MENU

演歌の戦略

第6章では、ファンの心をつかんで離さない「演歌の戦略」(顧客戦略)を紹介する。「モノが売れる」と「モノが売れ続ける」とは違う。商品に興味のある人だけにアプローチし、一度買っていただいたお客様とは一生おつき合いする「演歌の戦略」を初めて公開する。

お客様の悩みを解決する高品質商品(第4章)を、ネット広告で宣伝して新規顧客を獲得(第5章)し、その後も定期購入(第4章)してもらう。そもそも「モノを買う」といっても、1回目の購入と2回目以降の購入では異なる。

1回目の購入はマーケティング力が大きい。使ったことのないモノを買うのだから、必ずしも「品質のよいモノ」が売れるわけではない。「よさそうなモノ」が売れるのだ。よさそうかどうかは、デザイン、コピーライティング、商品の写真など「売り方」の部分が大きい。ただ、「売り方」がうまいだけでは、そこで終わり。「よさそうな」だけで、品質がよくなければリピートされることはない。一方、2回目以降のリピート購入の場合は、品質力が大きい。「品質のよいモノ」だけが売れ続ける。当社の健康食品、化粧品などはだいたい1か月で使い終わる。気に入った方は毎月購入する。定期購入の売上比率は約7割。当社のお客様は約30万人。一度獲得したお客様が繰り返し買ってくれるから、CPOがかからない。よって5段階利益管理の販促費などが減り、販売利益が増える。そして、その分を原価にかけている。つまり「品質」に投資をしているのだ。結果、当社の原価率は同業の2〜3倍だが、営業利益率も数倍となっている。売上を向上させるには、既存顧客の定着と維持が重要だ。しかし、実状は多額の広告費をかけて新規顧客の獲得に注力しているだけの会社が多い。それで獲得した顧客も一度離れてしまうと、新たな顧客を開拓する必要があり、常にCPOがかかる。商品品質に投資し、既存顧客との関係を維持すると、結果的に一人の顧客がその企業に支払う総額=LTV(顧客生涯価値)の向上につながり、高利益体質になる。

比較検討されたうえで選ばれる商品を検索エンジンで比較検討されたうえで選ばれる商品をつくらなければならないのだ。

ブームは一過性のもので、すぐにマネされる。売れ続けることはない。様々な学びから、商品の品質で勝負するオンリーワンでなければならないと考えた。ベーシックな商品をロングで売り、本当に気に入ってくれたお客様とだけおつき合いする。

ここで別れ道が待っている。一つは機会ロスをなくしたことで売上が上がる店。もう一つは行列がなくなったことで希少価値が下がり、売上が下がる店だ。同じ行列でも意味が違う。前者は「品質」でできた行列であり、後者は「話題」でできた行列だ。「なぜこの商品を買ったのですか」「今すごく人気なので」ということはある。「人気なので」とは「売れているから買う」ので、「なぜ人気になったか」は誰もわからない。それがブームだ。話題でできた行列は、供給量を上げるとすぐにダメになる。だから、まずは品質の行列をつくる。その後、行列がなくなるように、品質を維持・向上しながら徐々に供給量を上げていく。行列のできるラーメン店が多店舗展開して行列がなくなり、メディアに取り上げられなくなっても味がよければ売れ続ける。多店舗のチェーン展開をしたほうが利益は増える。話題になることと利益が出ることは別だ。品質勝負で、店舗数を増やしたときにお客様も増えるなら、店舗数を増やしたほうがいい。希少価値で勝負するなら、席数は少ないままでいい。行列ができたら成功ではない。行列がなくなった後に本当の成功かどうかが決まる。

プロモーションは目立たないほうがいいさて、プロモーションには2種類ある(図表33)

 

「目立つプロモーション」と「目立たないプロモーション」だ。目立つプロモーションは、テレビCMやイベントなど、不特定多数の人を対象に「目立つ」「話題になる」ことが目的だ。目立つプロモーションで、売上が上がらないケースは、自己満足、内輪受け、消費者不在になっている。一方、売上が上がると、競合に目をつけられ、競争が激しくなり、利益率は下がる。目立つプロモーションは会社にとってメリットがまったくない。テレビCMをたくさん打っても、売上も利益も出ないケースがある。それに対し、目立たないプロモーションは、ターゲットのみに認知されることが目的だ。目立たないプロモーションで売上が上がらないケースは、目立たなすぎてターゲットに認知されていないのだ。一方、目立たないプロモーションで売上が上がると、競合が生まれないので永続的に成長できる。目指すべきはココだ。

広告の目的は目立つことではない。利益を生み出すことだ。目立たないプロモーションが一番利益を生む。

当社は知名度には無頓着だ。お客様は「本物」を見抜く目を持っている。「知名度がないのに売れている」が本物の証拠であり、誇るべき事象だ(「知名度は必要ない」というわけではなく、「知名度は必須条件ではない」という意味だ)。

必要な人だけに広告を届ける「」DtoCを制する「マーケティングファネル」とは「北の達人」はいわゆるDtoC企業である。

一方で、BtoCは一般的に小売店経由で商品を販売しているため、どのような人がどれほどの頻度で商品を購入しているのか把握しにくい。しかし、DtoCの場合は、自社に販売チャネルがあるので、顧客情報を蓄積でき、顧客に合わせたきめ細かいサービスを提供できる。

 

だが、この方法では人口上限という壁にぶつかる。ネット広告でもテレビCMでも、見ている人の数には限りがある。そこでDtoCの場合は、目立たないプロモーションを行う。つまり認知を絞るわけだ。図表36のようなイメージだ。

認知コストを1億円から1000万円に下げ、「認知したけれど買わない人」を削り、「買いそうな人だけ」に認知させる。テレビCMを打ったところで見た人の大半は買わない。買わない人に認知してもらうのは無駄。買わない人へのアプローチを一切やめるのだ。

1億円の認知コストで10億円の利益これにより売上はそのまま、コストを下げて利益を10倍にする。これはネット広告のように、ターゲットセグメント機能にすぐれている手法があるからできることだ。

これを10ジャンル(商品)に展開すれば、1億円の認知コストで10億円の利益を上げられる(図表37)。

広告に携わる人の中には、「広告は嫌われている」と思っている人がいる。「テレビCMはスキップされる」「ネットで広告が表示されると、うっとうしいと言われる」などと嘆くクリエイターもいる。そういった人たちには、なぜうっとうしいと思われるのかを考えてほしい。商品ターゲット外の人に伝えているから、うっとうしいと思われるのではないか。消費者にとって自分に関係のある商品広告は有益な情報だ。ただし、これができるかどうかは商品の性質と関係する。「北の達人」は「お客様の悩みごとを解決する」ニッチな商品を複数展開している。多くの人に気に入ってもらう商品ではなく、特定の悩みを抱える人なら高確率で購買される商品をつくってきた。たとえば、オリゴ糖からつくった健康食品は、発売当初、「妊娠」「便秘」とキーワード検索した人の100人に一人が買っていた。検索した人の10%が広告をクリックし、ページにきた人の10%は購入した。購入確率の高い人だけに広告を配信する。ネット通販はターゲットを絞り込んで展開できるので、比較的CPOが低い。テレビCMを打たないかという話はたくさんあるが、CPOが高いので当面やるつもりはない。

「誰に、何を、どう、伝えるか」の「何を」がクリエイティブのカギ広告を考えるとき、多くの人は「どう、伝えるか」をいきなり考える。だが、その前段階として必要なのは、「何を」だ。

一回買ってくれた人とは一生つき合うお客様に愛され続ける「演歌の戦略」とは利益を上げるには目立たないプロモーションで、必要としてくれるお客様に出会う。そして、そのお客様に愛され続ける。これが一番だ。私はこれを「演歌の戦略」と呼んでいる。子どもの頃、ランキング形式の歌番組を見ていて不思議に思ったことがあった。番組では、毎週ランキング10位から1位の曲を生放送で発表した。上位にランキングされるのは、若手の人気歌手が歌うポップスが中心だった。番組の途中に20位から11位の曲を紹介するコーナーがあった。ここに長い間ランキングされている演歌の曲があった。知らない曲だった。歌手も知らなかった(正確に言えば、子どもだったので演歌になじみがなかっただけなのだが)。ランキングが毎週大きく入れ替わる中で、その演歌は長期間20位以内をキープし続けた。そして驚いたことに、年末に発表された年間ランキングでは上位に入った。これが「テレビでの露出が多いことと売れることは違う」と感じた原点だったと思う。それ以来私は、「演歌歌手はなぜテレビに出ないのに売れるのか」と考え続けた。のちに音楽業界の人に聞いた話だが、演歌歌手は「お客様と直接会って握手をすること」を大事にしているという。テレビで見るだけの人気歌手より、実際に握手した歌手のほうが親近感が生まれるし、応援したくなる。「あの人が新曲を出したから買おう」と思う。「演歌歌手は3000人と握手したら一生食べていけると言われている」と教えてもらった。考えてみると、北海道出身の歌手はこの戦略を取る人が多い。

北島三郎さんや細川たかしさんは演歌歌手なので言わずもがなだが、松山千春さん、中島みゆきさん、GLAYなどもあまりテレビに出ない。しかし、ライブをやり続け、お客様の心をつかんで何十年も活躍し続けている。

毎日30分、ファンにバースデーコメントを書くGLAYの戦略GLAYは、ある時期まではテレビによく出ていた。あれはライブにお客様を呼ぶための広報戦略だったのだろう。1999年に幕張メッセ駐車場特設ステージで開催した『GLAYEXPO’99SURVIVAL』では、単独アーティストによる有料ライブ(一公演あたり)の世界記録(当時)となる20万人を動員した。これ以上ファンが増えても、ライブで受け入れられなくなったという時点でテレビに出るのをやめたのだと思う。2010年からは自主レーベルを設立して活動し、公式ストア「GDIRECT」が開設された。ファンクラブも自分たちで運営している。

ボーカルのTERUさんは、ファンクラブの掲示板の中でファンの誕生日に合わせ、毎日バースデーコメントを一人ひとり個別に書き込んでいる。それは大変なことだが、そのコメントをもらったファンは、一生GLAYのCDを買い続けるだろう。逆に考えると、1日30分やり続けるだけで、一生買い続けてくれるファンを毎日量産しているのである。これはとても効率的なマーケティングと言える。顧客に愛され続けるには「特別感」を提供し、ロイヤリティを持ってもらうこと。そのためには、一対一のコミュニケーションを提供することが重要。テレビで関係性の薄いファンをつくるより、関係性の濃いファンをつくるほうが効率的だ。社内に「商品カウンセリング課」をつくった理由「北の達人」には「商品カウンセリング課」がある。これは「カイテキオリゴ」の発売直後に創設された。商品を発売するときは、どんな問合せがきても答えられる状態にしてから発売する。

商品に同封する「使い方の説明書」なども、商品カウンセリング課でつくり込む。最初は一般企業のようにカスタマー部門があり、そこのスタッフが商品について勉強し、お客様対応もしていた。だが、カスタマー部門の業務は多様だ。注文処理、配達日変更、決済方法の問合せなどもある。お客様の商品や健康、美容に関する問合せとは業務の種類が違う。そこで独立させることにした。商品カウンセリング課のメンバーは、管理栄養士、コスメコンシェルジュなどの資格所有者から構成されている。ここの部署にはルールがある。それは「商品を売ってはいけない」ことだ。お客様から商品の使い方に関する問合せがあったときに、「もう1個追加でほしい」と言われたら、「販売部に転送します」と言うよう徹底した。商品カウンセリング課は演歌歌手のファンとの交流の機能を果たしている。あるいはTERUさんのバースデーコメントのようなものだ。バースデーコメントが有料だったら意味合いが変わってしまう。お客様と商品カウンセリング課の担当者が直接対話することで、お客様の気持ちがわかる。お客様は、自分自身の悩み、暮らしの中で大切にしていること、価値観、家族の悩みなどを話してくれる。これでお客様の心理的な側面を理解することができる。商品開発やマーケティングを行ううえで、このプロセスはとても重要だ。お客様一人ひとりに割く時間と人件費はかかるが、得られる情報の質を考えると、利益につながる有用な投資となっている。AKB48も「演歌の戦略」で大ヒットマーケティングは、「ミュージシャンの戦略」がとても参考になる。GLAYはどうやってのびてきたか。シャ乱Q、LUNASEA、X(現XJAPAN)はどのようにファンを増やしてきたか。彼らの活躍はそのままマーケティング戦略の教本として使える。こうしたバンドも基本的に「演歌の戦略」を採用している。シャ乱Qは大阪城ホール前の路上で活動していた。路上ライブにきてくれた人と仲よくなる。楽曲だけでなく人間性も含めてファンをつくっていった。LUNASEAも、とことんファンを大事にする。Xもアマチュアのときからライブ終了後、きてくれたお客様を交えて懇親会を開いていた。こうしてお客様を少しずつ増やしていったのだ。この様子をじっくり見ていたレコード会社のプロデューサーは、「彼らの曲はよくわからないが、お客様を呼べる。デビューしたらCDは売れる」と考えただろう。お客様をつかむという点がすごく大事だ。楽曲だけで勝負しているアーティストは、楽曲の出来不出来にヒットが左右される。「この曲はよかったが、この曲はよくなかった」というのでは常に不安定だ。一方、ファンとの関係性を築いているアーティストは常に安定している。秋元康さんがプロデュースしたAKB48のコンセプトは、「品質と満足度でお客様をつかむ」ことにあったと思われる。1980年代に秋元さんがプロデュースしたおニャン子クラブは、テレビで流行ったものの、一過性のブームで終わってしまった。このときに秋元さんは一対多のファンづくりは長続きしないと感じたのではないだろうか?

そこでAKB48は、おニャン子クラブにはないコンセプトにした。秋元さんはマーケティングの本質が一対一であるとして、ファンを一人ずつつくっていこうとしたのだろう。だから直接会える劇場をつくった。一回目の公演のお客様が7人だったという伝説のエピソードがある。他のスタッフはテレビ業界の人たちなので、「失敗した」と思ったそうだが、秋元さん自身は最初からファンを一人ひとり増やしていく戦略で考えていたので、失敗とは思わなかった。そのほうが絶対根強いファンができると確信していた。すると実際、ファンがどんどん増えた。そして、AKB48の「一対一」を象徴する「握手会」は社会現象となった。AKB48も「演歌の戦略」なのだ。そして、一人で同じCDを何十枚、何百枚も買うファンまで現れた。ここまでくると行きすぎの感もあるが、そこまでしても応援したいという想いを持ったファンが出てきたのは、ある意味強烈である。

「一対一のファンづくり」は絶大な影響力を生み出す。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次