対象範囲
高度3000メートルのレベルで考えるべきことは「何を達成したいか」という「目標」である。高度2000メートルの上にあるこのレベルで見渡すのは、1〜2年のうちに達成したいと思っていることだ。
終わるまで1年以上かかりそうなプロジェクトは、すべてこのカテゴリーに入る。
何をどのレベルで管理すべきかについては、進行度をどのような頻度でチェックするべきかを考えるとよいだろう。
進み具合を毎週確認しないと安心できないようなものであれば、私はそれをプロジェクト(高度1000メートル)に分類する。
月に1度、あるいは4半期に1度チエックすれば大丈夫だと確信できるものは、このレベル(いわゆる目標やゴール)に分類したはうが違和感がないはずだ。
目標もプロジェクトと同じように、「完了」させることでリストから外すことができる。
組織の再編成、本の出版、債務返済、息子の大学進学、新製品の投入、マラソンヘの参加といったことが、このレベルのリストに含まれることになる。
管理の仕方
「将来への見通し」は、上のレベルにいくほど枠組みがシンプルになっていく。
長期的に実現したいことは通常、箇条書きのリストや計画などのかたちにまとめられるので、比較的シンプルなフォーマットで済む。
今年中、あるいは来年いっぱいをめどに達成したい目標を考えてみれば、浮かんでくるのがせいぜい10件程度という人もいるだろう。
もちろん、中長期の事業の戦略・業務計画を担当している人なら、各部門の目標と下位目標を含む、かなり複雑な計画書を抱えている場合もあるだろう。
けれどもほとんどのケースでは、1つのリストや文書で十分なはずだ。
このレベルの項目は、毎年開かれる定例会議(企業の取締役会、マネージャレベルの会議、提携先との話し合いなど)で典型的に扱われる部分でもある。
こうした会議は、集中して考えられるように、社外に会場を借りて行われることも多い。
いつ、どのように取り組むか
年間目標や、さらに長期間での目標は、少なくとも年に1度は見直したほうがいいだろう。ほとんどの会社や組織では、事業会議や予算会議などでこれらのチェックを行うだろう。
また、毎月、もしくは4半期ごとに年間目標を見直し、必要に応じて軌道修正や調整をするのもよく行われている。
人生全般、あるいは競争の激しいスポーツなどの特定分野において、意欲的に目標設定を行う習慣が身についている人は別だが、そうでない人はこのレベルについて意識的に考える必要がある。新年度が始まったときのようなタイミングがいいだろう。
日常やっていることから少し離れて、落ち着いて考えてみる時間を設けてみよう。私は年末になると、妻といっしょにこのレベルでの見直しをやることにしている(やり方はあまり洗練されているとは言えないが)。
まず、30分くらいかけて、その年に達成したことなどをリストに書き出していく。達成された主なプロジェクト、初めて旅行に行った場所、日立った出来事などを1つの長いリストにする。
私たちは数年前に、こうした「夫婦の棚卸し」作業によって、達成感と現実への認識が大いに高まることを発見した。
後半の30分は、来年末にリストに加わつていればいいと思うことを考え、それらの目標を収集して別のリストに書き出していく。
このレベルで目標を設定するのは、もちろん企業にとっても有益だ。これをやることで、人員などのリソースを効率的に配分していくことができるからだ。
企業や組織が存続していけるかどうかは、まわりの世界と良好な関係を維持していけるか否かにかかっている。
そのためには、リソースをどう配分していくかに十分な注意を向けつづけなければならない。
企業は何かを生み出していかなければならないが、しっかりとした目標が定まっていれば、それに応じて必要なリソースや枠組みを考えていくことができる。
逆に、どんなことをどれぐらいの期間をかけて達成したいかがはっきりしなければ、その存在意義を維持することはかなり難しくなってくる。
個人でも組織でも、日標が決まるとその内面に秩序が生まれてくる。いつまでにどれだけのことを達成したいかをきっちり決めれば、意思決定の基準が定まってくるからだ。
会社の売上を倍増させたい場合、1年以内に達成することを目標にした場合と5年以内とでは、計画の内容や見込みには大きな差が出てくるだろう。
そのような観点に立つと、3000メートルのレベルでの見直しは、自分や組織が確実に成長していける頻度で行いつつも、物事を達成するためのエネルギーが弱まったり分散していると感じたときにも随時行なっていくのがベストだ。
例えば家計を何とかしないといけないと思っているときは、今から1年後に達成したいことを考え、日標として設定してみよう。
そうすることで、「収集」「見極め」「整理」「見直し」をやつて実際に取り組んでいくためのモチベーションがぐっと高まってくる。これは、将来への見通しが状況のコントロールに役立つ好例だろう。
より大きなゲームに挑戦する
誰でも知っているように、優秀な人や組織は目標を明文化している。大きなことに取り組んでいくときに重要なのは、それに集中して力を注いでいくことだ。目標が明文化されていれば、当然エネルギーも集中させやすい。
1年から2年の間に達成するべきことの再評価が必要になる典型的なパターンは、私の知る限り2つある。
- 1つは、物事が達成されつつあるのに新たな目標設定をしていないとき。
- もう1つは、目標があまりにも現実とかけ離れているときだ。
前者の場合、すでに達成されてしまった目標を、同じくらい魅力的でやりがいのある目標に置き換えないと、スクリューが回っているのに誰も舵を握っていないモーターボートのような状態になる。
それまで達成したことによつてまだ前に進む勢いが残っているのに、どこへ進むべきかの方向性が定まっていないのだ。
このような状態の人は、自分では何かを成し遂げようとしているつもりでも、それが何かを自覚できていない。
2つ目のパターンは、大きな計画があるにもかかららず、どのように達成するかの具体的な戦略が定まっていないケースだ。
ベストセラー作家になりたいという夢を持っている人は、1年間で具体的にどんなことを実現したいだろうか。
退職後にそれなりの暮らしがしたければ、一定の資産が必要になるが、そのために今後2年間でどんなことをやっていけばいいだろう。
5年後に買い手にとって魅力的な会社になっているように、一定の売上と利益を達成するには、どのような目標を設定する必要があるだろうか。
目標は大切なものであるにもかかわらず、どういうわけかそれを達成するプロセスにはなかなか手がつけられないことが多い。
目標が本当にやつかいなのは、長期的に望んでいる結果に取り組むには日頃慣れ親しんでいることから離れ、未知の領域に挑戦する気持ちを持たなければならないという点である。
「望んでいることが達成できなかったらどうしよう」「間違った方向にいってしまうかもしれない」「何かを犠牲にする必要があるのではないか」。
そうした不安が頭をもたげてくるのだ。
未来への前向きなイメージを見極めてそれを保ちつづけられるかどうかは、望んでいることを達成できる能力が自分にあるという自信をどれだけ持てるかにかかっている。
大胆な目標に力を注ぐべきではないときもある。
あまりに大きな目標に取り組むと状況のコントロールができなくなることもあるからだ。
あなたの潜在意識はおそらく、今までと違う大きなことに挑戦すれば、やりがいのある新しい世界が開けてくることに気づいている。
だが、現在抱えていることをコントロールする能力に少しでも不安がある場合は、あまりに高い目標は生産性を低下させる要因でしかない。
私たちの会社でも、長期的な目標を考えずに、会社の態勢作りに専念していた時期があった。
より高い目標に取り組む基盤を確立するために、そのような作業がまずは必要だったのだ。
自分自身や、勤めている企業が危機的状況にあるときは、すべてのエネルギーをより低いレベルに集中させて、とりあえずその状態から脱する必要がある。
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