「もう潮時じゃないですか。あきらめるときが来ているように見えます」 私はある社長に、こんな言葉を伝えたことがあります。 会社の売上は、ピーク時の半分まで落ち込み、資金ぐりは苦しくなっています。 後継者になるはずだった息子は、社長にガミガミ言われ続けることに嫌気がさし、数年前に会社を飛び出してやめてしまいました。 そして何より社長は高齢になり、見るからに健康状態がよくありません。呼吸が浅く、肌の色はくすんで見えます。ずっと落ち着かない態度で、何かに急かされているかのようです。 私と話をしている間には何度も携帯電話に着信があり、その都度電話に出ていました。「納期が過ぎて!? あぁ申し訳ない。すぐに手配します」 社長のミスによるクレームの電話も何件かあったようです。「会社なんてやめられるわけないだろ!」 私が廃業を推奨したことに対して、怒気をはらんだ答えが返ってきました。 ならば、私は何も言うことはありません。私は静かに席を立って帰りました。 会社をやめられないというのは、社長の思い込みでしかありません。やめる気になれば、必ずやめられます。 やめるに際して、何かしらの痛みや苦しみがあることは避けられません。しかし、それもやむを得ない話です。目の前まで限界が来ているのですから。近い将来、会社か、社長が潰れます。 現実に目を開いて、決断をしてほしかったところです。自分の命を犠牲にしてまで会社を続けるべきだとは、私には思えませんでした。 なお、会社を訪問した 1か月後に、経理担当の方から「社長が倒れて入院した」という報告とともに、会社を助けてもらえないかという打診がありました。私は、仕事を引き受けるか否かは一発勝負と決めているため、お断りさせていただきました。 もっとマシな結末があったと思わずにはいられない案件でしたが、会社経営と社長の人生について考えるきっかけになりました。 限界が来たら無理にあがかないということが、あたり前過ぎる結論になるのでしょう。無駄あがきは余計に結果を悪くしてしまいます。 限界に達していなくとも、経営に気持ちが入らなくなったならば、それはもう社長のやめどきなのかもしれません。「仕事をやる気がなくなったんだよね」という声は社長からよく聞かれます。これ、そのまま続けるのはマズいです。 いったん立ち止まってください。休むなり、人生の棚卸をするなどして、再び闘志がよみがえれば社長をやめる必要なんてもちろんありません。 一方で、立ち止まることもせず、惰性で続けてしまう方は多いところです。こういうとき不思議と問題が起きます。とんでもない事件が起きたケースも幾度かありました。 ある会社でも、社長が「全然やる気はないけど、仕方ないからダラダラやるよ」なんて言っていました。すると社内で大きな労災事故が起きてしまい、社長は責任追及の矢面に立たされました。自分が身を入れないまま仕事をして、従業員の命にかかわる大けがを負わせてしまったことを、何よりも悔いていました。 自分の過去を振り返っても、仕事のトラブルは、気持ちが入っていない案件でばかり起きたように感じています。 気持ちの入っていない案件に限って、私がミスをする場合もあれば、私は悪くないものの、他の人が犯したミスでこちらが苦しい思いをさせられました。 あたかも運命の神様は、私たちの姿勢をいつも監視していて、気が抜けた仕事をしようものなら、戒めのために罰を与えてくるような感覚を持っています。 会社経営をしていたら、悪いこと、つらいことは必ず起きます。自分が直接的なミスを犯していない場合ですら、責任を負わなければいけなくなることがあります。 こんなときに、「やめておけばよかった」「やらなきゃよかった」となりたくはありません。そうならないためにも、気が入っていないまま仕事を続けることは避けたいところです。 47 生き残る社長は、仕事に気持ちが入っているかを常にチェックする
目次
コメント