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社長のお金の基本・ Ⅱお金の集め方

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、無借金経営は理想の経営だとかん違いしていない。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、クラウドファンディングなど、マネー新時代について積極的に勉強している。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、メインバンクは大手銀行のほうがイメージがいい、という思い込みをもっていない。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、地元の金融機関と積極的につき合い、そのメリットをフルに生かしている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、 3行以上の金融機関を、競わせながらつき合っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、複数の金融機関とつき合う場合のタブーを知っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、借入銀行で手形を振り出す危険を知っており、入金口座も借入銀行とは別の銀行にしている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、銀行のほうから営業にくる、そんなテクニックを知っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、会社のミッションが明確で、明るい将来像を描いている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、銀行から何かいわれた場合は理由を尋ね、じっくり考えてから行動に移している。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、支払いの優先順位は得意先・税金、それから銀行への返済だと心得ている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、信用保証協会付融資をプロパー融資に転換させている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、リスケはいわばカンフル剤。

慎重なうえにも慎重に取り組む。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、戦略的にリスケをする3つのポイントを知っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、プロラタ方式で返済を行うとき、おたがいが本当に納得できる配分を考えている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、手形貸付、当座貸越など、返済負担の軽い資金をうまく活用している。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、中小企業再生支援協議会での再生の現実を知り、うまく利用する知恵をもっている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、日頃から、最悪を想定して最善の策を講じる習慣をつけ、即、行動している。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、無借金経営は理想の経営だとかん違いしていない。

相談者のなかには、「うちの経営はきわめて順調で、銀行(金融機関)からの借入は 1銭もありません」と誇らしげにいう方がよくいます。

「それなら、なぜ、相談に見えたのですか?」と皮肉をいいたくなりますが、実際は、私はひそかに「今日、相談にきてよかったですね」と胸をなでおろしています。

「銀行から 1円も借りていない」ということは、この会社は銀行との関係がないということです。

これまで、それでやってこられたのはただ運がよかっただけ。

事業をしていれば、取引先が倒産することもあれば、地震や大型台風などの自然災害に見舞われることもあり、まったく予想していなかった被害、経営のミスでもなんでもない、でも、どうしようもない損害を出すことだってあり得ます。

災害のときならば、保険金や公的な措置で、事業の立て直しは図れるかもしれません。

しかし、つなぎ資金はどうするのでしょうか? もっとリスキーなのは、取引先の倒産のあおりで、こちらまで資金繰りに窮する事態に陥ることです。

大きな企業が倒産するとその余波に巻き込まれ、最悪の場合には連鎖倒産に追い込まれる中小企業がどれほどたくさんあるか、想像してみてください。

こういうとき、それまでつき合いのある銀行ならば緊急融資を考えてくれるはずです。

無借金経営は、そうしたときに頼れる銀行をもっていないということに他なりません。

だから、「無借金経営ほど危ない」のだという現実に気づかなければいけないのです。

❖銀行は見ず知らずの会社にお金は貸さない ここまでお話ししても、まだ、「うちの経営状態は上々だから、いつでも銀行はお金を貸してくれるはずだ」と思い込んでいる経営者もたくさんいます。

経営者であり、社長と名乗っていながら、銀行がどういうところなのか、まったく理解していないのです。

銀行が重視するのは、それまでの融資実績、というよりも、貸したお金をきちんと返してきたかどうか。

つまり返済実績です。

百歩譲って、きわめて経営状態が良好で、銀行から見ても新規の取引先として積極的に融資したいような企業だとしましょう。

それでも、新規の融資を検討するにはそれなりの資料を用意してくださいといいます。

最低でも 3期分の決算書、ほかにもいろんな資料を要求するはずです。

社長個人についてもカードの事故歴や税金を滞納しているなどがあれば融資はアウトです。

緊急にお金が必要なときにそれらを調べて結論が出るのを待っている時間の余裕はないでしょう。

そのときになってあわてても手遅れです。

❖好調なときこそ、積極的に融資を受けて事業拡大を目指す 経営状態が絶好調なら、こうしたときこそ、融資を受けるビッグチャンスだと考えるべきです。

日本人はなぜか、融資を受ける、借金をすることをネガティブにとらえがちです。

一方、海外では、融資を受けることは、それだけビジネスが評価されたのだとか、自分を信用してもらえた結果だと、大いにポジティブに受け止めます。

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは PCの開発に天才的な才能をもつと同時に、借金することにも素晴らしい手腕をもっていたと伝えられています。

経営が順調なときならば、初めて融資を申し込んでも、かなりの確率で「 OK」となり、融資を受けられるはずです。

その融資を約束どおり、きっちり返済して銀行と良好な関係を構築しておくべきです。

前書でも申し上げましたが、あらためて、無借金ではなく、良質な借金経営こそ、中小企業が目指すべき経営のあり方なのだということを肝に銘じてください。

▼「無借金経営」よりも、銀行から適正規模の融資を受けて取引実績をつくり、いざというとき、すぐに融資してもらえる態勢を整えることのほうが重要。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、クラウドファンディングなど、マネー新時代について積極的に勉強している。

最近では銀行から借入をしないで、資金調達方法をする方法も出てきています。

クラウドファンディングはその1つでしょう。

クラウドファンディングとは、ある目的のためにネットなどでビジネス構想を発表して訴えかけ、多くの人々から資金を集めることをいいます。

クラウド( crowd)とは大衆という意味。

ファンディング( funding)は財政的に支援することを意味し、多くの場合、インターネットから呼びかけ、不特定多数の人々から比較的少額の資金を募り、それをもとに創業したり、事業展開したりするという仕組みです。

クラウドファンディングには、出資者が見返りを求めず、資金提供を受けた側はプロジェクトの進行状況や活動報告を行うだけという「出資型」、プロジェクトが完成したら製品やサービスを優先的に手に入れられる「購入型」、製品やサービスが完成し、得た利益から応分の配当を受ける「投資型」などの種類があります。

アメリカではすでにかなり一般化しつつある資金調達法になっています。

日本でも今後、盛んになる可能性は小さくないでしょう。

❖金融機関と肩を並べるまでにはまだ時間がかかる キャッシュレス化が急テンポで進むなど、お金の世界にも新たな動きが現れ、加速しています。

クラウドファンディングも今後はもっと大きな存在になっていくでしょう。

しかし、現段階ではクラウドファンディングに頼るだけでは、健全な経営はできにくいのが実情だと思います。

私のところにも、こうした方法でお金を集めて起業した経営者が相談にこられるケースが出てきています。

話を聞くと、事業の推移を見守るとか、結果が出るまでの時間を十分に見る姿勢がなく、とにかく、早く結果を出せといってきたり、事業についても、アレコレ勝手な口出しをされたりするというような悩みがほとんどです。

個人の投資家が起業を助ける「エンジェル」にも同様の傾向が見られます。

少し前の話ですが、エンジェル投資家の支援を受けてエキナカに特化したフラワービジネスを起業したある社長がいました。

この社長の場合は、事業は順調に推移していったのですが、ここが勝負時だというところにやってきたちょうどそのタイミングに「 1日も早く上場して、提供した資金を大きくふくらませてくれ」と矢のように催促されてしまったのです。

仕方なく、準備不足のままマザーズ市場に上場を試みたのですが、無理がこうじて、ついには倒産してしまいました。

やがて、クラウドファンディングやエンジェルも成熟していき、起業家の実情に寄り添ってビジネスを一緒に育てていくという姿勢をもつようになれば、金融機関と並ぶ資金提供先になる可能性は大いにあると思います。

❖今後に備えて、新マネーテクノロジーについての勉強は必要 クラウドファンディング、直接金融制度は日本では未熟であり、成熟を待つにはまだそれなりの時間が必要でしょう。

私が相談を受けた場合は、すべての資金をクラウドファンディングに頼らず、資金の一部は銀行から調達し、銀行とのパイプをつくっておくことをすすめています。

これまで主に銀行とのつき合い方を中心にアドバイスをしてきた私ですが、そう遠くない将来、新たな金融テクノロジーが育ってくることは予見しています。

マネーの世界に大変革が迫ってきていることは否定できない事実だという認識ももっています。

経営者である以上、本やテレビで情報を得たり講演会や勉強会があれば積極的に参加したりして、新時代のマネー事情の動きについて研鑽する努力は必須です。

少なくとも、その自覚はぜひ、もってほしいと思います。

▼クラウドファンディングに頼り切るのはまだ危険が大きい。

ただし、新時代のマネーテクノロジーの勉強は欠かせない。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、メインバンクは大手銀行のほうがイメージがいい、という思い込みをもっていない。

何事にも〝釣り合い〟が大事です。

メインバンクは大手行のほうが企業イメージがいいという思い込みは大きな誤解です。

会社の規模を認識しないで、大手行にこだわる姿勢は、金融の事情をよく知っている人の目には「見栄っぱり」、あるいは「金融機関のことをよく知らないのだな」と映り、場合によっては、社長の愚かさを自ら白状していることにもなりかねません。

❖メインバンクとは本当に頼りにできる銀行をいう メインバンクとはどんな銀行をいうのでしょうか。

辞書には、「企業の経営活動において、その取引銀行のなかで最も多額の融資を受け、人的・資本的に、あるいは情報の上で密接な関係にある銀行をいう」とありますが、私はもっと端的に、次のように説明しています。

メインバンクとは「保証協会付融資でなく、信用貸しをたくさんしてくれる銀行のこと」です。

つまり、担保などではなく、リスクを伴う資金をいくら出してくれるか。

いざというとき、本当に頼りになるのはこういう銀行です。

リスクのない資金なら、どこの銀行でも、いつでも貸してくれます。

見栄や体裁にとらわれることなく、いざというとき頼りになる、本当に親身になってくれる銀行と親しい関係を構築しておくこと。

これが中小企業の社長としていちばん重要な仕事だ、といってもいいくらいです。

❖身の丈にあった銀行をメインバンクにする はっきりいって、大手行が積極的に融資してくれるのは、それなりの規模の企業です。

したがって、中小企業がメインバンクとして選ぶ金融機関としては、地方銀行、企業の規模によっては、もうワンランク規模が小さい信用金庫や信用組合が適正だ、といえるでしょう。

企業規模と適正だと思われる金融機関の具体的な目安は、 ◆都市銀行……年商 30億円 ~ ◆地方銀行……年商数千万円 ~年商 30億円程度 ◆信用金庫……年商数千万円 ~年商 10億円程度 ◆信用組合……年商数百万円 ~年商 5億円程度 というところでしょう。

現在の状況を踏まえれば私は「地方銀行がねらい目」だと考えています。

現在、地銀の多くは経営に苦しんでいます。

これまでは融資先を探すよりも資金を米国債などの債券運用に回していたのですが、このところの米国の金利上昇で大きな赤字を出した地銀もあります。

金融庁も銀行経営を正したいという思いを強くし、銀行経営の本来である貸出業務に注力するようにと金融検査のマニュアルも大きく転換されています。

貸出業務に注力しないと、銀行は逃げ道がなくなってきているのです。

マイナス金利時代、外債で逃げていた地銀や信金、信組は大きな転換を図るほかに、今後生き残る道はなくなったといっても過言ではありません。

つまり、銀行は、これまでよりもずっと「融資したがっている」のです。

融資を受けたい企業、とりわけ中小企業には大きなチャンスが到来したわけです。

将来性をきちんと示し、その将来に向けた戦略をしっかり立てていることを示せば、いまは、資金調達できる可能性がぐんと高まっていることを知っておきましょう。

現在、すさまじい勢いで先端技術革命が進行中です。

A I、ロボット技術の採用など第四次産業革命がひたひたと進むなか、そのための資金を調達できない企業は容赦なく淘汰されていくでしょう。

いまこそ、金融機関との信用関係が大きくモノをいうときです。

❖経営が行き詰まったとき、大手行は淡々と処理して終わり 融資先が倒産することは銀行にとって大きなダメージですから、緊急融資をするなどでなんとか倒産を回避しようとするものです。

しかし、現実を見れば、倒産の危機に立つ企業はすでに経営状況はかなり悪化しているわけです。

それをどう判断するか。

ここで、銀行の考え方、立場が分かれます。

たとえば、 5億円の融資がこげついたと考えてください。

大手行にとって 5億円は致命的な損失ではないので、この企業の今後に明るい希望がもてないとなれば、追加融資を検討しその企業を救おうとするよりも、傷が浅いうちに取引を停止したほうがよいと考えるでしょう。

一方、中小規模の金融機関は 5億円の損失も大きな痛手です。

ですから、なんとかこの企業をつぶしてしまわないように、最後の最後まで支援し続ける姿勢を失わない可能性が高いのです。

しつこいようですが、企業は倒産したら、そこで終わりです。

倒産し、自己破産した経営者はその先 10年ほどはお金を借りられない身分となります。

欧米ではあり得ないことですが、日本は現段階では、倒産社長が復活する道は厳しく制限されています。

こうした後進国的な制度がとられているため、日本ではチャレンジのリスクが大きすぎ、一度失敗すると、経営者として復活する道は、閉ざされてしまうことになるのが実情です。

こうした現実を踏まえると、会社の規模に見合った金融機関とつき合うことがいかに大事か、をわかっていただけるでしょう。

ちなみに、得意先から入金してもらう口座は大手行のほうが支店も多く、得意先にとっても便利でしょう。

この銀行も「取引先金融機関」と明記、大手行とも取引があると印象づけることができるので、リクルート対策など、会社のイメージアップは図れます。

▼無理な背伸びは後々いろいろなところに響いてくる。

売上 30億円までなら、大手より中小の金融機関をメインバンクにしておくほうがメリットは大きい。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、地元の金融機関と積極的につき合い、そのメリットをフルに生かしている。

中小企業の金融機関、特に地域密着型の金融機関とつき合うといくつもメリットがあります。

まず、地銀はその土地の事情に精通しており、地元の有力者と太いパイプをもっているので、融資以外に、地域に溶け込むための人脈づくりなどにも一役かってくれると期待できます。

信用金庫、信用組合はよりきめ細かな地域情報をもたらしてくれ、企業規模によっては、いちばん身近で、いちばん頼りになる金融機関だといえるかもしれません。

そのかわり、こちらも祭りなど地域の行事には積極的な姿勢を見せること。

地域の行事に自社の商品を景品として差し入れたり、祭りでは神輿の担ぎ手になったりするなど、地域行事に熱心だと、地元の金融機関の印象はぐっとよくなるものです。

地域の金融機関とのつき合いの第 2のメリットは、長く強い人間関係を育めることです。

金融機関とのつき合いも最終的には人間関係に尽きます。

銀行の担当者と肚を割って話すことができるようになったり、さらに進んで、個人的なことまで相談できる間柄になったりすれば、これ以上心強いことはないでしょう。

人間関係は時間をかけてじっくり育まれていくものです。

ところが、大手行の銀行員は 3、 4年で転勤していくケースが多いのです。

せっかく親しくなりかけたところで地元から去っていってしまう。

ふだんしょっちゅう顔を合わせていなければ、人間関係は徐々に薄らいでしまうのが世の常です。

一方、地銀や地元の信金、信組の職員はその地域を離れる可能性はあまりありません。

長いつき合いを続けているうちにポストが上がっていき、しだいに組織内での力が強くなっていく可能性も大。

そうなれば、いっそう便宜を図ってくれる強い味方になってくれるでしょう。

私の顧問先にも、地元の信用金庫とじっくりつき合いを重ねていたら、初めの担当者が出世していき、理事長にまで昇り詰めたケースがあります。

もちろん、理事長が何もかも采配をふるうわけではありませんが、正直なところ、何かとやりやすくなったことは事実。

多様な領域の企業トップを紹介してもらえる機会も増え、有形無形の恩恵はかなり大きいといっています。

金融機関のスタッフと親しい人間関係をつくりたいなら、とにかくしょっちゅう顔を合わせること。

ふだんから、こちらからも足を運び、顔を合わせる機会を増やすのです。

特別な用事がなくてもいいのです。

「近くまできたから……」とか「社員旅行に行ってきたんですよ。

これ、皆さんで食べて」とちょっとした土産を届けるなどとってつけたような用事でも、わざわざ訪ねてきてくれた、それだけで相手はいい気分になり、その社長に好感を抱くものです。

❖地銀 1行という地域では…… 身の丈に応じた金融機関、地域に密着した金融機関を選ぶように、といっても地方によっては取引できる銀行の数が少なく、地元の信用金庫や信用組合、あるいは地銀が1つしかないという地方もあります。

こうしたところでは競争関係がないため、かなり高い金利を設定するなど、金融機関がわが物顔で取引していることが少なくありません。

安倍総理は「地方創生」をスローガンの1つに掲げていますが、地元の銀行の誠意ある支援姿勢がないかぎり、その理念の実現は不可能でしょう。

金融庁も懸命に金融改革を進めています。

同時に、地方の金融機関の意識改革も進めていかなければ、地域の中小企業は苦しい状況を抜け出すことはできないでしょう。

近くの金融機関が 1行しかないような地域なら、金利が高い・低いなどと文句をいうのではなく、必要なときにすぐにお金が出てくる、そんな固い絆で結ばれた関係性を構築するように注力することをおすすめします。

▼必要なときに担保なしで融資してくれる銀行がメインバンク。

大事なのは、自社の身丈と釣り合う銀行を選ぶこと。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、 3行以上の金融機関を、競わせながらつき合っている。

いうまでもありませんが、メインバンクとよい関係性を築き、保っていくことは、経営の基盤を堅固にするためにも欠かせません。

だからといって、メインバンク 1行に取引を集約してしまい、 1行としかつき合っていないのは危険です。

ところが中小企業には、この 1行取引が多いのです。

1社のみとのつき合いでは、競争原理が働かないために金利は高いし、担保もたくさんとる傾向が見られます。

言い方は悪いですが、銀行が優位に立っていいたいことを押し付けてくる可能性も大きいのです。

こんなとき、他の銀行との取引がないとなるとほかに選択肢がなく、不条理だと思いながらも銀行のいうままに従うほかはない、ということになりがちです。

❖地銀合併の流れは今後も進んでいくことを頭に入れておく『社長の基本』でもふれましたが、地方銀行の再編はさらに加速するだろうと見込まれています。

地銀とつき合う場合には、2つか3つの銀行を合併させて 1行にするという流れはもはや止めることはできないという考えをおろそかにしてはいけません。

この再編問題は非常に重要な問題であり、多くの地方企業に深刻な影響を与えかねないことも意識しておく必要があります。

合併が行われた場合、取引銀行が吸収する側ならまだしも、吸収される側だった場合、新体制のもとではそれまでメインバンクだった銀行は力を失い、引き続きスムーズに融資を受けるのがむずかしくなる可能性はけっして小さくありません。

最近はむしろ「わが行 1行に取引を集約してほしい」と迫ってくる銀行が増えるという流れもあります。

そうすれば、「支払いサイトを長くできますよ」とか「増額借入も可能かもしれません」などと、一見、得に見える条件をちらつかせて迫ってくるのです。

その背景には、銀行の苦しさが垣間見えます。

少子高齢化で人口が減り、それに伴い市場が縮小し、企業数がどんどん減っているという厳しい現実があるのです。

企業数が減れば、銀行の取引先も減る。

その結果、貸出先が減ることになり、銀行の収益基盤はどんどんやせていく。

こうした現状から、既存貸付の集約を図ってシェアを伸ばそう。

さらには 1行取引にもっていって、銀行側が有利な態勢をつくろうと必死になっているわけです。

銀行はつぶれないという神話はとっくに崩壊しています。

銀行もそれぞれ 1個の企業である以上、破たん、つまり倒産のリスクを内蔵しています。

もし、取引銀行が破たんしたらどうするか。

社長は常に、最悪の事態を想定し、そのためのリスクヘッジを考えておくべきです。

❖銀行とのつき合いにも競争原理を働かせる 経営者の多くは、金融機関を特別な存在だと考える傾向が強いようです。

私は常々、そしてこれまでの著書でも、「銀行はビジネスパートナーの1つ」だといってきました。

銀行も取引先の1つ。

つき合う場合のスタンスはあくまでも等位置。

イコールパートナーです。

銀行がえらいわけではないし、お金を借りているからといって、こちらが下手に出なければならない関係でもありません。

たとえば、納入業者とつき合うときには 2、 3の取引先に声をかけ、相見積もりをとるなど競争原理を働かせ、より有利な取引をしているでしょう。

金融機関とのつき合いも同じです。

複数行とつき合っていれば、必然的に銀行間に競争する意識が生まれます。

銀行とつき合う場合も融資の条件などにも競争原理を働かせ、有利な条件を提示した銀行を選ぶなど、フェアな関係性を取り入れるのです。

そうして、おたがいにウィンウィンの関係を築いていく。

これが金融機関とのベストなつき合い方だという認識をもつこと。

これが重要です。

❖銀行によって、あるいは支店長の方針によって会社の見方が変わることがある 貸付先を選ぶとき、銀行が判断の基準にするのは決算書です。

決算書を見て、「利益が出ている」「将来も見込みがある」と判断できれば、銀行はむしろ積極的に融資の拡大をもちかけてきます。

ただし、これはあくまでも原則です。

どの銀行も審査方法は一律ではなく、銀行によって、あるいは支店長の方針などで審査方法が変わることもよくあります。

支店長が変わったタイミングには、それまでの担当者などに「今度の支店長はどんなタイプ?」とか「新支店長の趣味は何ですか?」などと話を振ってみましょう。

「今度の支店長は積極的な人ですよ。

前任地でも新規融資、特に地場産業に力を入れて融資を拡大した実績が高く評価されたようです。

で、ワンランク上のこの支店のトップに抜擢されたんです」などという話が聞ければ、こちらからのアプローチ戦略も違ってくるでしょう。

飲食店をチェーン展開しているある顧問先にこんな例があります。

前任の支店長は非常に細かく、融資に対しても慎重なタイプで、積極的なビジネス展開を進められずに困っていました。

どんなふうにもちかけても、マイナス要因ばかり指摘してきて、どうにもならなかったのです。

しかし、新支店長は融資に積極的で、新事業もポジティブに理解を示し、「支援しますから、どんどん出店してください」という。

同じ銀行なのに、支店長しだいで対応が 180度変わったのです。

お陰で、この飲食店は賞味期限の切れかかった店舗を閉鎖し、発展性のあるビジネスモデルにつくり替えるなどスクラップ&ビルドを実現できました。

業態変換のタイミングを逸することなく、新しいスタイルの店舗にシフトできたので、低迷していた会社は息を吹き返し、いまでは売上も利益も大きく改善したと笑顔を弾けさせています。

▼必ず複数の銀行とつき合うこと。

また、銀行は取引先の1つだと考え、それぞれとイコールパートナーとして向き合い、ウィンウィンの関係を築いていく。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、複数の金融機関とつき合う場合のタブーを知っている。

「複数の銀行とつき合うようにしてください」。

私がこうアドバイスすると、「2つも3つもの銀行に交渉していることがバレたら、銀行の印象が悪くなりませんか。

気分を害されるのはマイナスでしょう? それに、いくつかの銀行から融資を受けられるようになり、片方の銀行を断るようなことになったら、もっとまずいことになりませんか?」と心配する社長もよくいます。

結論からいえば、まずいことは1つもありません。

どの会社に、どういう目的のためにいくら融資したかという情報を銀行間で共有することはなく、試算表や決算書を出せば表面化しますが、融資時点ではバレることはないはずです。

ただし、「信用保証協会付融資」( 130ページで詳述)の場合は、情報は共有されているのでバレてしまいます。

しかし、プロパー融資で複数の銀行から借入ができた。

あるいは 1行からプロパー融資、もう 1行から信用保証協会付融資を受けられたとしたら「ラッキー!」と両方から借りておけばいいのです。

現在の金融緩和政策がいつまでも続くとはかぎりません。

借入できるときに借りておき、余剰資金としておけば、いざというときに効力を発揮します。

企業側が借りたい時期と金融機関が貸したい時期にズレがある場合も多いので、資金調達には貸してくれるときには借りておくのが正しい選択です。

いつでも借入は返済できるが、いつでも借入はできないのです。

顧問先の1つである物流会社は、私のアドバイスを聞いてから、取引銀行を数行に増やし、以後は、借入するときには必ず数行に声をかけています。

銀行は横並び意識が強く、他行が融資すると聞くと、自行もなんとか融資したいという意識が芽生え、競争意識をもろ出しにしてくる傾向があります。

この社長は銀行のそうした特性を上手に使って、たんねんに複数の銀行と交渉を進めています。

その結果、より有利な融資条件を引き出し、融資額もたいてい予想以上の数字を得て、有利に、そしてより多額の資金を得られるようになっています。

❖複数の銀行と交渉するときのタブーはこの言葉! 逆に、複数の金融機関と交渉するとき、うっかり口にしがちな言葉、でも、絶対に口にしてはいけない言葉があります。

それは「実は A銀行にもお願いしてみたのですが……」などと、すでにほかの金融機関と交渉したことをいってしまうことです。

これは絶対にタブーです。

銀行側も、さりげない様子で、「どこか、よそも当たっておられますか?」などと探りを入れてくることがあります。

それにのってはいけないのです。

私は、どの銀行にもこういうように、とアドバイスしています。

「まずは、真っ先にお宅にお願いにまいりました。

お宅の銀行はきっとお貸しいただけると考えておりますので……。

ぜひ、なんとかお宅でお借りできるようお計らいいただけませんでしょうか」 ここでひと呼吸おき、「万一、お宅がダメだった場合には、ほかの銀行にお願いに行かなければならないとは考えておりますが……」と続けるのです。

この言葉にはウソはいっさいありません。

「まずは」とか「真っ先に」とはいっていますが、けして「お宅だけしか行っていない」とはいっていないからです。

そして、「お宅がダメだったら他行にも交渉に行く」ことも匂わせています。

❖もっといけないのは「運転資金」という言葉 融資の依頼にいくとき、中小企業の経営者はほぼ 100%、「ちょっと運転資金が厳しくて……」といいます。

しかし、この言葉を聞いた金融機関はどんな印象をもつでしょうか。

経営者自身は、会社を回していくいろいろな経費はすべて「運転資金」だととらえているのでしょう。

しかし、一般に「運転資金」というと使い道がはっきりしない、でも、当面、経営を成り立たせていくために必要なお金、というような曖昧なイメージをもつものです。

そして、そうしたお金が足りない 経営が危うい、あるいは経営者の財務知識が足りないなどとマイナスイメージしかもちません。

そうしたことにならないようにするには、運転資金の内容が明確にわかるような言葉に置き換えればいいのです。

たとえば、「仕入れ資金」でもいいし、「設備投資資金」といってもいいでしょう。

こうすれば担当者は稟議を通しやすくなり、担当者の立場もよくなるものです。

❖借りられるときに借りられるだけ借りておく「複数の銀行に融資を申し入れ、それぞれ満額回答は得られなかったが、結果的には必要な資金以上の融資の申し出を得た。

こうした場合はどうしたらいいか。

必要以上の借入はしないほうがいいのか。

そうであるなら、銀行にどう返事をすればいいのか」 という相談を受けたことがあります。

「借りられるときは借りておきなさい」。

これが私の回答です。

返済はいつでもできますが、借入はそうはいきません。

当面、余分なお金は流動性のよい預金にしておけば、銀行の評価はさらに高くなります。

余剰資金は、普通預金か、ごく短期の定期預金にしておくとよいでしょう。

長期の定期預金にしておいた場合、会社のお金回りがしんどくなり、この預金を解約して運転資金に回そうと考えても、銀行が「定期を解約させない」ことがあるからです。

担保に入っていなくても、です。

これは、会社の運営をあやぶんだ銀行が「定期だけは押さえておこう」とする、ある意味、いやがらせとしかいえないのですが、実際にこういうケース

はあり得ます。

その結果、資金詰まりになってしまったという会社もあるのです。

もちろん、借入金の金利負担はありますが、それは必要経費だと考えればいいのです。

▼融資を依頼するときのタブー語を心得ておくこと。

銀行の担当者の立場がよくなる依頼法があることも心にとめておく。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、借入銀行で手形を振り出す危険を知っており、入金口座も借入銀行とは別の銀行にしている。

1行取引が危険だという理由はほかにもあります。

意外なことに、ほとんどの経営者は、借入銀行も手形を振り出す銀行も、入金口座も同じ銀行にしておいて平然としています。

私にいわせれば、これほど危険なことはありません。

手形は手元にお金がないので「いついつ支払う」と約束して振り出すものです。

しかし、もし、支払い期日がきたときに、振出人の預金残高が 1円でも不足していれば、受取人は額面全額は受け取れず、その手形は不渡り手形になります。

6か月の間に 2回以上、不渡り手形を出すと、「銀行取引停止」の処分を受け、すべての銀行に不渡り報告(不渡り手形を出した者の名前を通知すること)が行われます。

この処分を受けると 2年間融資を受けることができなくなり、上場企業の場合は上場も廃止されます。

「銀行取引停止」処分を受けると資金繰りはさらに厳しくなり、ほとんどの場合、事実上、倒産とみなされてしまいます。

借入している銀行で手形を発行した場合に、その銀行への借入返済を止めて、銀行ともめることがあったとしましょう。

銀行は倒産させたいわけではないのですが、お金がその銀行の口座に入った瞬間に手形決済資金を借入返済資金に変更し、資金を回収しようとします。

銀行としては、何よりも借入金の返済が優先されるのです。

その結果、手形決済はできなくなり、不渡りになって倒産、ということになってしまうわけです。

❖入金口座は借入銀行と別の銀行に開設する こんな当たり前のことがわからないまま、社長の座に座っているなんて! と誰でも気づきそうなことなのですが、会社の入金口座を借入銀行に開設している社長は相当に多いのが現実です。

借入銀行に会社の入金口座があると、銀行はどこから、いつ、いくら入金があるかをただちに把握してしまいます。

賃貸事業ではほとんど借入銀行に家賃の入金口座をつくります。

ほとんどの銀行が「テナントの家賃もうちの銀行に振り込むようにしてください」と要求するからです。

これでは、借入金の返済が滞りそうになったとき、どうぞ、入金口座を押さえてくださいといっているのも同じです。

銀行は、家賃分収入の差し押さえがすぐにできるように情報を収集しているというわけです。

入金口座をできるだけ分散させておくことも非常に重要です。

経営者として肝に銘じておきましょう。

子会社や関連会社の取引銀行を分散させておくことも重要なポイントです。

取引銀行が同じだと透明性が増すというメリットはありますが、同時に、銀行が担保率を確保したり、本体の会社に保証を求めたり、銀行側にとって有利な貸し方を提案してくることがよくあるからです。

会社ごとに取引銀行を分散しておけば、そうしたことを防げます。

こうして銀行を分散して、銀行ごとに担当者名、渡した書類などを明記し、ファイルして日頃からきちんと管理しておくようにします。

それができていないと、銀行に突っ込まれたとき、取引上不利になるようなことまでうっかり口にしてしまうようなことが起こらないともかぎりません。

銀行と交渉するときには、少しの齟齬も起こらないように、こちらも万全の備えで臨まないとヤブヘビになることもある、と心にとめておきましょう。

❖社長の個人口座を会社の取引銀行に開設しない 社長の個人口座を、会社の取引銀行につくっているのであればこれも危険、というより、無神経だといいたくなります。

個人情報をむやみに明かさない。

これは現在では常識ですが、それは外部にもらさないというだけで、銀行内の個人口座の出入りを銀行が知らないはずはないと思わないのは不思議です。

貸出をする場合、銀行は個人情報も集めて審査します。

個人情報を集めて管理、利用するのはお手のものだと考えていなければいけません。

取引銀行に口座があれば、社長個人はどんな入金がいくらあって、どんな支払いをしているか。

預金の引き出し、キャッシュカードの引き落とし、他行への振り込みなどもいつでも追跡できます。

口座の記録は社長の活動をリアルに物語る、強力な個人情報特定ツールだと認識すべきです。

もちろん、配偶者の個人口座がその銀行にある場合も同様です。

個人の資金を借入銀行に預金していた社長が会社の調子が悪くなったとき、銀行はこの預金を担保に入れるようにと要求してきました。

実際の預金を握られてしまっているので、社長は銀行のいうままにならざるを得ず、結局は倒産してしまった例もあります。

▼会社の入金口座、社長の個人口座は借入銀行とは別の銀行に開設する。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、銀行のほうから営業にくる、そんなテクニックを知っている。

経営者、特に中小企業の社長は、銀行に対して過剰にビビリだと感じます。

前述したように、金融機関も1つの企業であり、しかも現在の金融機関は大は大なり、小は小なりにきわめて厳しい経営環境に置かれています。

超低金利時代が長く続いているため、銀行の利益構造は成立しづらくなりつつあり、資金需要もしだいに細くなっているという実情もあります。

そのうえ、超金融緩和で資金はダブついているのです。

少子高齢化による市場の縮小、人手不足、後継者不足で廃業も多く、将来の貸付先が激減していくであろうことを肌身で感じています。

ですから、現在、どの金融機関も躍起になって新規の貸出先を探しまくっているのが実情です。

そうした事情を知っておき、思いきってこちらから平身低頭で融資を依頼するというスタンスをやめ、銀行のほうから「ぜひ、当行とおつき合い願いたいのですが……」と営業にやってくる、そんな企業になろうという気概をもつべきです。

いまはその好機だと考えましょう。

銀行が新規の営業をかける先は、それまで取引実績のある優良企業に紹介されて、あるいは、帝国データバンクによる企業の点数評価、ネット情報などのさまざまな情報を合わせて見当をつけていることが多いはずです。

こちらから帝国データバンクに情報を提供した結果、銀行からの営業が増えてきた得意先もあります。

また、ちょっとした縁でもいいから、取引したい銀行と関係がある優良企業とつながりがあったら、ぜひ、紹介してほしいと頼んでみることです。

こうした積極性は必ず、相手を引きつけます。

❖〝お金を寄せて〟お金回りのよい企業だと印象づける いま取引のある銀行における自社の評価を上げて、銀行のほうから自社に足を運んでくるような企業にしていくという方法もあります。

私はよく「その銀行にお金を寄せなさい」といっています。

「お金を寄せる」とは、口座のお金がよく動いている様子を見せること。

具体的にいえば 1000万円、 2000万円、 3000万円とその口座にしょっちゅうお金が入金される。

それを引き出して、少しおいてまた振り込む。

それでもいいから、その口座にお金がよく集まっているように見せるわけです。

3000万円、 5000万円と大きな金額の定期預金をつくり、「あ、この社長は、うちの銀行をよく使ってくれている」という印象を与えるのも効果的です。

前に、借入銀行に定期預金をするのはまずいと書きましたが、半年か 1年程度の短期定期預金なら、問題はありません。

こうして、いい取引先だと思うようになれば、銀行のほうから「一度ご挨拶に伺いたいのですが、いかがでしょうか?」と連絡してくるはずです。

▼いま、銀行は取引先を求めている。

口座のお金を盛んに動かす、大口定期をするなど、銀行から見て魅力のある企業であることをアピールしよう。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、会社のミッションが明確で、明るい将来像を描いている。

融資を依頼するときに「苦しい」「厳しい」というばかりではうまく借入はできません。

決算書を提出している、決算書の内容はけっして悪くない。

そういって融資は当然受けられると思っていても、思いどおりに事が運ばないことも珍しくないのです。

銀行が何よりも知りたいのは、その会社の将来がどうなるかという展望です。

先が見えないとか、先が知れているという企業には銀行も魅力を感じないはずです。

❖自社のミッションを具体的に認識している 私は相談に見えた方には、必ず「あなたは事業を通じて社会に何を提供したいのですか?」と尋ねます。

社会に何を提供するか。

つまり、その会社の社会的ミッションを自覚しているかどうか。

これが大事です。

ミッションなしで、ただお金を稼ぎたいと思った。

そんな会社が成功するほど世の中はあまくありません。

起業するときはたいていの社長は、「こうしたビジネスを展開して社会の役に立ちたい」という思いをもっているはずです。

「最近はこういう商売がトレンドで儲かっているらしい。

自分もその流れにのって一儲けしたい」というような気持ちから事業をスタートさせた。

こんな二番煎じ、三番煎じで成功した経営者はいないと断言できます。

ミッションを自覚し、会社の存在意義をしっかり自覚している経営者ならば、会社の将来像を描いているし、その将来像を熱く語りたいと思っているものです。

融資の依頼に行った銀行で、その将来像を熱く語れば銀行の心も動き、「ぜひ、融資したい」と気持ちを動かされる銀行員は少なくないはずです。

銀行員だって将来に向けた明るい夢をもちたいと願っているからです。

自分が担当した企業が 5年後、 10年後、大きく育った姿を見ることを生きがいにしている銀行員も少なくありません。

❖孫正義氏のビジョンに惚れ込み、支店長権限枠の 10倍の融資をした銀行支店長 いまや日本経済を牽引する企業の1つとなったソフトバンクは、孫正義氏がまだ学生だった時代、自ら開発した「音声機能つき自動翻訳機」をいろんな企業に持ち込み、シャープがこれを 1億円で買い取った、その資金を元手に起業した会社です。

実は、この話には裏話があります。

孫氏がさらにソフトの流通など事業を拡大しようとしたとき、どの銀行も無名の孫氏に融資しようとはしませんでした。

このとき、融資実現に一役買ったのが、シャープの佐々木正氏と第一勧業銀行麹町支店の御器谷正之支店長(いずれも当時)です。

佐々木氏は、「翻訳機」を買い取ったとき、「これから必ず起こる情報革命を通じて人類と社会に貢献したい」と熱く語る孫氏に心を動かされ、銀行に「孫をよろしく頼みます」と話したそうです。

万一、融資が実現しなかったら、自宅と退職金を担保に入れようと肚をくくっていたというから、並大抵の応援ではありません。

御器谷支店長も孫氏の強い社会的使命意識、さらにはビジネスの将来性をしっかり見据えている姿勢にほれ込み、その当時の支店長権限枠の 10倍の 1億円の融資に踏み切ったのです。

孫氏はこの 2人に深く感謝し、毎年、ソフトバンクが設けている「(創業期の)恩人感謝の日」に感謝する人にノミネートし、それぞれに豪華な花を贈り、いまも心から感謝を表することを怠っていないそうです。

いまではこうした気概のある銀行員はマレになってしまったかもしれません。

でも、社会的な使命感や明るい将来ビジョンが銀行を動かすことは実際にあります。

多少の大風呂敷でもかまいません。

私の得意先でもビジョンを描き、銀行に堂々と話せるようになったら、融資が下りたと報告してくる会社が出てきています。

▼銀行が知りたいのはその会社の将来ビジョン。

明るく発展していくことを印象づける将来像を熱く語れば、銀行のほうから融資したいといってくる可能性も大。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、銀行から何かいわれた場合は理由を尋ね、じっくり考えてから行動に移している。

銀行が何かいってくるたびにビクビクおびえ、「先生、こんなことをいわれましたが、どうすればいいのでしょう」と相談にこられる社長がよくいます。

「銀行から、これこれの書類を提出するようにといわれましたが、どうすればいいのでしょうか」と駆け込んでくる社長も少なくありません。

中小企業の社長の多くは銀行には強い姿勢がとれず、それどころか銀行の行動に一喜一憂して、どんな動きにも、この先借入できるのか。

この先、支援を続けてくれるのかと不安になってしまうようです。

❖なぜ、その書類が必要なのか、銀行に質問してみる そんなとき、私は相談にこられた社長にこう質問します。

「何のためにその書類を提出しなければならないのか、銀行に聞いてみたのですか?」 驚いたことに、ほとんどの社長は、何も質問していません。

銀行が求める書類とは、多くの場合、資金繰り表や事業計画書などでしょう。

それを求めるのには必ずそれなりの必要性があるはずです。

何かいわれたら、次のことを必ず聞くようにしましょう。

◆その質問はなぜされたのか? ◆その質問に回答したら、どうなるのか? ◆その提出する書類は、何に使うのか? ◆その提出する書類は、どこに提出するのか? これらの質問に対する回答を得ないかぎり、こちらは返事をしたり、要求に応じたりすることを控えていればいいのです。

理由もわからないのに、銀行が「もってきてください」といわれるままに、あわてて準備をして出かけるのは拙速にすぎるといわれても仕方ありません。

また、「こういう理由で必要なのだろう」などとこちらサイドで解釈して納得してしまうのも危険です。

必ず銀行側に質問し、答えはできるだけ書面に残して、手元に残しておく慎重さがあってもいいのではないかと思います。

❖銀行との交渉、渡した書類など、つき合いのすべてを記録に残しておく 中小企業の場合、ほとんどが、取引銀行に、いつ、どの書類を渡したか、記録さえしていないのです。

なぜ、こんな「基本のキ」さえできないのか、と頭をひねりたくなるくらいです。

前にも書きましたが、必ず、取引銀行ごとにファイルを作成し、銀行との連絡内容、担当者名、話した内容を記録したもの、書類を渡したならばその書類名などの記録を残すことを守ってください。

銀行側は、これまでの交渉の経過から提出された資金繰り表やその他いっさいをきちんと整理して保管しています。

それを見て、これまでの経緯、融資実績、返済状況などをすべて頭に入れて交渉に臨んでいます。

こちらはこれまでのことなど詳しく記憶していない……。

これでは勝負になりません。

話している間に、以前話したことと食い違いが出てくれば、銀行は鋭くそこを突いてくるでしょう。

こんなことから、うまくいきかけた融資話がご破算になってしまうことはよくあります。

❖銀行にすぐ返事をしなくてもいい 銀行から何かいわれたり、何かを求められたりするとすぐに返事をしてしまう経営者も多いものです。

でも、急いで返事をする必要はまずないと考えていて間違いありません。

とにかく、ちゃんと納得できるまでは急いで返事をしないこと。

いったん返事をしてしまうと、後になって、それが自社に必ずしも利がないとわかっても、銀行側の提案を覆すことはできにくくなってしまいます。

▼銀行にいわれるままにあわてて行動する必要はない。

じっくり腰を据えて、こちらのペースでつき合っていく。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、支払いの優先順位は得意先・税金、それから銀行への返済だと心得ている。

おしゃれなファッションブティックを展開しており、かなり知名度もある会社の社長が相談にこられました。

創業から 20年、これまでは右肩上がりで成長、銀行も積極的に支援してくれ、支店網は首都圏を中心に 30店以上に拡大。

順調な軌道を描いてきたといいます。

ところが、最近になって競合店が増え、また、若い世代の顧客がネットショッピング中心に移行するなどで売上が陰り出し、最近は赤字店舗も出てきたそうです。

赤字店舗は撤退したほうがいいか。

また、資金繰りが苦しくなっているのだが、打開策は? というのが相談の主旨でした。

うかがうと、衣料品販売店の出店に際して 3 ~ 5年の返済という条件で借入しているのです。

これでは行き詰まるのもムリはありません。

投資金額を 3〜 5年で回収できるほど高収益でなくなっているからです。

私自身、かつて飲食店を何店も経営していたことがあります。

飲食店は必ず客に飽きられるという宿命を背負った業態です。

たえず革新を仕掛けていかないと繁盛し続けることはむずかしいのです。

これは、アパレルだけでなく、販売業すべて、飲食店などにも共通する課題ではないでしょうか。

変革もせず 10年続けられる飲食店、販売店はほとんどないでしょう。

理想をいえば、 2、 3年ごとにリニューアルするなど、店の印象を変えないと、お客の心をつかみ続けることはできないと考えるべきだと思います。

ところが多くの店はメニューなどのリニューアルを考えるよりも、価格を引き下げたり、クーポン、ポイントの導入をしたり、事実上の値下げに走ります。

その結果、利益率が下がり、手元流動性が苦境に陥ってしまうのです。

このブティックの場合も、こうした経緯をたどり、ついに銀行から追加融資を断られてしまったと苦しそうに語ります。

「これまでの利益やストックはどう使っていたの?」と聞いたところ、「銀行の融資を継続してほしいから、とにかく銀行の返済を最優先してきました」といいます。

こうした考え方はこの社長にかぎったことではありません。

多くの社長が、何をさておいても銀行に返済しなければならない、と思い込んでいるのです。

❖税金、社会保険料の滞納は絶対にバツ 税金や従業員の社会保険料を滞納している事実が判明すると、銀行の態度はとたんに冷たくなる、と考えて間違いありません。

新規の融資を申し込んだ場合はもっと望みがないと断言しておきます。

取引先への支払いも滞らせることがないように配慮すべきです。

取引先があるからこそビジネスができるのです。

取引先と自社は「共存共栄の関係」だという揺るぎない認識をもっていなければいけません。

税金や社会保険料の支払いを滞るのは、社会的責任感が希薄なのだと見られてしまう要因になります。

加えて、税金の延滞金は延滞期間などによって違いますが、およその目安は、「本来納付すべき本税額( 1万円未満切り捨て) ×延滞税の割合 ×日数 ÷ 365日( 1円未満切り捨て)」で計算できます。

かなりの高率であることに驚くでしょう。

社会保険料を延滞した場合も、もちろん延滞料が課されます。

❖会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、手元がきついときは、銀行の金利だけ払っている 資金繰りがしんどくなると、多くの企業は、銀行の返済金だけは入金しておかないと、次のお金が借りられなくなるとか、銀行に何をされるかわからないとビビッてしまい、社会保険料や税金を滞納します。

これらは延滞しても、すぐにアレコレいってこないからです。

一方、取引先や銀行はすぐに催促したり、連絡が入ったりします。

それで、つい、すぐに催促がこない社会保険料や税金の支払いを延滞してしまうのでしょう。

最近は社会保険料も非常に厳しくなり、ある期間が過ぎると差し押さえをしてくることもあります。

税金はいうまでもなく、差し押さえを徹底的にしてきます。

税金の未納から倒産に追い込まれていく可能性もあるくらいです。

このため、税金、社会保険料、取引先への支払いを優先した結果、銀行への返済金が不足した場合は、交渉次第で金利だけ支払っておけば当面は乗り切れます。

金利を 3か月以上支払わないと「期限の利益の喪失」といい、借りたお金を自由に使うことができなくなります。

「期限の利益」とは、債権者が「お金を返してくれ」と請求してきても、借りた側は貸した側の事情に縛られず、貸した側の要求に従う必要もない、ことをいいます。

3か月間金利を支払わないと、この「期限の利益」を喪失してしまいます。

「期限の利益の喪失」が起こると、契約にある「残金を一括返済するように」と請求がきます。

金利の支払いにも困っている状態なのですから、「残金の一括返済」などできるはずがありません。

すると銀行は担保資産の差し押さえなどの法的処理ができることになるのです。

こうならないために、金利だけは支払い続けること。

金利さえ支払っていれば、「期限の利益の喪失」に至ることはなく、銀行は何も仕掛けることはできません。

いよいよ追い詰められ、金利の支払いもできなくなっても、打つ手はまだあります。

どんな場合もあきらめず、絶対に会社は倒産させないと決心して、次の策を探すのです。

金利の支払いもつらくなったら、信用保証協会付融資ならば代位弁済を求め、それが実現すると元金だけを、支払える範囲で支払うという交渉ができます。

プロパー融資の場合には債権をサービサー(債権回収会社)に売却して、少額で債務処理を行うなどの、次の一手があります。

すぐにあきらめるのではなく、再起するためにどうすればいいかを考え、実行することです。

▼お金が足りないとき、まず避けるべきは税金や社会保険料の滞納。

銀行には金利だけでも支払い続ける。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、信用保証協会付融資をプロパー融資に転換させている。

銀行から融資を受ける場合、借り手にとってはプロパー融資のほうが絶対に有利です(既刊本『社長の基本』で、融資には信用保証協会付融資とプロパー融資があることは詳しく述べました。

できればもう一度お読みになって2つの融資の違いを再確認してください)。

できるだけプロパー融資を引き出すこと。

信用保証協会付融資を受けている場合は、極力、プロパー融資に転換するように努めましょう。

プロパー融資を望むなら、まず、利益をきちんとあげ、銀行側が「これならプロパーにしても大丈夫だ」と信用してもらえる企業体質に整えておくことが先決です。

そのうえで、融資をしたいと銀行からいってきたら、必ず、抱き合わせてプロパー融資を検討してくれないか、といってみるのです。

「他行からも同じように融資の打診があり、プロパー融資も抱き合わせでお願いしたいといってきているんです」くらいのことをいってみてもよいでしょう。

前にも述べましたが、銀行にも競争意識があり、最初は考えていなかったプロパー融資を検討し始めることがけっこうあります。

こちらから仕掛けないかぎり、銀行は安全策の信用保証協会付融資だけを推し進めてくるでしょう。

そんな銀行側の思惑など知らぬ顔して、借り手であるこちらから仕掛けていく。

どんな勝負も、先に仕掛けたほうが、圧倒的に有利に立つものです。

いったん、信用保証協会付融資で借りてしまった場合は、プロパー融資を増やしていき、借入金全体のなかでの保証協会付融資のウエイトを小さくしていくようにしましょう。

❖プロパー融資を得て信用保証協会付融資を返済するときのテクニック なんとしてもまず、信用保証協会付融資を返済したいと思ったときには、頭を使って返すようにしましょう。

銀行経営では3月の本決算、9月の半期決算の数字が大事です。

その数字をあげるために、この両月に融資を拡大する傾向が見られます。

こうしたときなどにうまくプロパー融資のお金が借りられたとしましょう。

このお金で、以前借りた他行の信用保証協会付融資を返してしまうのは、プロパー融資の融資目的外だからできないのです。

では、お金を返すことはできないじゃないかというと、実はそうではありません。

仮に 3000万円、プロパー融資によるお金が入ってきたら、そのお金を 1000万円、 2000万円と他の銀行に振り分けながら少し時間を置き、タイミングを見計らって「 3000万円を返しますね」といって返済すればいいのです。

これなら OKです。

実際に、このようにして信用保証協会付融資を返してしまったある企業があります。

複数の店舗をもつ靴の販売業の方で、自社ブランドの紳士靴・若者に人気がある入手が困難な海外ブランドのスニーカーの品揃えに注力し、ぐんぐん売上を伸ばしていました。

書店で目に止まった私の本を読み、「信用保証協会付融資はできるだけしないほうがいい。

もし、あるなら、少しでも返済し、その割合を小さくしておいたほうがいいとわかった」といって、実際に私のところにこられ、顧問を依頼されました。

その後、私のアドバイスもあって、 A銀行、 B銀行、 C銀行と複数の銀行からプロパー融資を上手に引き出し、そのお金を他の銀行に入れたり、出したりと、どこからの入金かトレースできないくらい何度も繰り返した後、 D銀行にあった大きな金額の信用保証協会付融資を返済してしまいました。

▼信用保証協会付融資は、できるだけ借り手に有利なプロパー融資に転換する。

そのためにできる努力はすべてする。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、リスケはいわばカンフル剤。

慎重なうえにも慎重に取り組む。

お金の流れが悪くなり、会社のお金がうまく回らなくなると「毎月の返済額がもう少し少なければ」という考えが頭をよぎることもあるでしょう。

そんな虫のよい話が……といいたくなりますが、毎月の返済額を減額する方法はあります。

しかし、返済額を減額しようとすれば、必然的に返済期間が長くなります。

いわゆるリスケ(リスケジューリング = rescheduling)です。

ほとんどの社長はリスケは初めての経験であるはずで、リスケはどうやって銀行と交渉すればいいのか、どのように進めるのか、不安でしょう。

もちろん、自由にリスケできるわけではなく、銀行に「経済合理性がある」と判断されることが大前提です。

リスケは以下の手順で進められます。

多くの場合、リスケは借り手から申し出ます。

申し出があると銀行は金融庁の監督方針や検査マニュアルに基づき、「経営改善計画書」を作成するように求めてきます。

「経営改善計画書」はおおむね 3 ~ 5年以内に債務超過を解消して黒字化にもっていくための改善計画書ですが、よく見るとたいてい、内容はただの借入金返済計画にすぎず、実のところは「銀行にリスケを認めてもらうための数字合わせ」です。

これを見て、自社の将来はこうなると安堵するのは間違いです。

計画どおりいく企業はごくごくマレです。

❖認定業者は机上の改善計画しかつくれないと考える「経営改善計画書」はたいてい銀行指定の認定業者に依頼して作成します。

認定業者は銀行の OB等の中小企業診断士や大手のコンサルタント会社や税理士・会計士であることが多く、数字のうえだけの改善計画で、いわば机上の改善計画にすぎません。

彼らの多くは経営の体験がなく、指導者、つまり先生という意識をもっているため、借金に苦労している中小企業の経営者を「経営能力が足りないんだ」とどこかで軽く見ていることも少なくありません(本当に寄り添って親身になってくれる方もいますが)。

ですから、やむを得ず、リスケを申し出る場合も、「経営改善計画書」は社長が主体になって考え、本当に将来、会社が発展していくための計画書をつくるようにすべきです。

もともと、本来はその会社のことがよくわかっている銀行員と社長が命がけで作成すべきものです。

外部に任せて短期間で作成し、それで経営を改善できるなら、とっくに改善できているはずではありませんか。

なお、リスケをするときには準備手続きの一環として、以下のことも注意しておく必要があります。

◆無担保物件などは追加担保を求めてくる。

◆追加保証人を求めてくる(役員になっている親族など)。

◆定期預金も担保に入れるようにいってくる。

◆会社で掛けている経営者保険の質権設定(質権設定とは、経営者が保険等に加入すると、万が一のとき、社長が死んだら会社に保険金が入ります〈普通はこれを退職金にします〉。

その保険金の受け取りを質権設定することで銀行が受取人になるのです)を求めてくる。

◆その他リスケ後の再生が成功しなかったときの対応策を講じておく必要がある。

厳しい言い方になりますが、これを直前になってするようでは、銀行の理解は得られないでしょう。

少なくとも、リスケをする半年ぐらい前から準備をしておく必要があると心得ておくことが必須です。

❖リスケした中小企業のほとんどが再生していない リスケをすれば、元金の返済額が減額されるので、たしかに一時的には経営は楽になります。

そのため、経営が厳しくなると、リスケを考える中小企業の経営者が増えているわけです。

しかし、リスケすると、 ◆リスケ期間中は新たな融資が受けられない。

◆リスケした経営者は、「不良債権(破たん企業)候補」とみられる。

というハンディを背負うことになります。

多くの場合、リスケをしてから期間延長をするときに、銀行は自宅を担保にしてほしいとか、信用保証協会付融資の保証料を引き上げるなどといってくる可能性があります。

その結果、リスケした企業はかえって窮地に追い込まれていきます。

リスケから立ち直れないのは、リスケで浮いた資金をすべて銀行が返済原資に回し、企業として新規投資もできない状況になってしまうからで、結局、打開策がなくなってしまうためです。

同時に、リストラや経費削減策を強要され、日増しに体力が弱ってきてしまいます。

したがって、リスケをした企業のほとんどが正常債権に戻ることはないのです。

考えようによっては、リスケをするなら、万一のことを考えて、その後の生きる道を考えておかないと、いつまでもしんどい状態から抜け出せません。

本来、企業再生するには新たな資金が必要です。

会社構造改革をするべきですが、ただ経費削減やリストラばかりの策しかさせてもらえないのがほとんどです。

▼「リスケ」は窮余の策。

デメリットもある。

安易なリスケは自ら首をしめる結果になることが多い。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、戦略的にリスケをする3つのポイントを知っている。

とはいえ、リスケは、経営が厳しくなったときには〝頼れる〟方法の1つであることも事実です。

リスケも戦略的に行えば、一時的にせよ、資金繰りが繰り延べされ、〝ほっと一息〟つけます。

この間に経営の本格的な立て直しに向かい、具体的な方策を進めるならば、リスケは十分に有用な経営施策の1つになり得ます。

以下の3つは戦略的なリスケを行うポイントです。

①リスケの前に融資を申し込む 銀行には初めに「リスケ」ではなく、「追加融資」を申し込みます。

「融資していただけなければ、リスケしかできなくなります」という論法が含まれています。

経営計画書と資金繰り表をもとに銀行にかけあっても、もちろん、経営状態が厳しいことは銀行に知られているので、融資は受けられないでしょう。

銀行側も取引先の倒産は困るので、「では、リスケはどうでしょう。

リスケなら応じられます」といってくるはずです。

相手が持ち出した方策ならば、その後、追加担保や金利の引き上げなどをいってくる可能性は低くなります。

仮にそれらを求めてきた場合には、勇気をもってきっぱり断ればいいのです。

②返済額をできる限りゼロにしてもらう 毎月の返済額が 100万円だったとします。

これがきびしい。

すると、真面目な社長は「毎月の返済額を半分の 50万円にしてください」と依頼します。

しかし、 50万円ぐらい減額してもらったところで、焼け石に水、ではないでしょうか。

ですから、思いきってこう交渉するのです。

「毎月の返済額をゼロにしてください。

そうでないとお金が回りません」と主張するのです。

もちろん、そう主張するだけの復活するための事業計画を見せます。

つまり、この資金がないと会社を構造改革して再生できないというストーリーをもった計画が必要になります。

いうまでもなく、こうした交渉のときには借り手側の社長はあくまでもお願いする姿勢を示し、間違っても上から目線の物言いや開き直ったような態度はとってはいけません。

③リスケ後の余分な資金をプールしておく 考えたくはないでしょうが、リスケをしても会社を立て直せなかった場合も想定し、対策を講じておきましょう。

多少でも返済が楽になり、運転資金に余裕ができたら、それはちゃんとプールしておくべきです。

今後、何をする場合にも「資金(お金)」がなければ手も足も出なくなると肝に銘じておいてください。

▼「リスケ」をする前に、この3つのポイントをしっかり頭に入れておく。

そして銀行の意向どおりにならず、あくまでも自分のペースで交渉を進めていく。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、プロラタ方式で返済を行うとき、おたがいが本当に納得できる配分を考えている。

リスケを実施するにあたり、元金の返済額を決める際に「プロラタ」という言葉を聞くはずです。

「プロラタ」とはラテン語の pro-rata。

比例配分という意味で、「プロラタ返済」といった場合、具体的には「貸出金額に応じた比率で元金を振り分ける」返済法をさします。

たとえば5つの銀行に借入金があり、一方、自社の返済能力は月に 100万円だという場合に、どの銀行にいくらずつ返せばいいか。

このとき、各銀行の借入金額に応じて 100万円の返済額を按分して割り振り、返済する方法が「プロラタ」方式です。

プロラタ方式は一見、平等だと見えますが、担保カバー率や信用保証協会付融資率など、リスク度の違いがあり、数字上の表面的な平等 =真の平等ではないこともあります。

また、借り手側はコストの高い保証協会付融資を優先的に返済したい。

貸し手側はリスクの多いプロパー融資を優先的に返済してほしいなどと立場により考えが異なることがあり、表面的な数字のみでプロラタを行うとかえって不満が大きくなることもあります。

また、各銀行の足並みがそろうことはむしろマレで、「プロラタで返済しましょう」となったとき、銀行によっては不平不満を言い出し、うまくいかない場合もあることを知っておきましょう。

リスケを行う場合も5つの銀行すべてがリスケを行うことを了承、始める時期も同じになるように調整するなど、全行が納得できる最適な組み立てでリスケを行わなければなりません。

▼表面的な数字を平等にすること =各行が納得できる数字とはかぎらない。

プロラタ方式の返済額を決定する場合はここに注意する。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、手形貸付、当座貸越など、返済負担の軽い資金をうまく活用している。

私が経営アドバイスを始めてあらためて驚いたのは、中小企業の経営者たちがあまりにも金融、銀行との取引について知識不足だという現実を知ったことです。

多くの経営者は銀行から融資を受けるときも「困った、困った」と泣き言をいい、返済がきつくなってくると「とにかく助けてくださいよ」とこれまた泣き言です。

本書でも繰り返し書いてきたように、企業の経営者と銀行はイコールパートナーなのです。

おたがいがウィンウィンの関係になるのが理想で、どちらかが優位に立つという関係ではよい方向性には向かわない、と考えなければいけません。

イコールパートナーとしてつき合っていくためには、経営者もまた金融取引について、相応の知識をもってほしい、いや、もつべきです。

金融の知識も実践的な知識がないといざというときには役に立ちません。

銀行員が教えてくれる金融の知識も必要ですが、さらに重要なのは経営者側に立った金融の知識をもつことです。

関心があるならば、私もセミナーを行っています。

必ず参考になると思いますので、ぜひ、ご参加ください。

❖短コロがまた増える傾向に 中小企業の多くは、返済能力以上の借入返済を抱えています。

そのため、利益は出ているのに資金が回らないことがよくあります。

その事情は金融庁もわかっており、金融機関に返済負担を軽くして、中小企業を支援するように求めています。

このとき、使われるのが短コロなどの方策です。

そうした策を知っておき、こちらから金融機関に願い出ると道が開けやすくなるはずです。

「短コロ」とは「短期継続融資」のことで、 1年以内の融資契約をいいます。

実際には元金を返済することはほとんどなく、金利だけを支払い、融資は継続的に借り続けられます(このため、資金を「コロがす」イメージがあり、短コロと呼ばれています)。

元金分を返済しないため、資金繰りが安定する効果があり、中小企業や個人事業主にとってありがたい借入です。

短コロはかつてはよく行われていましたが、バブル崩壊で一時期、ほとんど行われなくなっていました。

しかし、 2013年に金融庁が、金融緩和の一環として「正常運転資金に対して短コロで対応することはなんら問題ない」と認めたことから、最近、また短コロが行われるようになってきています。

❖短コロで毎月の返済を減らせる資金を調達する 短コロは普通、「手形貸付」や「当座貸越」という形で行われます。

「手形貸付」は貸付先から約束手形を出させ、その額面を融資するもの。

「当座貸越」は、あらかじめ融資限度額を設定し、その範囲内であれば借り入れできるという融資です。

「当座貸越」は資金に余裕ができたときには、まとめて返済することができる、自由度の高い貸付です。

また、社債を取引金融機関からすすめられたら、ぜひ取り組んでください。

そうすることで会社の格付けが上がり、他行からさらに融資話がきます。

短コロが多少増えてくる傾向が見られるとはいえ、金融機関は、短コロではなく、利益が確保しやすいリスクの少ない信用保証協会付融資で長期貸付をすすめることが多く、本当の意味での中小企業の実情に合った資金需要に応えられているとはいえないのが実情です。

▼短コロなど、金利負担だけで借りられる資金に転換し、経営のフットワークを軽くしていく。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、中小企業再生支援協議会での再生の現実を知り、うまく利用する知恵をもっている。

金融庁は、融資に際して個人保証をはずすようにと指導していますが、実際はなかなかうまくいっていないのが実情です。

実際は、業績の悪い会社や将来に不安を感じる会社に対しては、社長の個人保証を絶対にはずそうとしません。

銀行は上場企業や大企業には個人保証を求めてきません。

それなのに、体力のない中小企業には、個人保証を求めてきます。

そうしたなかで、私の顧問先のなかには、個人保証をすべてはずしている企業があります。

個人保証をはずすには、とにかく、業績をよくして、将来性のある会社にすることです。

そのうえでまず 1行、個人保証をはずします。

具体的には、融資を依頼するときや、借り換えの時期などのタイミングに、個人保証をはずすことを条件として提示してみるのです。

銀行のほうから「個人保証をはずしましょう」といってくることはまず、ありません。

いわれないことはしない。

そういうスタンスの行員が多いのだと思っていれば間違いありません。

しかし、こちらから提示して、もし、 1行の個人保証をはずせたら、後は GOサインがかかったも同様です。

他行に、「〇〇銀行は個人保証をはずしてくれたんですが、御行では個人保証をはずせませんか?」と聞いてみましょう。

それでも色よい返事がないなら、「〇〇銀行が個人保証なしで肩代わりしてくれるといっているんですが」とさらに一押ししてみるのです。

ここまでいえば、銀行は焦り出し、稟議を上げるはずです。

いうまでもなく、ここまで強気に出るためには、準備段階として、資金を多めに借入し、余剰資金をもっておかないと交渉負けしてしまいます。

❖中小企業再生支援協議会の経営改善計画の現実 中小企業の経営が行き詰まると、銀行は「中小企業再生支援協議会に行って経営改善計画を策定し、再生を図りましょう」ともちかけてくることがよくあります。

「中小企業再生支援協議会」とは中小企業の事業再生に向けた取り組みを支援する国の公的機関です。

都道府県ごとに配置されていて、事業再生の専門家が無料で相談にのってくれます。

守秘義務厳守が原則で、情報がもれることはなく、安心して相談できる、とされています。

しかし、「中小企業再生支援協議会に行ってみましたが、先が見えません」と不安げな顔で相談に来られる経営者が後を絶ちません。

それも道理で、中小企業再生支援協議会が作成する再生計画案は、 ① 5年以内に債務超過を解消する。

② 3年以内に経常利益が黒字になる。

の2つの要件をクリアする内容でなければならないとされているのです。

この前提で作成された「再生計画案」は金融機関の債権カットもあり得るなど非常にありがたい話のように見えますが、現実はこうは運びません。

銀行が同意しないと何も進まないからです。

金融機関によって体力も担保カバー率なども違うから無理なのです。

❖事業は助かるかもしれないが、社長は「死んでしまう」 結論からいうと、「再生計画案」で助かるのは、金融機関と会社だ、と考えるべきです。

まず、再生計画案が策定され、金融機関との協議に移ると銀行は可能なかぎり債権の回収にかかります。

再生計画をつくるとき、経営者本人と会社の資産は徹底的に調査されており、銀行はどこから回収できるかを見通しています。

中小企業再生支援協議会の設置は、産業活力再生特別措置法に基づいたもので、その目的は、産業競争力を目指すために事業再編の円滑化を図るというものです。

したがって、会社はなるべくつぶさないように支援策を講じるでしょう。

会社がつぶれてしまうと債権は回収できず、雇用や技術も失われてしまうからです。

そのために多くの場合、経営責任として「社長の個人保証」を求めるわけです。

したがって、その先、経営が行き詰まれば、社長の人生はそこで終わり! 家族まで路頭に迷う結末になってしまいます。

▼中小企業再生支援協議会に期待しすぎない。

中小企業再生支援協議会は自らが主体になって行う事業再生のためにうまく活用していく。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、日頃から、最悪を想定して最善の策を講じる習慣をつけ、即、行動している。

経営とは大海を船で航海しているようなものです。

船が大型であれば荒波にも耐えられますが、中小企業は小型の船です。

それでも、荒波を進んでいかなければなりません。

だからこそ、いまは順調に進んでいたとしても、いつ何時、嵐が襲ってくるかもしれないと考え、嵐への備えをしておかなければいけないのです。

つまり、事業とはいつまでも順調とはいかないものだと肚をくくって、経営に当たらなければいけない。

それが中小企業の経営です。

多くの社長は、特に創業社長は成功することばかりを夢みていて、失敗することは想定していません。

しかし、厳しいことをいうようですが、事業で成功する確率はおそらく 5%以下でしょう。

つまり、事業はむしろ、失敗することを前提に考えるべきで、社長である以上、常に、失敗したときの対処方法を考えていなければいけないのです。

❖復元力こそ経営者の底力だ! 経営が暗礁に乗り上げる。

これは車をぶつけてボディがへこんだ状態にたとえられます。

大破したわけではない、だから廃車にしなければならないというわけではない。

しかし、へこんだボディ、調子が悪くなったところを修復しなければならない。

この修復力、故障やダメージを元に戻す力が復元力です。

会社が危機に瀕したとき、素早く動けるかどうか。

ここが、企業を再生できる社長か、会社をつぶしてしまう社長かの分かれ道になるのです。

「思い立ったが吉日」という言葉もあるように、危機を予感したら即、具体的に動く。

すぐにやる。

すぐ試す。

そのフットワークのよさこそが大きな収益源を探り当て、再生、さらには次の成功へと進む道を拓く原動力になるのです。

すぐに動いた場合は、失敗しても早く動いた分、修正する時間があり、その余裕が痛手を小さく食い止めることにつながります。

軽傷ならば何度失敗しても必ず起き上がれます。

そして起き上がるたびに、必ず何かをつかみ、何かを学びます。

その結果、成功のきっかけを引き寄せ、最終的に大きな成功をつかむ可能性が開けるのです。

❖どんなときもダメ元で交渉する 企業の成長、前向きな事業展開のためには「資金」を確保しなければなりません。

「資金」は船舶や航空機の燃料に当たるもの。

燃料である「資金」がなければ、企業は出航も離陸もできないし、航海や飛び続けることもできません。

常に燃料を満タンにしておく。

つまり、十分な資金を確保する。

そのためには資金提供元である金融機関を引きつけ、ときには、寄り倒すくらいの強い姿勢、力が必要です。

私は相談にいらした社長には、いつも「ダメ元で交渉してください」といっています。

実は、相談にきていながら、「たぶん、無理でしょうね」という社長も多いのです。

最初から、「たぶん無理だと思うんですけど」とか、「どうせダメでしょう」といっているようでは、道は閉ざされてしまいます。

真の交渉力は「ダメだ」といわれたところから発揮されます。

銀行は手ごわく、ときには冷厳で、中小企業の味方になってくれるという期待は裏切られることのほうが多いでしょう。

しかし、手ごわい相手であればいっそう、こちらも肚をすえて、ダメ元で粘るだけ粘るのです。

あきらめずに何度も何度も繰り返し、繰り返し交渉しているうちに、ついに先が見えてきます。

私が 140億円の負債から脱出したのもまさに、ダメ元の交渉を繰り返した結果です。

▼常に最悪を想定し、素早く行動する。

そしてダメ元の交渉力をもっていれば、経営に失敗することはない。

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