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新しいものを仕掛ける

事業は、偶然に大きくなる要素が何パーセントかあるが、ほとんど必然である。必然的に仕掛けていかなければ、事業は大きくならない。

お客様は、商品について、好きも嫌いも、良いも悪いも、何にも知らない。そのお客様に真剣に仕掛けていって物を売っていかなければならない。

たびたび登場する平八茶屋でも、最初に私が社長に会ったときは赤字だった。なぜ赤字だったかと言えば、お寺の拝観料に税金をかけるという問題が巻き起こり、お寺が一斉に反撥して拝観をボイコットした。それがマスコミで報道されたために、お客が京都へ行かなくなった。

京都というのは、現在に生きている者達の営業努力は五割以下で、ほとんどは先祖の力に依っている。つまり、千三百年前に幾多の人たちが寺町を興し、歴史の中に根づいて、そして日本中から、あるいは世界中から観光客がやってくるようになった。あれだけの数のお寺を今すぐつくることは困難だ。歴史の中に根づいて、産業が成り立っている。営業努力などほとんどしていないから、拝観料問題で一気にお客様が来なくなった途端に、売上が三割、五割、七割とダウンしてしまった。

平八茶屋の社長は、最初、私の講演を聴いて、質問をした。それが縁で、私のところへ相談にやって来た。あまりに熱心だったので、私の方からも京都へ行った。すると、彼はやるべきことを全然やっていなかった。そこで、私が懇々と説いて、やがて売上が三倍になり、三倍になった。

どういうことをやったか……お客様は繰り返し毎月、毎月やっては来なかった。つまり、懐石料理はいつでも同じだと思っているお客様ばかりだから、 一年に一回とか二回とか特別の折にしか来ない。そこで、私は、睦月、如月、弥生……と、月がわりの懐石を開発させた。

そして、九月に、十月、十一月のメニューを一生懸命につくって撮影し、カタログにして、九月にやってきたお客様にそのカタログを渡した。そうすると、何にも知らないお客様たち

ま、

「いま食べた懐石と十月、十一月は全く違うの」と、びっくりする。お客様のそういう反応を狙って、意図的に違うイメージでカタログをつくった。つまり、仕掛けたのである。

「違うんです。旬というのがあって、十日ずつで素材から何から全部違うんです」「じゃあ、来月、また来よう」と言って、お客様が続けてやってくるという現象が起こった。再来月も、またやってくる。 一年で一番多く来たお客様は、二十回以上も来ていた。そんなものである。

お客様は何も知らない。だから、こちらから仕掛けていく。事業の基本は仕掛けていくことだということが分からなければだめだ。たとぇば、オフィスコーヒーサービスがある。オフィスコーヒーサービスは、なぜ繁盛するのか・・・。

男女同権の世にもかかわらず、男性社員が女性社員に、「お茶!」と言う。女性社員は、苦々しい思いをしている。 一生懸命に事務をやっているのに、「お茶―」と言われれば、仕方なしに途中で席を立って、お茶をくんであげなければならない。「不公平だ」と、多くの女性社員が口にするようになった。そこで、お茶をいれるのに簡単で、男が体面を保ちながらやれるものが何かないかということで、機械をつくった。挽いたレギュラーコーヒーを入れるだけで、簡単に本格的な味が味わえる。

一回で十二杯のコーヒーが取れる。実際には、平均七杯で捨ててしまい、挽いたレギュラーコーヒーをまた新たに入れている。機械は、ただで会社に貸す。

つまり、仕掛けていったわけだ。そういう仕組みをつくっていったのだ。男女同権からスタートし、売れる仕組みを仕掛けていった。そういう仕組みは、今まで全然なかった。いろいろな会社へ行き、「この機械、ただで貸します」と言って、仕掛けていった。「ただで貸してくれるんだったら、いい」と、あちこちの会社で採用するようになった。実は、コーヒーを売ることで、その機械の代価は一年とか二年ですべて回収してしまう仕組みになっている。機械は五年も六年も耐用できるから、コーヒー豆は次から次へと売れていく。売上の好循環を仕掛けていって欲しい。

同じような仕掛けはたくさんある。PHSの電話器を百円であげる、十円であげる、ただであげる……と、話題になったが、使用してもらって半年たつと、通話料で大体ペイできるような仕組みになっている。

トヨタが、なぜモデルチェンジを次から次へとしていくか。新車を発表した途端に、既存の三割のユーザーが無条件で買い替えるからだ。仕掛けていってるわけである。車は、乗っていようと思えば、何年でも乗れる。ところが、ちょっと古くなると、多くの人が捨てるも同然にして新車を買う。中古車は、アジアの市場に持っていって売ればいいという理屈だ。実に簡単な理屈である。

お客を新しくつくって増やしていく、そのためにいろいろな仕組みを仕掛けていくということを、よくよく知っておくべきだ。永久に忘れないで、やり続ける。

未来事業を成功させるには

未来の事業を成功させるには、物をつくることよりも売ることから入っていくことが大切である。

ミスミは、機械部品や工具類を販売しているが、営業マンは一人も置かず、すべてカタログによる通信で販売をやっている。

ほとんどの同業他社が、営業マンを工場に差し向け、注文を取って、商品を届けるという、十年一日がごときルートセールスの殻から抜け出せないでいるなか、ミスミは違う。

電話帳のような分厚い商品カタログをつくって、二十七万もの工場へ送り、電話やファックスによって商売している。全国の工場から、毎日、少なくても四千件以上の注文が受注センターに寄せられる。そして、遠隔地へは宅配便で、近場は自前で届けている。部品一個からでも販売する。同業他社とは、売り方が全然違う。

ミスミの強味は、何といっても、売ることから入っているから、次の事業展開が非常に簡単だということだ。どういう意味かと言えば、日本には工場が二十七万以上ないから、工場への販売はいわば完成された姿であり、次の事業展開がどうしても求められる。工場への販売は、新商品を次々に送り込んではいくが、今まで通りのやり方を推し進めていくだけでよい。

そこで、新しい事業展開として、今度は販売のターゲットに病院を選んだ。病院でも、薬をはじめ医療機器は、様々な問屋があって、営業マンを置いて……というふうに、これまた従来型のルートセールス一辺倒である。そこで、ミスミは、工場向けの通信販売で培ったノウハウを活かし、レントゲンから顕微鏡、ビーカーから注射器に至るまでカタログ化し、それを病院へ送ることにした。また、昨今では、居酒屋を対象に突き出しを届けることもスタートした。

工場に対しても病院に対しても、居酒屋に対しても、販売方法は全く同じだ。いずれも、カタログ通信販売である。片方は、ほぼ完成された形になったから、新たに次の業種へ事業を展開したまでである。

どんな売り方で未来の事業を展開していくか、先代や先輩、さらにライバルがやっているからと目先にとらわれるのは、思の骨頂である。それは、 一番競争が激しい分野に裸で飛び込むようなものだ。未来の事業を成功させるには、売ることから、しかも他社がやっていない方法で展開していくことが非常に大切である。

これは、どんな業界でも同じである。未来事業は、販売から先に着手した方がやりやすいし、成功にも結び付きやすい。

未来の事業を成功させるには、ミスミのように従来の概念にとらわれないで、全く新しい切り日から既成の商品を売っていくのも一つのやり方ではあるが、逆に、日本に無い物や日本の方が劣っている物を探しだし、作ったり輸入したりして、既成のネットに乗せていくのも一つの手である。

たとえば、今、日本の生活文化商品といわれるものが、ことごとく振るわない。それは、私たちの生活様式が隅々まで洋式化し、また格段に豊かになったにもかかわらず、生活文化商品だけは相も変わらず上っ面だけを薄っぺらに覆ったイミテーションばかりだからだ。

日本の物は、家具でも、食器でも、ハンドバッグでも、靴でも、ネクタイでも……偽物がはびこりすぎて信用が置けない。顧客が、なぜ買わないかの理由を、チャッチイからだと言っている。だから、輸入商品に押されっばなしなのである。

「アイメディア」という会社がある。米又幹扇さんが社長で、かつてはヒロセンという社名だったが、私が提案した「アイメディア」という社名に変更した。「アイディア商品をメディアのようにネットワークを組んで売っている」ということに由来する。

この社名が好評を博し、次の新事業展開を有利に運ぶことができた。私が折に触れ、ヨーロッパの生活文化商品はこれからヒットすると言ってきたが、商売に聡い米又さんも同じ意見で、それを、すぐ実行に移した。

まず、ョーロッパの生活雑貨を試験的に少し輸入してみたところ、なかなか好調で、すぐにデパートの一番良い場所にコーナーを確保することができた。そうすると、輸をかけたように売上も急伸していった。

いよいよ本格的に事業を展開していくに当たって、私に、店の名前をつけて欲しいという依頼がきた。結論から言えば、「マリアマリア」コーポレーションと命名した。ョーロッパの女性の名前には、マリアが多い。マリアが、大勢、来店するようにと、複数形でマリアズとも考えたが、どうにもおかしいので、マリアマリアとした。さらに、語呂をよくするために、マリアマリアコーポレーションとしたというわけである。

店の名前が決まり、デザイナーに頼んでロゴも整理していったが、アイキャッチだけがどうしても決まらない。再び、私のところに依頼があった。即座に、 一つのイメージが湧いた。

ョーロッパ風の顔立ちの女性を鉛筆でササッと描き上げ、バラの花びらと葉っぱをあしらい、たくさんの魚を散らしてアイキャッチとした。これを包装紙から紙袋に用い、統一したイメージを演出していったのである。

ますますフォローの風が吹いて、マリアマリアコーポレーションは、 一店が五店に、十店に、二十店にと破竹の勢いで成長拡大を続けている。

国賊みたいだが、「ヨーロッパの生活文化商品は良い。日本の物はダメだ。売れるものは良いから売れる」と、言わぎるを得ない。一方で良いものを作れと指導しながら、もう片方でョーロッパの商品を輸入すれば売れると言っていることに、矛盾を感じていることも事実だ。

日本が第二次世界大戦に敗れ、日本語を話す人達が外国にいなくなった。戦争に勝ったアメリカが英語圏を拡大し、世界中がアングロサクソンの文化を受け入れるようになったわけだ。

とにかく、生活文化商品では、日本が劣り、欧米が圧倒的に優れている。こういった商品は他のジャンルにも多くあるはずだ。輸入品の方が良い時代が確かに来ている。感情は抜きにして、未来の事業を考えていく場合には、こういった視点が社長には絶対に必要である。

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