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社長のお金の基本・ Ⅰお金の使い方

まえがき 会社は、どんなことがあってもつぶしてはいけない。

倒産だけはしない。

これが私を貫いている信念です。

どんなに高い理想を描いて起業したとしても、社長になったそのときから、社長は「会社を倒産させないこと」という使命を背負うことになったのだと自覚してください。

倒産してしまったら、高い理想も、輝やかしい理念も地に落ち、打ち砕かれてしまいます。

同時に、社長の人生も崩壊し、ほぼ再起不能です。

家族の暮らしも大きく揺らぎ、みなの人生の行く先も不透明になってしまいます。

私は、そうした悲劇を 1件でも少なくしたいと、中小企業を対象に、「絶対に倒産させないためにどういう経営をすればいいか」についての経営相談にあたっています。

経営とは、お金を集め、使い回し、利益を出して残し、そのお金を新たに使い回しながら事業を大きく育てていくことです。

私が、「絶対に倒産しないための」経営相談を始めようと思ったきっかけは、ほかならぬ私自身が、いつ倒産してもおかしくないほどの絶体絶命の経営危機と、長い間、戦った経験をしたことでした。

私は、父が創業した三條コーポレーションの二代目として、神戸の三宮一帯で手広く、貸しビル業と飲食業を展開していました。

事業は順調に拡大していき、地域ナンバー 1企業となり、繁栄を謳歌していたのです。

しかし、 1995年1月、阪神・淡路大震災で被災。

事業は一気に傾き、総額 140億円という巨額な負債を背負い込んでしまいました。

これほどの危機に立ちながら、私は、「どんなことがあっても会社は倒産させない。

なんとしても家族の生活は守る」を不動の信念として戦い続け、ついに、 140億円を返済し、完全復活を遂げました。

しかも個人資産もしっかり守り抜いたのです。

気がつけば 8年という歳月が流れていました。

この間の戦いは凄絶の一言でした。

返済までの道で私は心身ともにボロボロになり、何度となく、いっそ死んだほうが楽だろうと思ったくらいです。

しかし、ついに借金を返し終わったそのとき、これまで味わったことがないほど晴れやかで、清々しい気分を味わっていました。

同時に、 1人でも多くの社長・経営者たちにこの気分を味わってもらいたい。

絶体絶命のところからでも倒産しない道はあると伝えたいという気持ちが、強く湧きあがってくるのを感じていました。

その気持ちを生かして、その後、私が選んだのは、中小企業の経営者の経営上の悩み相談にお応えし、事業を育てていく後押しをするといういまの仕事です。

経営アドバイザーとして独立してから今日までに、約 1300人の経営者の相談にのってきました。

なかには、明日にも倒産しそうな会社もあり、しかし、そうした方のご相談に全力で応じた結果、倒産をまぬがれ、いまでは順調に業績を伸ばし始めた企業も少なくありません。

上場を目指そうと意気込んでいる企業もあります。

私は実際に、自分自身が中小企業を経営した体験をもっています。

災害をこうむったことからとはいえ、経営がうまくいかなくなり、 140億円という借金を返済する過程で、大手銀行、地方銀行、信用金庫など様々な金融機関と真っ向勝負をしてきた経験を積んできています。

だからこそ、中小企業の経営者たちの悩みを真に理解することもできれば、正攻法から驚くような裏技まで、実際に、困難な局面を乗り切っていく、現実的な方法をアドバイスすることができるのだと自信をもっています。

「そのような方法があるのですね」「そんなやり方は考えてもいなかった」など、その社長が考えている範疇を超える知恵や創意工夫などが一瞬にひらめくことによって感動してもらえ、話を真剣に聞いてくれるのです。

だから、ここまでやってこられたのでしょう。

日本広しといえども、私のような経営アドバイザーはほかにいないと思います。

胸を張って、私はこういえます。

もちろん、優秀な経営コンサルタントはたくさんおられるでしょう。

でも、彼らの多くは大学院や経済研究所などで得た、いわば机上の知恵を提供されています。

実際の経営経験、借金と戦った経験のない人に、現実に即したアドバイスができるはずはありません。

多くの社長から私のアドバイスは説得力があり、「実際に先生のアドバイスどおりにした結果、危機をまぬがれた。

本当に感謝している」といっていただいているのは、とてもうれしいことだと思っています。

そのノウハウやアドバイスをまとめた前書『社長の基本』(かんき出版)ほか、これまで出版した著作はお陰で好評で、多くは版を重ねており、読者から感謝の手紙やメールなども何千通もいただいています。

しかし、本を読んで相談にこられたといいながら、まだまだ、中小企業の経営について、あまい考えから抜け出していなかったり、今日明日乗り切れればなんとかなると先の展望をもたないまま、駆けずり回ったりしている方が少なくないのが実情です。

そうした社長さんをなくしたい。

少なくとも私とご縁があった経営者を倒産だけはさせたくない。

さらに一歩踏み出して、厳しい状況のなかでもどんどん事業を発展させていく、そんな経営者へと変わってほしい。

そんな思いを込めてまとめたのが本書です。

はっきりいえば、経営とはお金を上手に扱うことに尽きる。

私はそう、考えています。

本書は、経営のキモである「お金」に的を絞り込み、社長として心得ておくべき、お金についての考え方、お金を使う、集める等のノウハウについて書いています。

さらに銀行(金融機関)との上手なつき合い方、もっといえば銀行の〝利用法〟についての秘策まで、私が命がけで身につけた知識、そして多くの相談者との対話から知恵を絞って得たテクニックをあますところなく書き込んであります。

本書は、 2017年に出版した『社長の基本』に次ぐ、中小企業の経営者に向けた書の第 2弾です。

本書をお読みいただけば、お金に関する社長の心得はわかっていただけるはずです。

さらに、『社長の基本』も合わせてお読みいただくと、経営者としての心得をより広く、細部にわたって身につけていただけると思います。

もう一度、申し上げましょう。

経営とはお金をどう回していくか。

この一言に尽きます。

お金が回らなくなったら、会社は終わりです。

そうならないために、あらゆる知恵と策を講じるのが社長の仕事です。

そのことをしっかり自覚して、本書をお読みください。

本書が、あなたを「会社を倒産させない社長」に変貌させるためのお役に立てば、著者として冥利に尽きます。

2019年2月三條慶八

社長のお金の基本 目 次

まえがき

社長のお金の基本・ Ⅰお金の使い方

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、最後の 1円まで、お金は前向きなことだけに使っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、お金を小出しにではなく、ここぞというときにドカンと使っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、わが社は人をつくっています、といい切れるお金の使い方をしている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、トイレや更衣室をきれいにするなど、職場環境を整えるためにお金を使う。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、社員との飲食代は自腹で払う。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、売上、経費、利益率など、経営の基本の数字がいつも頭に入っている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、「お金のことは人任せ」にせず、自分でやっている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、手間暇を惜しまず、めんどうくさい作業に徹している。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、社員の失敗もコストのうちだと考えている。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、費用をケチらず、質の高い税理士と契約している。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、 5年後、 10年後を見越してお金を使っている。

社長のお金の基本・ Ⅰお金の使い方

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、最後の 1円まで、お金は前向きなことだけに使っている。

「会社を始めてしばらくは何もかも絶好調で、社長業は天職だと思い込んでいました」 ある日、相談に見えた社長は笑顔でこう話し始めました。

でも、笑顔だったのは最初だけ。

正直な話、私のところに相談にこられる社長は、いまは順調だが、将来に危機を感じて先手を打ちたいとこられる社長もいますが、ほとんどはなんらかの問題を抱えた方です。

私はあんのじょう、と思いながら、話の行方に耳を傾けていました。

3年ほど前に、居酒屋と飯どころを合体させたビジネスを始め、最初は飛ぶ鳥を落とす勢い、売上はぐんぐん伸びていき、 1年前に相談にきたときはまず 2号店を出し、以後はチェーン展開をしていきたいと鼻息の荒い話を元気よく語っていました。

ところが今回は、「もうきつくて、きつくて。

毎月、家賃などの経費と給料を支払うのがやっと。

もう倒産も覚悟していますわ」というのです。

突然、風向きが変わったのは、近所に全国チェーンの居酒屋が出店したことからです。

最近の居酒屋は食事のメニューも充実していて、業態は相談者のところとほとんど同じ。

でも、全国チェーンのほうが知名度が高く、価格も低めです。

これではひとたまりもなく、相談者の店の売上は急坂を転がるように落ちていってしまったのです。

こうしたケースはあらゆる業界で、全国いたるところで起こっています。

どの業界も激しい競争が繰り広げられていて、その結果、敗者も出れば、もちろん勝者もいます。

しかし、概して中小企業は後手に回り、苦しむケースのほうが多いのです。

私はこの社長にいくつかのアイディアを出し、それらを実施するためにどのくらい投資できるかと話を進めようとしたところ、社長はなんと、「実は、もうダメじゃないかと思っているんですよね。

相手は全国チェーンですし。

倒産に追い込まれるのは目に見えていると肚はくくっているんです。

まだ金は少々ありますから、店を閉めるときに従業員に多少の退職金は渡せますし……」と言い出すではありませんか。

ここまで聞いて、実は私は、この社長はもう終わりだなと引導を渡したくなっていました。

前書の冒頭に、私はこう書きました。

経営者にとって一番大事なことは、「どんなことがあっても会社はつぶさない」と肚を決めていることです、と。

その流れでいえば、「倒産に追い込まれると肚をくくっている」というこの社長は、もうその段階で〝死に体〟です。

でも、その場合、従業員に多少のお金を渡したいという言葉には彼なりの誠意が感じられます。

そこで、私はこう提案しました。

「お店に新たな魅力を出す工夫を考えて、いま手元に残っている資金を投じて、もう一勝負してみませんか?」 そしてその後何回も相談を繰り返し、徹底的にご当地にこだわった店づくりを進めることにしました。

店内にお祭り屋台を設け、メニューもその地方のおふくろの味主体のものに変えるなど、店内は地域のお祭りの日のような雰囲気の演出に一変させました。

ご当地にこだわった転換は予想以上に受け、店は息を吹き返し、いまでは全国チェーンのほうが青息吐息だというウワサが聞こえてくるほどです。

倒産も覚悟。

そのときには従業員に多少の退職金を、と用意していたお金を新路線実現のためにと前向きに使ったことがきっかけになって、この店は息を吹き返したのです。

どんな場合もお金は前向きに使うべきだともお話ししました。

しっかりした経営計画があれば、銀行を動かすこともできるはずです。

銀行からお金を引き出して、さらに大きな投資を行う。

同じ肚をくくるなら、倒産ではなく、どん底からでも絶対に再興するぞと肚をくくってほしいと強く願っています。

従業員だって、わずかな退職金をもらって職を失うよりも、会社が元気を取り戻し、働き続けることができるほうがずっとうれしいはずです。

▼お金はもっと発展するため、新商品・新展開を実現するためなど、前向きに使う。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、お金を小出しにではなく、ここぞというときにドカンと使っている。

中小企業では使えるお金にはおのずと限界があるのが普通です。

成功にもっていけない経営者は、そのお金をチマチマと全体的に使う傾向が見られます。

それでは大手の攻勢には太刀打ちできません。

私は、いつも「お金はメリハリをつけて使いなさい」といっています。

社員が、「この予算は 100万円かかります」といってきたら、「ここは勝負どころだから 100万、 200万じゃなくて、思いきって 300万ぐらいいっておけ!」 このくらいの気合で、社員の背中をドンと押す。

その気合に社員は勇気づけられ、勝負に立ち向かう勇気を奮い立たせるのです。

ところが、多くの経営者はその逆を行きます。

経営改革を仕掛けるときは、たいてい事業がうまくいかない、あるいは多少陰りが出てきたなど、金回りが厳しくなってきたタイミングに当たっています。

だから、社員が「 100万円の予算を」といってくると、「なんとか 50万円で収まらないのか」などとむしろ、予算をケチってしまうのです。

これでは効果は期待できません。

思いきったことができないからです。

予算が潤沢でないならなおさら、お金はチマチマ使ってはいけません。

こういうときこそ、勝算があると思ったのなら肚を決めて、思いきってお金はまとめて使うべきです。

❖毎年、同じような予算編成では時代から遠ざかっていくだけ 不思議でたまらないのは新年度の予算を考えるとき、前年の予算をもとにして、各予算を増減していく社長が多いことです。

この方式は官公庁の予算編成と同じです。

前年度の予算が余ると次の年の予算を減らされてしまうので、年度末になると突然道路工事が増える、などというウワサがもれ聞こえてくる、あの方式です。

しかし、親方日の丸の官公庁と違って、中小企業でこれをやったら、 1、 2年で必ず倒産の危機が訪れるでしょう。

前年度、予算が余ったら、その予算は不要だったわけですから、次の年は大ナタをふるって削減すればいいはずです。

それに気づこうともしないで、漫然と予算を組んで、ダラダラチョボチョボと使っている。

これでは事業の陰りを払拭するどころか、陰りはいっそう濃くなり、会社はどんどん悪くなっていくだけです。

そうではなく、予算が足りなかった、つまり伸びている分野に、次の年はドンと大きな予算をつけていくほうがずっと効果的です。

限られた予算ならば、なおのこと、伸びていく勢いがある分野、成長する分野に予算を集中的につけるべきです。

❖手元の予算を全額投入。

うどん屋に転向して成功した京名産食品卸業者の例 顧問先に京都の老舗料理問屋があります。

京漬物や昆布佃煮などの京名産品を、職人技にこだわって製造していたので、かつては多くの得意先をもち、十分儲かり、かなりの資産ももっていました。

しかし、漬物などの京の名産食品市場は縮小の一途。

いまや市場規模は最盛期の半分近くまで縮小しているのです。

そのうえ、原材料も品薄になり、値が上がり続けています。

漬物用の京野菜は、京都の山間部などでほそぼそと栽培されているのが現状。

昆布などの佃煮の材料も品薄になる一方。

当然、材料費は上がり続けています。

気がつくと赤字体質に転落。

それでも先祖からの資産を食いつぶしながら、代々続けてきた家業を自分の代でやめるわけにはいかないとふんばり続けています。

そうした状況を見かねた私はついに社長に決断を迫りました。

「このままだったら、じきに残った資産を食いつぶし、何も残らずに破産してしまいますよ。

そのほうがよっぽどご先祖さまに申し訳が立たないんじゃありませんか」とあえて冷たく厳しいことをいったのです。

それから 2年。

工場だったところを大金をかけて改装し、現在は京うどんを提供する店になっています。

販売スペースだったところのいかにも老舗らしい雰囲気を残した店内はインスタ映えすると若い女性の間で人気になり、その投稿を見て外国人旅行者も続々訪れる、京都に行ったらぜひ立ち寄りたい店のリストにものるようになっています。

事業の改変に向かうとき、私は2つの条件を口をすっぱくして言い続けました。

1つは、「とにかく利益が出せる事業を選ぶこと」。

もう1つは「自分たちにしかできない、そして自分たちもこれならやりたい」という事業を選ぶこと、さらに、とにかく思いきって勝負すること。

お金も最大限投入しなさいとも言い続けました。

中途半端なイノベーションで成功した例はないのです。

社長と先代社長の会長は 1年間悩み続け、さらに 1年かけて、京の味の老舗企業だからできること、そして儲かる事業は何だろうと考えぬき、ついに、食品製造卸という代々の家業ののれんを下ろす決断を下しました。

そして、最大限のお金を投じて、京うどん屋として新たな伝統づくりに勇気ある一歩を踏み出したのです。

その結果、この会社は確実に復活の道を歩み始めています。

会社の生死の分かれ目は、経営者が思いきったお金の使い方ができるかどうかにかかっているということです。

▼お金はホームランを打つために集中的に使う。

小出し資金ではヒットも打てない。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、わが社は人をつくっています、といい切れるお金の使い方をしている。

社長のお金の使い方でいちばん大切なことは、目先のことに使うのではなく、将来を見据えてお金を使うことです。

たとえば人材育成。

I T時代だとか省力経営時代だといっても、経営のキーワードはあくまでも「人」です。

進化し、成長し続ける会社には必ずすぐれた人がいます。

中小企業は大企業のように優秀な人材を確保することはむずかしいと覚悟しておいたほうがいい、とはっきりいっておきます。

特に最近は、かつてないほどの人手不足、人材不足です。

では、中小企業は有能な人材は得られないのか、と希望を失ってはいけません。

人は育てることができるのです。

いい会社は必ず、従業員の成長のためにお金を使っています。

経営の神様といわれる松下幸之助さんにはこんな逸話が伝えられています。

松下電器産業株式会社は世界屈指の家電メーカー、いまではパナソニックと社名を変え、暮らし全般だけでなく、電気に関わるさまざまな事業を世界規模で展開しています。

なぜ、ここまで大きく成長できたのか。

その答えは、松下さんの「お金の使い方」にあるのだと思います。

松下さんは、創業まもないころから、「松下は何をつくる会社か?」と尋ねられたら、「松下電器は人をつくるところです。

合わせて電気器具をつくっております」と答えていたというのです。

社員にも徹底して、こう答えるようにといっていたそうです。

「人をつくる」という精神を全社員が共有するように徹底していたわけです。

私の顧問先の社長にも、松下さんのような方がいます。

ある金属加工関係の社長さんは、一にも二にも人を育てることに熱心に取り組んでいて、外国語や技術関係の勉強をしたいという社員には費用を出し、勉強のある日は定時に会社を出られるように、周囲にも理解を求めるなど、最大限の応援をしています。

また、社員研修も毎年多額の費用をかけています。

社員の健康管理に熱心なある社長さんは、パート社員まで人間ドックを受けるようにすすめており、費用を全額負担しています。

健康管理は仕事にはいうまでもなく、家庭人としても大事です。

人間ドックをすすめる企業は少なくありませんが、大手企業でも人間ドックの料金は一部負担、もしくは多人数が受診するので割引料金になる、それを自己負担するところが大半です。

ところが、この企業は「全額負担」。

社員もそのありがたみは十分に理解していて、「うちの会社の規模でここまで行き届いた健康管理をしてくれるところはない」と社長の太っ腹ぶりに大いに感謝しています。

中小企業の経営者のなかには、「この会社はオレのもの」と考え、自分優先のお金の使い方をする人が少なくありません。

ある輸送関係の社長はその典型。

自分や身内にはあまく、従業員には厳しく、パワハラ的なふるまいはしょっちゅう、という人でした。

収益が悪くなると従業員の働きが足りないからだと決めつけ、すぐにボーナスカットや減給という手をとります。

その一方で、社長ははた目にも荒い金づかいをあらためる気配がありません。

考え方そのものが自分優先、自分中心なのです。

これでは人が育つどころの話ではありません。

社員は 1人去り、 2人去り……。

気がついたときには、完全な人材不足、人手不足で、会社が回らなくなっていました。

人材確保が厳しい現在、人の確保はどの企業にとっても生命線といってもいいくらい大事な課題です。

いまいる社員は会社の将来をつくっていく大事な資源なのです。

人を育てるために一生懸命で、社員の健康管理や研修、海外視察など社員の成長のためにお金を使っていると、お金はめぐりめぐって、やがて何倍にもなって返ってきます。

お金は貯めるのではなく、使って増やすことを考えたほうが賢明です。

▼社員のために使ったお金はやがて何倍にもなって返ってきて、会社を大きく育てる力になる。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、トイレや更衣室をきれいにするなど、職場環境を整えるためにお金を使う。

「どういうわけか、うちの会社は女性社員がすぐにやめてしまうんです。

能力のある女性にはどんどんやりがいのあるポストを任せるようにしていますし、もちろん給与にも男女の差はないようにしています。

何が原因なのでしょうかねぇ。

私には女心はわからない……」とぼやくある社長さん。

女性を活用できないようではいまの時代、成功しません。

社長さんの悩みが深いこともよく理解できます。

この会社はタオル製品をつくっていて、新製品の開発など、女性の感覚はこの会社の大きな武器になっているのです。

女性社員が定着しないのは、深刻な問題でしょう。

❖トイレ、更衣室がきれいだと女性社員の定着率がアップする さっそく女性社員に集まってもらい、かけ値のない本音を話してほしいといったところ、ある社員が「私、神経質なのかもしれませんけど、会社のトイレに入る気がしないんです。

なるべく家ですませてくるか、お昼休みにランチに行くファミレスなどのトイレを使うようにしています」 この一言に堰をきったように、「更衣室がせまくて汚い。

しょっちゅう掃除をしていないみたいで、ときどき臭いがこもっていることもあって……」「社員食堂は安くて味はまあまあなんですけど、雰囲気がいまいちで……」と口々に、社員用の施設に対する不満が飛び出しました。

いつも来客用のスペースしか知らず、来客用のトイレしか利用したことがない私には驚くような話でした。

最近の女性は職場を選ぶときの条件の1つに、職場の設備等の環境をあげる人が増えています。

なかでもトイレは最重要ポイントの1つ。

更衣室の清潔さをチェックポイントにあげる女性も想像以上に多いことに気づかなければいけません。

この社長さんは古い考えのもち主で、女性社員を確保したい、そのために、と思いつくのは、給与や昇格などの男女差をなくすこと、後は出産、子育てのための支援を充実させることだと考え、それらにはそれなりに力を入れてきました。

もちろん、そうしたことも大事な課題です。

でも、最近の若い世代、特に女性は、働く環境にも大きな関心をもっていることを心に留めなければいけないでしょう。

❖社員の絆を強くするカフェテリアのような社員食堂 百聞は一見にしかず、といいます。

あれこれ話をするよりも、実例を見せたほうがインパクトが強いのではないか、そう考えた私はある日、この社長さんを、大手の化学品メーカーに連れていきました。

午後から、この会社の女性社員の会社に対する要望をヒアリングし、その結果を踏まえてアドバイスする予定があったので、担当者に事情を話し、社員食堂でランチを一緒にとる機会を設けてもらったのです。

この会社は少し前に新社屋が完成したばかり。

新社屋では最上階のいちばん眺望のいいスペースに社員食堂をもってきました。

もちろん、呼び名も「食堂」ではなく、「サロン・ド・フルール」(花のサロン)と名づけ、ホテルのラウンジのようなインテリアでまとめられています。

これまでは、本社ビルの最上階などは社長室や重役室のためのスペースと決まっていたもの。

しかし、最近は、社内でいちばんいいスペースは社員のためのスペースに割く会社が増えています。

ほかにも、眺めのよい上層階に社員のためのアスレチックジムを設けている会社もあれば、社員が午後、軽い睡眠をとれるスペースを用意している会社もある……という具合で、最近は、社員の待遇改善といえば給与アップ、という考えだけでは通用しない時代になっています。

中小企業では大企業のようなわけにはいかない、という事情もわかります。

でも、いまやそういう時代になっているのだという認識はもち、できるかぎりの配慮はすべきでしょう。

この社長も、最上階の社員食堂を見学してからは考え方を大きく軌道修正。

それまでトイレや更衣室、社員食堂を清潔で心地よい場にするということには気が回らなかったと苦笑していました。

そこで、私は「まず、トイレと更衣室をリフォームしたら? 最近では、コンビニだってトイレがきれいじゃないと評判が落ちるといわれているようですよ」とアドバイスしました。

社長は素直な人で、さっそくトイレと更衣室をリフォーム。

せまいながらも化粧スペースもつくったところ、女子社員の喜びようは想定以上。

更衣室には大きな姿見サイズの鏡を備え全身をチェックできるようにしました。

これからデートという日など、念入りなおしゃれができて、これも女性社員には何よりうれしい配慮だといえるでしょう。

トイレ、更衣室の改善で手ごたえを得た社長さんは、次に社員食堂の改善に取り組みました。

それまで地下にあった食堂を中庭に面した日当たりのよいところに移し、ウッドデッキ風のカフェスペースも設けたのです。

すると、それまで社員食堂は利用せず、コンビニで買ってきたパンなどを作業スペースのかたわらでボソボソ食べるだけだった社員たちが 3人、 4人と連れ立って中庭の食堂に行くようになり、ランチ後も、お茶を飲みながら時間いっぱい楽しげに談笑する姿が見られるようになったのです。

こうした談笑から社員どうしの絆が生まれ、おたがいにがんばって仕事を続けていこうと意欲をかきたてられるようになっていきます。

その結果、社員の定着率は格段と引き上げられていくはずです。

会社にとっていちばん大事な人は従業員です。

従業員が快適に働ける環境を整えること。

これは会社にとって最優先課題だと考えるべきです。

▼清潔で心地よい環境で働きたい。

社員のそうした気持ちに応えるためにお金をちゃんと使う。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、社員との飲食代は自腹で払う。

中小企業の経営者のなかには、「オレがつくった会社だ」「自分の会社だ」という意識が強いタイプが少なくありません。

そういう経営者に見られるのが、会社のお金も自分のお金も同じだと思い込んでしまうこと。

たとえ小規模会社であっても会社は会社。

自分のお金とはきっちり線を引いておかなければいけません。

なかでも、意外な思い違いが、社員を連れて飲みに行くときのお金の扱いです。

きつい納期をみなでがんばって乗り切った日など、「やあ、みんなご苦労さん。

お陰で今回も納期をクリアできて助かったよ。

本当にありがとう。

今日はみんなで大いに盛り上がろう! 〇〇屋に全員集合だ」 こんな掛け声で社員を招集。

行きつけの店で「なんでも好きなものを食べてくれよ。

今日は飲みほうだい、食べほうだいだ」などと大見栄を切ったところまではよかったのです。

いざ、支払いになったとき、「領収書、〇〇会社宛てで」などといっていないでしょうか。

❖気持ちよくおごってくれる太っ腹社長には社員がついてくる 社長にしてみれば、「社員の飲み会は会社の行事の1つ。

経費で落として当たり前だ」と思っているかもしれません。

しかし、小規模な会社であればあるほど、そして社長自身が「自分の会社だ」と思い込んでいるくらいの規模の会社であればなおさら、社員は「社長は大将だ、親分だ」と社長に全幅の信頼を置いているものです。

お金に関してもドンと太っ腹でいてほしいのです。

社長が社員と 1杯飲んだり、ご飯を食べたりするときに領収書をもらって経理に渡していれば、社長のイメージは地に落ちてしまいます。

「意外にセコい社長だったんだな」と幻滅してしまう社員だっているでしょう。

こうなってしまえばお終い。

社長が仕事でリーダーシップを発揮しようとしても、素直についていく気にはならないものです。

恐ろしきは領収書! です。

「もちろん領収書をもらうときには、社員にはわからないように陰でこっそり頼みますよ」。

たいていの社長はこういいます。

でも、社員は社長が思っている以上に、社長の行動には敏感に目を光らせているもの。

領収書をこっそりもらおうとしていることくらい、先刻、お見通しです。

もし、社員にはバレないように経費扱いにしたいなら、プライベートカンパニーをつくって、そこの会社のカードで支払うなど、もう少し頭を使うようにすべきです。

❖社員の誕生日を覚えていて、自腹でプレゼントを贈っている社長 社員数十人までの規模ならば、社長は社員全員を自分の子どもと同じくらい、 1人ひとりに目をかけ、心を配って見ているべきだ。

これは私が社長をしているときからの信念でした。

一例をあげれば、私は社員全員の誕生日を覚えていて、その日にはカードとプレゼントを贈っていました。

私の著書でその話を読み、さっそく、 50人程度の社員全員の誕生日をスマホに入力し、それぞれの誕生日にはカードと記念品を贈ることにした社長がいます。

彼はさらにアイディアを工夫し、記念品には銀のスプーンを選びました。

毎年、誕生日ごとに 1本、また 1本と増えていく。

6年勤続すれば銀のスプーンが半ダースそろうというわけです。

領収書をもらうかもらわないか、だけではなく、社長になったら、いつでも、どんなことでも、誰かに見られている、特に社員が目を光らせているという意識はもっていなければいけない、と私はよく話しています。

それでは、プライベートな時間がないじゃないか、と反論する社長もいるでしょう。

でも、社長とはそういうもの、そうした立場です。

有名人はいつでも、どこかから誰かに見られている、そのために行動が制限されることを〝有名税〟といいますが、社長業も同じことで、どんなときでも、社員の上に立ち、社員の人生を預かり、引っ張っていく責任と自負をもっていなければいけません。

いつも誰かに見られている、だから、いつ何時でも、誰に知られても恥ずかしいところがないように、身を律していなければならない。

それが社長になったものの自覚というものです。

社員との飲食代や記念日の贈り物などは自腹でドンと支払う。

それを惜しんで社員からの信頼、リスペクトを失ってしまうことを考えれば、それらの支出はタカが知れている……とは思いませんか。

▼社員は社長の一挙手一投足に関心をもっている。

セコイ、ケチくさいと思われたら、社長についていく気は失われる。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、売上、経費、利益率など、経営の基本の数字がいつも頭に入っている。

相談にいらした経営者に、「会社の経営状態がわかる帳簿類はおもちですか」というと、平然と「いや、もってきていません」という例はけっして少なくありません。

初めて出会う場合、そこまでの経営資料は必要がない。

あるいは見せたくないと思う気持ちもある程度は理解できます。

しかし、私の講演会を聞きにいらした、その延長線上の相談会ならばともかく、ちゃんと相談の時間のアポをとっていらした場合でも、こういう経営者がいるのです。

経営状態がわかる書類とは、普通、決算書(内訳書も含む)、近々の試算表、借入一覧表、資金繰り表、担保物件の謄本などをいいます。

なかには、「数字のことは全部、経理担当に任せているので、私はよくわからないんです。

社長はもっと大きな立場で会社全体を見回しているべきだと思っていますから」と数字を把握していないことを誇らしげに語る社長もいるので、仰天してしまいます。

会社の将来を見通し、 3年後、 5年後、 10年後、会社がどうあるべきか。

そのために社長としていま何をすべきかを考え、行動するのが、社長の大きな役割です。

でも、それまでに会社がもたなかったら、どうするのでしょう。

いちばん大事なのは、将来計画を立てながら、現在から将来まで会社を継続させていくこと。

それ以上に、さらに発展させていく。

そのためには足元の経営をしっかりしたものにし、その状態を継続させていくことが必須です。

お金は会社の血液と同じです。

どんなに優秀な製品があろうと、抜群の販売力があろうと、血液が滞ったら会社は即、死んでしまいます。

そう、倒産です。

血液 =お金がいま、どういう状態なのか。

経営資金は潤沢なのか。

かつかつなのか。

足りないのか。

お金の現状を示しているのが資金繰り表です。

私のところにくるときにそうした書類を持参しないくらいですから、銀行に融資の交渉に行くときも、おそらく「お陰さまで経営はうまくいっています」ぐらいの話しかしないのでしょう。

もちろん、大まかな話はできるのでしょうが、ちょっと突っ込まれるとおろおろし、立ち往生するに違いありません。

細かなお金の出入りは経理任せ。

儲かっているかどうかは税理士任せなのでしょう。

こういう社長では安心して融資はできない。

私が銀行員であったとしても、そう判断すると思います。

提出した書類の説明がきちんとできなければ社長の評価もダダ下がりでしょう。

❖売上と利益、資産と負債の数字を頭に入れておくのは社長の基本のキ といっても、会社のお金は毎日出入りし、毎日動いています。

その動きを経営者が毎日、細かくチェックし、把握しているように、というつもりはありません。

ただし、週ごと、月ごとなどに数字の報告をきちんと受けて、その動きをしっかり頭に入れておかないようでは、経理担当だって数字の扱いが粗くなるでしょう。

まして税理士、会計士など外部の人間は、会社に対する思い入れも責任感も、経営者に遠くおよびません。

会計士や税理士は会計・税務のプロとはいえ、担当しているのはあなたの会社だけではありません。

契約している多数の会社、あなたの会社はそのなかの 1社にすぎない。

立場を変えて考えるまでもなく、あなたの会社への思い入れも責任感もそこまで大きくないのは当たり前です。

毎日、血圧などを測ることが健康管理の基本であるように、売上や資金繰りなど経営の指標である数字は定期的にチェックし、だいたいのお金の流れはいつも頭に入れておくこと。

これは社長業の基本です。

中小企業は、資金ショートしたら一巻の終わりだということを肝に銘じて経営するべきです。

❖生きた数字を知っており、分析している社長は経営力が高い 顧問として契約すると、最低月 1回の面談を行い、さまざまな質問をしていきます。

また、メール、 LINE、電話などで日々の相談、悩みを聞いています。

こうした現況を把握するための努力は、アドバイザーとして欠かせないことだと思っているからです。

たとえば、各店ごとの前年対比や商品ごとの売上構成、目標売上に対する実売比率、商品ごとの原価率・部門ごとの利益・人件費比率・投資効率・顧客構成、リピーター率、クレーム数などおそらく社長が気づいていない数字も多く含まれます。

私が社長だったら、聞かれるまでもなく、どれも気になる数字です。

これらの数字を把握していくと、なぜ、売上が上がったのか、反対に下がったのか、を分析できるのです。

「なぜ?」その数字になったかを検証することが大切です。

ところが、数字を尋ねてもすぐに返答できない社長がいるのです。

なぜか。

こういう社長は毎日、事業の動き、数字を注視していないのです。

部下に命じてやたらに資料は作成しているのでしょうが、数字は記録すればいいというものではありません。

その数字から何を読み取るか。

毎日、数字の動きを注視していると、数字の動きからいま、会社を支える事業に何が起こっているのか、直感的に読み取れるようになるはずです。

数字は市場の動向、お客様の声、自分の会社がどう評価されているか……などを如実に物語っているものです。

しかし、数字を比較しているだけでは何の意味もありません。

毎日、生きた数字を集め、それを分析して、次の日の経営に反映していくのです。

ある健康食品ビジネスの経営者は、外から帰ると、来客が待っていても、「すみません、ちょっとチェックさせてください」といってパソコンに目をやり、その日の数字の動きを必ずチェックしています。

その会社はいまでは大きく成長し、全国に店舗を広げ、日本の健康食品ビジネスを牽引する企業になっています。

▼会社の状況はすぐに数字に表れる。

経営の基本になる数字が頭に入っていないようでは、社長は務まらない。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、「お金のことは人任せ」にせず、自分でやっている。

どんな会社も初めの一歩は小さな規模から、であるはずです。

そして、そのころは、事業計画を立てるのも、営業に出かけ販売してくるのも、金勘定もすべて自分でなんとかこなしていたでしょう。

ところが事業が拡大すると、当然、 1人で何もかもやる〝ワンオペ〟ではやっていけなくなってきます。

その結果、社員を増やし、税理士など外部の人間に任せるという体制へと進んでいきます。

ある意味、それは当然です。

事業規模が拡大してくれば、仕事の幅も量も増えてくるのです。

信頼するスタッフを育てていかなければ、会社も育っていきません。

ここでよく起こる失敗が、その社員、あるいは外部スタッフに何もかも任せてしまい、自分は製造や販売など得意な仕事に専念してしまうことです。

ある顧問先の例です。

化粧品の製造販売をしているこの会社は、化粧品市場の大きな変化の波にうまく乗って、業績をぐんぐん伸ばしていました。

化粧品業界にもネットショッピングという時代の大きなうねりは容赦なく押し寄せてきており、以前のように大手が市場を寡占するという形ではなくなってきています。

10代など若い世代に向けた遊び感覚の強い製品がネットや通販でよく売れる時代に移り、さらに、小規模でも特筆すべき品質や商品に特化して急成長を遂げている会社が出てきています。

この社長は若い世代向けの市場に着眼し、ユニークなヒット製品を連発するようになっていました。

❖必ずダブルチェック、トリプルチェックする。

これは鉄則 社長はここが事業を一気に伸ばすチャンスだと思い、 2、 3年前、経理担当の社員を雇いました。

お金に関することはすべてこの社員に任せ、社長は営業活動に専念するという体制を整えたのです。

ところが売上が伸び、利益も十分出ている。

銀行からも順調に融資を受け、すべてが好循環だという数字が出ているのに、なぜか資金繰りが苦しくなってきたのです。

苦しまぎれに社長の個人資産を崩してその場をしのぐ。

そんなことを繰り返しているうちに、ついに銀行から呼び出される事態になってしまいました。

さすがの社長も「これは何かおかしい」と思うようになり、税理士に依頼して人を派遣してもらい、すべてのお金の出入りをチェックしたところ、経理担当者がお金を横領していたことが発覚しました。

被害額はなんと 5000万円。

いきなり倒産とはなりませんでしたが、今後、 5000万円を純益で埋めていくには相当の時間と忍耐が求められるでしょう。

❖銀行員と実印はどんなことがあっても人任せにしない 社長は銀行印も実印もこの経理担当者に任せていたというから、開いた口がふさがりません。

どんなに信用できる人だとしても、これだけは絶対にやってはいけません。

人間はもともと非常に弱い存在です。

目の前に自由になりそうなお金があれば、つい手を出してしまう。

日産のゴーン元会長の例は人間の弱さ、もろさを如実に物語っているといえるでしょう。

この会社の場合は、横領した経理担当者を責める前に、お金のすべてを人任せにし、自身はろくにチェックしていなかった社長が自分自身を責めるべきです。

会社に不祥事が起こる原因は、必ず社長にあることを肝に銘じておかなければいけません。

お金の動きこそ経営の原点であり、お金が会社の成否のカギを握っていることをちゃんと理解している社長ならば、お金の動きは、まず、社長自身がしっかり目を光らせているべきです。

とはいえ、社長には社長の仕事もあります。

日頃の経理作業を担当者に任せること自体をダメだとはいいません。

その場合は、絶対にダブルチェック、トリプルチェック体制をとること。

そのための人件費をケチったり、適当な人がいないなどといっている場合ではありません。

わざわざ、チェックのために人を採用しなくても、「お金を受け取る人、勘定する人、入金する人」をそれぞれ別々にすれば、事実上トリプルチェック機能が働くようになるはずです。

規模の大小にかかわらず、 1人の人間がお金の出入りに関するすべてができるという体制は絶対にとらないこと。

リスクを避けるためのお金はちゃんと使う。

これは経営の鉄則です。

❖インターネットバンキングの利用などリスクヘッジを考える お金のことはけっして丸投げしないという認識も大事です。

社長自身が時々、通帳の残高・現金残高と帳簿上の残高を突き合わせるなど、チェックを怠らないこと。

それも毎月〇日などと決めて行うのではなく、ランダムにチェックをするようにします。

つまり、抜き打ちでやることが原則です。

金銭トラブルを起こした人に理由を聞くと、最初はほんの出来心、金額もごく少々であることがほとんどです。

ところがチェック体制があまく、バレない、表沙汰にならないことが続くと、つい、 2度、 3度と回を重ねていき、金額もしだいに大きくなってきます。

その結果、しだいに大きな罪を重ねていってしまうのです。

社長の金銭管理のずさんさは、結果的に、人を追い込む結果を招き、その人の人生を狂わせることにもなってしまいます。

銀行印と実印はたとえ女房であっても渡さない。

これも絶対に守るべき鉄則、いや、原則です。

それぐらいの心構えでないと何かあれば中小企業は倒産

してしまいます。

常識で考えたら、そんな危険なことをするはずはないでしょう。

しかし、実際に、相談にこられる方のなかにも、「毎日のことですからね。

いちいち、私が判を押していたんじゃめんどうでたまらないんですよ。

まあ、うちの経理は固すぎるぐらい固い人間なので、間違いを起こすようなことはあり得ないんですが」という社長はけっこういます。

印鑑の管理がめんどうくさいというなら、印鑑の必要がなく、パスワードを入力すれば利用できるインターネットバンキングの採用を検討するなど、自分なりのリスクヘッジを積極的に考えるべきです。

▼会社に不祥事が起こる原因は、必ず社長にあると肝に銘じる。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、手間暇を惜しまず、めんどうくさい作業に徹している。

「棺桶型社会」。

強烈なインパクトを感じる言葉です。

この言葉は、少子高齢化がすさまじい勢いで進行している日本社会の人口構成を意味するもの。

かつては若い人口が多く、高齢になるにつれて人口が減っていくピラミッド型だったのに、現在では、高齢者層が厚く大きく、若くなるにつれて人口が減少しています。

その様子をグラフにすると、欧米で使われる逆長三角形の棺の形になる。

それが「棺桶型社会」と呼ばれる日本の実情です。

最近、地方の企業の顧問先の相談を受けると、不安なことを予期してしまう私は、この後、どんな方向を目指していけば活路が開けるのか、考え込んでしまうことがあります。

大企業 vs.中小企業の厳しい戦い。

地方ではそれに加えて、地方社会の衰退というもう1つのシリアスな課題と向かい合わなければいけないのです。

少子高齢化により市場のパイが年々小さくなる現象は、地方ではより深刻化しています。

しかし、どんなに厳しいなかにも活路は必ずあります。

私は、得意先と一緒に、活路を見出すためにギリギリまで頭を絞り、最後の 1滴まで知恵を出し合って話し合いを続けることを繰り返しています。

そうして見えてきた1つの答えが、手間暇を惜しまず、人の心に訴えかけるというビジネス手法です。

❖徹底的なまでにきめ細かなサービスで顧客を取りこぼさない 家電市場では量販店が市場を席捲し、小さな街の電器屋は苦境に立たされています。

しかし、ある得意先は、いまも売上をキープ。

しかも定価販売です。

この社長は、「自分の店の商圏のお客は 1人たりと取りこぼさない」という方針を立て、地道にそれを実践しています。

具体的には、電球 1個、電池 1個でも配達し、交換まで行っています。

そのついでに、「この間の洗濯機の具合はどう?」とか、「エアコン、古くなったね。

最近はいいのが出ているよ」とか「おじいちゃんに電気肩掛けを買ってあげたら?」などと新規の購入を導き出すことも忘れません。

そのきめ細かなサービスと、まるで親戚のお兄ちゃんのような親しい話し方、家族への気配りが、この店の安定的な商売を支えているのです。

東京の木挽町にある老舗和菓子店は、家紋入りの焼き菓子を特注でつくり、人気を得ています。

焼き印をつくってお店に預けておくというアイディアがお客の「特別感をくすぐる」のでしょう。

店で預かっている焼き印は増える一方だそうです。

新橋にある飲み屋は古いビルの地下という立地にもかかわらず、いつも満員。

この店には全国の高校の寄せ書きノートがなんと 3000冊近くも置いてあり、それを目当てに、故郷の母校を懐かしむお客が足しげく通ってくるのです。

こんなめんどうなことを、めんどうくさがらずに地道にやっている、そんな会社は経営難の 3文字とは無関係な経営を続けています。

❖手間暇をかけることで出版不況と戦っている書店 出版も不況に悩む業界の1つです。

街から書店が消えていく様子は珍しくなく、私の周辺でも、ふと気づくと、それまで大きな書店だったところがカフェやドラッグストアに変わっている例をいくつも見かけます。

そんななかで、めんどうな手間暇をかけることで 3000人の固定客をがっちりつかみ、安定的な経営軌道にのせた書店があります。

「いわた書店」は北海道の砂川町にある小さな書店で、以前はご多分にもれず、売上減少に四苦八苦していました。

しかし、店主は、「書店のプロとしてのスキルで勝負できないだろうか」と考え、「 1万円選書」というサービスを思いつきました。

お客はいくつかのアンケートに答え、同時に 1万円を払い込みます。

そのアンケート結果(カルテと呼ばれている)に基づいて、店主がそのお客さん 1人のために、おすすめの本を約 1万円分選んで届けるのです。

もともと「売れる本」ではなく「売りたい本」を置くようにしていたという心底本を愛する岩田さんだからこそ、思いついたアイディアといえるでしょう。

このサービスは口コミで広がっていき、ついには NHKが『プロフェッショナル仕事の流儀』でとり上げるまでに。

「運命の 1冊、あなたのもとへ ~書店店主・岩田徹」が放送されると評判はさらに高まり、いまでは「 1万円選書」は抽選で当選した人限定、という人気ぶりです。

アンケートは A 4用紙 3枚におよぶ詳細なもの。

これを書くことで自分を見つめなおす機会を得たという感想も多いといいます。

さらに、送られてくる本には岩田さんからの手紙も添えられており、それがお客に新たな感動を呼んでいます。

カルテを読み、そこから見知らぬお客の思い出や人間性を読み取って本を選んでいく、店主の手間暇がどれほどのものであるかを思うと、その努力と、本に対する愛情に強く胸を打たれます。

届く本は多彩で、ふだん、自分では手にとらないようなジャンルの本も含まれていることが多く、そこから新たな本との出会いを提供するという効果もあります。

めんどうくさいから、手間暇がかかるから……と尻込みするばかりでは、会社の将来は開けていきません。

むしろ、人がいやがるめんどうくさいところに積極的にお金を使ってみましょう。

その思いきった戦略が活路を開く。

こうした戦略はほかにもいろいろあるはずです。

▼会社の生き残りをかけた戦略には、手間暇、お金を惜しまずに使う。

そうして活路を開いていかなければ、会社の存続さえ危うくなる。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、社員の失敗もコストのうちだと考えている。

社員が失敗するとひどく怒る社長は少なくありません。

特に、すでに先行投資をしており、失敗が金銭的なダメージを伴う場合は、「お陰で大損だ。

取り返すのにいくら売ればいいかわかっているのか!」などということまで口にする社長も珍しくないでしょう。

しかし、これまで大成功してきた人のなかで、失敗をしなかったという人はいないはずです。

世界市場で大成功を収めたユニクロの経営者・柳井 正氏もこういっています。

「僕はずっと失敗してきた。

いままでどのビジネスでも 1勝 9敗くらい。

唯一成功したのがユニクロです」 近年でも、ユニクロは「野菜」の生産・販売に乗り出し、 2年間で 28億円の赤字を出して、あっさり撤退しています。

失敗の原因は、野菜を安定供給できなかったり、在庫管理が思いのほか難しかったことなどだそうです。

柳井さんの経営哲学は、「致命的にならないかぎり、失敗はしてもいい。

やってみないとわからない。

行動する前に考えてもムダです。

行動して修正すればいい」 という言葉に集約されています。

私の顧問先の企業にも、柳井さんのような社長がいます。

社員が新しいアイディアをもってくると、その社員と議論を尽くし、少しでも芽があると判断すると、「とにかくやってみろ。

予算は〇〇円までなら OKだ。

好きなように使っていいから」とちゃんと予算もつけて、社員の背中を強く押します。

社長の肚のなかには、いまの体力なら、ここまでの損金ならカバーできるという読みがちゃんとあるのです。

こうした読みができるのは、常に会社の数字が頭に入っているから、であることはいうまでもありません。

❖失敗から学ぶ学問を体系化した学会もある 失敗しないというと、いかにも堅実経営で優秀な企業だという印象がありますが、実際は「失敗しない」ことは「何もチャレンジしていない」ことに他なりません。

失敗しないことは、退歩に向かう兆候だといってもいいくらいです。

逆に考えれば、失敗は前向きの行動です。

そのうえ失敗には多くの学ぶべきことが潜んでいます。

失敗は将来に向けての進化や新たな価値を創造するときには欠かせないといってもいいほど重要なものなのです。

こうした考えから、失敗学という学問領域をつくり上げた研究者もいます。

畑村洋太郎東大名誉教授は専門の機械工学を学生たちに教える過程で、過去の失敗から学ぶ姿勢が研究や開発にどれほど大切なことであるかに気づき、 2002年、「失敗学会」を設立。

失敗から何を、どう学ぶべきかを理論的に考証しています。

❖失敗を受け入れ、前向きの力にしていく いまは、かつてないほど社会の進化がめまぐるしく、昨日の成功、今日の勝利が明日も通用するとはかぎりません。

むしろ、明日はまた新たなビジネスが市場を席捲する。

そう考えていなければ、気がついたときには現在、会社を支えている屋台骨のビジネスは古くさくなってしまい、市場価値を失ってしまっているかもしれません。

こういう時代に必要なのは、失敗を恐れることなく、積極的にチャレンジを続け、将来に続く道を切り拓いていこうとする勇気と寛容さです。

もちろん、失敗は失敗。

いくらでも失敗していいというわけにはいきません。

万全を尽くしたのだが失敗してしまった。

そうした失敗であれば、それをただの失敗に終わらせず、なぜ、失敗したのかをよく見つめ、分析し、次に進む一歩のために生かすのです。

そういう失敗ならば、胸を張って「失敗で失ったお金は次の効果的な一歩のための前向きの投資だ」といえるのではないでしょうか。

▼失敗のコストは会社の将来に向けた先行投資の一部。

社員が失敗したら、むしろ大いに喜ぶ寛容さをもつ。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、費用をケチらず、質の高い税理士と契約している。

どんな会社でも日々、仕事をしていると、会計処理をしたときに、つじつまが合わないお金が出てくることがあるものです。

たとえば、社員が領収書をもらうのを忘れたとか、成り行き上領収書のもらえないお金など。

こうしたお金をどのように処理するか。

そこで会社の経理の質がはっきり分かれます。

多くの場合、こうした使途不明金が出ると、社長の貸付金として処理してしまいます。

そのほうが一手間ですみ、税理士がめんどうでないからです。

ところが、この社長貸付金は後々になって、大きなツケになる場合が少なくないのです。

社長貸付金が多いと、それを見た銀行は、「この社長は会社のお金をポケットに入れているな」と判断し、社長の信用はガタ落ちになることがあるのです。

実際にお金は出ていっているので、なんらかの処理はしなければなりません。

では、どうしたらいいか? ❖経営のかけ引きがわかる税理士に育てていく 先日、相談に見えた社長もまさにこの問題で悩んでいました。

「銀行に『このお金、何に使ったんですか』と突っ込まれたんですが、私、実際は使っていないんですよ。

でも、銀行に『私は使っていません』なんていえません。

そしたら、銀行に『このお金、ちゃんと返して、きれいに消しておいてください』なんていわれましてね。

このうえは、社長の給料をもっと上げて、そこからこのお金を消していくしか方法はないとしか考えられないんです……。

先生、それで問題はないでしょうか」「いや、大ありですよ。

そんなことしたら、『そんなに業績がいいわけじゃないのに、なぜ、給料を上げるのか』と銀行はもっと突っついてきますよ」 私がそう答えると、この社長はうろたえるばかりです。

こうした例はけっして珍しくありません。

この顧問税理士は帳簿上のお金の帳尻を合わせて会計処理をし、税務署に責められない方法を選んでいる、と言い切ってもいいくらいです。

もちろん、帳簿上、スキのない会計処理をしてくれる税理士もいるでしょう。

しかし、彼らはお金を借りた経験がないので、銀行対策までは考えない。

いや、考えることができません。

その結果、この社長のように、銀行からつつかれ、窮地に立つことが起きてしまうのです。

説明すると長くなるので詳しくは書けませんが、私なら、こうした使途不明金は、たとえばいったん経費で処理するなど、銀行の信用を落とさないやり方で処理をするなどして乗り切ります。

それから徐々に本格的な処理方法を財務状況に応じて処理していきます。

もともと税理士の職分は銀行対策ではないので、そこまで考えて会計処理をする税理士はめったにいないでしょう。

しかし、税理士の考え方を変えさせるのも社長の役割です。

顧問税理士は、顧問先の会社を守る立場です。

自分のプライドや名誉だけを考えるべきではありません。

実際、私はこれまで、何人かの税理士を、社長を守る税理士へと思考転換させました。

社長は、税理士に向かって、「誰からお金をもらっているのか考えてみてくださいよ。

税務署からもらっているわけじゃないでしょ。

お金を払っているのは私なんだから、この会社を守る会計処理をしてください」などといって、社長を守る決算書類をまとめてくれる税理士へと育てる努力が必要なのです。

もちろん粉飾をしろということとはまったく違います。

❖税理士費用として月に最低 5万円は使う もちろん会社の規模や業種によっても違いますが、私は「税理士のお金はケチらないように。

できるかぎり最大の報酬を用意して、質のよい税理士を確保するべきだ」とよくお話ししています。

ネット検索などすると、最近は月に 1万円、 2万円でも税理士が見つかるようです。

しかし、「安かろう、悪かろう」という言葉は人に対しても当てはまります。

年商 3億円を超えたら、税理士に最低でも月額 5万円から 10万円は支払う。

逆にいえば、そのくらい優秀な税理士と契約するようにしたほうがいいと思います。

このクラスの税理士になると仕事量にもよりますが、伝票処理はもちろん、振込業務などもこなしてくれるケースも多いようです。

こうなれば、経理のスタッフはごく少数ですむようになります。

経理のスタッフを 1人雇えば 20万円も 30万円も給料を支払わなければならないでしょう。

正規雇用となれば社会保険料もボーナスも必要になり、コストパフォーマンスはかなり下がるはずです。

税理士だけではなく、これからの経営では1つひとつの作業、事柄のコスパを計算し、雇用するか、外注するか。

コスパ本位の方策を選んでお金を使うことも、経営力の大きな要素になってくるはずです。

外注を上手に使うことも、効率的な選択肢であることも視野に入れておくべきです。

▼何事においてもコスパを大事に選択する。

たとえば税理士費用をケチる前に、

会社にとって何が大事かの判断力を働かせ、より効率的にお金を使う。

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、 5年後、 10年後を見越してお金を使っている。

相談に見える経営者に「 5年後、どんな会社にしたいと思っておられるのですか?」と質問すると、たいていは、「 5年後、なんて考えていられません。

うちは毎年、どうにかこうにか続けている状態なんです。

5年後も会社があればいいなあ。

冗談でなく、そう考えているのが実情です」という答えが返ってくるなどします。

苦しい事情はわかります。

でも、組織を引っ張る社長がこんな気持ちでいることを知ったら、社員はその社長についていく気持ちにはならないでしょう。

中小企業で働く従業員たちは、大企業の社員のように安定した将来を描きにくいものです。

社長が「 5年後も会社が続いていればいいな」と思っていれば、従業員たちはもっと強くそう思うはずです。

そんな社員の思いを払拭し、希望に変えること。

これも社長が果たすべき役割です。

できる社長かどうかを判断する指標の1つは「社長が将来ビジョンをもっているかどうか」だといえます。

できる社長は、 5年後、 10年後の会社のビジョンを描いています。

少なくとも 3年後の売上目標と利益予想を算出し、それを実現するための準備を進めています。

どんなに業界が厳しくても、その業界でビジネスをしている社長ならば、厳しいなかにも光の射す方向を肌でとらえる感覚があるはずです。

それを感じることができないまま、日々のやりくりに追われているだけならば、ただ闇雲に会社を維持しているだけだといわれても反論できません。

あるインテリア雑貨メーカーの社長は、毎年数人の社員を海外旅行に連れていきます。

「うちにはそんな余裕はない」と片付けてしまえば、話はそこで終わりです。

いまは、シーズンやコースを選べば海外旅行は考えている以上に格安で行かれます。

それでも社員は海外旅行と聞いただけで喜ぶものです。

連れていく社員は、飲み会などのビンゴで選ぶというのも社長のユニークなアイディア。

ダブリのないように調整したほうがいいという考えもあるでしょうが、この社長は「ビンゴはビンゴ。

恨みっこなし」と割り切っています。

ただし、条件を1つ設けています。

旅先で、将来、こんなものをつくったらどうだろう、という新製品のアイディアを見つけてくること。

なんだ、宿題付きかとしらけるかと思っていたところ、むしろ、この〝宿題〟に社員は熱くなり、旅行先の街を丹念に歩いて、けっこう面白いアイディアを見つけてくるのです。

この旅行で得たアイディアから生まれたヒット製品もすでにいくつかあるそうです。

❖将来への投資は金額の枠を決めて行う 将来を見通し、明るい将来のために新規事業に積極的に取り組む姿勢は大いに評価すべきです。

ところが、新規事業に乗り出すというとそれだけで心が躍り、バラ色の将来像に浮かれてしまう社長も少なくないもの。

これはこれで大問題です。

新規事業は未知の領域で、吉と出るか凶と出るかはやってみなければわかりません。

最初から失敗を恐れ、へっぴり腰で新領域に乗り出すようでは成功は望めませんが、反対に、イケイケドンドンと蛮勇を奮うばかりの社長も危険です。

会社の将来を託す新事業である場合でも、スタート時点で必ず、次の3つを決めておくこと。

そして、どんなことがあってもこの3つは堅く守ると誓ってください。

1・投資金額の上限を決めておく。

2・累積赤字がここまできたら撤退する、という線を引いておく。

3・結果が出なかった場合の撤退時期を決めておく。

新規事業は、進出の時期を決めるより、撤退の時期を決めるほうが大事だと、私は常々いっています。

中小企業は大きな赤字をもちこたえる体力はないからです。

最後まで戦うことは一見、立派な姿勢に見えるかもしれません。

しかし、会社はそうはいきません。

最後の最後まで戦っても、その結果、体力を使い果たし、倒産してしまったら、将来も何もなくなってしまうのです。

▼将来に向けた投資を惜しむ会社はじり貧に向かう。

だが、このとき、投資の上限額を決めておかないともっと厳しい結果が待っている。

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