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生き残る社長は納得を目的とし、潰れる社長はしょうもないことにこだわる。

いよいよ最後の項まで来ました。  ここでもう一度、この第 5章の最初にお話しした私の祖父の事件を思い出していただけませんか。人生の最後の最後で、事件が起きてすべての資産を失ったという話でした。  私はこの件の鎮静化のために走り回り、恐怖と怒りと不安に耐え忍びながら「会社とは何か」「社長人生とは何か」といろんなことを考えました。  祖父に対しては痛々しい気持ちを感じていました。年齢を考えたら、とても失ったものを挽回することはできません。  社長としての祖父の最後は悲劇であったというのは間違いないところでしょう。努力が報われないものでした。この点については、あなたも同意してくださるはずです。  ここで祖父が報われなかった理由を、一緒に考えていただきたいのです。  あの事件は、最後の最後で築いてきたもののすべてを失ったというセンセーショナルさや、失った財産の大きさというインパクトがありました。すべてまかせていた子どもに裏切られたという展開のドラマ性もありました。  でも、これらは悲劇の本質でしょうか。  どうも私には、悲劇を盛り上げるための飾りでしかないと感じられます。この事件を悲劇たらしめた要因は、もっと別のところにありませんか。  たとえば、仮に、祖父の事件がこんな内容だったらどうでしょうか。「祖父はあるとき急に思い立ち、すべての財産をどこかの団体に寄付してしまった」  もしこんなストーリーだったとして、これでもあなたは悲劇と感じますか。  きっと、感じないはずです。  しかし不思議ではありませんか。寄付であれ、ヤクザに金を奪われたのであれ、失った金額は同じです。なのに私たちは、寄付では悲劇だと思いません。  なぜ寄付だと悲劇にならないのか。それは本人が自分の意思でやったことだからです。  現実の祖父の社長業のおわりには、自分の意思が伴っていませんでした。  意思がないのに、強制的に終わらされました。気が付けば育てた会社も、築いてきた資産も人間関係もなくなっていました。これでは納得を得られません。  長い時間を費やし、人生のすべてをかけてやってきた自分の仕事のおわりに納得がない。こんなむなしいことってありますか。  皆さん最後に大事になるのは、納得です。  何が本当に大切かわかっていないと、しょうもないことに躓いてしまいます。   M& Aの交渉で、小さなことを譲れなかったために、せっかくの縁談を台無しにしてしまったり。  専門家の手数料をケチりたいがために、もっと大きな利益を失ったり。  見栄やプライドのせいで撤退の機を逃したことが、致命傷になったり。  自分の納得を追求すれば、本当に大切なところを大事にできます。  また、おわりから目を背け、成り行きまかせにする社長もいなくなることでしょう。これほど納得から自分を遠ざけてしまう態度はないのです。  条件や環境は人によって差があります。  社内に後継者がいる人もいれば、いない人もいます。退職金をたくさんもらえる方もいれば、会社に全然余力がないケースもあります。会社を誰かに引き継がせることができる人もいれば、自分でたたまざるを得ない人もいます。  それでも納得を得られる可能性だけは誰にでも等しくあります。  高額で会社を他社に売却してもまったく満たされない人がいれば、会社をたたみ、借金が残ってしまったとしても、自分では納得できている人がいるのです。  いつか、あなたが自分の人生を振り返るとき、よい人生だったと思えますか。そこには、自身の仕事のおわりに対する納得の有無が、大きく影響するはずです。  納得して社長の仕事をおえていただきたい。  満たされていただきたい。  私は、心から願います。 50  生き残る社長は、自分の納得をモノサシにする

おわりに  つい先日、ある経営者のコミュニティサイトで、アンケートを実施させていただきました。小さな会社の社長さんが、今、何を求めているかを把握したかったからです。   24名の方が回答してくださいました。【質問】  次の「 ○ ○な本」のうち、社長が今手にとりたい本はどれですか?・不安がなくなる本         38%・やる気が出る本           33%・儲かる本                 21%・楽ができるようになる本   8%  この結果を見て、どう感じましたか。  おそらく世間一般の認識からすると、かなり意外な結果になったことでしょう。「社長相手ならば、とにかく『儲かりたい!』を打ち出せばいい」  社長に対する世の中の認識は、このようなものだったと感じています。たとえば、アマゾンで「会社  儲かる」とでも検索してみれば、たくさんの儲け方を教える本がヒットします。  ところがこのアンケートでは、「儲かる本」は 3位で、 21%しか支持を得られていないという結果が出ました。  大方の予想を裏切り、 1位になったのが「不安がなくなる本」で、僅差の 2位が「やる気が出る本」です。  この結果を受けて私は、社長のマインドがすでに大きく変わったことを確信しました。もちろん、社長のマインドが変わるということは、社長をとり巻く世界が変わっていることを意味しています。  ちなみに、同じくアマゾンで「社長  不安」と検索しても、それらしい本は全然見つけられませんでした。世間はまだ、この変化をキャッチできていないのでしょう。「カラッと元気で前向きに!」「夢はでっかく大成功!」  かつての経営環境ならば、こんなノリでもよかったのでしょう。  ところが、もう能天気ではいられない世の中になりました。  会社のかじとりは難しくなり、「努力と苦労を継続しつつ、どうにかこうにかやっていくしかない」といったところが、多くの社長の実感ではないでしょうか。ジメっとした空気のなか、ひたむきに、重たいものを引きずる感覚です。  だから、「不安」に襲われることもあるし、疲れと閉塞感で「やる気」を失ってしまうこともあるのでしょう。アンケートの回答結果から垣間見ることができた現実です。  このあたりは、社長を対象とする会員組織を運営し、日ごろから相談を受けている私の感覚とも合致しています。「儲けたい」という欲に向かって単純に突き進めた時代がおわり、「不安」や「やる気の欠如」といった心持ちを大切にしなければいけない時代が到来したともいえそうです。  こんな時代の変化に対応する本を書くことができたと思っています。  強がりは、もうヤメです。  見栄もいりません。  うまく、したたかに生きていきましょう。  他人の成功話に浮足立たず、できることをしっかりやりましょう。  そして、しぶとく生き残りましょう。  本書は、事業承継・廃業の実務家という役割から一歩踏み出し、社長の相談役という立場で書いた最初の本になります。語ったテーマの範囲は、過去の著作よりもずいぶん広いものになりました。  経営コンサルタントへの道に踏み込むきっかけをくださった小宮一慶先生からは、経営の原理原則を教えてもらい、素晴らしい仲間との出会いを受けとりました。  岡本吏郎先生とは直接の面識こそありませんが、セミナーや書籍等で大切な学びを山のように頂戴しました。私の発想や思考の根っこには、岡本先生から見せていただいたものばかりあるといっても過言ではありません。  お二人のほかにも、経営コンサルタントになるために、たくさんの師から学びました。ありがとうございました。  ともに仕事をしてくださっている仲間、学びと励ましをくれる友人、そして、経営に対する知見をもたらしてくださった中小企業の社長の皆様、一人ひとりのお名前をあげることはできませんが、皆さんのおかげでこれまでやってこられました。  出版の声をかけてくださった、明日香出版社の編集者である藤田さんからは、今回、大変ありがたい機会をいただきました。  飼い犬のポン吉(ポメラニアン)にも感謝です。毎日、夜が明ける前から「散歩に連れていけ!」と起こしてくれたおかげで、早朝の執筆時間を確保できました。  そして、そして、読者のみなさま、この本を手にとっていただきまことにありがとうございました。  本は、読者が存在して、はじめて本になれると感じています。皆様のおかげで『小さな会社の「生き残る社長」と「潰れる社長」の習慣』は、本として

生まれることができました。  いよいよ今回の執筆作業もゴールのときがきました。  この本が、少しでも全国の社長のお役に立てることを願います。 2024年 10月社長の相談役  奥村聡

著者奥村聡(おくむら・さとし)埼玉県川越市出身、関西学院大学社会学部卒業。 2002年司法書士資格を取得。開業後、借金処理や相続支援、会社分割等の会社再編コーディネートを手掛ける。事務所を他社へ譲渡してからは、経営コンサルタントに転身。廃業や M& A、社内承継などの「会社の着地」の場面を中心に、北海道から沖縄まで 1000社を超える支援実績を有する。社長たちから公私にわたる数々の相談を受け、人生そのものに触れてきた。「おわりを良くする」をモットーとし、納得の社長人生を届けるために活動する。 NHKスペシャル『大廃業時代』に、“会社を看取るおくりびと”として出演。著書に『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?(翔泳社)』、『 0円で会社を買って、死ぬまで年収 1000万円(光文社新書)』等がある。〇社長の相談役  奥村聡  公式ホームページ   https:// office-okumura. jp/

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