①マニュアルはますます必要になる
①疑間に手つ取り早く答えてくれるのが、本来のマニュアル。
②役に立たない安易なマニュアルが粗製濫造されているのも事実。
③企業経営にとうては、本当に役に立つマニュアルヘの期待が大きい。
物事を始めたり、機器を操作したりするときに、参考にしたいのがマニ ュアルです。
「何から始めればよいのか」「どうすればよいのか」「どうし たらもっとうまくできるのか」、これらの疑間に手っ取り早く答えてくれ るからでしょう。
マニュアルとは英語(manual)で、オート(auto、自動)の反対の意味 があり、「手動で行うこと」「手引書」を意味します。
語源は、ラテン語の 「手」という意味のMmusから来ています。
世の中には、操作マニュアル、例規集や規定集、組み立て指示書、ガイ ドブック、リファレンスなど、いろいろなマニュアルがあります。
本書で は、組織の業務をもっともうまいやり方で進める目的で作成される「業務 マニュアル」のつくり方に焦点を絞って進めていきます。
世の中では、「マニュアル人間」「マニュアル至上主義」といった言葉が、 杓子定規で、機転が利かないという悪い意味で用いられているようです。
しかし、本来マニュアルは決して悪いものではありません。
役に立たな い安易なマニュアルが粗製濫造されていることが問題なのです。
特にこれ からの企業経営にとっては、退職によるノウハウの断絶、ISOやSOX法の 導入といったグローバル基準への対応、コンプライアンスやモラル低下ヘ の対処など、早急かつ積極的な対策が求められていますし、そこではマニ ュアルの果たす役割は増すばかりです。
マニュアルは、便利なものと期待されながら、実際にはその期待を裏切 ることが多いようです。
本当に役に立つマニュアルとは、どのようなもの なのでしょうか。
それはどのようにつくればよいのでしょうか。
本書では、 本当に役に立つマニュアルのつくり方について、考えていきましょう。
②つくることより、使いこなされることが重要
「使われ,い」マニュアル、「守られない」マニュアルタ:多い。
鰹l②マニュアルは、つくることより「使し)Fなされぅ」ことが重要。
戦フ③マニュアルを定着させるにはt「巧妙な仕掛け」が欠かせない。
身の回りには、「使われない」マニュアル、「守られない」マニュアルが 多くあります。
その理由には、「どこに書いてあるかわからない」「読んで もよく分からない」「知りたいことが載っていない」といった不満がある ようです。
できるだけ分かりやすく、できるだけ詳しく、できるだけ何で も、と欲ばれば欲ばるほど、当初の目的とはかけ離れた「使われない」マ ニュアルができ上がってしまいます。
また、つくり手側にとってみると、 「マニュアルを読んでから始めて欲しい」「マニュアルを読んでから問い合 わせして欲しい」「マニュアルを使って欲しい人ほど使ってくれない」と いった悩みもあるようです。
マニュアルは、つくることより「使いこなされる」ことが重要です。
マ ニュアルをつくるまでは熱心ですが、できたらそれで安心してしまう、と いうのも事実です。
おそらく形だけ説明会や研修会を実施してみても、 「使いこなされる」マニュアルにはならないでしょう。
マニュアルが活用 されずに、勝手な理解で実施されたり、あるいは分からないときには同じ ような問い合わせが後を絶たなかったり、といった結果になりがちです。
「使いこなされる」マニュアルにするには、次の3つが欠かせません。
①目的を明確にして、使い手と活用シーンを念頭に内容を絞り込む ②分かりやすく、探しやすく、更新しやすい内容にする ③マニュアルを理解し、活用してもらうための「巧妙な仕掛け」を併せて 実施する 本書では、この「巧妙な仕掛け」についても、使いこなされるためのさ まざまな方策を紹介し、具体的にそのポイントを解説していきます。
使い 手が使わざるを得ない状況をどのようにつくり出すかが問われます。
③マニュアルは何のためにつくるのか
①マニュアルには4つの目的があり、それはステツプになつている。
②目的がより高次元になれば、マニュアル作成のポイントも異なつてくる。
③目的を絞り込み、明確にしたうえで作成するのが成功のポイント。
業務マニュアルには、業務を組織でうまく進めるための4つの目的があ ります。
またこれらの目的は4つのステップになっていますので、だんだ んと目的も高次元になっていきます。
【目的1】見えるようにする:誰もが業務をできるようにするためには、 まずどのようなことをする業務なのか、業務の内容を明らかにすることが 必要です。
業務規定や業務分掌などがこれにあたります。
見えるようにす る対象は、考え方、言葉遣い、動作、成果物の品質などです。
成果物の品 質とは、製品やサービス品質、売上や利益などといった業務のアウトプッ トです。
これらをマニュアルで明文化、可視化していきます。
【目的2】基準をつくる:業務をうまくやるためには、最低限うまくいく 手順と方法を示す必要があります。
業務を標準化する、教えてもらわなく てもマニュアルを読めば業務ができるようになる、さらには規則・規定な どのルール、組織風土や理念を理解し組織で共有できるようにするには、 行動基準や判断基準をつくる必要があります。
【目的3】基準を守れるようにする:誰もが基準通りに仕事ができるよう にするためには、規則・規程、業務品質を守れているかどうかを評価する 仕組みが必要になります。
達成度テストや品質試験などがそれにあたりま す。
評価して軌道修正するためのマニュアルです。
【目的41ベストパフォーマーをつくる:基準が守れるような評価の基準 ができたら、基準に段階を設けて、無理なくステップアップできるように します。
よくできる人の仕事のやり方を標準にして、誰もが早くその方法 を身につけられるようにすることで、スキル向上の道筋が見えてきます。
初級編、中級編、上級編といったマニュアルがこれにあたります。
④目的その1:見えるようにする
〇「見えるようにする」と|よF暗黙知を形式知にする」|ということ。
H . 111 111 11■ | . E鷹② 飽きずに何度も見られる工夫tlさらには改訂しやすいこともポイン ]E“日1 _ . ||| ― ■ Цフ③見えるようにする範囲とその手段をどう設定するかが童要。
では次に、マニュアルの4つの目的について、順に見ていきましょう。
ある業務を誰もができるようにするためには、まず業務の内容が明らかに されなければなりません。
例えば、業務の現場を見せる、業務をやって見 せる、言葉で説明する、などの方法が考えられます。
ナレッジマネジメン トでは、ある人が持っている固有の知識や情報、知恵を、誰にでも伝えら れるようにすることを、「暗黙知を形式知にする」と言いますが、マニュ アルの第1の目的「見えるようにする」はまさにこれにあたります。
できるだけ正確に早く、また多くの人にその業務を理解して、できるよ うになってもらうためには、マニュアルも工夫して分かりやすいものにし ていかなければなりません。
文章化した冊子を読んでもらう、といったこ れまでのマニュアルに加えて、音声で読み上げる、画像で見せる、といっ た方法も多く取り入れられてきています。
音声や画像を取り入れることで、 より正確に、再現性高く、分かりやすく、重点化して、飽きずに、いつで も何度でも分かるまで、マニュアルを使いこなしてもらうことができます。
ただし、業務の内容が変わった場合には、マニュアルも改訂していく必 要が出てきます。
したがって、あまりに凝ったマニュアルをつくってしま うと、こまめに改訂ができなくなりますから注意しましょう。
また、業務は動作や言葉遣いだけで成り立つような、比較的単純な業務 ばかりではありません。
業務に対する考え方を理解してもらったり、業務 成果物の品質(業務のアウトプット)を明確に規定したりすることも重要 です。
業務をうまく遂行するには、どこまでをマニュアルで「見える」よ うにしたらよいのか、また、どのような手段を使って「見える」ようにす るのが有効なのか、効率がよいのか、検討をしてみてください。
⑤目的その2:基準をつくる
業務を見えるようにしたら、次は、マニュアルによって、業務をきちん とできるようにすることです。
業務マニュアルで、もっとも重視される目 的ともいえます。
しかし同時に、これがもっとも難しい目的であるのです。
それは、マニュアルを学んでも、業務がきちんとできない場合が多いからです。
では、どうすれば、「業務がきちんとできる」マニュアルになるのでし ょうか。
それにはまず「基準をつくる」ことです。
業務がきちんとできているのか、いないのかを判断するには、「基準」 が必要です。
基準(ものさし)をつくって、マニュアルで示していくこと が重要になります。
基準の示し方には、次のような方法があります。
①標準を示す:誰が業務を担当しても、同じアウトプットになるように、 手順や方法を示します。
業務をより細かい作業に分けて、作業ごとに、 誰もがうまくできる手順や方法を示し、その通り作業をしてもらうこと で、業務のアウトプットが基準通りできる示し方です。
これは、業務の 標準化を行うときに有効です。
②幅(レンジ)を示す:「これだけはやってください」「これだけはやら ないでください」というように、 しなければならないこと、 してはなら ないことだけを伝える基準の示し方です。
これは、多くの人に単純なル ールを徹底するときなどに行われる方法です。
③考え方を示す:目的や方針、組織風土や理念など、抽象度の高い概念を 伝える時の基準の示し方です。
概念を理解して共有するためには、「行 動基準」「判断基準」「活動目標」など、それに至る具体的な例示をする ことが必要です。
業務の目的に合わせて、基準の示し方を使い分けていきましょう。
⑥目的その3:基準を守れるようにする
3つめの目的は、「基準を守れるようにする」です。
業務を担当する誰 もが基準を守り、基準通りに業務ができるようにするには、業務マニュア ル上、どのような手だてがあるのでしょうか。
よく行われる有効な方策に は、次の3つがあります。
①ポイントやコツを明示する:間違いやすい点、成果にばらつきが出やす い点、うまく行うために留意する点といったことを、マニュアルの中に ポイントやコツとしてその「要領」を強調することで、基準が守りやす くなります。
業務の中で、成果に影響するような作業を管理点といいま す。
管理範囲から外れると、基準からみて許容できないような影響や品質 低下を招くおそれのある工程のことです。
うまくその要領を添えましょう。
②例外や対応事例を例示する:基準を外れるような場合を事前にいくつか 想定して、基準を外れた場合の対処について、マニュアルに具体的な方 法を示すことで、基準が遵守できる確率も向上します。
これを例外管理 といい、基準を守れるようにするためには、絶対になくてはならない必 須の管理です。
また、接客業務や営業活動など、相対的に例外が多い業 務では、対応事例を取り上げることも有効です。
③評価する仕組みをつくる:結果的に基準が守られているかどうかを判断 するためには、評価の仕組みをつくることも有効です。
マニュアルの中 に、確認問題やチェックリストを盛り込むという方法もありますし ニュアルとは別に、達成度テストや品質試験といった制度を設ける も有効です。
マニュアルで実現したい「基準を守れるようにする」 う目的は、評価の仕組みで補うことで、より確実になるでしょう。
マ と い れ ヽ こ と こ 瑾鑽 らは、マニュアルにメリハリをつけ、理解も深めてくれるはずです。
⑦目的その4:ベストパフォーマーをつくる
4つめの目的は「ベストパフォーマーをつくる」ことにあります。
こう した目的でのマニュアルは、職人的な業務について仕事のやり方を次代に 伝えたり、フランチャイズで急速に事業を拡大したり、文化や風土を超え てグローバルに業務を展開していったりする場合などに有効です。
これら は、近年特に積極的に行われてきています。
ベストパフォーマーを育成す るためのマニュアルは、次のようなステップでつくり上げていきます。
①ベストパフォーマーを見つける:社内にはスキルの高い優秀な社員がい るはずです。
パートやアルバイトの業務であっても、自ら仕事のやり方 を工夫してより高い成果をあげている人もいます。
小さな企業であれば、 社外での情報収集や取材で見つけるという方法もあります。
②ベストパフォーマーの優れたスキルを抽出する:ベストパフォーマーの 仕事ぶりを観察したり、質問したりすることで、高い成果をあげるコツ を抽出します。
数名いれば、彼らにマニュアルにしたいテーマやシーン を与えて、経験を語り合ってもらいながら抽出することも有効です。
③スキル向上の道筋が見えるようにする:優れたスキルを抽出するだけで は、その水準が高すぎて到達できる人は限られてしまいます。
その水準 に達するまでのスキル向上の道筋を、さらに細かいステップに分けて、 具体的に示していくことが求められます。
④継続的な仕組みとして構築する:ベストパフォーマーを講師とした研修 会、ヘルプデスク設置、相互の情報交換会の開催、ツールの共有化など が有益です。
また、ベストパフォーマーは時間の経過とともに進化し、 変わっていくものです。
継続的に取材したり、新たなベストパフォーマ ーを見つけ出したりしていくことも重要です。
③よいマニュアル、悪いマニュアル
マニュアルはただつくればよいというものではありません。
言うまでも なく、使う側の立場に立って、使いこなされるようにつくられなければな りません。
役割を絞り、そのための効用を十分考慮して、それに合ったつ くり方を選択しなければならないのです。
よいマニュアルと悪いマニュア ルを分けるポイントは、次のような点から生まれます。
①利用目的を明確にする:誰にでも分かりやすいマニュアルというのは難 しく、誰にも中途半端で分かりにくいマニュアルになってしまいます。
利用目的を明確にし、利用者を限定していく必要があります。
②利用シーンから形態に配慮する:どういう場面で利用するかに配慮して、 個人が携帯するのか、利用者に合わせて分冊にするのか、部門に1冊常 備するのか、オンライン化していくのかなど、形態を決定します。
③分かるマニュアルにする:内容は、網羅性ばかりではなく軽重が大切で す。
重要なことは利用者によって解釈が異なることなく、しっかりと頭 に入るように、構成とフォーマットの統一、用語の統一、ビジュアル化 などの工夫をすることです。
④探せるマニュアルにする:困ったら頼れるマニュアルにするために、利 用者に分かりやすい業務の体系化やマニュアル構成の工夫が重要です。
⑤更新できるマニュアルにする:つくりっばなしではなく、業務内容が変 更された際、柔軟に内容を更新できる工夫が必要です。
当初から凝った つくりにせず、利用者の理解度に応じて内容を充実させます。
⑥マニュアルの限界を見極める:マニュアルではできないこと、マニュア ルの限界も十分に理解し、そこを補完する評価テストや研修会の実施な ど、他の仕組みとの棲み分けにも配慮する必要があります。
③使いこなせるマニュアル作成のポイント
利用者が使いこなせるマニュアルに仕立てるには、まず基本的な構成要 件に沿って全体が構成されることが重要です。
マニュアルの構成要件は次 の通りです。
考え方や具体的なつくり方の詳細は次章以降で取り上げます。
【構成要件1】業務の手順の明示:「マニュアルに示してある順番に作業 をすれば、まずは一通りの業務が完結できる」というのが、もっとも基本 的な要件です。
マニュアルの目次には業務の全体像が体系化され、それぞ れの業務については、業務を構成する作業の順番が「業務の手順」として 示されている必要があります。
【構成要件2】業務要領(コツ)の明示:業務の品質を安定させるために は、業務をうまくこなすための「要領(コツ)」が示されていなければな りません。
業務上「やってはいけないこと」と「やらなければいけないこ と」を明確に示し、どのような状態になれば作業が完了したと言えるのか について、「求める水準」を示します。
【構成要件3】例外的な業務の対応:業務の手順や業務要領(コツ)では、 標準的な作業方法が示されますが、業務には失敗や例外がつきものです。
よくある失敗や例外について例示して、それぞれに対する適切な対処方法 を示します。
発生頻度の高いものには、有効な順に対処方法を示します。
【構成要件4】サンプルなどの提示:現場の状況や構造、実際に使用する 設備や器具、帳票や端末画面については、イラストや写真、ビデオ、サン プルなどを掲載して、具体的な理解を促進します。
【構成要件5】チェックリストなどによる確認:利用者がマニュアルに示 した内容を理解できたかどうかについて、短時間で確認できるチェックリ ストや確認テストなどを添えることで、理解の確認や見直しに役立ちます。
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