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損益分岐点比率から「売上高経常利益率」の目標値を設定

損益分岐点比率から「売上高経常利益率」の目標値を設定  3つ目の経営指標は「売上高経常利益率」です。文字通り「売上高に対して、どれだけ経常利益が出るか」を示すもので、「粗利益率」よりもさらにダイレクトに儲けやすさを示す指標といえます。  売上高をどれだけ増やせば、経常利益がどれだけ増えるかがわかります。毎月の月次推移変動 P/ Lから、「売上高経常利益率 =経常利益 ÷売上高」という式で導き出すことができます。  さて、この「売上高経常利益率」について、現代の経営の神様ともいえる京セラ創業者の故・稲盛和夫氏は講演や著書で常々、「売上高経常利益率が 10%なければ、経営者失格だ」と述べています。稲盛和夫氏を知る社長は、この言葉を真摯に受け止め、「売上高経常利益率 10%」を目指しているでしょう。  ところが、実のところ、これは製造業以外の業種には適用できない、と私は見ています。なぜなら、先ほど述べた通り、業種によって粗利益率が異なるからです。売上高経常利益率 10%を目指すと、業種によっては判断を間違えることになります。  粗利益率の低い卸売業では、平均的な粗利益率が 10%程度しかないので、「売上高経常利益率」 10%は、そもそもムリな話です。粗利益は、固定費と経常利益を足したものであり、固定費は人件費や家賃など必ずかかるものだからです。つまり、粗利益は必ず経常利益よりも大きくなるので、会社の売上高経常利益率と粗利益率の関係は必ず、  粗利益率 >売上高経常利益率  となります。  粗利益率が 10%の会社は、必ず「売上高経常利益率」が 10%未満になるのです。粗利益率が 20%の会社でも「売上高経常利益率」 10%は、ほぼ不可能というくらいの難しい数値です。 ●損益分岐点比率 80%から目標値を設定  では、「売上高経常利益率」の目標値は、どのように考えればいいでしょうか。  稲盛和夫氏のいう「売上高経常利益率 10%」という目標は、粗利益率が 50%くらいとなる製造業を念頭に置いた数字です。粗利益率が低い小売業や卸売業などの業種では、「売上高経常利益率 10%」という目標はなかなか達成できません。

 逆に、弊社のような会計事務所やコンサルティング業では、粗利益率がほぼ 100%なので「売上高経常利益率 10%」では目標として低すぎます。売上高がほぼそのまま粗利益になるからです。このような会社では、「売上高経常利益率」は 20%が目標値となります。粗利益率と同じように、「売上高経常利益率」も業種によって目標値が変わります。  以下、粗利益率ごとの「売上高経常利益率」のめやすを示します。 ◆粗利益率が高い業種の売上高経常利益率:目標値 15 ~ 20%  主にサービス業(粗利益率 90 ~ 100%)がこれに当たります。理美容業(粗利益率 90%前後)では 18%くらい、飲食業(粗利益率 70%前後)は 14 ~ 15%を目指すのがいいでしょう。 ◆粗利益率が中間的な業種の売上高経常利益率:目標値 5 ~ 10%  主に建設業や製造業がこれに当たります。  建設業(粗利益率 20 ~ 40%)の目標値は 4 ~ 8%、製造業(粗利益率 40 ~ 60%)の目標値は 8 ~ 12%といったところになります。

◆粗利益率が低い業種の売上高経常利益率:目標値 2 ~ 6%  主に卸売業(粗利益率 10 ~ 20%)や小売業(粗利益率 20 ~ 30%)などの薄利多売の業種がこれに当たります。  なぜ、こうした値になるのでしょうか。  稲盛和夫氏の提唱した「売上高経常利益率 10%」は、製造業を念頭に置いた、粗利益率 50%、売上高に対する固定費比率を 40%と仮定すると出てくる数字です。  売上高 10億円の会社であれば、粗利益 5億円、固定費 4億円なので、経常利益は 1億円です。「売上高経常利益率」は、経常利益 1億円を売上高 10億円で割ると、 10%になります。この会社の「損益分岐点比率」(固定費 ÷粗利益)は、固定費 4億円 ÷粗利益 5億円で 80%となります。  前節で述べたように私は、中小企業の理想的な損益分岐点比率を 80%と考えています。中小企業の理想的なバランスは、粗利益率を 100%としたときに、固定費 80%、経常利益 20%、損益分岐点比率が 80%というものです。  業種によらない指標である損益分岐点比率の中小企業における理想値を 80%とすれば、稲盛氏が売上高経常利益率 10%を目標とすべきだと説く理由について、すべて腑に落ちるのです。「損益分岐点比率」(固定費 ÷粗利益) 80%を実現する会社は、自ずと「経営安全率」(経常利益 ÷粗利益)が 20%になります。「売上高経常利益率」は、経常利益 ÷売上高 =(経常利益 ÷粗利益) ×(粗利益 ÷売上高) =経営安全率 ×粗利益率となるので、「売上高経常利益率」は「粗利益率」と「経営安全率」 20%を掛け合わせたものになります。ですから、「売上高経常利益率」は「粗利益率」ごとに異なり、 183、 185ページのようになります。中小企業の理想的な「売上高経常利益率」は、損益分岐点比率 80%を目安として導き出せるのです。

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