これは、あるリストラ(事業再構築)を実施中の企業の中堅社員A君が書いたレポートであ
る
幹部社員レポート
わが社の人材育成
現在の当社の人材育成は、切り捨てご免の感じがする。
人は宝である。人にはそれぞれ個性があり、能力がある。それに應じた育成をするこ
とが基本だと考える。よいところだけとり、愛いいところが一部でもあれば、指導するの
ではなく、切り捨てる。
これでは、表面上はよい人材が揃うが、人材育成という意味ではないに等しいと考え
る。日先だけではなく、長い日で見て、わが社という会社の人材を育成する始要がある
と考える。
具体的には、努カロ標、あるいは逹成日標に対し、会社として評価する(資格取得)、
本人の希望、要望に対し、会社は検討判断し、本人のやる気を引き出してやる。人材育
成のシステム(年次別、会社レベル)をつくり上げる。
以上、わが社に入社して人間的に成長した、働き甲斐があったと言われる企業にしたい。
皆さん、読まれていかがでしょうか。なかなかよく書けているとお感じでしょうか。
私はこのレポートを読んで実はムカッー・ときた。なぜなら書いた社員をよく知っている
からである。このA君は学歴は申し分なく、国立大学の工学部を卒業した人物である。だが、
何事にせよ、自己本位、世の中はすべて自分を中心に回っていると思っている社員の典型タ
イプの人物。営業に出れば顧客と論争して客を怒らせ、生産現場の管理職をやれば人を使え
ず、パートのおばさんまで怒らせ、従業員が協力しないため、機械が止まればたちまち立往
生でいつ直せるかわからず、納期遅れを発生させる問題の中堅幹部社員なのである。
企業における人材育成は、まず、
「自分がこの企業でどんなお役に立とうと考えるか」、そのために、「いかなる能力を自分
で身につけるか」
と、社員が自発的、自律的に考えるようにすることから始まるものだと私は考えている。
企業は、企業のために役に立つ人材を揃えようと、また売上げを伸ばすために顧客に役立
つ商品・サービスを生み出すための人材を揃えるのであって、決して個人個人、 一人ひとり
を育成することではない。授業料をとる学校とは、その点で大いに違う。しかも社員のため
に会社や世の中は回ってはいない。
さらに、「長い日で見ろ」と言っても、中小企業はなかなかそうはいかないのが現実で、そ
れは会社が存続するからこそ言えるのであって、なくなってしまったらどうしようもない。
とくに中小企業の場合、つねに人材は速成、即効を要求するのである。
「本人のやる気を出させる」「動機づけを行なう」ことはたしかに大切である。しかし、大企
業といえども、上げ膳、据え膳で、手取り足取り教育はしてくれない。
A君に限らず、なんでも会社がやってくれるもの、やってくれて当たり前というとんでも
ない甘ちゃん社員が企業内にはたくさんいる。自ら燃えて、能力を伸ばしたいと思わない限
り、与えられても、そのありがたさがわからないものである。
昨今の経営書を読むと、やたらと「ほめる哲学」「ほめ上手」「ほめて使え」という言葉が目に
つく。もちろん、私も「どなり社長」「皮肉社長」「グチリ社長」には苦言を申し上げるが、いま
の日本の経営で、社員を「ほめる」ことがそんなにまで大切なのであろうか。
私はむしろ、「叱れ」「厳しく注意せよ」「細かくチェックせよ」と叫びたい。
ほめる行為
●感謝の言葉を添える
●感謝を表現する(表彰状、プレゼント)
●褒美を与える
●昇給。賞与で評価し、報いる
●昇格させる
叱る行為
●計画と実績の差異をチェックし処理法を実践させる
●叱る、教育する
●注意、指導する
●給料を下げる
●降格させる
多くの企業で診断を行なって、わが社の問題点の項目で「信賞必罰がなされない」と、 一般
社員までが答える企業が多い。日本では、ほめたり慣れ合いの″なあなあ主義″はあっても、
メリハリの効いた「叱る」行動、「注意し合う」行動は、全社員、なかでも幹部社員が、それか
ら逃げている。
実態をご存じない心理学の先生方などがおっしゃるので、いまや、日本の企業のなかは甘っ
たれた幹部と、責任逃れ・言い訳社員であふれ、企業の体質は弱体化しているのである。
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