個人で会社を買って起業するというテーマの本をかつて出したことがあります。その関係で「後継者がいない会社を買いたい」という相談を一時よく受けていました。 どんな会社がほしいのか、と質問すると、多くの人はこう答えました。「これから伸びる市場の会社を買いたい」 たとえば、これからは高齢化社会だから、高齢者を顧客としている会社を買いたいという具合です。 この考え方はセオリーどおりなのかもしれません。 でも、私は賛成しません。 みなが同じようなことを考えるためです。これから成長する市場は、参入が激しくなります。ロングライフ戦略としては、競争が激しい市場は避けたいのです。 私は世の中で盛り上がっていない時期から、事業承継や廃業の支援を掲げて商売をしていました。当初はホームページによる集客がメインでしたが、ライバルがほとんどないため独壇場でした。 しかし時が流れ、後継者不足や廃業増加が社会問題として注目されるようになりました。すると、大手企業や自治体等が、こぞって私がいた土俵に参入してきました。その多くは M& Aの案件を集めることが目的です。 ホームページが乱立され、資金力のある会社や組織が、コピペで作られたようなページを次々公開していきました。その陰でうちのようなパワーのない事業者のページはアクセス数を大きく減らし、埋もれていったのです。 これから伸びる市場や、誰もが稼げそうだと考える市場で待っているのは、こんな風景です。「東京に出たい」とか「海外に出たい」といった話も似たようなものかもしれません。 自分たちがいる市場の縮小を予想し、大きな市場に飛び出たがる社長はたくさんいます。 しかし、より大きな市場を求めて出て行ったからといって、必ずうまくいくわけではありません。そこにも厳しい競争はあるし、アウェイで戦わなければいけない不利を課されるのです。 より大きな市場で商売をしなければいけない、という固定観念を疑ってみてもいいのかもしれません。 そうしなければ本当に生き残れないのでしょうか。 案外そうでもないと感じます。 小さな会社に必要な売上は、大きくありません。必要なお客さんの数だって、少なくて済みます。 たしかに、市場は縮小しているのかもしれません。でも、明日、明後日で急になくなるものでもありません。斜陽産業でも、縮小傾向にある市場でも、自社を満たしてくれるくらいの売上や顧客数は潜在的にあるのではないでしょうか。 ここに小さな会社の利点があります。大企業が自分たちを維持するために莫大な売上を必要とすることの逆です。 そして何より、斜陽産業や小さくなる市場での競争は楽です。 新規参入がほぼありません。また、既存のライバルの中に、本当に強い相手はそんなにいないことでしょう。やり方次第で十分に勝てます。 もし社長が、より大きな売上を求めるとなると、様相が変わります。 売上をもっと増やすために、より大きな市場に打って出る必要が生じるでしょう。 はたして、わざわざ厳しい戦場に出向いて行って苦労をする必要はありますか。「もっと、もっと」を求めるのが資本主義の基本性質ではありますが、アクセルを踏み込むだけでは短命におわるリスクを高めてしまいます。売上はほどほどのところでセーブして満足する。これもロングライフ戦略の哲学です。 小さな市場に居続けては、爆発的に稼ぐことはできないかもしれません。しかし、誰からも見向きもされないような小さな市場で、手堅く稼ぎ続けている会社を私はいくつも知っています。 12 生き残る社長は、あえて斜陽産業や小さな市場にとどまる発想を持つ
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