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税務署に対する定石

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定石39:自分だけがわかって、税務署をごまかす方法は絶対にない 結局は自分も分からなくなる

一般的に税務署が税務調査に来るのを好む経営者はいない。どちらかというと、敵というか、憎らしいところだという感情を持っておられるのではないか。その感情の元をたどれば、いかにして税金を安くするか、あるいは税金をごまかすかというような心理によるものだと思う。

しかし、結論から申し上げると、税務署がわからなくて自分だけがわかるごまかし方などない、ということである。というのも、税務署を編すためには、まず記帳からごまかしていかなければならないからだ。

いろいろな経費を分けてみたり、あるいは勘定科目を変えてみたり、取引先を変えてみたり、いろんなことをしながら、やはり記帳そのものをごまかさないことには、税務署はごまかされない。

だが、そうやって記帳をごまかすと、後々自分自身がその帳面を見たときに、「一体これはどういう費用だったんだろう」「どういう利益だったんだろう」と、結局は自分もわからなくなる。

本書冒頭から繰り返し述べているとおり、会社の状態を正確に把握して、その上で悪いところを直し、良いところを伸ばしていく。これが企業経営の定石である。すなわち、社長は会社の実態をよく理解しないことには話にならないということだ。

よって、少しでも利益を増やすために税務署をごまかそうとして、会社の実態をわからなくすることは本末転倒、結局は企業経営そのものを間違うような結果になりかねないということを、まずは税務署に対する大切な定石として挙げておきたいのだ。

定石40:適正な記帳をすれば、相当額の引当、評価減、あるいは経費算入が認められ、節税となる

税務署をごまかそうとすることは得策ではない、そういう発想は捨てるべきだと申し上げたが、むしろ、正しい記帳を積極的に行うことによって節税していくことが、対税務署上の定石である。

たとえば、中小企業は毎月毎月きちんとカウントして、在庫帳をつけている会社が少ない。大方の会社は期末にいきなり評価する。そんなやり方でも、税務調査で引っかかることはないだろうから、うまくごまかしたように錯覚することがないだろうか。

しかし、それよりも毎月毎月しっかりと在庫帳をつけたほうがよい。そして、もしも決算期間中に、 一個も動かない商品があれば、売却損なり除却損なり、評価減を堂々と立てればよいのだ。

当然、きちんと在庫帳をつけて、1年間その商品は動かなかったことを客観的に証明できれば、たとえ何千万円の在庫であろうと、税務署は1円評価にしても完全に認めてくれる。そして幸いにも、来年その品物が出たときに、そこで初めて、売却益を出せばいいのである。

あるいは今期の仕事には関係のない、2年先、3年先のいろいろな準備のために使ういわば先行投資についても、きちんとこれを記帳して経費として落とせば、税務署はきちんと経費算入を認めてくれる。

要するに、在庫なり先行投資なりを積極的に正しく計上することで、編すとかごまかすというのではなく、様々な損金算入が認められ、合法的かつ前向きな節税が可能ということである。

定石41:税務署は税金をとるだけのところではない 経費の半分を負担してくれるところである

税務署は税金をもっていくところだけではなく、むしろ経費の半分を負担してくれるということがわかると、積極的な経費計上による前向きな節税に力を入れられるのではないか。すなわち、自社の経費の半分を税務署が負担してくれるということを皆さんに知っておいていただきたいのだ。

そこで、第48表を使ってこれを説明する。ケースーとケース2という、2つのP/Lがある。両者の違いを説明すると、ケースーは通常の決算をした場合、そしてケース2はケースーに比べて営業経費が9,500万円増えた場合のP/Lだ。

ケース2は、将来の新規の事業展開に向けて、増員して調査チームをつくっている。さらに、外部のコンサルタントも使い、様々な指導も行った。よって、人件費がケースーに比べて4,500万円多く、 一般経費も5,000万円多い。つまり、ケース2は人件費と一般経費を合わせた営業経費9,500万円がケースーより多いというわけだ。

ところが、当期純利益の差異にご注目いただきたい。営業経費が9,500万円多いにも関わらず、当期純利益は5,200万円しか減少していない。つまり、残りの経費4,300万円は税務署が負担してくれたようなもの、ということである。

ケース(1)は税引前営業利益が2億7,000万円だから、約10%の2,700万円が事業税引当となるが、ケース(2)は営業経費が増加している分、税引前営業利益は1億7,500万円とケース(1)より9,500万円少ないから、事業税引当が1,800万円と、900万円分ケース(1)より徴収額が少ない。さらに、法人税充当金についても、ケース(1)は8,600万円だが、税引前利益の少ないケース(2)は5,200万円である。

要するに、事業税引当と法人税充当金の合計差異4,300万円分の経費を、税務署がもってくれたのと同じと言ってもよい。もちろん、経費を税務署が払ってくれたわけではないが、経費を増やせば税金が安くなるということは、安くなる分だけ税務署が経費を持ってくれたことと、何ら変わりはない。

こういう発想をもって税務署にあたると、正しい記帳をすることの方がむしろ節税になり、よって、正しく記帳して積極的に損金を算入してもらおうという考えに至るだろう。企業の繁栄を長い目で見れば、このような前向きな姿勢で税務署を捉えることが、やはり重要な定石となるのだ。

定石42:無駄な予定納税は避けるため、中間決算を行う習慣をつけろ

無駄な税金を払わないで済むように中間決算をすること、これも一つ、税務署に対する定石である。

というのも、会社の税金の納付というのは、原則的に年2回、期の途中でその期の税金の一部を前払いして、決算が決まってから確定納税として予定納税額との差額を支払う。期の途中とは、正確には期のちょうど中間時点から2カ月以内、たとえば3月決算の会社ならば、9月末から2カ月以内つまり11月末までに、税金の一部を前払いするということだ。これを中間申告という。

ところで、この中間申告で納める税金の決め方は2通りあり、多くの企業は前年度実績に応じてその半額を予定納税する。 一方、期の中間で仮決算を行い、そこで計算した税金を納める方法がある。この方法は、本決算と同様の作業を行うため事務負担が増えてしまうのだが、たとえば当期が前期と比べて大幅に業績がダウンしそうな場合は、多額の税金をいっペんに納めなくて済む、あるいは税金を繰り延べすることができるので、資金繰りの面で非常に有利な点があるということを知っておいていただきたいのだ。そこで、税金の支払い計算について、第49表A社を例に説明したい。

まず課税利益を算出する。ここで一つ、税金計算のルールを述べておくと、前期の事業税で、今年払った分だけは損金として認められるが、今年計算された事業税は損金不算入というのが、税金の仕組みであるという点だ。

税金は当期の税引前利益に直接かかるわけではない。事業税は経費として認められ、法人税は認められない。ただし、当期の経費として認められるのは、当期の事業税ではなく前期の事業税である。

税務署は当期の税引前利益のうち、当期に立てた事業税引当金は経費として認めてくれない。つまり、当期の事業税引当金は課税の対象になるので、課税利益に含まれる。課税利益に含まれるのだから、これは税引前利益に加算して考えなければならない。

一方、前期事業税は当期の経費として認められるから、これを当期税引前利益から差し引く必要がある。したがって、当期の課税利益は、当期税引前利益に当期事業税引当を足し、そこから前期事業税引当を引いた金額ということになる。

以上のような複雑な方式で税金を計算するから、実際に税金支払いでキャッシュがどれだけ出ていくかということは、 一般的なP/Lだけ見ていても全く理解できないのだが、とにかく、第49表が「税金引当計算」と「支払額」の2部構成になっている理由は、こういう理由からである。さて、以上のルールを頭に入れて、さっそくA社の直前3期の税金支払いを計算してみる。

直前3期の課税利益は、税引前利益7,300万円に当期事業税引当800万円を足して、直前4期の事業税引当600万円を引いて、7,500万円と求められる。実際には、交際費の限度額超過分なども課税対象になるといった細かい決まりはあるのだが、ここでは割愛する。とりあえず皆さんは、当期の事業税を足して、前期の事業税で今期払ったものを引いたのが、当期の課税利益だと理解してもらえばよい。

さて、課税利益が出たら、事業税と法人税他(法人所得税・県民税・市民税)の納税額を算出する。ちなみに、税率については、事業税が10%、法人税他(法人所得税・県民税・市民税)を40%とする。厳密にいえば、事業税も地方税も地域によって異なるし、法人税も資本金の大小でいろいろルールが変わってくるが、だいたい資本金5,000万円くらいの中小企業であれば、事業税が課税所得に対して10%、法人税他が40%くらいになる。

本当のことを言えば、むしろ若干多めに見積もってはいるが、経営の定石から言えば、経費など資金の支出は多めに見積もっておいて、結果として余りがでれば儲けもの、悪く見積もって良い方に振れたらラッキーという考えをしていただきたいので、事業税は10%、法人税等は40%というルールで計算する(例外として、建設関連会社の場合は、損金不算入の経費が多額になる場合もある。その場合は経理に確認して、より正確な税率で計算されることをお勧めする)。

さて、A社は課税利益が7,500万円だから、事業税は7,500万円×0。1=750万円の10万円以下四捨五入で800万円。法人税他は7,500万円×0・4=3,000万円だ。

この合計額3,800万円が、直前3期のA社の税金であるが、これを単純にその期に支払わないのが、税金支払いの複雑なところだ。たとえば大半の会社は、毎期だいたい同額、あるいは当期を上回る利益が来期は出るだろうという前提で、前年の税金額の半額を当期の予定納税として支払う。

A社の場合で説明すると、先ほどの計算で直前3期の税金は3,800万円と計算したが、実際に予定納税として納めるのは、直前4期の税金2,800万円の半額1,400万円である。(表中D)

そして、直前3期の上期に、直前4期の確定納税として、直前4期の2,800万円から直前5期の予定納税として支払われた800万円(表中B)を差し引いた2,000万円を支払うのだ。(表中C=AIB)

すなわち、直前3期の税金支払額は、確定納税の2,000万円と予定納税の1,400万円の合計3,400万円(表中C十D)である。

少々複雑な納税方法なので、もう一度説明する。続いて、直前2期の税金計算は、税引前利益8,800万円万+当期事業税引当900万円―前期事業税引当800万円=課税利益8,900万円だ。

よって、事業税は8,900万円×0・1=890万円の10万円以下四捨五入で900万円。法人税他は8,900万円×0。4=3,560百万円の10万円以下四捨五入で3,600万円だ。この合計額4,500万円が直前2期の税金で、実際の税金の支払いは、直前3期の税金3,800万円の半額1,900万円を直前2期の下期に予定納税として支払い、直前3期の税金3,800万円から、すでに予定納税として直前3期に納めている1,400万円(直前4期の税金2,800万円の半額)を引いた2,400万円を確定納税として支払う。

よって、A社の直前2期の税金支払額は、確定納税の2,400万円と予定納税の1,900万円の合計4,300万円となる。これが企業の税金支払いの方法で、中間申告については大半の企業が前年実績の半額を予定納税している。ところが利益が減った場合は、この方法では必要以上に多く納税してしまうため、資金繰りの面から考えて不利益を被るのだ。

たとえば、直前期のA社は、前年に比べて税引前利益が減ってしまった。ところが前年実績に従って安易に予定納税をすると、この期も4,500万円の税金の半額2,300万円を中間期に支払わねばならない。予定納税として払う2,300万円は、この期も前年と同じ規模の利益が出ることを前提として支払うから、利益が前年よりも減る場合には、不要に多く納税してしまうことになるのだ。

しかし、もしもA社がきちんと中間決算をして、どうやら税引前利益が前年を下回って7,000万円になりそうだと税務署に申告すれば、何も2,300万円も予定納税せずとも、仮決算をした半期の課税利益分を納税し、残りを翌年に確定納税すればいい。

たとえば、A社の中間決算で、半期の税引前利益をもとに課税利益を計算して、仮に3,500万円だったならば、事業税は3,500万円×0・1=350万円の10万円以下四捨五入で400万円。法人税他は3,500万円×0・4=1,400万円で、合計1,800万円を予定納税すればよいのだ。

期の中間に仮決算をして税務署に申告するのは、何もややこしい書類を何枚も出すわけではない。非常に簡単な、いわゆる税務申告書一つで、不要に多く納税するはずだった500万円分がまるまる資金繰りの助けとなるのだ。

よって、必ず中間決算をやってみる。そして、昨年よりも利益が出る目処がついた場合は、そのまま前年の半分を納めればいいのだ。しかし、前年ほどの利益が出ないとわかったら、その仮決算に基づいて税金を中間申告し、見通しの半分の税金だけを納めれば済む。

要するに、常に中間決算を行い、税金をどちらの方法で納めるか判断するということが、無駄な予定納税をすることなく、会社の資金繰りを優位にする大事な定石というわけだ。

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