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状況のコントロール 取り組み/行動

周囲の世界と積極的に関わっていくための5つのステップの最終段階は、言うまでもなく、自分が関わっていることに積極的に取り組んでいくことである。

状況をコントロールするとは、つまるところ、物理的なリソースを考慮しつつ、どのような行動を選択していくか、ということだ。

その時点でどの行動を選択し、そしてその選択にどれだけ自信が持てるか、ということが重要になってくる。あなたはそのような選択を適切にできているだろうか。

本書を読んでいる今、それが間違いなく今やるべきことだと確信が持てているだろうか。

確信が持てない人、少しでも迷ってしまう人、自分が確信を持っているかどうかさえわからない人は、自己管理を実践できていない、ということになる。

一方、自信を持って「これが今間違いなくやるべきことで、いちばん注意を向けるべきことです」と言い切れる人は、いわゆる「無我の境地」と呼ばれる状態にあるはずだ。

これは、少なくとも一時的に時間の感覚がなくなり、何のプレッシャーも感じることなく、あらゆるストレスから解放されて完全に集中している状態だ。

プライベートと仕事のバランスを気にすることなく、自分がどちらのモードになっているかさえ区別していない。

雑念に邪魔されず、目の前の作業に没頭しているはずだ。本書で書かれていることはすべて、最終的にこの状態を達成するためのものである。

「収集」「見極め」「整理」「見直し」をしてきた人は、心の中に余計なものがなくなり、今できることの具体的な選択肢が完璧に把握できているという確信が持てるようになる。

また、すべてを見通せている状態を達成し、6つのレベルでやるべきことの全体を再評価できる人は、それらの選択肢の優先順位を直観的に判断していけるようになる。

ある時点で完全に意識を集中させてできる行動は、1つしかない(複数の行動をすばやく切り替えることは可能だ)。あなたが望んでいる結果は行動することによってのみ現実化する。

望むべき結果を達成するには、実際にパソコンのキーボードや電話のボタンを押したり、車に乗り込んだり、口を開けて言葉を発したりする必要があるのだ。あまりにもわかりきったことだと思われるかもしれない。

だが、このステップに奇跡のような驚くべきパワーが宿っていることは、私が保証する。身の回りで、誰よりもコントロールと見通しを達成できていそうな人たちを思い浮かべてはしい。

彼らはきつと積極的に周りの世界と関わり、実際に行動を起こしている人たちのはずだ。

逆にコントロールと見通しを達成できていないように見える人たちは、だらだらしていたかと思ったら急に突発的な仕事に追い立てられたりしているに違いない。彼らの違いは、抱えていることの量ではなく、それらへの取り組み方の質にある。

このステップでやるべきことは、「やるべきこと」が具体的に何を意味しているかをきちんと見極め、明らかになった行動について考慮すべき要素を把握することである。

目次

「次にとるべき行動」とは何か

GTDのコンセプトを理解し、実践しはじめた人の中にも、このステップでつまずく人が大勢いる。

せっかく作ったリストが活用されなくなってしまう最大の原因の1つは、書かれている項目について何をするかが明確になっていないことにある。

例えば「父のことについてなんとかする」といった曖昧なことを行動リストに書いてしまうと、そのことについてそれ以上考えたり、行動したりするのをやめてしまいがちだ。

一方、情報を得るために叔母に電話をかけるのが次にとるべき物理的な行動だと判断し、「父のことについて、ロバータ叔母さんに電話する」と具体的に書いておけば、モチベーションが湧いてきてそれを実行しやすくなる。

このステップで何より考えなければならないのは、「次にとるべき行動は何か」である。

この部分をはつきりさせることで、見えなかったものが見えるようになり、あなたが考えていることが現実のものとなっていく。

プロジェクトを前に進めていくには、どのような物理的かつ具体的な行動をとるべきかをはっきりさせなくてはならない。

それをやらない限り、どこにどれだけ時間をかけるべきかがわからなくなる。

実行できる機会を見逃してしまい、結果としてプロジェクトに向き合うのがどんどん先延ばしにされていく。

そうなると、ホームセンターに行らたときに買うべきだった接着剤の前を素通りしてしまったり、家にいるときに何週間も気になっていたことを妻に話すのを忘れたりしてしまう。

接着剤の前を素通りしてしまったのは、プロジェクトの次にとるべき行動が「接着剤を買う」だと明らかにしておかなかったせいである。

ふと発生した待ち時間なども「次にとるべき行動」をはっきりさせておかないと十分に活用することができない。

例えばなんらかの理由で90秒の待ち時間があったときには、3人のスタッフにメールをすることが可能だ。

だが、それが次にとるべき行動だと明らかにしていなかったせいでそれに気づかないことはよくある。そうなると90秒を漫然と過ごしてしまうことになる。

これはお世辞にも生産的な状態とはいえない。全体像だけにとらわれて具体的なことを考えなかったせいで、プロジェクトが停滞してしまうのだ。

ToDoリストに次にとるべき行動を書いていると思い込んでいる人は多い。しかし、実際にそうなっていることは稀だ。

リストに「日時を決めてボブと話し合う」という項目があっても(これでもふつうの人よりはかなり具体的である)、実際にとるべき具体的な行動との間にはまだギャップがある。

あなたは、それを実現するために具体的に何をすべきか―‐アシスタントにセッティングを任せるか、ボブにメールを送るか、直接電話するかを決めなければならない。

そのような物理的な行動がはっきりしない限り、あなたの意識の一部は、電話をしようか、メールを送ろうか、どうやってセッテイングしようかと考えつづけることになる。

その雑念を頭から追い出すには、具体的にやるべきことを見極めてリストに書き出し、思考プロセスを完了させなければならない。

「会って話したいというメールをボブに送る」という行動をきちんと決めることができてはじめて、あなたの脳は満足する(ただし、その時点で行動するか、行動のリマインダーを信頼できる場所に置くことが条件だ)。

言い方を変えれば、この「次の物理的な行動を決める」というプロセスを怠ると、それはいつまでもあなたの頭にとどまりつづける、ということだ。

出てきた結論が次にとるべき具体的な行動になっているかを判断するには、次の3点をチェックするといいだろう。

  • 最初にやるべきことがばつと思い浮かぶか
  • その行動をやっている様子を想像できるか
  • どこでそれが行われるかを想像できるか

この3つに明快に答えられなければ、思考プロセスは完了していない。この作業は、第6章の「見極め」でやったのと同じことだ。

行動を起こすべきことには、次にとるべき行動があり、それを明らかにして信頼できる場所にリマインダーを置かない限り、頭から追い出すことはできないのだ。

本章でも、同じ原則を改めて強調しておこう。

私は個人や組織の生産性を高める研究と指導を長らく続けてきて、有用な手法をいろいろ発見してきたが、その中でも最も奥が深いものがこのテクニックだと思っている。

「これについて、次にとるべき行動は何か」と自問すると、創造的思考、決断力、アイデア、物事の明快さ、モチベーションなどのレベルがぐっと高まるのだ。

私の知る限り、ここまで生産性を高めてくれるテクニックは他にない。

次にとるべき行動を見極めることと、望むべき結果は何かを見極めることは切っても切れない関係にある。

ただ、どちらが生産性を高める点においてより重要かと問われれば、私は迷いながらも前者を選ぶだろう。

それはなぜか。

達成したいことははっきりしたのに、具体的に何をするかがはっきりしないせいで、すべての努力がムダになっている人があまりにも多いからだ。

逆に、次にとるべき行動をきちんと判断していける人は、ほぼ確実に集中力のレベルが上がり、より高い視点で望むべき結果について思考をめぐらすことができるようになる。

次にとるべき行動は……○○をしないといけないな。でもそれには……××を決めておかないと。そうなると、△△が本当に必要かどうかを判断する必要がある―といつたことを自然に考えられるようになるのだ。

実際には、両方が大事である。行動は、望んでいる結果が定まることによって絞り込まれ、最終的に決定される。一方、行動しなければ望んでいる結果は達成されない。

生産性を高めていくには、あらかじめ用意された、具体的な行動のリストを用意しておくことだ。このリストがあることで足元が定まり、モチベーションが高まって先を見渡しやすくなる。

逆に先の見通しが定まっていても、次にとるべき行動のリストがないと、なかなか行動に移ることができない。

私たちが、クライアントのメールや書類受けや頭の中にあることを扱うとき、「次にとるべき行動」の重要性をしつこく説いているのはそのためだ。

この質問の答えを出しておかないと、いかに高いレベルの思考をしたところでムダになり、すべてのことが曖味になってストレスの元になってしまう。

また、次にとるべき行動を見極めようとすると、折に触れてより重要な課題が浮かび上がってくることもある。

それらは多くの場合、遅かれ早かれ対処しなければならないことで、この作業によってでしか明らかにされないことも多い。

次にとるべき行動がわかったら

次にとるべき行動を見極めた人は、分単位で舞い込んでくる(なだれ込んでくる、のほうが正確かもしれない)、「気になること」を管理するために、さらにいくつかの判断を下していく必要がある。

システムで把握しておくことの量を減らすために、2分以内にできることはその場で即座に実行し、他の人に任せられることは任せてしまうのである。

この2つの処理をしてしまえば、把握しておかなければならないのは実行に2分以上かかり、なおかつ、自分がしなくてはならない行動だけになる(GTDにおける行動の3要素である「実行する」「誰かに任せる」「あとでやる」については、『はじめてのGTD』で詳しく解説している)。

ここで2分としているのは、それを整理してレビューして……などとしている間に2分たつてしまうことが多いからだ。

それだつたらその場で片付けてしまつたほうが効率的だ。また、他の人ができることで、それを人に任せられるのだったら任せてしまおう。任せる相手は、自分より下の人とは限らない(ただしほとんどの場合はそうである)。

行動の内容によっては、同じ地位の人間や、ときには上司に依頼することになる場合もあるだろう。

すぐできることをその場で片付け、人に任せるべきものをただちに任せてしまうことが、大きく生産性を高めるための習慣の1つであることは、すでに現場で実証済みだ。

私やスタッフがクライアントをマンツーマンで指導するときには、2分以内にできることをどんどんやつてもらい、人に任せるべきものをどんどん任せてもらうようにする。

指導時間の大半はこれらの作業に費やされるが、これをやるだけで時間の使い方が劇的に改善される。

中には、この2分ルールを実行することで「人生が6ヵ月分増えた気がする」と言った人もいるほどだ。

これはもちろん、「次にとるべき行動」のコンセプトを理解し、in-boxの中にあるものの意味を見極めるという思考プロセスを実践していることが前提である。

特定のアイテムについて、次にとるべき行動を明らかにしていなければ、それに2分かかるのか2時間かかるのかがわからない。

処理の済んでいない大量の文書やメールの中には、すぐにできる行動が含まれているものがたくさんある。

それらを見極めて実行してしまえば、多くのことが片付き、着実に仕事が片付いていると実感できるようになる。

人に任せるべきものについても、「次にとるべき行動」を考えていないと、うまく処理することはできない。

あなたが抱えているプロジェクト自体は、あなた自身が責任を負わなければならないだろうし、それ自体を誰にも任せられないというケースも多いだろう。

だが、「次にとるべき行動」まで明らかにすれば、人に任せられることが多いことに気づくだろう。

経営者や幹部クラスの人を指導するとき、私たちはよく、大量の仕事が回ってくる可能性が高いので覚悟しておいてほしいと部下たちに警告するようにしている。

別に新しいプロジェクトがたくさん出てくるわけではない。

本人が次にとるべき行動を考えることでワークフローのボトルネックが解消されるため、多くのタスクが部下に回される可能性が高いのだ。

実際、それが正しいやり方でもある。

2分以内に引き継げるものは、その場で引き継いでしまうのが理想的だ(いちばん手っ取り早いのはメールを送ることだろう)。

ただ、デリケートなことや複雑なことは、直接話し合って引き継がなければならない場合もある。

そのようなものは、相手ごとに整理してある「協議事項」のリストに入れて管理していく必要がある。

自身のワークフローを最大効率で管理できている人は、自分でやるべきことの数がかなり減り、システム内のリマインダーの量もぐつと少なくなる。

多くの行動は目の前に現れた時点で実行されるのでリストに入れる必要もない。

また、その時点で他の人に預けて連絡待ちのリマインダーだけを管理すればよいものもたくさん出てくる(完了したことを知る必要がなければリマインダーさえもいらない)。

このようにin-boxを処理して仕事の意味を見極める作業をしていると片付くものもたくさん出てくるが、最終的にはやはり今日中には片付けられない量の行動が残るはずだ。

そうした行動にはどうやつて向き合っていくべきだろうか。

「実行」に関して考慮すべき要因

さて、次にとるべき行動を明らかにし、それらのリストができたときに考えなくてはならないことがある。

そう、それらの行動の優先順位をどう決めるか、ということだ。これはどのように判断すればよいのだろう。この判断に影響を与える要因について考えてみよう。

そのような要因はたくさんあり、また複雑なので、単純にABC、123、高中低などで優先順位を分類するのは無理である。

これから説明していくが、6つのレベルでやるべきことと、3つの制約要因、3種類の行動を常に考慮に入れて判断していかなければならない。

これらのさまざまな要因の組み合わせのパターンは、1日の中で(数千回とまでは言わなくても)数百回くらいは変化する可能性がある。

実際、新しいタスクに注意を向けるたびに、あなたは心の中で、優先順位に生じた変化を現実と擦り合わせて調整しているのである。

月次報告書を作成しているときに、手を上め、立ち上がって体を伸ばし、コーヒーを滝れに行ったとしよう。

その行動をしようと決めた瞬間にも、あなたはリソースの再配分を行なっている。

理論的には、1日のうちに5万回以上、そのような優先順位の判断をしていることも考えられる(ある人が計算したところによると、私たちは毎日それだけの異なる思考をしているそうだ)。実際のところ、リストに挙げたすべての行動がその場その場で選択肢になりうる。

これらを単純にABCや123というふうに分類し、一部のものだけが本当に優先的にやるべきことだという考えにとらわれてしまうと、それらをしていないときに不安が生じ、生産的に活動できていないと感じてしまう。これは自分で自分を追い込む行為であるし、そもそも間違った認識である。

戦略的要因

ある時点においてあなたがどの行動を選択すべきかを判断するには、6つのレベルを考慮すべきだ。

どのメールに最初に対応するかの判断は、組織や個人の目標、あなた自身の価値観に沿つたものでなくてはならない。

これは上のレベルから考えても、下のレベルから考えてもよい。上のレベルから考えるとしたら次のような思考になるだろう。

「高いレベルの目的と価値観に含まれている、長期的に達成すべきビジョンは何だろう」

「その長期的な『望んでいる結果』を達成するために4半期レベルで実現しなければならない短期目標は何か」

「そこに至るには安定して仕事を進める必要があるが、そのために主だった分野で維持していかなければならないことはあるだろうか」

「実際に達成しないといけないすべてのプロジェクトを洗い出してみよう」

「それらを着実に前進させるのに、今できる行動をすべて明らかにしてみよう」。

こういつた思考の流れになるはずだ。

また下のレベルから考えていくこともできる。

「あなたや会社の行動(高度0メートル)は、プロジェクト(1000メートル)や一定の水準を維持していくべきこと(2000メートル)のためにやることである」

「プロジェクトは、責任を負っている分野(2000メートル)のこと(売上増、健康維持、顧客への対応、品質管理、アセットマネジメント)を実現するためのものであり、より大きな目標やゴール(3000メートル)に近づくためのものだ」

「それらの目標で実現される結果によって、目指している長期的なビジョン(4000メートル)に向かって前進していくことができる」

「そのビジョンは、目的(5000メートル)を具体化した理想だ」

「これらのすべてが、5000メートルの価値観の枠組みの中に収まっていなければならない」

、といった具合だ。

このように垂直方向に見渡して優先順位を考えるモデルは、ごく常識的な論理に基づくものでもある。

注意を向ける対象を高さで区別していくやり方は比較的シンプルな考え方であるにもかかわらず、議論が横道にそれるのを防ぐことができる、極めて実用的な方法だ。

またこのように思考することは将来への見通しを定めて優先順位を判断していくうえで極めて重要なことなので、本書の最終章でさらに詳しく見ていくつもりだ。

ただ、この6つのレベルすべてでしっかり考えて判断するだけでは十分ではない。

それぞれのレベルでやるべきこと同士が複雑に関連しているので、効果的に行動を選択していくにはさらに2つのことを考慮に入れなければならない。

制約要因

人生で気になっていることについて、「収集」「見極め」「整理」「見直し」を終えた人でも、効率的に行動していくためにはさらにいくつかのことを考慮する必要がある。

それは状況、時間、エネルギーという制約だ。

状況

あなたの目の前にあるすべての行動の選択肢のうち、実際に実行できるのはどれだろうか。すべてが実行可能ということはありえない。

それらの行動のほとんどは、決まった道具が必要だったり、特定の場所でやらなければならないものだからだ。

会社にいないとできないタスクもあれば、家でないとできないタスクもあるだろう。あなたのリストにあるタスクは多かれ少なかれ場所の制約を受けるものが多いはずだ。

パソコンを使わないとできないタスクをいくつか抱えているかもしれないが、サーバーがダウンしていたり、使っているノートパソコンを修理に出したりしていれば、それらの選択肢は無意味になる。

携帯電話の電波が届かない場所を車で走っているときには、「電話」のリストは使えない。あなたの行動にはいついかなるときも、こうした状況による制約がかかっているのだ。

私がすべての行動のリマインダーを状況別に整理することを薦めているのもそのためである。「状況」は気が向いたときだけ考慮すればいいわけではない。

選択肢をふるいにかける最初のフィルターなのだ。このフィルターを通すことで、今はできないことにわずらわされずに済むようになる。

外出しているときに注意を向ける必要があるのは、その過程で実行できるタスクのリストだけだ。

飛行機に乗っていてノートパソコンがあるときは、「パソコン」のリストにあるタスクのうち、ネットにつながなくてもできるものだけが実行可能だ。

絶対にやらなければならないということではないが、状況別にリマインダーが整理されていれば、あらゆる時点において、できる行動の選択肢が見渡しやすくなる。

やらないといけない行動のすべてを客観的に把握する気になった人の中には、私と同じようにいつでも行動の選択肢が150件以上あるという人もいるかもしれない。

それらが1つのリストに入っていたとしたらどうだろう。

娘を学校に迎えにいって数分早く着いてしまったときに、電話をかけられる相手を探すときのことを考えてみてほしい。

さまざまなタスクの中から電話に関するものを探すだけでうんざりしてしまうはずだ。

そこには「夫と話し合うこと」「ホームセンターで買う物」「作成するメール」といった項目がずらりと並んでいるのである。

だが、それらが状況別に分類してあれば、「電話」のリストを見ただけで、そこにある8件のタスクを瞬時に把握することができる。

使える時間

行動に関する次の制約要因は、どれだけ時間があるかである。スタッフ会議の前に15分の空き時間ができたときには、30分集中してやらないといけないことをやりたいとは思わないだろう。

それがどんなに重要なことだとしてもである。「次にとるべき行動」のいくつかは、静かな環境とまとまった時間が必要になるはずだ。

私は1冊目の本を書くときに、本を書くにはどれだけまとまった時間が必要かを身をもつて学んだ。

2時間以上の時間が確保できないときには、新しいことや有意義なこと、創造的なことを考えようとしても、イライラしてしまってまず集中できないということも学んだ。

中途半端な時間で無理やり書こうとするくらいなら、書かないほうがいいのである。10分しか時間がないときに生産的に何かをやりたいなら、その時間内で落ち着いてできるタスクを選んだほうがいいのは言うまでもない。

ここで大事なのは、そのときどきの状況に加えて、どれだけ時間があるか、それぞれの行動がどれだけの時間を要するかを考えて行動を選択していかなければならないということである。

これもまた、具体的な行動をあらかじめ明らかにしておくべき理由の1つだ。「次にとるべき行動」にどれぐらいの時間がかかるのか、ぱっと見てわかるレベルまで具体的にイメージしておこう。

そうしておけば時間の制約条件があったとしても、実行できるタスクが常に見つかる可能性が高まる。

使えるエネルギー

行動を決めるときの3つ目の要因は、どれだけのエネルギーがあるかだ。そのときの気力や体力を考慮し、どのタスクに取り組むべきかを判断していこう。

退社まで1時間あって、パソコンが使える状態だったとしても、新規大型プロジェクトの企画書を作成するにはそれなりのエネルギーが必要だ。

休みをとって気分をリフレツシュし、モチベーションが高まっていて頭もすっきりしているときにこそ、そうした企画書に取り組むべきだろう。

また、スタッフの1人と根を詰めて話し合ったあとで、しかもひどい鼻風邪がまだ完全に治っていないという状況なら、その状態でできそうなことをやったほうがいい。

企画書を作るといったことよりも、メールを処理したり、プリンタのカートリッジを交換したりするほうが、生産的な行動になるのかもしれない。

これもまた、あらかじめ用意された行動のリストを持っておくことが大切な理由の1つだ。その中から、そのときの心と体の状態にあったタスクさえ選んでいけば、それだけキャプテン&コマンダーの状態でいられる時間が増えるのである。

頭と神経を使うテレビ会議を3回連続でやった直後には、幹部クラスの人に電話をかけて難しい問題を話し合いたいとは思わないだろう。

そんなときでも、コーヒーを飲むこと以外にも、電話でホテルの予約を変更したり、車の手配をしたりすることはできる。

このように簡単にできる細かなタスクーこれらもやらないといけないことだ―‐があらかじめリストになっていれば、エネルギーが低下しているときでも生産性を発揮できるのである。

また、なんとも面倒なことをやりたくないがゆえに、細かい作業だけに没頭してしまうということもあるだろう。

これに軽い罪悪感を覚える人もいるかもしれないが、それほど悪いことではない。どうせ面倒なことを先送りにするなら、その時間で何か生産的なことをやつたほうがいい。

罪悪感を味わいながらも何かをやっていたほうが、何もやらないで大きな自己嫌悪に陥るよりはマシだ。

あなたが、この世界で関わっていることに多少なりとも生産的に取り組んでいきたいと思っているならば、とにかく何か行動することである。

それをきっかけに、エネルギーが正しい方向に向かいはじめることは珍しくない。運がよければ、新たなプロジェクトにチャレンジする気力も湧いてくるだろう。

行動の種類

行動の決定において考慮すべき最後の要素は、行動の種類である。あなたがそのときどきでとりうる行動には次の3種類がある。

  1. すでに明らかにしたタスクを実行する、
  2. その場で対処すべきタスクを実行する、
  3. そして効率的に行動していけるようにあなたの整理システムを整備する、

という3つだ。

すでに明らかにしたタスク

これはあなたが収集や見極めを行なってリストに書き出した、すでに明らかにされたタスクである。あなたの「次にとるべき行動」リストにはさまざまなタスクが並んでいることだろう。

典型的なビジネスパーソンの場合、電話15件、パソコンでやれること30件、上司に相談すること12件、オフィス周りのこと7件、どこでもできること3件くらいは抱えているものだ。時間とエネルギーがあるなら、行動の選択肢はかなりの数に上る。

その場で対処すべきタスク

すでに明らかにした仕事だけでも、こなしていくのは十分に困難である。

けれども、おそらくすでにお気づきのことと思うが、どんなにリストを更新して完璧なものにしても、その場その場で対処すべきタスクが発生する可能性は常に存在する。これには、あえてリストに書き出すまでもない「日常的な行動」も含まれる。

同僚を連れてのランチ、株価のチェック、人によってはクリーニングの受け取りなど、いわゆる日常生活でふつうにやっていることである。

そしてもう1つ、このカテゴリーに入るのは、「予想外に舞い込んでくるタスク」である。上司が突然現れて、すぐにこれをやってくれと言われるかもしれない。

学校から電話があって、息子がグラウンドで骨折したと告げられる可能性もある。クライアントからの電話で、予算に余裕があるので今の契約に上乗せしたいと言われるかもしれない。

あなたはこれまで、予定外のことが立てつづけに起こり、リストにあることが何1つできなかったという経験はないだろうか。誰しもそういう体験をしているはずだ。

それが良いか悪いかは、あなたがどれだけ自己管理に精通しているかによる。

あらかじめとるべき行動のリストが整備されていれば、そうした突発的に降つてくる仕事にも比較的ストレスなく対処していくことができる。

だが、やるべきことの把握を怠り、よくわからない仕事や「気になること」が大量に心の中に溜まっている人にとっては、突然ふってくる仕事はストレス以外の何ものでもない。

やるべきことのリストを眺めて、自信を持って速やかに優先順位を判断することができないので、他のことはあきらめて舞い込んできたことをやるしかないという気持ちになってしまうからだ。

効果的に自己管理が実践できていれば、そうした想定外のタスクをさっと収集して自分のシステムに取り込み、やれるときにきちんとやれるはずなのだ。

突発的なことにうまく対応できるか、それらのことをどう感じるかは、抱えている仕事をいつでも簡単に見渡せるか、信頼できるリストを持っているかによって大きく変わってくる。

空き時間ができたときにin-boxにあるものを処理してしまおう、と私が薦めているのも、そのような理由からである。

予想していない突発的な事態が発生したときには、可能な限り頭の中がすっきりしていることが望ましい。それには、未処理のもの、判断ができていないものが最小限になっている必要がある。

私たちが予想外の事態や機会に直面するケースは、どんどん増えている。

私が整理システムを使う理由の9割は、予想外のことが飛び込んできたときに他のことを中断してやるべきかどうかを素早く判断するためだと言っても過言ではない。

リストが不完全で、抱えている「やるべきこと」が明確になっていなければ、自信を持ってその判断を下すことはできないからだ。

整理システムの更新

3つ目は、仕事の意味を明らかにして整理システムを整備していく行動である。

書類受けの中身を処理し、メールの受信箱や留守電を空にしてしまう作業だ。これまで説明してきたような作業を、すべてやってしまおう。

この作業には通常、毎日30分から90分程度かかる。

仕事を見極めて管理していくには意識的に考えなければならないが、この考えるという行為には時間がかかるのだ。

以上が、行動の種類に関する3つの選択肢である。問題は、どの行動がベストかをどうやって判断するかだ。

生産的かつ創造的に仕事をしていきたい人は、この点を常に見極めていかなければならない。

3番目の選択肢であるin-boxの処理は、やることが常にあるという理由で後回しにされがちだ。

だが、あなたはどれだけの期間、リストがこのままで万全だという安心感を持ちつづけられるだろうか。

GTDでは、見極めの作業をできるだけ容易に、漏れがないように行い、リマインダーのリストが可能な限り利用しやすくなっていることが重要だ。

例えば私が、急に昼寝がしたくなったとしよう。

このとき、横になることで何が実行できなくなるかがはっきりしていれば、私は安心して眠ることができるし、休息の質も高まる。

寝るのは、やらなければならないさまざまなことから逃れたいからではなく、他のすべてのことと比べてそれがベストの行動だからである。

このとき私が意識する必要があるのは「他のすべてのこと」である。

人生や仕事において「選択肢をその場その場で臨機応変に考える」というスタイルは、長い目で見ると絶対にうまくいかない。

やるべきことのすべてをあらかじめ把握していないと、エネルギーの大半は、把握し忘れたことについて心配したり、日の前に突然現れたものと格闘することに費やされてしまう。

自信を持って行動するかわりに、うまく乗り切れることを祈るしかなくなるのだ。それではもちろん、自己管理の達人になることはできない。

前進に必要なこと

私が本書で示している、状況をコントロールするための5つのステップと、見通しを定めるための6つのレベルは、ワークフローが不安定になったときに良好な状態に戻るためのガイドラインのようなものだと思ってもらいたい。

セーフティネットがあるという安心感が持てれば、それだけ大きなリスクを負って自由に活動していけるようになる。

私が紹介しているGTDというやり方を、制約ととらえるのは間違いだ。

私はただ、仕事というゲームと人生というビジネスで前進していくための拠り所となる枠組みを示したにすぎない。

結局大事なのは「動く」ことである。行動すれば、手をこまねいているよりずつと物事がうまくいっていると感じられるようになる。その行動が「正しい」ものや最善のものでなくても、それなりの達成感が得られるだろう。

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