MENU

社長の限界は会社の限界

 当時、私は社長であると同時に、営業担当であり、企画担当でもあった。また、現場監督でもあったし、経理の責任者でもあった。さらには、クレーム対応も、アフターフォローも、すべて社長である私自身が行っていた。  営業用の見積もりを作るのも私の仕事だったし、設計の仕様書も作らなくてはいけなかった。現場の細かな確認事項もあるし、資金繰りを考える必要もあった。一日じゅう、判断すべきことだらけの状態だったわけだ。一時期は、一年 365日、休みなくほとんど寝ないで働いていたが、それでもなかなか仕事が進んでいかない。  私は、建築の現場に足を運ぶことを特に大事にしていた。というのも、現場に行って自分の目で見ることが良い判断につながる、と考えていたからだ。  建築関係の職人というのは、大体、朝の 8時頃には現場に入る。そこで私は、朝 5時に起床して 7時には現場入りし、掃除をしてから職人たちが来るのを出迎える、ということを日課にしていた。  誰よりも早く現場に入り、現状を把握しておく。例えば足場や防護ネット、ヘルメットなどの装備がしっかりしているか、といった安全管理のチェック、作業の抜け漏れはないか、養生や近隣対策に問題はないか……などなど。  また、前日の作業が夜まで長引いたときなどは、暗くなってからの作業となっているため、どうしても粗が出てしまう場合がある。そういった点の確認や、時にはフォローしておくこともあった。  さらに言えば、床の踏み込みや水平、ドアを開閉しておかしな音がしないか、蛇口をひねってみて違和感がないか、といった品質面についても、五感を使って丁寧に確認することを心がけていた。こうした細かい点が、納品物のクオリティと顧客の満足につながるからだ。  現場に行くことで、初めて見えてくるものがある。と同時に、トラブルを回避できたり、チャンスがつかめたりすることもある。だから、自分の目で見ることが何よりも重要だった。  しかし、現場はいくつもあるのに対して、私の体はひとつしかない。この頃から私は、「自分があと 3人いたらいいのに」と思うようになった。言い換えれば、私は、自分ひとりですべてを判断することに限界を感じるようになっていた。  自分自身が、会社の成長のボトルネックになっているのではないか。社長である自分の判断の質と量が上がらなければ、会社はこれ以上発展できない……そのことに気づいたのだ。  そこでようやく、私は「判断を誰かに委任する」ことを始めた。  すべての判断や管理を自分自身で行おうとすると、時間が足りず、ビジネスが拡大せずに、会社が停滞してしまう。時間的にも、物理的にも、社長の能力の限界が会社の限界になってしまうのだ。  私は、自分自身の経験から身をもって、それを痛感した。社長の限界を超えるには、社長の仕事の一部を他の人に任せることが必要だ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次