真の「知性」とは何か今日は、特別な日です。なぜなら、こうした「思想」とは、日常、語るべきものではないからです。ただ、今日は、真剣勝負の講義の日。
深い、深い、ご縁があって、皆さんと、真剣勝負の話をさせていただく機会を、得ました。だからこそ、私も、生涯に何度も話すことのない「思想」を、皆さんに語らせていただきました。
そして、「生涯の問い」とも呼ぶべき「問い」を、皆さんに投げかけさせていただきました。そこで、この講義の最後に、大切なことを述べさせていただきます。
ここに集まられた皆さん、どなたも、優れた「知性」をお持ちの方々ばかりです。深い問いを抱き、その答えを求め、この講義に集まって来られた。そうした優れた「知性」をお持ちの方々ばかりです。
だから、最後に、大切なことを述べておきましょう。
「知性」とは、何か。
そのことについて、述べておきたいと思います。皆さん、「知性」とは何でしょうか。いま世の中の多くの方々が、こう思っています。
「知性」とは、「答えを見つける力」である。目の前に問題が出されたとき、それを迅速に解いてみせる。それが「知性」だと思っている方々が多いでしょう。
しかし、そうではありません。
むしろ、「知性」とは、まったく逆の力です。それは、「問い続ける力」です。答えのない問いを、問い続ける力です。
なぜなら、皆さんが日々取り組まれる仕事は、その多くが、答えのない問いを投げかけてくるからです。
人事一つでも、戦略一つでも、経営において直面する問題は、もしそれを本当に深く考えるならば、答えなど、ない。
そして、皆さんが、人生において直面する問題は、さらに、答えなど、ない。そのほとんどが、答えなど、ないのです。
だから、我々は、真の「知性」を身につけなければならない。
答えのない問いを、問い続ける力。それを身につけなければならないのです。
生涯かけて問い続けても、答えなど得られぬ問いを、それでも問い続ける力。世に溢れる安易な答えに、流されることなく、精神の深みにおいて、答えを求め続ける力。
その魂の力こそが、真の「知性」なのです。
そうであるならば、一人の人物が、真に知性的な人物であったか否かは、何で決まるのか。その生を終えるときです。そのときに、それが決まる。
命尽きるその瞬間まで、答えのない問いを、問い続けたか。生を終えるとき、我々に、そのことが問われるのです。そのことを、忘れないでいただきたい。
有り難うございました。
謝辞最初に、PHPエディターズ・グループの石井高弘さんに感謝します。
一人の編集者と一人の著者の、魂の出逢いが、一冊の書を、世に出しました。
また、PHP研究所の山田雅庸さん、中村悠志さんに感謝します。
お二人との出会いが、この書の文庫版を、世に出しました。
そして、縁あって私の講義の場に集まってくださったすべての方々に、感謝します。
互いの人間成長を求めての一期一会。
皆さんの真摯な姿勢が、この講義に、命を与えました。
また、いつものように、執筆を温かく見守ってくれた家族、須美子、誓野、友に感謝します。
五月の富士の新緑と青空は、どこまでも爽やかに輝いていました。
最後に、すでに他界した父母に、本書を捧げます。
お二人が、彼方に見つめていたもの。
それが、いまの私を導いています。
二〇〇七年五月五日田坂広志
著者略歴田坂広志(たさかひろし)1951年生まれ。
1974年、東京大学工学部卒業。
1981年、東京大学大学院修了。
工学博士。
同年民間企業入社。
1987年、米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員。
1990年、日本総合研究所の設立に参画。
民間主導による新産業創造をめざす「産業インキュベーション」のビジョンと戦略を掲げ、10年間に、異業種企業702社とともに20のコンソーシアムを設立・運営。
異業種連合の手法により数々のベンチャー企業と新事業を育成する。
事業企画部長、取締役・創発戦略センター所長を歴任。
現在、日本総合研究所フェロー。
2000年4月、多摩大学教授に就任。
現在、多摩大学大学院教授。
2000年6月、シンクタンク・ソフィアバンクを設立。
代表に就任。
2001年より、新しい時代の生き方と働き方を学ぶコミュニティ、「未来からの風フォーラム」を主宰。
現在、30000名のメンバーに対して、ネットを通じ、毎週、「風の便り」を配信し、「風の対話」を放送している。
2003年7月、「社会起業家フォーラム」を設立。
代表に就任。
現在、全国から12000名の社会起業家が集まり、様々な分野での社会変革に取り組んでいる。
2006年6月、シンクタンクとしては初の試みである、ネットラジオ局、「ソフィアバンク・ラジオ・ステーション」を開局する。
現在、上記の活動に加え、情報、流通、金融、教育、環境など、各分野の企業の社外取締役や顧問を務める。
著者へのご意見やご感想は、tasaka@hiroshitasaka.jpへ、お送りください。
著者のメッセージメール「風の便り」の配信と「未来からの風フォーラム」への参加は、サイトアドレスhttp://www.hiroshitasaka.jpで、ご登録ください。
著者の講演や講義は、「ソフィアバンク・ラジオ・ステーション」、サイトアドレスhttp://www.sophiabank.co.jpで、お聴きください。
主要著書仕事と人生を語る『仕事の思想』(書籍/文庫PHP研究所)『なぜ、働くのか』(PHP研究所)『仕事の報酬とは何か』(PHP研究所)『人生の成功とは何か』(PHP研究所)『これから働き方はどう変わるのか』(ダイヤモンド社)『なぜ、時間を生かせないのか』(PHP研究所)『未来を拓く君たちへ』(くもん出版)『知的プロフェッショナルへの戦略』(講談社)『プロフェッショナル進化論』(PHP研究所)『若きサムライたちへ』(PHP研究所)思想と哲学を語る『深き思索静かな気づき』(PHP研究所)『自分であり続けるために』(PHP研究所)『生命論パラダイムの時代』(ダイヤモンド社)『複雑系の知』(講談社)『ガイアの思想』(生産性出版)『こころの生態系』(講談社)『こころのマネジメント』(東洋経済新報社)『使える弁証法』(東洋経済新報社)社会と市場を語る『この国を良くするために、今やるべきこと』(ダイヤモンド社)『これから何が起こるのか』(PHP研究所)『これから知識社会で何が起こるのか』(東洋経済新報社)『これから日本市場で何が起こるのか』(東洋経済新報社)『これから市場戦略はどう変わるのか』(ダイヤモンド社)『まず、戦略思考を変えよ』(ダイヤモンド社)企業と経営を語る『複雑系の経営』(東洋経済新報社)『暗黙知の経営』(徳間書店)『なぜマネジメントが壁に突き当たるのか』(東洋経済新報社)『経営者が語るべき「言霊」とは何か』(東洋経済新報社)『意思決定12の心得』(書籍生産性出版/文庫PHP研究所)『企画力』(ダイヤモンド社)『営業力』(ダイヤモンド社)『なぜ日本企業では情報共有が進まないのか』(東洋経済新報社)
なぜ、働くのか――生死を見据えた『仕事の思想』著者:田坂広志HiroshiTasakaこの電子書籍はPHP文庫『なぜ、働くのか』二〇〇七年七月一八日第一版第一刷発行を底本としています。
電子書籍版発行者:安藤卓発行所:株式会社PHP研究所東京都千代田区一番町二一番地〒1028331http://www.php.co.jp/digital製作日:二〇一一年八月一日本書の無断複写(コピー)は著作権法上での例外を除き、禁じられています。
コメント