はじめに実際に面談することの重みが増している採用面接は、会社を支える人材を確保するという、大切な経営活動の一つです。近年、会社内外の環境により採用面接の位置づけは大きく変わってきました。会社は、セクハラ、パワハラ、メンタルヘルスなどといった、人に関する課題を多く抱えています。定年延長によるベテラン社員の勤務意欲の維持、非正規社員の正社員化などの課題にも直面しています。優秀な人材を確保したいという思いがある一方で、将来に問題を起こしそうな人は採用面接の時点で見送りたい、という考えを会社はもっています。また、ネット社会による情報の加速化も採用面接に影響を与えています。このような状況の中で、会社が求める人材を確保するという採用面接の役割は、従来にもましてますます重要になってきました。面接担当者は、数多くの応募者と面接を行ない、短い面接時間で、応募者が現在、持っている能力や考え方、資質等を把握するとともに、長期的な視点から応募者の将来像を推測し、会社が求める人材としてふさわしいかどうかを見極める必要があります。応募者への質問が採用面接の成否のカギを握るそのことを判断する材料は、面接担当者が行なう質問に対する、応募者の答えです。質問は面接のカギを握っています。質問の仕方によって応募者の答え方はまったく違ってきます。平凡な質問には平凡な答えしか返ってきません。適切な質問を投げかければ適切な答えが返ってきます。また、応募者の答えを瞬時に吟味して、応募者の考え方や資質、将来の可能性等を判断する必要があります。このような力は簡単なコツさえつかめば、誰でもすぐに身につけることができます。これまで二十数年間、私はのべ1万人を超える応募者の採用面接に立ち会ってきました。本書は、この採用面接をした経験をもとに、実践的ですぐに役に立つ質問の仕方や応募者の答えを瞬時に吟味するコツなどを具体的にわかりやすく取り上げています。ぜひ本書を参考にして効果的な採用面接を進めていただきたいと思います。本書が面接を担当する方々の励みになり、その結果、これから一緒に仕事を進めていく仲間との、よい出会いがもたらされることを心から願っています。菊池一志
改訂版上手な採用面接が面白いほどできる本──もくじ[観音開き]採用面接のフロー/職務経歴書・履歴書・面接シートの生かし方はじめに質問で「会社が求める人材像」を探る〈チャート〉採用面接担当者としての「あなた」のタイプ診断第1章採用面接は人材を確保する大切な仕事です01採用面接が会社成長のカギを握る会社を支える人材を確保することが目的02ネット社会が与える影響を意識しておく情報を多く収集できる一方で、情報が社外に漏れることを常に考えておく03長期的な展望にもとづく非正規社員の正社員化、定年延長等を見据えた面接の必要性04質問に対する応募者の答え方を吟味する時代とともに応募者の答えも賢くなっているCOLUMN①時代とともに採用面接の位置づけも変わる第2章採用の9割は担当者の「質問力」で決まる05質問で応募者の心を開く質問の基本を身につけると応募者の考えていることを引き出せる06応募者の本心を探る質問のテクニック質問を工夫すると、いくらでも本音を引き出すことができる07なにげない質問で応募者の素顔をのぞく応募者の緊張感をやわらげると素顔が出てきやすい08これだけは押さえておきたい、必須の質問この質問をすることで採用の基本条件を網羅的に確認する09会社のニーズ・事情に応じて質問を行なう会社が求める能力にこたえることができる人材かどうかを確かめるCOLUMN②質問の仕方を磨き、使いこなしましょう第3章担当者に求められる心構えとは?10あなたの思いを応募者に伝える採用面接をあまり難しく考えないで、あなたのスタイルで進めよう11応募者を冷静に見る気持ちを忘れない応募者のよいところを探して自社が求める人材を見つける12応募者もあなたを観察している短い時間でもお互いの理解をいくらでも深めることができる
13面接担当者は前向きに臨むうまくいくかどうかは、あなたの考え方と姿勢で決まる14採用活動の成功はあなた次第!応募者と対面のやり取りをすることで初めて最終判断ができる15入社後もこまめにフォローする入社後も早く会社になじみ、力を発揮できるように見守るCOLUMN③採用面接は楽しく、やりがいのある仕事第4章採用面接の流れをどのようにつくるか?163つの基本ステップがある基本ステップを守ることにより採用面接の流れがスムーズになる17オープニングで充実した面接へ導くオープニングで応募者の緊張をほぐし、柔和な雰囲気を演出する18クロージングで好印象を与える採否にかかわらず、応募者に好印象をもってもらうことが重要19面接前の準備でゆとりをもつ面接前に準備しておくことで緊張しないで進めることができる20短い時間でも充実した面接ができる時間が短くても密度の濃い面接はいくらでも可能COLUMN④採用面接はあなたがつくり出すドラマ第5章履歴書・職務経歴書のどこを見るか21話し方・聞き方の基本を身につける話し方や聞き方の基本を身につけると気持ちが落ち着いてくる22応募者からの質問には答え方を工夫する少し工夫をするだけで応募者の気持ちを引き付けることができる23履歴書(エントリーシート)はココを見る応募者の生活環境や採用するときに注意する点がわかる24職務経歴書はココを見る応募者がこれまでどのように仕事をしてきたかが読み取れる25これだけは面接で気をつけよう感情的になったり議論をしたりすると面接の目的を忘れてしまうCOLUMN⑤質問の工夫次第で面接の質が上がる第6章中途の採用面接で何を聞くか26転職を決意した背景を確認する転職の事情を理解することが採用する判断の参考になる27自社で通用するかを確認する新たな組織で期待どおりの活躍ができるかどうかを探る28転職への意欲の強さを探る
転職をきっかけにどれだけ気持ちを切り替えているかを見る29新しい組織になじめるかを見分ける新たな仲間と打ち解け合うことができるかどうかを確認する30採用を決断するポイント新たなチャレンジへの意欲を感じたら採用を決断するCOLUMN⑥入社時には条件をきちんと確認する第7章パート・契約社員の採用面接で何を聞くか31パート社員を面接する多くの応募者は働く目的が明確なので勤務条件が合えば力を発揮する32アルバイトを面接する実績や経験よりも常識的な行動がとれるかを重点的に見る33契約社員を面接する限られた期間内で成果を出す力があるかを重点的に見る34採用を決断するポイント仕事内容や勤務条件にきちんと対応できるかをよく見る第8章新卒者の採用面接で何を聞くか35基本事項の答えの奥を観察する質問しながら意識して観察すると新卒者の隠れた本性が見えてくる36入社後の取り組み姿勢をイメージするどのように成長していくかをイメージできると採用したくなる37新卒者の本音を引き出し、素顔に迫る応募者が用意してきた答えに惑わされずに本音を引き出す38採用を決断するポイント将来大きく成長できるかが採用を決断するポイントCOLUMN⑦採用面接を担当する者の泣き笑い第9章その他の採用面接では何を聞くか39シニア応募者を面接する時のポイント本人の経験やノウハウが生かされ、会社に貢献できるかどうか40何回も転職している応募者への対応何が原因で何回も転職しているのか転職理由の実情を探る41違う職種を希望する応募者への対応なぜ、いままでの職種を変えたいのか理由を必ず確認する42予想外の要望にはこう対応する予想外の要望が出た場合でも、あいまいにせずはっきり答える
01採用面接が会社成長のカギを握る会社を支える人材を確保することが目的採用面接は人材を確保するための重要なゲート採用面接は会社にとって必要な人材を確保するための第一ステップです。価値観が多様化し高度に複雑化している社会において、会社は社会的責任を果たしながら事業を効果的に運営していかなければなりません。その担い手は会社を構成する人材であることは疑いのないことです。経営活動の出発点はそのような人材を確保することです。人材を確保するために会社は採用活動を行ないますが、応募する人がすべてそのような人材であるとは限りません。面接では応募者が会社にとってふさわしい人材かどうかをあらゆる角度から吟味して判断します。応募者が会社にとってふさわしいかどうかを判断することは、面接担当者に委ねられています。面接担当者にはその権限が与えられています。面接担当者は、会社に必要な人的資源を確保するという経営的課題を第一線で担当しているのです。面接担当者の判断が会社を支える人材を決めていく、ということを考えると採用面接の重要性があらためて浮き彫りになります。このことをきっちりと理解し役割意識をもって面接を進めていくことが大切です。会社の成長段階や社会の変化とともに必要な人材は変わる会社が求める人材像は、会社の成長段階や社会の変化等により変わってきます。採用面接を行なうときに必ず確認しておきましょう。一般的に会社が伸び盛りのときはメンバーを引っ張っていくような行動力がある人材が求められます。会社がある程度、成長し成熟期になると組織をきっちり管理できる人材を求めるようになります。現在、会社がどのような成長段階にあり、どのような人材を求めているかを明確にしたうえで面接に臨むことが大切です。また、社会の変化も求める人材像に影響を与えます。たとえば会社の社会的責任や企業倫理が厳しく要求される場合には、自己管理ができて規律をきちんと守る人材が期待されます。会社が求める人材像が明確に規定されている場合には、それを意識して面接を進めていく必要があります。会社として求める人材像が明確に規定されていない場合には、面接を担当する部門内で話し合い、求めていく人材像を明確にしておく必要があります。面接担当者は会社の状況や事業の現状に敏感になる
面接担当者は経営の現状に対して敏感であることが要求されます。会社の経営資源である人材を採用するのですから、経営的視点、全社的視点をもち、会社の現状に常に関心をもつことが必要です。会社全体の状況や事業の現状を把握し、いまどのような人材がいるのか、どのような人材が不足しているのかということを念頭に入れて面接に臨むようにしてください。そのことが応募者の採用の適否を判断する材料になります。また、応募者に対する質問にも生かすことができます。また、応募者から会社の状況や事業内容に関して質問があった場合には、適切に答えることができます。
02ネット社会が与える影響を意識しておく情報を多く収集できる一方で、情報が社外に漏れることを常に考えておくFACETOFACEがますます重要にネット社会の進展により、直接顔を合わせないで交信する機会が多くなりました。時間や場所を気にせずに、また相手の顔色をうかがう必要もありませんから便利です。しかし、採用面接はネットを利用したやり取りではなく、FACETOFACEで行なっています。ネットで応募者とやり取りしてもある程度、応募者の考え方や姿勢を理解できるでしょう。しかし、質問に対して答える時の応募者の反応までは伝わってきません。画像も合わせて見たらいいのでは、という声もあるでしょう。しかし、応募者の表情や態度、視線などのトータルな雰囲気までは伝えきることはできません。面接はFACETOFACEで行なうことにより、応募者の表情や態度、視線、姿勢などトータルな雰囲気を感じとることができます。このことがとても大事なことなのです。そこから総合的に応募者の人物像が判断できますネット社会になってFACETOFACEがますます大切になってきました。面接はその代表的なものといえます。風評にさらされないように意識しておくネット社会は匿名で多様な発信ができる仕組みを多くもっています。そのことが採用面接にも影響を与えています。面接を受けた人が、面接の印象をその日のうちに匿名でネット上に発信するかもしれない、ということは当然ありうることです。面接に好感をもった内容ならいいのですが、もし、面接で応募者が不愉快な気持ちになったりしたら、ネット上でそのことを訴えるかもしれません。それどころか面接についてだけではなく、会社の悪口まで過大に触れることもあるでしょう。ネット社会ではこのような風評被害がいたるところに見られます。採用面接でもこのような風評被害にあわないようにするために細心の注意が必要です。大切なことは、応募者に対して不快な感じを与えないことです。差別用語は当然、厳禁です。応募者を見下したり、皮肉を言ったりすることも禁物です。伝えたいことを伝え、聞くべきことを聞くネット社会では情報があふれています。情報に振り回されると冷静さを欠いてしまいます。
たとえば、最近の転職者や新卒者の傾向を研究しすぎると、それが先入観となって色眼鏡で応募者を見てしまいます。また、他社の面接情報などを気にしすぎると自分の面接に自信をもてなくなります。情報を参考として眺めるのはかまいませんが、それに引きずられてはいけません。それを防ぐためには面接の準備をしっかりとすることです。準備不足になると、このような進め方でいいのかと不安になり、余計な情報に振り回されてしまいます。会社ではどのような人材を求めているのか、応募者に伝えたいことや応募者に確認したいことは何か、面接の段取りはどうかなど、準備を入念にすることで、余計な情報に振り回されずに自信をもって面接を進めることができます。
03長期的な展望にもとづく非正規社員の正社員化、定年延長などを見据えた面接の必要性目の前の応募者の将来像を推測するいったん人を採用すると長い場合は定年まで勤めることになります。したがって、面接では応募者がそのような人材としてふさわしいかどうかを、長期的な観点から慎重に見極めなければなりません。しかし、現在の能力はわかるにしても、将来の能力まではわかりません。将来の能力はあくまでも推測でしかありません。面接は、応募者の将来像をとことん推測することが大切です。「何年後にこの人はどのような力をつけているだろうか」「将来、成長する可能性はあるのか」などと応募者とやり取りをしながら将来のさまざまな姿を推測します。しかし、その推測を保証してくれるものは何もありません。面接とはそういう性質なのです。あらかじめ決まった答えはありません。面接担当者が下す判断だけがあるのです。自分が下した判断に対して面接担当者は自分で納得することが必要です。その納得はどうすれば得られるのでしょうか。それは、面接で応募者の将来の可能性をとことん追求したという自分自身の気持ちから得られます。事業の拡大、新規参入等も視野に入れた長期の採用戦略が不可欠採用面接にあたっては、会社が将来どのような事業を拡大していくか、また、どのような事業に新規参入する可能性があるか、ということも考えておく必要があります。そのような長期的な視点がなければ、将来役に立ちそうな人材を見逃してしまい、大きな機会損失につながってしまう恐れがあります。しかし、事業の動向を見据えた長期的な視点があれば、応募者を見る目が一段と広がります。即戦力にならなくてもバランスがとれていて将来の事業拡大に役立ちそうな人材や、ある分野の能力が特に優れていて新規事業に参入するときに役立ちそうな人材を先取りして確保することができます。長期的視点で契約形態を考えて面接する従来は正社員として勤務する人と、それ以外の人の採用は明確に区分されていました。しかし、時代は大きく変わりました。パート社員、契約社員、アルバイト等のいわゆる非正規社員も一定の条件を満たせば、本人の申し出により正社員として契約できるようになりました。このことは面接にも大きな影響を与えています。
つまり、正社員以外の採用面接において、すべての応募者が将来、正社員として勤務する可能性があるということを前提にしておかなければならないということです。このため、応募動機や本人が希望する勤務条件の確認はもとより、将来、正社員に登用したときの勤務意欲や必要能力等の確認も必要になってきました。定年が延長になっていることも面接に影響を与えています。採用後に長期間会社に貢献していただくわけですから、時間が経過して能力が停滞しては困ります。現在の能力の高さは、将来の能力の高さを保証しません。持続的に成長できる人材がよりいっそう求められています。
04質問に対する応募者の答え方を吟味する時代とともに応募者の答えも賢くなっている質問によって年々変化する応募者の考え方や行動を把握する応募者の考え方や行動は、社会環境の変化にともなって年々変わってきます。また、応募者は新たな知識や技術も身につけてきます。採用面接もそのような変化に対応していく必要があります。採用面接では、質問によって応募者の変化を確認します。したがって質問の仕方を工夫することがとても大事になります。答えの裏側にある応募者の考え方や気持ちを推測する質問は面接担当者が応募者の考え方や能力を確認する戦術です。すべての質問は応募者の現状や将来を探るものです。むだな質問は1つもありません。質問するときはぜひこのように考えて行なってください。質問をして答えが返ってきたら瞬時にその内容を吟味します。吟味するときは答えの裏側にある考え方や気持ちに着目します。たとえば、「人間関係をよくするポイントは何だと思いますか」という質問に対して、3パターンの答えを想定してみましょう。a「コミュニケーションをよくとることだと思います」b「相手に対して過剰な期待をしないことだと思います」c「相手が関心をもっていそうな話題を投げかけることだと思います」aの答えからは、〝具体的なイメージをもたないで話す人のようだ〟という推測ができます。bの答えからは〝現実的な考えだが少し消極的な姿勢だ〟と推測されます。cの答えからは〝自分から働きかけて人間関係をよくしようとしている〟と推測されます。このように答えを吟味しながら質問を進めていきます。質問を工夫して答えを掘り下げる採用の適否を判断するためにもう少し掘り下げて聞きたい場合には、関連の質問をします。関連の質問というのは、最初の質問と似たような質問をして答え方を見るものです。先ほどの例の場合、「人間関係をよくする」に似たような表現の質問をしてみます。
「人間関係がこじれた場合はどのように対応しますか」「人間関係で難しいことは何ですか」このような関連質問で、より具体的な答えを求めていきます。補足の質問は応募者が考えやすいように範囲を限定するもっと深く答えを掘り下げて聞きたい場合には補足の質問をします補足の質問は5W1Hを活用して、応募者が考えやすいように範囲を限定します。「どういうタイミングで話題を投げかけますか」この質問はWHENを活用して、タイミングというように範囲を限定しています。「どのような方法で相手が関心をもっていることを探りますか」この質問はHOWを活用し、方法という範囲を限定して考えやすくしています。
COLUMN①時代とともに採用面接の位置づけも変わる採用面接は本当に重要になった経営活動において「人」に関する課題は山積しています。セクハラ、パワハラ、メンタルヘルス、定年延長、非正規社員の正社員化等、多くの対処すべき課題があります。採用後に問題を起こしそうな人をフィルターにかける役割が採用面接にあります。組織の維持と活性化のために、採用面接は今後もますます重要になってくるでしょう。風評にさらされないように慎重な対応を私が研修を担当していた名古屋の会社の話です。採用面接で面接担当者の対応に不満を感じた応募者が、ネッ上で会社の悪口を書いたことがきっかけで風評が広がり、その会社に応募する人が激減しました。「火のないところに煙は立たない」と言いますが、風評にさらされないように面接でも慎重になることが必要です。逆説的な言い方ですが、採用が難しいと思われる人ほど丁寧に対応する必要があります。
05質問で応募者の心を開く質問の基本を身につけると応募者の考えていることを引き出せるいい質問はいい答えを引き出す応募者がいくらすばらしい考えをもっていても、話すチャンスがなければ、あなたには伝わってきません。質問は、応募者がもっている考えについて、あなたに話すきっかけを与えてやることです。次の質問は、あまりよくありません。「私はこう思いますが、あなたはどうですか」このような質問をすると、応募者が何も考えずに答える可能性があります。「はい、私もそう思います」質問の中に自分の考えを示しているために、応募者が条件反射的に答えてしまうのです。いい質問とは、相手が考えて答えを出す質問です。「これについて、あなたはどう思いますか」「いつごろから、そうなったのでしょうか」このように、相手が考える切り口を与えると、応募者は質問を受けて「どう思うのか」「いつごろからだろうか」ということを考えて答えます。関連する質問をして応募者の答えを掘り下げる答えを聞いて
関連の質問をすると、応募者は自分の答えをもう一度とらえ直し、深く考えることができます。「この業界をどのように思いますか」「これからますます伸びていくと思います」「どの点から、そう感じますか」関連の質問をするときは、応募者が考えやすいように具体的なポイントを示してやると、より具体的な答えが返ってきます。
06応募者の本心を探る質問のテクニック質問を工夫すると、いくらでも本音を引き出すことができる隠されている本音を引き出そう質問に対して返ってくる答えが、すべて本心からのものとは限りません。応募者は採用されたい一心で、面接担当者の印象に残る答え方をしようとします。表面的なやりとりだけでは、本音はなかなか出てきません。特に面接の最初の段階では、お互いに手探りしながら相手のことを観察していますから、いくら質問を工夫しても本音は出てきにくいものです。面接が進むにつれて応募者の気持ちがほぐれてきますから、そのときが本音を引き出すチャンスです。本音を引き出すための第一のポイントは、応募者が気楽に答えられるようなひと言を投げかけることです。たとえば、「なぜわが社に応募しましたか」という質問をするときに、「率直に答えてください」というひと言を付け加えるだけでかなり本音が出てきます。本音を引き出すための第二のポイントは、応募者に考えさせるような質問をすることです。たとえば、応募者が関心をもっていることを聞きたいときに、「最近感じたことを話してください」と付け加えると、応募者は、最近どんなことがあったのかと考えます。このように少し言葉を付け加えるだけで、かなり本音が引き出されます。応募者があまり考えていないことを聞いてみる誰でも、ふだん考えていないことを突然聞かれると、その場でとっさに答えてしまいます。面接でも同じです。予想もしていなかった質問が出てくると、びっくりしたりあわて
たりして、本当の気持ちが出てきます。このような質問を日ごろから準備しておいて、タイミングをみて使うと効果的です。ただし、意外な質問を面接の中で使う回数は、せいぜい1回か2回にします。あまり多く使うと意外性が薄れて、応募者も無難に答えるようになります。意外な質問をする目的は、あくまでも応募者の本音を引き出すためです。相手が答えられなくて困るほどの質問をしないように気をつけてください。
07なにげない質問で応募者の素顔をのぞく応募者の緊張感をやわらげると素顔が出てきやすい応募者が緊張感から解放されホッとする瞬間を意識的につくる応募者は面接担当者の質問に対して適切な答えを探します。答えには本音とタテマエが入り混じっています。しかし、それなりにきっちり答えようとします。就職が決まるかもしれない面接ですからかなり緊張しています。そのようなときに、なにげない軽い質問を投げかけると、緊張感がほぐれ素顔を出すことがあります。なにげない質問とは、応募者の考え方や気持ちを確認しようというしっかりとした目的をもった質問ではなく、日常的な会話のような軽い投げかけのことです。なにげない質問をすると応募者は肩の力を抜いて普段語で答えます。そのときに素顔が出てくることが多いのです。
08これだけは押さえておきたい、必須の質問この質問をすることで採用の基本条件を網羅的に確認する必須の質問だからといって安易に考えない必須の質問とは、履歴書(エントリーシート)や職務経歴書の記入内容を確認したり、会社についての理解度を確認したりしながら、応募者が採用のための基本条件を満たしているかどうかをチェックする質問です。それぞれの応募者に対しほぼ同じ内容の質問をします。大別すると、「志望動機」「専門分野」「これまでの経験」「事業内容の理解」「自己アピール」などという分野の質問です。これらのベーシック(必須)な質問は、応募者全員に同じような質問をしますから、面接担当者は無意識のうちに退屈な感じになりがちです。そうすると安易な姿勢になり、応募者の答えを聞き流してしまいます。意外に陥りやすいので注意しましょう。ベーシックな質問をするときは、次のような点に着目して応募者の答えを注意深く聞くようにしてください。・記入書類にあることを暗記して棒読みした答えになっていないか・記入書類と矛盾したことを答えていないか・自分なりの考えを補足しているか・気持ちを込めて答えているかベーシックな質問に対する答え方を判断するポイントベーシックな質問に対しては同じような答えが返ってくることが多いのですが、なかにはハッとさせられるようなものがあります。それを見逃さないようにしましょう。〈志望動機〉単に適性とか興味だけではなく、自分の成長やチャレンジという観点で述べているかどうか。〈専門分野〉専門をどのように生かすか具体的に述べているか。〈これまでの経験〉ただ経験を話しているのではなく、そこからどのような教訓を得たかに触れているか。〈事業内容の理解〉単にホームページ等に記載してあることを話すのではなく、自分の印象を話しているか。〈自己アピール〉自分の力を客観的に把握しているか。さまざまな言い換えによって応募者の考え方を探るベーシックな質問でも、さまざまに言い換えをすることで、応募者の答えをいろいろな角度から引き出すことができます。また、言い換えをすると面接担当者も単調な感じにならず、フレッシュな気持ちで質問
をすることができます。たとえば、志望動機について言えば、よくなされる一般的な質問は、「なぜ当社に応募しようと思いましたか」というものですが、この質問は次のように言い換えることができます。「当社に応募しようと思ったきっかけは何ですか」「当社に応募しようと思った、いちばんの理由は何ですか」このように微妙に違うニュアンスで質問すると、答えも微妙に異なってきます。ぜひ言い換えを工夫して、さまざまな答えを引き出してください。
09会社のニーズ・事情に応じて質問を行なう会社が求める能力にこたえることができる人材かどうかを確かめるストレートな質問をすると平凡な答えしか返ってこない会社が求める人材にふさわしい考え方や能力をもっているかどうかを判断する質問は、会社のニーズや事情に応じて考える必要があります。そのときに注意しなければならないことは、聞きたいことをストレートな表現で聞くと平凡な答えしか返ってこないということです。たとえば、行動力について確認したいときに、「あなたは行動力がありますか」という質問をすると、応募者は行動力についての一般的なイメージを答え、自分の考え方が出にくくなります。要するに、行動力という言葉を別な表現に置き換えて質問すると、応募者は別な角度から行動力について考え、掘り下げた答えが返ってきます。
COLUMN②質問の仕方を磨き、使いこなしましょう質問の効果は抜群採用面接では質問が命です。あなたは面接で質問を使いこなしていますか?工夫した質問は、応募者の本当の気持ちをあますところなく引き出します。よい質問をすると適切な答えが返ってきます。このリズムが続くと、短い時間で面接担当者と応募者との間で相互理解が深まり信頼関係が出てきます。そうすると応募者はますます本音を話すようになります。質問には不思議な効果があります。質問スキルを磨く折衝力とか提案力などという能力は仕事に必要ですから意識して学べばだんだんと力がついていきます。しかし、「質問について一生懸命勉強して力をつけました」、と言う人はほとんどいないでしょう。私はあらかじめ質問をメモして準備しておき、ミーティングや研究会等の場を活用し、実際に質問しました。最初はぎこちなかったのですが、それを繰り返しているとだんだんタイムリーに質問できるようになりました。
10あなたの思いを応募者に伝える採用面接をあまり難しく考えないで、あなたのスタイルで進めよう自分が楽しくなければ、採用面接も充実しない採用面接で大切なことは、目の前にいる応募者からいろいろなことをできるだけ多く聞き出すことです。それが、採用してもいいかどうかを判断する材料になります。そのために必要なことは、特別な知識でも技術でもありません。もっとも大切なのは、採用面接を進めていくときのあなたの気持ちです。あなたが淡々とした気持ちで面接を進めると、応募者も淡々とした気持ちで答えるでしょう。そうすると、雰囲気が盛り上がらずに、応募者から多くのことを聞き出すことができません。しかし、あなたがハツラツとした気持ちで応募者に話しかけると、相手も気持ちが引き締まり元気に答えるようになります。こうなると、お互いに話が弾み、応募者から多くのことを聞き出すことができます。あまり難しく考えないで、「きょう面接する人はどんな人だろう」「こういう質問をしたらどんな答えが返ってくるだろう」といったように、期待する気持ちで面接を進めると、その気持ちが必ず応募者にも伝わり充実した面接になっていきます。あなたの持ち味が出る面接にしようたくさん経験を積んで、多くのことを知っていないとよい面接ができないということはありません。あなたがこれまで積んできた経験や考え方は必ず面接で生かされます。ほかの人と比べても意味がありません。「あなたならでは」の持ち味を出すことが、結果的に
よい面接になっていくのです。形式的でスマートな受け答えは応募者の気持ちに響きません。どんなにたどたどしくても、あなたの思いがこめられていれば、応募者の気持ちに響きます。あなたの思いが応募者に伝わることで、あなたでなければ引き出せないようなことを応募者が話してくれるようになります。ぜひ、自信をもってあなたらしい面接を行なうように心がけてください。
11応募者を冷静に見る気持ちを忘れない応募者のよいところを探して自社が求める人材を見つける応募者のよいところを積極的に見つける姿勢が重要面接では、応募者のよいところを探そうとする姿勢が大切です。応募者のよいところを探しながら、求める人材に近いかどうかを判断していきます。そのときに必要なことは、プラス発想で相手を見るということです。誰でも長所、短所があります。短所に目を向けると、その人のよさが見えなくなります。これはマイナスの発想です。プラス発想をすると、短所のように見えるところも別なとらえ方ができます。たとえば、何か質問した時に、自信満々に答えたとしましょう。マイナス発想をすると「自信過剰だ」と考えてしまいます。しかし、プラス発想の場合は「信念がある」と考えることができます。プラス発想をすると応募者の意外なよさを探し当てることができ、応募者のユニークさが浮かび上がってきます。採用してやるという気持ちが強いと応募者を冷静に判断できなくなる面接に慣れてくると、「採用してやる」という気持ちが生まれてくる場合があります。応募者に対して「こちらが選ぶ立場だ」という気持ちが強く出すぎると、その瞬間に、応募者のよいところを見つけるという面接の目的を忘れてしまいます。そうなると、自分の立場にこだわり、プラス発想も消えてしまいます。たとえば、何か質問をして応募者がそれに反対意見を述べたとします。プラス発想だと、「面白い意見
だ」「独自の考え方だ」というとらえ方をしますが、自分の立場にこだわると、そのような発想ができなくなります。また、応募者を冷静に見る気持ちがなくなるために、入社後に問題社員になる可能性があるかないかを見抜けなくなります。面接では、常に冷静になり、プラス発想で応募者のいいところを見つけるとともに、入社後にトラブルを起こす可能性がないかあわせてチェックしておかなければなりません。
12応募者もあなたを観察している短い時間でもお互いの理解をいくらでも深めることができるあなたのことも応募者に理解してもらおう面接をするときに、応募者を理解することは当然必要なことですが、同時に面接を行なうあなた自身を応募者に理解してもらうことも必要です。採用するかしないかということだけを考えていると、面接を受ける側の気持ちを考えなくなります。しかし、あなたが採用を決める立場であると同じように、応募者は入社するかどうかを決める立場なのです。あなたが、ぜひ採用したいと思っても、応募者が断る場合もあります。しかし、もし、応募者が面接を通じてあなたの熱意や思いを理解して共感したら、「このような人がいる会社で働いてみたい」と思い、考えを変えるかもしれません。応募者もあなたを見ているということを常に頭に入れて面接を行なうようにしましょう。お互いの理解を深めていけば、いい出会いが生まれる面接が始まったころはあなたも応募者も、「この人はどんな人だろう」という緊張した気持ちで臨んでいます。やがて、質問したり、答えたりするうちに、お互いにさまざまな印象をもつようになります。その流れの中でお互いの理解が深まっていくと、「採用したい」「入社したい」という気持ちになっていきます。これがいちばん目指したい面接の姿です。応募者のことをよく知って、あなたのことを応募者によく伝えることによって、お互いの理解が深まっていきます。
採用面接においてはこのような流れをつくっていくことができるかどうかが大切です。その流れをつくっていくのは、やはり面接担当者の質問の仕方です。流れに水を差すような、脈絡のない質問や目的が不明な質問を行なうと面接のリズムがおかしくなってしまい、応募者の気持ちに違和感が生じてぎこちない雰囲気になってしまいます。ぜひ、面接のリズムを大事にして、応募者とのよい出会いを見つけてください。
13面接担当者は前向きに臨むうまくいくかどうかは、あなたの考え方と姿勢で決まる前向きな考え方と意欲が生み出すいい面接●将来のことを考える前向きな姿勢をもつ面接は、これからの会社を一緒に支えていく仲間を採用していくことです。したがって、将来のことを考えておくことが大切になります。会社が将来どのような方向を目指そうとしているのか、事業や仕事の内容が将来どのように変わっていくのかということを考えるようにしましょう。●どんな人に出会えるか、期待する気持ちをもつ面接ではたくさんの人と出会います。面接担当者は応募者に質問をして、その答えから応募者のよいところを探しますが、なかなか見つからない時もあります。しかし、応募者がどのような経験を積んできたのか、どのような考え方をしているかに関心をもって答えを聞くようにすると、必ずその人らしいところが見えてきます。面接することであなたの世界が広がってくる●面接から学ぶ姿勢をもつ面接前に、「きょうは最初にこういうことを話してみよう」とか、「こういう質問をしてみよう」と準備し、実際に面談で話し、質問をしてみます。そうすると当然、うまくいったり、うまくいかなかったりします。そこから自分なりに振り返りを行ない、気づいたことを次の面接に生かすようにするのです。●面接を通じて自分が成長しようという気持ちをもつ面接を行なう時も、あなたの人生の貴重な時間が過ぎていきます。面接は業務の一環で
す。そこからいろいろなことを学び、いくらでも自分を成長させることができます。また、それが面接の充実に反映されます。採用面接を担当しなくなったときに、それまでを振り返って、「採用面接を通じて成長した」という実感をもつようにしていただきたいと思います。
14採用活動の成功はあなた次第!応募者と対面のやり取りをすることで初めて最終判断ができる面接までには多くの時間と費用がかかっている採用活動には多くの時間と費用がかかっています。直接的な費用は求人広告費や会場費等ですが、そのほか、応募の問い合わせや書類選考、面接の案内送付等にも、莫大な時間がかかっています。このことを意識しておかなければいけません。また、採用活動の中で面接を直接担当しない人たちも、会社が求める人材を採用することを面接担当者に期待しています。その人たちの期待にこたえるためにも面接の成果を出す必要があります。特に注意しなければならないのは、入社後に問題社員となる可能性のある応募者を面接段階で見抜き、採用しないということです。そのような人を採用すると、それまでに面接にかけた費用と時間が本当にムダになってしまいます。面接は採用活動の総仕上げです。面接までの苦労を生かすためにも、充実した面接を行なうように意識しましょう。なぜ面接をするのかあらためて考えよう採用活動の最終段階で、もし、面接をしなかったとしたらどうでしょうか。書類選考だけで採用を決めるという考えがあってもよさそうですが、ほとんどの場合、面接を行ないます。なぜでしょうか。このことを一度きっちりと考えておかないと、面接の重要性を本当には理解できないのです。
面接は、応募者と対面でやりとりしながら、応募者について多くのことを引き出していきます。これは面接でなければできないことです。このような面接の性格を適切に把握しておくと、面接の重要性がよく理解できます。面接で得られた手ごたえから、採用してもいい人材かどうかを最終的に判断します。面接は、採用活動の総仕上げとして、その人材を採用するかどうか決断をするために、最も適した方法として行なわれているのです。
15入社後もこまめにフォローする入社後も早く会社になじみ、力を発揮できるように見守る近況を確認し、時々声をかけて励ます採用した人を、入社後にフォローすることは面接担当者にしかできない仕事です。あなたが自信をもって選んだ人材ですから、入社後に期待通りの活躍をしてくれるか注目しフォローしていくことが必要です。入社直後は人事総務部門によるオリエンテーションや研修がありますから、直接顔を合わせる機会が多くあります。その機会をとらえて声をかけてください。配属が決まると直接会う機会は少なくなりますから、配属先の上司や先輩などを通じ近況を確認し、間接的にフォローしてください。採用を決断した人が期待通りの活躍をしているということが、あなたの励みや自信につながり、今後の面接によりいっそう力が入ることでしょう。
COLUMN③採用面接は楽しく、やりがいのある仕事面接を任されるのは会社から信頼されている証人を採用するためには、それなりの考え方や人を見る目がなければなりません。あなたが面接担当者になったということは、会社があなたの「人を見る目」を信頼したということです。ですから、自信をもって面接に臨んでください。人材の採用は職場に活気を与え、これからの会社を支えていくために欠かせないものです。その判断をあなたは任されたのです。自分の判断でこれからの会社を築いていく人材を採用できるのは、本当にやりがいのある仕事です。面接はいつでも新鮮で楽しい面接はいろいろな人と出会います。しかも、会う人は毎回違います。あなたと違う考え方もあるでしょう。あなたがこれまで知らなかった世界もあるでしょう。毎回が新鮮でワクワクしてきます。面接をしながら、多くのことに気づき、学ぶことができます。気がつくとあなたの世界が広がっています。面接を楽しんで行ない、そこから多くのことを吸収していってください。
163つの基本ステップがある基本ステップを守ることにより採用面接の流れがスムーズになる採用面接の基本ステップを理解しよう基本ステップを踏むようにすると、面接の流れがスムーズになります。面接の基本ステップは以下の3つで展開していきます。①オープニング面接の出だしは、雰囲気づくりのために特に大切です。応募者はほとんどの場合、緊張しているので、その緊張をほぐすようにします。面接担当者が硬い表情で、堅苦しい言葉で話すのでは、応募者の緊張はほぐれません。柔和な表情で、わかりやすい言葉で話し始めるようにしましょう。②本論本論は、面接担当者にとっては、応募者を採用するかどうかを判断する材料を集める時間です。応募者にとっては、入社するのにふさわしい会社かどうかを考える時間です。そのため、応募者に伝えたいことをきっちり伝え、応募者に確認したいことをもれなく聞くことを第一に心がけます。また、突っ込んだ質問をして、採用を判断する材料を多く集めるようにします。③クロージングまず、応募者に対して質問や要望がないか、あらためて確認します。最後に、丁寧な挨拶をして終了します。前後を意識してスムーズな流れをつくる
スムーズな流れをつくると話が発展していくために、応募者の考え方がどんどん深まり、本音が出るようになります。しかし、話があっちに行ったり、こっちに飛んだりすると、応募者は戸惑います。そうなると気持ちが集中しなくなり、応募者の考えも深まりません。スムーズな流れをつくるためには、前後のつながりを意識して、いま何が焦点になっているのか応募者に理解させる工夫が必要です。
17オープニングで充実した面接へ導くオープニングで応募者の緊張をほぐし、柔和な雰囲気を演出するオープニングで応募者の関心を引きつけるまず、応募者の緊張をほぐすようにします。硬い表情ではなく、柔和な感じで「今回はご応募いただきありがとうございます」「これから面接を始めます」などと挨拶をします。応募者がそのまま立っているようなら、着席するように勧めます。また、少し緊張ぎみの場合はリラックスするように声をかけてもいいでしょう。気楽にひと言、声をかけることで出だしの雰囲気がつくられていきます。次に、応募者の関心を引くようなことを言って、本論に入るきっかけをつくります。「いろいろな経験を積んでいますね」「たくさん趣味をもっているようですね」というように、履歴書に書かれていることを取り上げるのが、最も自然です。
18クロージングで好印象を与える採否にかかわらず、応募者に好印象をもってもらうことが重要丁寧なクロージングが相手に好感を与えるクロージングには二つの目的があります。一つめは、採用したいと思う人材に対して、入社したい会社だということを最後まで印象づけることです。二つめは、面接を受けて残念な結果に終わる応募者に対して、不愉快な気持ちにならないように配慮することです。面接の場を離れるとわが社のお客様かもしれません。私の経験でも言えることですが、丁寧な面接を受けると不採用になった場合でも、その会社のことを悪く思いません。ぜひ、最後まで気を抜かずに、クロージングを丁寧に行なうようにしてください。
19面接前の準備でゆとりをもつ面接前に準備しておくことで緊張しないで進めることができる面接担当者として日ごろからこんな準備をしておく面接を受ける応募者は、あなたを会社の代表として見ています。もし、あいまいな答え方をしたり、あわてたりすれば、会社の印象をそのように感じてしまいます。ですから、応募者に対しては、いつでも落ち着いて自信のある態度で接してください。そのためには、日ごろから、会社の方針や考え方、事業や仕事の現状などに目を向けて、あなたなりに理解しておくことが必要です。できれば、いくつか資料をファイルしておくといいでしょう。ただし、資料を集めることに神経質になることはありません。面接であわてないようにするのが目的ですから、それほどたくさんのことを準備する必要はありません。自分で整理しておいたほうがいいと思うものだけで十分です。準備している内容よりも、準備しているという気持ちのほうがはるかに大事です。日ごろから準備していることによって、自信をもって面接に臨むことができます。面接直前にも準備することがある日ごろからの準備に加えて、面接直前に準備しなければならないこともあります。必ず行なう必要があることは、履歴書や経歴書に事前に目を通しておくことです。内容を見て、わかりにくいこと、具体的に聞いてみたいこと、念のために確認することなどをチェックします。忘れそうな場合には、どこかにメモをしておきます。
慣れてくると、このような準備がわずらわしくなり、面接をしながら初めて履歴書や経歴書に目を通す人がいます。そういう人に限って、かんじんなことを聞かなかったり、形式的な質問をしたりします。どんなに経験を積んでも、直前の準備は手を抜かないようにしましょう。また、面接全体の流れをイメージしておくことも必要です。直前にイメージしておくと頭に残っていますから、スムーズな流れをつくりやすくなります。
20短い時間でも充実した面接ができる時間が短くても密度の濃い面接はいくらでも可能気持ちを集中さることで引き締まった面接になる面接は10分から20分ほどの時間で行なわれることが一般的です。もう少し長く時間をかければもっと充実した面接ができる、と思う担当者がいます。これは大変な勘違いです。時間が長いと間延びした感じになりがちです。面接は限られた時間で行なうしかありません。10分程度の時間でも密度の濃い面接を行なうことはいくらでも可能です。まず、気持ちを集中させ頭をフル回転させます。質問は重点的なことを簡潔に聞くようにします。言葉はポイントを絞りテンポよく話しキビキビした進行を心がけます。このようなことを少し意識するだけで面接が引き締まってきます。限られた時間の中で精一杯の工夫をする姿勢が充実した面接を生み出していきます。
COLUMN④採用面接はあなたがつくり出すドラマ面接というドラマにはリハーサルがない面接はリハーサルのないドラマだと私は思っています。ドラマには必ずシナリオがあります。あなたは、シナリオライターとして、すばらしい面接を行なうためにシナリオを準備して面接に臨むのです。しかし、面接にはリハーサルがなく、1回1回が本番ですから、ハプニングが起こる場合もあります。応募者によっては、まったくシナリオどおりにいかないこともあります。これも面接の特徴の1つでしょう。シナリオどおりにならなくてもかまわない私が出会った応募者は、一方的に話してくるので用意した質問をほとんど使えなかった人や何を言っても反応が少なくて対応に困った人などさまざまです。なかには、面接中に怒って帰ってしまった人もいます。最初のころは戸惑い、疲れました。しかし、やがて応募者が私に対して率直な姿を出してくれたのだと思うようになりました。シナリオどおりにいかなくても、応募者を判断することができたのですから、がっかりしないようにしましょう。
21話し方・聞き方の基本を身につける話し方や聞き方の基本を身につけると気持ちが落ち着いてくる応募者にわかりやすく伝えることを心がけよう採用面接では、うまく話そうと考える必要はまったくありません。応募者にわかりやすく話すことが、最も大切なことです。話すということは、あなたの考えを応募者に伝えて理解してもらうことです。いくら、自分ではいい話だと思っても、応募者に伝わらなければ意味がありません。そのために気をつけるポイントをいくつかあげてみます。簡単なことですから、少し意識するだけですぐ身につきます。話す時には、語尾を「です」「ます」とはっきり発音するようにしてください。語尾を明確にすると、キビキビして落ち着きが出てきます。ダラダラと長く続けないで簡潔に話すことも大事です。また、話す時には応募者の目を見て、語りかけるようにゆっくり話すようにします。このような基本を身につけると自然に落ち着いて話すスタイルになってきます。落ち着いて話をすると、気持ちにゆとりができます。そのことが、応募者に対してもきっちりと話している印象を与えます。気持ちを集中して応募者の話を聞く面接では、応募者が話すことを敏感にキャッチすることが必要です。応募者が話しているときに集中して聞いていないと、大事なポイントを聞き逃してしまいます。
聞き方の基本は気持ちを集中して応募者の話を聞くことです。まず、応募者の話に対して「うなずく」ことです。頭を上下するだけの簡単な動作です。うなずきながら聞くと、応募者は、自分の話をきちんと聞いてくれていると感じます。うなずきながら、「あいづちを打つ」ようにするともっと効果的です。「なるほど」「そうですか」などとあいづちを打ちながら聞くと、聞くリズムが出てきて、応募者も話に力が入ってきます。
22応募者からの質問には答え方を工夫する少し工夫をするだけで応募者の気持ちを引き付けることができる強調するキーワードを盛り込むと印象に残る答える時に、強調したいことをキーワードにして盛り込むと、応募者に印象に残ります。答えは、短く簡潔にします。キーワードは、少し強い口調でゆっくりと話すようにします。そうすると、強調する姿勢が応募者に伝わり、いっそう印象に残るようになります。感情をこめた言葉を付け加える応募者が聞きたいことについて簡潔に答えた後に、あなたの感情をこめた言葉をひと言補足すると、応募者に与える印象がかなり違ってきます。会社の教育制度について聞かれたとします。102ページ〔※こちらを参照〕の例を見てください。〈例A〉「社員の能力と意欲を高めるための教育制度をこのように充実させています」〈例B〉「社員の能力と意欲を高めるための教育制度をこのように充実させています。意欲さえあれば、誰でも伸びていくチャンスがある制度だと私は考えています」Aの答えは簡潔ですが、説明をしたという感じです。それに比べるとBの答えは、ただ説明しただけでなく、教育制度に対するあなたの考え方も合わせて伝えています。このように感情をこめて答えることで、生き生きとした答え方になっていきます。ちょっとした工夫が雰囲気を変える
面接の雰囲気も応募者の気持ちに大きな影響を与えます。答えるときの表情や態度を少し工夫するだけで、その場の雰囲気が変わってきます。たとえば、答えるときに体をまったく動かさなければ固い雰囲気になります。しかし、少しジェスチャーを交えて答えると、やわらかい雰囲気になります。また、非常に大切なことを答えるときは、すぐに答えないで、少し考えてから、きりっとした表情で答えると、それまでとは違う重々しさが出てきて、応募者も真剣に耳を傾けるような雰囲気が出てきます。ちょっとした工夫をいくつか頭に入れておくと、実践で大いに役に立ちます。
23履歴書(エントリーシート)はココを見る応募者の生活環境や採用するときに注意する点がわかる履歴書を見るときのポイント履歴書に書かれていることから、応募者についていろいろ知ることができます。内容を見る前に、書き方を見ます。字のうまい、下手ではなく、丁寧に書いているか、誤字がないかをチェックしましょう。なぐり書きの場合は、真剣さが足りない可能性があります。また誤字が2つ以上ある場合は、ずさんな性格かもしれません。次に内容を確認します。本人の特徴が感じられず、誰でも書けるような一般的な書き方になっていないかどうかを、まず見ます。一般的な書き方になっている場合は、本人が気持ちをこめて書いたのではなく、サンプルをそのまま写した可能性があります。これは安易な姿勢だということを示しています。そのような姿勢かどうかを面接でチェックする必要があります。また、最近は学歴詐称やトラブルを起こして退職したケースなど、入社後に問題が明らかになることが目立っています。面接の段階でも十分チェックするようにしましょう。エントリーシートを見るときのポイント新卒者が応募する場合は、インターネットでエントリーシートに必要事項を記入して人事総務部門に送信する方法が一般的になりました。それとともに、エントリーシートの書き方を指導するマニュアルも多く紹介されています。新卒者は全員そのようなマニュアルに従ってエントリーシートを記入していると考えて間違いありません。面接担当者は、新卒者が記入するエントリーシートの内容を注意深く見ておかなければなりません。もっともらしく、すばらしい書き方をしている場合には、マニュアルどおりだと思ったほうがいいでしょう。そうではなく、ぎこちなくても、一生懸命な姿勢が伝わってくるようなら、そちらを評価するようにしましょう。
24職務経歴書はココを見る応募者がこれまでどのように仕事をしてきたかが読み取れるどのような努力や工夫をしてきたかを確認する職務経歴書には、担当した仕事を通じて身につけたこと、実績、貢献、アピールポイントなどが記入されています。その内容を確認することで応募者の日ごろの仕事ぶりが浮かんできます。それぞれの項目について、目のつけどころを説明していきましょう。「○○力を身につけた」「○○資格を取得した」というだけの記入では、具体的なイメージが湧いてきません。その力をどのように発揮したのか、資格を取得してどのように活用したのかを具体的に確認する必要があります。実績や貢献についても、「○○を達成した」「○○で表彰された」というように結果だけが記入されていることが多いものです。結果だけでは、入社後にどのような貢献が期待できるか、よくわかりません。どのような工夫をしていい結果につながったのか、記入されていない場合には、必ず質問して確認するようにしましょう。また、職務経歴書には自分の不利になることは記入しませんから、質問しながら実際の仕事の進め方を推測していく必要があります。ミスやトラブルを多発するような問題社員でないかどうかをチェックすることも面接の大事なポイントの一つです。アピールポイントは具体的な行動になっているかをチェックするアピールポイントを確認すると、応募者の行動スタイルや仕事に対して取り組む姿勢が明確に出てきます。ただし、自分の気持ちを伝えようとするあまり、「がんばった」「努力した」というような抽象的な表現がよく使われます。どこが本人らしいことなのか、具体的な行動を例にあげてもらいましょう。また、せっかくいい持ち味をもっていながら、うまく記入されていないこともあります。記入内容を確認しながら、応募者のいい持ち味を探っていくことも心がけてください。
25これだけは面接で気をつけよう感情的になったり議論をしたりすると面接の目的を忘れてしまう自分の感情と面接の目的は別物前にも述べたように、面接は応募者のよいところを見つけ、期待する人材かどうか判断していくことです。ところが、面接を進めていると、この目的から外れてしまうことがよくあります。たとえば、応募者の言葉づかいが乱暴だったり、態度が悪かったりしたときに、感情的になったり、指摘したりする人は、面接の目的を忘れている人です。応募者のそのような答えは「組織人としてふさわしくない」という判断材料をあなたに提供していることになります。冷静にそう判断すればいいのです。採用してからマナーが悪いことがわかれば手遅れですが、面接の段階でこのような判断材料を提供してくれたのですからありがたいと思わなければなりません。このように冷静になり、どんなことに対しても、応募者が判断材料を提供してくれていると受け止めればいいのです。差別的なことを言わないように細心の注意を払う面接で気をつけることは次ページの表にまとめてありますので、参考にしてください。特に気をつけなければいけないことは、応募者が、差別的だと感じるような言葉を使わないようにすることです。応募者のよさを見つけるということに徹底していれば、差別用語を使うことはほとんどありません。しかし、気持ちのどこかで先入観をもっていたり、応募者を見下したりして
いると、ちょっとしたときに差別用語が口をついて出てきます。差別用語を使わないということは、ビジネスマンとしての当然のマナーです。日ごろから気をつけておかなければなりません。差別用語を使うということは、会社の品位を落とすだけでなく、相手の人権を傷つけることになりますから、場合によっては面接だけの問題ではなく、会社全体の問題にまで広がっていくことがあります。細心の注意を払うようにしてください。
COLUMN⑤質問の工夫次第で面接の質が上がるスキを見せない応募者には質問を工夫するある面接で、非常に落ち着いた応募者がいました。30歳代前半の男性で、話すときの姿勢も立派、話し方もメリハリがあって好感がもてました。将棋五段の免状をもっていたので、自信からくる落ち着きかと思いましたが、あまりにもスキを見せない感じが気になりました。そこで、もう少し本音を聞くため、意外と思われる質問をしてみました。意外な質問で隠れている素顔が思わず出てくる「あなたは、将棋五段ということですが、仕事ではあまり役に立たないのではありませんか?」すると態度が一変し、「失礼なことを言うな。あなたは将棋のすばらしさをまったくわかっていない。将棋は必ず仕事に役立ちます!」と興奮した感じで答えが返ってきました。これで、この人は何かあるとすぐ感情的になることがわかりました。このように、質問を工夫すれば、いくらでも応募者の隠れた素顔を引き出すことができるのです。
26転職を決意した背景を確認する転職の事情を理解することが採用する判断の参考になる転職理由を鵜呑みにしないで掘り下げるようにする転職を思い立った理由を確認することは、応募者がどのような気持ちでこれからの仕事や貢献を考えているのかを判断するときに大いに参考になります。しかし、転職者は転職しようとした本当の理由を言うと不利になると思い、無難な理由をあげようとします。転職の理由を確認する時は、応募者のあげた理由を鵜呑みにするのではなく、本当の理由かどうか必ず掘り下げて確認するようにします。特に、これまで勤めていた会社とトラブルになって退職していないかどうか、そのトラブルを引きずっていないかということを意識して確認するようにしてください。転職理由を聞く時は面接の最初の段階なので、応募者はまだ緊張しています。緊張をほぐしながら、「あなたのことをよく理解するために確認したい」という気持ちをこめて、やわらかな口調で聞くようにします。よくないのは、転職理由を追及するような言い方や姿勢です。そうすると、応募者はますます警戒して、本当のことを言わなくなります。気をつけてください。転職を決断した背景から意欲や姿勢を感じ取る転職の理由を確認したら、なぜ転職を決断したのか、背景を詳しく確認するようにします。その背景の中に、応募者の考え方や取り組み姿勢が現われてくるからです。たとえば、転職理由が「新たな分野で力を発揮したい」ということだったとします。この理由の場合でも、「いまの仕事に飽き飽きしている」のか、「いまの仕事についていけ
ない」のか、「いまの仕事で充実しているが、もっと別な仕事にチャレンジしたい」のか等、さまざまな背景が推測されます。仕事に対して消極的な姿勢で転職を考えたとすれば、よほど気持ちを切り替えていないと、新たな仕事でも同じように消極的になる可能性があります。この場合は、後の質問で気持ちの切り替えができているかどうか確認していきます。このように、転職の背景を確認することは、いろいろな判断材料として活用できます。
27自社で通用するかを確認する新たな組織で期待どおりの活躍ができるかどうかを探る思いこみにとらわれずに客観的に応募者の力を把握する応募者がもっているさまざまな力によって、入社後にどれだけ活躍してくれるかが決まります。しかし、実際は入社後になってみないと貢献の度合はわかりません。面接はあくまでもそれを推測する場です。応募者がどのような力をもっていて、それをどの程度発揮できるかを、いろいろな角度から推測してイメージする必要があります。この時、気をつけたいことは、あまり期待を先行させないということです。「こういう実績があるから、わが社でも活躍できるだろう」「これだけの規模の会社で仕事をしてきたから、いい活躍をしてくれるだろう」などと思いこまないことです。実際によくあることですが、強く期待しすぎると、応募者の力を客観的に見ることができなくなります。応募者の力を推測する材料は、履歴書や職務経歴書の内容と質問に対して応募者から返ってくる答えだけです。そこから、1つずつ入社後のイメージを探るしかありません。適切な質問をすることは、そのイメージを探るために大いに役に立ちます。私の経験でもそうですが、いろいろな角度から質問していくと、応募者が力を発揮するイメージが、かなり浮かび上がってきます。持ち味や行動スタイルにも目を向けよう仕事で成果を出してもらうために必要な力は、いくつか考えられます。専門分野の知識
や経験は最も大事なものですが、それ以外にも、バイタリティや積極性、すばやい行動力などが大いに関係してきます。いい活躍ができるかどうかは、単に専門的な力をもっているだけでなく、その人の持ち味や身につけている行動スタイルなどで決まってきます。面接では、実際の仕事ぶりを目の前で見ることはできませんが、適切に質問することで、かなり現実に近い姿をイメージすることができます。
28転職への意欲の強さを探る転職をきっかけにどれだけ気持ちを切り替えているかを見る転職に賭ける気持ちの強さが入社後の活躍につながる転職者は、これまでとは違う新しい世界で、再出発しようと決断しています。程度の差はあっても、全員が将来に対して夢や意欲をもっています。転職に賭けるエネルギーがどれだけ実際に発揮されるかによって、入社後の活躍が決まってきます。面接を行ないながら、応募者がどのような夢や意欲をもっているのか、また、それがどの程度エネルギーとなって現われているのかを見ておかなければなりません。転職者のエネルギーを見るポイントは、転職をきっかけにしてどれだけ以前と変わることができるかということです。将来の可能性を感じ取る眼力をもとう専門知識があり実績もあるのに、転職を将来に向けてのよいきっかけと考えていない人がいます。そうすると、面接でも、将来に対する意欲や意気込みがあまり現われてきません。このような人を採用していいかどうか疑問です。なぜなら、転職がその人にとって、それほど大きな意味をもっていないと考えられるからです。いまは力がありますから、入社直後はそれなりの貢献をするでしょう。しかし、その後、自分を駆り立てて伸びていく可能性は低いでしょう。このケースと反対に、転職前にはそれほど専門知識がなく、実績もないような人が、転職をきっかけに、これまでの考え方や行動をがらりと変える決心をしたとします。長い目で見たら、この人のほうが、自分を駆り立てて伸びていき、会社に対していい貢献をする
かもしれません。転職者はそのような可能性を秘めています。面接担当者はその可能性を感じ取る必要があります。現在優秀な人は、誰でも採用します。しかし、将来優秀になりそうな人を見抜くのが面接担当者の眼力です。面接担当者だけが、応募者を目の前にして転職の意欲や夢、今後に賭ける決意を肌で感じることができるのです。
29新しい組織になじめるかを見分ける新たな仲間と打ち解け合うことができるかどうかを確認する仕事を一緒にするメンバーをどう思っているかチェックする転職者は、これまでとは違う職場で仕事をしていくわけですから、新たなメンバーとうまくやっていけるかどうかは、採用を判断する大きなポイントになります。職場の人間関係が問題で転職する人は、かなり多くいます。しかし、転職理由を聞いても、人間関係が悪くて転職を考えたと正直に答える人はほとんどいません。応募者が新たな仲間とうまくやっていけそうかどうかは、面接の中で判断しなければなりません。人間関係で問題を引き起こしそうかどうかを面接で見抜くことにより、結果的に、入社後に起こる可能性のあるトラブルを未然に防ぐことができます。一般的に、自分が感じている不満だけを話す人は、被害者意識が強い人です。「私はこういう仕打ちを受けました」「こういうひどい環境で働きました」等と、自分の置かれていた状況だけを話す場合は、ほかのメンバーが悪く、私がこういう目にあったのはほかのメンバーのためだということを強調しています。このような人は、反省することが少なく、メンバーの責任だけを追及しがちです。自分中心でなく、相手の気持ちを理解できるかどうか確認するほかのメンバーに対して、自分の行動が理解されなくて結果的に人間関係が悪くなった場合には、その気持ちが必ず話の中に現われます。「私の気持ちが伝わらなくて残念でした」「私にも落ち度がありました」等と話す場合は、メンバーを一方的に責めないで、自分にも非があることを自覚しています。このよう
な人はメンバーに恵まれていなかったので、入社後の新しいメンバーとは、うまくやっていけそうです。このほか、これまでの人間関係の質問に対して答える時に、「感情的になる人」「同情を求める人」「長々と話す人」等は、自分中心の行動をとる可能性があります。このような人は、相手の気持ちを理解せずに自分中心なので、環境が変わってもこれまでと同じように人間関係で不満を感じると考えたほうがいいでしょう。
30採用を決断するポイント新たなチャレンジへの意欲を感じたら採用を決断するチャレンジする意欲の手ごたえを面接シートに記入しておく転職者を採用することを決断するポイントは、「これまでの経験を生かして入社後に貢献してくれそうか」ということと、「新たな環境のもとで仕事をしたいというチャレンジへの意欲をどれだけもっているか」ということです。ただし、入社後にどのような貢献が期待できそうかということは、あくまでも推測です。いくら面接でそのための判断材料を集めても、実際に入社してみないとわかりません。したがって、入社後の貢献についてあまり神経質になると、考えすぎて採用を決断しにくくなります。それに比べると、新たな環境のもとで仕事をしたいというチャレンジへの意欲は、面接の中でもはっきりと感じることができます。質問に答える表情や態度に、新たな仕事への関心や新しい会社に対する期待等が正直に現われます。そのような手ごたえを感じた時に採用を決断すればいいのです。面接シートには、その手ごたえを忘れないように書きとめておきます。採用方針に従って応募者のスタイルを判断しよう転職者は新卒者と違い、いくつかの会社を経験しています。そのため、仕事を進めるうえで、すでに自分のスタイルができ上がっています。そのスタイルをユニークなものとして認めれば、入社後に期待がもてます。しかし、そのスタイルを不適切なクセと考えれば、入社後の活躍に不安を感じます。そうすると、その人は採用されにくくなります。応募者のスタイルをどのように考えるかは、採用方針によって決まってきます。職場に刺激を与える人材を求めるのなら、ユニークであればあるほど歓迎でしょう。いまの職場の雰囲気を大事にしたいなら、あまりユニークすぎる人は好ましくありません。このような考え方を、面接シートにきっちりと記入しておくことが、最終的に採用するかどうかの判断材料になります。
COLUMN⑥入社時には条件をきちんと確認する退職日の確認を怠り採用ができなくなる20歳代後半の女性応募者は、非常に意欲があり、仕事もできそうなので、私はぜひ採用したいという気持ちになりました。相手が積極的だったので、入社日までにはいまの会社を当然退職してくれるものと思いこみ、退職日を面接で確認しませんでした。しかし、実は会社の引き継ぎに2カ月かかることがあとでわかり、こちらはそれまで待てません。結局、入社は取り消しになりました。応募者の言葉を鵜呑みにして採用ミス40歳代前半の男性応募者は、電車による通勤が2時間近いということでした。上司は、残業もあるので無理ではないかという意見でしたが、体力もあり大丈夫だという応募者の言葉を信用して採用しました。しかし、実際は通勤時間が2時間を超えていて、数カ月後には疲れて退職してしまいました。私は何事も念のために確認しておくことが必要だと痛感しました。そのためにも、面接時には冷静な気持ちで、必要なことを確認することが大切です。
31パート社員を面接する多くの応募者は働く目的が明確なので勤務条件が合えば力を発揮する応募理由と契約条件をしっかりと確認するパート社員の応募理由は、「家計を助ける」「家事だけではなく何か仕事をしたい」等、はっきりしている場合がほとんどです。また、最初から自分が勤務できる時間帯や場所を考えて応募します。このように、パート社員の場合は、目的がしっかりしているので、自分が納得すると非常にまじめに勤務します。「家事だけではなく何か仕事をしたい」という応募理由の場合は、仕事の内容に高い関心があります。この場合には、仕事の内容を説明するとともに、その仕事が会社の中でどう役に立っているか、仕事を担当する人に対してどのような期待をしているか等について具体的に伝えるようにします。期待する仕事をしてくれそうかチェックするパート社員も大事な仕事を担当します。仕事を正確に行なえるか、仕事に対する責任感があるかをまずチェックしましょう。パート社員の仕事は、一定の時間がたつと別の人と交代します。スムーズな交代を行なうためにはチームワークが第一です。感情を丸出しにしたり、気まぐれに引き継ぎしたりしないようにしなければいけません。仲間意識があるか、自己主張が強すぎないかをしっかり見るようにしましょう。将来正社員として期待できる可能性はあるか
現時点ではパート社員を希望していても、将来、一定の要件(原則、5年以上継続雇用している場合)を満たし本人が申し出れば正社員として登用しなければなりません。したがって、当面の人員補充という安易な考え方でなく、将来的に正社員としての仕事遂行力、責任性、規律性等があるかを現時点で判断しておく必要があります。このことは契約社員(アルバイトも同様)を採用面接する時も同様に言えることです。
32アルバイトを面接する実績や経験よりも常識的な行動がとれるかを重点的に見るアルバイトとパート社員では性格が違うパート・アルバイトと一緒にされることがありますが、それぞれ性格は違います。パート社員は、勤務時間は短いのですが、契約期間は長いのが普通です。アルバイトは契約期間が短いのが普通です。勤務時間は短時間から一日までいろいろです。アルバイトの場合は募集する会社側も応募する側も、目的がはっきりしています。会社側は、短期間の仕事を担当してもらいますから、応募資格を緩やかにします。実績や経験にそれほどこだわりません。応募する側は、短期間である程度のまとまったお金がほしいという理由が大半です。したがって、面接もあまり難しく考えないで、常識的なことを確認するようにします。
33契約社員を面接する限られた期間内で成果を出す力があるかを重点的に見る契約社員として成果を出したいという積極性を見る契約社員に応募する人の多くは、本当は正社員で採用されたいという気持ちをもっています。しかし、正社員の募集が少なく採用されにくいために、契約社員に応募せざるをえないというのが実情です。契約社員の場合は、その気持ちを切り替えているかどうかということをよく見ておく必要があります。正社員としての採用が難しいという現実を受け止めて気持ちを切り替え、契約社員として仕事をするチャンスがあれば、そこで力を発揮したいという積極性があるかどうかを見るようにしましょう。正社員になりたいが、採用されにくいのでしかたなく契約社員に応募したという、安易で消極的な姿勢のままでは、入社後もくすぶった気持ちで仕事をするおそれがあります。契約社員は期間を決めて採用しますから、その期間内で力を発揮して成果を出すことができるかどうかが、採用を判断する時のいちばん大きなポイントです。契約内容をしっかり確認しておく契約社員に対しては、契約の内容をしっかりと確認しておくことが大事です。特に、処遇条件と契約の更新については、面接の時に明確に確認しておかなければなりません。処遇条件については、どのような貢献があればどのように変わるのか、貢献の有無にか
かわらず一定の処遇なのかを明確に示します。また、契約の更新については、更新する場合の条件と更新を伝える時期を明確に示すようにします。これらのことをあいまいにしておくと、入社後にトラブルが起こるもとになります。注意してください。なお、念のために、これまで契約内容や仕事の進め方で問題を引き起こしていないかどうか、意外な質問を2つか3つ投げかけて反応を見るようにしましょう。
34採用を決断するポイント仕事内容や勤務条件にきちんと対応できるかをよく見るパート社員の採用を決断するポイントパート社員に対しては、長期的な戦力としての期待があります。したがって、安定した仕事ができるかということと、継続して勤務することができるかということが大事な判断ポイントになります。安定した仕事ができるかどうかは、考え方がしっかりしているかどうか、性格が安定しているかどうかなどで判断します。継続して勤務することができるかどうかは、働く目的が明確かどうかでかなり決まってきます。そのほか、家族状況や健康状態なども見ておく必要があります。パート社員は長く勤める可能性がありますから、何か気になることがあれば、どんな小さなことでも面接で必ず確認しておくようにしましょう。アルバイトの採用を決断するポイントアルバイトの場合には、何ができるかという見方をしないで、何かよくないところはないかと考えるようにします。よくないところがたくさんあれば採用を見送ります。よくないところがそれほどなければ、仕事を期待どおりできるかもしれないので、採用してもいいかどうか検討します。契約社員の採用を決断するポイント契約社員の場合は、期待する成果をきっちりと出せるかどうかということと、契約条件に不満をもたないで働くことができるかということが判断のポイントになります。契約社員は前職での経験を生かすことができれば、成果を十分に期待できます。期待する成果を出せるかどうかは、仕事に対する考え方や実績について自信をもっているかどうかで判断します。契約条件に不満をもたないかどうかは、契約条件について説明するときの反応や表情にはっきり現われます。それを見逃さないようにします。
35基本事項の答えの奥を観察する質問しながら意識して観察すると新卒者の隠れた本性が見えてくる質問に対する答えや表情、態度に新卒者の素顔が浮かび上がる「当社を志望した理由は何ですか」「どんな仕事を担当したいですか」などということは必ず全員に共通して聞く基本的な質問です。基本的な質問は、採用面接の手続きのように考えられていて、なんとなく行なわれる場合が多いものです。どうせ同じような答えが返ってくるだろうと思い、なんとなく質問していると、新卒者の素顔に迫るチャンスを逃がしてしまいます。基本的な質問をするときから、応募者を観察しなければなりません。基本的な質問に対する答えの中に、新卒者の素顔が浮かび上がってくることがあります。また、たとえ同じような答えが返ってきたとしても、表情や態度で素顔を推測できるヒントが得られます。このように考えると、面接の最初から気が張って、応募者を観察する姿勢が生まれてきます。しかし、そのように考えなければ、全員に同じような基本的な質問をして、同じような答えが返ってくるために単調な感じになり、応募者を観察する姿勢にならないで、手続きのような感じで淡々と進めてしまいます。当たり前のような質問ほど、日ごろの姿勢が出てきやすい新卒者の考え方を確認しようと質問を工夫しても、逆効果になる場合があります。新卒者は、質問を予想して答え方をかなり練習してきます。また、質問に対して面接担当者の印象に残る答え方をして、自分をアピールしようという気持ちもあります。難しそ
うな質問ほどアピールするチャンスだと感じ、工夫をこらした答えを考えます。そのような答えは本当の気持ちではありません。面接担当者はできるだけ相手が本当に考えていることを探る必要があります。難しい質問には緊張しながらも頭を使って答えます。しかし、当たり前すぎるような質問には、そのように気持ちを張り詰めないで、ほとんど無防備で答えます。そのときに素顔が出てきやすいのです。
36入社後の取り組み姿勢をイメージするどのように成長していくかをイメージできると採用したくなる学生時代の経験から学んだことを確認する新卒者の場合は、まだ会社に入ったことはありませんが、ほとんどの人が学生時代にアルバイトなどで仕事の経験をしています。なかには、会社をつくって事業活動をしているような人もいます。そのような経験について聞くことから、入社後の仕事ぶりをイメージすることができます。よくあることですが、たくさんの経験を積んでいる人とそれほど経験していない人と比較して、たくさん経験を積んでいる人のほうが入社後に期待どおりの仕事をしてくれるのではないかと考えがちです。そんなことはありません。少ない経験からでも、多くのことを学んでいるかもしれません。どんな経験をしてきたかということよりも、そこから何を学んだのか、何に気づいたのかということが入社後に生かされます。入社後の成長の可能性を探ろう新卒者を採用するということは、入社後にその人を期待どおりの人材に育てていくということです。期待どおり育つかどうかという点も面接で見ておかなければなりません。新卒者の採用では、入社後の成長の可能性をイメージできるかどうかが、採用を判断する大事なポイントになります。学校の成績がよかったり、クラブ活動を熱心に行なっていたりすると、入社後も同じようにがんばって順調に成長するだろうと普通は考えます。しかし、そのように考えることは、面接担当者でなくてもできます。それは、入社後の
成長をイメージしているのではなく、単に期待しているだけです。新卒者をこれまでの経験だけで判断するのでは物足りません。入社後に直面するかもしれない状況を想像して、「このようなときには、どう対応するだろうか」ということをイメージしながら、成長の可能性を探っていく必要があります。そのイメージが湧けば湧くほど、採用したいという気持ちが強まってきます。
37新卒者の本音を引き出し、素顔に迫る応募者が用意してきた答えに惑わされずに本音を引き出す本音が出ているかどうか見極める新卒者は、面接でどんな質問が出るか予測して、答えを念入りに準備しています。参考になる本も読んでいるし、友達同士で練習したりしています。その意味では、転職者よりも面接のための勉強をしているといっていいでしょう。質問したときに、答えが返ってくるタイミングや答える内容に注意して、本音に近い答えか、準備してきたことを答えているのかを見極めなければいけません。戸惑いながら考えて答えたときは、かなり本音に近いと思ってまちがいありません。しかし、すぐ答えが返ってくるようだったら、あらかじめ用意していた答えだと思ったほうがいいでしょう。また、暗記していることを話している感じで、気持ちがこもっていないときも、あらかじめ用意してきた答えと考えてください。本音を探るコツは、新卒者が準備をしていないような角度から質問してみることです。意外な角度で質問すると、その場で考えて答えるので本音が出やすくなります。本音を引き出すと率直なやりとりができるようになる新卒者の本音を引き出すことができれば、お互いに素直な気持ちでやりとりができるようになります。新卒者も緊張感が解けて、率直に話すようになります。また、面接担当者もいろいろなことをストレートに言ったり聞いたりすることができるようになります。このような雰囲気になると、面接担当者のひと言が新卒者の気持ちに染み込んで、新卒者の考え方を大きく変えることもできるようになります。
面接前には会社の規模や将来に不安を感じ、入社する気持ちがあまり強くなかったとしても、面接担当者のひと言で、入社したいと思うようになる場合もあります。また、面接担当者と気持ちのこもったやりとりができたことで、このような人がいる会社で仕事をしたいと感じる場合もあります。本音と本音で話す展開になれば、新卒者が納得し充実感を抱く雰囲気が生まれてきます。その時に、新卒者の未来の姿が出てきます。
38採用を決断するポイント将来大きく成長できるかが採用を決断するポイントあなたのフィーリングを大切にしよう新卒者の場合は、採用して最初から育てていきますから、将来大きく育つ可能性があるかないかが、採用を決断する大切なポイントになります。将来の可能性は姿勢や意欲で判断します。新しいことに関心を示す、前向きな発言をする、柔軟な考え方をするといった姿勢や意欲を感じる場合は、将来の成長が期待できそうです。逆に、新しいことにあまり関心を示さない、これまでの考えにこだわる、発想が固いといった姿勢や意欲のなさを感じる場合は、将来の成長は期待できそうにありません。このような判断材料にもとづいて成長の可能性を検討していきますが、最後の決め手になるのは、あなた自身のフィーリングです。たとえば、質問に対して、要領よく答える人がいます。話だけ聞いていると、柔軟な感じで将来の成長を感じさせます。しかし、あなたの目から見て、何か不自然さを感じたり、違和感を覚えたりしたら、そのフィーリングを優先させるべきです。いくら、表面的にすばらしいことを言っても、体全体から出てくる雰囲気は隠すことができません。成長の可能性を感じさせるところを見つけよう成長の可能性について、もう一つ気をつけたいことは、よいところがたくさんあるから成長するとは限らないということです。たとえば、成績がよく、性格も素直で、明るいなどといったことを合計して点数が高いから成長するかというと、必ずしもそうではありません。将来の成長は、あくまでも可能性です。何か一つでも、成長の可能性を感じさせることがあれば、そこに注目すべきです。新卒者の場合は、応募者が成長しそうだと感じたら、あなたのフィーリングを確信してください。そして、面接シートに感じたことを率直に記入するようにしてください。
COLUMN⑦採用面接を担当する者の泣き笑い採用内定者の辞退は面接担当者に大きなストレス最近の新卒者には、1社だけではなく何社からも採用内定をもらう人が増えています。ですから、採用を内定しても自社に本当に入社してくれるかどうか面接担当者は常に心配しています。私も、入社式当日に来ないので連絡したら、ほかの会社に入社したという返事を聞き、全身から力が抜けたことがあります。採用内定者が辞退するのは本当に残念なことですが、面接担当者の責任ではありません。入社するかしないかは、あくまでも応募者の判断です。あまり、そのことを心配するとストレスがたまります。自分の面接で人が育つのは大きな喜びしかし、面接を担当してうれしいこともあります。自分が面接して採用した人が順調に育ち、活躍している評判を聞いたときは、「私の目に狂いはなかった」と自分をほめてやりたくなります。また、何年もたってから、「私は○○さんの面接で採用されました」などと声をかけられたときは、最高の感激です。
39シニア応募者を面接する時のポイント本人の経験やノウハウが生かされ、会社に貢献できるかどうか「退職理由」の確認で再就職の意欲を探るシニアの場合は、退職理由の確認が非常に大事になります。自ら新たな可能性を求めて積極的に退職する場合もありますが、再雇用の条件を満たさなくて不本意ながら退職する場合もあります。今後の意欲にも関連しますから、退職理由を念入りに確認しておく必要があります。退職理由としては次のものが考えられますが、本当にそうかどうかを補足質問で確認します。『定年を前に新たな道にチャレンジしようと思って退職しました』に対して→〈補足質問例〉(本当にチャレンジ姿勢があるかどうかを確認する)「そのように考えたきっかけは何ですか」「定年を迎えてからでは遅いのですか」『再雇用という選択もありましたが新たな職を求めることにしました』に対して→〈補足質問例〉(再雇用に値する人材かどうかを確認する)「再雇用の条件はどのようなものでしたか」「お世話になった会社に再雇用で貢献しようと思いませんでしたか」『再雇用の条件が厳しかったので思い切って退職しました』に対して→〈補足質問例〉(自信、積極性があるかどうかを確認する)「どのような点を厳しいと感じましたか」「厳しさに挑戦してみようという気持ちはありませんでしたか」このような補足質問をして、応募者の退職の真意や再就職に対する意欲を確認します。本人が自分の価値をどれだけ自覚しているかを探るシニアは長年の経験から多くのことを身につけています。長年にわたって蓄積してきた知恵やノウハウを仕事に生かすことが期待されています。シニアならではの価値を認めて採用するわけですから、自分の価値を自覚し面接担当者に売り込むくらいの積極性がなければなりません。シニアの価値を確認するためには次のような質問をします。「あなたならではの仕事のコツがあれば教えてください」「長年にわたって身につけてきたことは何ですか」「自分の仕事をどのように評価しますか」大企業意識を払拭しているかを探るシニアが職を求める場合は、それまで勤めていた会社より規模の小さい会社に応募する
傾向があります。規模の小さい会社のほうが自分の経験が役に立つだろうと考えるわけです。シニアの場合、実際にその点を期待されて採用されるケースはかなりあるでしょう。しかし、なかには採用後に気持ちの切り替えができなくて、前の会社と比較して不平不満を口にする人がいます。大企業意識が抜け切れていない人です。そのような人を採用すると組織の雰囲気が悪くなりますから要注意です。シニアの面接では、大企業意識を払拭できるかどうかも特に念入りに確認しておかなければいけません。
40何回も転職している応募者への対応何が原因で何回も転職しているのか転職理由の実情を探る転職の理由から応募者の考え方や行動の傾向がわかる何回も転職しているから今度も定着しないだろうという考えをもっていると、面接もそのような先入観に引きずられてしまいます。戦力として期待できるかもしれないという気持ちがあるからこそ、面接をするのです。その可能性を探るようにしましょう。何回も転職している場合には、転職の事情をできるだけ具体的に聞く必要があります。そこから、応募者の考え方や行動の傾向を探り当てることができます。そのポイントを見ておきましょう。同じような理由で転職していれば、また繰り返す可能性は高いと考えるべきです。転職理由がそのつど違う場合には、その時の様子を詳しく聞き出して、どのような状況になれば、転職しようという気持ちになるのか傾向を探ります。また、転職のきっかけが、転職者のほうにあるのか、別なところにあるのかも見ておかなければなりません。たとえば、「人間関係がよくないから転職した」という場合でも、転職者のわがままで転職せざるをえなくなったのか、相手側に問題があったのかによって見方はかなり変わってきます。今回の応募にかける決意を確認する何回も転職しているから、飽きっぽい、根気がない等と決めつけないようにしましょう。いまの環境に満足しないで、もっと挑戦的な仕事をしたいために転職する人もいま
す。仕事やメンバーとの相性が関係する場合もあるでしょう。なかには、今度こそ長く勤めようと強い気持ちを抱いている人もいるかもしれません。二十歳代に4、5回転職した人が、三十歳代初めに採用された会社でずっと勤めて活躍をしているという例もあります。転職者がどれだけの決意をして応募しているのか、その意欲を感じ取りながら判断してください。
41違う職種を希望する応募者への対応なぜ、いままでの職種を変えたいのか理由を必ず確認する前向きの姿勢で職種を変えようとしているかどうか確認する販売から事務、生産から販売、事務から現場というように、職種を変えて応募してくる人がいます。このように、いま担当している職種と違う仕事に応募してきた応募者には、その理由が前向きか、そうでないかを明確にしなければなりません。たとえば、いまの職種がいやで、別な職種だったらなんでもいいというのは、後ろ向きの姿勢です。また、いまの仕事についていけないために職種を変えてみるという姿勢も後ろ向きです。このような姿勢では入社後に問題社員として職場のお荷物になるおそれがあります。面接では、そのことをしっかりとチェックしておきましょう。いまの仕事にそれほど不満はなく、もっと挑戦的な仕事をしたいという気持ちで職種を変えるのは前向きです。前向きな姿勢かどうかは、「なぜ職種を変えたいか」という質問をした時に返ってくる答え方で判断できます。前向きの姿勢なら積極的な答えが返ってくる次の例は後ろ向きの姿勢を感じさせる答え方です。「いまの仕事は、人間関係が複雑でとても疲れます。私に向いていません」「事務は単純な仕事が多く刺激がありません。人と会う販売職を希望しました」
このような答えは、いまの仕事から離れたいという気持ちが強く出ています。次の例は前向きの姿勢を感じさせます。「いまの仕事でも、いろいろな人と会ってきました。もっと人と接する仕事をしたいと思い、今回思い切って応募しました」前向きの姿勢で職種を変えたい場合は、このように、いまの職種で得られたことを新しい職種で生かしたいという答え方になることが多いものです。
42予想外の要望にはこう対応する予想外の要望が出た場合でも、あいまいにせずはっきり答える入社後の勤務に影響がないか、スムーズに入社できるか確認する面接も最後の段階になると、応募者の気持ちがかなりほぐれてきて、率直な要望が出てきます。特に、応募者が、採用されるかもしれないと感じた場合には、それまで話さなかったことを思い切って話すようになります。なかには、予期していなかったようなことが出てくる場合もあります。その内容が、採用を判断するときの重要なポイントになることもあります。あいまいにしないでお互いが納得するようにしましょう。採用しようという気持ちが強くない場合には、相手の話すことを聞くだけでいいのですが、採用したいという気持ちに傾いてきたら、入社後の勤務に影響することかどうかやスムーズに入社できるかどうかということを具体的に詰めておく必要があります。話が煮詰まってくると、応募者もこのことは話しておかなければならないという気持ちになって、勤務に影響がありそうなことを話し始めます。仕事に関してよく出てくるのは、残業や休日出勤、転勤などに関する要望です。これらのことは、仕事をする前提になりますから、会社としての考え方や現状をはっきりと伝えるようにしてください。必要なことはあいまいにしないで、はっきりと確認するようにしよう特に、採用したい一心で、残業や休日出勤についてあいまいな答えをすると、後でトラブルのもとになります。また、本人や家族の健康状況の話題が出てくる場合もあります。この点についても勤務可能かどうかしっかり判断しましょう。採用の気持ちが固まってきたら、スムーズに入社できるかどうかを確認します。入社日が決まったのに、1カ月後でなければいまの会社を退職できないということもよくあります。仕事の計画にも影響してきますから、採用が決まったらいつごろ入社が可能か、はっきりと確認しておきましょう。
菊池一志(きくちかずし)キャリアコンサルタント。東京大学文学部卒業後、大手食品会社人事部で多くの新卒者、中途採用者を面接する。その後、日本能率協会に転職し、教育コンサルタントとして多くの企業で管理者やリーダー、中堅社員等を対象とした研修を指導する。と同時に、自らもコンサルタント、契約社員、パート社員等の採用を担当する。現在はキャリア・クリエイティブ代表として面接研修、部下指導育成研修、キャリアプラン研修等、一貫して人に関わるテーマを追究している。これまでのべ1万人を超える採用面接に立ち会う。主な著書として、『困った部下の指導法が面白いほどわかる本』(中経出版)、『できる上司の「面談力」!』『転職者のための面接試験での売り込み方』(以上、すばる舎)、『新入社員読本〈仕事の基本編〉』(共著、日本能率協会)などがある。
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