お客様は、 一体全体どこにいるのか。
事業で一番危険なのは、開拓すべき市場がもうないことだ。開拓すべき市場がないのは、もう完成されてしまった事業である。
たとえば、自動車や家電はもうほとんど開拓すべき市場がない。新しい店舗展開ができないくらいまで、市場の競争が激甚になってしまった。
「新事業からお客様を創造していく」「新商品からお客様を創造していく」、あるいは、「業態を変えて新しい販売ネットからお客様を創造していく」ことが、物の見方として非常に大切である。
そして、できるだけ市場が空いているところ、開発途上のところを狙っていく。簡単で、あたりまえのことだと言えば、確かにその通りである。しかし、それを実行して伸びていくかどうかは、ひとえに社長の手腕にかかっていることも忘れないで欲しい。
学校でも、そうである。物すごく難しい学校には、受験生が殺到するから、難しさに一層拍車がかかる。易しく空いている学校であれば、すぐに入学できる。
そういう空いていて易しい学校に入り、猛烈に勉強すればいいことである。いい大学に入っても、どうせみんな勉強しないのだから、自分は逆に易しい大学に入って一生懸命に勉強する。
つまり、事業でも、参入の易しいガラ空きの市場を狙い、そこで一生懸命に売上を伸ばせばいいということである。
会社が潰れる最大の要因は、市場にお客様がいなくなることである。中には、規模が大きくなり過ぎて潰れると誤解している人が多いようだが、そんなことは滅多にない。
そもそも、あらゆる会社にとっての潰れる原因は、そんな内部要因にあるのではない。なぜ潰れるかといえば、繰り返すが、お客様がいなくなること、つまり外的要因のためである。未開拓の市場を残していないとか、商品がライバルより劣っているとか、そういう外に向かっての対応がまずくなった時に潰れる。
平八茶屋の事例を先に書いたが、たった一店しかなくて売上は大きくないが、四百二十二年も続いているということは、商品がいいからだ。さらに、未開拓の市場が山ほど残っているからである。 一生懸命にお客様を呼んで宴会をやっても、せいぜい百人とか百五十人しか店に入れないようになっている。要するに、残っている市場が大きければ、個人であっても、同族であっても、会社は永久に続く。
社員の質が悪いとかいう内部要因ならば、人間を少し入れかえればいいことである。だから、致命的ともなりかねない外的要因を、もう少し研究しなければならない。そうすれば、決して潰れない。未開拓の市場が残っていない会社は、非常に危ない。どんなに大きくても
危険だということを知っておかなければならない。
以上のように、顧客創造では、大局的に言えば、未開拓の市場を探すことが一番目にくる。ただし、消耗品の場合は、既に開拓されていてお客様が大勢いる市場をつかむことが大切である。これは、特に注意して欲しい。
過日、福岡で一、二を争う料亭に行った時に、「あなたのところは、明太子はやってないの?」と、もののついでに質問してみた。すると、「明太子はどこでもやっているから、やらない」という返事だった。答えは、間違いである。
福岡は、明太子の本場だ。「稚加榮」という活きづくりをやっている料亭の明太子は、よその三倍程の値段だが、すごくおいしいということで、空港あたりでもアッという間に売り切れてしまう。実際に、買えないことが何度もある。
したがって、この料亭も、既に市場が開拓されていて多くの明太子人口がいるのだから、独特の味をだしさえすれば、さほど努力をしなくても新しいお客様を獲得できるはずである。たくさんのお客様がいれば、それを奪うことが可能だ。そういう原則がある。
たとえば、養老乃瀧が牛どんに進出した要因は、牛どん人口を音野家が既につくってくれていたからで、そこへ進出して、何割かのお客をゴソッと取るという考えである。
養老乃瀧は、夕方五時からの赤提灯で充分に利益を出している。もし、用意の簡単な牛どんに進出して、土口野家のお客様の何割かを奪えれば、社員のボーナスを余計に出せる。そして、それが成功したわけだ。
このように、未開拓の市場と、もう一つ、既に十分なお客様が開拓されている市場の両面から、顧客創造を考えて欲しい。
もし、既に開拓されている市場で、しかも多くのお客様がいることが察知できたら、そこへ独特の商品で攻め込めば、顧客を奪えることが多い。
さらに、敵が何かの商品を開発していて、それが市場で長く続いているという場合は、儲かるからこそ長く続いている、逆に言えば、損する市場であれば早くやめてしまうはずだから、そこが狙い日となる。そういう市場を探し出すことが視点として重要だ。
前に書いたように、間屋の倉庫とか、自社の販売ネットに組み込まれている店の売り場とかで扱っている何百、何千という商品のなかから、実際に売れている商品を見つけることができる。それを改良して売っていくという視点が必要である。方向性はいくらでもある。売れている商品や市場を見つけていくべきだ。
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