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手元現金はいくらあればよいか

手元に無駄な現金を置いて借金するぐらいばかなことはないだろう。

ところが、手元現預金がどのくらいあればよいか、はっきりとした方針をもっている会社

は、案外少ないものだ。

本書の第二章で、「現金比率は三〇%以上」と述べたが、これは企業の安全性を分析する

うえでの指標であった。つまり万一のためには、流動資産の中でも最も早く「おかね」にな

る現金・預金が流動負債の三割以上ほしいということであった。ここで同じことを繰り返し

たいのではない。

「会社のお札に二色の色を塗れ」ということを言いたいのである。どういうことかという

と、金利を稼がなくてもいいお札と、たとえ一日でもいいから金利を稼がなければならな

いお札に、会社の現預金を色分けして管理せよということである。わたしは、バランスシー

トの現金。預金の中で金利を稼がなくてもいいものは、「手元現預金」として区別している

ほどだ。

普段、何のために現金を会社に置いてあるのかを、お考えいただきたい。大体まとまって

現金が大きくでる日は、せいぜい月に三日程度ではないだろうか。給料が日払いなんて会社

は皆無だろう。手形を毎日落としている会社だってない。公共料金も事務消耗品も月払いだ。

出張旅費交通費ですら、新幹線は回数券支給の会社が増えてきた。接待も月払いが多い。会

社で毎日現金を用意しておく必要のあるものといえば、接待雑費と少額の交通費程度ではな

かろうか。

このことは、小売業やサービス業などのいわゆる日銭商売の場合に、特に注意すべきであ

る。R社というある地方のレストランチェーンであったことである。R社の社長は、売上が

現金で支払いは掛け、という有利な条件で、 一〇日分も二週間分もの現金を当座に入れたま

まで、無頓着な会社であった。そこでわたしは、「手元現金はせめて一週間分にしなさい、

わたしの会社では一日分でも十分なんだから」と社長に申しあげたことがある。

「先生それは無理だ、メーカーとウチの商売とは違うんです。先生も言うことが細かい」

となかなか言うことを聞かなかった。しかし年商四〇億円を超えるようになって、「一週間

で一億円になる、五〇〇万円の金利をみすみす捨てていたのか」と、遅まきながら気づいた

のであった。当座預金には金利がつかないことすら忘れている経営者が、世間には案外多い

ものである。

金利を稼がなくてもいいおかねは、たとえば、「手元現預金または当座預金は月商の何日

分とする」とか、「当座預金は五〇〇〇万円を限度とする」というように、社長として明確

なルールを決めることである。これを経理の担当者に任せっばなしにしていると、小まめに

口座を移し替える面倒を、えてして省きがちとなる。運転資金については、このようなきめ

細かいルールも案外大事である。それは同時に、経理担当者の躾にもつながることなのだ。

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