余剰資金があるから、改善投資をするのではない改善したから、儲かったんです!この本で述べたい内容は、至極シンプルです。安全を、追求すればするほど、生産はスピードアップし、効率化できたこと。従業員の負担を少なくすればするほど、会社は儲かり、手元に現金がどんどん貯まっていきました。安全対策から、連続して生産改善の設備投資へ、それは、どこまでが安全で、どこからが生産改善かという意味はなく、つながって、連続していきました。なぜなら、安全投資と生産改善は、イコールだったのです。ただ重要なことは、視点が異なっていたということです。資金ゼロ、140人いた従業員が15人になり、信用を失い注文ナシから、安全・設備改善への投資を知恵と勇気で、乗り切った。この本は、ある意味、私の綱渡りでの悪戦苦闘の記録です。つまり、この本を読んで実践=儲かる!ということです。同時に、会社は儲けることが使命です。会社は、儲けるために存在しています。マンガで読んでいただいた私たちの姿は、技術力だけでなく、スピード生産が、世界中でよいパートナーを探している企業に、認められた瞬間です。初めから挑戦的になってしまうことをお許しいただきたいのですが、「うちもお金が貯まってから、やりますよ」「いやいや、平社長のところは、ウチと違っていっぱいお金があるから改善投資できたんでしょう?」「ただでさえ仕事がなく、人手が余っているんだから、効率化したって意味ないんですよ」「連続改善なんて、利益率の高い大手企業の世界なのでは?日本の99パーセント以上を占める中小企業に、トヨタみたいな改善なんて、そもそもできないでしょう?」私は正直、こういう考え方の経営者はいかがなものかと、思います。言い訳しているうちは、残念ながら、大きな利益は生み出せません。私は、儲かっているから改善できたのではありません。改善投資をしたから儲かったのです。創業者の父から経営を引き継いだ当時、お金もなく、受注もまったくない状況でした。ないないづくしからのスタートから、だからこそ、経営改善から始めざるを得なかった。胃を裏返したような痛みも経験しています。どうか、そこを勘違いして欲しくありません。だからこそ、今利益が出ていない、手元に資金がない経営者にこそ、この本を参考にしていただき、どうにか苦境のスパイラルから脱し、利益が出る会社に、成功をと、願って書きました。私が12年間で実現した年間売上高と同じ手元現金が常にあるような財務状況を作り出すため、私の考え方とノウハウが必ず参考になると確信し、みなさまが勇気を出して経営されることを、願ってやみません。父との裁判、お客さまはもちろんのこと、銀行と従業員に逃げられた会社ゼロ(信頼マイナス)からの経営スタート父は「天才職人」からカリスマ経営者になった人であり、その口癖は、「俺の世界一の鍛造技術は、博士でも計算できないし、ましてや機械化できない」だったことで、ご理解いただけますでしょう。父は、大きかった機械償却が終わり、利益が莫大に出始めると、むしろ会社を早くたたみ、現金を残そうと考えていたようです。そのため、大がかりなオーバーホールなどは、許してくれませんでした。ましてや、自動化など考えず、逆にそんなことをしたら会社の終わりだという
世界一の腕前・技能が自慢の会社でした。父の卓越した技術、そして得意先での抜群のQCD評価やニーズを考えると、廃業はあり得ない。しかし、その当人が会社をやめる、もう仕事は受けないと言い出し、実際に発注を断り始めました。サプライチェーンを心配したお客さまが転注したこと、とどめとしてリーマン・ショックが襲いかかります。会社を閉鎖した父は、再開させたい私との間、裁判所で和解しますが、引退条件として、会社にある現金にできるすべてを、父に支払うことになりました。この間、従業員はいなくなり、取引銀行三行は受注のない私に1円のお金も融資してくれません。今をご存じの方々は、当時のこの状態をもう、忘れてしまっている様子ですが——。安全改善→利益爆発の好循環どんどん貯まる現金、やはり改善しかない!ただ、いざ再開してみて、機械への投資や整備をしなかった数年、そのうえ会社の稼働は8カ月も止まっていたため、まさにすべての機械がボロボロの状態でした。安全対策には、絶対に力を入れなければならない。父からすべてを引き継いで、責任者は私以外いない、ここで事故でも起こせば、一巻の終わり。「安全第一」で、設備はそちらを優先させなければなりません。しかも、去っていった従業員が多過ぎ、省人化、省時間、自動化をしなければ生産できません。反面、給与支払いの負担が少なくスタートできました。手元に資金がほとんどない状況で、どんな機械を入れ、どうやって生産すればいいか。毎日、帳簿を見つめていた私は、固定資産が多いことに気づき、そうだ、固定資産を流動資産に換えようと、一工場を売却し、当面の繋ぎ資金を作りました。その後、追いうちをかけたような東日本大震災の惨状。ですが、ピンチはチャンス。太陽光発電の固定価格買取制度(FIT制度)しかないと決断。一つの工場を売却した現金を使い果たしてしまった訳です。これは、回転資金のために調達した大事な現金だったにもかかわらずです。せっかくの解決策だったのに、自分で自分を追い込み、また、綱を渡る羽目にしてしまいました。生き残る中小企業は常に、試行錯誤している・行動している・変化させている現在、確かに、中小企業を取り巻く状況には厳しいものがあります。現実的に、受注が急に増えることはなかなか期待できません。そこに、今後は少子化・高齢化の影響も、のしかかってきます。儲かっていない会社は給料も多くは払えません。そんなところに入社してくれる若者はなかなか見つかりませんし、ベテランもやがて退職します。こうした課題に対する答えは、実際上、省人化、自動化による改善しかないのです。合理化して、人手をかけずに、効率よく作ること。同じ売り上げでも、速く作って利益を残す。さらに、安い仕事も受けて、利益を多く出すことです。それがやがて、売り上げを増やすチャンスを呼び込みます。そのために、まずは考えましょう。危機感を持って、当たり前のことから始めていきましょう。最後には、儲かる筋肉がモリモリに付いた、素晴らしい体質の利益爆発企業に生まれ変われるはずです。本書は、そのことを目的として書いたものです。止めない・速く・ムダがない!これが平流・経営改善の極意だ毎日、設備投資がしたいのにお金がない、諦めていた私に、今でも覚えているシーンがあります。自問自答で、「お金もない仕事もないのに、どうやって設備を買うんだ」投資を来期にしようとしていた自分は、それでも悶々としていました。そんなある日曜の夜、自宅で見ていたテレビ。くりぃむしちゅーの出演していた『シルシルミシルさんデー』(テレビ朝日系)という番組で、合理化したお菓子工場の無人機械から、ものすごいスピード、しかも正確で清潔、次々と、それも手作りのように繊細に美味しそうに、どんどんできるのです。やっぱりこれだ!スピードアップ、省人化、自動化への設備投資しかないんだ!迷っている自分への天啓のようでした。この本では、前述の経営改善への設備投資の経験とノウハウをお伝えしていきますが、その原点も資金なし・仕事なしだったのです。改善を止めるな!社長自身の限界を決めるな!
気持ちを奮い立たせた考え方もし現状資金がないのなら、何もないときこそ、知恵と勇気です。私は、こんなフレーズを自分のために、日々、繰り返していました。・このまま会社は生き残れる?やらなくて生き残れる?・できないと決めつけないで、もっと考えれば?・自分でわからないなら、他人に聞こうよ!探そう!・これで終わっていいの?・やるなら今でしょ!勇気出しなさいよ!勇気を出して実践したその要点や重要な考え方を、あらかじめ整理しておきます。お金がないなら、まずは頭を使う!「」⑴「100パーセント」はない100パーセントの改善は、ありません、改善は少しずつ積み上げていくものです。100パーセントを求めて=できないで、終わってはダメです。⑵設備投資に使う金額一人当たりの人件費との比較で考えることがわかりやすい。⑶改善点の見つけ方四つのヒント①動線・モノの流れの一方通行化・単純化②ムダな動き排除・時間の最短化③管理、チェックを最少化インプットしない・確認(証左)しない事務作業。④新しい機械の導入⑷経費カットはたいした改善にならない人件費・経費カットを改善だと勘違いしている人が多い、大きな勘違いの一つ。⑸情報を集める改善がわからない場合には、他人に聞く、真似をする、調べる。なぜ改善できないのか?なぜ儲からないのか?決定的に足りないのは「危機感」と「勇気」前作を上梓したあと、私が経営者を退任して時間ができたこともあって、他社からアドバイスを求められる機会が増えました。「どうすれば平さんのように儲かる現場にできますか?うちの現場を見て、アドバイスを欲しい」——・うちの業界は構造的不況業種で……・いい従業員がいなくて……・お客が価格を下げてくるんです……・新規の仕事が取れなくて……・工場を一度見てアドバイスください共通点をまとめると、こんな状況です。・新規事業を模索していますか?・従業員より、自分がやるべきことやっていますか?・原価を下げる改善投資を考えていますか?・新規のお客を取る生産体制を整えていますか?・整理・整頓・掃除、できていないですよね?うまくいっていないのも、成功しているのも、意外にシンプルです。最初の本を出版したあとにも、どこにでもある内容だった、当たり前のこと、誰でも知っているなどのご意見を承りました。そうなんです。ですが、あえて反論すれば、誰でも知っている、わかっていることを、当然に、断続的に、やったか・やらなかったのか、に尽きるのです。そして、結果を出したのか・出していないのか、だけです。省人化・省エネ化・自動化どんな改善であろうと、魔法のような完璧な発明王しか考えられない投資は一つもありません。少しずつ当たり前のことを、改善の度合いが進むように考えることです。
現実、どれも少しずつがポイントです。
目次なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?はじめに世界的企業に〝世界一のスピード生産〟だと認めてもらった日余剰資金があるから、改善投資をするのではない改善したから、儲かったんです!生き残る中小企業は常に、試行錯誤している・行動している・変化させている止めない・速く・ムダがない!これが平流・経営改善の極意だなぜ改善できないのか?なぜ儲からないのか?決定的に足りないのは「危機感」と「勇気」目次第1章寝ても覚めても無休思考!エピソード1悩める地方の広大な敷地の活用法平のおばちゃん、無休思考を語る「ああでもない、こうでもない……」考える行為に、お金はいらない自分だけで考えるには限界がある。他人を巻き込み、情報を集めて、目的を達成する方法四六時中考えていると、リンゴのごとく思わぬところから急にアイデアが浮かぶ寝ても覚めても無休思考するための実例①諦めずに、どうすればいいかを考え続ける寝ても覚めても無休思考するための実例②できるか・できないか、ゼロ・100で判断しない寝ても覚めても無休思考するための実例③小さな経費圧縮はバカ経営者のやること……利益爆発しない寝ても覚めても無休思考するための実例④すぐに聞く、質問する。ただし他人のペースに巻き込まれない寝ても覚めても無休思考するための実例⑤思いついたら1秒後に動く!遅くても24時間以内に寝ても覚めても無休思考するための実例⑥四六時中考えていると、思わぬ瞬間にアイデアが浮かぶ第2章動きのムダを徹底排除!エピソード2とっちらかった金型を徹底的に整理整頓平のおばちゃん、動きのムダを語る絶対やらなければいけない作業・工程からムダを発見し、なくしていく整理整頓と清掃まずは、掃除時間の半減QRコードの活用で生産管理・集計事務も効率化書かない、インプットしない、「証左」をしないフォークリフトで素早く!落とさず!ロボットの代わりも!動線のムダを省き、置き場、機械などの位置を再検討動きのムダを徹底排除する実例①掃除は毎日、欠かさず、そして短時間で動きのムダを徹底排除する実例②棚をどんどん作って徹底的に整理整頓動きのムダを徹底排除する実例③QRコード活用で手書き廃止、インプットも、証左もしない動きのムダを徹底排除する実例④油圧アタッチメントリフトを専用化。ロボットより便利動きのムダを徹底排除する実例⑤動線を考え、置き場、機械の位置を再検討動きのムダを徹底排除する実例⑥ゴミは穴に埋めたゴミ箱に落としてリフトに任せる第3章ボトルネックを速攻解消!
1億円かけた機械でも非効率なら捨てる!平のおばちゃん、ボトルネックを語るボトルネックの発見と解消は儲かる会社作りの最重要課題どこでスピードが落ちている?ボトルネックを見つけたらすぐに行動開始ボトルネックを速攻解消する実例①「どこでスピードが落ちているのか?」を常に見つけるボトルネックを速攻解消する実例②ボトルネックを見つけたら迷わず改善するボトルネックを速攻解消する実例③よいモノがあるなら、古いモノは迷わず捨てるボトルネックを速攻解消する実例④ヒマそうな従業員に「職務質問」するボトルネックを速攻解消する実例⑤作業の順序・組み合わせで生産を工夫する第4章先手を打って準備完璧!エピソード4汚れっぱなしの機械が、大きな生産ロスを生む!平のおばちゃん、準備を語る機械が止まれば莫大なロスに!先回りして対策を講じる機械を止めるな!生産を止めるな!できる経営者はこんな対策を講じている電気制御化・デジタル化で故障を素早く特定。設備の専門部門と部品部材の備蓄までシステム導入で手書きを廃止!迅速化×正確な準備で効率が大幅アップ先手を打って準備するための実例①いつ・誰が・何をするかを明確化・文書化先手を打って準備するための実例②重要度・頻発度に応じて、整備の期間を考える先手を打って準備するための実例③電気制御化、デジタル化で故障箇所を素早く特定先手を打って準備するための実例④メンテナンス部門に専門者を置く先手を打って準備するための実例⑤汚い手書きは廃止して、準備を効率化、高速化第5章最新機械を迷わず積極導入!エピソード5新しい機械が出れば、思い切ってすぐ交換!平のおばちゃん、最新機械を語るスクラップ&ビルドに終わりなし!最新技術、最新の効率化を常に探っておく私はこんな最新機械を導入してきた100億円を生み出した改善・効率化の実例集最新機械を積極導入するときの実例①最新技術、最新の効率化を常に探っておく最新機械を積極導入するときの実例②従業員がすることがなくなる、という呪縛から抜け出す最新機械を積極導入するときの実例③単純作業を、機械や装置に置き換える最新機械を積極導入するときの実例④より効率化できる機械を導入する。トレーサビリティーにも着目おわりに
平のおばちゃん、無休思考を語る「ああでもない、こうでもない……」考える行為に、お金はいらない私がいろいろな情報を外部から取り入れたり、その結果チャンスを逃さずに決断できたりした背景には、自分の頭で、毎日、四六時中、ひたすら「考える」ことをやめなかったから。考えるということに、お金は不要です。それを試行錯誤していく、作業の積み重ねがあったからです。もしも、利益爆発に向けて改善を始めたいけれど資金が頼りないという方がいるなら、まず「ひたすら考える」ことです。ただ「考えなさいというだけでは、何も浮かばない」という方に。この章では、今後改善を考えていくベースになる、「考え方のテクニック」、あるいは「よいアイデアを導く方法」のようなものを、私なりの体験からお伝えします。業種が異なる方には、まったく、意味がない改善ばかりかも……ですが、ぜひ、考えて、考えて、考え抜き、探して、聞いて、もがいていただき、爆発したように利益が出た事実に、どこかでヒントをつかんでいただきたい思いでいっぱいです。自分は変わらなくても、世の中は日々変化する「」考えると疲れます。真面目に、追い込まれれば追い込まれるほど辛いものです。それでも、やめることはできません。なぜひたすら考えなければならないのか。一つ結論が出て、決断・実行をしたなら、それ以上考えなくてもいいのでは?確かに、深く考えないのはとても楽です。経営者だった頃は、朝起きてから寝るまで、どうかすると夢の中でも、どうすればもっと改善できるか、安全にできるか、考え続けていました。退任してそのプレッシャーから解放され、初めて自分にかかっていた重圧を認識しました、そして、考えなくていい解放感も楽しんでいます。それでも、経営者は日々考え続ける理由=責任があります。たとえ、ある程度お金が手元に残るようになったあとでも同じです。経営者である限り。では、どうすれば考える行為を持続できるのか。私はこんな風です。自分または自社が、現時点でできる改善策を打ったとしても、それがベストかどうかはわかりません。決めるのは、得意先であり、市場であり、将来・未来だからです。そして、世の中は変化し、新しい技術が生まれ、新しい機械や新商品が生まれています。現状は、「今この瞬間、現状である」だけで、次の瞬間には過去になる運命にあります。つまり「現状維持」は、やがて遅れを取っていくことになるのです。また、考えていたことの点と点がつながり、ある日、チャンスが、瞬間的に巡ってくるんです。マンガに出てきたように、太陽光に投資すべきか。何かに備えて現金を保持しておくべきなのか。しかし、判断に使える時間が長くない場合、結局普段の考えの積み重ねが、物をいいます。物事に100パーセントはない白か黒かで考えない設備投資の決断は、実際は非常に微妙な判断です。すべて人手をかけず、完全無人、ボタンを押す必要もなく次から次へと正確に精度高く生産できて、しかも故障知らず。値段もお手頃……。もしそんな機械があったら、私でなくてもみんな飛びつくでしょう。でも現実は、そんな機械を出してくれるドラえもんはいません。私が、新しい機械を導入しようと提案すると、従業員からは、「その機械ではできない仕事が残る」「この仕事を機械化したら不良が出るかもしれません」……たいていこんな答えが返ってきます。よく聞いてみると、数年に一回しか来ない注文に対する話だったりするのです。改善に対しては、まず大きなところから考えればいいのです。もしも100パーセント改善できる、黒を白にできる改善があればぜひするべきですが、そんなドラえもん話はなかなかありません。
パーセント自動化できれば100点満点、3分の2効率化できれば十分、半分でも、3分の1でもやる価値あり。現場の従業員は、慣れたやり方を変えることを苦手とします。そして、自分の居場所や担当する仕事が奪われるような感覚にもなりますから、反射的に反対しますし、想像力が乏しいものです。ここで経営者は、自分がどんな改善をしたいのか、どこまでを変え、どこまでは現状のままでよいのか、その改善を進めると会社と従業員にどんないいことがあるのかを語ると、スムーズに進みます。そのためにも、日々考えていることを説明できなければなりません。単純な経費カットはバカのやること目の前の増益だけに「着目」してはいけない思考の方向性についても触れておきましょう。改善、効率化というと、すぐに経費カット、残業などの人件費カットと思う人がいます。いわゆる「リストラ」です。でも、単純なリストラで、利益は爆発しません。なぜなら、やり方やシステムを変えていないから。経費や人件費のカットを言い出すのは、ほぼ間違いなく不況期でしょう。景気が悪く、受注が少ないため、余剰人員を減らそうとします。実に安易です。一見、正しいようにも思えます。そのときだけ、目前の利益は多少増えるかもしれません。しかしこれは、「バカ」経営者のすることです。特に中小企業の場合は。実際に儲からず、その事業に見込みがないなら、早くやめたほうがいいでしょう。しかし、事業を続けると判断したなら、まず、現状の売り上げの中で、どうやって利益を残すかを考えます。そして、ありったけの知恵を絞りながら、設備の「改善」に投資してください。電気をこまめに消すとか、仕事を遅らせても残業をしないとかは、改善の役には立たず、大きな利益も生みません。自分だけで考えるには限界がある。他人を巻き込み、情報を集めて、目的を達成する方法経営者は孤独です。これは、仕事の性質上、どうしてもそうなってしまいます。ただし、考えたり、アイデアを集めたりすることに関しては、他人を上手に巻き込むことです。わからないことは、専門家に聞きます。気になる事柄が生まれたら、すかさず、自分よりも詳しい複数の人に聞いてみることが重要です。その点、インターネット検索は重宝します。思い切った太陽光発電の導入で巨額のキャッシュフロー困っていること×発信×他人の知識・情報太陽光発電への投資は、最終的に私が考え抜き、これしかないと決断しました。なんとか手立てをして準備した手元の回転資金を、全部使い果たしてしまいました。もともと遊休地をたくさん抱えていることで、私は日々悩んでいました。購入したのは父で、将来の事業拡張用だったのですが、バブル崩壊で拡張できず、使い道がなくなり、管理コストと固定資産税だけが出ていくのです。かといって、買い手も見つかりません。どうにか活用できないか。本業以外でも、リスクが少なく、せめてコストぶんくらい穴埋めできれば……。そこで、不動産屋やデベロッパーに電話をかけてみたりしたのですが、使い道はまったくありませんでした。そんな中、東日本大震災に伴う電力危機が起き、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まりました。もちろん、この制度自体、私の経営努力の結果でも、知恵を振り絞った結果でもありません。世の中が急に変化したタイミングをぱっと捉えられるか、そして即座に行動に移せるかがポイントになります。気になったら即座に情報収集・行動開始「」「24」「ひたすら考える」といっても、なんの材料もなし、一人暗い部屋で考えていても、発明家じゃありません。人の知恵を、前例を使えばいいわけです。新しいアイデアや情報、面白そう、改善に役立ちそうなヒントに触れたら、すぐに情報収集を開始し、詳しい人に直接連絡して聞くようにしています。そこで自分のルールにしているのは、「1秒後に動く」それが無理でも「24時間以内に行動開始する」
という法則です。とにかく、まずはメールを打ち、電話をかけてみるのです。一つ調べ、誰かに話を聞いたら、そこで得た情報を元にさらに深く、連鎖的に収集します。つい忙しくて後回しにしたら、そのままになってしまって、あとから気づいたら大チャンスを逃します。その例が、太陽光発電所建設でした。また、簡単な例では、ある日、工場の軒先にハトが巣を作ってしまい、フン害で大変なことになってしまいました。即座に調べてみると、空砲で追い払う装置もあったのですが、その音が問題ではと迷いながら、会う人会う人に何かいいアイデアはないかと片っ端から相談しました。すると、ある出入り業者が、「ハトを撃退する先生」を連れてきてくれました。先生と呼ばれるだけあって、あっという間にハトを捕獲して役所に引き渡し、新たに巣を作れないようネットや針状の器具を取り付けました。おかげで、当分の間、巣はできませんでした。これは、自分で調べ、考え、とにかく行動し、他人を巻き込んだからこそ、解決しました。小さな細かい例のようですが、フン害は、大都市でも大きな問題を起こしています。当社でも、毎日掃除をしなければならない従業員の健康にも影響を与えそうでした。大切なのは、思い立ったらすぐ行動を始めること。その結果ダメでもかまわないし、一度は失敗しても諦めないことで、解決策は必ず見つかるものです。最悪なのは、何もしないこと。思いついたアイデアには必ず価値がありますし、調べたら全然とんちんかんでダメだった、成立し得ない話だったとしても、そこに至るまでの情報は頭に残り、次に浮かぶアイデアに、使えることもあります。決してムダにはならないのです。この法則は決断を大胆に、迅速にできるようになる点でも役に立つと思います。思いついたら、即行動・即アクセスです。他人のペースに巻き込まれずうまく「使い倒す」方法とは?注意しなければならないこともあります。新商品や新サービスを知って、「これだ!」と思ったら、私はすぐに連絡を取ります。営業担当者は、私より詳しい知識を持っていて、あれこれ提案をしてくれます。しかし、彼らの目的は「自社製品をなるべく高く、たくさん売ること」です。誠実で真面目な人もいますが、とにかく売りたい気持ちが先行している営業マンも多くいます。彼らを、うまく「使い倒す」方法があります。・質問攻めにする・おかしい部分、矛盾した部分を見逃さずツッコむ(特に数字)・自分がしたいことを中心に話し、相手主導にしないまず、ひと通り説明を聞いたら質問をどんどん投げること。「どうなっているの?」「こうした場合はどうなるの?」「よそではどう使っているの?」「どのくらいの効果があるの?」「こんな使い方はできないの?」……とにかく、矢継ぎ早に質問を飛ばしていきます。当然、事前にパンフレットやインターネットなどを通じて情報を得ておき、それを自社で使う場合を想定して質問します。すると、だんだん相手に綻びが生じ、「さっきの話と違うのでは?」「20パーセント改善っていうけど、その根拠は?」「もし15パーセントしか効果がなかったらどうやって責任取るの?」といったことを言えば、手強そうな相手だと思うでしょう。そして、できるだけ、実際にデモンストレーションをしてもらいます。私も従業員も、この場合はどう使うのか?こんなケースに応用できるのか?価格差で違いは?……などなど、さらに質問を続けます。最大のポイントは価格交渉です。見積書は、金額もさることながら、「どういう考えでこの見積書を出したのか」をとことん詰めます。「自分の改善目的と合致している内容なのかどうか」を、納得するまで問い質します。もちろん、頭の中では計算もします。それを購入することで改善できる効果と耐用年数から見て、導入すべきかどうか、想定した価格と合致するかどうか、考えます。結果として、専門家の知識を使い、「よい買い物」ができるというわけです。太陽光パネルには、初年度の40円+消費税の買い取り価格で建設できました。日本製から中国製パネルにして、かつ、3倍購入する代わり、9000万円も値引きできたという「相場観」も、こうした計算ができたからです。
四六時中考えていると、リンゴのごとく思わぬところから急にアイデアが浮かぶアイデアが浮かぶ瞬間や時間帯は、本当に千差万別です。まったく仕事と関係のないときにも、急に解決案を思いついたりします。私の経験上、まるでニュートンの「万有引力の法則」のリンゴのように、天から幸運が落ちてくるようでした。何かの課題、テーマを考えても、即座に妙案にたどり着けるわけではありません。あちらを立てればこちらが立たない、案はよくてもコストが高過ぎる……といった具合。どうしようか、どうしたものかという状態の悩みを、そのままたくさん抱えていると、何かの拍子に、急に〝ハット・ビビット〟です。私の口ぐせは「思いついた!」でした。一度、高額過ぎて諦めかけた案件でも、ハッと原点に立ち返ったことで、シンプルな装置にして成功したこともありました。思考をしていると、誰からでも吸収できるようになるまったく関係のないジャンル、業界の話も役に立つアイデアはあるが、不安だった思考が確信に変わる瞬間は、なんらかの外部からの刺激が作用していると思います。すでに述べた、テレビ番組『シルシルミシルさんデー』のお菓子工場の話。私はお菓子を作っているわけでも、テレビを楽しみに見ているわけでもありません。朝から晩まで、ずっと改善を考え続けているだけです。画面に、急に、整然とお菓子を作り続ける、美しい機械の並んだラインが映し出されます。すごい、お菓子ってこんなに速く、しかも無人で菓子職人のように作れるんだ……。手でやるよりも緻密で、清潔で、見ていて気持ちいい……。こんな刺激が、保留していた、迷っていた思考を動かすきっかけになります。迷いが消え、大胆にスピードアップすることができます。こうした刺激を受け取るためには、常に思考し続けることが重要です。ただ、なんの考えも悩みもなしに見ていたら、「あー面白かった」で終わりでしょう。大胆な思考の飛躍フォークリフトの徹底活用が世界一のQCDへとにかく自動化なんだ、無人化・省人化なんだ、そして安全とスピードなんだ……。私が徹底したのは、フォークリフトの活用でした。詳しくは『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』で述べた通りですが、よその工場では使っていないであろうオリジナルのアタッチメントを開発し、モノの運搬という使い方を超え、ロボットを導入しにくい鍛造作業の安全化・高速化を進めることができました。アタッチメントをいちいち換装しているよりも、フォークリフトに装着したままにした専用化が、結果的に時間を短縮できると確信し、従業員80人に、80台ものフォークリフトを購入しました。そんなある日、著名なロボット工学の権威の方が、「人型ロボットは実用的ではない」と語っているのを目にして、「やっぱり!」と確信しました。自動化=ロボット導入、という思考しかできなければ、鍛造の場合ただ諦めるだけでした。鍛造は、高温かつ重い材料を扱う都合上、ロボットが巨大化するため、ほかの機械を設置することができません。その点、フォークリフトだったら自走できます。製品に合わせた入れ替えも自由自在。今では、何か思いついたり、新たな工程が生まれたりすると、すぐにフォークリフトとアタッチメントメーカーを呼び、アイデアを練ります。この思考→実践の流れが、ロボットを使いにくい現場でも、大きな力と競争力になっています。フォークリフトの活用法は、第2章でも詳しく述べたいと思います。
平のおばちゃん、動きのムダを語る絶対やらなければいけない作業・工程からムダを発見し、なくしていく私たちの生産業務の中心は、やはり鍛造作業です。しかし、多数の機械を抱え、生産をしながら、モノを運び、材料や製品および必要な金型を出し入れ、管理、図面確認をして、最後には、作業日報の作成、掃除で終わります。経理の管理部門も、その一日の生産集計、果ては、従業員の作業着をクリーニング屋へ受け渡しなど……、生産に付随する業務も多岐にわたります。これは、どこの会社でも同じでしょう。どれ一つとっても、不要な作業、工程はありません。同時に、どの作業、工程にもムダが隠れています。実は、もっと効率よく、素早くできるポイントがあります。削減した時間を生産に回して稼ぐ力アップ従業員のワーク・ライフ・バランスの向上にも役立つなぜ、こうした作業や工程のムダ取りをしなければならないのか。その理由は、大きく2点あります。まずは、マンガでも見た通り、浮いた時間をさらなる生産に回せること。鍛造屋である当社は鍛造製品を納品することで売り上げを計上し、利益を得ます。したがって、鍛造に当てる時間をできるだけ増やしたほうが、利益は向上するわけです。そしてもう一つは、同じ作業、同じ生産量なら、できるだけ早く済ませたほうが、絶対に従業員はラクなのです。同じ売り上げ、同じ利益なら、短時間生産は、従業員にとっては残業がなく、休みも長期休暇も取りやすくなります。急な病欠はもちろん、子どもの看病や入学式、卒業式、運動会やレジャーであろうと、希望があればどんどん有給休暇を消化してもらいます。ムダ時間を取れば取っただけ全員に余裕が生まれます。マンガのように金型を捜し回っている時間は何も生み出しません、ただただ、早く準備することが大切です。準備に必要な時間が減ったぶん、有給休暇の取得をしやすくしたり、さらなる生産に回したりしてもいいわけです。整理整頓と清掃まずは、掃除時間の半減清掃は、生産効率維持のためにも、従業員の労働環境のためにも不可欠です。現場は、普通に土間の清掃に加え、主要な機械のグリスの汚れなど、しなればならないところばかり。鍛造屋にとって一番やっかいなのが、スケール(鍛造で出る鉄の皮)です。製品重量の1パーセント、つまり100トン生産すれば1トンも出るのですが、除去しなければ鍛造機が埋まってしまうほどの量です。これが、重労働、なんせ、このスケールは鉄そのものだからです。しかし、清掃自体が直接売り上げに結びつくわけでもありませんし、長時間の生産作業が終わってから、この重労働が待っています。従業員は大変です。土間を掘ってバケツを埋め込む高級乗用車より高額な乗る掃除機を導入清掃時間を半分にするため、さまざまなアイデアや「兵器」を導入しました。スケールをスコッパーですくい、自社製大型バケツに入れていました。重いモノを持ち上げる、毎日の大変な重労働です。鉄は、雪より、土より、はるかに重い。そこでスケール回収用のバケツを地面にはめ込む部分を作るため、コンクリートを斫り、穴を開けました。そうして、スコッパーでスケールを持ち上げずに、下に落とすようにしました。床下のバケツが満杯になったら、フォークリフトでバケツを吊って運搬できます。バケツ自体、数十個以上用意してあります。必要な清掃を、より綺麗に、しかも、できるだけ簡単に、手早く済ませる。そのためにできることがたくさんあります。ピンときていない人は、最近家庭でよく使われるようになったロボット掃除機を想像してみてください。自分の家であろうと、掃除は時に面倒です。できることなら誰かに掃除をしてもらい、いつも勝手に綺麗にしてくれていれば最高です。この妄想(?)を現実に近づけたのがロボット掃除機です。外出している間に勝手に綺麗にしてくれ、文句の一つも言いません。私は登場当初から購入し、むしろ自宅の家具などを、ロボット掃除機が動きやすいような配置に移動しました。ところが、不思議なことに、工場をはじめとする現場では、今もなお掃除があまり機械化、自動化されていません。中には、ほうきとチリトリでやっているところも……。家庭でも、洗濯機を使わずたらいで洗っていたりする人はさすがに少数派でしょう。
なぜ会社はそうではないのでしょうか。掃除を従業員教育として考えている経営者もいるようですが、私は、できるだけ効果的に、効率的に、清掃を済ませる方法を追求しました。車のように乗って運転する掃除機、水を吸い込む掃除機、ハンデ掃除機、事務所でも磨かなくてもいい床など、掃除時間の短縮は、省時間の第一歩です。その結果、すべてのラインの清掃時間が1時間から30分になり、全従業員80人×30分×21日(月稼働日の平均)=月間840時間を捻出し、生産に回すことができました。綺麗に、早く掃除ができ、生産できることは、従業員にとって、最高にモチベーションが上がることではないでしょうか。旋盤で生まれる大量の削りくずは、地下にチップコンベアを導入して、自動で一カ所に集積し、やはりフォークリフトで搬出します。機械についたグリスの汚れは、ウエス(使い捨てのボロきれ)による手での拭き上げをやめ、高圧高温のジェット水で一気に洗浄します。焼き付きを防ぐためにはグリスが欠かせませんが、その清掃を怠るとホコリや粉塵が混じってどんどん汚れてしまい、故障の原因にもなります。毎日、塗っては除去、塗っては除去の繰り返しです。それが掃除というものです。土間の粉塵は、かつてほうきで処理していましたが、現在は人が乗る掃除機を導入しました。乗るだけで綺麗になるので非常に楽そうに掃除しています。鼻歌交じりです。ところがこれ、一台600万円もします。この掃除機を大事にしてもらいたい従業員には、「いくらだと思う?」と質問しては「600万円だぞ!」と言って、驚かせていました。清掃については、第4章でも詳しく解説します。棚をどんどん作って徹底的に整理整頓!足りなければ工場の外にも作るマンガでご覧いただいたように、私たちの現場では、形状や大きさ、重量に応じて大量の金型を扱っています。小ロットに対応し、精度の高い製品のためには、どうしてもさまざまな金型が必要になるからです。各種の工具なども同じです。そのため、金型や工具を、時間をかけずに確実に取り出すことができれば、時間のムダを省いた準備・生産ができます。取り出す時間よりも、大事なことは、本来の金型の精度管理です。また、受注から納品までの一貫した管理を、QRコードを使って行うことで、準備全体の時間のムダをより効率化できるようになりました。これは次の項で述べましょう。整理整頓の秘訣は、とにかく、見える管理です。見てわかる、説明不要管理。十分過ぎるほどの棚スペースを確保したうえで、個人のやり方を排除し、誰もが捜せて、誰もが片付けできる、誰もが見てわかるようにしておくことです。棚が足りないからこれ以上は無理、という状況であっても、工場の外部に新たに軒のように屋根を設置して、そこに棚を作りました。そこら中、棚だらけです。ただの棚ではありません。数百キログラムの金型もありますので、鉄骨で組んでいきます。使用頻度の低いものは、別の倉庫に格納しておきます。棚は、フォークリフトでの出し入れのため、使用しているパレットの大きさに合わせています。そして、棚は、どこに何を置くか、マグネットで看板を付けて置き場を特定しています。常に決まった場所に決まったモノが収まっているので、誰でも出し入れできるようになっています。QRコードの活用で生産管理・集計事務も効率化書かない、インプットしない、「」整理整頓は、物理的に行われているだけではありません。QRコードを使った管理システムを導入し、受注した時点で作業の流れをリアルタイムで、把握できるようにしました。これで、図面や金型などの準備だけでなく、工程、作業日報作成、売上管理の財務、納品まですべて一貫管理します。各部署に設置したリーダーで読み取りするだけですから、改めてインプットするムダを劇的に削減しました。各部署でのインプットミスや確認ミスはなくなります。かつ、連絡ミスもナシ。なんせ、リーダーで読み取りするだけで、事務所で状況が見られますから。これは本当に便利なだけでなく、担当事務員が、現場の書き間違いや連絡遅延などを、事務所でもタイムリーで見られるようになったことで、確認時間やミス、間違いなどの修正時間の削減にもつながりました。今では、各現場、すべての機械の近くにQRコードを読み込むリーダーが置いてあり、社内のどこにいてもリアルタイムで閲覧でき、必要に応じて印刷もでき
ます。導入したきっかけは、業務の流れを全体的に効率化できる方法はないか悩んでいたところ、たまたま買い物のコンビニエンスストアで、QRコードで軽やかに発注作業を見かけたことでした。きっと同じようなことが自分たちにもできるに違いないと確信してすぐさま業者を探したところ、私の考えていた理想に近い形で実現することができました。ぜひみなさんにもおすすめしたいですし、一度体験したら、絶対に元には戻れません。QRコードで手間もミスも激減確認や入力作業自体が不要に具体的な活用シーンを述べておきましょう。受注した時点で図面にQRコードが付きますから、生産現場ではQRコードを読み込むだけで、即座に正確な図面を閲覧できます。どれだっけ?とか、似たような図面と途中までにらめっこして、やはりこれは違う!となるようなムダは一切起こりません。続いて、情報は生産計画に組み込まれ、ラインごとに必要な金型や材料などの管理もできます。金型や材料などモノの種類だけでなく、準備のための書類や日程表も出力できますので、事前の打ち合わせや準備も短時間で効率的に終えられ、ミスも起きません。これも第4章で改めて説明します。生産が完了したら、以前なら現場の担当者が残り、30分程度かけて手書きで作業日報を書き、事務所に持参していました。受け取った事務員は確認したうえで、改めていちいち入力しなければなりません。つまり、書く→持っていく→入力する→確認をする、という4ステップが必要だったわけです。しかも、全部揃うのを待って、インプットからは次の日の作業になっていました。それも今ではQRコードを読むだけで終了します。書く必要も、書き間違えるリスクも、持っていく手間もなく、入力作業もせず、確認もせずにです。在庫や出荷の管理もできて、経理作業まで直結しています。そして、管理職が気になれば、どこにいても、リアルタイムの情報が即座に閲覧できます。「あれ、今どうなっているの?」と聞く前に、自分で容易に把握できます。これは、本当に劇的な変化です。フォークリフトで素早く!落とさず!ロボットの代わりも!動線のムダを省き、置き場、機械などの位置を再検討動きのムダをなくすため、活用している切り札が、すでに何度か述べているフォークリフトです。フォークリフトは運搬のための機器ですが、フォークリフトに取り付けているアタッチメントを目的に応じて開発、特注し、活用しています。そして、それぞれのアタッチメントはいちいち交換することなく1台のフォークリフトに取り付けたまま専用として使っています。これは、同時発売の『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』においても、ワイヤーをいかに安全に使うかという観点から説明しました。フォークリフトという機器は、ただモノを運ばせておくだけでは実にもったいない、複雑で入り組んだ作業ができます。特に、高温かつ重量のある材料や製品を扱う現場では、導入が難しいロボットの代わりに、効率化改善の切り札になっています。重いモノが運べるなら、そのままつかんだり降ろしたりできるはず!斬新な発想の転換切断機で切断した材料を炉に入れたり、炉で熱した材料をプレス機に移したり、といった作業はどこの鍛造屋でもやっていることです。その鍛造中に、ワークを、「落とす」「拾う」という作業は「もったいない極み」です。落として1秒、拾って2秒がムダになるばかりか、生産のサイクルが、がっかりするほど狂ってしまいます。ただ、平均が500キログラムで、温度が1200度の製品には、ロボットは不向きです。重量面での限界、高温の限界、そして、ロボットは一度据え付けるとその場を動けず、動線やレイアウトの変更が簡単にはできなくなります。しかし、フォークリフトは、機動性、パワー、使いやすさ、片付けやすさ、運転席の乗用車並みの乗り心地、空調完備も可能。フォークリフトは、私の一番好きな機械(機械といっていいのかどうか、わかりませんが)で、これは、コマツリフト「(株)中部カンパニー七尾支店」(同志)が、寝食を忘れて、ともにやり抜いてくれたお陰と思っています。1300度の炉の中に、ワークを取りに入っていくリフトの油圧パッキンや装置は、コマツリフトが、長年当社のために、開発してくれた耐熱仕様でした。この開発には、社長を退職した私の思い出がいっぱい詰まっています。長く一緒にやりました。アタッチメントの発明で、油圧リフトは最強の機器に変身!製造現場がスピード&効率のダブルで画期的に精密機械である切断機から、切断したワークをフォークリフトで降ろす。これは、誰も発想しませんでした。
つかんだり、降ろしたりする作業ができれば、安全になるのではないか——そう思った私は、フォークリフト会社、そして関連のアタッチメント開発会社の担当者に来てもらい、相談しました。結果は最高!でした。危険なワイヤー作業を排除し安全度を高めながら、ロボットを導入したかのように、3工程を1工程に効率化でき、スピード化が実現できました。しかも操作する従業員も一定の訓練さえすれば特別な技能は必要なし。ピタッとつかんで、ゆっくりパレットに降ろし、そのまま別の者のフォークリフトが次の工程に運んで……という流れができ上がったのです。今では、さらに活躍の場が増えています。旋盤工場では、1個500キログラムの鍛造品を、旋盤準備で裏返しする作業がありますが、1個1個リフトで持って、二人がかりで裏返していました。アタッチメントを私の発想で作製してもらったことにより、一人で、4個の鍛造品をあっという間に、ひっくり返し、同時にパレットにも載せることができました。フォークリフト会社の責任者は、「日本でここまでフォークリフトを多種多様に活用している会社はない」と、言っています。それは、こんな機器があればいいなと、切望したからできたことではないでしょうか。材料や仕掛品の置き場、機械位置を踏まえ最も効率的な動線を考える同機械、同工程をするとしても、動線を改善するだけで大きな効率化が見込めます。いつも、どう動かしたら、どう動いたら、もっと早くなるかを考えながら、動線を再検討し、モノや機械の置き場、レイアウトを変えてきました。動線は一方通行。戻ったり、ジグザグしたり、そして絶対に仮置きは厳禁です。何がどこにあるか、確認せずに済むだけで大変化一切お金をかけずにできる方法もある代表的なムダは、ありとあらゆるすべてのモノの「置き方」に隠れています。材料や仕掛品、道具、完成品の置き方です、棚を作る際にも述べました。どこに何があるか、どういう順番になっているかなどをいちいち確認せずに共有できていることが、たいしたコストもかけずに大きな改善効果を生み出します。例でいうと、社内のラインをまたいでいるケース。先入・先出をしなければならない旋盤工場の鍛造品の保管場所で、どれを先に使うべきモノ、どういう順番で置いているのかが、意識されないままになっていました。運んでいるのは社外の業者です。彼らは、運んできたときに空いている場所に、ただ置いて帰るだけ。もちろん、すべての製品には番号が付いているので、いつ生産されたモノなのかは最終的にわかります。それを、いちいち確認し、順番に並べ直してから使わなければならず、大変非効率な作業でした。資料を抱えた事務職員が屋外の置き場で、2、3時間もあたふたしていたのです。そこで、運送業者に、とにかく空いている場所ではなく、手前から置いていくようシンプルにお願いしました。そして、どこに、何番の仕掛品を置いたか、その置き場リストも提出してもらうことにしました。コストは一切かかりません。これだけで、どこに置かれているのか一目瞭然で確認する手間が最小限でクリアできます。同じ工場内の仕掛品も同様です。工程をまたぐ場合、一時的に仮置きをします。しかしこれには、改善の余地があります。最初から、置くときに、順番ごとに並べたほうが効率的です。考えなしに空いているところに次々積み始めると、確認や連絡の手間が生まれてしまいます。人間は不思議なもので、大きな目で見ればムダでしかないこうした仕事でも、やがて、その捜す行為に2、3時間もかかっていることが、自分の大事な仕事だと思い込み、真面目に適応してしまいます。これがムダの温床です。私は国内外のいろいろな工場を見学しましたが、案外名の通った大手企業の工場でも、こうしたムダな動きが見逃され、改善がなおざりになっているようでした。作業服のクリーニングの流れまで改善する「」私は、作業服のクリーニング手配でさえも改善の対象にしました。これには二つの意味があります。まずは、純粋な意味でのムダ取り。もう一つは、「ここまでうちの社長はこだわってやっているんだ」という、改善意欲の表明です。工場70人の従業員が着ている汚れた作業服(上下)は、会社負担で、クリーニングに出しています。かつての1点1点ビニール包装をやめ、すべてハンガーにかけて納品してもらうことになりました。
しかし作業服には上下があるため、個人個人の上下を合わせるため、なんと、事務職員が朝出勤するやいなや、30分以上もかけて、「これは誰々さんの上〜、こっちは誰々さんの下〜」なんて言いながら、上下を合わせていたのです。恐るべきムダというだけでなく、子どもの服を畳んでいる母親みたいな話です。立派な大人なのだから、自分の作業服がどれなのかを一番早く、確実に把握できるのは普段着ている本人に決まっています。そこで、クリーニング済みの作業着を吊るしておく透明キャビネットを特注して、クリーニング業者には、適当に掛けてもらうよう依頼しました。従業員は、出勤したら、自分の上、自分の下を速やかに探して自分のロッカーに移動させるよう指示しました。しかも、透明で、わざと外から見えるようにしました。従業員は作業着を5着ほど着回しているので、複数戻ってくることもあります。しかし、そのままロッカーに持ち帰らず、透明キャビネットに放っておくことも。ただ、丸見えです。そんな細かいことまでやるのか、と思われるかもしれません。実に、細かくやりました。これは氷山の一角です。どこまでムダ排除にこだわっているのか、私の覚悟は、こんな感じの小さいことの積み上げです。小さなムダが何億、何十億の利益を損ね、逆に、ムダを少しずつ取り除いていけば、他社がとても受けられないような低価格でも注文を取ることができ、結果、儲かる会社ができるのです。
平のおばちゃん、ボトルネックを語るボトルネックの発見と解消は儲かる会社作りの最重要課題改善における最も重要なステップ、まず手がけるべき第一歩は、ボトルネックを見つけ出し、解消することです。ボトルネックの改善投資では、最初に、デメリットがいくつも上がります。ですが、どんなデメリットも解決できますので、まずは、軸足を動かさず、生産を止める・遅らせる部分を解決することだけを考えてください。「はじめに」でも述べましたが、何から改善に取り組んだらいいか困ってしまった場合、とにかく「うちのボトルネックはどこだ?」という視点を持って、現場を隅から隅まで眺めてみることです。何が障害になって、スピードが出せないのか、どこがネックになっているのか。こうした視点は、基本的に経営者しか持つことができません。大半の従業員は、過去に指示された通り、真面目に働いて日々を送っているだけです。経営者も、過去のある時点ではしっかり考えてその指示を出したはずなのです。かつては正しかったはずの指示が、今ではボトルネックになっている例は珍しくありません。マンガの回転炉のエピソードはあとで細かく解説しますが、私の父が、ある時点で、止めずに生産するには回転炉を使うことが最善だと確信して指示を出してから、従業員もそれが常識、正解だと考えて働いていました。当時は、回転炉を加熱している時間、何もせずに待っていることは問題では?とか、その間にほかにできることがあるのでは?などと誰一人として気づいていませんでした。平鍛造という会社は、それでも鍛造業界をリードしてきた技術力の高い生産集団です。偉そうに書いてしまうと、平鍛造だけが、父だけが、革新的・独創的技術を伸ばしてきました。同業他社は、真似をできないながらも、平鍛造に、やっとついてきたというのが、実のところです。しかし、そんな会社にすら、ボトルネックは生まれます。それは同時に、いつであろうと、今以上に改善し、儲かるヒントがあるということになります。しかし、世の中の大半の経営者はボトルネック自体を意識していない儲からない、利益が残らないという会社の経営者ほど、ボトルネックへの問題意識が薄いと感じます。機械が古い、営業が弱いなどと考えるばかりで、人を代えずとも、機械を入れ替えずともすぐにできることがあるなど、考えもしません。そして、果ては景気が悪いから、発注してくる会社の値引き圧力が厳しく利幅が薄いから、従業員がバカばかりだから……などと文句を言い始めます。私は、マンガの通り、ボトルネック解消のために大胆な設備投資、廃棄に踏み切りました。ただそれは、ボトルネックを見極めたあとの究極的な話です。重要なことは、景気が悪くても、利益率の悪い仕事でも、新しい有能な従業員を採用しなくても、できることがたくさんあるという視点です。現状の厳しい環境下でも、十分な利益を上げている企業が存在します。ボトルネックの発見と解消が大切。儲かるネタやアイデアは、社長自身の頭の中に、自社の内部にあり、その改善には「速攻」的な効果があります。文句や恨み言を吐いていても解決しません。ぜひ、社内で生産スピードを遅くしている機械や慣習を見つけましょう。どこでスピードが落ちている?ボトルネックを見つけたらすぐに行動開始まず、マンガに出てきた回転炉のエピソードを例にボトルネックの見つけ方を説明しましょう。回転炉は文字通り決まったペースで回転しています。1回転して戻ってくると一定に加熱されているわけです。鍛造は、加熱温度が低くても、焼き過ぎも問題で、適温範囲に収めることが大切です。回転炉は、原則としては入れて待っていればよく、扱いやすいメリットがある反面、次のようなデメリットがあります。・スタートしたら必ず1周分の時間が必要・一つずつ順に出し、入れるため、常に炉の前に人を置いておく必要あり・回転軸があるため構造が複雑で高価なこと、回転するスペースで場所を取る・1日当たりにできる量が少ない鍛造は、バッチ炉でもできます。バッチ炉は、回転炉とは相対的に場所を取らず、安価で大量に速く処理できますが、次のようなデメリットがあげられます。・温度の調節が難しい
・扱いには熟練と工夫を要する・炉内の高熱と近距離で向き合う必要もあるバッチ炉も、多く使っていましたが、安定性や確実性、従業員の負担などを考慮して、小さいラインでは、回転炉に取り換えたのでしょう。その額、1基1億円。バッチ炉を使いこなすことでスピード10倍、効率20倍、今は環境にもやさしいリジェネ化バッチ炉を活用して回転炉に存在するボトルネックを解消するには、次の三つの点をクリアする必要があります。・同じ炉の中に、どれだけ入れたら加熱が速いか、考える・炉内温度の差やモノの大きさを計算しながら調整する技能を身に付けること・1300度という熱さの過酷な環境で、防熱する方法を探すそして、次の四つの施策を実行することで、難しいバッチ炉のフル活用が実現し、回転炉に比べ、スピード生産が劇的に可能になりました。・効率よく炉内に材料を入れるための専用パレット製作で、積み替え作業の効率化・最新のデジタル温度制御装置を取り付けて、難しい温度調節の問題をクリア・多能工化する。勉強会で従業員同士が技術を共有・平準化、ペーパーテスト・実地試験で社内資格認定・キャビンに空調の付いたフォークリフトの応用1億円の炉を減価償却が終わる前に廃棄しても、ボトルネックを断ち切って解消できたことで、余りある効果を得られたのです。1億円で新しいバッチ炉を3基購入、最新式は重油ではなくLPガスでリジェネバーナーを使用するため、効率的な火力の調節がしやすく、環境負荷も下がります。使っている炉が環境によいかどうかなんて、父の時代にはSDGsという言葉もありませんでした。父の回転炉導入のように、その時点では、それなりに合理的だったはずです。しかし、そこに縛られてはいけないのです。常にベストを探り、追い求めていると、かつて、ネックだと考えられていたバッチ炉が、むしろ現在は超スピード化の必須の設備になりました。現状をただ肯定するのではなく、常にボトルネックを見つけ、解消できると、儲かる力は格段に上昇していきます。おい、今何しているんだ?ヒマそうな従業員を見たらすかさず「職務質問」!ボトルネックやムダの発見は、基本的に工程を私自身が観察し、浮かんだアイデアや疑問を現場の担当者や管理職と質問しながら煮詰めていく方法で進んでいったのですが、もっと直感的で、効果的な「見つけ方」があります。イレギュラーな動きをしている従業員、ウロウロしている従業員、手持ち無沙汰の従業員を見つけ、即座にその理由を問い質すことです。聞き方は単純。「おい、今、何しているんだ?」これだけです。まるで警察官の職務質問です。勘違いしてほしくないのですが、私は、当該の従業員を叱るつもりはまったくありません。サボっているなら話は別ですが、より重要なのは、「なぜ変な動きをしているのか?」「なぜヒマや手待ちが生まれてしまっているのか?」を探ることだから。ウロウロしているのは決して従業員の責任ではなく、ウロウロせざるを得ない流れを放置している経営者の責任です。Q「お前、ここで何ウロウロしてるの?」A「……えっと、今必要な金型が見当たらなくて、あわてて捜しにきたんです」A「ちょっと確認したい内容があって、○○さんを捜していたんです」Q「今、なんで手が空いているの?」A「こっちは、処理が終わったのに、次の仕掛かり品が来ないんで、やることないんです」改善が進み、効率が高くなればなるほど、こうしたイレギュラーは減っていきます。反対に、改善が進めば進むほど、ボトルネックはより見つけやすくもなります。誰が、どのタイミングでどんな動きをしているかが決まっているからです。棚が足りない、棚の位置を変えたほうがいい、準備している金型の量が足りない、システム上で確認できない要素がある、前の工程の流れが次の工程とピッタリ合っていない、手が空いているタイミングでできる作業が決まっていない……などなど、この例だけでもさまざまな可能性や改善のヒントが思いつきます。あとは、優先順位の高そうなことからつぶしていくだけ。この方式は本当に効果が大きく、多くの改善のヒントがどんどん見つかるため、しまいにはヒマそうな従業員を見つけると、ワクワクさえします。ですから、私は、少しでも時間の余裕があれば、常に「現場パトロール」をしていました。これは、どんな業界の現場でも汎用性の高い手法だと思います。組み合わせ生産を考えるノンストップで生産できる最良のパターンを見抜け当社の工場での生産工程の流れを単純化すると、次のようになります。材料の搬入→切断→加熱→鍛造(プレス、ローリング)→検品と修正→出荷簡単にいうと、品物によっては、ローリングに通常の2倍の時間がかかったり、プレスが2倍かかったりすることもあります。
これを放置し、常に最初から最後まで均一的に工程を流していると、早いほうの工程の待ち時間が長くなってしまいます。これこそボトルネックの典型で、できるだけ待ち時間をなくせるよう、あらかじめ生産計画を調整しておくとよいのです。ある工程で2倍の時間がかかることがわかっているなら、前日のうちに翌日必要なぶんの半分を作っておきます。当日、昨日製造したぶんから作業することで、ライン全体の待ち時間は激減します。こうした作業を、私たちは「前取り」と呼んでいました。たとえば、大量生産品と、小ロット多品種品が同じラインを流れることがあります。そうした場合でも、できるだけ同じスピード、均一化した流れが保てるように最適、最良のパターンを想定して、事前に組み合わせておくことが大切です。
平のおばちゃん、準備を語る機械が止まれば莫大なロスに!先回りして対策を講じるスムーズ・超スピードで、ポンポン生産するため、常に準備はかかせません。生産計画に沿って部材や金型、道具などを用意し、使いやすいように並べる。関係する従業員が作業や段取りを確認・共有する。ところが、準備万端で臨んだはずなのに、動かし始めた機械が突然故障で止まってしまったら?機械をばらして原因を探り、元通りに動くようになるまでは、ラインが完全に止まっています。そして、急に手持ち無沙汰になった従業員からは確実に緊張感が薄れ、いつ再開されるかもわからない状況で無為な時間を過ごす羽目になります。そのうえ残業。当社が閉鎖からスタートしたときは、毎日のように、そんな状況に陥っていたと記憶しています。マンガでご覧いただいたようなケースは、常に起こり得ます。つまり、準備とひと口に言っても、通常の準備だけでなく、機械などが故障しないようあらかじめ定期的に手を打っておくこと、それでも故障の場合を予測し、早く原因を特定、復旧させる手段への設備投資が大切になります。泥縄式は最悪!困ってから始めるのではなく準備をシステム化、整備も定期化「常に準備せよ!」だと、かけ声だけの精神論で終わってしまいがちでそれではNGです。何をどう準備するかは当然として、清掃やメンテナンスまで含め、明確に決めておきます。生産計画を組み、経営計画を考える際にも、当然この点を考慮しておきます。清掃に関しても、第2章でも述べましたが、やるべきことを洗い出し、どのくらいの時期に、何をするかを決め、それを日々の作業に組み込むことが基本です。手が空いているときに、思いつきや気分転換で急に大掃除したり、メンテナンスしたりするわけではありません。自宅の掃除だって、床や風呂場、トイレや台所は毎日掃除しても、照明器具や窓、換気扇のファン、エアコンのフィルターなどは、年末の大掃除のときくらいしかしないでしょう。工場の現場も基本は同じです。毎日、週1回、月1回で作業すべき内容と、それにかかる人数と時間を計算して前もって組み込んでおく。面倒でスキップしてしまうことが、故障の原因になります。儲ける経営者は準備を現場任せにしないそんなの当然じゃないかと思う方もいるでしょうが、このような準備は、経営者側で重要性を認識していても、実際の運用は案外現場任せになっているケースが多いと感じます。「ときどき掃除しておけよ」「合い間で機械のメンテしておけよ」と声をかけるだけでは不十分です。「誰」がするのか。「時々」とはどのくらいの間隔なのか。「掃除しておく」べき範囲、作業内容や所用時間はどうなっているのか。「合い間」がいつできるのか。「メンテ」の内容や優先順位は?機械ごとにどう変えるのか?こうしたことを現場任せにしてはいけません。いざ機械が止まったり、清掃の不徹底で不具合が生じたりしたときに、管理職や現場の従業員を怒鳴ってもあとの祭りです。もはや生産は止まり、不効率は起きていて、まさか従業員がそれを補償できるはずもありません。従業員にとって掃除は面倒です。どこまでやるか、掃除は無限です。もともと、準備だって言われなければ自分のスタイル、自分の好むペースやタイミングでやるだけ。それでも彼らは彼らなりに、十分真面目に準備していると思っているのです。準備内容も、現場任せにせず、経営者が自ら、完璧に仕切らなければなりません。そうしたほうが「会社が儲かってみんなも給料上がるし仕事もラクになるよ」と言って聞かせ、彼らを動かすのが経営者であり、具体的な仕組み作りこそ腕の見せどころです。
機械メンテナンス計画・掃除、明日の段取りを含んだ準備を徹底すれば、こうした事態がかなりの確率で防げるようになります。準備不足や機械故障で、半日、1、2日が台無しになっている中小企業は案外多いのではないでしょうか?機械を止めるな!生産を止めるな!できる経営者はこんな対策を講じている製造業にとって、機械は最も大切な要素の一つで、機械が止まれば何もできません。高い品質精度は、機械がしっかり整備されているからこそ、実現可能です。たとえば、平鍛造には40年現役で使っている鍛造機があります。しかし、なんの不調もなく働いていますし、事情を知らない人の目には新品同様に見えるかもしれません。なぜなら、毎日の点検と高圧温水による清掃、2カ月に1回程度のレーザーレベラーによる精度測定とその結果に応じたメンテナンスに加え、数年に1回オーバーホールをして、スライドなどの交換をしているからです。年に1回のオーバーホールを怠らないときには大がかりな決断も各鍛造機は、止まったら大変なので、オーバーホールの期間を計算に入れるのは当然です。こうした、各機械の大がかりなメンテナンス計画は、1年単位で事前に考えています。年末が近づいてくると、稼働予想と予算を考えながら、翌年の計画を整理するのです。こうした積み重ねが、故障を最小限にし、ラインを止めない結果につながっていると同時に、精度のいい鍛造品を安定して生産できる基盤になっています。他社が5〜10ミリの精度しか出せず、旋盤で削ったり、不良を出したりしている間に、私たちは常にミリレベルの誤差で生産できています。どこの会社でも故障は、未然に防ぎたいとは、考えてはいるでしょうが、機械メンテナンスの重要性=製品精度の重要性に、気づかないままかもしれません。結局その差は、利益が出るか・出ないか、つまり経営上の数字として現れます。余談ですが、私の最後の経営判断として最新の5000トンプレス機を購入しました。今の鍛造機は、もう40年が経過していますし、ほかの設備も最新更新が終わりました。かつ、現金が貯まっていたので、万が一のことを考えると、そろそろ完全に新しい機械に入れ替えるべきだと考えたからです。電気制御化・デジタル化で故障を素早く特定。設備の専門部門と部品部材の備蓄まで計画的にメンテナンスをしていても、機械が止まることは残念ながらあります。機械が複雑化し半導体も多く組み込まれている現在、100パーセント防ぐことは難しいのです。そこでメンテナンス以外に、「もしも故障したらどのように早く復旧するか?」という準備に対しても、事前に手を打っておく必要があります。私は、数十年経過している機械でも、実は内部を、すっかり変更しています。購入した当時はアナログ、マニュアル式で、熟練の従業員による勘で使いこなしていた機械も、現在は、センサー、シーケンサーなどの検測機器を追加で取り付け、制御盤が付いています。仮に、故障してしまった場合でも、どこが故障しているのか、わかるようになっています。メーカーからも遠隔操作で見つけてもらうこともあります。したがって、素早い処置と復帰が可能になりました。機械自体は古くても、こうした制御技術やデジタル技術は、日々進歩して、一部改造が可能です。生産には直接関わらない専門部隊の整備、メンテナンス部門を置く普段の整備は、その機械を毎日使っているラインの従業員が担当します。加えて、それとは別に、数人からなる、設備部門専門の担当部署を置いています。鍛造機を中心とした機械の整備やメンテナンスは、彼らが中心になって行っています。ただし、旋盤などはさすがに自社では直せませんので、メーカーの担当者を呼ぶことになります。平鍛造は製造部門従業員が70人程度で、そのうち1割近くが、設備部門専門の部隊です。マンガのトラブル発生時も、オーバーホールの計画立案・指揮監督まで、ライン従業員とともに対処しました。設備部門は、メンテナンス以外に金型溶接補修や改造部品の作製など、日々忙しくしています。
専門部隊が特に重要な理由は、先ほど述べた電子制御やデジタル化とも深い関係があります。アナログ中心の時代には機械だけを理解していればよかったのですが、今では電気系統、デジタル技術を理解し、しかも最新技術を取り入れる人材が必要です。設備部門には、最新の勉強が不可欠です。扱うためのプログラムにも精通していなければなりません。そこで、社外の講習会などにも参加させ、専門知識の蓄積と最新情報の収集をしてもらっています。こうしたことは、日々の生産に直接関係するわけではありません。しかし、世界一の品質・コスト・納期対応を考えれば、絶対に欠かせない準備の一つなのです。彼らの努力が改善を次々と可能にし、生産スピード上昇の支えになっています。従業員採用の余談ですが、私の経営モットーの一つは、「来る者拒まず、去る者追わず」で、とりあえず入社してもらいますが、本人が辞めたいと言えば笑顔で送り出します。しかし、それができないのが、整備の責任者についてです。「武が会社を辞めたいと言えば、私はいつでも謝る」、それがマンガに出てきた、平鍛造では余人なしの人物です。機械でモノを作る。世界一の技術を入れ込んだ機械を作る。私のやってきたことです。平鍛造の鍛造機は、少しずつ改造に改造を重ねた、設備部門と鍛造部員の技術の結晶です。いつ必要になるか、供給が止まるかわからない!まさかに備え、部品・部材は多めに備蓄しておく定期的に交換する必要のある部品や、修繕に必要な部材は、あらかじめできるだけ確保しておき、自社倉庫に備蓄しています。ときには数千万円単位で買うこともあります。大手企業では、こうしたやり方は好まれないようです。常に取引先に確保させておき、必要に応じてその都度発注するということなのでしょうが、私たちのような場合は事情が大きく異なります。すでに述べた通り、古い機械や、特殊な機械、特別な用途に使う特注部品などがあります。いざ必要なときになって機械商社に問い合わせても、すぐには入手できなかったり、場合によってはすでに廃盤になっていたりすることもあります。万が一の場合、欲しいときにすぐ交換できないと、そのぶんだけ生産は止まってしまいます。自然災害などによる物流の途絶もあり得ます。それらのリスクを考えれば、自社で前もって多めに確保しておくことのメリットが大きくなります。心配がないだけの量を十分に買っておけばいいのです。専門家の言うことが必ず正しいとは限らないメーカーや商社の言いなりになってはいけない理由モノ作りの専門家である私たちでも、機械に対してはユーザーであって、専門家ではありません。基本的にわからない部分は専門家に任せるしかないのですが、かといってメーカーや商社の担当者に任せっきりになってもいけないと思います。私がそう考えるようになった背景として、こんな例を紹介しておきましょう。鍛造の現場では粉塵が生じます。また、ゴミやホコリも舞っています。鍛造機は油圧で動かしますが、その油がどうしても粉塵やホコリを巻き込み、汚れていきます。実際、頻繁に目詰まりが起こって、よく止まってしまっていました。メーカーの担当者に相談すると、マニュアル通り清掃してくれれば問題ない、標準で浄油機も取り付けてある、と言います。ある日、オプションで、より高機能の浄油機が、他メーカーにあるという話を聞き、試しによくトラブルが起きていた機械に取り付けてみました。すると、ゴミ詰まりや粉塵による不調がまったく起きなくなりました。これはもしや、と考え、すべての鍛造機にその浄油機を外付け完備してみると、ものの見事に、一切のトラブルがなくなったのです。「標準で付いていた浄油機ではダメだったのにどういうことです?」と、メーカーに聞いてみても、「スペック上は問題ない」の一点張り。もっとも、使用している状況に応じて環境は異なるのでしょうが、専門家の言葉だからといって安易に信じ、諦めていたら、いつトラブルが起きるかわからない爆弾を抱えながら、効率が著しく落ちていたことでしょう。システム導入で手書きを廃止!迅速化×正確な準備で効率が大幅アップ生産にあたって、何をどう準備すればいいかを、正確に、確実に従業員に伝え、共有してもらうことが重要です。と同時に、従業員たちは、準備のために働いているわけではありません。質の高い、正確な準備を、いかに迅速に行い、確実に共有するか。その効率アップもまた重要で、いわば準備のための準備にも、改善の余地が大きいのです。1時間かかっていた準備を30分で、2回していた確認作業を1回で、手書きで書いていた紙をシステム上で、集まって行っていた打ち合わせをオンライン上で……といった具合に、高速化、正確化、共有化、一発で段取りなどができれば、ダブル・トリプル・クワトロで効果を生み出せます。手書きは丁寧?時間がかかって不正確!紙やホワイトボードは廃止、手書きは始末書と辞表だけ
以前であれば、現場のラインごとに打ち合わせをする際は、ホワイトボードや手書きのペーパーを多用していました。もっともこれは、日本のどこの会社でも一般的に見られる光景かもしれません。明日の作業の流れ、準備しておく金型の一覧、プレスの工程がこうなってこうなって……などなど、決して達筆とはいえない字で、書いたり消したりしながら、いちいち確認しています。でも、手書きは時間がかかるうえに、不正確の温床です。私は、やめられないのかと聞きました。すると担当者は言います。「こうやって自分で書きながら確認していくと、断然気合いが入るんですよ!」冗談じゃない!手書きをするために、当日の仕事を終えてから1時間もの時間を使い、しかも気合いを入れて間違いまで起こすのです。不効率の極みで、なんの価値もありません。こうしたやり方は、QRコードですべての工程が管理できるようになってからは、すっぱりやめました。翌日の工程、準備する部材など、すべて一発で、正確な順序に従って引き出せます。打ち合わせをしたり、貼り出して共有したりするなら、各自にプリントアウトもできます。作業日報も同様です。今では、わざわざ手書きする必要があるのは始末書と辞表くらい(?)なものです。いったん決めた翌週の計画はできる限り変えない理由改善が進み、効率化が図られるほど、実際の作業は隙間なく、ムダなくできるようになります。会社の人的・設備的な資源と、時間の流れを考えながら最も効率のいい形で組めるようになります。その大元となる生産計画は、事務所で工程責任者が、2カ月単位でざっくり立てます。具体的には、実注文で、小ロット品、1回だけの注文、毎月注文、多ロット数、リピート品など、納期などを考えながら、まず2カ月単位で決めたあと、1週間単位で修正し、現場へと伝えます。修正にあたっては、各ラインの責任者から意見や考えを集めます。以前は実際に顔を合わせて会議をしていたのが、今では事前に作成した計画を社内のネットワーク(会社版のLINEのようなもの)で共有し、1、2日程度で各自確認のうえ、必要があればバーチャル会議でリアクションをしてもらいます。ここで気をつけているのは、1カ月単位→1週間単位の調整を行い、いったん1週間計画を決め、よほどの事情がない限り変更しないことです。1週間単位の生産計画に対しては事前準備を伴うため、そこから変えてしまうと、準備自体やり直しになってしまうからです。もちろん、顧客の特急品は、例外的に組み入れて、その都度対応していました。
平のおばちゃん、最新機械を語るスクラップ&ビルドに終わりなし!最新技術、最新の効率化を常に探っておく「当社の機械は最新鋭ばかりですから、入れ替えなければならないものは一つもありません」こんな考えの経営者がいたら、大問題だと思います。私の経験では、常に入れ替えたい新しい機械がたくさんあり、しかもその優先順位も、経営上の課題や、新技術の進歩、新製品登場などにより頻繁に変わります。財務諸表と生産計画をにらめっこしながら、どこを入れ替えようか、どれから始めれば最も改善効果が大きいか、効率がいいかを考え続けて結論を出します。ときには、マンガのように思い切って入れ替えます。予算の都合で惜しくも手が届かなかった機械に関しても、本当に今、入れ替えなくて大丈夫だったのだろうかという不安感が常につきまといます。日々その繰り返しで、スクラップ&ビルドに終わりはありません。「入れ替えなければならない機械がない」という瞬間が、私にはまったく訪れませんでした。そこでこの章では、できるだけ最新機械に交換する感覚が養えるよう、実用的なヒントを提案したいと思います。常に最新の機械を導入=常に償却費が計上できる償却がなければどんどん税金でお金がなくなるもう一つ、最新機械を導入し続ける大切な意味があります。機械を購入すれば、耐用年数に応じて減価償却していきますが、反対に、償却費が少ない状況で利益を上げてしまえば税で現金が出ていきます。手元に現金が残りにくいだけでなく、結果的に、あとに続く投資もしにくくなります。つまり、常に最新機械にするという経営は、常に改善、効率経営ができて利益が出る=減価償却費で会社に現金が残りやすくなるという、ダブルの効果を持っているわけです。この考え方については、拙著『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか』で詳しく述べていますので、参考にしてください。反対に、この流れを断ち切ってしまうと、効率面でライバルに遅れを取るばかりか、せっかくの利益も税金で減ってしまい、ますます競争力を失ってしまいかねず、ダブルパンチです。私は、償却が終わっていない機械でも、効率がよくなるのなら、ためらいなく入れ替えます。あくまで効率優先、新技術優先です。減価償却費もなくて、利益も出ないなら、ほかに根本的問題があり、経営は最悪になっています。ときどき、せっかく使える機械を外すなんてもったいないとか、「エコ」ではないのでは?という質問を受けますが、私の考えは正反対です。むしろ新しい機械のほうが「エコ」だと思います。ものすごく燃費の悪いエアコンがあるのに、まだ使えるからという理由で、燃費が悪い古いエアコンを使い続けるほうが、よほど反省エネ的です。そして、マンガで、中古品にもマーケットがあり、ただ廃棄ではないことも、描きました。「人手が余っているのに、機械なんて……」そんなことを言っているから成長の機会を逃す!機械を買うお金がない、というだけならまだしも、「ウチには最新機械なんて必要ない」と考えている経営者も少なくありません。理由は単純、仕事がなく従業員の人手が余っている状況、効率を追い求める機械なんか不要、私に言わせれば、その考え方は、倒産や廃業に向かう一本道です。手が余っているからではなく、非効率、低品質だからこそ、注文が受けられないのです。いったいどこの得意先が、旧式の機械とヒマそうな従業員ばかりの工場に仕事を出すでしょうか?そのくせ、非効率な生産ラインが偶然・幸運にも大量注文で、あっという間に手一杯、それ以上は発注を受けられない、かつ、納期遅れ……。発注が来るかどうかは別として、もっと新しい仕事を得よう、得たいという気概くらいは持ちましょう。ちっとも儲からない、効率が悪く利益が上がらないのに、そこに気づけない。そして「利益がないから投資できない」の繰り返し。堂々巡りです。仕事がないから、人手が余っているからという理由で投資を怠るのは愚の骨頂です。改善のチャンスを先送りし、合理化せずで、早晩、高齢化や少子化の影響をもろに受けます。投資できない、最新機械不要などと、言い張る経営者は、私に言わせればその時点でアウトです。
将来のために、何を、どう入れ替えるのか?最新機械導入のポイント、ネタ探しのコツもともと最新機械を買おうという意欲の薄い企業だと、いったい何から手をつければいいのか、もはや、わからなくなってしまっているかもしれません。最新機械導入によるスクラップ&ビルドの基本は、過去よりも将来を見つめること。今目の前にある設備はすべて過去の産物です。最新機械の導入を生産力向上と考える人がいますが、私の考えは違います。基本は「同じ量を省人化」、「同じ量をより早く」、効率化するために新設備にします。結果として生まれた余力で、注文急増でも従業員を増やさず、納期遅れせず、という考えです。今よりも早く、安全に、人手をかけず!改善を連鎖させていく考え方では、最新機械に入れ替えることで何を目指すのか、どこを目指して導入すればいいのか、具体的なポイントをあげましょう。●単純作業を省人化・省エネ・省時間できる機械同じ作業を1秒でも縮めるための方法を考えます。私はもともとせっかちなせいもあって、とにかくスピーディーに、そしてリズムよく、ポンポンと作るのが理想です。たとえそれが、500キログラム・1200度の鉄の塊であっても。●従業員を安全に、楽ちんにできる『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』で解説した通りですが、安全だけでなく、毎日毎日、来る日も来る日も同じ作業を繰り返している従業員の姿を見て、問題意識を持ちます。どうすれば自動化・無人化に近づけるのか、そのための最新機械はどうなっているか。●最新機械による改善を連鎖させるこうした視点に基づいた改善は、その次、またその次へと連鎖していきます。一つ実施すれば、また新たなポイントが見つかるのです。それらが次々に解決していき、相乗効果、よいサイクルを生み出し、気づいたときには工場全体、会社全体が効率よく回り始めています。それでもなお、気づいていなかった問題がどんどん出てくるのです。私の場合は退任のときまで終わりがありませんでした。また、常にどこかの設備を更新・交換、現場に業者が入っていない時期がありませんでした。反対に、業者が入っていない時期が長いということは、スクラップ&ビルドの流れが途切れているサインです。私はこんな最新機械を導入してきた100億円を生み出した改善・効率化の実例集マンガで紹介した旋盤以外にも、私はさまざまな最新機械を思い切って導入してきました。もちろん、鍛造という仕事柄、一般的ではない機械も多いかもしれませんが、私が当時どんな課題を見つけ、機械の交換・導入に踏み切ったのか。そして、結果はどうなったのかを、ケーススタディーとして述べておきましょう。要するに、こうした改善や効率化の連鎖と積み重ねによって、平鍛造という企業が利益率を上げ、高品質をさらに追求し、ライバルとの差を広げているわけです。同時に、そのおかげで会社にお金が残り、付いてきてくれる従業員にもよい待遇ができ、快適な職場環境を提供できています。最初のきっかけは失敗の連続スケール飛ばしを自動高圧ジェット水に金属を熱処理すると、酸化した部分が黒い皮膜になってしまいます。これをスケールと呼びます。以前は、リングからスケール除去する担当が一日中、汗をかきながら機械の前で除去していました。そこで、無人化で、水を高圧で吹きかけて除去できないかと思いつきました。現場からは、NOの回答が聞こえてきました。スケールの担当者はそこで計測も担当しているため、計測も自動化できないのであれば、無理だ、水をかけると冷える過程で表面に「アバタ」が残って不良になってしまう、そもそも一日中その仕事だけしてきた従業員に今後何をさせるのか……といった不満です。それに対する私の回答。「計測は、1個目だけだろう?リフトでワーク運んできた者がやりなよ」
そして、私は、試しに、ノズルを1本作らせてみました。すると、スケールが完全に取り切れないだけでなく、予想した通り「アバタ」も発生してしまいました。そこで今度は、一カ所のノズルを3本に、ほか数カ所にも増やし、一気に多面的に水を吹きかける工夫をしてみたところ、むしろ人手でやるよりも綺麗で、早くなりました。スケール落としをしていた担当は、機械のオペレートに回りました。立ち仕事が一つなくなりました。ぼさっと突っ立っている人は誰だ?石炭ロボットの導入熱い鉄に、プレスで金型を押し込ませて穴を開ける際、金型側は押し込めたまま、どうしてもくっついてしまいます。そのため、石炭を置いて爆発させます。こう書くと、ずいぶん危険な作業のように思えるかもしれません。ところが、実際は極めて単純。ひしゃくのような道具を使い、石炭を適量置いていくだけ。タイミングも難しくなく、今日入社した者が、すぐにできるような仕事です。ただし、小さなひしゃくをひっくり返す作業で、フォークリフトを使うわけにもいかず、ずっと立ちっぱなしでひたすら単調な動作を繰り返すのです。私としては、この単純作業を、なんとかしたい。調べてみると、汎用のロボットに先端部分だけ特注の部品を組み合わせれば、十分対応可能であることがわかりました。投資額、およそ1000万円。しかし、常時張り付いてその作業を行う人件費を考えれば、1年強で元が取れます。英国から取り寄せた最新の温度計温度の共有も素早くできて一石二鳥!鍛造の現場では、精度の高い製品を生産するために、温度管理が非常に重要です。温度がいい加減だと、寸法がずれてしまいます。かつては、ガンのような温度計を使って表面温度を計測していました。ある日、いい温度計を探してほしいと依頼していた機械商社の責任者から、英国製の最新計測器を紹介されました。ローリング機に外付けでき、自動計測で大きな両面モニターに温度が表示されるため、関係各担当者がそれを見ればよいのです。人が計測する場合は、一人がリフトから降りて近くに寄って、温度を測り、手の合図で数字を伝えないと共有できませんでした。移動・計測の時間だけでなく、測った温度を共有し、記録も残る、一石三鳥となりました。小型プレス機の導入で時間が半分に!効率アップ+従業員の力仕事も消え去ったプレスして穴開けする際、かつては、同じプレス機を使って、「ワークを入れる→つぶす→裏返す→重いポンチを持ち上げ穴開けする」という4工程を必要としていました。しかし、後半の穴開けは、小さなプレス機でも対応可能です。そこで、後半の工程を、新たに導入した別外付け小プレス機で行うようにし、ワークを入れる担当者は、もともと金焼をしているので人も増やさず。これには、大きな効率化の効果があります。4工程が2工程に、時間が半分に、従業員の人数は同じ、かつ、重いポンチを持ち上げる重労働がなくなりました。時間半分の効率化、そして、危険や重労働を減らす。そんな観点で現場を見つめれば、いくらでも最新機械を導入するヒントが見えてくるでしょう。たとえば、事務所にはペーパーレスで皆が共有できるソフトにより、書類探しの大幅削減を実現。ほかにも、カードキーで開閉はもちろん、給与自動計算もできるなど、この12年間で会社はまったくの別会社かとみまがうほど、最新機械を徹底導入しました。
おわりに事故の経験から始めた安全対策の徹底が、安全・快適な働く環境を作り(同時刊行の「絶対安全」編)そして効率的・ムダのない生産へ、連鎖改善(本書・「無間改善」編)ができました。世界中への大量輸出を可能にし、客先のグローバル企業から品質・納期・価格の最高評価を得られ、爆発的に稼ぐ力を備えた会社に変身できました。コロナ禍で仕事が三分の一に落ち込んだ令和2年8月の月次でも利益を出せる損益分岐点の低い利益爆発の会社にできました。私は、崖っ縁に立っているような危機感を、常に感じながら、ただ愚直に、経営者としての道を歩んできたと、今、振り返っています。令和3年6月28日、社長を退任しました。労災事故が絶えず、重労働、暑かったり、寒かったり辛い思いをする作業を、安全かつラクに行えるよう改善し、そのうえ、石川県平均給料の2倍の年収を出せ、有給休暇も十分取れる「企業」へと変身させることができました。それが、自社株103億円の評価にもなりました。安全であること、快適に働けることと、利益を上げることは一直線につながっている——。今回の私の2冊をお読みいただいたなら、その真意と背景がご理解いただけたのではないでしょうか。利益を出し、現金を残せる会社が、そこに関わってくださる人たちを幸せにします。その追求こそが経営者に課せられた使命だと、私は強く考えてやってきました。最近の経済状況を見ていると、今まで公的な支援で支えられていたギリギリの企業にとって、廃業の危機が、ひたひたと近づいているとも感じられます。多くの中小企業、特に地方製造業が稼ぐ力を回復し、競争を勝ち抜いていくために、まずは従業員の安全・快適さの再検証を始めてください。必ずや、危険を排除するきっかけが見つかるものと確信しています。その視点は、絶対安全の設備投資から、必然的に効率追求のための改善に直結し、会社の稼ぐ力を爆発的に強めてくれるでしょう。お読みいただいた経営者のみなさまの会社が、安全と利益で、笑顔あふれる会社になることをお祈りします。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。そして、平鍛造の従業員と一緒に闘ってきた閉鎖から退職までの私の12年間は、改善投資を連続して行ってきた毎日でした。安全や改善の取り組みを進めていく中で、多能工や資格取得にチャレンジしていった従業員は、常に前向きに、どんなことにも自発的に取り組み、目覚ましい成長ぶりを遂げました。会社から離れた今、ふと従業員らの姿を思い起こすと、私が挑んだ「絶対安全」と「無間改善」で組織の根本から改革した平鍛造は、どんな不測の事態が起きようとも、必ずや利益を出し続けることができる組織になったと確信しております。人を育てることが経営者にとって一番難しいといわれる時代にもかかわらず、自ら考え、自ら動く従業員を育てることができたことを、とても誇らしく思っています。微塵の後悔もない社長人生でした。改めて、本書をお借りして、心から、従業員のみなに、ありがとうと言います。2022年1月平美都江
本電子書籍は2022年1月25日にダイヤモンド社より刊行された『なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』(第1刷)を、一部加筆、修正の上、電子書籍化したものです。
[著者]平美都江(たいら・みとえ)平鍛造株式会社前代表取締役社長株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長1956年東京都大田区生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父・昭七の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年、専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長を遂げる。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し、営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年、大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか-父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。●㈱インプルーブメンツtaira@tairaimprovements.comhttps://tairaimprovements.com/●YouTubeチャンネル『』現場のあらゆる無駄をなくしていったら実現なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?2022年1月25日プリント版第1刷発行2022年1月25日電子版発行著者——平美都江発行所——ダイヤモンド社〒150‐8409東京都渋谷区神宮前6‐12‐17http://www.diamond.co.jp/電話/03・5778・7235(編集)03・5778・7263(製作)装丁&本文デザイン——有限会社北路社漫画—————————かわのいちろうイラスト———————小松恵執筆協力———————増澤健太郎編集協力———————古村龍也(CreSea)製作進行———————ダイヤモンド・グラフィック社編集担当———————花岡則夫
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