もちろん、立ち直りました。

彼女の途方もない粘り強さと回復力は、自分の家族にどうあってほしいか、その力強いビジョンと目標から出ていたのです。

あなたはどれだけの失望と挫折を耐え抜けるでしょう? 電球のフィラメントを発明したトーマス・エジソンは、三〇〇〇回の一時的な挫折を経験しました。

正しい答えを得るまでに三〇〇〇回の失敗があったのです。普通の人ならあきらめてしまっていたでしょう。

個人あるいはチームに回復力を持たせるには、最初にポジティブな勝利への期待と、すべての挫折と痛みを一時的なものとみなす態度を生み出すことが必要です。

スポーツの世界でのコーチングでは、私はよく選手たちにこう言います。

「君たちが奮起するたびに相手は攻め込むのにうんざりしてくる。相手がためらった瞬問にたたきのめすんだ」ひとたび価値ある目標を定め、その目標に向けて自分自身を奮い立たせると、私は粘り強くなれます。

ポジティブな勝利への期待を持ち、すべての挫折を一時的なものとみなします。その練習のために、自分が真夜中に真っ暗な森の中を全速力で走り抜けていて、木にぶつかるところを想像します。

私は痛みを感じます。立ち上がってまた走り始めると、別の本にぶつかります。後ずさり、気を取り直し、また別の本にぶつかり、ようやく森を抜けることができます。

このように、日標設定と結びつけたイメージの視覚化が回復力を育てます。

ダイアンと私は、私たち家族が幸せいっぱいに過ごせる未来にポジティブな期待を抱き、すべての挫折を一時的なものとみなします。

ダイアンは驚くほどタフな女性です。子どもを見捨てることは決してありません。それが彼女の設定した目標の一つでもあり、子どもたちのこととなると、とてつもない粘り強さを発揮します。

たとえば、六歳のジョーイを養子に迎えた直後、彼は家から逃げ出し、保安官が連れ戻してくれました。状況は悪くなる一方でした。毎日が危機の連続でした。

ジョーイは何かを壊したり、誰かを傷つけたりすることをやめません。

 一三歳になるころには地域の問題児になってしまい、精神科の施設に行かなければなりませんでした。

そこでも衝動を抑えられず、殺人未遂まで犯したので、本人のためにも周囲のためにも保護拘置下に置かれることになりました。

彼は七年間、拘置施設で過ごしました。一四歳のとき、クリスマスに一時帰宅が許されました。

クリスマス当日はすべてが順調に行きましたが、次の日の夜、彼はみんなのプレゼントを盗んで家を出て行ってしまいました。

私は「もううんざりだ。勝手にしろ」という気持ちでした。しかし、ダイアンは決してあきらめません。ジョーイが幸せで立派な人間になることをあきらめませんでした。

彼女の英雄的な努力と粘り強さは、ジョーイは少なくとも人生の一時期を、社会に貢献できる立派な人物として幸せに暮らせるはずだという深い信念からくるものです。

頭の中にその最終イメージを維持し、すべての失望を一時的なものとみなしているのです。

▼理由六。認知的不協和とそのポジティブな副産物――創造的エネルギー、モチベーション、意欲、方向性― を生み出すこと

私たちはいつも心の平静を保とうと努力しています。

精神的な秩序が得られるのは、自分の環境、社会生活、仕事生活、家庭生活についての脳内イメージが、五感を通して認識する現実のイメージと一致したときです。

矛盾を感知すると、脳内システムは私たちを″ふさわしい場所″に戻そうとするエネルギーを生み出します。

言い換えれば、二つのイメージが一致しないと、私たちは問題を抱えることになるのです。

ときには、変化が望ましいものであるときにも、気まずかったり、緊張したり、不快だったりするために、変化に抵抗することがあります。

それが脳内システムにネガティブな緊張を引き起こし、元の場所へと引き戻します。

しかし、私たちの創造的潜在意識には、同じネガティブな緊張をポジティブなエネルギーに変える力があります。

そのエネルギーこそ、問題や対立を解決したり、変化を起こしたり、日標を達成するのに必要なものです。一九五七年、心理学者のレオン・フエステインガーがこの内なる緊張を「認知的不協和」と名づけました。

「認知」とは、考えや態度、意見、信念を意味します。言い換えれば、″真実″についての認識です。「不協和」は不和、緊張、不調和のことです。認知的不協和は、問題解決、紛争解決、目標達成への原動力です。

フェスティンガーは、二つの矛盾する考え、態度、意見、信念を頭の中に同時に抱えるたびに、認知的不協和― 怒り、苛立ち、ストレスーが生じることに気づきました。

自分が強く信じていることに対し、他人が反対の見解を示したときに、怒りを覚えるのはそのためです。不協和はひどく感情を害するのです。

イメージがかみ合わないとき、それが頭の中に生み出す不協和が対立の解消に向かわせます。みなさんも、壁に傾いてかかっている絵をまっすぐに直したいという衝動にかられたことがあると思います。

「この絵は正しくあるべき状態に見えない」。

それが不協和に対する反応です。

あるいは、自宅のリビングルームがどう見えるべきかについて、あなたには一定のイメージがあります。帰宅して部屋が散らかっていたら、「がまんできない!」と思います。

なぜでしよう? それは、部屋がそうあるべき状態に見えないからです。あなたはとたんに管理責任者に早変わりします。「これをしたやつを見つけろ!」。

そして、あなたのイメージを台無しにした犯人を見つけると、「こんなところで生活したくない。元に直しなさい!」と叫びます。

さらにキツチンに入ると、まるでごみ置き場のようです。あなたはまた腹が立ちます。ここもそうあるべき状態には見えません。

再びあなたの潜在意識が、混乱を正し、秩序を回復し、そうあるべき状態に戻そうとするエネルギーと原動力を生み出します。

★壊れた憲

何年も前のことですが、私が出張から帰宅したときのことです。わが家には玄関から入ってすぐのところに床から天丼まで続く鉛枠ガラスの窓があります。

その窓からワシントン湖に目を向けているとき、美しい窓ガラスの一枚が割れているのに気づきました。「誰が窓を割ったんだ?」とダイアンにたずねました。

「ダニー・ブリーン(以前、私たちのところで働いていた男)よ。窓を掃除しているときにはしごが滑って、窓を突き破ったの」彼女はさらにこう言いましたc「ガラス修理店に電話したら、明日来て直してくれるそうよ」それを聞いて、私は落ち着きを取り戻しました。

問題の解決策を耳にし、窓が元どおりになるところを思い描けたからです。ところが翌日帰宅すると、窓はまだ割れたままで、ガラスが床に飛び散ったままです。

「今日修理してもらえるはずだったと思うけど」「私もよ。修理店から電話があって、今日は来られないと言ってきたの。

でも、明日には必ず来るって約束したわ」翌日、私は窓がすっかり元どおりになっていることを期待して家に入りました。

ところが、窓はまだ割れたままです。しかし今回は、それほど気になりませんでした。徐々にその状態に慣れてきたからです。

窓を元どおりにするというモチベーションが弱まっていました。自分自身や何かに求める基準は、生活の中での慣れによって決まります。

★どれだけあれば十分か7

認知的不協和が秩序を回復する力を与えてくれることはよくありますが、いったん秩序が戻ると安心してしまい、創造的エネルギーと意欲を失ってしまう傾向があります。

なぜキツチンの壁の塗り替えを始めないのでしょう? なぜ戸棚に新しいドアを取り付けないのでしょう? なぜ新しい流しを設置しないのでしょう? 「今のままで私には十分だ」と思っているからです。

あなたの頭の中には、自分が必要とする何かの質と量について基準となるイメージがあります。実際に目にする様子が頭の中のイメージと一致していれば、創造的不協和を感じることはありません。

変化へのモチベーションが途切れ、眠りにつくことができます。

子どもたちにお皿洗いをするように言ったら、子どもたちはどんな行動をとるでしよう? 彼らはキッチンに行って洗い始めますが、すぐに出てきます。

あなたがキッチンに行ってチェックし、「こら― ナイフとフォークをまだ洗ちていないじゃない」と言うと、子どもたちは言い返します。

「ナイフとフォークを洗えなんて言わなかったでしょ? お皿を洗えって言ったじゃない」。問題解決や目標達成に努力しているとき、あなたの創造的潜在意識はこのように働きます。

あなたが潜在意識にするように言ったことだけしかしません。それ以上のことは決してしません。ひとたび目標を達成すると、感情の高ぶりが消え、モチベーションを失ってしまいます。

潜在意識はすべての必要な燃料を燃やしつくしてしまいました。創造的不協和がそれ以上のことをする必要はもうありません。

あなたは目標を達成するために、どれだけの力と意欲とエネルギーを自分から引き出すことができるでしょうか? 頭の中に持っている基準となるイメージを超えることはほとんどないと思います。

あなたがプロのフットボールコーチで、夏場の練習中に、次のシーズンのチームロ標は「スーパーボウルに出場すること」に決めたとしましょう。

そして、チームもその目標を受け入れ、実際にスーパーボウル出場を果たしたとします。

スーパーボウルでの彼らの対戦チームの目標が「スーパーボウルで勝利すること」だったとしたら、あなたのチームはどうなるでしょう? どちらがその試合に勝つための、より多くの創造的不協和、より多くのエネルギーと意欲とモチベーションを持っているでしようか?自分自身に何かに慣れることを許したとき、意欲が失われます。

銀行の預金口座にお金がない状態に慣れてしまう人もいます。彼らは自分にこう語りかけます。

「私にはまだ貯金する余裕がない。生活するだけでも大変なんだから。もっとたくさん稼げるようになったら貯金しよう」。

すると、潜在意識は彼らが現在必要としているだけのお金しか稼がないようにします。あなたの潜在意識は、あなたの命じることだけをします。あなたが自分に期待するものを与えようとしますが、それ以上のものは引き出しません。

あなたはどれだけのお金を慈善活動に寄付しますか? 「私は慈善活動には寄付しない。そんな余裕はない。いつか金持ちになったら、たくさん寄付しよう」。

あなたは実際にそうするでしょうか? 「そんな余裕はない」というイメージを持ち続けているかぎり、潜在意識はあなたが金持ちになることを許しません。

そうなると自分ではいられなくなるからです。金持ちになることはあなたのイメージの一部ではないからです。

★人は何に慣れるか7

私の母がアイスボックスを使うことに慣れてしまい、冷蔵庫を買うことにずっと抵抗していた話を覚えていますか?

あなたはこれまで、自分に対して何に慣れることを許してきたでしょう?

何がどれほどあれば、あなたには十分だったでしょうか?

たとえば自宅に客を招くときに、「こんなに汚い部屋を見せたくない」と思って、必死に掃除することがあると思います。

掃除機をかけ、ほこりを払い、窓や床を磨き、ほうきで掃き、こすり、壊れていたものを直し、物の位置を変え、家全体がぴかぴかになるまで掃除を続けます。

自分の家はそうあるべきだと思うイメージ以上にきれいな状態にします。

問題は― ‐なぜあなたはいつもその状態の家で暮らしていないのでしょうか?「だって、この状態は私にはきれいすぎる。いつもこんなにきれいにしておくことを私に期待しないでくれ。これは特別な機会にかぎったことなんだから」とあなたは言います。

そして、客が帰ったあとは気分が晴れ晴れとすることでしょう。ようやくリラックスして、自分が慣れ親しんだ状態に戻ることができるのですから。あなたは自分自身に戻ることができます。

自分が受け入れているイメージを超えたレベルの優秀さを達成し維持するには、かなりの奮闘努力が必要になります。

あなたは来客という特別な機会のために、いつも以上に部屋をきれいにしましたが、客が帰ってしまうと、また元のそうあるべき状態に戻していきます。

「ほら、このほうがずっと私らしい」新しい家に引っ越して、期待どおりに修理されていない箇所があることに気づいたときはどうでしょう。

クローゼットのドアが廊下に積み重ねられていて、屋根が雨漏りします。最初は腹立たしく思うはずです。

「まったく、がまんできない。先週直してあるはずだったのに」。しばらくすると、「よし、ここに住んでいるあいだに自分で修理しよう」と思います。

しかし、住んでいるうちに、徐々にその状態に慣れてきます。

数日もすると、認知的不協和は消えてしまい、廊下にクローゼットのドアが積み重なっていても、屋根が雨漏りしても気になりません。

秩序を回復するためのモチベーションと意欲を失ってしまったからです。頭の中のイメージを、外部環境に合わせて調整してしまったのです。

自分が人からどう扱われるべきか、収入や借金はどれくらいであるべきか、生活の質はどうあるべきかについての現状のイメージに慣れるあまり、潜在能力を発揮できずに終わることが少なくありません。

新しい車を買ったばかりだとしましょう。誰かがぶつけてフェンダーがへこんでいます。あなたは腹を立てます。車がそうあるべき新しい車にはもう見えないからです。

しかし、 一ヵ月修理をしないままにしておき、そのへこみを何度も見ているうちに、おそらくあなたはその車を売るか交換するかしないかぎり、へこみを直そうとはしなくなるでしよう。

へこみのある車という現状のイメージに慣れ、モチベーションを失ったからです。

つまりあなたは、自宅やオフィスなど自分の生活範囲を歩き回りながら、つねに「私は何に慣れてしまったのだろう?」と問い続け続けなければならないということです。

現在の環境の中で間違っていることの詳細を、頭の中のイメージに取り込んでしまうと、成長と変化のために使われるべき大きな力を失うことになります。

シアトルのある製粉工場では、「世界最良の小麦粉」と書かれた大きな看板を自社ビルに掲げていました。

長い年月のあいだに建物は荒廃してしまい、その場所はごみ捨て場のように見えるのに、まだ看板はかかっています。

しばらくして、経営者は何をしたでしょう? 「世界最良の」という文字を塗りつぶし、ブランド名と「小麦粉」の文字だけを残しました。

彼らは問題を修復したのではなく、ただ基準を変えただけでした。あなたも同じことをするおそれがあります。

たいていの女性は最初に結婚するときには、虐待ではなく求愛されることに慣れた状態です。彼女たちは美しい花のようです。

しかし、結婚した相手からの言葉の暴力や肉体的な暴力をがまんしていると、すぐにその状態に慣れ、受け入れてしまいます。

それどころか時間が経つうちに、虐待されないとわざわざ虐待される原因をつくり出すようになります。虐待が現実のイメージに深く入り込んでしまったため、それが起こらないと自分から引き起こそうとしてしまうのです。

★自分がどんな基準を求めるかを決める

目標設定とは、自分が将来、どんなことに慣れるかを意図的に決めることです。そして、その決定や基準をイメージとして取り込みます。

いったん新しい基準を頭の中のイメージになじませると、周りを見回したときに現在の状況で間違っているものすべてが見えてきます。

それまでは問題がないように見えていたものです。新しいビジョンを得ることで、古いビジョンには満足できなくなる。それが成長のプロセスです。

あなたは今、現状に居心地のよさを感じています。

しかし、新しいビジョンが現れ、日標を設定すると、現在の基準に不満を覚えるようになります。日の前の現実は、ビジョンの実現と目標達成への鍵となります。

現状と正面から向き合い、自分の目標の鮮明な内的イメージを持つことで、必要な創造的不協和のエネルギーを刺激します。

ビジョンは設定するものの、なぜそこに到達できないのかと不思議に思う人がいますc彼らはゲームの全体像を見ていません。

自分の売り上げ成績が実際にどうなっているか、チェックしようとしません。体重計に乗って、自分の本当の体重を知ろうとしません。

「私に真実を言わないでくれ。あまりにつらすぎる」と考えているからです。

自分がどんな状況を望むかについてビジョンを定め、現状をしっかり見直したとき、私たちは一連のネガティブなフィードバツクを得るはずです。

現状は不完全で矛盾しているという感覚です。

大部分の人が自分のコンフォートゾーンから飛び出して変化を求めることをためらうのはそのためです。自分への期待と求める基準のレベルを上げると、現状にますます満足できなくなります。

昨年なら十分だと感じられたことが、今日のあなたには満足できません。

「それは本来そうあるべき状態ではない。間違いを正せ」と思います。

しかし、廊下に積み重ねたままの汚れた洗濯物をそのままにしていると、屋根の雨漏りをそのまま放っておくと、最初はがまんしていたのが、徐々にその状況に慣れてしまい、変えようというモチベーションを失っていきます。

すぐに、それがひどい状態だとさえ思わなくなります。

★目標を定めれば、方法が見えてくる

何が重要かを決めるだけで、必要な情報。手段に気づけるようになります。もちろん、恐怖を感じることもあるでしょう。

あるとき、私はシアトルから飛行機で、わが家の牧場があるトゥウィスプヘ向かっていました。突然、エンジンが止まったのに気づいて目が覚めました。

それが脅威を意味する沈黙であれば、沈黙で目が覚めることもあるのです。

デトロイトで警官をしている友人が、いつも面倒ばかり起こして手を焼いていたバーの話をしてくれたことがあります。口論や乱闘が絶えず、そのたびに店内はめちゃくちゃです。

友人と彼の相棒がショットガンを持って店に入り、「警察だ―・いい加減にしろ―座って口を開くな!」と叫んでも、誰も耳を貸しませんでした。

あるとき、またこのバーで喧嘩が始まったと聞いて店の中に入ると、友人は自分のショットガンに弾を込めました。

突然、完全な沈黙が訪れます。店の中は凍りついたように静かになりました。友人はその理由がわかりませんでした。

何が起こったのでしょう? 「恐怖」の伝播です。

それまでは、彼らが店に入って「警察だ―・いい加減にしろ―」と叫んでも、誰も聞いていませんでした。しかし、 一発の弾がショットガンに挿入される、もつと目立たないはずの音は、全員に聞こえたのです。

脅威のメッセージは相手に伝わります。偉大なアスリートはこのシステムを有効利用しています。何が重要かわからなくて、がらくたを取り除こうとしない選手もいます。

新人のクオーターバックがェンドゾーンの端で待っているレシーバーに気づかないことが多いのも、これが理由の一つです。

彼は注意をそらすものを取り除かなかったために、すべてを見てしまいました。自分に必要なものだけに集中していなかったのです。

優れたクオーターバックは何を認識すべきかを正確にわかっています。

スタジアムの八万人の観衆の声援や罵声が彼に集中していても、パスを投げるために後退しながら、すぐにねらいを定めます。

自動で動くズームレンズのように、意識のズームがエンドゾーンにいる第一のレシーバーに即座にズームインします。

次には、第二のレシーバーが走り込んでくるのを見つけます。さらに、視界の隅でハーフバックの姿をとらえます。そして、敵のガードを逃れたレシーバーを探すのに忙しくしているあいだに、脅威を感じ始めます。

左五ヤードのところに、体重一三〇キロのディフェンシブ。ラインマンが迫り、彼の首を引きちぎろうとしているのを感じます。

さらには、ラインバツカーニ人もブロックを破ってフリーになったのが見えます。彼には価値ある標的と脅威の両方が見えます。

それ以外のものにはスコトーマを築きます。観衆も、売り子も、チアリーダーも、試合の役員も、ベンチの控え選手たちの姿も見えません。

日から泡を吹いて彼に襲いかかろうとしている選手がいたとしても、味方の選手にブロックされているかぎり、見る必要はありません。

 一メートル先に立っている審判の外見を描写できたら百万ドル渡すと言われても、彼がそのお金を勝ち取ることはないでしょう。

たとえ審判のほうをまっすぐ見ていたとしても、彼に審判の姿は見えません。彼にとって価値ある対象ではないからです。

頂点にいるパフォーマーは、ビジョンと目標、そして結果のイメージに誘導されています。現状では自分に必要な情報やリソースがどこにあるのかわかっていないかもしれません。平凡な人は、信じる前に証拠を要求します。

「私に見せてくれ。それはどこから来るんだ? それをどう使うんだ?」。

高パフォーマンスの人はこれとは反対の動きを見せます。

証拠がなくても信じることができます。特定の目標を定め、それが達成できると信じることで必要なことが見つかり、証拠が次々と現れます。自分がどう働くかを信じていなければ、証拠を目にすることはありません。

★目標設定する大きな理由は、現状を跳び越えるため

目標を、すでに達成されたことのようにイメージすれば、達成するために必要なものが見つかります。たいていの人は自分の将来を現在わかっていることを基準にして考えます。

現在のリソースとスキルを基にした目標の達成方法がわからないと、「まだ私には無理なんだ」と考え、「先へ進むのは二、三ヵ月待ってからにしよう」と、現状とそう変わらない目標に戻ってしまいます。

目標設定のプロセスは、あなたが望む結果や日標達成を助ける情報やリソースに気づく機会を増やします。

あなたはどの部分を成長させたいのでしょう。それが何であれ、新しいビジョンを定めることで現状に対する不満を持たなければなりません。

どれだけお金があれば、あなたには十分でしょう? どれだけの量と質の製品サービスがあれば、あなたの会社にとって十分でしょう? 両親との関係はどんな形であれば、あなたにとって十分でしょう? 結婚生活でどれだけの虐待を受ければ、「もう十分よ」と決心するでしょう?

あなたにはほとんど何でも生み出し、達成する力があります。

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