とある心理学の先生が主宰したセッションに参加したことがありました。 無意識の領域にアプローチするようなテーマでしたが、ロングライフを体現している社長さんたちがたくさんいて「こういう方面にまでアンテナを張っているんだ」と、すごく感心させられました。 大浴場でたまたまご一緒した社長さんに、お湯につかりながら(泊まりがけの企画でした)お話を伺うことができました。 その方は、もう 30年近く事業を続けているそうで、少し話をするだけで実直でまじめな性格が感じ取れました。間違いなく、いい経営をなされていることでしょう。 これはチャンスとばかりに、どうやったら社長として長く活躍ができるのか、質問しました。「守りばかり固めていてもダメなときはダメですからね。だからいざというときに動けるようにしておかなければいけないと、日ごろから意識しています」 いいお話を聞けました。いかにも手堅そうな守り重視タイプの社長さんが「動き出せること」を重視していたのです。 守りに軸足を置き、長きにわたって経営を続けてきた方です。なのに、今でも攻めに転じるタイミングを逃さないよう意識しているところに、凄みを感じさせられました。 私は本書で、どちらかと言えば消極的で、守りを優先するような話ばかりをしていると自覚しています。新しいことに飛びついてブレないこととか、余計に動かないことなど。 下手をすると、私がしたお話が、「動きたくない」と心のどこかで思っている社長に、動かないための言い訳を提供してしまうことにならないかと、少々心配しています。 時には大胆に動かなければいけない時があることは、忘れていただきたくありません。 世界は複雑で、状況はいつも変わります。動く、動かないの、両極端な考え方では対応できません。 私がこれまでお話ししたことは基本姿勢であり、間違ってはいないと思いますが、「今もその姿勢を適用すべき時なのか」は、あらためて状況を見ながら判断してください。 今の日本は成熟社会となり、多くの既存産業が曲がり角に差しかかっています。これからの未来は、これまでどおりではうまくやり切れない場面も出てくるでしょう。 ここあたりでいったん減速し、「会社が生きていくために欠かせない柱は何か」を確認してみませんか。 人間であれば、空気があって、食糧があって、生活を維持できるお金があって……と、生きるために必要な柱があります。 では、あなたの会社が存続することを支えてくれていた柱は何でしょうか。思いつくだけ書き出してみましょう。 次に、書き出した会社を維持する柱を見てみてください。遠くない未来において、経営環境の変化によって失われてしまいそうなものがありませんか。 たとえばこのようなイメージです。「これまでは原料を安く仕入れることができたけれど、この先は高騰することが見込まれている」「元気に動ける若い人をずっと雇用できていたが、過疎が進む今の地域では、近い将来採用は難しくなる」 会社の存続を支えてくれていた柱が無くなることが見えたのであれば、それはもう動かなければいけない時期に差しかかっています。 現在のビジネスモデルを捨てて、新しいモデルにつくり替えなければいけないかもしれません。顧客獲得や採用のために、別の地域に出ていかなければいけないかもしれません。究極的には、会社の存続を断念し、廃業方向に動いたほうがいい場合ですらあるかもしれないのです。 ロングライフの社長は、経営環境に対して希望的観測をしません。前に向かってアクセルを踏み込むばかりでもありません。ときに減速し、前方を確認します。 これまであなたの会社を支えてくれていた柱は、今後も会社を支えてくれますか。 31 生き残る社長は、会社の存続を支える柱をたしかめる
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