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第一章 貿易の基礎知識

目次

はじめに

貿易の第一線で活躍するのに必要な、営業マンに必須の貿易知識をお伝えするために、2019年12月に『営業マンのための貿易実務』を、そして貿易と企業進出をするための“転ばぬ先の杖”として、2020年4月に、『海外展開の基本』を上梓したところ、幸いなことに、多くの方々に受け入れていただくことができました。心から感謝申し上げます。

ただ、貿易に必要な知識は、未知の領域の新しいものが多いことから、実は曖昧に理解していたり、不正確に理解したりしていることが少なくありません。

そこで、主として、『営業マンのための貿易実務』と『海外展開の基本』の「第Ⅰ部プロローグ」と「第Ⅲ部貿易の基礎知識」をお読みいただいた皆様に、営業マンとしての貿易実務を、より一層正確に、且つ深く、理解していただけるように、本書を企画した次第です。

本書には、「貿易の基礎知識」、「インコタームズ」、「貿易決済」など七つの分野に分けて、合計46の「問題」とそれに続く「ヒント」と「回答例」を掲載しています。

「問題」の多くは、貿易の第一線で取引していると、実際に経験するものを、数多く取り上げています。

この意味では、本書は、単に、貿易実務に対する理解度を測るだけでなく、貿易の第一線における応用の具体例として、活用することができます。

なお、それぞれの「ヒント」の最後に、「参考参照先」として、『海外展開の基本』、『営業マンのための貿易実務』の関連個所を表示しています。POD(印刷本)版の関連個所は、第何頁かで表示しています。

各々の「問題」に対して、「熟考」したうえで、「ヒント」を参照しながら、『営業マンのための貿易実務』と『海外展開の基本』の該当箇所を読み返し、「回答」を考えてください。

「熟考」と「読み返し」を経て、最後に「回答例」を参照することで、理解深化の効果が飛躍的に上がるはずです。

本書が、海外展開の第一線に立たれる皆様の、お役に立てることができれば、幸甚の至りです。世界を舞台とした、皆様のご活躍を、心から楽しみにしています。

目次

はじめに

第一章 貿易の基礎知識

  • 1.物流の手配や通関手続きをしてくれる業者
  • 2.フォワーダーを探すには
  • 3.輸出を始めるには
  • 4.輸入は簡単だと聞いたのですが
  • 5.輸出するのは簡単だと聞いたのですが
  • 6.直接貿易と間接貿易
  • 7.ECommerceへの対応

第一章 貿易の基礎知識

本章では、貿易を支える基本的な要素とは何かを考えたうえで、貿易を行うための「手順」について、認識を深めます。輸出も輸入も、それぞれ「手順」を踏んで、計画を立てて行います。

貿易実務の点では、輸入のほうが輸出よりも遥かに簡単ですが、輸入には輸出にない難しさがあって、単に輸入するだけであれば、難しくありませんが、それをビジネスとして成功させるには、それなりの能力を備えた企業が、工夫して取り組む必要があります。

直接貿易と間接貿易は、頭の中でそれらの違いを理解していても、実際の行動では、混同していて、経費だけを浪費しているケースが少なくありません。

直接貿易と間接貿易の「貿易形態」の違いをはっきりと認識して、直接貿易は直接貿易の、間接貿易は間接貿易のやり方をするようにしましょう。

コロナ禍を契機として、直接会って商談する必要のない、ECommerce(電子商取引)、ウェブ会議、デジタル展示会やテレワークアプリなどを使った海外取引が、注目を集めています。

ともすると、これらの手段を使えば、国内取引と同じ感覚で貿易できるかの錯覚にとらわれてしまい、貿易実務など要らないのではないかと、思う人が続出する危険性があります。この問題についても、今一度、認識を深めておきましょう!

1.物流の手配や通関手続きをしてくれる業者

(1)問題

物流の手配や、通関手続きをしてくれる業者のことを、「海貨業者」と言っている貿易実務の本が多いのですが、実際に貿易をしている人の話を聞くと、「乙仲」「フォワーダー」、と言っている人もいます。どれが正しい呼び方なのでしょうか?

(2)ヒント

確かに、「海貨業者」、「フォワーダー」、「コンソリデーター」、「乙仲」……、貿易に関わる物流業者は、さまざまな呼び方がされていて、混乱します。もともと、物流を担うそれぞれの業者が行っていた仕事の内容は、本来の「業種名」と一致していました。

「海貨業者」港湾内での船積、荷卸、艀輸送を手配する業者でした。

「フォワーダー」は、自らは運送手段を持っているキャリア(輸送業者)ではありませんが、キャリアを使って、運送を手配する業者(貨物利用運送事業者)を指す言葉です。

貨物利用運送事業者は、複数の荷主の貨物を集荷して、コンテナ単位に纏めて出荷するサービスを行っている「混載業者」でもあることから、混載業者を意味する「コンソリデーター」とも呼ばれています。

「乙仲」は、戦時立法で施行された海運組合法(1939~1947年)という法律で、「定期船貨物の取次ぎをする仲介業者」「乙種仲立業」と呼んでいたことから、今でも「乙仲」は、輸送を手配する業者あるいは、代行して通関手続きをしてくれる業者の意味で使われています。

本来の出自から、さまざまな言い方がされてきたのですが、現在では、物流業界の自由化が進んだために、どの「業種名」も、現実に行っている仕事の一部でしかなくなってしまいました。

ですから、厳密に言うと、どの呼称をしても、その業者が行っている業務内容の一部しか、表現できていないのです。これが、混乱の原因です。

*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(1)国際物流の基礎知識」(POD版P244)『営業マンのための貿易実務』:「第二章国際物流の基礎知識」-「1.物流業者の呼称」(POD版P3036)

(3)回答例

それでは、どのように物流業者を呼べば良いのでしょうか? それは、現実に貿易の現場で、慣習として、どのような言い方がされているかを基準にすれば良いのです。

海上輸送を手配する業者は、フォワーダーまたは乙仲航空機輸送の場合は、コンソリデーターかフォワーダーですが、商社業界では、海上輸送、航空機輸送の何れも「乙仲」と言っています。

(貿易の現場での一般的な呼称)主たる輸送手段船舶航空機フォワーダーコンソリデーター乙仲(エアー)フォワーダー乙仲(商社業界)

2.フォワーダーを探すには

(1)問題

輸出貨物の数量が少ないので、単独ではコンテナに仕立てることができません。混載で海外に輸送手配してくれる、フォワーダーを探したいのですが、どうすれば良いのでしょうか?

(2)ヒント

混載業者であるフォワーダーは、(社)国際フレートフォワーダーズ協会(JIFFA)に加盟しています。

*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(1)国際物流の基礎知識」(POD版P245)『営業マンのための貿易実務』:「第二章国際物流の基礎知識」-「(2)NVOCCと混載業者」(POD版P33)(3)回答例ウェブ上に、(社)国際フレートフォワーダーズ協会(JIFFA)のホームページがあります(https://www.jiffa.or.jp/member/map47.html)。

そこに、会員リストが掲載されていて、アイウエオ順でも、都道府県別でも、並べ替えて検索することができます。お近くのフォワーダーの住所や電話番号などを調べて、コンタクトされては如何でしょうか。

3.輸出を始めるには

(1)問題

日本の国内市場は、人口が少しずつ減少していく傾向にあるので、将来的に、国内市場に大きな期待を掛けることはできないと思われます。

これからは、国内だけでなく、海外に目を向けて、広大な海外市場を新たなターゲットとして、輸出していく必要があると考えています。

ところが、周囲を見ると、幾人かの人は、輸出してみたものの、商品代金の回収に失敗して、苦労しているようです。貿易は、今まで一度も経験がないので、一から学びながら、慎重にやっていきたいと考えています。とりあえず、何から手をつければ良いのでしょうか?

(2)ヒント

海外との取引も、国内取引と同じだと考えて、自己流で始めてしまって、いきなり失敗する人が多い中で、貿易の経験がないので、何から手をつければ良いのかということに、気づかれたことは、たいしたものです。

まさに、「知之為知之、不知為不知。是知也」(之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らざると為す。是れ知るなり~論語~)です。「知る」ための第一歩は、輸出には「輸出の手順」があることを知ることです。参考までに、『海外展開の基本』に掲載している、「輸出の手順」の一覧表を、次に掲げておきます。

(輸出の手順)

*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第3章輸出の手順」(POD版P273308)(3)回答例基本的な輸出の手順は、輸出の目的を確認し、その能力の有無を、人材、資金、モノ(サービス)、海外情報の四つの側面から点検します。

海外情報は、支援機関を利用することで問題ありませんが、人材、資金、モノ(サービス)の能力については、自社でしっかりと確認しなければなりません。通常、貿易未経験の企業に共通して足りない能力は、「人材」です。貿易するには、貿易の知識と能力のある「貿易要員」が不可欠です。

貿易要員を自社で養成するか、外部から専門家を採用するか、あるいは商社を起用する方法もあります。これが第一段階の「準備フェーズ」です。

次に、第二段階の「輸出事業計画フェーズ」に進みます。ここでは、「輸出事業計画」を策定しますが、考慮しなければならない要素として、「輸出規制と相手国(地域)の輸入規制の確認」、「カントリーリスクの確認」および「市場性の確認」(売れるマーケットの有無・大小)があり、これらの要素を考慮して、輸出ターゲット国(地域)を絞り込みます。

そして、「直接貿易」でいくか、「間接貿易」でいくか、取引候補は、輸入卸売業者と想定するか、スーパーなどの小売業者とするか、あるいはピンポイントで、特定のユーザーを狙うかといった、「ビジネスストラクチャー」を考えます。そのうえで、「輸出事業計画」を作って社内の承認を取得します。

次の第三段階は、承認された事業計画を実施していく「計画実施フェーズ」です。

直接貿易であれば「貿易要員」を置き、「海外マーケティングの準備」をしたうえで、「知財対策」を実施し、そして「取引先候補発掘」のために、展示会に参加したり、商談会に参加したりします。

多くの企業は、「手順」を踏まないで行動を起こすことが多いので、第一段階も、第二段階も、第三段階の貿易要員も置かず、海外マーケティングの準備もしないで、いきなり展示会に参加したり、商談会に参加したりしています。これでは、無謀過ぎます。

成果が期待できないばかりか、企業が無自覚のうちに、自社をリスクに晒してしまって、危険な目に遭いかねません。

取引先候補が見つかれば、信用度を判断しながら、商談を行い、首尾よく事が運べば、契約に至ることができます。

契約ができれば、「第四段階」の「契約履行フェーズ」に移って、代金を確保し、保険を付保し、輸送を手配して、貨物を搬出し、輸出通関を経て船積みとなり、代金決済が完了します。

この「契約履行フェーズ」では、それぞれ銀行、保険会社、フォワーダー(乙仲)などの専門業者に依頼します。「第四段階」の「契約履行フェーズ」で必要な貿易知識が、「契約してからの貿易実務」です。

この部分は、それぞれ専門の業者が控えていますから、ハードルはそう高くはありません。問題は、「第一段階」から「第三段階」に至るまでの「契約までの貿易実務」です。「契約までの貿易実務」を売物としているのが、商社なのです。ですから、商社がやっている仕事を覚えなければ、「直接貿易」はできません。

「契約までの貿易実務」について、詳しく解説したのが、『営業マンのための貿易実務』(アマゾンで販売)なのです。

このように、輸出することを考えたら、真っ先にやることは、「輸出の手順」に沿って準備をし、行動を起こしていくことです。詳しくは、『海外展開の基本』で解説しています。

4.輸入は簡単だと聞いたのですが

(1)問題

海外から輸入している人の話を聞いたら、「輸入するのは簡単だ」とのことでした。輸入は、誰にでもできるのでしょうか?

(2)ヒント

輸入の場合でも、「輸入の手順」があって、その順番を踏みながら取り進める必要があります。「輸出の手順」と、骨子の部分では、基本的に変わるところはありませんが、輸出では、自社をリスクに晒さないようにしながら、代金を確保することに腐心しますが、輸入では腐心するポイントが、輸出とは異なります。

この点も含めて、「(3)回答例」で解説します。ここでは参考までに、「輸入の手順」の一覧表を掲げておきます。

基本的な枠組みは、輸出も輸入も同じですが、「輸入の手順」が、輸出と大きく異なっているのは、どの部分でしょうか?

(輸入の手順)

第一段階準備フェーズ目的の確認(自社戦略達成のための戦術として“輸入”を実現する)能力の点検(輸入能力で補強すべき弱点の有無を点検)人材資金モノ・サービス海外情報

*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第4章輸入の手順」(POD版P309319)(3)回答例

輸入でも、主として、海外側と商談する場面で、「貿易の商慣習」、「インコタームズ」、「決済方法」、「物流リスクのヘッジ方法」や「契約書の基礎知識」など、ある程度の貿易知識と能力を持つ「貿易要員」が必要です。

しかし、輸入手続きの点では、インボイスやB/Lを含む船積書類は売主が手配したり作成したりして、買主側が作成する書類は、基本的にありませんし、輸入通関手続きは、フォワーダー(乙仲)にお願いすれば、ほとんど全部やってくれます。

ですから、輸入通関手続きの点で言えば、一般的に、「輸入は誰にでもできる」と言っても、間違いではありません。

ただ、輸入では、特に、新興国から輸入する場合は、品質と納期の管理をどうするかという、輸出では余り心配する必要のない問題があります。

これは、品質と納期の管理ができる仕組みを、買主側がしっかりと作って実施することによって、クリアすることができます。敷衍すれば、この能力の有無が、輸入業者としての能力の有無だと言っても過言ではありません。

品質と納期の管理は、サプライヤーである海外の輸出業者の責任であるはずなのに、なぜ輸入業者である買主が行う必要があるのかと、異論が出るかも知れません。それはそれでロジカルには、まったくの「正論」です。

しかし、その「正論」を押し通したところで、品質不良のものが着いたり、納期が遅れたりすれば、苦境に陥るのは、買主側です。

売主側にクレームして損害賠償請求をしても、相手がそれに応じてくれるかどうかは、保証の限りではありません。「正論」で、品質不良や納期遅れの問題が、解決するわけではありません。

これに加え、輸入業者は、日本の製造責任を定めた国内法令上、国内製造品における製造業者と同じ立場に置かれます。つまり、輸入業者は、輸入品に対して品質面で責任ある存在です。

「弊社は単なる輸入業者であって、品質責任は海外の製造企業にあって、弊社にはない」などという弁明は、道義的にはもちろんのこと、法的にも成立しないのです。

輸入業者は、法的にも品質責任を負う立場ですから、海外での品質管理は、責任を持ってしっかりと行わなければなりませんし、また、それが輸入商社としての能力なのです。

5.輸出するのは簡単だと聞いたのですが

(1)問題

「乙仲という業者がいて、そうした人達に頼めば、海外にモノを運んでくれるので、輸出するのは簡単なことだ」と言う人がいます。確かに、モノを海外に運ぶのは、簡単そうです。でも、輸出は、本当にそんなに簡単にできるのでしょうか?

(2)ヒント

一つ目の要素は、輸出で言えば、モノを日本のどこから、海外のどこまで輸送するかで、これが「物流」です。

二つ目の要素は、カネの流れで、輸出なら、日本の売主が、海外の買主から、モノの代金を受領します。これは「金流」です。

三つ目は、「商流」で、日本のどの会社が海外の誰と商取引をするかというビジネスの流れです。

貿易だけに限らず、商売は、商流が基本にあって、それに物流と金流が付随します。付随すると言っても、商流だけでは、ビジネスは成立しませんし、商流が伴わない物流も、商流が伴わない金流もありません。

これら三者は、相互に密接な関連を持ちながら、ビジネスは遂行されますが、中核となるのは、商流です。商流あっての、物流と金流です。

*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章貿易実務とは」(POD版P238272)(3)回答例「問題」の「乙仲という業者に頼めば、海外にモノを運んでくれる」のは、そのとおりです。

実際に、フォワーダー(乙仲)に依頼すれば、フォワーダーが、海外へのモノの輸送を手配してくれますから、簡単と言えば簡単です。

しかし、モノを海外に運ぶ前に、商流(誰が誰にどのように売り)を確定し、金流(代金支払いの方法)も確定させなければなりません。

「モノを海外に運ぶ」ことは、専門の業者に依頼すればできますが、貿易の最大のポイントは、「如何にしてリスクを最小限にして取引を行うか」で、貿易では、この基本をしっかりと学んでおかないと、確実に失敗します。

輸出の難しい点は、貿易の各段階に潜むリスクに、自社を晒すことのないように、商談を行い、契約し、そして如何にして安全に輸出して、代金を確保するかにあります。

そのためには、それなりの専門知識と経験が必要です。

6.直接貿易と間接貿易

(1)問題

海外に自社製品を輸出したいと考えています。貿易実務は難しそうなので、直接貿易は無理だと考えています。商社にお願いして間接貿易で臨むつもりです。

たまたま、支援機関の方から、「海外バイヤーとの商談会があるので、参加しませんか?」という誘いがあったので、積極的に参加してみようと思います。

心当たりの商社にお話したら、「海外と契約できたら、海外にモノを運ぶのはやりますから」と言われたので、安心です。さて、このやり方で問題ないのでしょうか?

(2)ヒント

海外バイヤーが商談に出てくる目的は、何なのでしょうか?それは、間違いなく「売れそうなものがあれば、契約して買う」ことが目的です。

また、日本側の企業が、海外バイヤーとの商談会に参加する目的は、何なのでしょうか?商品に対する評価を聞きたいとか、海外に売れそうかどうか、感触を知りたいということはあるかも知れませんが、やはり「海外バイヤーに売り込んで、契約してもらう」ことが、目的としてあるはずです。

このような意図を持った両者は、商談会で商談を行えるのでしょうか?また、間接貿易における「商社が果たすべき役割」とは、何なのでしょうか?端的に言えば、「モノを海外に運ぶ」のが、商社の仕事なのでしょうか?*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第一章貿易の形態」(POD版P221229)(3)回答例 この企業は、「貿易実務は難しそう」だから、「直接貿易は無理」、「間接貿易で臨む」と言いながら、実は、直接貿易の方法で、マーケティングしようとしています。

商社を起用して、間接貿易の方法で輸出するのであれば、商談会に参加して海外バイヤーと、商談するのは、商社の仕事です。

当該商社は、「海外と契約できたら、海外にモノを運ぶのはやりますから」と言っているとのことですが、「海外にモノを運ぶ」のは、フォワーダー(乙仲)に頼めば、手配してくれます。

商社というのは、「海外で買ってくれそうな候補先を発掘し、商談をして、契約に持ち込み、海外側との契約を履行する」のが仕事です。「海外にモノを運ぶ」だけの商社など要りません。直接、フォワーダーに頼めばやってくれます。

もちろん、この企業が、商社をサポートするために、商談会に同席することは、問題ありませんし、時によっては、それは必要なことでしょう。

しかし、商社抜きで、商談会に参加するのは、基本的に「間接貿易と直接貿易のやり方」を混同しています。

海外バイヤーによっては、日本の流通事情に精通していて、日本に買い付けのための子会社を持っていたり、あるいはモノを集荷する機能を持つ日本のフォワーダー(乙仲)を指定していたりして、貿易の専門的な実務知識がなくても、国内取引と同じ感覚で商談できる相手も、いないではありません。しかし、そうした海外バイヤーは、そう多くありません。

貿易では、値段はインコタームズの定型取引条件を使って決めますが、間接貿易で輸出するからということで、最低限の貿易知識さえないまま、海外バイヤーと商談して、どうやって値段を決められるのでしょうか?商談会に商社抜きで参加したところで、成果が得られないのは、自明の理です。

知ってのとおり、貿易の形態には、直接貿易と間接貿易の二つの方法があり、直接貿易では、自社が、海外側との折衝の最前線に立ちますから、貿易実務の知識は、必須事項です。

間接貿易では、必ずしも貿易知識は必要ありませんが、海外側との折衝の最前線に立つのは商社です。商社を起用する企業は、商社の仕事を背後から支援する立場です。

こうした「直接貿易と間接貿易の違い」を明確に区別できず、両者を混同しているために、空回りばかりしていて、成果を出せないでいる事業者が、実は少なくないのです。直接貿易、間接貿易の相違は、貿易の最も基本的なことです。注意しましょう。

7.ECommerceへの対応

(1)問題

EC(ElectronicCommerce:ECommerce:電子商取引)のサイトを運営している業者から、サイトに商品を掲載すれば、世界を対象に販売できるようになるので、一度載せてみてはどうか、というアプローチがありました。毎月一定額の料金が掛かるようですが、ECを利用したビジネスで、注意すべき点はありますか?

(2)ヒント

まず、ECサイトには、一般の個人を販売ターゲットとして想定している「BtoC」サイトと、特定の業者を販売ターゲットとしている「BtoB」サイトの二種類があります。当該ECサイトが、そのどちらを販売対象としているか、貴社の狙いと合致するかどうかを確認します。

「BtoC」サイトであっても、「BtoB」サイトであっても、取引する際、考えるべき、最重要ポイントは、「自社をリスクに晒さないで取引するには、どうすべきか?」です。

*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第一章貿易の形態」-「11.越境EC」(POD版P233234)(3)回答例「BtoC」サイトの場合は、個人が販売対象ですから、先に代金を振り込みか、カード(クレディットカードまたはデイビッドカード)などで払ってもらい、入金を確認してから、商品を発送することで、代金回収のリスクを負わないで済みます。

運営業者が「BtoC」サイトと謳っていても、専門の業者から、引き合いがきて、結果として「BtoB」の取引に発展することもあります。その場合には、次に説明する「BtoB」の取引方法で行うようにしましょう。

「BtoB」サイトの場合、相手が業者で、取引数量も取引金額も大きくなりますので、必ずしも、全額前払いで取引できるとは限りません。

「BtoB」のEC取引に対する考え方として、「ECサイトは、単にウェブ上の常設展示会に過ぎない」ことを認識しておきましょう。

つまり、ウェブ上の常設展示会が縁で、引き合いがくる点だけが、通常の貿易と異なっているだけで、引き合いがきて以降は、通常の貿易と同じく、商談を行い、契約が成立すれば、契約書を交わし、契約を履行していきます。つまり、引き合いがきてからの商談以降の部分は、通常の貿易とまったく同じことになります。

やはり「貿易実務」の知識、特に、貿易のさまざまなリスクをヘッジしたり、回避したりして取り進める、営業マンのための「貿易実務」は、必要不可欠です。

ECビジネスだからと言って、貿易実務の知識がなくても、取引できるのではありません。この点は、ご注意ください。

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