ここでどうしても言いたいのが、会社が発展し続けられるのは社員のおかげだということを忘れないということだ。今回のドラスティックな改革も、私を信じてついてきてくれる社員がいなければ成し得なかったことである。
だから、会社のために力を尽くしてくれる社員に少しでも多くの給料を払って、努力に報いてあげなくてはならない。そういう思いを社長が持っていなければ、会社の発展はないのだ。
ゆえに、我が社は85億円の赤字を出した年にも、人員整理はやっていない。海外の工場で働いてくれていた従業員の削減はしたが、国内従業員700名の雇用は守り抜いた。もちろん、給与・賞与のカットも一切していない。
手前味噌になるが、 一つデータを紹介しておきたい。日本経済新聞社が上場企業を対象に調査した、2008年度冬のボーナス支給ランキングというのがある。このランキングで、スター精密は冬のボーナス支給額平均127万円と、日本で2位にランキングされた。
ちなみに、1位は146万円で任天堂だったが、任天堂は労働組合がないので部課長も含めた平均額である。 一方のスター精密は部課長を除いた係長までの平均金額なので、おそらく純粋な意味での賞与額支給は、我が社が1位であろう。
リーマンショック直後であってもこれだけの賞与を出し、もちろん85億円の大赤字を出した年も最低保証の月額給与4カ月分のボーナスをしっかりと支払った。さすがに社長である私の年間報酬は半分にカットしたが、それが経営者として当たり前のやり方だと私は思っている。
これもやはり親父の築いた定石を踏襲しているが、かつて1994年、95年にも斜陽事業の撤退のためスター精密は70億円の大赤字を出したことがある。その2年間、親父は自分の報酬を半分に減らした。そして、毎日のように飲みに行っていたのも一切やめた。「赤字の社長が、なんで飲み屋のホステスと楽しく会話できるんだ」と言って、それまで家に箸も置いていなかった人が、外に食事にすら出かけなかった。
そういう人だったから、親父の葬儀には全国から2000名の参列者が駆けつけ、心から死を悼んでくれた。その光景を見て、経営者としてどういう死に方をしたいか、そしてどういう生き方をしたいか、深く自覚させられたように思う。
とにかく、社長の人格、社長の器以上に会社は決して大きくならないものだ。日先ではなく社員の報酬をきちんとあげてやることで社員は社長を信頼し、尊敬してくれる。そして、尊敬してくれるから、協力してくれる。それが最善の経営である。
さて、以上が2008年のリーマンショックにより85億円の大赤字を出した我が社が、2011年にV字回復を果たすまでにどんな経営をしたか、定石経営の実例としてかいつまんで述べてきたものである。
この中でたびたび、これからは高度経済成長、そしてバブル期と同じ感覚で経営をすれば、絶対に会社を潰すと申し上げてきた。そこで、これからの経営環境が如何に厳しいものか、私なりの見通しを簡単に述べて、定石経営に徹する前提としたい。
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