新しい会社の姿と同時に、私たちは新しい生き方が必要になります。会社と生き方は違う、と言う方もおりますが、会社が駄目になれば生き方が変わってしまいます。また、会社がよくなっても生き方に影響を及ぼすはずです。このように、会社の生き方と自分の生き方は関係しています。
では、新しい生き方とはなんでしょう。
それは、会社は社長と社員が一体で、自分自身だという考え方です。社長であって社長でない、社員であって社員でない、みんなが互いに支え合う経営者になることです。
私はある二人の社長と出会い、同じ質問をされたことを思い出します。
それは、「この会社で生命をかけることができるか?」という言葉でした。あまりにも強烈な言葉でした。もちろん実際に生死を共にできるか、ということではなく、真剣になって一緒にやれるかという意味でした。
私は、一人の社長には丁重にお断りして、もう一人の社長には生命をかけてみようと思い、了承しました。その大きな理由は、私ごとき者の提案や意見を素直に聞き入れてくれた社長だったからです。
「君と一緒にやりたい」いま振り返れば、この言葉はものすごい殺し文句です。そして、なにもわからない新人の私に、次々と仕事を任せるのです。
当然、失敗もあります。
もちろん怒られました。しかし、それでも任せ続けるのです。とても怖い、責任重大なことばかりでした。後で知ったのですが、この社長はあまり目の見えない人でした。しかし、心の目があるようです。
私はこの社長を通してありとあらゆることを学びました。なにもわからないまま任されるのですから、学びながら仕事をするのです。
私がわからないことを質問すると、こうしたらどうだ、ああしたらどうだとアドバイスをもらいます。私はこうして年商数十億円の会社を動かすようになりました。
決定事項はすべて社内の討議で決め、結果の承認を社長からもらいます。社内にいる社員たちも失敗が許されませんから真剣です。
その仕事は、チェーン展開を図る飲食店でした。
まるで経験のない私が企画室本部長となり、直属部下を三十人従え、大手銀行との折衝、数億円の融資および工事発注、人事管理、発注管理、新規出店先の市場調査、現地事業計画書等の作成、店舗の契約または不動産購入、接待など、ありとあらゆることを任されました。
そして、第一号店から関わり、フランチャイズ計画を行って次々と出店していくのです。
毎月、二店舗から三店舗というスピードで、やがて日本全国まで広がりを見せていきました。
この会社が「イタトマ」で有名な「イタリアントマト」の前身でした。
まったく経験がなく、知識もなく、あるのは若さと夢だけでしたが、「信頼される喜び」「任される責任感」「信じてもらえているという満足感」「実現する充実感」「形になる喜び」そして、「学ぶ素晴らしさ」を社長から学んだのです。
これは、三十年前の私の体験なのですが、「任せる、託す」という考え方は、新しい時代の新しい考え方となることを確信しています。
私は現在関わっているすべての組織や会社にこの精神を実践し、みんなが輝いている姿を目の当たりに眺めています。そこには、かつての自分がいます。そう、社長は社長でいてはいけない。名マネージャーでなければいけないのです。
コメント