「諸君はわが社の商品を安売りしている。わが社の商品は、私が長年かけて良心的な商品
づくりをしてきたので、非常によいのだ」と、創業社長がゲキをとばす光景によくお目にか
かる。しかし、その一方で営業担当の部長や担当者は「しかし、この値段では、もうこれ以
上の伸びは見込めません」とやり返す始末である。
「商品の価格は安くするな、その価格を維持しろ」と私が言うと、販売の第一線の人たちは、
一般論、総論としては賛成するが、実際に自分が売るという各論になると豹変してしまい、「こ
んなに高くては売れません」と言う。
いつもここで壁にぶち当たってしまう。彼ら営業マンは、なぜ自社の商品が高いか、とい
うことについて実に理路整然と、素晴らしいスピーチを展開する。早い話、自社の商品に魅
力はなく、過去の伝統だけで売れていると説明する。だが、売れるからには、自社の商品に
よい点があるのではないかと水を向けても、売れている理由に対して明確な回答を得たこと
は一度だってない。
これもむべなるかな― と思う。というのは、ほとんどの営業マンは、お客様のところヘ
行くといっても、仕入れ係とか購買の担当者のところへ行っているからだ。
お客様というのは、誰でもよいものを安く買いたい。だから「おたくの商品は安いですね」
と言う仕入れ担当者はまずいないだろう。逆に、いかに高いかということを説明しながら、
結局安いものをさらに安くせよという駆け引きをするのだ。営業マンは、値段が高すぎるよ
うな話を延々と聞かされて、納得してしまうということになってしまうのである。
「高いからだめだ」とか、「よそのように安くせよ」というように、自社の商品に大きなダメー
ジを受け、自信喪失して帰ってくる始末である。
売り込みに行った先で、「よいところへ来てくれた。お前のところの商品はよすぎる、安
すぎる、よく売れすぎる」と言うところはまずありっこない。その逆に、行った先々の得意
先から「もっと安くせよ」と言われ、それが積もり積もって、高く売る自信をなくしてしまう
わけである。私は、価格維持ができない原因の一つを、このように理解している。
単価を上げよ、というのは、なにも高級化して高く売れということばかりではない。平均
単価は次のように、どうしても下がる傾向を企業は内蔵している。
●高くすると売れないと思い込んでいる気の弱い人が多い。
●単価を上げるより数量に走るほうが容易である。
●売れないものを仕入れ、つくり、在庫になっている場合が多い。
●言い値を通して売る自信のない営業マンが多い。
●単価を上げるべしという理念がない。
●価格をはっきり言わずにぼかす商習慣がある。
まず、価格を先に言ってからビジネスに入る人が少なくなってきた。自信がなさすぎるか
らだ。値段をはっきりと言おうとしない。それを謙虚と言うべきかどうかは知らないが、本
当にきちっと交渉せず、あいまいのうちに進めてしまう。儲かっている企業の営業マンは、
最初から価格をはっきりさせるという習慣づけをさせられている。
基本的に儲ける経営者と儲からない経営者の違いは、価格に対する考え方、姿勢だと言え
よう。価格をぼかしておいて儲かるならまだしも、あとで採算をとろうとしたため、つじつ
ま合わせの手抜きとなり、結局、信用まで落としてしまうことになる。こんなわかりきった
ことがわからないということは、結局、経営哲学の問題にあると思う。
住宅メーカーのエス・バイ。エル(旧小堀住研)の創業者の一人、栗田庄二郎副社長は、営
業マン教育で「うちの建築価格は他のライバルより高いことを、絶対のセールスポイントと
せよ」と言っていた。
なぜなら、住宅産業はクレーム産業と言われるくらいで、アフターフォローが一番大切で
ある。完成後から完全なサービスを良心的に行なおうとすれば、当然、価格は高くなるとい
うわけである。そこには経営者としての自信、確固たる姿勢を見ることができる。このよう
に、営業マン教育ではつねに、経営者は価格維持を叫ぴ続けなくてはならないのである。そ
うでないと、顧客に営業マンがマインドコントロールされてしまうのである。
なぜ、高く売れないのか、というのは売るための技術力や商品の高品質が表面に出ていな
いと難しい。高く売ろうとすれば、品質を上げなければどうにもならない。プロの日、技量、
価値判断が要求されるのは当然である。
顧客のニーズを考えれば、たしかに価格の安さもあるが、だが、同時に、もっとカッコい
い売り方はできないのか、品質を上げられないのか、デザインの点でもっとよいものになら
ないか、という欲求もあることを忘れてはならない。企業内ではコストダウンを考える者と
同様に、付加価値を上げて、もっと売価を上げるためにはどうすればよいかの顧客ニーズに
合わせた商品開発、品ぞろえを考える人材がいる。
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