「おたくの会社は、社員の待遇もいいし素晴らしい経営をされている」と言われて、腹を
立てる社長はいない。
大昔ならいざ知らず、今の時代に、社員を安月給でこき使って、利益が増えたと喜ぶ社長
は、ほとんどいないはずだ。社員の待遇を今よりもっと良くしてやりたいと、よほどのヘソ
曲がりな社長でない限り、だれもが思っている。
ところが現実には、「思うような利益が上がらないから、社員には申し訳ないが、ほどほ
どの給料で我慢してもらっている。まあ貧乏会社にはロクな社員しか集まりませんがね」な
どと嘆かれる社長も少なくない。しかしこれは逆にいえば、自分は一人前の経営者なんだが、
社員が半人前だから利益が上がらない、だから冷遇もやむをえない、という言い訳である。
これでは社長としての、社員への役割意識はゼロであって、社員どころか外部の人にまで
バカにされても仕方ない。本書のはじめに、社員から尊敬されない社長ほど惨めな存在はな
い、と申しあげたが、お気の毒に、とうなずくしかないのだ。
社長は、社員の生活向上について、責任をもたなければならない。
こう申しあげると、「社員の生活向上について責任をもたない経営者など、今時いませんよ」
と多くの経営者から反論がでてきそうだ。実際あるセミナーで、結構な年配の方から次のよ
うな抗議が寄せられた。
「十分な給料を払ってやりたいのは山々だが、出したくても出せないから、ここにきて勉
強している。社員には、儲かったらうんと上げてやるからな、悪いようにはしないからな、
と常々言い聞かせています。責任逃れはしていない。それもこれも一緒に、無能経営者呼ば
わりしないでほしい」と。
伺ってみると、事業を続けて三〇年以上のベテラン社長であった。創業間もなくのころな
らともかく、二〇年間も「悪いようにしない」と言い続けて、「良くなっていない」とすれ
ば、いくら責任逃れをしていないと言ってもだめである。社長として社員に対する役割を果
たしていない、と言わぎるをえない。単に情緒的に「悪いようにしない」と言っているだけ
で、具体的に良くしなければ、社長の役割を果たせないのである。
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