使わないシステムはシステムではない
気になることを頭の外に追い出したからといつて、それで終わりではない。
リストやリマインダーの整理に精を出したはいいものの、それらにきちんと関わつていくという当初の目的を忘れてはいけない。
人生と仕事における「気になること」に関して収集と見極めのプロセスを実行しただけでも、それなりに成果が上がることは確かだ。
望んでいる結果と次にとるべき行動に目を向けて自分の考えをまとめ、判断を下していけば、今までと違つたレベルで現実と向き合っていくことができるようになる。
また、そのようにして下した判断を外部のシステムに取り入れていけば、人生のさまざまな場面でのびのびと効率的に活動することができるようになる。ただ、そのためには適切な頻度でシステムを見直していく必要がある。
しかも、おざなりにやっていてはダメで、それぞれが自分にとって意味するところに基づいて必要な情報に必要なだけ注意を向けていく必要がある。
このステップは、GTDで「レビュー」と呼んできた部分だが、より深いレベルで作業をしていくという意味を込めて「見直し」と呼ぶことにした。このステップが必要な理由は明快だ。
カレンダーをチェックしないのであれば持っている意味がない。電話をかけるときに確認しないなら、電話をかけるべき人のリストを作っても仕方がないだろう。
個人や組織でプロジェクトを随時確認して前に進め、日々の仕事の優先順位の判断に役立てていくつもりがなければ、プロジェクトリストを作るのは時間のムダだ。
ここまでの「収集」「見極め」「整理」で作りあげてきたものを最大限に活用するためにこのステツプがどうしても必要なのだ。
「見直し」の2つの機能
システムの中のものを「見直す」目的は2つある。いずれも同じくらい重要なものだ。1つは、それぞれの項目を最新の状態にすること。
もう1つは、そうすることによつて事態をきちんと見通せているという確信を持てるようにすることだ。これらは概念的には異なっているが、ほとんどの場合、片方を達成するともう片方も自然に達成される。
上司と検討する協議事項として収集したものを見直すと、見落としていたことに気づく可能性が高い。
少なくとも、見直す前よりも正確で、より完全なリストになるだろう。そうすれば上司とも生産的なミーティングを持つことができるはずだ。これは協議事項のリスト以外にも当てはまる。
すべてのレベルにおけるすべての分野をこのように見渡すことだ。
状況をコントロールしていくにはシステムにあるすべてのデータを見直し、現実に即したものに更新していく必要があるのだ。
最新の状態を保つ
さまざまな物事が、私たちの能力を超えるベースで舞い込んできている。我々が生産性を発揮しようと思うなら、あることをやっているときに他のことを考えるべきではない。
突然降つてきたものを収集することはあっても、その場で意味を見極めて整理するようなことはしないほうがいい。また我々の仕事や生活にはさまざまなレベルがある。
1つのレベルで何が起きているか把握していても、他のレベルではそうではないかもしれない。
こうした複雑な現実に対応していくには、やはり意識的に「見直し」の時間をとリシステムを最新の状態に保っていくことが重要だ。
例えば、本書を読むのをいったんやめて、カレンダーを見直してみるといい。過去2週間の出来事と、今週と今月、来月の予定をチェックしてみると、少なくとも1件は書き直すべきことが見つかるはずだ(人によっては数件あるかもしれない)。
もしくはすでに起きたイベントに関して、収集しなくてはならないことがあることに気づく人もいるだろう。
数日後に開かれる会議や、今月の出張について、今のうちにやっておいたほうがいいことを思いつく可能性も高い。
同様に、会社の年度計画や戦略プランを引っ張り出して見直してみよう。最近起きた出来事のために、調整すべき事柄がいくつか見つかるのではないか。
仕事で責任を負っていることについても、ここ数ヵ月で注意を向けるべき分野に変化が出てきているかもしれない。それらを見直して最新の状態にしておけば、現実に対する認識を高めるのに役立つだろう。
週次レビユーをやっていると、ここ数日で完了したけれどもリストのほうを更新していなかった、というものがたくさん見つかる。
また、我々のワークショップでは参加者に次のような質問をよくする。
「ここ数日のうちに、やるべきことがいくつか見つかったにもかかわらず、その意味をきちんと見極めたり、次にとるべき行動を判断したりするヒマがなかった人はいますか」。
この質問にはほとんどの人が手を挙げる。プロジェクトの意味は、時間と共に変わっていく可能性が高い。当然、システムにもそれを反映させていく必要があるだろう。
先週アクテイブだつたプロジェクトは、いろいろやらなければならないことが出てきたせいで、今は「いつかやる」に変わっているかもしれない。
先月カレンダーに書いた会議の予定も、出張のスケジュールが変わったせいで調整しなければならないかもしれない。
また、クライアントから新たな要望が出てきたせいで「提案書の作成」という行動が、「月曜日に必ずやること」に変わり、カレンダーに移さないといけなくなるケースも考えられる。
いずれもよくあることだが、これらを見直して対処していかないとストレスがどんどん溜まり、あつという間に「被害者」モードになってしまう。
見直しによって見通しを改善する
「見直し」によつて、やるべきことのリストが更新されていくが、この作業を通じて、将来への見通しも同時に改善されていく。
自己管理の2つの側面である状況のコントロールと将来への見通しは、このステツプにおいてかなり両立ができるようになっているはずだ。
見直しの結果、やるべきことがたくさんありすぎて状況をコントロールできていないと感じたときは、いつたん立ち止まって深呼吸をし、より高い視点から現状を見直すといい。
これはもちろん、収集、見極めと整理をする余裕があるときのほうがやりやすいが、まとまった時間がなくても必要に応じて実行していかないといけない。
自分がしていること、していないことをより広い視野で見直す作業をやらないと、状況はどんどん悪くなるばかりだ。
見通しを定めるための6つのレベルから物事を見直していくやり方については次章で詳しく説明していく。
それぞれのレベルにおいてどういう見直しをすべきか、どういつたテクニックを用いるべきかについてより具体的に紹介していくつもりだ。
通常は、レベルが高いほど少ない頻度で見直していくことになる。
会社の目標といった高いレベルの項目は、○○さんに電話をかける、といったレベルの低い項目に比べると、それほど頻繁に見直さなくてよいはずだ。
GTDのやり方でよく聞かれる質問が、次にとるべき行動と、プロジェクトリストの項目をどう関連付けて管理すればよいか、というものだ。
例えば「予算を決定する」というプロジェクトがあつたときに、次にとるべき行動が「予算についてスーザンに電話する」だったとする。
そうなるとその項目は「電話」カテゴリーのリストに並ぶことになる。
しかしこの項目が「予算を決定する」というプロジェクトに属しているかどうかはどう判断すればいいのか、というわけだ。
これはどういうふうに解決したらいいだろう。
もちろん理想的にはそうした結びつきを可視化するようなツールがあればいいが、それは管理したり使いこなすには少し複雑すぎるだろう。
いずれ実用的なものが出てくるかもしれないが、それよりもよい方法がある。
それは適切な頻度で定期的にすべてのリストを見直しておく、という方法だ。
実のところ、定期的にリマインダーを見直している人にとってはこうしたことがそもそも問題にならない。
あなたの心は情報を統合する能力に長けているからだ。
リストの細部まで定期的に見直すことを習慣としている人にとっては、この手のことは頭の中で瞬間的に結びついてくれるのだ。
見直しのポイント
どんなにがんばっても、現代においてやるべきことがなくなることはない。次々と押し寄せてくる「気になること」の中でも正気を保つにはこの見直しのステップが不可欠だ。
これは人より多くの仕事をこなし、より創造性を発揮したいと願つている人にこそ当てはまる。
そうでないと、仕事で古くなったものや無意味になったものを大量に抱えつづけることになり、重い足かせとなってあなたの足を引っ張ることになる。
だが現実には、私がアドバイスしているようなリストを面倒だと感じ、GTDをやる必要などないと考える人たちがいる。
「全部書き出すのですか?・すべてについて必要な行動を決める?。それを……いくつかのリストにして、プロジエクトのインデツクスを作って、毎週2時間かけて全部見直して、リストを完璧な状態に保つ?・ご冗談でしょう。私にはそんなヒマはありません」
そう思うのもある意味当然ではある。ほとんどの人は、これまで試してきたシステムで失敗してきているのだ。
それらのシステムは不完全で、最新の状態を保つことができないものだったり、導入コストに見合うだけの効果を発揮するようなものではなかった。
たとえ、ある時点においてすべてを収集して意味を見極め、整理することができたとしても、その状態をそれなりの一貫性をもつて維持することができなかったに違いない。
そして、その原因は、古くなったリストをきちんと見直さないせいで、軽減された以上のストレスがもたらされてしまうことにあったのではないか。
また、何よりやっかいなのは、多くの人が「整理」のステップを終えただけで、状況をすつかリコントロールできたと思い込んでしまうことだ(これは錯覚にすぎず、その状態は長続きしない)。
「全部頭の中から追い出せて最高の気分だ―・もう絶対に頭の中に戻さないぞ」と思ってしまうのである。しかしこれは間違いだ。
一定期間が経ったら、すべてのリマインダーを見直すために、再び頭の中に入れて再検討すべきなのだ。そうしない限り、心がすっきりした状態を維持することはできない。
逆説的かもしれないが、気になることを頭の中から追い出すには、それらを適宜頭の中に戻さないといけないのだ。
目標が無意味なものにならないようにしかるべき頻度で見直していかないと、それらは心のスペースを占有しつづけ、あなたの生産性を低下させてしまう。
すべてのプロジェクトを毎週きちんとチェックしなければ、あなたの意識の一部は常にそれらを見直しつづけてしまう。
カレンダーに会議や人と会う予定がたくさん書いてあっても、カレンダーを見なければ、それらを覚えておくためにかなりの精神的エネルギーを費してしまうだろう。
自分がやるべきことを意識的に見直さない限り、あなたの心はそれらを漠然と見直しつづけてしまうのである。
このようなエネルギーのムダを排除するには、いつでもシステムを見直せるように整備し、実際に適切な頻度で見直す作業をしなくてはならない。
これを実践するのはたいへんなように思えるかもしれないが、無理のないペースで行えばよい。これは絶対守るべき社会的なモラルのようなものではないし、人に押しつけられてやるようなことでもない。
あくまで、あなたがあなた自身に課した約束とどう向き合うのかということだ。仕事の目標を毎年見直すつもりはない、という判断をきっぱり下して、そのことに納得しているなら、それはそれでかまわない。
GTDはあくまで、注意が向いていることに適切な注意を向けるための方法論である。やるべきこと―大きいことも小さいことも、明確なことも曖味なことも含め―‐にどれだけ注意を向けるかは自分で判断すればいいのだ。
すべてのリマインダーが最新になつている状態は(そもそも実現できているとしての話だが)、気をつけないと簡単に崩れてしまう。
ただし、見直しをすれば比較的簡単に元の状態に戻ることができる。ポイントは、システムの枠組みを把握し、見直しの手順をある程度決めておくことだ。
この「見直し」のステップを、より曖味で複雑なものに対しても適用していけば、あなたの整理システムはより完璧なものになるだろう。
適切な頻度でさまざまなレベルに位置する、すべてのやるべきことを見直していくことで、物事がいっそう明快になって自信がつき、より豊かな創造性を発揮していけるようになる。
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